司法制度改革審議会意見書(平成13年6月12日)の部分
II 国民の期待に応える司法制度
第1 民事司法制度の改革
5. 家庭裁判所・簡易裁判所の機能の充実
(1) 人事訴訟等の家庭裁判所への一本化
離婚など家庭関係事件(人事訴訟等)を家庭裁判所の管轄へ移管し、離婚訴訟等への参与員制度の導入など体制を整備すべきである。
家庭関係事件のうち、離婚、婚姻の取消し、子の認知などのいわゆる人事訴訟事件については、訴えの提起に先立ち、原則として、まず、家庭裁判所に家事調停の申立てをし、調停によって紛争の解決を図るべきものとされている。家事調停が不成立に終わり、改めて訴訟によって解決しようとするときは、地方裁判所に訴えを提起すべきものとされている。このため、一つの家庭関係事件の解決が、家庭裁判所の調停手続と地方裁判所の人事訴訟手続とに分断され、手続間の連携も図られていない。
また、家庭関係事件のうち、人事訴訟事件以外の、離婚の際の財産分与、子の監護者の指定・養育費の負担、婚姻費用の分担に関する争いなどは、家事審判手続により家庭裁判所が審理・裁判するものとされている。しかし、それらのうちの一部のものは、離婚訴訟に付随している限り、地方裁判所において審理・裁判することもできるとされるなど、家庭裁判所と地方裁判所の管轄の配分は、著しく煩雑で、利用者たる国民に分かりにくい。
さらに、家庭裁判所には、家庭裁判所調査官が配置され、その専門的知見を活かした調査の結果が家庭裁判所での調停・審判を適切なものとするのに大きく貢献しているが、地方裁判所には、その種の機関がなく人事訴訟の審理・裁判に利用することができない。
このような状況を踏まえ、人事訴訟事件を、親子関係存在確認訴訟など解釈上人事訴訟に属するとされているものを含めて、家庭裁判所の管轄に移管すべきである。また、離婚の原因である事実など人事訴訟の訴えの原因である事実によって生じた損害賠償の請求についても、人事訴訟と併合される限り、家庭裁判所の管轄とすべきである。以上のほか、人事訴訟事件以外の家庭関係事件で、家庭裁判所の管轄に移管すべきものの有無、範囲についても、検討すべきである。
これに伴い、科学調査の専門的知見を有する家庭裁判所調査官等を拡充するとともに、一般国民の良識をより反映させる観点から、家庭裁判所における参与員制度を拡充し、離婚訴訟等の審理に関与し、証人等に対する質問、審理の結果に対する意見の陳述を認めるなど所要の態勢を整備すべきである。また、人事訴訟事件に適用される人事訴訟手続法(明治31年法律第13号)につき、その口語・平仮名化を含め全面的に見直すべきである。
(2) 調停委員、司法委員、参与員への多様な人材の確保等
民事・家事調停委員、司法委員及び参与員について、その選任方法の見直しを含め、年齢、職業、知識経験等において多様な人材を確保するための方策を講じるべきである。
簡易裁判所における司法委員制度・民事調停制度、家庭裁判所における家事調停制度・参与員制度は、訴訟・家事審判・調停手続に法曹以外の国民が関与しうるという意味で、国民が司法へ参加する制度の一つとして位置付けることができる。
これらの制度を更に充実させ、幅広く国民各層から適任者を得る見地から、委員の選任方法の見直しを含め、年齢、職業、知識経験等において多様な人材を確保するための方策を講じるべきである。調停委員に関しては、地方裁判所の民事調停委員についても同様である。