−男は無関心,女は後悔−
2003年5月6日
名古屋大学大学院法学研究科教授 加賀山 茂
家族法の講義を開始して,受講生が自由に議論できる電子掲示板を開設してみて,重大なことに気がついた。男子学生と女子学生の意識のレベルに歴然とした差があることである。
家庭の中で,損な役回りを一手に引き受けている妻である母親の姿を見ていても,いずれは自分もそうなるかもしれないと思って観察している女子学生と,母親のような,もしくは,母親以上のサービスをしてくれる人を結婚相手に選びたいとのん気に考えている男子学生とでは,家族に関する意識のレベルの差が歴然としてくるのは当然の結果なのかもしれない。いずれにせよ,家族法の本質にかかわる共働き,夫婦(女夫・めおと)の役割,子育て等の問題を踏まえた上での女子学生の書き込みに対して,男子学生は,まともな対応ができないままである。
家庭の外で起こる出来事や法律問題については,女子学生も男子学生も同等の議論ができるというのに,家庭の問題になると,男子学生の思考はほとんど停止しているに等しい。その原因は,男性中心で回ってきた社会においては,男性が家庭の問題に無知でいても,何とか済ませてこられたからであろう。
結婚を例にとっても,得をするのは,世間並みに行けば,苗字も変えず,職業も変えず,家事もせずに大きな顔だけしておればよい男性である。苗字を変え,仕事を続けようが止めようが,家事と育児を一手に引き受けなければ「嫁」として失格と言われかねない女性は,結婚の問題点を身近に感じている。これに対して,結婚によって得をしてきた男性は,結婚のどこに問題があるかについて考える必要がないために,のん気に構えて来られたのである。
しかし,男性も,外で働いてさえおれば,家族の問題について無知でいられるという時代は終わったことに気づかなければならない。リストラの嵐が吹き荒れる現代社会においては,夫だけが経済活動をして妻子を養うことを約束することは,空手形に終わる危険性が高い。結婚による共同生活は,両当事者が,経済活動においても,また,家事・育児についても,平等の権利を持ち,平等のリスクを負担しあうことでしか安定性を維持することが困難な時代に突入しているのである。
しかし,外で働くことだけを目標にしてきた男性にとって,家庭の問題に関して,基本的なスタンスにおいても,基礎的な知識のレベルにおいても,女性に追いつくには,相当な努力が必要である。しかし,これまで,受験勉強しかしてこなかった男子学生にとっては,教科書とか,司法試験等の受験参考書に書かれていないことを理解しようという発想は,そもそも出てこないのかもしれない。
確かに,これまでは,男の学者によって書かれてきた男性中心の通説・判例による家族法の教科書を読んでおれば,家族法の問題を解くことは可能であった。女の立場から家族法の問題点を鋭くえぐった問題の書物は,通説・判例とは違うといって,無視することが可能であったかもしれない。しかし,今や,男性本位の家族法では,現代の家族法の根本問題は,何一つ解決できないというのが現実である。
男子学生が,掲示板への女子学生の書き込みに対して,自分の意見を堂々と主張できるようになるためには,家族法の教科書を読むだけでなく,社会学や心理学関係の書物を読み,現代社会において家庭がどのような問題に直面しているかを再認識する努力が必要である。そこで,私としても,困難に直面している男子学生を側面から援助し,そのレベルを引き上げるために,女の学者や実務家が書いた代表的な書物を読んだ上で,男子学生に問題の大きさを認識することができるような,挑戦的な文章を書いてみることにした。
第1回目として,今回は,男子学生の盲点である「婚姻に伴う女性側の不利益」を取り上げてみた。男子学生は,これを読んで,幸福の絶頂のように宣伝されている結婚という制度が,いかに,男性のみに有利で,女性にとって不利益の多い制度であるかを知っていただきたい。そして,家族法に関する基本的な考え方のレベルを上げた上で,それらの問題をどのように解決していくべきかについて,女子学生と対等の立場で議論してほしいと考えている。
形式的には男女平等だが,氏を変える側(98パーセントは女性)だけが一方的に不利益を被る仕組み
