作成:2011年4月25日
明治学院大学法科大学院教授 加賀山 茂
第4章 物(民法2) | ||
○民法は物をどのように定義し,どのように分類しているか(とくに不動産・動産の区別),その分類にどのような法的意味があるかを,具体例を挙げて説明することができる。 | 権利の客体は物権の場合には,「有体物(個体,液体,固体)」とすることでほぼ足りるにしても,債権の場合には,「債権譲渡」を例に取れば,「無体物(固体,液体,気体以外に該当する権利など)」を権利の対象としなければならないことは明らかである。それにもかかわらず,民法85条が,「物とは有体物をいう」と定義したのは,なぜなのか。旧民法の修正の過程をを通じて,現行民法が侵した立法上の過誤につて理解する。また,以下の判例を通じて,1つの物のとして範囲,おおび,独立性について理解する。 大連判大13・10・7民集3巻476頁(百選T第11事件・一筆の土地の一部についての取引) 大判昭10・10・1民集14巻1671頁(百選T第12事件) |
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○主物と従物とはどのような概念か,従物とされることの具体的効果は何かを,具体例を挙げて説明することができる。 | 主物が土地,建物である場合の従物の例,および,主物が動産である場合の従物の例を挙げて,それぞれの場合に,従物が主物の処分に従うことを理解する。 | |
○元物とは何か,果実(天然果実・法定果実)とは何かを説明し,それぞれ具体例を挙げることができる。 | 物の用法に従い,かつ,物の本体を害することなしに産出される経済的収益を果実といい,果実に対し,果実を生じる物を元物という。果実は収益権者に帰属するものであるが,果実の意味・範囲や収益権者に移動があった場合の分配について争いを生じるおそれがあるので,民法は,それについて規定を設けているので(民法88条,89条),その内容を理解する。 |
第7章 時効(民法2) | ||
第1節 総則 | ||
○時効とはどのような制度であり,何のために認められているのかを,具体例を挙げて説明することができる。 | 時効制度は,一見,不法を奨励するように見えるが,実は,長い期間の経過によって,権利の発生または消滅に関する証明の困難が生じていることを考慮して,真の権利者の証明の負担を軽減・不要とする制度であることを理解する。 | |
○時効完成の効果(援用権の発生,援用権の趣旨,援用の効果,時効の効力)について,説明することができる。 | 最二判昭51・3・17民集40巻2号420頁(百選T第39事件・時効援用の効果) | |
○時効が完成した場合に,その時効を援用することができるのは誰かについて,判例・学説の基本的な考え方と問題点を説明することができる。 | 最一判平11・10・21民集53巻7号1190頁(百選T第40事件・事項の援用権者) | |
○時効の援用権者がその援用権を行使することができないのはどのような場合か,またその理由は何かを,具体例を挙げて説明することができる。 | 最大判昭41・4・20民集20巻4号702頁(百選T第41事件・時効完成後の債務承認) | |
○時効の中断及び停止がどのような制度であるかを説明し,どのような場合に中断,停止が認められるかを,条文を参照しつつ説明することができる。 | 最三判平6・2・22民集48巻2号441頁(百選T第42事件・消滅時効の起算点(じん肺訴訟)) | |
第2節 取得時効 | ||
○取得時効とはどのような制度であり,また,どのような権利がその対象となるかについて説明することができる。 | 最二判平42・7・21民集21巻6号1643頁(百選T第43事件・自己の物の取得時効)を通じて,取得時効の制度が,真の権利者の保護の制度であり,自己の物か他人の物かが不明な時こそ,取得時効の制度が必要であることを確認する。 | |
○取得時効の要件について概要を説明し,また,条文を参照しながらその要件の具体的内容を説明することができる。 | 最二判昭53・3・6民集32巻2号135頁(百選T第65事件・前主の無過失と10年の取得時効) 最二判昭62・6・5判時1260号7頁(百選T第44事件・賃借権の取得時効) |
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第3節 消滅時効 | ||
○消滅時効とはどのような制度であり,また,どのような権利がその対象となるかについて説明することができる。 | 消滅時効は,長い期間の占有状態の継続により,権利が消滅したとの外観が生じている場合に,債務者がいつまでも,権利の消滅を証明する証拠を保存することの非現実性を考慮して,証明責任を軽減する制度であることを理解する。 | |
○消滅時効の一般的な要件について,説明することができる。 | 消滅時効の要件としての「権利を行使しないとき」(民法167条)と時効の中断事由(民法147条以下)との関係を理解する。 具体的には,「権利を行使しないこと」と「請求等の中断事由」とは,相互に矛盾する反対事実なのか,矛盾しない「別事実」なのか,ついての理解を深める。 |
