CriticRevisionObligatios2015
27/32 Ⅲ-2-2. わかりやすいとは何か(2/5)判例を明文化するとわかりやすくなるか?

【テロップ】
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【ノート】
条文がわかりにくくなっている原因のひとつに,学説や判例によって条文の意味に実質的な変更が加えられるようになっている場合があります。この場合には,条文を読んだだけではわかりにくいという現象が生じます。 ■したがって,学説や判例によって条文の意味が実質的に変更されている場合には,学説や判例の法理を条文に取り込んで明文化するとわかりやすくなると考えられています。 ■しかし,判例や学説を単に条文に取り入れて明文化したら,それで,わかりやすくなるというわけではないので,問題は,それほど単純ではありません。 ■学説や判例を条文に取り込むには,関連する条文と対比し,体系的な理解ができるような調整が必要であり,そのことをおろそかにすると,条文の位置づけがあいまいになり,わかりやすい条文にはならないので,注意が必要です。 ■このことを,改正案3条の2について検討してみましょう。 ★今回の改正案では,明確に条文に書かれていないものの,これまで確立した判例法理については,判例法理の明文化という観点から,明文の規定が置かれたものもあります。 ★このような点からも,消費者にとってわかりやすい民法ということがいえるでしょう。 ★[弁護士連合会・消費者からみた民法改正(2015/4)5頁](山本健司執筆) ■そこで挙げられている改正案3条の2を呼んでみましょう。■ ★改正案 第3条の2■ ★法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは,その法律行為は,無効とする。 ■しかし,条文に取り込まれた判例(すなわち,大審院▲明治38年5月11日判決▲民事判決録▲11輯706頁)が意図していた「意思能力」の意味が,その後,成年後見制度が創設された際に用いられることになった「事理ベンシキ能力」と,どのような関係に立つのかを明らかにした上で,条文に取り込まないとその意味がわからなくなってしまいます。 ■現に,現行法7条の後見開始の審判における「事理をベンシキする能力を欠く」という判断と,「意思能力を有しない」という判断の基準が違うのか同じなのかについては,明らかではありません。 ■つまり,判例の法理を取り入れる場合であっても,関連する条文に変更がなされている場合には,取り込む判例の概念と現在の民法の用語との間の調整が不可欠です。 ■しかし,改正法は,そのような調整を行っていないため,改正案3条の2の「意思能力」と7条の「事理ベンシキ能力」との用語法をめぐって混乱が生じることが確実に予想されます。