民法旧規定788条は,1項で,「妻ハ婚姻ニ因リテ夫ノ家ニ入ル」,2項で「入夫及ヒ壻養子ハ妻ノ家ニ入ル」と規定しており,民法旧規定746条の「戸主及ヒ家族ハ其家ノ氏ヲ称ス」とあいまって,夫婦の氏は,嫁をもらう側,婿をもらう側に合わせて変えるものとされていた。
家制度が廃止された後も,家制度の名残である夫婦の氏という考え方は,民法上も温存されている(民法750条)。したがって,夫婦の氏をいずれか一方にしなければ,婚姻届は受理されない(戸籍法74条1号)。
夫婦(女夫)の氏を同一にしなければならないということは,一方は結婚によって何も変えなくてもよいのに,他方は,これまで使い慣れてきた姓を変更するという不利益を甘受しなければならないことを意味する。これでは,夫婦(女夫・めおと)の本質的平等という婚姻の理念は,最初から実現不能となってしまう。
わが国では,約98パーセントのカップルが夫婦の氏として,夫の氏を選択している。そして,婚姻する妻も夫も,すでに分籍している場合には,「夫の氏を称する妻は,夫の戸籍に入」ることになってしまう(戸籍法16条2項)。廃止されたはずの,民法旧規定788条は,戸籍法16条2項によって,法律婚を通じて,現在でも生き続けているのである。
婚姻によって一方が姓を変えても,旧姓を通称として使用すれば,たいした不都合はないと思われるかもしれない。しかし,世の中,そう簡単でないことは,以下の判決を検討してみればわかる。
図書館情報大学教授氏名権訴訟
東京地判平5・11.19訟月40巻12号2879頁(判時1486号21頁,判タ835号58頁)
〔判旨〕通称ないし婚姻前の氏名を使用する権利は,憲法13条によって保障されているとは断定できないとして,婚姻前の氏名を通称として用いてきた国立大学教授が,大学側による戸籍上の氏名の使用の差止め等を求めた訴えが退けられた事例
〔評 釈〕 水野紀子・別冊法時10号76頁,西原博史・判例セレクト’94(月刊法学教室174号別冊付録)9頁,長岡徹・法学セミナー40巻3号21頁,内野正幸・判評429号39頁(判時1503号201頁),二宮周平・判タ855号49頁,滝沢聿代・ジュリ1059号192頁
旧姓使用(別姓)を貫くために,公文書の記載を要求されるたびに,離婚して,直後に結婚するということを繰り返してきたカップルもいるという。婚姻しつつ,別姓を貫くには,相当の覚悟と配偶者の協力が不可欠である。
夫婦の一方が改姓すると,他方が戸籍筆頭者となる。家制度が廃止されて,戸主はなくなったが,戸籍上は,筆頭者が今なお存在している。戸籍制度においては,戸籍筆頭者だけが,戸籍の最初に氏名で記され,筆頭者以外は,名でしか記載されない。
このように,夫婦(女夫)のうち,一方だけが筆頭者となって,必然的に,配偶者間に序列が持ち込まれるという事態は,夫婦(女夫)の本質的平等の理念に明らかに反する。
しかし,98パーセントのカップルが,婚姻の氏を夫の氏としており,したがって,ほとんどの婚姻において,夫が筆頭者となっているのが現状である。そして,夫が戸籍筆頭者となると,戸籍に姓名が記されるのは,夫だけであるため,多くの場合,夫が一家の主人であるかのような錯覚に陥ってしまうようである。
夫婦(女夫)のうち,戸籍筆頭者が氏を変更する場合には,筆頭者でない者もこれに従属して氏を変えられてしまう。逆に,筆頭者でない者が氏を変更する事情が生じても,筆頭者の氏の支配力の方が強くて変更されない。
たとえば,Aという姓の夫婦のうち,筆頭者である夫のAさんが婚外子で父親のBさんから認知を受けたとする。「子が父又は母と氏を異にする場合には,子は,家庭裁判所の許可を得て,戸籍法の定めるところにより届け出ることによつて,その父又は母の氏を称することができる」(民法791条1項)。そこで,夫のAさんが,この手続をとって,B姓に変わったとする。すると,自動的に妻のAさんまでB姓に変えられてしまうのである(榊原富士子『女性と戸籍−夫婦別姓時代に向けて』明石書店(1992年)140-141頁参照)。