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○同一の権利について短期と長期の期間制限が設けられている場合について,その趣旨,期間の性質(いわゆる除斥期間の概念を含む)及び起算点について,説明することができる。 | 最三判平6・2・22民集48巻2号441頁(百選T第42事件・消滅時効の起算点(じん肺訴訟))を通じて,長期の期間制限について,中断事由が認められるべきかどうかについて,立法者がどのように考えていたかを確認し,通説の形成までの経過について理解を深める。 |
第2編 物権 | ||
第1章 総則(民法2) | ||
第1節 物権の一般原則 | ||
○物権にはどのような種類があり,それぞれどのような内容の権利であるかを概括的に説明することができる。 | 占有権と物権本権,本件の中での,所有権と制限物権との対比,制限物権の中の用益物権と担保物権の位置づけを,以下の図式で理解する。 ・占有権@ ・本権 ・所有権A ・制限物権 ・用益物権…B地上権,C永小作権,D地役権 ・担保物権…E留置権,F先取特権,G質権,H抵当権 |
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○物権に共通する特徴を,債権の特徴と対比して説明することができる。 | 物権に共通する性質(排他的支配権)を債権との対比で以下のように理解する。 ・債権…ある人が他の人に給付,すなわち,あることをすること(作為),または,あることをしないこと(不作為)を要求できる権利。 ・物権…ある人がある物に対して,排他的な支配権,すなわち,使用・収益・換価・処分権のうちの1つないしすべてを有する権利。 ただし,物権に分類されているが,使用・収益・換価・処分権のうちの1つも持たないにもかかわらず,物権に分類されている権利が存在する。それは,どの権利で,なぜ,その権利が物権に分類されているのかを探究することを通じて,物権と債権との区別が絶対的なものではないことを理解する。 |
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○物権法定主義の意義と根拠について説明することができる。 | 大判昭15・9・18民集19巻1611頁(百選T第45事件・温泉権と物権法定主義)を参考にして,民法175条と,法の適用に関する通則法(通則法)3条との関係を明らかにし,慣習法が物権法定主義との関係で,どのように位置づけられているかを理解する。 | |
○物権的請求権とはどのような権利であり,どのような侵害についてどのような救済手段を求めることができるかを,具体例を挙げて説明することができる。 | 大判昭12・11・19民集16巻1881頁(百選T第46事件・所有権に基づく妨害排除請求権)を参考にして,隣接する高地にある宅地(甲土地)の土砂が,低地の田(乙土地)に崩落したが,その原因は,以前は畑であった乙土地をその前主が田にする際に甲土地との境界線を掘り下げたたためであったという事案について,乙土地の所有者から甲土地の所有者に対する妨害排除(土砂の除去)を認めるべきか,それとも,甲土地の所有者から乙土地の所有者に対する妨害予防請求権を認めるべきかを考え,さらに,その際に適用または類推されるべき条文が何かを探究する。 その際,通説は,わが国の民法には,物権的請求権(所有権に基づく請求権)に関する明文の規定は存在しない 最判平6・2・8民集48巻2号273頁(判例百選T第47事件・物権的請求権の相手方),最三判平21・3・10民集63巻3号385頁(物権的請求権の相手方) |
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第2節 物権変動 | ||
1 総説 | ||
○物権の変動が生ずる種々の法律上の原因を,具体例を挙げて説明することができる。 | 原始取得と承継取得に分けて理解する。 | |
○公示の原則とはどのような原則であるか,そのような原則を認める必要があるのはなぜかを説明することができる。 | 効力要件と対比される対抗要件について理解する。 最一判昭36・5・4民集15巻5号1253頁(百選T第62事件・明認方法) |
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○公信の原則とはどのような原則であるかを,無権利の法理や公示の原則との関係を踏まえて説明することができる。 | 不動産物権変動にはなく,動産動産物権変動に特有の原則であることを理解すること | |
2 不動産物権変動 | ||
2−1 意思主義と対抗要件主義 | ||
○物権変動に関する意思主義を,形式主義と対比して説明することができる。 | フランスの制度とドイツの制度に関する比較法的考え方を理解する。 | |
○物権変動が生ずる時期,とくに所有権の移転が生ずる時期について,判例・学説の考え方の対立とその問題点の概要を説明することができる。 | 最二判昭33・6・20民集12巻10号1585頁(百選T第48事件・物権変動の時期) | |
