日本の家族と民法

−「全人格が無条件で肯定的に受け入れられる場」という視点からの「家族法の再構築」をめざして−

作成:2004年4月6日

名古屋大学大学院法学研究科教授 加賀山 茂


はじめに


日本の家族を知るために,どんな本を読めばよいかと尋ねられたら,私は躊躇することなく,[ベネディクト・菊と刀(1972)]を読むことを薦める。戦前の日本の家族の実態が,文化人類学的な観点から,「報恩」,「義理」,「人情」等のキーワードを通じて徹底的に分析されており,今なお,日本人のものの考え方の源流を最もよく理解できる最高級の書物だからである。その第3章に,日本の家族を知る上で,最も重要な手がかりとなる,以下のような記述(59-60頁)が見られる。

アメリカでは,われわれがわれわれの家族のふところに戻ってきた時には,形式的な礼儀は一切脱ぎ捨ててしまう。ところが,日本では礼儀作法が学ばれ,細心の注意をもって履行されるのは,まさに家庭においてである
母親は,嬰児を背中に縛りつけて歩いているうちから,自分の手で嬰児の頭を下げさせておじぎをすることを教える。そして,子供がよちよち歩きするころに,まず最初に教えられることは,父親や兄に対する礼儀を守ることである。妻はに頭を下げ,子供は父親に頭を下げ,弟はに頭を下げ,女の子は年齢を問わずその男兄弟のすべてに頭を下げる。
それは決して無内容な身振りではない。それは,頭を下げる人間が,本当は自分で勝手に処理したいと考える事柄において,相手が意のままふるまう権利を承認し,受礼者の方は受礼者の方でまた,その地位に当然ふりかかってくる何らかの責任を承認することを意味する。性別と世代の区別と長子相続権とに立脚した階層制度が家庭生活の根幹になっている

戦前の日本の家庭で以上のような躾が厳格に行われていた真の意味は,明治31年(1898年)民法に,以下のように,家督相続の順位として,明文で規定されていた。

第970条 被相続人ノ家族タル直系卑属ハ左ノ規定ニ従ヒ家督相続人ト為ル
 一 親等ノ異ナリタル者ノ間ニ在リテハ其近キ者ヲ先ニス
 二 親等ノ同シキ者ノ問ニ在リテハ男ヲ先ニス
 三 親等ノ同シキ男又ハ女ノ間ニ在リテハ嫡出子ヲ先ニス
 四 親等ノ同シキ者ノ間ニ在リテハ女ト雖モ嫡出子及ヒ庶子ヲ先ニス〔昭和17法7本号改正〕
  <昭和一七法七による改正前の条文>
   四 親等ノ同シキ嫡出子,庶子及ヒ私生子ノ間ニ在リテハ嫡出子及ヒ庶子ハ女ト雖モ之ヲ私生子ヨリ先ニス
 五 前四号ニ掲ケタル事項ニ付キ相同シキ者ノ間ニ在リテハ年長者ヲ先ニス
2 第836条〔準正〕ノ規定ニ依リ又ハ養子縁組ニ因リテ嫡出子タル身分ヲ取得シタル者ハ家督相続ニ付テハ其嫡出子タル身分ヲ取得シタル時ニ生マレタルモノト看倣ス

戦後,日本国憲法の制定に基づき,民法の大改正を通じて,家制度が廃止され,家督相続も廃止されたにもかかわらず,今なお,少なからぬ家庭で,男性優先(男尊女卑)・年長者優先の礼儀作法躾として実施されている。

「家」制度は廃止されたのであるから,家族法を学習するに際して,今さら「家」制度を学ぶ必要があるのだろうかという疑問が生じるかもしれない。確かに,現行民法の規定は,「家」制度のうち戸主による家族の支配,家督相続制度という「家」制度の根幹部分を削除してはいる。しかし,そのような「家」制度のバックボーンである男尊女卑・年長者優先の考え方が民法から完全に取り除かれたわけではない。以下に詳しく検討するように,現行民法にも,現行戸籍法にも,「家」制度の名残りが,存在しているのであり,現行法の諸規定のうち,どの規定に「家」制度の名残りが存在するのか,なぜ,そのような規定が廃止されずに残されているのかを検討するためには,「家」制度とはどのような制度であったのかを知る必要がある。

