01Orientation
24/37 2-1-2. 民法改正で,分かりやすくなる?

【テロップ】
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【ノート】
2015年3月31日に民法改正案が国会に提出されると,その審議が始まる前に,司法書士連合会は,法案が無修正で通過することを前提にして,法務省が作成した改正案に全面的に賛成する解説書を発行しています。 ■弁護士会が改正案を審議する「法制審議会」に4名の委員を送り込んだのに対して,司法書士会は,そのメンバーを送り込むことさえできませんでした。法務省にほぼ絶対的な服従をしている司法書士会を審議会のメンバーにする必要なないと判断されたからだと思われますが,それに抗議することもなく,しかも,改正案が国会に提出されると,審議が始まっていない段階で,直ちに法案に全面的に賛成する概説書を出すというのでは,司法書士会を独立した団体と見ることに疑義が生じても仕方がないでしょう。■ 司法書士会の改正案の概説書によると,今回の改正が分かりやすくなっている代表例として,改正案第473条を取り上げて,賞賛しています。■ しかし,この意見については,疑問があります。確かに,債務者が弁済できることは当然ですが,債務者が弁済すると,債権は消滅すると規定しても,いいものなのでしょうか? ■債務といっても,いろいろな債務があるのであり,例えば,保証債務や連帯債務の場合に,保証債務者や連帯債務者が弁済した場合に,債権は消滅するのかどうか検討が必要です。■ まず,保証債務について検討してみましょう。■ 保証人が保証債務を弁済しても,保証債務は消滅しますが,債権は消滅しません。債権は,保証人の求償権を確保するために,消滅することはなく,債権者から保証人へと移転するだけです。このことは,民法500条以下に明確に規定されています。すなわち,改正案473条は誤りです。■ 連帯債務についても,同様のことがいえます。■ 連帯債務者の一人が,連帯債務の全額を弁済した場合,連帯債務は消滅しますが,債権は消滅しません。なぜなら,保証債務の場合と同様に,弁済した連帯債務者の求償権を確保するために,求償権の範囲で債権は消滅せず,弁済した連帯債務者に移転するからです。■ この点でも,改正案473条は誤りに陥っているといえるでしょう。 ■結局のところ,民法473条は,民法を国民一般にとって分かりやすくするつもりで新設されたのですが,「債務は債務者が弁済することができる」とだけ規定して置くべきところを,それだけでは,誰でも知っていることなので,「債務者が債権者に対して債務の弁済をしたときは,その債権は,消滅する。」というように,余計なことまで規定したために,誤りに陥っており,結局,誰にとっても理解できない条文になってしまったといえるでしょう。 ■条文を起草する場合には,その他の条文との整合性を保つことが重要です。民法473条を新設するのであれば,「保証債務,連帯債務を除き」とか,民法474条に,第三者の弁済には,保証人の弁済する場合,または,連帯債務者が負担部分を超えて弁済する場合を含む」というように,民法の体系を考慮した文言を追加する必要があったのです。 ■このような体系的な配慮を欠いていることが,改正案3条の2における意思能力と事理ベンシキ能力との関係の混乱,95条の錯誤を取り消しとしたにも係らず,心裡留保は,無効のまま放置するなどにも見られるように,今回の改正案の大きな特色であり,民法の体系を破壊するという失敗の原因となっています。