○民法177条の対抗要件主義とはどのような制度であり,同条がどのような原因(契約,取消し,解除,取得時効等)に基づく物権変動に適用されるかについて,基本的な考え方の対立と問題点を説明することができる。 | 不動産二重譲渡を説明し,それとの対比で,契約の無効,取消し,契約解除,取得時効の場合の特色を理解する。 大判昭17・9・30民集21巻911頁(百選T第51事件・取消しと登記) 最三判昭35・11・29民集14巻13号2869頁(百選T第52事件・解除と登記) 最二判昭46・11・5民集25巻8号1087頁(百選T53事件・取得時効と登記) 最二判昭38・2・22民集17巻1号235頁(百選T第54事件・共同相続と登記) |
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○民法177条の対抗要件主義において,判例・学説の基本的な考え方を踏まえて,第三者(転得者を含む)の主観的要件についてどのような議論があるかを,具体例に即して説明することができる。 | 最三判平18・1・17民集60巻1号27頁(百選T第56事件) 最三判平8・10・29民集50巻9号2506頁(百選T第57事件) 最二判昭38・2・22民集17巻1号235頁(百選T第54事件) |
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○不動産取引において,民法94条2項の適用や類推適用がどのような意味を持つかを,公信の原則との関係に留意しながら,具体例に即して説明することができる。 | 最三判昭45・9・22民集24巻10号1424頁(百選T21事件・民法94条2項の類推適用) | |
2−2 不動産登記 | ||
○物権の変動が生じた場合に,どのような手続きにしたがってその登記をすることができるかを理解している(共同申請の原則と単独申請ができる例外)。 | 契約に基づく登記請求権と物権に基づく登記請求権について理解する。 | |
○登記請求権はどのような根拠に基づいて,どのような場合に発生するかを,具体例を挙げて説明することができる。 | 最三判昭40・9・21民集19巻6号1560頁(百選T第49事件・中間省略登記) | |
○仮登記とはどのような場合になされる登記であり,それがどのような効力を持つかについて,具体例を挙げて説明することができる。 | 仮登記担保に関する法律に基づく仮登記担保を例にとって,仮登記の順位保全の効力について理解する。 | |
3 動産物権変動 | ||
○動産物権変動における対抗要件主義がどのような制度であり,どのような場合に問題となるかを具体例に即して説明することができる。 | 民法178条の「引渡し」が「占有の移転」であり,その種類は,民法182条〜184条に規定されていることを理解する。 最一判昭30・6・2民集9巻7号855頁(百選T第60事件),最一判昭35・2・11民集14巻2号168頁(百選T第66事件・占有改定と対抗要件) 最三判昭29・8・31民集8巻8号1567頁(百選T第61事件・第三者と受寄者) |
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○動産の即時取得とはどのような制度であり,それが認められるための要件はどのようなものか,盗品・遺失物についてどのような例外が認められるかを,具体例に即して説明することができる。 | 最三判平12・6・27民集54巻5号1737頁(百選T第67事件・バックホー盗難事件) | |
4 物権の消滅 | ||
○物権が消滅する原因を,具体例を挙げて説明することができる。 | 物権の消滅原因としての民法179条(混同)を債権の消滅原因としての民法502条(混同)との対比において理解する。 | |
第2章 占有権(民法2) | ||
○占有とはどのような概念であるかを理解し,どのような態様の占有があり,占有の承継が生ずるのはどのような場合であるかを,それぞれ具体例を挙げて説明することができる。 | 自己のためにする占有(直接占有)と他人のためにする占有(間接占有)の区別からはじめて,自主占有と他主占有の区別を理解する。 最二判昭32・215民集11巻2号270頁(百選T第63事件) 最三判平8・11・12民集50巻10号2591頁(百選T第64事件・相続と民法185条の新権原) |
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○占有の侵害についてどのような態様があり,占有者はそれぞれどのような救済を求めることができるかを,具体例を挙げて説明することができる。 | 民法197条〜202条の占有訴権について理解する。 最一判昭40・3・4民集19巻2号197頁(百選T第63事件) |
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○所有者が無権原占有者に対して目的物の返還を求める場合に生ずる問題点の概要(果実収取権,費用償還請求権,本権と占有権との関係等)を,条文を参照しながら説明することができる。 | 最三判平12・6・27民集54巻5号1737頁(百選T第67事件・バックホー盗難事件) | |
