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第41回 消費貸借と利息制限

作成:2006年9月16日

講師:明治学院大学法科大学院教授 加賀山 茂
書記:竹内 貴康,藤本 望 編集:深川 裕佳


講義のねらい



消費貸借


消費貸借の目的と性質


消費貸借とは,当事者の一方(借主)が,将来同一の種類,品等,数量のものを相手方(貸主)に対して返還することを約束して,相手方(貸主)から金銭その他の代替物を受け取ることによって成立する契約である(民法587条)。無利息の消費貸借は,要物の無償・片務契約であり,利息付消費貸借は,要物の有償・片務契約である。

第587条(消費貸借)
消費貸借は,当事者の一方が種類,品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって,その効力を生ずる。

要物性

民法が消費貸借を要物契約としたのは,古くは,単なる口約束では契約の成立を認めなかったローマ法の沿革の名残りによるものとされ,現在は,要物契約とする合理的必要性は見い出し難いとされている。

諾成契約と要物契約との比較

契約の目的 無償契約 有償契約
財産権の移転 贈与保証 売買・交換
書面によらない契約 書面による契約
契約の成立後も,
履行までは
撤回が可能
合意のみで
契約成立
合意のみで契約成立
代替物の利用 無償の消費貸借 有償の消費貸借
合意があっても,目的物を引き渡すまでは,
契約は成立しない
左に同じ
特定物の利用 使用貸借 賃貸借
合意があっても,目的物を引き渡すまでは,
契約は成立しない
合意のみで契約成立
労務の利用 無償の寄託 有償の寄託
合意があっても,目的物を引き渡すまでは,
契約は成立しない
左に同じ

実際,要物性をあまりに厳格に要求すると,取引の実体に適合しない結果になる。例えば,金銭の消費貸借においては,まず,消費貸借の公正証書が作成され,あるいは抵当権その他の担保権が設定され,その後に金銭の授受がなされるのが普通であるが,この場合に要物性を厳格に適用すると,抵当権設定や公正証書の効力は否定されるのではないかという問題を生じる。しかし,判例は古くから,これらの効力を承認してきた。その理由づけは,消費貸借の要物性を直接に緩和するのでなく,抵当権の付従性を緩和し,あるいは公正証書の性質に着目して,その効力発生時点を現実の金銭授受の時点までずらす考え方によるものではある。しかし,現実には,学説が主張する要物性の緩和の要請に応じたものであった。

諾成的消費貸借

諾成的消費貸借とは,契約自由の原則に基づき,目的物の交付をまたず,貸主が単に貸すと約し,借主が返還すると約する当事者の合意のみで成立する消費貸借契約をいう。

消費貸借契約を要物契約とすることに合理性がない以上,民法587条を強行規定と解すべきでなく,諾成的消費貸借を認めるべきであるとするのが通説である。判例も,以下のように,諾成的消費貸借を有効とする前提に立っている。

諾成的消費貸借を認めるとすると,貸主と借主の間で金100万円の貸借の約束をすれば,現金の授受がない間にも,貸主は100万円を交付すべき債務(先履行義務)を負い,その後,借主は100万円を返還すべき債務を負うということになる。

諾成的消費貸借契約の場合に,もしも,貸主が目的物を交付しないで返還請求をした場合には,貸主はどのように対応すべきだろうか。

要物契約の場合には,貸主は,契約の不成立を主張すれば足りた(請求原因の否認)。これに対して,諾成的消費貸借契約の場合には,借主は不受領の抗弁を主張すればよいとの見解がある[法務総研・債権法U(1997)71頁]。しかし,諾成的消費貸借契約の場合においても,貸主は,返還請求の前提として,目的物の交付があったことについて,主張・立証責任がある。したがって,借主は,貸主が立証すべき「目的物の交付がなされたこと」を否認すれば足りると解すべきである。

なお,特定融資枠契約に関する法律は,以下のように,諾成消費貸借契約を明文で認めるに至っている。

特定融資枠契約に関する法律 第2条(定義)
この法律において「特定融資枠契約」とは,一定の期間及び融資の極度額の限度内において,当事者の一方の意思表示により当事者間において当事者の一方を借主として金銭を目的とする消費貸借を成立させることができる権利を相手方が当事者の一方に付与し,当事者の一方がこれに対して手数料を支払うことを約する契約であって,意思表示により借主となる当事者の一方が契約を締結する時に株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律(昭和49年法律第22号)第二条に規定する株式会社であるものをいう。

