第19-20回 親権・後見

2004年6月15日

名古屋大学大学院法学研究科教授 加賀山 茂


講義のねらい


子は,生まれてから社会との接触を開始するまで,主として親とのコミュニケーションを通じて,心身を発達させ,言語を習得し,それらを通じて世代間で文化の継承が行われることになる。そのような段階における親子の間の権利義務の内容を規定するのが親権と未成年後見である。

ここでは,親権と後見に関する基本的な概念を整理し,代表的な判例を検討することを通じて,親の権利と義務と同時に,民法では,明確には規定されていない子の利益,子の権利についても,考察を深めることにする。


基本的な概念の整理


親権

親権とは,父母が未成年の子を一人前の社会人となるまで養育するための親の権利義務を総称したもの。

親権者・保護者の関係

学校教育法22条をはじめとする子の教育や子の福祉に関する法律においては,親権者と未成年後見人とを同列に扱い,保護者と呼んでいる。

保護者複数化の必要性

保育所,幼稚園,学校等の諸届けにおいて,保護者の氏名欄が一つしか用意されていないため,父母の共同親権に服している場合であっても,保護者の氏名欄に父親の名前だけを書かせることが慣行化されているが,男女平等に反する点だけでなく,保護者は単数でよいとの考え方を助長する点で問題であろう。

成年後見に関しては,平成11年の民法改正により,複数の後見人を置くことが可能となっている(民法859条の2)。これに対して,未成年後見人については,民法842条により,現在でも「未成年後見人は,一人でなければならない」とされているが,立法論としては疑問である。成年後見の場合に複数の後見人の選任を認めるに至った理由は,未成年者の監護においても,複数の監護者の選任を認める理由としても,妥当すると考えられるからである。

子育てを単身者が行うことの過酷さが,幼児虐待やネグレクトだけでなく,育児疲れによる保護者の孤立化,病気,自殺等が増加している現在においては,複数の保護者の協力を通じた危機回避,危険の分散が何よりも必要とされている。

親権者における共同親権の原則は,婚姻の有無を問わず(事実婚おいても,また,離婚後においても),その原則が貫徹されるべきである。さらに,成年後見,未成年後見の区別を問わず,複数人による後見が実現されるべきであると思われる。

未成年の子 親権者 問題点
嫡出子 実子 婚姻中 父母(共同親権) 民法818条1項,3項 両者の協議が整わないときの危険を回避するため,家庭裁判所等の役割を充実すべきではないか。
離婚後 父母のどちらか一方 民法819条(ただし,766条参照) 離婚しても,親であることに変わりはないのであるから,離婚後も共同親権を維持すべきではないか。
養子 養親 民法18条2項 特別養子の場合に,「養親は配偶者のある者でなければならない」(民法817条の3)ことを要求することは,行き過ぎであり,事実婚,同性婚の場合も含めて,共同親権が実現できればそれでよいのではないか。
嫡出でない子 原則として母 民法819条4項 この場合も,少なくとも,認知がなされている限り,共同親権の原則を貫徹すべきではないか。

親権の内容

親権の内容は,子を監護教育し,子の財産を管理することである。

親権の内容
身分上の
監護教育権
監護教育権 民法820条 親権を行う者は,子の監護及び教育をする権利を有し,義務を負う。
居所指定権 民法821条 子は,親権を行う者が指定した場所に,その居所を定めなければならない。
懲戒権 民法822条 親権を行う者は,必要な範囲内で自らその子を懲戒し,又は家庭裁判所の許可を得て,これを懲戒場〔現在のところ不存在〕に入れることができる。
職業許可権 民法823条 子は,親権を行う者の許可を得なければ,職業を営むことができない。
財産上の
管理処分権
財産管理権 民法824条 親権を行う者は,子の財産を管理し,又,その財産に関する法律行為についてその子を代表する。但し,その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には,本人の同意を得なければならない。
子の代表権

離婚の際の親権と監護権の分離

父母の離婚などの場合に,親権者(民法819条)と監護者(民法766条)とが分離することがあるが,その場合は,監護者が身上監護権を,親権者が財産管理権をそれぞれもつことになる。

親権者と監護者との分離という方法は,離婚後,子どもの取り合いで紛争がこじれる場合に,父母を妥協させるために利用されてきた。しかし,最近では,離婚後も父母が共同して養育に協力していくために,非親権者を監護者に指定し,親権者と共同して子どもの監護ができるものとして,この規定を積極的に評価し活用すべきだとする見解が有力となっている。

離婚しても,両親共に,親であることに変わりはないのであるから,離婚したからといって,親権者を一人とする民法の立場は誤りであると考える。親権者と監護者を分離しつつ,実質的な共同親権を実現するというのも一つの方法ではある。しかし,親権には,本来的に監護権が含まれており(民法820条),親権者と監護者とを分離させることは,親権の本質に反している。諸外国の立法をも考慮しつつ,離婚しても,原則として,共同親権が持続するように,民法の改正を行うのが望ましい。

離婚に際しての面接交渉権や養育費の問題が紛糾したり,履行が確保されない理由の一つは,離婚によって,一方の当事者の親権や面接交渉権を奪いながら(最近では,離婚によって父親が親権を失う割合が約8割に達している),養育費だけはその支払を義務づけるというのでは,衡平ではない。権利(親権)と義務(扶養義務)は両者ともにバランスをとって存在させてこそ,義務の自発的な履行が高められるのである。

面接交渉権

親権者又は監護権者として現実に未成熟子を監護教育していない別居中又は離婚後の親が,その子と個人的に面接し会話を交わし文通するなどの方法によって親子としての接触を保つことができる権利をいう。