第3章 所有権(民法2) | ||
第1節 所有権の意義 | ||
○所有権とはどのような権利か,また,どのような制限に服するかを,具体例を挙げて説明することができる。 | 憲法29条と民法206条,207条との関係を理解する。 | |
第2節 相隣関係 | ||
○袋地の所有者は,どのような場合にどのような要件の下で隣地通行権を有するかを,条文を参照しながら説明することができる。 | 最三判平2・11・20民集44巻8号1037頁(百選T第69事件・分筆後袋地が売却された場合の隣地通行権) 最一判平18・3・16民集60巻3号735頁(百選T第70事件・民法210条の通行権と自動車の通行) |
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第3節 所有権取得の原因 | ||
○添付とはどのような概念であり,どのような類型があるか,添付によってどのような効果が生じるかについて,その概要を説明することができる。 | 所有権の原始取得の1つである添付には,付合,混和,加工があり,付合には,不動産に動産が付合する場合,および,動産が動産に付合する場合の2つがあることを理解する。 | |
○不動産の付合とはどのような制度であるかについて,条文を参照しながら具体例を挙げて説明することができる。 | 最一判昭54・1・25民集33巻1号26頁(百選T第72事件・建築途中の建物への第三者の工事と所有権の帰属) 最三判昭44・7・25民集23巻8号1627頁(百選T第73事件・賃借人のした増築と建物の付合) |
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第4節 共有関係 | ||
○同一の目的物を複数の者が共同的に所有する法律関係について,通常の共有のほか,どのような場合があるか,いくつかの具体例を挙げることができる。 | 民法249条〜262条の共有と,組合契約における民法668条の共有,共同相続における民法898条の共有(合有),入会財産における民法263条の共有(総有)との相違を理解する。 | |
○共有者が共有物についてどのような権利を(他の共有権者及び第三者に対して)有するかを,条文を参照しながら説明することができる。 | 最二判平15・7・11民集57巻7号787頁(百選T第75事件・共有者一人による不実登記の抹消手続請求) 最一判平8・10・31民集50件9号2563頁(百選T第76事件・共有物分割の方法としての全面的価格賠償) |
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○区分所有権とはどのような概念であるかを,一物一権主義との関係に留意しながら説明することができる。 | 最三判平6・5・31民集48巻4号1065頁(百選T第78事件・総有権確認請求権) | |
第4章 地上権(民法2) | ||
○地上権とはどのような物権であり,どのような場合に利用される権利であるかを,土地賃借権と対比しながら説明することができる。 | 工作物・竹木の所有を目的とする土地の用益権である地上権と,耕作・牧畜を目的とする土地の利用権である永小作権との相違を理解するとともに,借地借家法上の権利には,賃借権だけでなく,地上権が含まれていることを理解する。 | |
第5章 地役権(民法2) | ||
○地役権とはどのような物権であり,どのような場合に利用される権利であるかを,いくつかの具体例を挙げて説明することができる。 | 民法294条の入会権(人役権)を例にとって,人役権とは異なる地役権(通行地役権,水利地役権等)の意味を理解する。 |
学生からの質問
1.占有権のレジュメの中で,「他主占有は自己のための占有をしていると認められる」とあり,また,他主占有とは所有の意思をもたない占有であるとあります。これは,自己のため(例えば質権者が自分の質権を維持するために)所有の意思をもたずに占有しているということですか。
2.占有代理人と有権代理などでいうところの代理人とは違うものですか。
3.他人のためにする占有と他主占有とは異なるものですか。
4.登記請求権についての物権的登記請求権説と物権変動的登記請求権説の違いはどこにあるのですか。
5.不動産物権変動と登記に関して,通謀虚偽表示による無効では,詐欺による取消し,解除,遺産分割と異なり,元々の所有者であるaにも帰責性があることから,無効による復帰的物権変動がbc間の譲渡の前であるか後であるかで場合分けしていないのですか。
6.登記の要らない不動産物権変動について,取得時効が登記なくして第三者に対抗できるのは,「時効取得の遡及効を第三者が否定できないからである」とありますが,時効完成前に現れた第三者が登記をもつ場合は,177条よりこの遡及効を否認することが出来るのではないのですか。この場合も,取得時効の遡及効が強力であることを理由に否認が出来ないとするのですか。