消費貸借契約の成立


消費貸借が成立するためには,(1)当事者の合意と(2)目的物の授受が必要である。

第587条(消費貸借)
消費貸借は,当事者の一方が種類,品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって,その効力を生ずる。

合意

借主が貸主から受け取る物と同種,同等,同量の物を返還することを約し,貸主がこれを承諾することである。返還の時期,場所,方法,利息の有無は自由に定め得る。

目的物の授受

目的物が現実に授受されることによって成立するのが原則であるが,今日においては必ずしも現実の授受がなくても,以下のように,これと同一視されるべき経済上の価値の移転があれば,それによって消費貸借は成立するとされている。

このように,代物交付が許される場合には,以下の問題が生じる。

  1. 消費貸借が成立する時期は,代物交付時か,それとも,現金化されたときか。
  2. 代物を現金化したときにそれが代物の額面に満たないという場合に,いずれの額について消費貸借が成立するのか。

なお,現実の商取引に基づいて振り出される商業手形とは異なり,例えば,被融通者が,経済的に信用のある融通者Aに依頼して約束手形を振り出してもらい,これをCに割り引いてもらって金銭を入手するというような融通手形については,判例は,その授受がなされただけでは消費貸借は成立しないとしている。

以上のように,合意と目的物の授受は,必ずしも同時になされる必要はない。先にも述べたように,実際上,金融界では,あらかじめ公正証書を作り,抵当権を設定して,その登記と同時に金銭を授受する慣行がある。このように金銭の授受以前に作成された公正証書等も,有効と解されている。


消費貸借の効力


貸主の担保責任(民法590条)

第590条(貸主の担保責任)
@利息付きの消費貸借において,物に隠れた瑕疵があったときは,貸主は,瑕疵がない物をもってこれに代えなければならない。この場合においては,損害賠償の請求を妨げない。
A無利息の消費貸借においては,借主は,瑕疵がある物の価額を返還することができる。この場合において,貸主がその瑕疵を知りながら借主に告げなかったときは,前項の規定を準用する。

(参考)

第551条(贈与者の担保責任)
@贈与者は,贈与の目的である物又は権利の瑕疵又は不存在について,その責任を負わない。ただし,贈与者がその瑕疵又は不存在を知りながら受贈者に告げなかったときは,この限りでない。
A負担付贈与については,贈与者は,その負担の限度において,売主と同じく担保の責任を負う。
第569条(債権の売主の担保責任)
@債権の売主が債務者の資力を担保したときは,契約の時における資力を担保したものと推定する。
A弁済期に至らない債権の売主が債務者の将来の資力を担保したときは,弁済期における資力を担保したものと推定する。
第570条(売主の瑕疵担保責任)
売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは,第566条〔地上権等がある場合等における売主の担保責任〕の規定を準用する。ただし,強制競売の場合は,この限りでない。

返還の時期(民法412条,591条,なお,137条参照)

第591条(返還の時期)
@当事者が返還の時期を定めなかったときは,貸主は,相当の期間を定めて返還の催告をすることができる。
A借主は,いつでも返還をすることができる。
第136条(期限の利益及びその放棄)
@期限は,債務者の利益のために定めたものと推定する。
A期限の利益は,放棄することができる。ただし,これによって相手方の利益を害することはできない。
第137条(期限の利益の喪失)
次に掲げる場合には,債務者は,期限の利益を主張することができない。
一 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。
二 債務者が担保を滅失させ,損傷させ,又は減少させたとき。
三 債務者が担保を供する義務を負う場合において,これを供しないとき。

返還の場所(民法484条後段)

第484条(弁済の場所)
弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは,特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において,その他の弁済は債権者の現在の住所において,それぞれしなければならない。

返還の目的物(民法587条)

返還の目的物は,種類,品等,数量の同じ物である(民法587条)。目的物が返還不能になったときは,民法592条によるが,金銭債権の場合には,民法402条,419条の例外がある。

