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法律上の優先弁済権の実現(相殺の担保的効力)

作成:2010年9月24日

明治学院大学法科大学院教授 加賀山 茂


□ 第7回 法律上の優先弁済権の実現 □

先取特権,質権,抵当権が担保目的物に対して優先弁済権(他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利([民法303条],[民法342条],[民法369条]))を有するのは,それらの権利が物権だからであると考えられてきた。しかし,債権の内部においても,自らの債権(自働債権)と債務(受働債権)とを同時に対当額で消滅させることを通じて,受働債権から他の債権者に先立って弁済を受けることができる権利が存在する。それが,相殺(相殺の担保的機能)である。この相殺の抗弁は,受働債権の差押債権者ばかりでなく,受働債権の譲受人等に対しても対抗することができる([民法511条],[民法468条2項])。

それでは,相殺は,なぜ,自らの債権を実現するため,自らの債務である受働債権から他の債権者に先立って債権回収をすることが可能なのであろうか。ここでは,この問題の探求を通じて,法律上の優先弁済権がどのような要件で実現されるのかを明らかにする。


第4節 相殺(法律上の優先弁済権の実現)


相殺は,相互に対立する債権が存在する場合に,意思表示のみによって相互に対立する債権を消滅させるという債権の消滅原因として位置づけられている[505条]。しかし,相互に対立する債権・債務のうち,相殺をする側の債権に注目するときは,相殺には,自らの債務(受働債権:β債権に対する債務)を免れることによって自らの債権(自働債権:α債権)を独占的・排他的に回収する機能がある。

このことは,他の債権者がβ債権を差し押さえた場合またはβ債権が譲渡された場合に顕著となる。なぜなら,相殺権者は,そのような場合に,相殺の抗弁をもって差押債権者に対抗できること[民法511条]および相殺の抗弁をもって債権の譲受人にも対抗できること[民法468条2項]を通じて,どの債権者にも優先して自らの債権を回収できるからである(法律上の優先弁済権)。

後に詳しく論じるように,相殺の担保的機能は非常に強力であり,担保物権のうちで,もっとも強力とされる抵当権にもまさる力を発揮することがある。このような強力な担保的機能が債権の分野に属する相殺に見られることは注目すべき点である。それでは,債権の分野に属する相殺が,担保物権を凌駕する担保的効力を有するのはなぜなのか,このことを解明することがここでの課題である。


1 相殺の意義と機能


相殺とは,2人の者が互いに相手に対して同種の債権をもっている場合に,一方から相手方に対する意思表示によってその債務を「対当額」で消滅させることをいう[民法505条1項](なお,用語法の問題であるが,「対当額」であって「対等額」ではない点に注意すること)。

例えば,AがB銀行に50万円預金をし,BがAに対して80万円貸し付けた場合に,A又はBが相殺の意思表示をすれば,AのBに対する50万円の債権が消滅し,AのBに対する30万円の債務が残ることになる。

なお,相殺をする側の債権を自働債権,される側の債権(反対債権)を受働債権という。例えば,先の例で,Aに対して80万円の貸金債権をもつBが,Aの50万円の預金債権に対して相殺する場合,貸金債権80万円が自働債権,預金債権50万円が受働債権である。

A. 簡易決済の機能

AとBとの債権が互いに対立している場合に,AとBとがそれぞれ別々に請求し,別々に弁済することは不便であり,無駄である場合が多い。そこで,AがBに80万円を支払い,BがAに50万円を支払うという手間を省いて,相殺し,AがBに30万円を支払うことによって決済をすることが認められるべきである。これを相殺の簡易決済の機能という。

B. 公平に基づく担保的機能

相殺が認められるのは,A・B双方がその債権を別々に取り立てるという不便を除くためだけでなく,公平のためである。すなわち,Aが破産した場合を考えると,BはAに対し50万円全額支払わなければならないのに,Bの80万円の債権は,債権額に応じて配当されるにとどまって不公平であり,AB相互間に債権債務が成立した時から,対当額において債権が決済されたものとして取り扱うのが公平である。

したがって,BはAの財産状態が悪化しても,50万円については相殺の意思表示をすれば,それだけで簡単に,かつ確実に他の債権者に先立って回収できるから,相殺は債権担保の役割も果たすことになる。

*図38 相殺の担保的機能

相殺の担保的機能は,重要な問題であるので,項を改めて説明を行う。


2 相殺の要件


A. 相殺適状

相殺ができるのは,相殺適状にあるときである。相殺適状とは以下の場合をいう。

  1. 2つの同種の債権(実際には金銭債権がほとんどである)が存在すること。
  2. 2つの債権が債権者・債務者間に相対立して存在すること。
  3. 双方の債権ともに弁済期にあるとき。
(a) 代替性の要件