家族法の学習を始めるに際して,少なくとも,明治民法には,「家族」の定義があり,それが,「家」制度の根本思想に裏付けられていたために,現行法では,「家族」の定義も含めて,家族という用語自体が削除されたという事実は認識しておく必要があろう。つまり,日本の家族を知ろうとすれば,「家」制度が廃止されたたために「家族」の定義自体を欠くにいたった現行民法ではなく,「家族」の定義を有していた明治31年民法にさかのぼってその内容を知る必要があるのである。

明治民法を理解することによって,はじめて,日本の社会に今なお根強く残っている,男女差別,年長者優遇,非嫡出子差別等のいわれのない差別の源や,今なお結婚式や結婚披露宴で使われている「ご両家」という言葉の意味も,背景知識を含めて,正確に知ることができるであろう。


T 明治民法の「家」制度が日本の家族に及ぼした影響


日本の家族は,明治31年(1898年)民法を通じて,戸主(家長)による統制的な組織へと変容した。明治31年民法の特色は,以下の通りである。

1 家制度

憲法24条および現行民法によって廃止された「家」制度の概要は,以下の通りである。この制度に基づいて,婚姻,離婚,その他の家族制度が構成されていた。

  1. 家は,戸主(家長)とその家族によって構成される(旧732条)。家族は家長である戸主の命令・監督に服する。その反面,戸主は,家族を扶養する義務を負う(旧747条)。
  2. 家の名を氏といい,戸主および家族は,すべて同一の氏を称する(旧746条)。
  3. 戸主の地位は,家督相続によって,以下の順序に従って,継承される(旧970条)。
    1. 戸主の直系卑属のうち,親等の最も近い者が優先
    2. 親等が同じ場合は,男が女に優先
    3. 親等が同じ男,親等が同じ女の場合には,嫡出子が非嫡出子に優先
    4. 親等の同じ嫡出子,庶子(父が認知した子),私生子の間では,女であっても,嫡出子,庶子が優先
    5. すべて同じ場合には,年長者が優先
      • 家督相続を定めるこの順序は,社会に投影され,男尊女卑,長子・年長者優先,非嫡出子差別の考え方が,日本社会に深く根づくことになった。
      • 家制度が廃止された後も,戸籍を通じて,戸籍筆頭者とその他の家族との区別,長男・長女と第二子との区別,嫡出子と非嫡出子との区別が,今なお残されており,これらの差別が根深く続いている[なくそう婚外子・女性への差別(2004)]。

2 婚姻

家制度の下で,婚姻・離婚は,以下のようにコントロールされており,婚姻によって妻となった女は,愛という名の無償労働を強いられただけでなく,原則として家督相続権は認められず(旧970条,例外として旧982条参照),遺産相続権についても子がいない場合にのみ認められたに過ぎない(旧996条)。それにもかかわらず,妻には,過酷な「嫁」の義務が課せられていた。たとえば,妻には,夫にはかせられていなかった厳格な貞操義務(旧813条2号)が課せられていた。さらに,扶養を受ける権利は,直系尊属,直系卑属についで第3位であるにもかかわらず(旧957条1項),扶養の義務だけは,直系卑属,直系尊属に優先して第1順位に位置づけられていた(旧955条1項)。