第592条(価額の償還)
借主が貸主から受け取った物と種類,品質及び数量の同じ物をもって返還をすることができなくなったときは,その時における物の価額を償還しなければならない。ただし,第402条第2項に規定する場合は,この限りでない。
第402条(金銭債権)
@債権の目的物が金銭であるときは,債務者は,その選択に従い,各種の通貨で弁済をすることができる。ただし,特定の種類の通貨の給付を債権の目的としたときは,この限りでない。
A債権の目的物である特定の種類の通貨が弁済期に強制通用の効力を失っているときは,債務者は,他の通貨で弁済をしなければならない。
3 前二項の規定は,外国の通貨の給付を債権の目的とした場合について準用する。
第419条(金銭債務の特則)
@金銭の給付を目的とする債務の不履行については,その損害賠償の額は,法定利率によって定める。ただし,約定利率が法定利率を超えるときは,約定利率による。
A前項の損害賠償については,債権者は,損害の証明をすることを要しない。
3 第一項の損害賠償については,債務者は,不可抗力をもって抗弁とすることができない。

消費貸借の終了


返還時期の到来によって終了する。返還時期の定めのない場合には,相当の期間を定めた催告(民法591条1項)に応じて,借主からの返還(民法5912項)がなされたときに終了する。

第591条(返還の時期)
@当事者が返還の時期を定めなかったときは,貸主は,相当の期間を定めて返還の催告をすることができる。
A借主は,いつでも返還をすることができる。

消費貸借における利息


最大判昭43・11・13民集22巻12号2526頁[民法判例百選U(2001)第56事件]

利息制限法所定の制限をこえる金銭消費貸借上の利息・損害金を任意に支払った債務者は,制限超過部分の充当により計算上元本が完済となったときは,その後に債務の存在しないことを知らないで支払った金額の返還を請求することができる。

事案を単純化した場合の利息計算モデル

No. 返済 A.
日数
B.
返済額
C.
法定利息
D.
過払い金
E.
残金
月利:7%
年利:0.84 年利:0.18 B.-C. E.-過払い金
500,000
×0.07
E.×A.×
0.18/365
初期値
500,000
1 1956 5 31 31 35,000 7,644 27,356 472,644
2 6 30 30 35,000 6,993 28,007 444,636
3 7 31 31 35,000 6,797 28,203 416,434
4 8 31 31 35,000 6,366 28,634 387,800
5 9 30 30 35,000 5,737 29,263 358,537
6 10 31 31 35,000 5,481 29,519 329,019
7 11 30 30 35,000 4,868 30,132 298,886
8 12 31 31 35,000 4,569 30,431 268,456
9 1957 1 31 31 35,000 4,104 30,896 237,560
10 2 28 28 35,000 3,280 31,720 205,840
11 3 31 31 35,000 3,147 31,853 173,987
12 4 30 30 35,000 2,574 32,426 141,561
13 5 31 31 35,000 2,164 32,836 108,725
14 6 30 30 35,000 1,609 33,391 75,333
15 7 31 31 35,000 1,152 33,848 41,485
16 8 31 31 35,000 634 34,366 7,119
17 9 30 30 35,000 105 34,895 -27,775
18 10 31 31 35,000 -425 35,425 -63,200

【課題V-2】利息制限法,貸金業法,出資法のそれぞれに関する利息規制を比較し,以下の順序で,利息に関する刑事違法,民事無効(グレー・ゾーン),適法の関係を簡潔に説明しなさい。

民事無効 刑事違法
民法 90条,705条
利息制限法 1条 元本が10万円未満 年2割超過
元本が10万円〜100万円未満 年1割8分超過
元本が100万円以上の場合 年1割5分超過
貸金業法 42条の2 貸金業者 年109.5パーセント超過
43条 貸金業者 年29.2パーセント超過
出資法 5条2項 貸金業者 年29.2パーセント
5条1項 貸金業者以外 年109.5パーセント
問1 出資法が定める利息の最高限度は何パーセントか。貸主によって,その限度は異なるか。
問2 貸金業法が適用される場合,貸金業者は,最高で何パーセントの利息を受け取ることができるか。
問3 利息制限法が定める最高限度は何パーセントか。貸金額によってその利率は異なるか。
問4 利息のグレー・ゾーンとは何か。その範囲の利息は,支払わなければならないか。もし支払った場合には,返還請求が可能か。可能として,その条件はどのようなものか。