わが現行民法にはこれを認める明文規定はないが,昭和39(1964)年12月14日の東京家庭裁判所審判(家月17巻4号55頁)が,離婚後親権とか監護権を有しない親は,未成熟子の福祉を害さないかぎり未成熟子と面接交渉をする権利を有し,その行使に必要な事項について他方の親との協議が成立しないときは家庭裁判所が審判でこれを定めることができると判示して,この問題を積極に解して以来,この権利の存否をめぐって活発に論議されるようになった。

審判例の多くはこれを親の権利として肯定する傾向にあり,学説の多くも,これを親権(監護権)の一権能であるとし,または,親権(監護権)そのものではないが監護に関連する権利であるとし,あるいは親のもつ自然権ないし固有権であるとし,あるいは監護に関連する権利であると同時に自然権であるなどと解して,これを親若しくは子の権利として肯定する傾向にある。

もっとも,面接交渉はもともとそれが子の利益にかないその福祉を増進させるために認められるものであるから,面接交渉の取決めの際には,子の利益への配慮が最も重要なことである。単に復縁を迫る手段として,あるいは他の親へのいやがらせとして,子との面接交渉を求めることはできないことはいうまでもない。

養育費の履行確保のための民事執行法の改正

家事審判法

第15条  金銭の支払、物の引渡、登記義務の履行その他の給付を命ずる審判は、執行力ある債務名義と同一の効力を有する。
第15条の5  家庭裁判所は、権利者の申出があるときは、審判で定められた義務の履行状況を調査し、義務者に対して、その義務の履行を勧告することができる。
第15条の6  家庭裁判所は、審判で定められた金銭の支払その他の財産上の給付を目的とする義務の履行を怠つた者がある場合において、相当と認めるときは、権利者の申立により、義務者に対し、相当の期限を定めてその義務の履行をなすべきことを命ずることができる。

民事執行法

(期限の到来又は担保の提供に係る場合の強制執行)
第30条  請求が確定期限の到来に係る場合においては、強制執行は、その期限の到来後に限り、開始することができる。
2  担保を立てることを強制執行の実施の条件とする債務名義による強制執行は、債権者が担保を立てたことを証する文書を提出したときに限り、開始することができる。
(継続的給付の差押え)
第151条  給料その他継続的給付に係る債権に対する差押えの効力は、差押債権者の債権及び執行費用の額を限度として、差押えの後に受けるべき給付に及ぶ。
(扶養義務等に係る定期金債権を請求する場合の特例)
第151条の2  債権者が次に掲げる義務に係る確定期限の定めのある定期金債権を有する場合において、その一部に不履行があるときは、第30条第1項の規定にかかわらず、当該定期金債権のうち確定期限が到来していないものについても、債権執行を開始することができる。
一  民法第752条 の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
二  民法第760条 の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
三  民法第766条 (同法第749条 、第771条及び第788条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務
四  民法第877条 から第880条 までの規定による扶養の義務
(2) 前項の規定により開始する債権執行においては、各定期金債権について、その確定期限の到来後に弁済期が到来する給料その他継続的給付に係る債権のみを差し押さえることができる。
(差押禁止債権)
第152条  次に掲げる債権については、その支払期に受けるべき給付の4分の3に相当する部分(その額が標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額を超えるときは、政令で定める額に相当する部分)は、差し押さえてはならない。
一  債務者が国及び地方公共団体以外の者から生計を維持するために支給を受ける継続的給付に係る債権
二  給料、賃金、俸給、退職年金及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る債権
(2) 退職手当及びその性質を有する給与に係る債権については、その給付の4分の3に相当する部分は、差し押さえてはならない。
(3) 債権者が前条第1項各号に掲げる義務に係る金銭債権(金銭の支払を目的とする債権をいう。以下同じ。)を請求する場合における前2項の規定の適用については、前2項中「4分の3」とあるのは、「2分の1」とする。
給与に係る債権等
05 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80 85 90 95 100
通常の債権 差押え可能 差し押さえ禁止
扶養義務等に係る定期金債権 差押え可能 差押え禁止

利益相反行為による財産管理権の制限

親権は絶対的なものではなく,さまざまな制約に服する。財産管理権における制約に関しては,利益相反行為に関する制約が重要である。親権者は子の利益と相反する行為(利益相反行為)をすることができない(民法826条)。

類型 意義 効果 条文
自己契約 Aから不動産売却の代理権を与えられたBが,自ら買主となってAB間に売買契約を成立させる場合のように,同一人が契約当事者の一方の代理人としての資格と,他方当事者自身の資格とを使い分けること。 無権代理 民法108条
双方代理 Bが一方では売主Aの代理人となり,他方では買主Cの代理人となってAC間に売買契約を成立させる場合のように,同一人が契約当事者双方のそれぞれの代理人として代理行為をすること。
利益相反行為 自己契約と双方代理は原則として禁じられているが,法人と理事,未成年者と親権者,被後見人と後見人,被保佐人と保佐人の関係のように,当事者の一方の行為能力が制限されている場合には,当事者間で利益が相反する内容の行為を含めて,代理・代表行為を行わざるを得ない場合が存在する。そのような場合に,特別代理人(理事,親権者,後見人(後見監督人)),臨時保佐人(保佐監督人),臨時補助人(補助監督人)を選任することを通じて,自己契約と双方代理を回避することによって,形式的な利益相反行為を回避しつつ,実質的な利益相反行為を実現することを可能にしようとするもの。
利益相反行為の典型例として挙げられているのは,法人の理事が自己の債務について法人を連帯保証人としたり,親権者が自己の債務の代物弁済として子の財産を提供したり,後見人が被後見人から財産を譲り受けたりすることである。
民法57条(法人),826条(親権),860条,851条(後見),876条の2第3項(保佐),876条の7第3項(補助)