  1. 婚姻適齢は,男が17歳,女が15歳であった(旧765条)。
  2. 婚姻は,家と家との契約であった。したがって,婚姻には,常に,家長である戸主の同意が必要とされた(旧750条)。さらに,男は30歳,女は25歳になるまでは,父母の同意も必要であった(旧772条1項)。
  3. 婚姻によって妻は夫の家に入る(旧788条)。その結果,妻は氏を夫の家の氏に変更し,戸主と夫の支配と庇護の下に入る。
  4. 女は,婚姻によって無能力者となる。たとえ,女が婚姻前は成年として能力者であっても,妻となると,無能力者となってしまい,重要な法律行為をするには,常に夫の同意を得なければならない(旧14条〜18条)。
  5. 夫婦財産については,夫婦財産契約も認められていたが,ほとんど利用されず,法定夫婦財産制によって規律されていた。その規定によると,夫が妻の財産を管理する(旧801条)ともに,婚姻より生ずる一切の負担は夫が負担する(旧798条)。また,妻(又は入夫)を保護するため,妻(又は入夫)が婚姻以前から有する財産及び婚姻中自己の名において得た財産は,その特有財産とし,夫婦のいずれに属するか分明でない財産は夫(又は女戸主)の財産と推定する(旧807条)とされていた。
  6. 法律上,貞操義務を負うのは,妻だけであった。離婚原因も,「妻が姦通をなしたるとき」であり,夫が姦通してもそれだけでは離婚原因とはならなかった(旧813条2号)。夫の姦通が離婚原因となるのは,強姦をするなど,「夫が姦淫罪に因りて刑に処せられたるとき」のみである(旧813条3号)。また,貞操義務が刑法によって義務づけられていたのも妻だけである。すなわち,姦通罪で罰せられるのは,妻の側だけであった(旧刑法353条)。
  7. 夫の死亡,又は,夫との離婚によって婚姻が解消した場合,夫は,次の日から再婚が可能であるのに対して,妻だけは再婚するために,6ヶ月を経なければならない(旧767条)。

3 親子

家制度の下では,親子は,以下のように,支配・従属の関係にあり,子の権利は認められず,子の間で,男女・年齢等による差別が制度化されていた。

  1. 戸主は,戸主権を通じて家族を支配していた(旧749条〜751条)。また,夫は,夫権を通じて妻を支配し,さらに,親権を通じて子を支配する(旧877条)という支配の構造が貫徹していた。つまり女・子どもは支配と保護の対象であった。親権者は,原則として,父であり(旧877条1項),父が知れないとき,死亡したとき,家を去ったとき,または,親権を行うことができないときのみ,例外的に,母が親権を行使することができた(旧877条2項)。
  2. 子は,成年になり,かつ,独立の生計が立てれるようになるまでは,親に服従するものとされ(旧877条),子どもの権利は認められていなかった。
  3. 家督相続の順位に従って,子のうち,長男(推定家督相続人)だけが特権を有しており,子は平等には扱われなかった。
  4. 嫡出子と非嫡出子(庶子と私生子)とは,家督相続の順位でも差別され(旧970条),かつ,相続分についても,非嫡出子は嫡出子の2分の1であった(旧1004条)。

U 現行民法による「家」制度の廃止とその課題


1946年に成立した日本国憲法の第24条により,婚姻・離婚等の家族に関する法律は,個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されるべきことが示された。

第24条 婚姻は,両性の合意のみに基いて成立し,夫婦が同等の権利を有することを基本として,相互の協力により,維持されなければならない。
(2) 配偶者の選択,財産権,相続,住居の選定,離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては,法律は,個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して,制定されなければならない。

これに基づいて改正された現行民法は,明治時代以来の「家」制度を廃止して,個人を基礎に置き,男女の平等を徹底して実現しようとするものであった。

しかし,この改正は,ごく短期間で行われたため,今から見ると,不十分な箇所が随所に見られる。例えば,婚姻適齢,婚姻禁止期間における男女間の不平等が残ったままであり,主婦の場合,家族財産に対する共有も認められていない。また,非嫡出子の相続分が嫡出子の2分の1とする婚外子差別は,依然として残存している。さらに,別姓夫婦など,家族の多様性を認める制度も存在しない。

