民法 第四編 親族 (昭二二法二二二・全改)



第一章 総則

第725条【親族の範囲】

左に掲げる者は、これを親族とする。
 一 六親等内の血族
 二 配偶者
 三 三親等内の姻族

第726条【親等の計算】

親族は、親族間の世数を数えて、これを定める。
A 傍系親族の親等を定めるには、その1人又はその配偶者から同一の始祖にさかのぼり、その始祖から他の1人に下るまでの世数による。

第727条【縁組による親族関係の発生】

養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけると同一の親族関係を生ずる。

第728条【姻族関係の消滅】

姻族関係は、離婚によつて終了する。
A 夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときも、前項と同様である。

第729条【離縁による親族関係の消滅】

養子、その配偶者、直系卑属及びその配偶者と養親及びその血族との親族関係は、離縁によつて終了する。

第730条【親族間の扶け合い義務】

直系血族及び同居の親族は、互に扶け合わなければならない。

第二章 婚姻

第一節 婚姻の成立

第一款 婚姻の要件

第731条【婚姻適齢】

男は、満18歳に、女は、満16歳にならなければ、婚姻をすることができない。

第732条【重婚の禁止】

配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。

第733条【再婚禁止期間】

女は、前婚の解消又は取消の日から6箇月を経過した後でなければ、再婚をすることができない。
A 女が前婚の解消又は取消の前から懐胎していた場合には、その出産の日から、前項の規定を適用しない。

第734条【近親婚の制限】

直系血族又は三親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることができない。但し、養子と養方の傍系血族との間では、この限りでない。
A 第817条の9の規定によつて親族関係が終了した後も、前項と同様とする。 (昭六二法一〇一・一部改正)

第735条【直系姻族間の婚姻禁止】

直系姻族の間では、婚姻をすることができない。第728条又は第817条の9の規定によつて姻族関係が終了した後も、同様である。 (昭六二法一〇一・一部改正)

第736条【養親子関係者の婚姻禁止】

養子、その配偶者、直系卑属又はその配偶者と養親又はその直系尊属との間では、第729条〔離縁による親族関係の消滅〕の規定によつて親族関係が終了した後でも、婚姻をすることができない。

第737条【未成年者の婚姻】

未成年の子が婚姻をするには、父母の同意を得なければならない。
A 父母の一方が同意しないときは、他の一方の同意だけで足りる。父母の一方が知れないとき、死亡したとき、又はその意思を表示することができないときも、同様である。

第738条【成年被後見人の婚姻】

成年被後見人が婚姻をするには、その成年後見人の同意を要しない。 (平一一法一四九・一部改正)

第739条【婚姻の届出】

婚姻は、戸籍法の定めるところによりこれを届け出ることによつて、その効力を生ずる。
A 前項の届出は、当事者双方及び成年の証人2人以上から、口頭又は署名した書面で、これをしなければならない。

第740条【婚姻届出の審査】

婚姻の届出は、その婚姻が第731条乃至第737条〔婚姻障害〕及び前条第2項の規定その他の法令に違反しないことを認めた後でなければ、これを受理することができない。

第741条【在外日本人間の婚姻の届出】

外国に在る日本人間で婚姻をしようとするときは、その国に駐在する日本の大使、公使又は領事にその届出をすることができる。この場合には、前2条の規定を準用する。

第二款 婚姻の無効及び取消

第742条【婚姻の無効】

婚姻は、左の場合に限り、無効とする。
 一 人違その他の事由によつて当事者間に婚姻をする意思がないとき。
 二 当事者が婚姻の届出をしないとき。但し、その届出が第739条第2項に掲げる条件を欠くだけであるときは、婚姻は、これがために、その効力を妨げられることがない。

第743条【婚姻の取消し】

婚姻は、第744条乃至第747条の規定によらなければ、これを取り消すことができない。

第744条【婚姻取消事由,取消権者】

第731条乃至第736条〔婚姻障害〕の規定に違反した婚姻は、各当事者、その親族又は検察官から、その取消を裁判所に請求することができる。但し、検察官は、当事者の一方が死亡した後は、これを請求することができない。
A 第732条〔重婚の禁止〕又は第733条〔再婚禁止期間〕の規定に違反した婚姻については、当事者の配偶者又は前配偶者も、その取消を請求することができる。

第745条【不適齢婚取消権の消滅】

第731条〔婚姻適齢〕の規定に違反した婚姻は、不適齢者が適齢に達したときは、その取消を請求することができない。
A 不適齢者は、適齢に達した後、なお3箇月間は、その婚姻の取消を請求することができる。但し、適齢に達した後に追認をしたときは、この限りでない。

第746条【再婚禁止期間内の婚姻の取消権の消滅】

第733条〔再婚禁止期間〕の規定に違反した婚姻は、前婚の解消若しくは取消の日から6箇月を経過し、又は女が再婚後に懐胎したときは、その取消を請求することができない。

第747条【詐欺・強迫による婚姻の取消し】

詐欺又は強迫によつて婚姻をした者は、その婚姻の取消を裁判所に請求することができる。
A 前項の取消権は、当事者が、詐欺を発見し、若しくは強迫を免かれた後3箇月を経過し、又は追認をしたときは、消滅する。

第748条【婚姻取消しの効果】

婚姻の取消は、その効力を既往に及ぼさない。
A 婚姻の当時その取消の原因があることを知らなかつた当事者が、婚姻によつて財産を得たときは、現に利益を受ける限度において、その返還をしなければならない。
B 婚姻の当時その取消の原因があることを知つていた当事者は、婚姻によつて得た利益の全部を返還しなければならない。なお、相手方が善意であつたときは、これに対して損害を賠償する責に任ずる。

第749条【離婚の規定の準用】

第766条乃至第769条の規定は、婚姻の取消につきこれを準用する。

第二節 婚姻の効力

第750条【夫婦の氏】

夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。

第751条【生存配偶者の復氏】

夫婦の一方が死亡したときは、生存配偶者は、婚姻前の氏に復することができる。
A 第769条〔離婚による復氏の際の祭具等の承継〕の規定は、前項及び第728条第2項〔配偶者の死亡と生存配偶者の姻族関係終了の意思表示〕の場合にこれを準用する。

第752条【同居・協力扶助の義務】

夫婦は同居し、互に協力し扶助しなければならない。

第753条【婚姻による成年】

未成年者が婚姻をしたときは、これによつて成年に達したものとみなす。

第754条【夫婦間の契約の取消権】

夫婦間で契約をしたときは、その契約は、婚姻中、何時でも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる。但し、第三者の権利を害することができない。