親権を濫用し又は著しい不行跡のあったときは,家庭裁判所は請求により親権又は管理権の喪失を宣告することができる(民法834条,835条)。また,やむをえない事情がある場合には,父母は家庭裁判所の許可を得て親権又は財産管理権を辞任できる(民法837条)。

後見

後見には,未成年者や判断能力が低下した成年者を保護するために,契約などの法律行為をする能力に一定の制限を加える民法上の制度を意味する広義の後見と,成年後見の3類型(成年後見,保佐,補助)の一つである狭義の後見がある。

これまで,親権を行使する親のいない未成年の子と禁治産の宣告を受けた者の法律行為を助けるためのものとして,後見という制度が存在したが,1999年(平成11)12月に,成年者に対する後見制度を中心に民法の大幅な改正が行われた(平成11年法律第149号)。その結果,それまでの禁治産・準禁治産制度にかわって,新たに「成年後見制度」が2000年から実現されることになった。

親権と後見との関係

親権および未成年後見並びに成年後見制度を一覧表にまとめると以下のようになる。

広義の後見
未成年に対する後見 成年に対する後見
親権 未成年後見 法定成年後見 任意成年後見
成年後見(狭義の後見) 保佐 補助
要件 未成年者 未成年者に対する親権者の不存在,または親権者の管理権の喪失 精神上の障害により事理弁識能力を欠く者 精神上の障害により事理弁識能力が,著しく不十分な者 精神上の障害により事理弁識能力が不十分な者 精神上の障害により事理弁識能力が不十分になることを想定した委任契約(公正証書)とその登記
関係者 本人 未成年者 未成年被後見人 成年被後見人 被保佐人 被補助人 任意成年後見受任者
保護者 名称 父母又は養親 未成年後見人(1人に限定) 成年後見人(複数も可) 保佐人 補助人 任意後見契約の受任者→任意後見人
欠格 民法847条(未成年者,家庭裁判所で免ぜられた法定代理人・保佐人・補助人,破産者,被後見人に対して訴訟をした者及びその配偶者並びに直系血族,行方の知れない者) 準用 準用 準用
監督人 名称 (未成年後見監督人) (成年後見監督人) (保佐監督人) (補助監督人) 任意後見監督人
欠格 民法850条(後見人の配偶者,直系血族,兄弟姉妹) 準用 準用 任意後見人の配偶者,直系血族,兄弟姉妹
開始の手続 申立権者 未成年被後見人(本人)又はその親族その他の利害関係人 本人,配偶者,四親等内の親族,市町村長,検察官,任意後見受任者,任意後見人,任意後見監督人 本人,配偶者,四親等内の親族,任意後見受任者
未成年後見人,未成年後見監督人,保佐人,保佐監督人 後見人,後見監督人,補助人,補助監督人 後見人,後見監督人,保佐人,保佐監督人
開始時期 子の出生 親権者の不存在,または親権者の管理権の喪失 後見開始の審判 保佐開始の審判 補助開始の審判 家庭裁判所による任意後見監督人の選任
本人の同意 不要 必要 必要
終了事由・手続 子の成人,親権喪失の宣告,管理権喪失の宣告,親権・管理権の辞任 民法844条(後見人の辞任),民法846条(後見人の解任) 準用 準用 任意後見契約の解除,任意後見人の解任
本人の権限 単独でなしうる行為 民法4条,5条,6条 民法9条(日常生活に関する行為) 民法12条1項,2項所定の法律行為以外の行為 「特定の法律行為」以外の行為 任意後見契約の定めるところによる
同意を要する行為 上記以外の法律行為(4条1項) 民法12条1項,2項の行為 補助人に代理権,同意権が付与された「特定の法律行為」 任意後見契約の定めるところによる
取消権 単独で行使できる(120条)
追認権 取消原因の情況が止み,行為を了知した後に行使できる(124条)
保護者の権限 同意権・取消権 付与の対象 民法4条,5条,6条 日常生活に関する行為以外の行為 民法12条1項各号所定の行為 申立ての範囲内で家庭裁判所が定める「特定の法律行為」 任意後見契約の定めるところによる
付与の手続 後見開始の審判 保佐開始の審判 補助開始の審判+同意権付与の審判+本人の同意 任意後見契約(公正証書),登記,任意後見監督人の選任
取消権者 親権者 未成年後見人 成年後見人 保佐人 補助人 任意後見人,任意後見監督人
代理権 付与の対象 民法4条,5条,6条 財産に関するすべての行為 申立ての範囲内で家庭裁判所が定める「特定の法律行為」 申立ての範囲内で家庭裁判所が定める「特定の法律行為」 任意後見契約の定めるところによる
付与の手続 後見開始の審判 保佐開始の審判+代理権付与の審判+補任の同意 補助開始の審判+代理権付与の審判+本人の同意 任意後見契約(公正証書),登記,任意後見監督人の選任
本人の同意 不要 必要 任意後見契約の定めるところによる
保護者の責務 財産管理 財産管理権 財産管理権,法定代理権 財産管理権,法定代理権 特定の法律行為についての代理権 特定の法律行為についての代理権 任意後見契約の定めるところによる
利益相反行為 民法826条により,親権者は,特別代理人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない 民法860条による(民法826条が準用されるが,後見監督人がいる場合は,民法851条大一号により,後見監督人が被後見人を代表する) 民法876条の2第3項により,保佐人は臨時保佐人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない 民法876条の7第3項により,補助人は臨時補助人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない 任意後見監督人が本人を代表する
注意義務 自己のためにすると同一の注意義務 善管注意義務
身上配慮 監護及び教育,居所指定,懲戒,職業許可 監護及び教育,居所指定,懲戒,職業許可 本人の心身の状態および生活の情況に配慮する義務