第1の要件は,対立する2つの債権が同種の債権であることであり,これを相殺に関する「代替性の要件」という。第1の要件は,相殺の本質をなすものであり,この要件を欠く場合には,相殺は不可能である。

(b) 相互性の要件

相殺の第2の要件は,2つの債権の主体が相互に債権者でありかつ債務者であることであり,これを相殺に関する「相互性の要件」という。この要件も相殺の本質をなすものであるが,これには,「3者間相殺」という例外が存在する。3者間相殺は,非常に難しい問題を含んでおり,理解が困難な問題である。そこで,3者間相殺については,以下において,3つの類型があること,関連条文を掲げるにとどめ,詳しい解説は,専門書[加賀山・担保法(2009)109-115頁]に譲ることにする。

3者間相殺で最も理解が困難なのが,固有の3者間相殺である。固有の3者間相殺の特色は,自働債権と受働債権とが二者間ではなく,最初から三者にまたがって存在しているにもかかわらず,三者のうちの一人の相殺の意思表示によって三者にまたがって存在する債権が消滅するというものである。この類型は,さらに,だれが相殺の意思表示をすることができるかという観点から,以下の3つの類型に分かれる。

第1類型は,相殺権者が受働債権と自働債権とに挟まれるように中間点に位置する場合である。この典型例は,譲渡された債権の債権者から請求を受けた債務者が,債権の譲渡人に対して有していた債権で相殺するという場合である[民法468条2項]。

第2類型は,相殺権者が自動債権と受働債権の連鎖の始点に位置する場合である。この典型例は,債権者から請求を受けた保証人が,自らが債権者に有する債権を自働債権として主たる債務を相殺によって消滅される場合である[民法436条1項の類推]。

第3類型は,相殺権者が自働債権と受働債権の連鎖の終点に位置する場合である。この典型例は,弁済の受領権限のない者(無権限者)が債務者から弁済を受け,債権者が無権限者から利益を受けていたというときに,債務者から不当利得の請求を受けた無権限者が,もともとの債権を自働債権とし,債務者からの不当利得の返還請求権を受働債権として相殺を行う場合である[民法479条参照]。

*表18 3者間相殺の類型(その2) 固有の3者間相殺
(深川裕佳「3者間における相殺の類型的検討」東洋法学52巻(2009)21-41頁による)
大分類 中分類 小分類 根拠条文 条文の内容 図解
固有の3者間相殺
(α債権とβ債権
 との間の相殺)
第1類型 債権譲渡型 民法468条
2項
〔債権の〕譲渡人が譲渡の通知をしたにとどまるときは,債務者は,その通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由〔相殺を含む〕をもって譲受人に対抗することができる。
*図39 譲渡型U
無権限者へ
の弁済型
民法479条 前条〔準占有者への弁済〕の場合を除き,弁済を受領する権限を有しない者に対してした弁済は,債権者がこれによって利益を受けた限度においてのみ,その効力を有する。
*図40 無権限者への弁済型T
第2類型 保証人
相殺型
なし
(旧民法財産編521条)
旧民法521条1項は,「訴追を受けたる保証人は債権者が主たる債務者又は自己に対して負担する債務の相殺を以て対抗することを得」と規定していた。
現行民法の起草者は,先に保証人援用型として述べた民法457条2項を立法する際に,「本条第2項は既成法典財産編第521条第1項の規定と其主意を同じうす」としながら,実際には,この規定のうち,「又は自己」の部分を現行法から脱落させるというミスを犯してしまったのである。
しかし,通説は,保証人が自ら債権者に有する債権で,主債務を相殺することを実質的に認めている[我妻・債権総論(1964)490頁]。

*図41 
保証人相殺型
連帯債務者
相殺型
民法436条
1項
連帯債務者の1人が債権者に対して債権を有する場合において,その連帯債務者が相殺を援用したときは,債権は,すべての連帯債務者の利益のために消滅する。
第3類型 無権限者へ
の弁済型
民法479条 前条〔準占有者への弁済〕の場合を除き,弁済を受領する権限を有しない者に対してした弁済は,債権者がこれによって利益を受けた限度においてのみ,その効力を有する。
*図42 無権限者への相殺型U

上の*表18の図解における省略記号は,それぞれ,Gは債権者(Gläubiger)を,Sは債務者(Schuldner)を,Bは保証人(Bürge)を意味する。

3者間相殺については,理論が未発達な状況にあり,最高裁の判例も,3者間相殺について十分な理解ができていない。そのためもあって,3者間相殺の第2類型(保証人相殺型)として認められるべき場合について,相殺の効力を否定するに留まっている。