参照条文

民法

第705条(債務の不存在を知ってした弁済)
債務の弁済として給付をした者は,その時において債務の存在しないことを知っていたときは,その給付したものの返還を請求することができない。

利息制限法(昭和二十九年五月十五日法律第百号) 最終改正:平成一一年一二月一七日法律第一五五号

第1条(利息の最高限)
@金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約は,その利息が左の利率により計算した金額をこえるときは,その超過部分につき無効とする。
 元本が10万円未満の場合 年2割
 元本が10万円以上100万円未満の場合 年1割8分
 元本が100万円以上の場合 年1割5分
A債務者は,前項の超過部分を任意に支払ったときは,同項の規定にかかわらず,その返還を請求することができない。
第2条(利息の天引)
利息を天引した場合において,天引額が債務者の受領額を元本として前条第一項に規定する利率により計算した金額をこえるときは,その超過部分は,元本の支払に充てたものとみなす。
第3条(みなし利息)
前2条の規定の適用については,金銭を目的とする消費貸借に関し債権者の受ける元本以外の金銭は,礼金,割引金,手数料,調査料その他何らの名義をもってするを問わず,利息とみなす。但し,契約の締結及び債務の弁済の費用は,この限りでない。
第4条(賠償額予定の制限)
@金銭を目的とする消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定は,その賠償額の元本に対する割合が第1条第1項に規定する率の1.46倍を超えるときは,その超過部分につき無効とする。
A第1条第2項の規定は,債務者が前項の超過部分を任意に支払った場合に準用する。
B前2項の規定の適用については,違約金は,賠償額の予定とみなす。

貸金業の規制等に関する法律(昭和58年5月13日法律第32号)