演習


問1 親権と後見の関係を,新しい成年後見制度をも考慮に入れて整理しなさい。

問2 家族法判例百選〔第6版〕第38事件(最一決平12・5・1民集54巻5号1607頁)を読んで,以下の問題を検討しなさい。

  1. この事件の事実関係を要約しなさい。
  2. 親権と身上監護権との関係について整理しなさい。
  3. 離婚によって夫婦の婚姻関係・姻族関係は終了しても(民法728条),親子関係は終了しないという原則と,離婚によって共同親権が単独親権へ変更されることとは矛盾しないか検討しなさい。

問3 家族法判例百選〔第6版〕第39事件(最三判昭43・10・8民集22巻10号2172頁)を読んで,以下の問題を検討しなさい。

  1. この事件の事実関係を要約しなさい。
  2. 民法108条(自己契約・双方代理の禁止),民法57条,民法826条(利益相反行為)との関係を述べなさい。
  3. 利益相反行為に関する形式判断説に従って,利益相反行為とは何かを整理しなさい。
  4. 形式判断説と実質判断説との功罪を検討しなさい。

問4 家族法判例百選〔第6版〕第40事件(最一判昭49・7・22家月27巻2号69頁)を読んで,以下の問題を検討しなさい。

  1. この事件の事実関係を要約しなさい。
  2. 形式判断説,実質的判断説,親権者の代理権の濫用の法理との関係について整理しなさい。

問5 家族法判例百選〔第6版〕第43事件(最一判平4・12・10民集46巻9号2727頁)を読んで,以下の問題を検討しなさい。

  1. この事件の事実関係を要約しなさい。
  2. 代理権の濫用と民法93条との関係について検討しなさい。

問6 家族法判例百選第45事件(最二判昭53・2・24民集32巻1号98頁)を読んで,以下の問に答えなさい。

  1. この事件を読んで事実関係を要約しなさい。
  2. 法律行為における単独行為,契約,合同行為の位置づけについて整理しなさい。

参照条文


第四章 親権

第一節 総則

第818条【親権者−父母の共同親権】
成年に達しない子は,父母の親権に服する。
A子が養子であるときは,養親の親権に服する。
B親権は,父母の婚姻中は,父母が共同してこれを行う。但し,父母の一方が親権を行うことができないときは,他の一方が,これを行う。

第819条【離婚及び父が認知した場合の親権者】
父母が協議上の離婚をするときは,その協議で,その一方を親権者と定めなければならない。
A裁判上の離婚の場合には,裁判所は,父母の一方を親権者と定める。
B子の出生前に父母が離婚した場合には,親権は,母がこれを行う。但し,子の出生後に,父母の協議で,父を親権者と定めることができる。
C父が認知した子に対する親権は,父母の協議で父を親権者と定めたときに限り,父がこれを行う。
D第1項,第3項又は前項の協議が調わないとき,又は協議をすることができないときは,家庭裁判所は,父又は母の請求によつて,協議に代わる審判をすることができる。
E子の利益のため必要があると認めるときは,家庭裁判所は,子の親族の請求によつて,親権者を他の一方に変更することができる。(昭二三法二六〇・一部改正)

第二節 親権の効力

第820条【監護教育の権利義務】
親権を行う者は,子の監護及び教育をする権利を有し,義務を負う。

第821条【居所指定権】
子は,親権を行う者が指定した場所に,その居所を定めなければならない。

第822条【懲戒権】
親権を行う者は,必要な範囲内で自らその子を懲戒し,又は家庭裁判所の許可を得て,これを懲戒場に入れることができる。
A子を懲戒場に入れる期間は,6箇月以下の範囲内で,家庭裁判所がこれを定める。但し,この期間は,親権を行う者の請求によつて,何時でも,これを短縮することができる。(昭二三法二六〇・一部改正)

第823条【職業許可権】
子は,親権を行う者の許可を得なければ,職業を営むことができない。
A親権を行う者は,第6条第2項の場合には,前項の許可を取り消し,又はこれを制限することができる。

第824条【財産管理と代理権】
親権を行う者は,子の財産を管理し,又,その財産に関する法律行為についてその子を代表する。但し,その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には,本人の同意を得なければならない。

第825条【共同親権者の一方が共同名義でした行為】
父母が共同して親権を行う場合において,父母の一方が,共同の名義で,子に代わつて法律行為をし,又は子のこれをすることに同意したときは,その行為は,他の一方の意思に反したときでも,これがために,その効力を妨げられることがない。但し,相手方が悪意であつたときは,この限りでない。

第826条【親権者と子又は数人の子の利益相反行為】
親権を行う父又は母とその子と利益が相反する行為については,親権を行う者は,その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
A親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において,その1人と他の子との利益が相反する行為については,その一方のために,前項の規定を準用する。(昭二三法二六〇・一部改正)