最三判平7・7・18判時1570号60頁,判タ914号95頁
 B〔日通商事(Yの子会社)〕のG〔近畿運輸(下請人)〕に対する債権〔α債権:石油の売買代金債権〕でもってGのS〔Y:日本通運(請負人)〕に対する債権〔β債権:請負代金債権〕を相殺することができる旨のB・G間の相殺予約契約に基づき,Bがした相殺の意思表示は,実質的にはBからS〔Y〕への〔α債権の〕債権譲渡といえることをも考慮すると,右意思表示前にGのS〔Y〕に対する債権〔β債権〕を差し押さえた差押債権者〔X:国〕に対抗することができないとされた事例
*図43 3者間相殺の否定例
〈最三判平7・7・18判時1570号60頁,判タ914号95頁〉

平成7年の最高裁判決は,本件の相殺を民法で認められている3者間相殺の問題として捉えることができず,下請人Bがα債権(石油代金債権)を注文者S(Y:Bの親会社)に譲渡した上で,G・Yの2者間でα債権とβ債権(請負代金債権)とが相殺されたものとみなしている。その結果,Xの差押えに遅れてなされた債権譲渡によって二者間の相殺適状が生じたことになる。すなわち,Yは差押え後に取得した自働債権によって相殺をするということになるため,民法511条により,Yは相殺をもって差押債権者Xに対抗できないと最高裁は判断したのである。

しかし,本件の事案は,中舎寛樹「多数当事者相殺契約の効力」[伊藤古稀記念・担保制度の現代的展開(2006)334-357頁]が指摘しているように,上記のようなB・G間の相殺予約契約は,「同一グループ内の複数会社〔本件ではY・B)が共通の相手方〔G〕と取引を行う場合に生じる多数の債権の簡易決済をはかり,同時に,契約当事者である会社のひとつ〔G〕に信用不安が発生した場合には,その会社が有する債権に対する第三者〔X〕の強制執行を排除し,グループ内〔Y・B〕での債権回収ないし清算を計る点にメリットがある」とされている。中舎理論にしたがって当事者の意思を忖度して再構成すると,この相殺予約契約は,「各当事者〔親会社Yと子会社B〕には,当事者それぞれが負担している「債務」について相互に協力し,保証しあうとの意思があるものと理解することができる」[伊藤古稀記念・担保制度の現代的展開(2006)349頁]。

このように,B・G間の「相殺予約契約」は,Y・Bの親子関係会社における相互保証に基づいて,取引先のGに対して,BがSの債務の履行を保証する「保証契約」として組み替えることができると考えると,本件の場合,上記の固有の3者間相殺のうちの第2類型(保証人による相殺)の類型に合致することになり,Bは,Gに対して有する石油売買代金債権を自働債権とし,GのYに対する運送請負代金債権を受働債権として相殺をすることができることになる。

*表18の*図41で示したように,保証人は債権者に対して有する債権でもって主債務者に対する債務を相殺することができる。わが国の民法にこのことを明らかにした規定がないのは,旧民法財産編521条(保証人は,債権者が主たる債務者又は自己に対して負担する債務の相殺を以て対抗することを得)を現行民法457条2項に取り込む際に,「又は自己」の部分を脱落させるという立法上の過誤が生じたからである。しかし,このような3者間相殺が認められることは,通説も認めており[我妻・債権総論(1964)490頁],解釈上も,連帯債務に関する民法436条1項の類推を通じて,保証人が債権者に対して有する債権によってによる主たる債務を相殺することが認められる。また,α債権(燃料の売買代金)とβ債権(運輸の請負代金)との間には牽連性が認められるのであり,この点からも,相殺の担保的機能を認めることができる事案であった。

平成7年の最高裁判決がYを敗訴させた理由としては,相殺予約契約の意味を子会社Bが親会社Yの債務について連帯保証人の立場にあることに気づかなかったためであると思われる。もしも,最高裁が,本件のBはGに対して保証人の立場に立つことを理解していたとしたら,通説に従って,3者間相殺を認めることができたはずだからである。

(b) 請求可能性(2つの債権が弁済期にあること)

相殺の第3の要件である請求可能性(弁済期)に関しては,例外が認められ,要件の緩和がなされている。

第1に,相殺しようとする者は,相手方に対して負っている債務,すなわち相殺される債権(受働債権)についての期限の利益を放棄すれば相殺できるから,相殺する債権(自働債権)さえ弁済期にあれば相殺できることになる[民法505条1項]。

第2に,自働債権が弁済期にない場合であっても,自働債権と受働債権との間に密接な関係(牽連性)が認められる場合には,合理的な「相殺の期待」が認められるため,緊密な関係にある債権に「代替性」と「相互性」の要件が満たされた段階で,相殺適状の要件が緩和されて,相殺が可能となる。

