CriticRevisionObligatios2015
29/32 Ⅲ-2-3. わかりやすいとは何か(4/5)判例を明文化するとわかりやすくなるか?

【テロップ】
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【ノート】
判例法理を条文に取り込むときは,さきにのべたように,関連条文との整合性を図ることが必要ですが,そればかりでなく,判例法理を取り入れた条文自体の整合性が保たれるように注意しなければなりません。 ■この点について,判例法理を取り込んで第2項を追加したところ,第1項との間で,相手方の保護のレベルと,第三者の保護のレベルの間で矛盾を生じさせてしまったという失敗例として,改正案93条を取り上げて,検討することにしましょう。■ ★現行法93条は,心裡留保の効力について,相手方に対する効力のみを規定し, ■第三者に対する規定を有していませんでした。 ■しかし,判例(最高裁第二小法廷▲昭和44年11月14日▲判決▲民事判例集▲23巻11号▲2023頁等)は,民法94条2項を類推して,第三者の効力についての法理を確立してきました。 ★そこで,今回の改正では,その成果を取り入れて,民法94条2項を参考にして,93条に第2項を新設しています。 ■確かに,新設された改正案93条2項だけに注目すると,民法94条2項との関係では,整合性が保たれています。■ ★しかし,改正案93条自体の整合性を検討すると,1項と2項とで保護のレベルに整合性が欠けていることに気づきます。 ■その理由は以下の通りです。 ■改正案93条▲第1項では,キセキ性のある表意者に対して,相手方を保護するため,第三者の保護要件である「善意かつ無過失」の立証責任を相手方に負わせるのではなく,表意者本人が,相手方の「悪意又は有過失」を立証しなければならないとしています。 ★この点について,学説上も争いはないのですから,修正私案もそれに従って作成することができます。 ■しかし,改正案93条▲第2項については,民法94条2項をそのまま利用するのではなく,第1項で相手方を保護したのと同様の保護を第2項においても,第三者に与えるべきです。 ★すなわち,ここで示す修正私案のように,第三者には,無過失ばかりでなく,善意についても,一切の立証責任を負わすべきではなく,キセキ性のある表意者本人に,第三者の悪意又は有過失を立証させるべきです。 ■このように考えると,改正案93条は,1項と2項とで,相手方と第三者の保護についての整合性を欠いており,分かりにくい規定であるといわなければなりません。