戸籍筆頭者が氏を変更すると,配偶者も自動的に氏を変更されてしまうというのは,明らかに夫婦(女夫)の本質的な平等という理念に反する。また,夫が戸籍筆頭者となることがほとんどとなっている現状では,夫が氏を変更すると妻の氏も自動的に変更されてしまうということになると,妻は夫に従属するものという錯覚を助長することになる。
夫婦の一方が死亡した場合,婚姻関係は消滅するが,戸籍上の扱いは以下のように複雑である。
現状では,ほとんどの場合,夫が戸籍筆頭者となっているため,夫が先に死亡した場合,亡き夫が「戸籍筆頭者」である戸籍の中に,残された妻は,まるで,「未亡人」であるといわんばかりに,拘束されつづけるのである。
妻は転籍届を出せるが,妻が転籍届を出したとしても,戸籍筆頭者はそのままであり変更できず,除籍されて×印のついた夫の名欄は,×のついたまま新戸籍に移転し,やはり,戸籍筆頭者の妻という形を脱することはできない(戸籍法施行規則37条)。
この点の不都合は,配偶者の死亡を契機として,復氏届を出して旧姓に戻ることにした場合にのみ,妻は戸籍筆頭者となって,自分ひとりの新戸籍を作ることができる。しかし,婚姻中に一定期間使った氏をさらに変更したくないと考えている人には,復氏は選べない選択肢である(榊原富士子『女性と戸籍−夫婦別姓時代に向けて』明石書店(1992年)88頁以下参照)。
ここでも,重要なことは,ほとんどの場合に戸籍筆頭者となる夫の場合には,以上に述べた不利益はまったく生じないという点である。
妻が先に亡くなり,戸籍筆頭者である夫が妻の死後に転籍したらどうなるか。以下のように,戸籍筆頭者となった夫に関しては,転籍によって,「妻の死亡」も「妻との婚姻」も戸籍から消え去ってしまう。つまり,転籍によって,夫の戸籍はすっきりと「独身の戸籍」へと都合よく復元される。
婚姻のときに,平等な立場で,たまたま夫の姓を選択しただけのつもりであっても,戸籍の扱いは,そんなに生易しいものではない。死後までも,戸籍筆頭者が優遇され,氏を変更した者は,不利益を受け続けるのである(榊原富士子『女性と戸籍−夫婦別姓時代に向けて』明石書店(1992年)90頁)。
結婚した途端に課せられる不条理な「嫁」の義務
結婚するまでは,夫になる側は,妻の両親に頭が上がらない。まるで,家制度が存在し,戸主の同意がなければ結婚はできないかのような律儀さで,結婚したい相手の家を訪ね,「お嬢さんとの結婚をお許しください」などと,義理を尽くす。しかし,夫になってしまえば,妻の両親に尽くすべき義理などたかがしれている。夫に対して義理の父母から要求されるのは,「娘をよろしく」ということ,すなわち,「娘を路頭に迷わすな」という経済面の負担だけである。
しかし,妻の側は,そうはいかない。結婚前は,他家のお嬢様として,ちやほやされる。ところが,結婚した途端,義理の父母から,うちの「嫁」と認識され,「介護」を含めたさまざまな擬似的な親孝行を強要されることになる。
義理について根本的に考えてみようと思えば,以下の文章(ルース・ベネディクト,長谷川松治訳『菊と刀−日本文化の型』社会思想社(1972)155頁以下)が参考になる。
日本人のよく言う言葉に「義理ほどつらいものはない」というのがある。人は,〔報恩という〕義務を返済せねばならないと同様に「義理」を返済しなければならない。しかしながら「義理」は,〔報恩という〕義務とは類を異にするする一連の義務である。また,人類学者が世界の文化のうちに見だす,あらゆる風変わりな道徳的義務の範疇の中でも,最も珍しいものの一つである(155頁)。
ある日本語辞書の説明によれば,義理とは,「正しき筋道。人のふみ行うべき道。世間への申し訳に,不本意ながらすること」である(156頁)。
「義理」は,法律上の家族〔姻族〕に負っている一切の義務を含み,〔報恩という〕「義務」は,直接の家族〔血族〕に対して負っている一切の義務を含む。法律上の父は「義理」の父と呼ばれ,法律上の母は「義理」の母,法律上の兄弟および姉妹は,それぞれ「義理」の兄弟,「義理」の姉妹と呼ばれる。この呼称は,配偶者の血族,および血族の配偶者のいずれにも用いられる(156-157頁)。