第827条【親権者の注意義務】
親権を行う者は,自己のためにすると同一の注意を以て,その管理権を行わなければならない。

第828条【財産管理の計算】
子が成年に達したときは,親権を行つた者は,遅滞なくその管理の計算をしなければならない。但し,その子の養育及び財産の管理の費用は,その子の財産の収益とこれを相殺したものとみなす。

第829条【財産管理計算の特則】
前条但書の規定は,無償で子に財産を与える第三者が反対の意思を表示したときは,その財産については,これを適用しない。

第830条【第三者が子に無償で与えた財産の管理】
無償で子に財産を与える第三者が,親権を行う父又は母にこれを管理させない意思を表示したときは,その財産は,父又は母の管理に属しないものとする。
A前項の財産につき父母が共に管理権を有しない場合において,第三者が管理者を指定しなかつたときは,家庭裁判所は,子,その親族又は検察官の請求によつて,その管理者を選任する。
B第三者が管理者を指定したときでも,その管理者の権限が消滅し,又はこれを改任する必要がある場合において,第三者が更に管理者を指定しないときも,前項と同様である。
C第27条乃至第29条〔不在者の財産管理人の権利義務〕の規定は,前2項の場合にこれを準用する。(昭二三法二六〇・一部改正)

第831条【委任の規定の準用】
第654条〔委任終了後の応急処分義務〕及び第655条〔委任終了の対抗要件〕の規定は,親権を行う者が子の財産を管理する場合及び前条の場合にこれを準用する。

第832条【管理に関する親子間の債権の消滅時効】
親権を行つた者とその子との間に財産の管理について生じた債権は,その管理権が消滅した時から5年間これを行わないときは,時効によつて消滅する。
A子がまだ成年に達しない間に管理権が消滅した場合において子に法定代理人がないときは,前項の期間は,その子が成年に達し,又は後任の法定代理人が就職した時から,これを起算する。

第833条【子の親権の代行】
親権を行う者は,その親権に服する子に代わつて親権を行う。

第三節 親権の喪失

第834条【親権喪失の宣告】
父又は母が,親権を濫用し,又は著しく不行跡であるときは,家庭裁判所は,子の親族又は検察官の請求によつて,その親権の喪失を宣告することができる。(昭二三法二六〇・一部改正)

第835条【管理権喪失の宣告】
親権を行う父又は母が,管理が失当であつたことによつてその子の財産を危うくしたときは,家庭裁判所は,子の親族又は検察官の請求によつて,その管理権の喪失を宣告することができる。(昭二三法二六〇・一部改正)

第836条【失権宣告の取消し】
前2条に定める原因が止んだときは,家庭裁判所は,本人又はその親族の請求によつて,失権の宣告を取り消すことができる。(昭二三法二六〇・一部改正)

第837条【親権・管理権の辞任及び回復】
親権を行う父又は母は,やむを得ない事由があるときは,家庭裁判所の許可を得て,親権又は管理権を辞することができる。
A前項の事由が止んだときは,父又は母は,家庭裁判所の許可を得て,親権又は管理権を回復することができる。(昭二三法二六〇・一部改正)

第五章 後見

第一節 後見の開始

第838条【後見開始の原因】
後見は,次に掲げる場合に開始する。
 一未成年者に対して親権を行う者がないとき,又は親権を行う者が管理権を有しないとき。
 二後見開始の審判があつたとき。(平一一法一四九・一部改正)

第二節 後見の機関

第一款 後見人

第839条【未成年者の指定後見人】
未成年者に対して最後に親権を行う者は,遺言で,未成年後見人を指定することができる。ただし,管理権を有しない者は,この限りでない。
A親権を行う父母の一方が管理権を有しないときは,他の一方は,前項の規定によつて未成年後見人の指定をすることができる。(平一一法一四九・一部改正)

第840条【未成年後見人の選任】
前条の規定によつて未成年後見人となるべき者がないときは,家庭裁判所は,未成年被後見人又はその親族その他の利害関係人の請求によつて,未成年後見人を選任する。未成年後見人が欠けたときも,同様である。(平一一法一四九・全改)

第841条【未成年後見人選任請求義務】
父若しくは母が親権若しくは管理権を辞し,又は親権を失つたことによつて未成年後見人を選任する必要が生じたときは,その父又は母は,遅滞なく未成年後見人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。(平一一法一四九・全改)

第842条【未成年後見人の数】
未成年後見人は,1人でなければならない。(平一一法一四九・全改)

第843条【成年後見人の選任】
家庭裁判所は,後見開始の審判をするときは,職権で,成年後見人を選任する。
A成年後見人が欠けたときは,家庭裁判所は,成年被後見人若しくはその親族その他の利害関係人の請求によつて,又は職権で,成年後見人を選任する。
B成年後見人が選任されている場合においても,家庭裁判所は,必要があると認めるときは,前項に掲げる者若しくは成年後見人の請求によつて,又は職権で,更に成年後見人を選任することができる。
C成年後見人を選任するには,成年被後見人の心身の状態並びに生活及び財産の状況,成年後見人となる者の職業及び経歴並びに成年被後見人との利害関係の有無(成年後見人となる者が法人であるときは,その事業の種類及び内容並びにその法人及びその代表者と成年被後見人との利害関係の有無),成年被後見人の意見その他一切の事情を考慮しなければならない。(平一一法一四九・全改)

第844条【後見人の辞任】
後見人は,正当な事由があるときは,家庭裁判所の許可を得て,その任務を辞することができる。(昭二三法二六〇・一部改正)

第845条【後見人選任請求義務】
後見人がその任務を辞したことによつて新たに後見人を選任する必要が生じたときは,その後見人は,遅滞なく新たな後見人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。(平一一法一四九・全改)