B. 相殺の障害要件

以上のような要件の緩和とは反対に,以下のような相殺の障害要件がある場合には,相殺は許されない。


3 相殺の効果


A. 相殺の遡及効

相殺の意思表示は単独行為であり[民法506条1項],意思表示があれば,双方の債権は相殺適状の時にさかのぼって対当額で消滅する[民法506条2項]。

この遡及効が,他の債権者が受働債権を差押えてきたときに,自働債権の債権者に対して,一般債権者の宿命としての按分比例額ではなく,受働債権の範囲で,全額の回収を実現するという,相殺の担保的機能の大きな要素となっていると考えられてきた[深川・相殺の担保的機能(2008)106〜134頁]。しかし,比較法的な考察によると,国際的な契約法の傾向は,相殺の遡及効を放棄する方向に向かっており,相殺は将来効を有するものとされてきている(ヨーロッパ契約法原則13:106条,ユニドロワ国際商事契約原則(2004)8.5条(3))。このような中で,遡及効を維持することは,次第に困難な状況になりつつある[深川・相殺の担保的機能(2008)76-85頁]。確かに,現在のところでは,わが国では,なお,相殺の担保的機能を遡及効に基づいて説明することが可能である。しかし,遡及効によって相殺の担保的機能を説明する場合には,受働債権について第三者が差し押さえたり,譲り受けたりする時点で未だ相殺適状に達していなくても,相殺の担保的機能を認める判例法理(最高裁昭和39年〈最大判昭39・12・23民集18巻10号2217頁〉,同45年判決〈最大判昭45・6・24民集24巻6号587頁〉)を整合的に理解することは困難である。相殺の意思表示主義に立つからには,意思表示の時点で相殺適状が満たされていなければならないはずであるにもかかわらず,上記の判決は,相殺適状にない時点で他の債権者が受働債権を差し押さえた場合にも,相殺の担保的機能を認めているからである。

したがって,将来的には,相殺の担保的効力は,対立する債権が牽連性を有する場合に認められる相殺の優先弁済効(一種の先取特権)として構成するほかないと思われる[深川・相殺の担保的機能(2008)139-149頁]。しかし,現在のところでは,相殺の遡及効も,相殺の担保的効力を説明する際に有用な概念として理解しておく必要がある[深川・相殺の担保的機能(2008)86-96頁]。

なお,先に述べたように,自働債権に抗弁権が付着している場合には,相手方を保護する必要があるため,相殺は認められないのが原則である。つまり,相殺の遡及効は,原則として,同時履行の関係にある相手方に対抗できない(相手方の権利を害することができない)。ただし,同時履行の関係にある場合には,同時履行の抗弁権が,相殺権者のために与えられている場合には,相殺自体は許される〈最一判昭51・3・4民集30巻2号48頁,最一判昭53・9・21判時907号54頁〉。ただし,相殺の遡及効が制限される場合がある〈最二判昭32・3・8民集11巻3号513頁〉。

同時履行の関係にあった2つの債権が対当額で相殺され,残債務が生じた場合,その残債務に関する遅延損害金の発生時期は,相殺の意思表示の翌日からであって,相殺適状の日にまで遡るわけではない〈最三判平9・7・15民集51巻6号2581頁〉。

B. 相殺の担保的機能

担保物権法の代表的な教科書である[高木・担保物権(2005)4頁]によれば,非典型担保である譲渡担保,仮登記担保,所有権留保と並べて,「その他の物的担保」として「相殺・相殺予約」が以下のように紹介されている。

債権者と債務者が相対立する債権を有する場合の最も簡便な回収方法は,相殺である。この相殺が,担保の実行という効果をもたらしている。たとえば,Aに対して50万円の債務を負っているBが,Aに100万円融資した場合には,Bは相殺によって50万円は回収しうる。しかも,Aの債権者CがAのBに対する債権を差し押さえても,判例〈最大判昭45・6・24民集24巻6号587頁〉は,民法511条の解釈として,BのAに対する債権が,差押え以前に取得したものであれば,BはCに対して相殺をもって対抗しうるとしている。AのBに対する債権については,B,Cとも債権の効力として平等に掴取力をもっているはずであるが,上記のごとき相殺によって,BはCに優先して回収しうるわけであり,したがって,AのBに対する債権が,Aにとっては担保財産となっており,相殺が担保実行の方法となっているわけである。銀行のごとき金融機関は,預金をしている者に融資したり,融資の一部を預金させたり(歩積み・両建て)するのが通常であるが,かかる場合には,そのような意味で,預金が担保財産となっているのである。

4 相殺の担保的機能をめぐる問題点


相殺の担保的機能に関しては,最高裁の昭和45年大法廷判決(最大判昭45・6・24民集24巻6号587頁)が,銀行実務を集大成する形で,以下のように表現しており,現在では,相殺に担保的機能があることは,ほとんど疑われていないといってよい。

相殺の制度は,互いに同種の債権を有する当事者間において,相対立する債権債務を簡易な方法によって決済し,もって両者の債権関係を円滑かつ公平に処理することを目的とする合理的な制度であって,相殺権を行使する債権者の立場からすれば,債務者の資力が不十分な場合においても,自己の債権については確実かつ十分な弁済を受けたと同様な利益を受けることができる点において,受働債権につきあたかも担保権を有するにも似た地位が与えられるという機能を営むものである。