第三節 夫婦財産制

第一款 総則

第755条【夫婦の財産関係の規律】

夫婦が、婚姻の届出前に、その財産について別段の契約をしなかつたときは、その財産関係は、次の款に定めるところによる。

第756条【夫婦財産契約の対抗要件】

夫婦が法定財産制と異なる契約をしたときは、婚姻の届出までにその登記をしなければ、これを夫婦の承継人及び第三者に対抗することができない。

第757条【外国人の夫婦財産契約の対抗要件】

削除 (平元法二七)

第758条【夫婦財産関係の変更の禁止,管理者の変更,共有財産の分割】

夫婦の財産関係は、婚姻届出の後は、これを変更することができない。
A 夫婦の一方が、他の一方の財産を管理する場合において、管理が失当であつたことによつてその財産を危うくしたときは、他の一方は、自らその管理をすることを家庭裁判所に請求することができる。
B 共有財産については、前項の請求とともにその分割を請求することができる。 (昭二三法二六〇・一部改正)

第759条【管理者変更・共有財産の分割と対抗要件】

前条の規定又は契約の結果によつて、管理者を変更し、又は共有財産の分割をしたときは、その登記をしなければ、これを夫婦の承継人及び第三者に対抗することができない。

第二款 法定財産制

第760条【婚姻費用の分担】

夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。

第761条【日常家事債務の連帯責任】

夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによつて生じた債務について、連帯してその責に任ずる。但し、第三者に対し責に任じない旨を予告した場合は、この限りでない。

第762条【特有財産,帰属不明財産の共有推定】

夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産とする。
A 夫婦のいずれに属するか明かでない財産は、その共有に属するものと推定する。

第四節 離婚

第一款 協議上の離婚

第763条【協議離婚】

夫婦は、その協議で、離婚をすることができる。

第764条【婚姻の規定の準用】

第738条〔成年被後見人の婚姻〕、第739条〔婚姻の届出〕及び第747条〔詐欺・強迫による婚姻の取消し〕の規定は、協議上の離婚にこれを準用する。

第765条【離婚届出の審査】

離婚の届出は、その離婚が第739条第2項〔婚姻の届出〕及び第819条第1項の規定〔親権者の決定〕その他の法令に違反しないことを認めた後でなければ、これを受理することができない。
A 離婚の届出が前項の規定に違反して受理されたときでも、離婚は、これがために、その効力を妨げられることがない。

第766条【離婚後の子の監護】

父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者その他監護について必要な事項は、その協議でこれを定める。協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、これを定める。
A 子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の監護をすべき者を変更し、その他監護について相当な処分を命ずることができる。
B 前2項の規定は、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を生ずることがない。 (昭二三法二六〇・一部改正)

第767条【離婚による復氏】

婚姻によつて氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によつて婚姻前の氏に復する。
A 前項の規定によつて婚姻前の氏に復した夫又は妻は、離婚の日から3箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによつて、離婚の際に称していた氏を称することができる。 (昭五一法六六・一部改正)

第768条【離婚による財産分与】

協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
A 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。但し、離婚の時から2年を経過したときは、この限りでない。
B 前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によつて得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。 (昭二三法二六〇・一部改正)

第769条【離婚による復氏の際の祭具等の承継】

婚姻によつて氏を改めた夫又は妻が、第897条第1項〔系譜・祭具・墳墓〕の権利を承継した後、協議上の離婚をしたときは、当事者その他の関係人の協議で、その権利を承継すべき者を定めなければならない。
A 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、前項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所がこれを定める。 (昭二三法二六〇・一部改正)

第二款 裁判上の離婚

第770条【嫡出の推定】

夫婦の一方は、左の場合に限り、離婚の訴を提起することができる。
 一 配偶者に不貞な行為があつたとき。
 二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
 三 配偶者の生死が三年以上明かでないとき。
 四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込がないとき。
 五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
A 裁判所は、前項第一号乃至第四号の事由があるときでも、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

第771条【協議離婚の規定の準用】

第766条乃至第769条〔狭義離婚後の子の監護,狭義離婚による復氏,狭義離婚による財産分与,協議離婚による復氏の際の祭具等の承継〕の規定は、裁判上の離婚にこれを準用する。

第三章 親子

第一節 実子

第772条【嫡出の推定】

妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
A 婚姻成立の日から200日後又は婚姻の解消若しくは取消の日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。

第773条【父を定める訴え】

第733条第1項〔再婚禁止期間〕の規定に違反して再婚をした女が出産した場合において、前条の規定によつてその子の父を定めることができないときは、裁判所が、これを定める。

第774条【嫡出の否認】

第772条の場合において、夫は、子が嫡出であることを否認することができる。

第775条【嫡出否認権の行使−嫡出否認の訴え】

前条の否認権は、子又は親権を行う母に対する訴によつてこれを行う。親権を行う母がないときは、家庭裁判所は、特別代理人を選任しなければならない。 (昭二三法二六〇・一部改正)

第776条【嫡出性の承認】

夫が、子の出生後において、その嫡出であることを承認したときは、その否認権を失う。

第777条【嫡出否認の訴えの提起期間】

否認の訴は、夫が子の出生を知つた時から1年以内にこれを提起しなければならない。

第778条【成年被後見人の否認の訴え提起期間の起算】

夫が成年被後見人であるときは、前条の期間は、後見開始の審判の取消しがあつた後夫が子の出生を知つた時から、これを起算する。 (平一一法一四九・一部改正)

第779条【認知】

嫡出でない子は、その父又は母がこれを認知することができる。

第780条【認知能力】

認知をするには、父又は母が未成年者又は成年被後見人であるときでも、その法定代理人の同意を要しない。 (平一一法一四九・一部改正)

第781条【認知の届出,遺言による認知】

認知は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによつてこれをする。
A 認知は、遺言によつても、これをすることができる。

第782条【成年の子の認知】

成年の子は、その承諾がなければ、これを認知することができない。

第783条【胎児・死亡子の認知】

父は、胎内に在る子でも、これを認知することができる。この場合には、母の承諾を得なければならない。
A 父又は母は、死亡した子でも、その直系卑属があるときに限り、これを認知することができる。この場合において、その直系卑属が成年者であるときは、その承諾を得なければならない。

第784条認知の遡及効】

認知は、出生の時にさかのぼつてその効力を生ずる。但し、第三者が既に取得した権利を害することができない。

第785条【認知取消しの禁止】

認知をした父又は母は、その認知を取り消すことができない。

第786条【認知に対する反対事実の主張】

子その他の利害関係人は、認知に対して反対の事実を主張することができる。

第787条【認知の訴え−強制認知】

子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、認知の訴を提起することができる。但し、父又は母の死亡の日から3年を経過したときは、この限りでない。