そこで,現行民法の親族・相続編の制定から50年を経過しようとする頃から,家族法の改正が論議されるようになった。1992年から開始された婚姻制度等に関する民法改正の作業は,1996年に「民法の一部を改正する法律案要綱」として結実するが,保守的な議員の抵抗にあって法案成立のめどは立っていない。しかし,この改正作業は,現行民法の親族・相続編に対する,従来の甘過ぎる評価を一変させた点で,大きな意味を持つ。


V 民法改正要綱案の概要とその限界


1996年2月26日に法制審議会が答申した民法改正要綱案は,女性の自立化の傾向を踏まえた上で,現行民法が,その第1条の2で掲げた「個人の尊厳と両性の本質的平等」の理想にさらに近づこうとする試みである。その特色は,以下の4点にある。

  1. 婚姻適齢の男女平等化
  2. 選択的夫婦別氏の導入
  3. 5年以上の婚姻の本旨に反する別居を裁判離婚の原因とする
  4. 婚外子の相続分差別の撤廃

この民法改正要綱案は,将来の民法のあり方を明確に示すものであり,重要な意味を有している。しかしながら,この改正案については,選択的夫婦別氏の導入をめぐって論議が起こり,選択的でも夫婦別氏を認めることは,「家族の崩壊を招く」とか,「家族の一体感が損なわれる」として強硬な反対にあって,いまだに実現されていない。

民法改正要綱案は,現行民法の親族・相続編(家族法)が憲法24条を十分に反映したものとなっていないことの反省の上に立って,国民の人生観・価値観の多様化を促進し,女子差別の撤廃,婚外子の相続分差別の撤廃などを目標として作成されたものである。

しかしながら,民法改正要綱案は,女だけに課せられた婚姻禁止期間を180日から100日に短縮はしたものの,結果的に女子差別を温存するなど,不徹底な側面を有している。また,家制度の残滓である戸籍を廃止し,個人登録簿へと変更するというような,個人の尊厳とプライバシーを尊重する提案にはなっていない。


おわりに


明治民法の家制度を廃止し,個人の尊厳と両性の本質的平等を実現するという目標で改正された現行民法には,「家族」という用語は存在しない[大村・家族法(2002)23頁]。「家」制度という封建的な制度を廃止するために,民法旧規定には存在した「戸主及ヒ家族」という章を用語を含めてすべて抹消してしまったため,家族に関する規定を欠いたままなのである。そして,民法改正要綱にも,家族をどのように定義するかの展望は示されていない。

確かに,「家」制度におけるような「戸主(家長)」と「家族」という封建的な関係は否定されるべきである。しかし,夫婦を核として,未成熟子を養育する目的を併せもったグループとしての「家族」という概念は,過去のものとして日本人の頭から消えてしまったわけではない。というのも,「国のかたち」を決めた憲法にも,日本の今後の社会形成に重要な意味をもつ男女共同参画社会基本法にも,さらには,臓器の移植に関する法律にも,「家族」という用語が,定義されることなく使われているからである。その点から見ても,民法が,「家」制度を廃止するためとはいえ,「家族」という言葉をその法文から抹殺してしまったことは,不幸なことであった。

現段階において,家族をどのようなものとして定義するかについて見解の統一が見られないとしても,家族概念の再構築に際しては,人間が生まれたときに,プラスやマイナスが評価されることなく,何の差別もなしに,全人格が肯定的に受容される人間関係の場が家族であったこと,そして,家族によって育てられ,やがて,自立できるようになった次世代の二人が,同じく,プラスやマイナスを問うことなく,全人格が肯定的に受け入れられる場として,すなわち,一緒にいるだけで理由なしに幸せと感じ,二人の心と体がともに癒される場として家族を再構築しているということに思いをいたすべきであろう。