しかし,相殺に担保的機能を認めることは,理論的には,大きな混乱を引き起こすことになる。なぜなら,わが国では,相殺は債権編において,債務の消滅原因の一つとして規定されており,相殺が担保物権でないことは,自明であるとされてきたからである。このため,学説においては,相殺の担保的機能とは,以下のように,債務の消滅を通じた「独占的」な「最優先順位の担保権」と説明されてきた(私法学会シンポジウム[1966:4頁]〔林良平〕)。

〔相殺の〕公平の趣旨は,自働債権〔α〕が受働債権〔β〕を訴訟外で掴取すること,しかも相殺によって受働債権〔β〕を消滅させることによって,受働債権〔β〕は,もはや相手方〔A〕の引当(責任)財産から控除され,自働債権〔α〕の債権者〔B〕以外の他の債権者〔C〕は受働債権〔β〕を引当財産として掴取する途をとざされる,という相殺の構造によって達せられている。この構造に着目すれば,自働債権〔α〕の債権者〔B〕は独占的に受働債権〔β〕を掴取できるものであり,他の債権者〔C〕の発言を許さない意味で,最優先順位の担保権を持つに等しい。この意味では相殺は担保的機能を有するといってよい。(私法学会シンポジウム[1966:4頁]〔林良平〕)

ところが,相殺の担保的機能について,債権の消滅を通じた「独占的」な「最優先の担保権」と考えると,2つの点で,疑問が生じる。第1は,債権の消滅を通じた「独占的」な権利だとすると,他の債権者を害することになり,債権者平等の原則に反して,相殺権者を保護しすぎるのではないかという疑問である。これは,相殺を担保物権として構成する可能性を示唆するものではあるが,そこまで踏み切れるのかという問題が生じている。第2は,そのような「独占的」な権利は,あくまで,相殺適状にある場合に認められるべきものであり,相殺適状にない場合にも,相殺の担保的機能を認める最高裁の判例の立場(無制限説を採用する最大判昭45・6・24民集24巻6号587頁ばかりでなく,制限説を採用する最大判昭39・12・23民集18巻10号2217頁であっても,同様である)は,相殺の機能を逸脱するのではないかという疑問である。

A. 相殺の担保的機能をめぐる学説・判例の展開
*表19 相殺の担保的機能に関する事案の類型と学説・判例の状況
学説 自働債権 受働債権 相殺可能の理由
相殺適状説 相殺適状説 @弁済期 相殺適状が差押えよりも前である
  A弁済期(相殺適状)
  B差押え
相殺適状修正説 @弁済期
  (Bによる相殺適状)
  A差押え
  B弁済期
(期限の利益の放棄が可能)↑
制限説 制限説T
(弁済期先後説)
(最高裁昭和39年判決)
@差押え 自働債権の弁済期が受働債権の弁済期より先である
A弁済期
  B弁済期
(期限の利益の喪失約款)↑
制限説U
(期待利益説)
  @差押え 相殺に対する合理的な期待
(継続的な取引関係,相殺予約等)がある
A弁済期
B弁済期
(相殺予約)
無制限説
(最高裁昭和45年判決)
  @差押え 民法511条の反対解釈
差押えよりも先に自働債権が取得されている
  A弁済期
B弁済期  
B. 差押えと相殺(預金債権の差押えと貸金債権に基づく相殺との優劣)
(a) 制限説T〈最大判昭39・12・23民集18巻10号2217頁〉の考え方

銀行が貸付けを行なう際には,債務者に相応する金額の預金を求めるのが普通であり,少なくとも,貸金を当初は,その銀行に預金させることを貸付けの条件とすることが多いとされている。

銀行としては,貸金と同額の預金を預っていれば,それは,まさに,預金を質にとって入るようなものであり,いざという時は,優先的に貸金の返済に充当しようと考えたとしても,それほど不思議ではない。

最高裁は,当初は,甲(C)が乙(A)の丙(B)に対する債権を差し押えた場合において,丙(B)が差押前に取得した乙(A)に対する債権の弁済期が差押時より後であるが,被差押債権の弁済期より前に到来する関係にあるときは,丙(B)は右両債権の差押後の相殺をもって甲(C)に対抗することができるが,右両債権の弁済期の前後が逆であるときは,丙(B)は右相殺をもって甲(C)に対抗することはできないものと解すべきであるとしていた〈最大判昭39・12・23民集18巻10号2217頁〉。