第788条【認知後の子の監護】

第766条〔離婚後の子の監護〕の規定は、父が認知する場合にこれを準用する。

第789条【準正】

父が認知した子は、その父母の婚姻によつて嫡出子たる身分を取得する。
A 婚姻中父母が認知した子は、その認知の時から、嫡出子たる身分を取得する。
B 前2項の規定は、子が既に死亡した場合にこれを準用する。

第790条【子の氏】

嫡出である子は、父母の氏を称する。但し、子の出生前に父母が離婚したときは、離婚の際における父母の氏を称する。
A 嫡出でない子は、母の氏を称する。

第791条【子の氏の変更】

子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の定めるところにより届け出ることによつて、その父又は母の氏を称することができる。
A 父又は母が氏を改めたことにより子が父母と氏を異にする場合には、子は、父母の婚姻中に限り、前項の許可を得ないで、戸籍法の定めるところにより届け出ることによつて、その父母の氏を称することができる。
B 子が15歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わつて、前2項の行為をすることができる。
C 前3項の規定によつて氏を改めた未成年の子は、成年に達した時から1年以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによつて、従前の氏に復することができる。 (昭二三法二六〇・昭六二法一〇一・一部改正)

第二節 養子

第一款 縁組の要件

第792条【養子をする能力】

成年に達した者は、養子をすることができる。

第793条【尊属養子・年長者養子の禁止】

尊属又は年長者は、これを養子とすることができない。

第794条【後見人と被後見人の縁組】

後見人が被後見人(未成年被後見人及び成年被後見人をいう。以下同じ。)を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。後見人の任務が終了した後、まだ管理の計算が終わらない間も、同様である。 (昭二三法二六〇・平一一法一四九・一部改正)

第795条【配偶者のある者の縁組(1)−未成年者を養子とする場合】

配偶者のある者が未成年者を養子とするには、配偶者とともにしなければならない。ただし、配偶者の嫡出である子を養子とする場合{いわゆる連れ子養子}又は配偶者がその意思を表示することができない場合は、この限りでない{単独縁組となる}。 (昭六二法一〇一・全改)

第796条【配偶者のある者の縁組(2)−配偶者の同意】

配偶者のある者が縁組をするには、その配偶者の同意を得なければならない。ただし、配偶者とともに縁組をする場合又は配偶者がその意思を表示することができない場合は、この限りでない。 (昭六二法一〇一・全改)

第797条【15歳未満の養子−代諾養子】

養子となる者が15歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わつて、縁組の承諾をすることができる。
A 法定代理人が前項の承諾をするには、養子となる者の父母でその監護をすべき者であるものが他にあるときは、その同意を得なければならない。 (昭六二法一〇一・一部改正)

第798条【未成年の養子】

未成年者を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。但し、自己又は配偶者の直系卑属を養子とする場合は、この限りでない。 (昭二三法二六〇・一部改正)

第799条【婚姻の規定の準用】

第738条〔成年被後見人の婚姻〕及び第739条〔婚姻の届出〕の規定は、縁組にこれを準用する。

第800条【縁組届出の審査】

縁組の届出は、その縁組が第792条乃至前条の規定〔養子縁組の要件〕その他の法令に違反しないことを認めた後でなければ、これを受理することができない。

第801条【在外日本人間の縁組の届出】

外国に在る日本人間で縁組をしようとするときは、その国に駐在する日本の大使、公使又は領事にその届出をすることができる。この場合には、第739条〔婚姻の届出〕及び前条の規定を準用する。

第二款 縁組の無効及び取消

第802条【縁組の無効】

縁組は左の場合に限り、無効とする。
 一 人違その他の事由によつて当事者間に縁組をする意思がないとき。
 二 当事者が縁組の届出をしないとき。但し、その届出が第739条第2項〔婚姻の届出〕に掲げる条件を欠くだけであるときは、縁組は、これがために、その効力を妨げられることがない。

第803条【縁組の取消し】

縁組は、第804条乃至第808条の規定によらなければ、これを取り消すことができない。

第804条【養親が未成年者である縁組の取消し】

第792条〔養子をする能力〕の規定に違反した縁組は、養親又はその法定代理人から、その取消を裁判所に請求することができる。但し、養親が、成年に達した後6箇月を経過し、又は追認をしたときは、この限りでない。

第805条【養子が尊属又は年長者である縁組の取消し】

第793条〔尊属養子・年長者養子の禁止〕の規定に違反した縁組は、各当事者又はその親族から、その取消を裁判所に請求することができる。

第806条【後見人と被後見人の無許可縁組の取消し】

第794条〔後見人と被後見人の縁組〕の規定に違反した縁組は、養子又はその実方の親族から、その取消を裁判所に請求することができる。但し、管理の計算が終わつた後、養子が追認をし、又は6箇月を経過したときは、この限りでない。
A 追認は、養子が、成年に達し、又は能力を回復した後、これをしなければ、その効力がない。
B 養子が、成年に達せず、又は能力を回復しない間に、管理の計算が終わつた場合には、第1項但書の期間は、養子が、成年に達し、又は能力を回復した時から、これを起算する。

第806条の2【配偶者の同意を欠く縁組等の取消し】

第796条〔配偶者のある者の縁組における配偶者の同意〕の規定に違反した縁組は、縁組の同意をしていない者から、その取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その者が、縁組を知つた後6箇月を経過し、又は追認をしたときは、この限りでない。
A 詐欺又は強迫によつて第796条の同意をした者は、その縁組の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その者が、詐欺を発見し、若しくは強迫を免れた後6箇月を経過し、又は追認をしたときは、この限りでない。 (昭六二法一〇一・追加)

第806条の3【監護者の同意を欠く縁組の取消し】

第797条第2項〔代諾養子の場合の監護者の同意を欠く縁組〕の規定に違反した縁組は、縁組の同意をしていない者から、その取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その者が追認をしたとき、又は養子が15歳に達した後6箇月を経過し、若しくは追認をしたときは、この限りでない。
A 前条第2項の規定は、詐欺又は強迫によつて第797条第2項の同意をした者にこれを準用する。 (昭六二法一〇一・追加)

第807条【未成年者を養子とする無許可縁組の取消し】

第798条〔未成年養子の場合の家庭裁判所の許可〕の規定に違反した縁組は、養子、その実方の親族又は養子に代わつて縁組の承諾をした者から、その取消を裁判所に請求することができる。但し、養子が、成年に達した後6箇月を経過し、又は追認をしたときは、この限りでない。