第846条【後見人の解任】
後見人に不正な行為,著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由があるときは,家庭裁判所は,後見監督人,被後見人若しくはその親族若しくは検察官の請求によつて,又は職権で,これを解任することができる。(平一一法一四九・全改)

第847条【後見人の欠格事由】
次に掲げる者は,後見人となることができない。
 一未成年者
 二家庭裁判所で免ぜられた法定代理人,保佐人又は補助人
 三破産者
 四被後見人に対して訴訟をし,又はした者及びその配偶者並びに直系血族
 五行方の知れない者(平一一法一四九・全改)

第二款 後見監督人

第848条【未成年後見監督人の指定】
未成年後見人を指定することができる者は,遺言で,未成年後見監督人を指定することができる。(平一一法一四九・一部改正)

第849条【未成年後見監督人の選任】
前条の規定によつて指定した未成年後見監督人がない場合において必要があると認めるときは,家庭裁判所は,未成年被後見人,その親族若しくは未成年後見人の請求によつて,又は職権で,未成年後見監督人を選任することができる。未成年後見監督人の欠けた場合も,同様である。(昭二三法二六〇・平一一法一四九・一部改正)

第849条の2【成年後見監督人の選任】
家庭裁判所は,必要があると認めるときは,成年被後見人,その親族若しくは成年後見人の請求によつて,又は職権で,成年後見監督人を選任することができる。(平一一法一四九・追加)

第850条【後見監督人の欠格】
後見人の配偶者,直系血族及び兄弟姉妹は,後見監督人となることができない。

第851条【後見監督人の職務】
後見監督人の職務は,左の通りである。
 一後見人の事務を監督すること。
 二後見人が欠けた場合に,遅滞なくその選任を家庭裁判所に請求すること。
 三急迫の事情がある場合に,必要な処分をすること。
 四後見人又はその代表する者と被後見人との利益が相反する行為について被後見人を代表すること。(昭二三法二六〇・一部改正)

第852条【受任者及び後見人の規定の準用】
第644条〔受任者の注意義務〕,第654条〔応急処分〕,第655条〔委任終了の対抗要件〕,第843条第4項〔法人後見人,選任の基準〕,第844条〔辞任〕,第846条〔解任〕,第847条〔欠格事由〕,第859条の2〔複数の後見人〕,第859条の3〔建物等処分許可〕,第861条第2項〔事務費用〕及び第862条〔報酬〕の規定は,後見監督人について準用する。(平一一法一四九・一部改正)

第三節 後見の事務

第853条【財産調査,財産目録調製】
後見人は,遅滞なく被後見人の財産の調査に著手し,1箇月以内に,その調査を終わり,且つ,その目録を調製しなければならない。但し,この期間は,家庭裁判所において,これを伸長することができる。
A財産の調査及びその目録の調製は,後見監督人があるときは,その立会を以てこれをしなければ,その効力がない。(昭二三法二六〇・一部改正)

第854条【目録調製前の権限】
後見人は,目録の調製が終わるまでは,急迫の必要がある行為のみをする権限を有する。但し,これを善意の第三者に対抗することができない。

第855条【被後見人に対する後見人の債権債務の申出】
後見人が,被後見人に対し,債権を有し,又は債務を負う場合において,後見監督人があるときは,財産の調査に著手する前に,これを後見監督人に申し出なければならない。
A後見人が,被後見人に対し債権を有することを知つてこれを申し出ないときは,その債権を失う。

第856条【被後見人が取得した包括財産の調査等】
前3条の規定は,後見人が就職した後被後見人が包括財産を取得した場合にこれを準用する。

第857条【未成年者の身上に関する権利義務】
未成年後見人は,第820条から第823条まで〔監護教育・居所指定・懲戒・職業許可〕に規定する事項について,親権を行う者と同一の権利義務を有する。ただし,親権を行う者が定めた教育の方法及び居所を変更し,未成年被後見人を懲戒場に入れ,営業を許可し,その許可を取り消し,又はこれを制限するには,未成年後見監督人があるときは,その同意を得なければならない。(平一一法一四九・一部改正)

第858条【成年後見人の義務】
成年後見人は,成年被後見人の生活,療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たつては,成年被後見人の意思を尊重し,かつ,その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。(平一一法一四九・全改)

第859条【財産管理権と代理権】
後見人は,被後見人の財産を管理し,又,その財産に関する法律行為について被後見人を代表する。
A第824条但書〔子の行為を目的とする債務を生ずべき場合〕の規定は,前項の場合にこれを準用する。

第859条の2【成年後見人が数人あるとき】
成年後見人が数人あるときは,家庭裁判所は,職権で,数人の成年後見人が,共同して又は事務を分掌して,その権限を行使すべきことを定めることができる。
A家庭裁判所は,職権で,前項の規定による定めを取り消すことができる。
B成年後見人が数人あるときは,第三者の意思表示は,その1人に対してすれば足りる。(平一一法一四九・追加)

第859条の3【建物等の処分に関する許可】
成年後見人は,成年被後見人に代わつて,その居住の用に供する建物又はその敷地について,売却,賃貸,賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには,家庭裁判所の許可を得なければならない。(平一一法一四六・追加)

第860条【後見人被後見人の利益相反行為】
第826条〔親権者と子の利益相反行為と特別代理人の選任〕の規定は,後見人にこれを準用する。但し,後見監督人がある場合は,この限りでない。