第17条(書面の交付)
@貸金業者は,貸付けに係る契約を締結したときは,遅滞なく,内閣府令で定めるところにより,次の各号に掲げる事項についてその契約の内容を明らかにする書面をその相手方に交付しなければならない。
 一 貸金業者の商号,名称又は氏名及び住所
 二 契約年月日
 三 貸付けの金額
 四 貸付けの利率
 五 返済の方式
 六 返済期間及び返済回数
 七 賠償額の予定(違約金を含む。以下同じ。)に関する定めがあるときは,その内容
 八 日賦貸金業者である場合にあっては,第14条第五号に掲げる事項
 九 前各号に掲げるもののほか,内閣府令で定める事項
A貸金業者は,貸付けに係る契約について保証契約を締結しようとするときは,当該保証契約を締結するまでに,内閣府令で定めるところにより,次に掲げる事項を明らかにし,当該保証契約の内容を説明する書面を当該保証人となろうとする者に交付しなければならない。
 一 貸金業者の商号,名称又は氏名及び住所
 二 保証期間
 三 保証金額
 四 保証の範囲に関する事項で内閣府令で定めるもの
 五 保証人が主たる債務者と連帯して債務を負担するときは,その旨
 六 日賦貸金業者である場合にあっては,第14条第五号に掲げる事項
 七 前各号に掲げるもののほか,内閣府令で定める事項
B貸金業者は,貸付けに係る契約について保証契約を締結したときは,遅滞なく,内閣府令で定めるところにより,当該保証契約の内容を明らかにする事項で前項各号に掲げる事項その他の内閣府令で定めるものを記載した書面を当該保証人に交付しなければならない。
C貸金業者は,貸付けに係る契約について保証契約を締結したときは,遅滞なく,内閣府令で定めるところにより,第1項各号に掲げる事項について当該貸付けに係る契約の内容を明らかにする書面を当該保証人に交付しなければならない。貸金業者が,貸付けに係る契約で保証契約に係るものを締結したときにおいても,同様とする。
第18条(受取証書の交付)
@貸金業者は,貸付けの契約に基づく債権の全部又は一部について弁済を受けたときは,その都度,直ちに,内閣府令で定めるところにより,次の各号に掲げる事項を記載した書面を当該弁済をした者に交付しなければならない。
 一 貸金業者の商号,名称又は氏名及び住所
 二 契約年月日
 三 貸付けの金額(保証契約にあっては,保証に係る貸付けの金額。次条,第20条及び第21条第2項において同じ。)
 四 受領金額及びその利息,賠償額の予定に基づく賠償金又は元本への充当額
 五 受領年月日
 六 前各号に掲げるもののほか,内閣府令で定める事項
A前項の規定は,預金又は貯金の口座に対する払込みその他内閣府令で定める方法により弁済を受ける場合にあっては,当該弁済をした者の請求があった場合に限り,適用する。
第42条の2(高金利を定めた金銭消費貸借契約の無効)
@貸金業を営む者が業として行う金銭を目的とする消費貸借の契約(手形の割引,売渡担保その他これらに類する方法によって金銭を交付する契約を含む。)において,年109.5パーセント(2月29日を含む1年については年109.8パーセントとし,1日当たりについては0.3パーセントとする。)を超える割合による利息(債務の不履行について予定される賠償額を含む。)の契約をしたときは,当該消費貸借の契約は,無効とする。
A出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律第5条第4項から第7項までの規定は,前項の利息の契約について準用する。
第43条(任意に支払った場合のみなし弁済)
@貸金業者が業として行う金銭を目的とする消費貸借上の利息(利息制限法(昭和29年法律第100号)第3条の規定により利息とみなされるものを含む。)の契約に基づき,債務者が利息として任意に支払った金銭の額が,同法第1条第1項に定める利息の制限額を超える場合において,その支払が次の各号に該当するときは,当該超過部分の支払は,同項の規定にかかわらず,有効な利息の債務の弁済とみなす。
 一 第17条第1項(第24条第2項,第24条の2第2項,第24条の3第2項,第24条の4第2項及び第24条の5第2項において準用する場合を含む。以下この号において同じ。)の規定により第17条第1項に規定する書面を交付している場合又は同条第2項から第4項まで(第24条第2項,第24条の2第2項,第24条の3第2項,第24条の4第2項及び第24条の5第2項において準用する場合を含む。以下この号において同じ。)の規定により第17条第2項から第4項までに規定するすべての書面を交付している場合におけるその交付をしている者に対する貸付けの契約に基づく支払
 二 第18条第1項(第24条第2項,第24条の2第2項,第24条の3第2項,第24条の4第2項及び第24条の5第2項において準用する場合を含む。以下この号において同じ。)の規定により第18条第1項に規定する書面を交付した場合における同項の弁済に係る支払
A前項の規定は,次の各号に掲げる支払に係る同項の超過部分の支払については,適用しない。
 一 第36条の規定による業務の停止の処分に違反して貸付けの契約が締結された場合又は当該処分に違反して締結された貸付けに係る契約について保証契約が締結された場合における当該貸付けの契約又は当該保証契約に基づく支払
 二 物価統制令第12条の規定に違反して締結された貸付けの契約又は同条の規定に違反して締結された貸付けに係る契約に係る保証契約に基づく支払
 三 出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律第5条第2項の規定に違反して締結された貸付けに係る契約又は当該貸付けに係る契約に係る保証契約に基づく支払
B前2項の規定は,貸金業者が業として行う金銭を目的とする消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定に基づき,債務者が賠償として任意に支払った金銭の額が,利息制限法第4条第1項に定める賠償額の予定の制限額を超える場合において,その支払が第1項各号に該当するときに準用する。

出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律(昭和29年6月23日法律第195号) 最終改正:平成15年8月1日法律第136号