結婚は日本においては,むろん家と家との間の契約であって,生涯相手方の家に対して,これらの契約義務を遂行することが「義理を果たすこと」とされている。「義理」は,この契約を取り決めた世代−親−に対する「義理」が最も重い。なかんずく重いのは,嫁の姑に対する「義理」であって,それは嫁は自分の生家とは違う他家にいって,そこで暮らさなければならないからである(157頁)。
ある日本人が言ったように,「成人して息子が彼自身の母親のためにいろいろなことをしてやるのは,母親を愛しているからであり,したがってそれは義理ではありえない,心から行う行為は,義理を果たすことではない。」しかしながら,人は義理の家族に対する義務を几帳面に果たす。それは,どんな犠牲を払ってでも,あの「義理を知らない人間」という,恐ろしい非難を避けなければならないからである(157頁)。
婚姻後,夫の義理が経済的な面に限定されるのに対して,妻の義理は,日常的な付き合いから,介護まで,途方もなく増大する。この点をめぐって悪名高い「嫁・姑戦争」が勃発するのであるが,夫が親孝行な息子である場合には,夫は以下のように考えて親の側に立ってしまうことが多い。
結婚したら,妻に給料を渡す代わりに,妻は,家事・育児等家庭に関することすべてに責任を持つべきだ。そして,「舅・姑」とうまくやるべきだ。夫は,仕事で忙しいのだから,その問題で夫に愚痴をいってくれるな。うまくやってくれ。それがうまくできないような妻なら,離婚だ。
男性からの離婚の申立て原因の第2位が,「家族・親戚と折り合いが悪い」であるとことが,この点を明らかにしている。(男女とも,離婚の申立て原因の第1位は,「性格があわない」である。なお,女性からの離婚申立て原因の第2位は,「暴力をふるう」であり,この問題については,後述する)。
本来,結婚したら,夫は,妻との関係を優先させ,舅・姑との関係はそれに劣後させなければならない(親不孝の勧め)。しかし,孝行息子の夫は,なかなかそれができない。そして,たいていの場合,「舅・姑」との関係を優先させ,その上で,妻に「うまくやれ」といって,無責任にも,家族の根本問題から逃避してしまうのである。その結果,妻は孤立し,結婚したことを後悔するというのが,婚姻破綻の典型例であろう。
一番恐ろしい夫の暴力
ジェニファー・ロペス(Jennifer Lopez)主演の『イナフ(Enough)』という映画を見たことがあるだろうか(DVDでの発売もなされている)。ドメスティック・バイオレンスをテーマにしたこの映画の解説シーンの中に,「誰より危険なその男は−彼女の夫(The most dangerous man she's ever known - her husband)」という印象的なナレーションが入っている。
わが国でドメスティック・バイオレンスについて最初に体系的に論じた教科書である「夫(恋人)からの暴力」調査研究会『ドメスティック・バイオレンス』〔新版〕有斐閣(2002)113頁以下には,以下のような記述がある。
「”正式な結婚”(法律婚)は,妻に利益や幸福をもたらすものとしてのみ語られてきていた」が,実は,「『結婚』制度はドメスティック・バイオレンスの土壌」であり,「結婚制度は,夫が妻を性的奴隷にすることを認めるものだ。」
上記の本を注意深く読むと,妻にとっての婚姻に伴う不利益は,以下のようにまとめることができる。
この本でも指摘されているように,女性も,結婚は妻に利益や幸福をもたらすものという甘いメッセージに惑わされたり,結婚という制度を前提とした上で,制度内でいかに多くの利益(つきつめれば,経済的な利益であることが多い)を手に入れるべきかという思考からは,そろそろ脱却する時期になっていると思われる。ドメスティック・バイオレンスを生み出し,支え,助長する「結婚」という制度について,その「負」の面に焦点を当てつつ,結婚とは何かを考えることが,女にとっても,また,男にとっても重要な課題であるといえよう。
このように見てくると,法律婚による不利益は,特に女性にとって無視し得ないものであり,以下のような理由で法律婚をあきらめ,事実婚によって両性の本質的平等を実現しようとするカップルが増加しているのも不思議なことではないことが理解できる。
