LegalInference2016
10/34 紛争の具体的な事例被告は,原告に対して責任を負うか❓

【テロップ】
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【ノート】
裁判官は,どのような思考プロセスを経て,紛争解決をするのでしょうか? ■ さきにあげた,具体的な交通事故の例に基づいて,紛争が法によって解決されるプロセスを説明します。■ 裁判官は,まず,原告の主張に耳を傾けます。■ ★原告の言い分では,被告は,その所有する車を運転するに際して,車線を越えて向かってきたため,■ ★被告は,左前方の自転車に気づきながら,自己の身を守るために,故意にハンドルを左に切ったか,または,対向車に気を取られ,前方注視義務を怠るという過失によって,■ ★自転車で走行していた原告に衝突し,原告に全治3か月のおお怪我をさせるという損害を生じさせました。■ そこで,原告は,民法709条に基づいて,被告は,原告に生じた損害を賠償する責任を負うと主張しています。■ つぎに,裁判官は,被告の主張にも耳を傾けます。■ 被告の言い分では,被告が原告に衝突したのは,対向車が車線を越えて向かってきたため,緊急避難としてとっさにハンドルを切ったためです。■ したがって被告は,民法720条▲2項によって責任を免れると反論しています。■ ★この事件の場合,対向車線を越えて走行し,事件の原因を作った人物は,逃走し行方不明となっているため,民法720条▲1項但し書きの適用は,ここでは,無視することにします。■ この事件の場合,裁判官が,民法709条も,また,民法720条▲1項本文も適用される状況にあると考えたならば,民法709条の一般不法行為の成立要件を障礙する民法720条の要件の存在を重視し,民法720条を適用して,原告の請求を棄却することになると思われます。■