最大判昭39・12・23民集18巻10号2217頁
 甲が乙の丙に対する債権を差し押えた場合において,丙が差押前に取得した乙に対する債権の弁済期が差押時より後であるが,被差押債権の弁済期より前に到来する関係にあるときは,丙は右両債権の差押後の相殺をもって甲に対抗することができるが,右両債権の弁済期の前後が逆であるときは,丙は右相殺をもって甲に対抗することはできないものと解すべきである。
 債権者と債務者の間で,相対立する債権につき将来差押を受ける等の一定の事由が発生した場合には,両債権の弁済期のいかんを問わず,直ちに相殺適状を生ずる旨の契約および予約完結の意思表示により相殺をすることができる旨の相殺予約は,相殺をもって差押債権者に対抗できる前項の場合にかぎつて,差押債権者に対し有効であると解すべきである。(補足意見および反対意見がある。)

この昭和39年大法廷判決(制限T説)は,わずか5年半で,昭和45年大法廷判決によって無制限説へと変更される。そして,その無制限説が実務で定着するのであるが,学説においては,現在もなお,制限説T(弁済期先後基準説)が通説となっている。その理由は,以下の2つである。

第1の理由は,無制限説によると,いかにも信義則に反するような相殺権者の行為を是認しなければならない。すなわち,受働債権の弁済期が先に到来して,その弁済を義務付けられている第三債務者Bが,後に到来する自働債権の弁済期まで債務の履行を遅延させ,自働債権の弁済期が来るや否や,相殺を主張して自らの債務を免れて自らの債権を完全に回収することになるが,これは,信義則に反する行為といわざるを得ないからである。

第2の理由は,わが国の相殺制度が倣ったとされるドイツ民法392条が,以下のように制限説T(弁済期先後基準説)を明文で規定しており,この説によれば,上記のような信義則に反する事態は避けられるからである。

ドイツ民法 第392条(差し押さえられた債権に対する相殺)
 債権〔受働債権〕に対して差押えがなされたときは,債務者が差押後に債権〔自働債権〕を取得した場合,または,債権〔自働債権〕の弁済期が差押えよりも後に,かつ,債権〔自働債権〕の弁済期が差し押さえられた債権〔受働債権〕の弁済期よりも後に到来する場合においては,債務者は,その債権者に対して有している債権によって相殺することができない。

そして,このようなドイツ民法392条によってわが国の民法511条を制限的に解釈すべきであるという考え方は,最高裁昭和39年大法廷判決の松田二郎裁判官の反対意見に見事に集約されている。

最大判昭39・12・23民集18巻10号2217頁における松田二郎裁判官の反対意見
 差押債権の場合,第三債務者の相殺権につき,多数説の採り,しかして私もまた賛成する見解,すなわち「差押当時自働債権が未だ弁済期に到来していない場合でも,その弁済期が被差押債権である受働債権のそれより先に到来するものであるときは,相殺を以て差押債権者に対抗し得るとの見解〔制限説T(弁済期先後基準説)〕は,従来の最高裁判所の判例〔相殺適状説〕の態度を改め,わが民法をドイツ民法第392条後段と同趣旨に解そうとするものである。しからば,ドイツ法上,右条文の下において,第三債務者と債務者との間に,差押より以前に締結された相殺契約が存在するとき,それは差押によって影響されずとし,あるいはこれに優先するものと解されることは注目に値し,このことは卑見を確かめるものである。思うに,多数意見はドイツ民法第392条後段と同旨の見解を採る以上,この点の見解も亦採用すべきであると思われる。
(b) 無制限説〈最大判昭45・6・24民集24巻6号587頁〉の考え方

しかし,わが国の最高裁45年判決は,この見解を採用しなかった。その理由は,相互に対立する債権がある場合に,どちらの弁済期が先に来るかは偶然的な事情であって,たとえ,自働債権の弁済期が後に来る場合であっても,継続的な契約関係がある場合には,それらの債務は時間の流れにしたがって,それぞれの債務が適状になれば,相殺されていくのが常態である。したがって,たまたま,その自然の流れの途中に第三者が介入したからといって,それらの債務が相殺されるとの当事者の期待を覆す必要はないというのが,無制限説からの制限説T(弁済期先後基準説)に対する反論である。


*図44 相殺の担保的機能(最高裁昭和45年判決)
最大判昭45・6・24民集24巻6号587頁
 〔@相殺の担保的機能〕相殺の制度は,互いに同種の債権を有する当事者間において,相対立する債権債務を簡易な方法によって決済し,もって両者の債権関係を円滑かつ公平に処理することを目的とする合理的な制度であって,相殺権を行使する債権者の立場からすれば,債務者の資力が不十分な場合においても,自己の債権については確実かつ十分な弁済を受けたと同様な利益を受けることができる点において,受働債権につきあたかも担保権を有するにも似た地位が与えられるという機能を営むものである。
 〔A無制限説の採用〕債権が差し押えられた場合において,第三債務者〔B〕が債務者〔A〕に対して反対債権を有していたときは,その債権が差押後に取得されたものでないかぎり,右債権および被差押債権の弁済期の前後を問わず,両者が相殺適状に達しさえすれば,第三債務者〔B〕は,差押後においても,右反対債権を自働債権として,被差押債権と相殺することができる。(補足意見,意見および反対意見がある。)
 〔B相殺契約の効力〕銀行の貸付債権について,債務者〔A〕の信用を悪化させる一定の客観的事情が発生した場合には,債務者のために存する右貸付金の期限の利益を喪失せしめ,同人の銀行に対する預金等の債権につき銀行において期限の利益を放棄し,直ちに相殺適状を生ぜしめる旨の合意は,右預金等の債権を差し押えた債権者に対しても効力を有する。(意見および反対意見がある。