7.バックホー事件の最高裁判決で,占有者に使用収益権を認めているのは,194条の解釈において,占有開始時に占有者が所有権を取得していると考えているのですか。
8.同判決で,占有者にバックホー引渡し後であっても,被害者に代価の請求が可能としているのは,194条が抗弁権ではなく請求権であるということだと思いますが,それは,バックホー事件のような特殊な事情のときにのみ請求権として認めているのですか。
第2節 借地借家法 | ||
○借地借家法の適用範囲について理解している。 | 借地借家法1条における「建物の所有を目的とする地上権及び土地の賃借権」の意味を理解する。 | |
○借地借家法における存続期間・更新に関する規律(定期借地権・定期建物賃貸借を含む)の概要について,条文を参照しながら説明することができる。 | 最一判昭58・1・20民集37巻1号1頁(百選U第57事件・正当事由と建物賃借人の事情) | |
○借地借家法における借地権及び建物賃借権の対抗力に関する規律の趣旨及び概要について,説明することができる。 | 最大判昭41・4・27民集20巻4号870頁(百選U第56事件・他人名義の建物登記と借地権の対抗力) | |
○以上の他,借地借家法における重要な規律(裁判所による土地の賃借権の譲渡・転貸の許可,建物買取請求権,賃料増減額請求権等)について,条文を参照しながら,説明することができる。 | 最三判平6・10・25民集48巻7号1303頁(百選U第63事件・立退料の提供申出の時期) 最三判平15・10・21民集57巻9号1213頁(百選U第64事件・サブリースと賃貸料減額請求) |
第3章 不法行為(民法2) | ||
第1節 総論 | ||
○不法行為制度の機能及び目的について説明することができる。 | 最一判平18・3・30民集60巻3号948頁(百選U第77事件・景観利益の侵害と不法行為) 最一判平10・4・30判時1646号162頁(百選U第100事件・請求権競合(宅配便運送約款における免責条項)) |
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○不法行為責任における過失責任,無過失責任,中間責任の考え方を,民法上及び特別法上の具体例を挙げて説明することができる。 | 民法709条,民法718条,製造物責任法3条を対比しながら,過失責任,中間責任,無過失責任の相違を理解する。 | |
第2節 一般不法行為の要件 | ||
○民法709条がどのような要件を充たせば責任の成立を認めているのか,またどのような場合に責任の成立が否定されるのかについて,その全体の構造を示すことができる。 | 最二判平7・6・9民集49巻6号1499頁(百選U第80事件・医療機関に要求される医療水準の判断) | |
○権利・利益侵害要件の持つ意味について,権利侵害と違法性の関係に関する判例・学説の展開を踏まえつつ,説明することができる。 | 違法性に関する相関関係説を例にとって,権利侵害と違法性との関係を理解する。 | |
○過失とは何かについての基本的な考え方を説明することができる。 | 最二判平19・7・6民集61巻5号1769頁(百選U第79事件・過失の意義) | |
○損害とは何か,損害にはどのような種類のものがあると考えられているかについて,基本的な考え方を説明することができる。 | 差額説の意味を交通事故に関する事例を通じて理解する。 | |
○因果関係についての基本的な考え方を説明することができる。 | 最二判昭50・10・24民集29巻9号1417頁(百選U第81事件・因果関係の立証) | |
第3節 特殊の不法行為 | ||
○責任能力とはどのような概念であるかを,行為能力・意思能力と対比して説明することができる。 | 事理弁識能力の定義と機能を理解する。 | |
○責任無能力者の不法行為について,監督義務者がどのような根拠に基づいてどのような責任を負うかを,説明することができる。 | 最二判昭49・3・22民集28巻2号347頁(百選U第82事件・未成年者の監督義務者の責任) | |
○使用者責任において,使用者がなぜ被用者の行為について責任を負うのか,また,使用者責任の要件と効果(被用者への求償を含む)はどのようなものかについて,説明することができる。 | 最二判平16・11・12民集58巻8号2078頁(百選U第83事件・暴力団組長の使用者責任) 最一判昭42・11・2民集21巻9号2278頁(百選U第84事件・取引先の外観信頼) |
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○工作物責任において,工作物の占有者や所有者がなぜ責任を負うのか,また,工作物責任の要件と効果はどのようなものかについて,説明することができる。 | 工作物責任における第1次的な占有者における中間責任,第2次的な所有者の無過失責任の意味と機能とを理解する。 | |