民法旧規定の歴史を振り返りながら,憲法男女共同参画社会基本法に謳われた「家族」という概念を,全く新しい観点から再構築することが今後の課題である。

その際に,ぜひとも留意しなければならないのは,明治31年(1898年)民法から昭和23年(1948年)の民法大改正にいたるまで,50年にわたって男尊女卑の法制度を形成・維持してきたことに関して,男性から女性への反省および謝罪並びに男女差別を解消するための特別の措置が必要ではないかという点である。明治民法は,妻に無能力を強要し(旧14条〜18条),妻にのみ貞操義務を課し(旧813条2号),さらに,妻の相続権を極端に制限しながら(旧982条,996条),妻の扶養義務だけは最大化してきた(旧955条)。つまり,妻をいわば奴隷化してきた。このことについて,そのような,いわば奴隷制を認めていた法律を廃止したからといって,それで済むと考えるべきではなかろう。

太平洋戦争に関して,日本国がアジア諸国に謝罪するかどうかが今もさかんに議論されているが,明治民法によって,男性中心の社会が女性の権利を奪ってきたことに対する女性への謝罪は問題とすらなっていない。婚姻適齢や,婚姻禁止期間に関して,今なお歴然とした男女差別が規定され(民法731条,733条),また,夫婦の氏(民法750条)や夫婦財産(民法762条)に関して,実質的に妻の権利が侵害されているのは,そのような反省と謝罪が行われていないからではないだろうか。過去の反省と謝罪からしか,差別の撤廃を含む新しい制度の構築は期しがたい。家族法の再構築に関しても,何らかの形で,立法者である国会を含めた社会全体の反省と謝罪,そしてそれを裏づける,積極的差別是正措置(Affirmative Action)を含めた,差別解消のための特別の措置が是非とも必要であると考える。


理解を深めるための課題


課題1:「家」制度の下においては,「家族」は,どのように定義されていたか。明治31年民法の条文を探してその意味を確実に理解しよう。

課題2:「家」制度とはどのような制度か。明治31年民法の条文のうちから2〜3条引用することによって,その概略を説明してみよう。

課題3:現行民法に「家族」の定義がない理由を歴史的経緯を踏まえて説明してみよう。

課題4:現行民法のうち,家制度の名残をとどめている条文を一定の基準に従って例示する。それぞれの条文について,どのような改正が必要か。民法改正要綱案を参照しながら,各自で検討してみよう。

  1. 条文自体に家制度の下で正当化されていた男尊女卑,長子(年長者)尊重等のように,個人の尊厳や男女の本質的平等に反する考え方がそのまま残っているもの
  2. 条文自体は,個人の尊厳・男女平等となるように改正されたにもかかわらず,実際の運用に際して,個人の尊厳に反したり,男女差別が生じているもの
  3. 条文自体は差別的な規定ではないと思われてきたが,時代の変化に伴って改正が必要となったもの
  4. 条文上は,男女平等であるにもかかわらず,判例(最二判昭37・4・27民集16巻7号1247頁[家族法判例百選〔第6版〕(2002)第27事件] や通説によって,男女不平等や個人の尊厳を害する解釈が実務で定着しているもの

課題5:自分にとって身近な(たとえば,自分・親戚・友人等の)家族の日常行動の中で,憲法24条にいわゆる「個人の尊厳」や「男女の本質的平等」に反すると思われるものに気づいたならば,それが,「家」制度を規定した明治31年民法によって正当化されるかどうかを検討してみよう(プライバシーにかかわることなので,自分の心の中だけで検討すれば足りる)。