第861条【支出金額の予定】
後見人は,その就職の初において,被後見人の生活,教育又は療養看護及び財産の管理のために毎年費すべき金額を予定しなければならない。
A後見人が後見の事務を行うために必要な費用は,被後見人の財産の中から支弁する。(平一一法一四九・一部改正)

第862条【後見人の報酬】
家庭裁判所は,後見人及び被後見人の資力その他の事情によつて,被後見人の財産の中から,相当な報酬を後見人に与えることができる。(昭二三法二六〇・一部改正)

第863条【後見事務の監督】
後見監督人又は家庭裁判所は,何時でも,後見人に対し後見の事務の報告若しくは財産の目録の提出を求め,又は後見の事務若しくは被後見人の財産の状況を調査することができる。
A家庭裁判所は,後見監督人,被後見人若しくはその親族その他の利害関係人の請求によつて,又は職権で,被後見人の財産の管理その他後見の事務について必要な処分を命ずることができる。(昭二三法二六〇・平一一法一四九・一部改正)

第864条【法定代理権及び同意権の制限】
後見人が,被後見人に代わつて営業若しくは第12条第1項に掲げる行為をし,又は未成年被後見人がこれをすることに同意するには,後見監督人があるときは,その同意を得なければならない。ただし,元本の領収については,この限りでない。(平一一法一四九・一部改正)

第865条【後見監督人の同意のない行為の取消し】
後見人が,前条の規定に違反してし,又は同意を与えた行為は,被後見人又は後見人において,これを取り消すことができる。この場合には,第19条〔制限能力者の相手方の催告権〕の規定を準用する。
A前項の規定は,第121条乃至第126条〔取り消しうべき法律行為の取消し・追認〕の規定の適用を妨げない。

第866条【被後見人からの財産等の譲受け】
後見人が被後見人の財産又は被後見人に対する第三者の権利を譲り受けたときは,被後見人は,これを取り消すことができる。この場合には,第19条〔制限能力者の相手方の催告権〕の規定を準用する。
A前項の規定は,第121条乃至第126条〔取り消しうべき法律行為の取消し・追認〕の規定の適用を妨げない。

第867条【未成年者の親権の代行】
未成年後見人は,未成年被後見人に代わつて親権を行う。
A第853条乃至第857条及び第861条乃至前条〔後見の事務〕の規定は,前項の場合にこれを準用する。(平一一法一四九・一部改正)

第868条【財産に関する権限のみを有する未成年後見人】
親権を行う者が管理権を有しない場合には,未成年後見人は,財産に関する権限のみを有する。(平一一法一四九・一部改正)

第869条【委任及び親権の規定の準用】
第644条〔受任者の注意義務〕及び第830条〔第三者が子に無償で与えた財産の管理〕の規定は,後見にこれを準用する。

第四節 後見の終了

第870条【管理の計算】
後見人の任務が終了したときは,後見人又はその相続人は,2箇月以内にその管理の計算をしなければならない。但し,この期間は,家庭裁判所において,これを伸長することができる。(昭二三法二六〇・一部改正)

第871条【後見監督人の立会い】
後見の計算は,後見監督人があるときは,その立会を以てこれをする。

第872条【未成年者・後見人の契約の取消し】
未成年被後見人が成年に達した後後見の計算の終了前に,その者と未成年後見人又はその相続人との間にした契約は,その者においてこれを取り消すことができる,その者が未成年後見人又はその相続人に対してした単独行為も,同様である。
A第19条〔制限能力者の相手方の催告権〕及び第121条乃至第126条〔取消しうべき法律行為の取消し・追認〕の規定は,前項の場合にこれを準用する。(平一一法一四九・一部改正)

第873条【利息の付加,後見人の金銭消費の責任】
後見人が被後見人に返還すべき金額及び被後見人が後見人に返還すべき金額には,後見の計算が終了した時から,利息をつけなければならない。
A後見人が自己のために被後見人の金銭を消費したときは,その消費の時から,これに利息をつけなければならない。なお,損害があつたときは,その賠償の責に任ずる。

第874条【委任の規定の準用】
第654条〔委任終了後の応急処分義務〕及び第655条〔委任終了の対抗要件〕の規定は,後見にこれを準用する。

第875条【後見に関する債権の消滅時効】
第832条〔管理に関する親子間の債権の消滅時効〕に定める時効は,後見人又は後見監督人と被後見人との間において後見に関して生じた債権にこれを準用する。
A前項の時効は,第872条〔未成年者・後見人間の契約の取消し〕の規定によつて法律行為を取り消した場合には,その取消の時から,これを起算する。

第五章の二 保佐及び補助(平一一法一四九・章名追加)

第一節 保佐(平一一法一四九・節名追加)

第876条【保佐】
保佐は,保佐開始の審判によつて開始する。(平一一法一四九・全改)

第876条の2【保佐人の選任】
家庭裁判所は,保佐開始の審判をするときは,職権で,保佐人を選任する。
A第843条第2項から第4項まで〔成年後見人の選任〕及び第844条から第847条まで〔後見人の辞任・解任・欠格事由〕の規定は,保佐人について準用する。
B保佐人又はその代表する者と被保佐人との利益が相反する行為については,保佐人は,臨時保佐人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。ただし,保佐監督人がある場合は,この限りでない。(平一一法一四九・追加)