第808条【婚姻取消し・離婚の規定の準用】

第747条〔詐欺・強迫による婚姻の取消し〕及び第748条〔婚姻取消しの効果〕の規定は、縁組にこれを準用する。但し、第747条第2項の期間は、これを6箇月とする。 A 第769条〔離婚による復氏の際の祭具等の承継〕及び第816条〔離縁による復氏〕の規定は、縁組の取消にこれを準用する。

第三款 縁組の効力

第809条【嫡出親子関係の発生】

養子は、縁組の日から、養親の嫡出子たる身分を取得する。

第810条【養子の氏】

養子は、養親の氏を称する。ただし、婚姻によつて氏を改めた者については、婚姻の際に定めた氏を称すべき間は、この限りでない。 (昭六二法一〇一・一部改正)

第四款 離縁

第811条【協議離縁】

縁組の当事者は、その協議で、離縁をすることができる。
A 養子が15歳未満であるときは、その離縁は、養親と養子の離縁後にその法定代理人となるべき者との協議でこれをする。
B 前項の場合において、養子の父母が離婚しているときは、その協議で、その一方を養子の離縁後にその親権者となるべき者と定めなければならない。
C 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、前項の父若しくは母又は養親の請求によつて、協議に代わる審判をすることができる。
D 第2項の法定代理人となるべき者がないときは、家庭裁判所は、養子の親族その他の利害関係人の請求によつて、養子の離縁後にその未成年後見人となるべき者を選任する。
E 縁組の当事者の一方が死亡した後に生存当事者が離縁をしようとするときは、家庭裁判所の許可を得て、これをすることができる。 (昭二三法二六〇・昭三七法四〇・昭六二法一〇一・平一一法一四九・一部改正)

第811条の2【養親が夫婦である場合の離縁】

養親が夫婦である場合において未成年者と離縁をするには、夫婦がともにしなければならない。ただし、夫婦の一方がその意思を表示することができないときは、この限りでない。 (昭六二法一〇一・追加)

第812条【婚姻等の規定の準用】

第738条〔成年被後見人の婚姻〕、第739条〔婚姻の届出〕、第747条及び第808条第1項但書〔詐欺・強迫による婚姻・縁組の取消し〕の規定は、協議上の離縁にこれを準用する。

第813条【離縁届の審査】

離縁の届出は、その離縁が第739条第2項〔婚姻の届出〕、第811条〔協議離縁〕及び第811条の2〔夫婦共同離縁〕の規定その他の法令に違反しないことを認めた後でなければ、これを受理することができない。
A 離縁の届出が前項の規定に違反して受理されたときでも、離縁は、これがために、その効力を妨げられることがない。 (昭六二法一〇一・一部改正)

第814条【離縁原因】

縁組の当事者の一方は、次の場合に限り、離縁の訴えを提起することができる。
 一 他の一方から悪意で遺棄されたとき。
 二 他の一方の生死が3年以上明らかでないとき。
 三 その他縁組を継続し難い重大な事由があるとき。
A 第770条第2項〔婚姻継続の相当事由〕の規定は、前項第一号及び第二号の場合にこれを準用する。 (昭六二法一〇一・一部改正)

第815条【養子が15歳未満の場合の離縁の訴え】

養子が満15歳に達しない間は、第811条の規定によつて養親と離縁の協議をすることができる者から、又はこれに対して、離縁の訴を提起することができる。 (昭三七法四〇・一部改正)

第816条【離縁による復氏】

養子は、離縁によつて縁組前の氏に復する。ただし、配偶者とともに養子をした養親の一方のみと離縁をした場合は、この限りでない。
A 縁組の日から7年を経過した後に前項の規定によつて縁組前の氏に復した者は、離縁の日から3箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによつて、離縁の際に称していた氏を称することができる。 (昭六二法一〇一・一部改正)

第817条【離縁による復氏の際の祭具等の承継】

第769条〔離婚による復氏の際の祭具の承継〕の規定は、離縁にこれを準用する。

第五款 特別養子 (昭六二法一〇一・追加)

第817条の2【特別養子縁組の成立】

家庭裁判所は、次条から第817条の7までに定める要件があるときは、養親となる者の請求により、実方の血族との親族関係が終了する縁組(この款において「特別養子縁組」という。)を成立させることができる。
A 前項に規定する請求をするには、第794条〔後見人と被後見人の縁組〕又は第798条〔未成年養子〕の許可を得ることを要しない。 (昭六二法一〇一・追加)

第817条の3【夫婦共同縁組】

養親となる者は、配偶者のある者でなければならない。A 夫婦の一方は、他の一方が養親とならないときは、養親となることができない。ただし、夫婦の一方が他の一方の嫡出である子(特別養子縁組以外の縁組による養子を除く。)の養親となる場合は、この限りでない。 (昭六二法一〇一・追加)

第817条の4【養親の年齢】

25歳に達しない者は、養親となることができない。ただし、養親となる夫婦の一方が25歳に達していない場合においても、その者が20歳に達しているときは、この限りでない。 (昭六二法一〇一・追加)

第817条の5【養子の年齢】

第817条の2に規定する請求の時に6歳に達している者は、養子となることができない。ただし、その者が8歳未満であつて6歳に達する前から引き続き養親となる者に監護されている場合は、この限りでない。 (昭六二法一〇一・追加)

第817条の6【父母の同意】

特別養子縁組の成立には、養子となる者の父母の同意がなければならない。ただし、父母がその意思を表示することができない場合又は父母による虐待、悪意の遺棄その他養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合は、この限りでない。 (昭六二法一〇一・追加)

第817条の7【特別養子縁組の必要性】

特別養子縁組は、父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当であることその他特別の事情がある場合において、子の利益のため特に必要があると認めるときに、これを成立させるものとする。 (昭六二法一〇一・追加)

第817条の8【事前監護の状況の考慮】

特別養子縁組を成立させるには、養親となる者が養子となる者を6箇月以上の期間監護した状況を考慮しなければならない。
A 前項の期間は、第817条の2に規定する請求の時から起算する。ただし、その請求前の監護の状況が明らかであるときは、この限りでない。 (昭六二法一〇一・追加)

第817条の9【実方血族との親族関係の終了】

養子と実方の父母及びその血族との親族関係は、特別養子縁組によつて終了する。ただし、第817条の3第2項ただし書に規定する他の一方及びその血族との親族関係については、この限りでない。 (昭六二法一〇一・追加)