○共同不法行為責任の意義,要件及び効果について,説明することができる。 | 大阪地判平7・7・5判時1538号17頁(百選U第85事件・共同不法行為の要件(大阪西淀川公害訴訟)) 最二判昭63・7・1民集42巻6号451頁(百選U第86事件・共同不法行為と使用者責任の競合と求償) 最三判平13・3・13民集55巻2号328頁(百選U第95事件・共同不法行為と過失相殺) |
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第4節 不法行為の効果 | ||
○賠償されるべき損害の範囲及び額の算定についての基本的な考え方(過失相殺,損益相殺等を含む)を説明することができる。 | 最一判昭48・6・7民集27巻6号681頁(百選U第87事件・民法416条と損害賠償の範囲) 最二判昭43・11・15民集22巻12号2614頁(百選U第88事件・企業損害(間接損害)) 最二判昭43・3・15民集22巻3号587頁(百選U第91事件・後遺症と示談) 最大判昭39・6・24民集18巻5号854頁(百選U第93事件・過失相殺の要件) 最三判平8・10・29民集50巻9号2474頁(百選U第94事件・過失相殺と身体的特徴の斟酌) |
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○損害賠償の方法についての基本的な考え方を説明することができる。 | 最三判昭56・12・22民集35巻9号1350頁(百選U第89事件・労働能力の損失における損害の算定) 最二判昭62・1・19民集41巻1号1頁(百選U第90事件・年少女子の損害における逸失利益の算定方法) |
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○侵害行為の差止請求と不法行為に基づく損害賠償請求との関係について,説明することができる。 | 最二判平7・7・7民集49巻7号2599頁(百選U第99事件・差止請求(阪神高速道路公害訴訟事件)) | |
○不法行為責任の成立が求められる場合に,損害賠償請求をすることができる者は誰かについて,説明することができる(被害者が死亡した場合,生存している場合,胎児の損害賠償請求の可否を含む)。 | 最大判昭42・11・1民集21巻9号2249頁(百選U第96事件・慰謝料請求権の相続性) | |
○不法行為一般における損害賠償請求権の期間制限について,説明することができる。 | 最二判昭48・11・16民集27巻10号1374頁(百選U第97事件・民法724条の消滅時効の起算点) 最三判平16・4・27民集58巻4号1032頁(百選U第98事件・民法724条2文の時効期間の起算点) |
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第5節 主要な事件類型 | ||
○主要な事件類型(名誉・プライバシー侵害,公害・生活妨害,医療過誤,第三者による債権侵害,自動車事故,製造物による事故等)に即して,不法行為の要件・効果を説明することができる。 | 最三判平9・9・9民集51巻8号3804頁(百選U第78事件・意見表明と名誉毀損) 最三判平9・5・27民集51巻5号2024頁(百選U第92事件・名誉毀損と慰謝料) |
(質問1)刑法と民法の不法行為法とは似ていると思った。しかし,刑法が未遂を含めて犯罪の抑止に重点があるのに対して,民法は,損害賠償を含めて被害者の救済に重点を置いている点で異なるようにも思う。そうすると,刑法でも民法でも出てくる「過失」について,同じ概念なのか,違う概念なのかが気になる。「刑法の過失」と「民法の過失」について,共通点と違いとを教えて欲しい。ハンドの定式は,その中で,どのように位置づけられるのだろうか。
(質問2)刑法では,構成要件該当性,違法性,責任(故意・責任能力),因果関係の全てが刑罰の適用に必要とされる。民法でも,民法709条,713条,720条によれば,権利・法益侵害,違法性,責任(故意又は過失,責任能力),因果関係の4項目が要件として必要のようにも見える。しかし,民法の学説の中には,損害と因果関係の他には,権利侵害も違法性も要件ではなく,「過失(責任)」だけが要件だという責任(過失)一元説もある。確かに,刑法と民法とでは違いがあってもよいとは思うが,やはり,刑法と同じく,また,民法の条文通りに,不法行為の要件としては,「権利・法益侵害」,「違法性」,「責任(故意または過失,責任能力)」,「因果関係」の4要素が必要なのではないだろうか。
(質問3)因果関係に認定に際しては,ある行為から通常生じる損害か,そうでなくても,予見できる損害かどうかが決め手となる。また,過失についても,予見できる損害について,その回避義務を尽くさなかったことが過失であるとされている。このように,予見可能性の有無が,因果関係の問題でも,また,責任性(過失)の問題でも,重要なポイントとなっている。因果関係における予見可能性と,過失における予見可能性とは同じなのか,違うのか,違うとしたら,両者はどのような関係に立っているのだろうか。
(質問4)因果関係の証明は合理的な疑いが生じない程度の証明が必要だとされている。しかし,「合理的な疑いが生じない程度」は,どのようにして計算されるのだろうか。