実務は昭和45年の大法廷判決に即して行われているが,昭和39年判決を評価する学説も多い。無制限説を認めるためには,理論的に解明すべき問題点が残されているからである。この点に関する本書の立場は以下の通りである。

相殺の担保機能に関する無制限説に対して批判がなされている理由は,先にも述べたように,Aに対するBの自働債権の弁済期が到来する前にAの受働債権がAの債権者Cによって差し押さえられた場合に,Bの自働債権の弁済期が来ていないにもかかわらず,Bによる相殺の担保的機能を認めることは,弁済期に弁済をせずに債務不履行状態を継続しつつ,自働債権の弁済期が到来するや否や相殺を行うことによって自働債権の回収を行うという相殺権者Bの行為が信義則に違反すると考えられるからである。

しかし,他の債権者Cが差押えを行う場合というのは,Aの資力に不安が生じている場合であることが多い。このような場合に,受働債権の弁済期が到来したとはいえ,牽連しているBの自働債権の弁済に不安が生じている以上,Bに履行拒絶の抗弁権を与えるべきである。

ドイツ民法は,弁済期先後説を明文で定めているが(ドイツ民法321条),他方で,牽連する債務が「相手方の給付の欠如により危殆化されることが予見できる場合には,その者が負担する給付を拒絶することができる」という,不安の抗弁権を認めている(ドイツ民法321条)。

わが国には,不安の抗弁権そのものを規定する条文は存在しないが,買主が売買代金の支払義務を負う場合について,民法576条は,「買主がその買い受けた権利の全部又は一部を失うおそれがあるときは,買主は,その危険の限度に応じて,代金の全部又は一部の支払を拒むことができる」として,先履行義務を負う当事者について,実質的な不安の抗弁権を認めている。

このように考えると,2つの対立する債権の間に牽連性がある場合には,たとえ,それぞれの弁済期に差がある場合であっても,一方の債務の履行に不安がある場合には,牽連性に基づく同時履行の要請を理由として,先履行義務を拒絶しつつ,相殺によって同時履行を実現することは,信義則に反する行為ではないということを理論的に説明することができる。

C. 債権譲渡と相殺(債権譲受人からの請求と譲渡人に対して有する債権に基づく債務者の相殺の抗弁との優劣)

自働債権(α債権:債権者B,債務者A)と受働債権(β債権:債権者A,債務者B)との間に牽連性がある場合には,その後に受働債権(β債権)が第三者C譲渡されたとしても,債権は同一性を保って移転するのであるから,債務者である相殺権者Bは,債権譲渡前よりも不利な地位に置かれるべきではない。したがって,Bは相殺の抗弁をもって受働債権の譲受人Cに対抗することができる[民法468条2項]。

確かに,民法468条2項は,「譲渡人が譲渡の通知をしたにとどまるときは,債務者は,その通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる」と規定しており,債権譲渡の対抗要件が備わるまでに,すでに相殺適状が生じている必要があるとの解釈も成り立ちうる[潮見・債権総論U(2005)633頁]。しかし,民法468条2項における「通知を受けるまでに生じた事由」とは,例えば,解除の場合であれば,債権譲渡の通知の前に解除の意思表示がなされていることが要求されるわけではないし,そのときまでに解除原因が生じていることが要求されているわけでもない。

昭和42年最高裁判例〈最二判昭42・10・27民集21巻8号2161頁(民法判例百選U〔第6版〕第28事件)〉によれば,以下のように,「債権譲渡前すでに反対給付義務が発生している〔双務契約上の牽連性がある〕以上,債権譲渡時すでに契約解除を生ずるに至るべき原因が存在していたものというべきである」として,債権譲渡の対抗要件(本件の場合には,債務者の承諾)が具備された後にはじめて解除原因が生じた場合においても,債務者は解除の抗弁をもって債権の譲受人に対抗できるとしている。

最二判昭42・10・27民集21巻8号2161頁 民法判例百選U〔第6版〕第28事件
 請負契約は,報酬の支払いと仕事の完成とが対価関係に立つ諾成,双務契約であって,請負人の有する報酬請求権はその仕事完成引渡と同時履行の関係に立ち,かつ仕事完成義務の不履行を事由とする請負契約の解除により消滅するものであるから,右報酬請求権が第三者に譲渡され対抗要件をそなえた後に請負人の仕事完成義務不履行が生じこれに基づき請負契約が解除された場合においても,右債権譲渡前すでに反対給付義務が発生している以上,債権譲渡時すでに契約解除を生ずるに至るべき原因が存在していたものというべきである。