第817条の10【離縁】

次の各号のいずれにも該当する場合において、養子の利益のため特に必要があると認めるときは、家庭裁判所は、養子、実父母又は検察官の請求により、特別養子縁組の当事者を離縁させることができる。
 一 養親による虐待、悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する事由があること。
 二 実父母が相当の監護をすることができること。
A 離縁は、前項の規定による場合のほか、これをすることができない。 (昭六二法一〇一・追加)

第817条の11【実父母等との親族関係の回復】

養子と実父母及びその血族との間においては、離縁の日から、特別養子縁組によつて終了した親族関係と同一の親族関係を生ずる。 (昭六二法一〇一・追加)

第四章 親権

第一節 総則

第818条【親権者−父母の共同親権】

成年に達しない子は、父母の親権に服する。
A 子が養子であるときは、養親の親権に服する。
B 親権は、父母の婚姻中は、父母が共同してこれを行う。但し、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が、これを行う。

第819条【離婚及び父が認知した場合の親権者】

父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。
A 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。
B 子の出生前に父母が離婚した場合には、親権は、母がこれを行う。但し、子の出生後に、父母の協議で、父を親権者と定めることができる。
C 父が認知した子に対する親権は、父母の協議で父を親権者と定めたときに限り、父がこれを行う。
D 第1項、第3項又は前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求によつて、協議に代わる審判をすることができる。
E 子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によつて、親権者を他の一方に変更することができる。 (昭二三法二六〇・一部改正)

第二節 親権の効力

第820条【監護教育の権利義務】

親権を行う者は、子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。

第821条【居所指定権】

子は、親権を行う者が指定した場所に、その居所を定めなければならない。

第822条【懲戒権】

親権を行う者は、必要な範囲内で自らその子を懲戒し、又は家庭裁判所の許可を得て、これを懲戒場に入れることができる。
A 子を懲戒場に入れる期間は、6箇月以下の範囲内で、家庭裁判所がこれを定める。但し、この期間は、親権を行う者の請求によつて、何時でも、これを短縮することができる。 (昭二三法二六〇・一部改正)

第823条【職業許可権】

子は、親権を行う者の許可を得なければ、職業を営むことができない。
A 親権を行う者は、第6条第2項の場合には、前項の許可を取り消し、又はこれを制限することができる。

第824条【財産管理と代理権】

親権を行う者は、子の財産を管理し、又、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。但し、その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意を得なければならない。

第825条【共同親権者の一方が共同名義でした行為】

父母が共同して親権を行う場合において、父母の一方が、共同の名義で、子に代わつて法律行為をし、又は子のこれをすることに同意したときは、その行為は、他の一方の意思に反したときでも、これがために、その効力を妨げられることがない。但し、相手方が悪意であつたときは、この限りでない。

第826条【親権者と子又は数人の子の利益相反行為】

親権を行う父又は母とその子と利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
A 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その1人と他の子との利益が相反する行為については、その一方のために、前項の規定を準用する。 (昭二三法二六〇・一部改正)

第827条【親権者の注意義務】

親権を行う者は、自己のためにすると同一の注意を以て、その管理権を行わなければならない。

第828条【財産管理の計算】

子が成年に達したときは、親権を行つた者は、遅滞なくその管理の計算をしなければならない。但し、その子の養育及び財産の管理の費用は、その子の財産の収益とこれを相殺したものとみなす。

第829条【財産管理計算の特則】

前条但書の規定は、無償で子に財産を与える第三者が反対の意思を表示したときは、その財産については、これを適用しない。

第830条【第三者が子に無償で与えた財産の管理】

無償で子に財産を与える第三者が、親権を行う父又は母にこれを管理させない意思を表示したときは、その財産は、父又は母の管理に属しないものとする。
A 前項の財産につき父母が共に管理権を有しない場合において、第三者が管理者を指定しなかつたときは、家庭裁判所は、子、その親族又は検察官の請求によつて、その管理者を選任する。
B 第三者が管理者を指定したときでも、その管理者の権限が消滅し、又はこれを改任する必要がある場合において、第三者が更に管理者を指定しないときも、前項と同様である。
C 第27条乃至第29条〔不在者の財産管理人の権利義務〕の規定は、前2項の場合にこれを準用する。 (昭二三法二六〇・一部改正)

第831条【委任の規定の準用】

第654条〔委任終了後の応急処分義務〕及び第655条〔委任終了の対抗要件〕の規定は、親権を行う者が子の財産を管理する場合及び前条の場合にこれを準用する。

第832条【管理に関する親子間の債権の消滅時効】

親権を行つた者とその子との間に財産の管理について生じた債権は、その管理権が消滅した時から5年間これを行わないときは、時効によつて消滅する。
A 子がまだ成年に達しない間に管理権が消滅した場合において子に法定代理人がないときは、前項の期間は、その子が成年に達し、又は後任の法定代理人が就職した時から、これを起算する。

第833条【子の親権の代行】

親権を行う者は、その親権に服する子に代わつて親権を行う。

第三節 親権の喪失

第834条【親権喪失の宣告】

父又は母が、親権を濫用し、又は著しく不行跡であるときは、家庭裁判所は、子の親族又は検察官の請求によつて、その親権の喪失を宣告することができる。 (昭二三法二六〇・一部改正)

第835条【管理権喪失の宣告】

親権を行う父又は母が、管理が失当であつたことによつてその子の財産を危うくしたときは、家庭裁判所は、子の親族又は検察官の請求によつて、その管理権の喪失を宣告することができる。 (昭二三法二六〇・一部改正)

第836条【失権宣告の取消し】

前2条に定める原因が止んだときは、家庭裁判所は、本人又はその親族の請求によつて、失権の宣告を取り消すことができる。 (昭二三法二六〇・一部改正)

第837条【親権・管理権の辞任及び回復】

親権を行う父又は母は、やむを得ない事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、親権又は管理権を辞することができる。
A 前項の事由が止んだときは、父又は母は、家庭裁判所の許可を得て、親権又は管理権を回復することができる。 (昭二三法二六〇・一部改正)

第五章 後見

第一節 後見の開始

第838条【後見開始の原因】

後見は、次に掲げる場合に開始する。
 一 未成年者に対して親権を行う者がないとき、又は親権を行う者が管理権を有しないとき。
 二 後見開始の審判があつたとき。 (平一一法一四九・一部改正)