第1条(出資金の受入の制限)
何人も,不特定且つ多数の者に対し,後日出資の払いもどしとして出資金の全額若しくはこれをこえる金額に相当する金銭を支払うべき旨を明示し,又は暗黙のうちに示して,出資金の受入をしてはならない。
第2条(預り金の禁止)
@業として預り金をするにつき他の法律に特別の規定のある者を除く外,何人も業として預り金をしてはならない。
A前項の「預り金」とは,不特定かつ多数の者からの金銭の受入れであって,次に掲げるものをいう。
 一 預金,貯金又は定期積金の受入れ
 二 社債,借入金その他何らの名義をもってするを問わず,前号に掲げるものと同様の経済的性質を有するもの
第3条(浮貸し等の禁止)
金融機関(銀行,信託会社,保険会社,信用金庫,信用金庫連合会,労働金庫,労働金庫連合会,農林中央金庫,商工組合中央金庫並びに信用協同組合及び農業協同組合,水産業協同組合その他の貯金の受入れを行う組合をいう。)の役員,職員その他の従業者は,その地位を利用し,自己又は当該金融機関以外の第三者の利益を図るため,金銭の貸付,金銭の貸借の媒介又は債務の保証をしてはならない。
第4条(金銭貸借の媒介手数料の制限)
@金銭の貸借の媒介を行う者は,その媒介に係る貸借の金額の百分の五に相当する金額をこえる手数料の契約をし,又はこれをこえる手数料を受領してはならない。
A金銭の貸借の媒介を行う者がその媒介に関し受ける金銭は,礼金,調査料その他何らの名義をもってするを問わず,手数料とみなして前項の規定を適用する。
第5条(高金利の処罰)
@金銭の貸付けを行う者が,年109.5五パーセント(2月29日を含む1年については年109・8パーセントとし,一日当たりについては0.3パーセントとする。)を超える割合による利息(債務の不履行について予定される賠償額を含む。以下同じ。)の契約をしたときは,5年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金に処し,又はこれを併科する。
A前項の規定にかかわらず,金銭の貸付けを行う者が業として金銭の貸付けを行う場合において,年29・2パーセント(2月29日を含む1年については年29・28パーセントとし,一日当たりについては0.08パーセントとする。)を超える割合による利息の契約をしたときは,5年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金に処し,又はこれを併科する。
B前2項に規定する割合を超える割合による利息を受領し,又はその支払を要求した者は,5年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金に処し,又はこれを併科する。
C前3項の規定の適用については,貸付けの期間が15日未満であるときは,これを15日として利息を計算するものとする。
D第1項から第3項までの規定の適用については,利息を天引する方法による金銭の貸付けにあっては,その交付額を元本額として利息を計算するものとする。
E1年分に満たない利息を元本に組み入れる契約がある場合においては,元利金のうち当初の元本を超える金額を利息とみなして第1項から第3項までの規定を適用する。
F金銭の貸付けを行う者がその貸付けに関し受ける金銭は,礼金,割引料,手数料,調査料その他何らの名義をもってするを問わず,利息とみなして第1項及び第2項の規定を適用する。貸し付けられた金銭について支払を受領し,又は要求する者が,その受領又は要求に関し受ける元本以外の金銭についても,同様に利息とみなして第3項の規定を適用する。
第6条(物価統制令との関係)
金銭の貸付についての利息及び金銭の貸借の媒介についての手数料に関しては,物価統制令(昭和21年勅令第118号)第9条ノ2(不当高価契約等の禁止)の規定は,適用しない。
第7条(金銭の貸付け等とみなす場合)
第3条から前条までの規定の適用については,手形の割引,売渡担保その他これらに類する方法によってする金銭の交付又は授受は,金銭の貸付け又は金銭の貸借とみなす。
第8条(その他の罰則1)
@何らの名義をもってするを問わず,また,いかなる方法をもってするを問わず,第5条第1項から第3項までの規定に係る禁止を免れる行為をした者は,5年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金に処し,又はこれを併科する。
A次の各号のいずれかに該当する者は,3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し,又はこれを併科する。
 一 第1条,第2条第1項,第3条又は第4条第1項の規定に違反した者
 二 何らの名義をもってするを問わず,また,いかなる方法をもってするを問わず,前号に掲げる規定に係る禁止を免れる行為をした者
B前項の規定中第1条及び第3条に係る部分は,刑法(明治40年法律第45号)に正条がある場合には,適用しない。
第9条(その他の罰則2)
@法人(法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。以下この項及び次項において同じ。)の代表者又は法人若しくは人の代理人,使用人その他の従業者が法人又は人の業務又は財産に関して次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは,その行為者を罰するほか,その法人に対して当該各号に定める罰金刑を,その人に対して各本条の罰金刑を科する。
 一 第5条第1項から第3項まで又は前条第1項 3,000万円以下の罰金刑
 二 前条第2項(第三条に係る部分を除く。) 同項の罰金刑
A前項の規定により第5条第1項から第3項まで又は前条第1項の違反行為につき法人又は人に罰金刑を科する場合における時効の期間は,これらの規定の罪についての時効の期間による。
B第1項の規定により法人でない社団又は財団を処罰する場合においては,その代表者又は管理人がその訴訟行為につきその社団又は財団を代表するほか,法人を被告人とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。

参考文献


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