参照条文


旧民法

第243条 戸主トハ一家ノ長ヲ謂ヒ 家族トハ戸主ノ配偶者及ヒ其家ニ在ル親族,姻族ヲ謂フ
 2 戸主及ヒ家族ハ其家ノ氏ヲ称ス

民法旧規定

第732条 戸主ノ親族ニシテ其家ニ在ル者及ヒ其配偶者ハ之ヲ家族トス
 2 戸主ノ変更アリタル場合ニ於テハ旧戸主及ヒ其家族ハ新戸主ノ家族トス
第813条 夫婦ノ一方ハ左ノ場合ニ限リ離婚ノ訴ヲ提起スルコトヲ得
 一 配偶者カ重婚ヲ為シタルトキ
 二 カ姦通ヲ為シタルトキ
 三 カ姦淫罪ニ因リテ刑ニ処セラレタルトキ
 四 配偶者カ偽造、賄賂、猥褻、窃盗、強盗、詐欺取財、受寄財物費消、賊物ニ関スル罪若クハ刑法第175条第260条ニ掲ケタル罪ニ因リテ軽罪以上ノ刑ニ処セラレ又ハ其他ノ罪ニ因リテ重禁錮3年以上ノ刑ニ処セラレタルト
 五 配偶者ヨリ同居ニ堪ヘサル虐待又ハ重大ナル侮辱ヲ受ケタルトキ
 六 配偶者ヨリ悪意ヲ以テ遺棄セラレタルトキ
 七 配偶者ノ直系尊属ヨリ虐待又ハ重大ナル侮辱ヲ受ケタルトキ
 八 配偶者カ自己ノ直系尊属ニ対シテ虐待ヲ為シ又ハ之ニ重大ナル侮辱ヲ加へタルトキ
 九 配偶者ノ生死カ3年以上分明ナラサルトキ
 十 婿養子縁組ノ場含ニ於テ離縁アリタルトキ又ハ養子カ家女ト婚姻ヲ為シタル場合ニ於テ離縁若クハ縁組ノ取消アリタルトキ
第970条 被相続人ノ家族タル直系卑属ハ左ノ規定ニ従ヒ家督相続人ト為ル
 一 親等ノ異ナリタル者ノ間ニ在リテハ其近キ者ヲ先ニス
 二 親等ノ同シキ者ノ問ニ在リテハ男ヲ先ニス
 三 親等ノ同シキ男又ハ女ノ間ニ在リテハ嫡出子ヲ先ニス
 四 親等ノ同シキ者ノ間ニ在リテハ女ト雖モ嫡出子及ヒ庶子ヲ先ニス〔昭和17法7本号改正〕
  <昭和一七法七による改正前の条文>
   四 親等ノ同シキ嫡出子,庶子及ヒ私生子ノ間ニ在リテハ嫡出子及ヒ庶子ハ女ト雖モ之ヲ私生子ヨリ先ニス
 五 前四号ニ掲ケタル事項ニ付キ相同シキ者ノ間ニ在リテハ年長者ヲ先ニス
2 第836条〔準正〕ノ規定ニ依リ又ハ養子縁組ニ因リテ嫡出子タル身分ヲ取得シタル者ハ家督相続ニ付テハ其嫡出子タル身分ヲ取得シタル時ニ生マレタルモノト看倣ス

憲法

第24条 婚姻は,両性の合意のみに基いて成立し,夫婦が同等の権利を有することを基本として,相互の協力により,維持されなければならない。
2 配偶者の選択,財産権,相続,住居の選定,離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては,法律は,個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して,制定されなければならない。

民法(現行民法)

現行民法は,家制度を廃止するため,親族編の第2章「戸主及ヒ家族」,相続編の第1章「家督相続」の条文をすべて削除してしまった。

男女共同参画社会基本法

(家庭生活における活動と他の活動の両立)
第6条 男女共同参画社会の形成は,家族を構成する男女が,相互の協力と社会の支援の下に,子の養育,家族の介護その他の家庭生活における活動について家族の一員としての役割を円滑に果たし,かつ,当該活動以外の活動を行うことができるようにすることを旨として,行われなければならない。