第二節 後見の機関

第一款 後見人

第839条【未成年者の指定後見人】

未成年者に対して最後に親権を行う者は、遺言で、未成年後見人を指定することができる。ただし、管理権を有しない者は、この限りでない。
A 親権を行う父母の一方が管理権を有しないときは、他の一方は、前項の規定によつて未成年後見人の指定をすることができる。 (平一一法一四九・一部改正)

第840条【未成年後見人の選任】

前条の規定によつて未成年後見人となるべき者がないときは、家庭裁判所は、未成年被後見人又はその親族その他の利害関係人の請求によつて、未成年後見人を選任する。未成年後見人が欠けたときも、同様である。 (平一一法一四九・全改)

第841条【未成年後見人選任請求義務】

父若しくは母が親権若しくは管理権を辞し、又は親権を失つたことによつて未成年後見人を選任する必要が生じたときは、その父又は母は、遅滞なく未成年後見人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。 (平一一法一四九・全改)

第842条【未成年後見人の数】

未成年後見人は、1人でなければならない。 (平一一法一四九・全改)

第843条【成年後見人の選任】

家庭裁判所は、後見開始の審判をするときは、職権で、成年後見人を選任する。
A 成年後見人が欠けたときは、家庭裁判所は、成年被後見人若しくはその親族その他の利害関係人の請求によつて、又は職権で、成年後見人を選任する。
B 成年後見人が選任されている場合においても、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前項に掲げる者若しくは成年後見人の請求によつて、又は職権で、更に成年後見人を選任することができる。
C 成年後見人を選任するには、成年被後見人の心身の状態並びに生活及び財産の状況、成年後見人となる者の職業及び経歴並びに成年被後見人との利害関係の有無(成年後見人となる者が法人であるときは、その事業の種類及び内容並びにその法人及びその代表者と成年被後見人との利害関係の有無)、成年被後見人の意見その他一切の事情を考慮しなければならない。 (平一一法一四九・全改)

第844条【後見人の辞任】

後見人は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができる。 (昭二三法二六〇・一部改正)

第845条【後見人選任請求義務】

後見人がその任務を辞したことによつて新たに後見人を選任する必要が生じたときは、その後見人は、遅滞なく新たな後見人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。 (平一一法一四九・全改)

第846条【後見人の解任】

後見人に不正な行為、著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由があるときは、家庭裁判所は、後見監督人、被後見人若しくはその親族若しくは検察官の請求によつて、又は職権で、これを解任することができる。 (平一一法一四九・全改)

第847条【後見人の欠格事由】

次に掲げる者は、後見人となることができない。
 一 未成年者
 二 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
 三 破産者
 四 被後見人に対して訴訟をし、又はした者及びその配偶者並びに直系血族
 五 行方の知れない者 (平一一法一四九・全改)

第二款 後見監督人

第848条【未成年後見監督人の指定】

未成年後見人を指定することができる者は、遺言で、未成年後見監督人を指定することができる。 (平一一法一四九・一部改正)

第849条【未成年後見監督人の選任】

前条の規定によつて指定した未成年後見監督人がない場合において必要があると認めるときは、家庭裁判所は、未成年被後見人、その親族若しくは未成年後見人の請求によつて、又は職権で、未成年後見監督人を選任することができる。未成年後見監督人の欠けた場合も、同様である。 (昭二三法二六〇・平一一法一四九・一部改正)

第849条の2【成年後見監督人の選任】

家庭裁判所は、必要があると認めるときは、成年被後見人、その親族若しくは成年後見人の請求によつて、又は職権で、成年後見監督人を選任することができる。 (平一一法一四九・追加)

第850条【後見監督人の欠格】

後見人の配偶者、直系血族及び兄弟姉妹は、後見監督人となることができない。

第851条【後見監督人の職務】

後見監督人の職務は、左の通りである。
 一 後見人の事務を監督すること。
 二 後見人が欠けた場合に、遅滞なくその選任を家庭裁判所に請求すること。
 三 急迫の事情がある場合に、必要な処分をすること。
 四 後見人又はその代表する者と被後見人との利益が相反する行為について被後見人を代表すること。 (昭二三法二六〇・一部改正)

第852条【受任者及び後見人の規定の準用】

第644条〔受任者の注意義務〕、第654条〔応急処分〕、第655条〔委任終了の対抗要件〕、第843条第4項〔法人後見人,選任の基準〕、第844条〔辞任〕、第846条〔解任〕、第847条〔欠格事由〕、第859条の2〔複数の後見人〕、第859条の3〔建物等処分許可〕、第861条第2項〔事務費用〕及び第862条〔報酬〕の規定は、後見監督人について準用する。 (平一一法一四九・一部改正)

第三節 後見の事務

第853条【財産調査,財産目録調製】

後見人は、遅滞なく被後見人の財産の調査に著手し、1箇月以内に、その調査を終わり、且つ、その目録を調製しなければならない。但し、この期間は、家庭裁判所において、これを伸長することができる。
A 財産の調査及びその目録の調製は、後見監督人があるときは、その立会を以てこれをしなければ、その効力がない。 (昭二三法二六〇・一部改正)

第854条【目録調製前の権限】

後見人は、目録の調製が終わるまでは、急迫の必要がある行為のみをする権限を有する。但し、これを善意の第三者に対抗することができない。

第855条【被後見人に対する後見人の債権債務の申出】

後見人が、被後見人に対し、債権を有し、又は債務を負う場合において、後見監督人があるときは、財産の調査に著手する前に、これを後見監督人に申し出なければならない。
A 後見人が、被後見人に対し債権を有することを知つてこれを申し出ないときは、その債権を失う。

第856条【被後見人が取得した包括財産の調査等】

前3条の規定は、後見人が就職した後被後見人が包括財産を取得した場合にこれを準用する。

第857条【未成年者の身上に関する権利義務】

未成年後見人は、第820条から第823条まで〔監護教育・居所指定・懲戒・職業許可〕に規定する事項について、親権を行う者と同一の権利義務を有する。ただし、親権を行う者が定めた教育の方法及び居所を変更し、未成年被後見人を懲戒場に入れ、営業を許可し、その許可を取り消し、又はこれを制限するには、未成年後見監督人があるときは、その同意を得なければならない。 (平一一法一四九・一部改正)

第858条【成年後見人の義務】

成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たつては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。 (平一一法一四九・全改)

第859条【財産管理権と代理権】

後見人は、被後見人の財産を管理し、又、その財産に関する法律行為について被後見人を代表する。
A 第824条但書〔子の行為を目的とする債務を生ずべき場合〕の規定は、前項の場合にこれを準用する。

