LegalInference2016
17/34 トゥールミン図式(2/3)完成型

【テロップ】
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【ノート】
さきに示したトゥールミン図式の原型は,単に三段論法を図式化したものであり,汎用的ではありません。■ ★それに対して,トゥールミン図式の完成型は,その原型に,以下の三つの枠を追加しています。■ 第1は,「主張(Claim)」の様相を限定する「十中八九」とか「おそらく」という「様相限定詞(Qualifier)」という枠です。■ 第2は,(Data)を根拠づける論拠(Warrant)について,それをさらに強化する裏付け(Backing)の枠です。■ もっとも,「W:推論保証(論拠)」と,「B:裏づけ」との区別は,わかりにくいかもしれません。■ トゥールミン自身の記述[トゥールミン・議論の技法(2011)154 頁]によれば,「W:論拠」は反駁可能な「カゲン的言明(A ならばB である)」とされていますので,要件と効果で書かれた法律の条文も「W:論拠」に含まれることになります。■ これに対して,「B:裏づけ」は「定言的事実命題(A である)」とされていますので,反駁を予定していない定義や公理がこれに含まれることになると,私は考えています。■ 第3は,相手方に「反論(反対事実の証明)」を許すための反論枠です。■ この三つの枠を付け加えることによって,トゥールミン図式は,三段論法では扱うことができなかった,例外を含む命題を含めて,あらゆる議論を分析する強力な道具とすることができるようになりました。[トゥールミン・議論の技法(2011)153頁]■ なぜなら,トゥールミンの図式の完成型によれば,必ずしも従来の論理学や法律を根拠とせずに,「常識」を論拠としても,説得的な議論を展開することが可能となるばかりでなく,あらゆる議論のプロセスをこの図の中に正確に位置づけることができるようになったからです。■