LegalInference2016
15/34 アイラック(IRAC)に従った具体例(交通事故)のリポートの書き方

【テロップ】
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【ノート】
アイラックを使って,具体例の解決案をまとめるとどうなるでしょうか?■ 実際の判決では,先に判決の結論を示し(主文),争点を明らかにし(争点),事実への法の適用を述べます(判決理由)。■ しかし,普通の報告書であれば,以下のように書くのがわかりやすいでしょう。■ ★I(争点)■ ★被告は,自己が所有する車を運転するに際して,前方不注視という過失によって,自転車で走行中の原告に衝突し,原告に全治3か月のおお怪我をさせるという損害を生じさせた。■ ★原告は,被告に対して,損害賠償を請求しているが,被告は,損害賠償をする責任はないとして,争っている。■ ★R(ルール)■ ★民法709条(不法行為による損害賠償)■ 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は,これによって生じた損害を賠償する責任を負う。■ ★第720条(正当防衛及び緊急避難)■ 第1項▲ 他人の不法行為に対し,自己又は第三者の権利又は法律上保護される利益を防衛するため,やむを得ず加害行為をした者は,損害賠償の責任を負わない。ただし,被害者から不法行為をした者に対する損害賠償の請求を妨げない。■ 第2項▲ 前項の規定は,他人の物から生じた急迫の危難を避けるためその物を損傷した場合について準用する。■ もっとも,実務では,このほかに,民法715条,および,民法の特別法である自動車損害賠償保障法▲第3条▲が問題となりますが,ここでは,民法709条だけを使って説明します。■ ★A(適用と議論)■ ★原告の主張通り,民法709条の要件は満たされている。■ ★しかし,被告が原告に衝突したのは,対向車が車線を越えて向かってきたため,被告は,正当防衛,または,緊急避難として,とっさにハンドルを切ったためである。したがって被告は,民法720条2項によって責任を免れる。■ ★C(結論)■ ★民法709条(原則)が適用される条件が満たされている場合であっても,民法720条(例外としての免責事由:正当防衛・緊急避難)の条件が満たされている場合には,被告は原告に対して責任を負わない。■