従来どおりの法律婚を望む男性,および,結婚にあこがれる女性からの反論を期待している。
憲法
第24条 婚姻は,両性の合意のみに基いて成立し,夫婦が同等の権利を有することを基本として,相互の協力により,維持されなければならない。
2 配偶者の選択,財産権,相続,住居の選定,離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては,法律は,個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して,制定されなければならない。
民法旧規定
第725条 左ニ掲ケタル者ハ之ヲ親族トス
一 六親等内ノ血族
二 配偶者
三 三親等内ノ姻族
第746条 戸主及ヒ家族ハ其家ノ氏ヲ称ス
第750条 家族カ婚姻又ハ養子縁組ヲ為スニハ戸主ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス
2 家族カ前項ノ規定ニ違反シテ婚姻又ハ養子縁組ヲ為シタルトキハ戸主ハ其婚姻又ハ養子縁組ノ日ヨリ1年内ニ離籍ヲ為シ又ハ復籍ヲ拒ムコトヲ得
3 家族カ養子ヲ為シタル場合ニ於テ前項ノ規定ニ従ヒ離籍セラレタルトキハ其養子ハ養親ニ随ヒテ其家ニ入ル
第772条 子カ婚姻ヲ為スニハ其家ニ在ル父母ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス但男カ満30年女カ満25年ニ達シタル後ハ此限ニ在ラス
2 父母ノ一方カ知レサルトキ、死亡シタルトキ、家ヲ去リタルトキ又ハ其意思ヲ表示スルコト能ハサルトキハ他ノ一方ノ同意ノミヲ以テ足ル
3 父母共ニ知レサルトキ、死亡シタルトキ、家ヲ去リタルトキ又ハ其意思ヲ表示スルコト能ハサルトキハ未成年者ハ其後見人及ヒ親族会ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス
第775条 婚姻ハ之ヲ戸籍吏ニ届出ツルニ因リテ其効力ヲ生ス
2 前項ノ届出ハ当事者双方及ヒ成年ノ証人二人以上ヨリ口頭ニテ又ハ署名シタル書面ヲ以テ之ヲ為スコトヲ要ス
第778条 婚姻ハ左ノ場合ニ限リ無効トス
一 人違其他ノ事由ニ因リ当事者間ニ婚姻ヲ為ス意思ナキト 二 当事者カ婚姻ノ届出ヲ為ササルトキ但其届出カ第775条第2項ニ掲ケタル条件ヲ欠クニ止マルトキハ婚姻ハ之カ為メニ其効力ヲ妨ケラルルコトナシ
第788条 妻ハ婚姻ニ因リテ夫ノ家ニ入ル
2 入夫及ヒ壻養子ハ妻ノ家ニ入ル
民法
第725条【親族の範囲】
左に掲げる者は,これを親族とする。
一 六親等内の血族
二 配偶者
三 三親等内の姻族
第737条【未成年者の婚姻】
未成年の子が婚姻をするには、父母の同意を得なければならない。
2 父母の一方が同意しないときは、他の一方の同意だけで足りる。父母の一方が知れないとき、死亡したとき、又はその意思を表示することができないときも、同様である。
第739条【婚姻の届出】
婚姻は,戸籍法の定めるところによりこれを届け出ることによつて,その効力を生ずる。
A 前項の届出は,当事者双方及び成年の証人2人以上から,口頭又は署名した書面で,これをしなければならない。
第742条【婚姻の無効】
婚姻は,左の場合に限り,無効とする。
一 人違その他の事由によつて当事者間に婚姻をする意思がないとき。
二 当事者が婚姻の届出をしないとき。但し,その届出が第739条第2項に掲げる条件を欠くだけであるときは,婚姻は,これがために,その効力を妨げられることがない。
第750条【夫婦の氏】
夫婦は,婚姻の際に定めるところに従い,夫又は妻の氏を称する。
戸籍法
第9条 戸籍は,その筆頭に記載した者の氏名及び本籍でこれを表示する。その者が戸籍から除かれた後も,同様である。
たとえ筆頭者が婚姻,死亡その他の事由によって除籍されても,筆頭者欄は消除しないし,筆頭者が死亡しても,『亡』を冠しない(昭23・1・29民事甲第136号民事局長通達)
第16条 婚姻の届出があつたときは,夫婦について新戸籍を編製する。但し,夫婦が,夫の氏を称する場合に夫,妻の氏を称する場合に妻が戸籍の筆頭に記載した者であるときは,この限りでない。