第876条の3【保佐監督人の選任】
家庭裁判所は,必要があると認めるときは,被保佐人,その親族若しくは保佐人の請求によつて,又は職権で,保佐監督人を選任することができる。
A第644条〔受任者の注意義務〕,第654条〔委任終了の際の応急処分の義務〕,第655条〔委任終了の対抗要件〕,第843条第4項〔成年後見人選任の際の考慮事項〕,第844条〔後見人の辞任〕,第846条〔後見人の解任〕,第847条〔後見人の欠格事由〕,第850条〔後見監督人の欠格〕,第851条〔後見監督人の職務〕,第859条の2〔成年後見人が数人あるとき〕,第859条の3〔建物等の処分に関する許可〕,第861条第2項〔必要費の支弁〕及び第862条〔後見人の報酬〕の規定は,保佐監督人について準用する。この場合において,第851条第4号中「被後見人を代表する」とあるのは,「被保佐人を代表し,又は被保佐人がこれをすることに同意する」と読み替えるものとする。(平一一法一四九・追加)

第876条の4【保佐人に代理権を付与する審判,その取消し】
家庭裁判所は,第11条本文〔保佐開始の審判〕に掲げる者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求によつて,被保佐人のために特定の法律行為について保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができる。
A本人以外の者の請求によつて前項の審判をするには,本人の同意がなければならない。
B家庭裁判所は,第1項に掲げる者の請求によつて,同項の審判の全部又は一部を取り消すことができる。(平一一法一四九・追加)

第876条の5【保佐人の義務】
保佐人は,保佐の事務を行うに当たつては,被保佐人の意思を尊重し,かつ,その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。
A第644条〔受任者の注意義務〕,第859条の2〔成年後見人が数人あるとき〕,第859条の3〔建物等の処分に関する許可〕,第861条第2項〔必要費の支弁〕,第862条〔後見人の報酬〕及び第863条〔後見事務の監督〕の規定は保佐の事務について,第824条ただし書〔親権者の子の行為を目的とする債務を生ずべき場合の子の同意〕の規定は保佐人が前条第1項の代理権を付与する旨の審判に基づき被保佐人を代表する場合について準用する。
B第654条〔委任終了の際の応急処分の義務〕,第655条〔委任終了の対抗要件〕,第870条〔後見人の管理の計算〕,第871条〔後見監督人の立会い〕及び第873条〔利息の付加,後見人の金銭消費の責任〕の規定は保佐人の任務が終了した場合について,第832条〔管理に関する親子間の債権の消滅時効〕の規定は保佐人又は保佐監督人と被保佐人との間において保佐に関して生じた債権について準用する。(平一一法一四九・追加)

第二節 補助(平一一法一四九・追加)

第876条の6【補助】
補助は,補助開始の審判によつて開始する。(平一一法一四九・追加)

第876条の7【補助人の選任】
家庭裁判所は,補助開始の審判をするときは,職権で,補助人を選任する。
A第843条第2項から第4項まで〔成年後見人の選任〕及び第844条から第847条まで〔後見人の辞任,後見人選任請求義務,後見人の解任,後見人の欠格事由〕の規定は,補助人について準用する。
B補助人又はその代表する者と被補助人との利益が相反する行為については,補助人は,臨時補助人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。ただし,補助監督人がある場合は,この限りでない。(平一一法一四九・追加)

第876条の8【補助監督人の選任】
家庭裁判所は,必要があると認めるときは,被補助人,その親族若しくは補助人の請求によつて,又は職権で,補助監督人を選任することができる。
A第644条〔受任者の注意義務〕,第654条〔委任終了の際の応急処分義務〕,第655条〔委任終了の対抗要件〕,第843条第4項〔成年後見人の追加選任〕,第844条〔後見人の辞任〕,第846条〔後見人の解任〕,第847条〔後見人の欠格事由〕,第850条〔後見監督人の欠格〕,第851条〔後見監督人の職務〕,第859条の2〔成年後見人が数人あるとき〕,第859条の3〔建物等の処分に関する許可〕,第861条第2項〔必要費の支弁〕及び第862条〔後見人の報酬〕の規定は,補助監督人について準用する。この場合において,第851条第4号中「被後見人を代表する」とあるのは,「被補助人を代表し,又は被補助人がこれをすることに同意する」と読み替えるものとする。(平一一法一四九・追加)

第876条の9【補助人に代理権を付与する審判,その取消し】
家庭裁判所は,第14条第1項本文に掲げる者又は補助人若しくは補助監督人の請求によつて,被補助人のために特定の法律行為について補助人に代理権を付与する旨の審判をすることができる。
A第876条の4第2項〔保佐人に代理権を付与する審判の際の本人の同意〕及び第3項〔保佐人に代理権を付与する審判の取消し〕の規定は,前項の審判について準用する。(平一一法一四九・追加)

第876条の10【補助人の義務】
第644条〔受任者の注意義務〕,第859条の2〔成年後見人が数人あるとき〕,第859条の3〔建物等の処分に関する許可〕,第861条第2項〔必要費の支弁〕,第862条〔後見人の報酬〕,第863条〔後見事務の監督〕及び第876条の5第1項〔保佐人の義務〕の規定は補助の事務について,第824条ただし書〔親権者の子の行為を目的とする債務を生ずべき場合の本人の同意〕の規定は補助人が前条第1項の代理権を付与する旨の審判に基づき被補助人を代表する場合について準用する。
A第654条〔委任終了の際の応急処分の義務〕,第655条〔委任終了の対抗要件〕,第870条〔後見の管理の計算〕,第871条〔後見監督人の立会い〕及び第873条〔利息の付加,後見人の金銭消費の責任〕の規定は補助人の任務が終了した場合について,第832条〔管理に関する親子間の債権の消滅時効〕の規定は補助人又は補助監督人と被補助人との間において補助に関して生じた債権について準用する。(平一一法一四九・追加)