01Orientation
30/37 2-2-6. 預金債権による決済規定の混乱

【テロップ】
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【ノート】
2015年3月31日に国会に提出された法律案によると,「振込み」(すなわち,預金又は貯金の口座に対する払込み)による弁済の規定が新設されます。 民法(債権関係)改正によって新設される「振込み」による弁済の規定(民法477条)は,以下のように規定しています。 民法改正案▲第477条(預金又は貯金の口座に対する払込みによる弁済)■ 債権者の預金又は貯金の口座に対する払込みによってする弁済は,債権者がその預金又は貯金に係る債権の債務者に対してその払込みに係る金額の払戻しを請求する権利を取得した時に,その効力を生ずる。 ■この規定は,「弁済」の前に,「債権者の預金又は貯金の口座に対する払込みによってする」という条件がついていますので,この規定によって,振込みによる弁済が,一般的に,「預金通貨」を認めたものか? また,「振込みは,本旨弁済か? それとも,ダイブツ弁済か?」という疑問に答えていません。 ■これは,大きな問題なので,立法者として結論を出すべきものでしょう。この大問題を解釈にゆだねるということになると,法曹にとっても,また,市民にとってわかりやすい民法とはいえません。 ■今回の民法改正の諮問(法制審議会▲諮問第88号)が,以下の内容であったことを思い起こすべきでしょう。 ■民事基本法典である民法のうち債権関係の規定について,〔1〕同法制定以来の社会・経済の変化への対応を図り,〔2〕国民一般に分かりやすいものとする等の観点から,国民の日常生活や経済活動にかかわりの深い契約に関する規定を中心に見直しを行う必要があると思われるので,その要綱を示されたい。 ■今回の民法の一部を改正する法律案が,少なくとも,この諮問の第2点に答えていないことは明らかでしょう。 預金債権については,改正案は,もうひとつの条文,466条の5を用意しています。■ しかし,この規定は,債権の譲渡制限を認めるものなので,預金債権を預金通貨と扱うことの障害となっています。■ しかも,差押債権者に対しては,債権の譲渡制限を認めないので,その区別の理由が問われなければなりません。 ■預金債権について,銀行の言い分を鵜呑みにし,銀行預金を預金通貨として発展させることに対する大きな障害をもたらした改正案は,まさに,社会・経済の変化に対応していないというよりも,むしろ,その変化に逆行するものであるといわなければなりません。