臓器の移植に関する法律

(臓器の摘出)
第6条 医師は,死亡した者が生存中に臓器を移植術に使用されるために提供する意思を書面により表示している場合であって,その旨の告知を受けた遺族が当該臓器の摘出を拒まないとき又は遺族がないときは,この法律に基づき,移植術に使用されるための臓器を,死体(脳死した者の身体を含む。以下同じ。)から摘出することができる。
 2 前項に規定する「脳死した者の身体」とは,その身体から移植術に使用されるための臓器が摘出されることとなる者であって脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至ったと判定されたものの身体をいう。
 3 臓器の摘出に係る前項の判定は,当該者が第一項に規定する意思の表示に併せて前項による判定に従う意思を書面により表示している場合であって,その旨の告知を受けたその者の家族が当該判定を拒まないとき又は家族がないときに限り,行うことができる。
 4 臓器の摘出に係る第2項の判定は,これを的確に行うために必要な知識及び経験を有する2人以上の医師(当該判定がなされた場合に当該脳死した者の身体から臓器を摘出し,又は当該臓器を使用した移植術を行うこととなる医師を除く。)の一般に認められている医学的知見に基づき厚生労働省令で定めるところにより行う判断の一致によって,行われるものとする。
 5 前項の規定により第2項の判定を行った医師は,厚生労働省令で定めるところにより,直ちに,当該判定が的確に行われたことを証する書面を作成しなければならない。
 6 臓器の摘出に係る第2項の判定に基づいて脳死した者の身体から臓器を摘出しようとする医師は,あらかじめ,当該脳死した者の身体に係る前項の書面の交付を受けなければならない。
(平一一法一六〇・一部改正)
『臓器の移植に関する法律』の適用に関する指針(ガイドライン)」(1997年10月8日)
  1. 臓器の提出の承諾に関して法に規定する「遺族」の範囲については,一般的,類型的に決まるものではなく,死亡した者の近親者の中から,個々の事案に即し,慣習や家族構成等に応じて判断すべきものであるが,原則として,配偶者,子,父母,孫,祖父母及び同居の親族の承諾を得るものとし,喪主又は祭祀主宰者となるべき者において,前記の「遺族」の総意を取りまとめるものとするのが適当である。ただし,前記の範囲以外の親族から臓器提供に対する異論が提出された場合には,その状況等を把握し,慎重に判断すること。
  2. 脳死の判定を行うことの承諾に関して法に規定する「家族」の範囲についても,上記「遺族」についての考え方に準じた取扱いを行うこと。

参考文献


[ベネディクト・菊と刀(1946)]
ルース・ベネディクト,長谷川松治訳『菊と刀−日本文化の型』社会思想社(1972年)
Ruth Benedict, "The Chrysanthemum and the Sword - Patterns of Japanese Culture",1946
[我妻・親族法(1961)]
我妻栄『親族法』〔法律学全集23〕有斐閣(1961)
[榊原・女性と戸籍(1992)]
榊原富士子『女性と戸籍 夫婦別姓時代に向けて』明石書店(1992)
[二宮・家族法(1999)]
二宮周平『家族法』新世社(1999年)
[二宮・事実婚(2002)]
二宮周平『事実婚』〔叢書・民法総合判例研究〕一粒社(2002年)
[大村・家族法(2002)]
大村敦志『家族法』〔第2版〕有斐閣(2002年)
[家族法判例百選〔第6版〕(2002)]
別冊ジュリスト・家族法判例百選〔第6版〕有斐閣(2002年)
[夫(恋人)からの暴力調査研究会・ドメスティック・バイオレンス(2002)]
「夫(恋人)からの暴力」調査研究会『ドメスティック・バイオレンス』〔新版〕有斐閣(2002)
[角田・性差別と暴力(2002)]
角田由紀子『性差別と暴力 続・性の法律学』有斐閣(2002年)
[内田・民法W(2002)]
内田貴『民法W(親族・相続)』東京大学出版会(2002年)
[伊藤・相続法(2002)]
伊藤昌司『相続法』有斐閣(2002年)
[松川・親族相続法(2004)]
松川正毅『民法 親族・相続』有斐閣アルマ(2004年)
[なくそう婚外子・女性への差別(2004)]
なくそう戸籍と婚外子差別・交流会編『なくそう婚外子・女性への差別 「家」「嫁」「性別役割」をこえて』明石書店(2004年)
[NHK・日本人の意識構造(2004)]
NHK放送文化研究所編『現代日本人の意識構造』〔第6版〕日本放送協会(2004)