第859条の2【成年後見人が数人あるとき】

成年後見人が数人あるときは、家庭裁判所は、職権で、数人の成年後見人が、共同して又は事務を分掌して、その権限を行使すべきことを定めることができる。
A 家庭裁判所は、職権で、前項の規定による定めを取り消すことができる。
B 成年後見人が数人あるときは、第三者の意思表示は、その1人に対してすれば足りる。 (平一一法一四九・追加)

第859条の3【建物等の処分に関する許可】

成年後見人は、成年被後見人に代わつて、その居住の用に供する建物又はその敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。 (平一一法一四六・追加)

第860条【後見人被後見人の利益相反行為】

第826条〔親権者と子の利益相反行為と特別代理人の選任〕の規定は、後見人にこれを準用する。但し、後見監督人がある場合は、この限りでない。

第861条【支出金額の予定】

後見人は、その就職の初において、被後見人の生活、教育又は療養看護及び財産の管理のために毎年費すべき金額を予定しなければならない。
A 後見人が後見の事務を行うために必要な費用は、被後見人の財産の中から支弁する。 (平一一法一四九・一部改正)

第862条【後見人の報酬】

家庭裁判所は、後見人及び被後見人の資力その他の事情によつて、被後見人の財産の中から、相当な報酬を後見人に与えることができる。 (昭二三法二六〇・一部改正)

第863条【後見事務の監督】

後見監督人又は家庭裁判所は、何時でも、後見人に対し後見の事務の報告若しくは財産の目録の提出を求め、又は後見の事務若しくは被後見人の財産の状況を調査することができる。
A 家庭裁判所は、後見監督人、被後見人若しくはその親族その他の利害関係人の請求によつて、又は職権で、被後見人の財産の管理その他後見の事務について必要な処分を命ずることができる。 (昭二三法二六〇・平一一法一四九・一部改正)

第864条【法定代理権及び同意権の制限】

後見人が、被後見人に代わつて営業若しくは第12条第1項に掲げる行為をし、又は未成年被後見人がこれをすることに同意するには、後見監督人があるときは、その同意を得なければならない。ただし、元本の領収については、この限りでない。 (平一一法一四九・一部改正)

第865条【後見監督人の同意のない行為の取消し】

後見人が、前条の規定に違反してし、又は同意を与えた行為は、被後見人又は後見人において、これを取り消すことができる。この場合には、第19条〔制限能力者の相手方の催告権〕の規定を準用する。
A 前項の規定は、第121条乃至第126条〔取り消しうべき法律行為の取消し・追認〕の規定の適用を妨げない。

第866条【被後見人からの財産等の譲受け】

後見人が被後見人の財産又は被後見人に対する第三者の権利を譲り受けたときは、被後見人は、これを取り消すことができる。この場合には、第19条〔制限能力者の相手方の催告権〕の規定を準用する。
A 前項の規定は、第121条乃至第126条〔取り消しうべき法律行為の取消し・追認〕の規定の適用を妨げない。

第867条【未成年者の親権の代行】

未成年後見人は、未成年被後見人に代わつて親権を行う。
A 第853条乃至第857条及び第861条乃至前条〔後見の事務〕の規定は、前項の場合にこれを準用する。 (平一一法一四九・一部改正)

第868条【財産に関する権限のみを有する未成年後見人】

親権を行う者が管理権を有しない場合には、未成年後見人は、財産に関する権限のみを有する。 (平一一法一四九・一部改正)

第869条【委任及び親権の規定の準用】

第644条〔受任者の注意義務〕及び第830条〔第三者が子に無償で与えた財産の管理〕の規定は、後見にこれを準用する。

第四節 後見の終了

第870条【管理の計算】

後見人の任務が終了したときは、後見人又はその相続人は、2箇月以内にその管理の計算をしなければならない。但し、この期間は、家庭裁判所において、これを伸長することができる。 (昭二三法二六〇・一部改正)

第871条【後見監督人の立会い】

後見の計算は、後見監督人があるときは、その立会を以てこれをする。

第872条【未成年者・後見人の契約の取消し】

未成年被後見人が成年に達した後後見の計算の終了前に、その者と未成年後見人又はその相続人との間にした契約は、その者においてこれを取り消すことができる、その者が未成年後見人又はその相続人に対してした単独行為も、同様である。
A 第19条〔制限能力者の相手方の催告権〕及び第121条乃至第126条〔取消しうべき法律行為の取消し・追認〕の規定は、前項の場合にこれを準用する。 (平一一法一四九・一部改正)

第873条【利息の付加,後見人の金銭消費の責任】

後見人が被後見人に返還すべき金額及び被後見人が後見人に返還すべき金額には、後見の計算が終了した時から、利息をつけなければならない。
A 後見人が自己のために被後見人の金銭を消費したときは、その消費の時から、これに利息をつけなければならない。なお、損害があつたときは、その賠償の責に任ずる。

第874条【委任の規定の準用】

第654条〔委任終了後の応急処分義務〕及び第655条〔委任終了の対抗要件〕の規定は、後見にこれを準用する。

第875条【後見に関する債権の消滅時効】

第832条〔管理に関する親子間の債権の消滅時効〕に定める時効は、後見人又は後見監督人と被後見人との間において後見に関して生じた債権にこれを準用する。
A 前項の時効は、第872条〔未成年者・後見人間の契約の取消し〕の規定によつて法律行為を取り消した場合には、その取消の時から、これを起算する。

第五章の二 保佐及び補助 (平一一法一四九・章名追加)

第一節 保佐 (平一一法一四九・節名追加)

第876条【保佐】

保佐は、保佐開始の審判によつて開始する。 (平一一法一四九・全改)

第876条の2【保佐人の選任】

家庭裁判所は、保佐開始の審判をするときは、職権で、保佐人を選任する。
A 第843条第2項から第4項まで〔成年後見人の選任〕及び第844条から第847条まで〔後見人の辞任・解任・欠格事由〕の規定は、保佐人について準用する。
B 保佐人又はその代表する者と被保佐人との利益が相反する行為については、保佐人は、臨時保佐人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。ただし、保佐監督人がある場合は、この限りでない。 (平一一法一四九・追加)