A 前項但書の場合には,夫の氏を称する妻は,夫の戸籍に入り,妻の氏を称する夫は,妻の戸籍に入る。
B 日本人と外国人との婚姻の届出があつたときは,その日本人について新戸籍を編製する。ただし,その者が戸籍の筆頭に記載した者であるときは,この限りでない。
(昭五九法四五・一部改正)
第74条 婚姻をしようとする者は,左の事項を届書に記載して,その旨を届け出なければならない。
一 夫婦が称する氏
二 その他法務省令で定める事項
(平一一法一六〇・一部改正)
第100条 分籍をしようとする者は,その旨を届け出なければならない。
A 他の市町村に新本籍を定める場合には,戸籍の謄本を届書に添附しなければならない。
妻が亡夫の戸籍から分籍して,自分を筆頭者とする新しい戸籍を作ることはできない(昭23・4・27民甲第757号民事局長回答)
第107条 やむを得ない事由によつて氏を変更しようとするときは,戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者は,家庭裁判所の許可を得て,その旨を届け出なければならない。
第108条 転籍をしようとするときは,新本籍を届書に記載して,戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者が,その旨を届け出なければならない。
A 他の市町村に転籍をする場合には,戸籍の謄本を届書に添附しなければならない。
戸籍法施行規則
第37条 戸籍法第108条第2項の場合には,届書に添附した戸籍の謄本に記載した事項は,転籍地の戸籍にこれを記載しなければならない。但し,左に掲げる事項については,この限りでない。
一 第34条第一号,第三号乃至第六号に掲げる事項
二 削除
三 戸籍の筆頭に記載した者以外で除籍された者に関する事項
四 戸籍の筆頭に記載した者で除籍された者の身分事項欄に記載した事項
五 その他新戸籍編製の場合に移記を要しない事項
(昭三五法省令四〇・昭四二法省令一四・一部改正)
第39条 新戸籍を編製され,又は他の戸籍に入る者については,次の各号に掲げる事項で従前の戸籍に記載したものは,新戸籍又は他の戸籍にこれを記載しなければならない。
一 出生に関する事項
二 嫡出でない子について,認知に関する事項
三 養子について,現に養親子関係の継続するその養子縁組に関する事項
四 夫婦について,現に婚姻関係の継続するその婚姻に関する事項及び配偶者の国籍に関する事項
五 現に未成年者である者についての親権又は未成年者の後見に関する事項
六 推定相続人の廃除に関する事項でその取消しのないもの
七 日本の国籍の選択の宣言又は外国の国籍の喪失に関する事項
八 名の変更に関する事項
A 前項の規定は,縁組又は婚姻の無効その他の事由によつて戸籍の記載を回復すべき場合にこれを準用する。
(昭四二法省令一四・昭五九法省令四〇・平一二法省令七・一部改正)
配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律
前文
我が国においては,日本国憲法に個人の尊重と法の下の平等がうたわれ,人権の擁護と男女平等の実現に向けた取組が行われている。
ところが,配偶者からの暴力は,犯罪となる行為であるにもかかわらず,被害者の救済が必ずしも十分に行われてこなかった。また,配偶者からの暴力の被害者は,多くの場合女性であり,経済的自立が困難である女性に対して配偶者が暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動を行うことは,個人の尊厳を害し,男女平等の実現の妨げとなっている。
このような状況を改善し,人権の擁護と男女平等の実現を図るためには,配偶者からの暴力を防止し,被害者を保護するための施策を講ずることが必要である。このことは,女性に対する暴力を根絶しようと努めている国際社会における取組にも沿うものである。
ここに,配偶者からの暴力に係る通報,相談,保護,自立支援等の体制を整備することにより,配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護を図るため,この法律を制定する。