そうだとすると,自働債権と受働債権との間に牽連性がある場合には,債権譲渡とその対抗要件が備わるまでに,両債権が相殺適状にある場合に限らず,また,自働債権の弁済期が受働債権の弁済期よりも先に到来している場合に限らず,それまでに,受働債権の債務者が,受働債権との間に牽連性のある自働債権を取得しているならば,債務者は相殺の抗弁をもって債権の譲受人に対抗できると解すべきである〈最一判昭50・12・8民集29巻11号1864頁〉。

最一判昭50・12・8民集29巻11号1864頁
 債権が譲渡され,その債務者が,譲渡通知を受けたにとどまり,かつ,右通知を受ける前に譲渡人に対して反対債権を取得していた場合において,譲受人が譲渡人である会社の取締役である等判示の事実関係があるときには,右被譲渡債権及び反対債権の弁済期の前後を問わず,両者の弁済期が到来すれば,被譲渡債権の債務者は,譲受人に対し,右反対債権を自働債権として,被譲渡債権と相殺することができる。(補足意見及び反対意見がある。)

この事件においては,債権者と債務者との間には継続的な取引関係があり,受働債権は製品の売掛代金であり,自働債権は約束手形であるが,同日に同一金額の手形債権が成立していることから,継続的な取引において生じた債権を分割したものと推定することができ,対立する両債権の間には牽連性が推定される事案であったことが指摘されている[深川・相殺の担保的機能(2008)425頁]。したがって,上記の判例は,事案の解決としても,妥当な解決がなされているといえよう。

D. 物上代位と相殺(抵当権者の賃料債権に対する物上代位と賃借人の敷金返還請求権に基づく相殺の優劣)

賃貸人は,賃借人の債務不履行に備えて,賃借人から一定の金額を差し出させるのが通常である。これを敷金という。この敷金に対しては,賃貸借契約の終了時に賃借人の損害賠償額を差し引いた額について賃借人が返還請求権を有する。

この返還請求権(将来債権)を賃借人の債権者が差押えた場合に,賃貸人は,賃借人に対する損害賠償請求権を自働債権として,敷金返還請求権を相殺することができるかどうかが問題となる。

敷金の法的性質をどのように考えるかで理論構成は異なる。まず,敷金の返還請求権が,損害賠償額を控除した後の額についてのみ発生するならば,賃貸人は,相殺の抗弁を出すまでもなく,損害賠償額について敷金から優先的に充当を受けることができることになる。また,先に発生した損害賠償請求権と賃借物件を明け渡した後に発生する資金返還請求権とが並立して存在すると考えた場合にも,賃貸人は両債権を対当額で相殺することができると考えることができ,この相殺は,賃借人の債権者による敷金返還請求権の差押えに対抗できることになろう。この点に関しては,敷金による相殺と同じ機能を,敷金の充当として認めた最高裁の以下の判決〈最一判平14・3・28民集56巻3号689頁〉が参考になる。

なお,民法は,敷金について,賃貸借契約の条文[民法619条]においては詳しい規定をおかず,先取特権の箇所で,その本質の一部を明らかにしている[民法316条]。すなわち,民法316条によると,賃貸人は,敷金でまかなえない部分の賃料債権,その他の賃貸借関係から生じた債権についてのみ,第1順位の先取特権[民法330条]を有するとしているのである。これを反対から言えば,敷金は,その第1順位の先取特権を超える最高順位の担保権として扱われていることがわかる。

E. 振込み指定と相殺

「振込み指定」とは,債務者Aに対して債権者である金融機関Bが有する債権を担保するため,Aが第三債務者Cに対して有する債権の弁済方法として,AがBに開設した口座にCに振り込ませ,その振込金に対するAの預金返還請求権に対して,金融機関BがAに対して有する債権でもって相殺することである。

これも,相殺の担保的効力を応用したものであり,実質的には,CからのAに対する振込みをもって,Aに対するBの債権の優先的な弁済に充てることになる。裁判例〈名古屋高判昭58・3・31判時1077号79頁〉においては,銀行融資の返済に充てるため退職金を預金することを約束した者が破産宣告を受けた場合につき,その後退職金の振込みによって銀行が負担した預金債務は破産法旧104条二号ただし書きの「前ニ生ジタル原因」に基づく債務であるとして,相殺の担保的効力を認めている。


□ 学習到達度チェック(7) 相殺 □

  1. 相殺の要件と機能について
  2. 相殺の担保的機能について
  3. 相殺の相互性の要件と3者間相殺について

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