第876条の3【保佐監督人の選任】

家庭裁判所は、必要があると認めるときは、被保佐人、その親族若しくは保佐人の請求によつて、又は職権で、保佐監督人を選任することができる。
A 第644条〔受任者の注意義務〕、第654条〔委任終了の際の応急処分の義務〕、第655条〔委任終了の対抗要件〕、第843条第4項〔成年後見人選任の際の考慮事項〕、第844条〔後見人の辞任〕、第846条〔後見人の解任〕、第847条〔後見人の欠格事由〕、第850条〔後見監督人の欠格〕、第851条〔後見監督人の職務〕、第859条の2〔成年後見人が数人あるとき〕、第859条の3〔建物等の処分に関する許可〕、第861条第2項〔必要費の支弁〕及び第862条〔後見人の報酬〕の規定は、保佐監督人について準用する。この場合において、第851条第4号中「被後見人を代表する」とあるのは、「被保佐人を代表し、又は被保佐人がこれをすることに同意する」と読み替えるものとする。 (平一一法一四九・追加)

第876条の4【保佐人に代理権を付与する審判,その取消し】

家庭裁判所は、第11条本文〔保佐開始の審判〕に掲げる者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求によつて、被保佐人のために特定の法律行為について保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができる。
A 本人以外の者の請求によつて前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。
B 家庭裁判所は、第1項に掲げる者の請求によつて、同項の審判の全部又は一部を取り消すことができる。 (平一一法一四九・追加)

第876条の5【保佐人の義務】

保佐人は、保佐の事務を行うに当たつては、被保佐人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。
A 第644条〔受任者の注意義務〕、第859条の2〔成年後見人が数人あるとき〕、第859条の3〔建物等の処分に関する許可〕、第861条第2項〔必要費の支弁〕、第862条〔後見人の報酬〕及び第863条〔後見事務の監督〕の規定は保佐の事務について、第824条ただし書〔親権者の子の行為を目的とする債務を生ずべき場合の子の同意〕の規定は保佐人が前条第1項の代理権を付与する旨の審判に基づき被保佐人を代表する場合について準用する。
B 第654条〔委任終了の際の応急処分の義務〕、第655条〔委任終了の対抗要件〕、第870条〔後見人の管理の計算〕、第871条〔後見監督人の立会い〕及び第873条〔利息の付加,後見人の金銭消費の責任〕の規定は保佐人の任務が終了した場合について、第832条〔管理に関する親子間の債権の消滅時効〕の規定は保佐人又は保佐監督人と被保佐人との間において保佐に関して生じた債権について準用する。 (平一一法一四九・追加)

第二節 補助 (平一一法一四九・追加)

第876条の6【補助】

補助は、補助開始の審判によつて開始する。 (平一一法一四九・追加)

第876条の7【補助人の選任】

家庭裁判所は、補助開始の審判をするときは、職権で、補助人を選任する。
A 第843条第2項から第4項まで〔成年後見人の選任〕及び第844条から第847条まで〔後見人の辞任,後見人選任請求義務,後見人の解任,後見人の欠格事由〕の規定は、補助人について準用する。
B 補助人又はその代表する者と被補助人との利益が相反する行為については、補助人は、臨時補助人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。ただし、補助監督人がある場合は、この限りでない。 (平一一法一四九・追加)

第876条の8【補助監督人の選任】

家庭裁判所は、必要があると認めるときは、被補助人、その親族若しくは補助人の請求によつて、又は職権で、補助監督人を選任することができる。
A 第644条〔受任者の注意義務〕、第654条〔委任終了の際の応急処分義務〕、第655条〔委任終了の対抗要件〕、第843条第4項〔成年後見人の追加選任〕、第844条〔後見人の辞任〕、第846条〔後見人の解任〕、第847条〔後見人の欠格事由〕、第850条〔後見監督人の欠格〕、第851条〔後見監督人の職務〕、第859条の2〔成年後見人が数人あるとき〕、第859条の3〔建物等の処分に関する許可〕、第861条第2項〔必要費の支弁〕及び第862条〔後見人の報酬〕の規定は、補助監督人について準用する。この場合において、第851条第4号中「被後見人を代表する」とあるのは、「被補助人を代表し、又は被補助人がこれをすることに同意する」と読み替えるものとする。 (平一一法一四九・追加)

第876条の9【補助人に代理権を付与する審判,その取消し】

家庭裁判所は、第14条第1項本文に掲げる者又は補助人若しくは補助監督人の請求によつて、被補助人のために特定の法律行為について補助人に代理権を付与する旨の審判をすることができる。
A 第876条の4第2項〔保佐人に代理権を付与する審判の際の本人の同意〕及び第3項〔保佐人に代理権を付与する審判の取消し〕の規定は、前項の審判について準用する。 (平一一法一四九・追加)

第876条の10【補助人の義務】

第644条〔受任者の注意義務〕、第859条の2〔成年後見人が数人あるとき〕、第859条の3〔建物等の処分に関する許可〕、第861条第2項〔必要費の支弁〕、第862条〔後見人の報酬〕、第863条〔後見事務の監督〕及び第876条の5第1項〔保佐人の義務〕の規定は補助の事務について、第824条ただし書〔親権者の子の行為を目的とする債務を生ずべき場合の本人の同意〕の規定は補助人が前条第1項の代理権を付与する旨の審判に基づき被補助人を代表する場合について準用する。
A 第654条〔委任終了の際の応急処分の義務〕、第655条〔委任終了の対抗要件〕、第870条〔後見の管理の計算〕、第871条〔後見監督人の立会い〕及び第873条〔利息の付加,後見人の金銭消費の責任〕の規定は補助人の任務が終了した場合について、第832条〔管理に関する親子間の債権の消滅時効〕の規定は補助人又は補助監督人と被補助人との間において補助に関して生じた債権について準用する。 (平一一法一四九・追加)

第六章 扶養

第877条【扶養義務者】

直系血族及び兄弟姉妹は、互に扶養をする義務がある。
A 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合の外、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
B 前項の規定による審判があつた後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。 (昭二三法二六〇・一部改正)

第878条【扶養の順序】

扶養をする義務のある者が数人ある場合において、扶養をすべき者の順序について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、これを定める。扶養を受ける権利のある者が数人ある場合において、扶養義務者の資力がその全員を扶養するに足りないとき、扶養を受けるべき者の順序についても、同様である。 (昭二三法二六〇・一部改正)

第879条【扶養の程度・方法】

扶養の程度又は方法について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、扶養権利者の需要、扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮して、家庭裁判所が、これを定める。 (昭二三法二六〇・一部改正)

第880条【扶養関係の変更・取消しの審判】

扶養をすべき者若しくは扶養を受けるべき者の順序又は扶養の程度若しくは方法について協議又は審判があつた後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その協議又は審判の変更又は取消をすることができる。 (昭二三法二六〇・一部改正)

第881条【扶養請求権の処分の禁止】

扶養を受ける権利は、これを処分することができない。