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27/32 欠陥自動車による交通事故の場合の責任の分配

【テロップ】
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【ノート】
これまでの学習において,皆さんは,『空飛ぶタイヤ』で問題とされている被害者の加害者に対する損害賠償問題に関して,この事件に適用される可能性のある条文すべてについて,その知識を取得しました。 ■そこで,いよいよ,「交通事故の加害者の責任と製造物責任との競合」の問題について,最後の詰めをしていくことにしましょう。 ■一般論としての問題は,「自動車の構造上の欠陥によって交通事故が生じた場合,欠陥自動車の保有者,欠陥自動車の販売業者,欠陥自動車の製造業者は,それぞれ,どのような責任を負うのか?」という問題です。 ■具体的には,「赤松運送が引き起こした交通事故によって柚木妙子の死亡,柚木貴文に生じた傷害という損害について,赤松運送,東京ホープ販売,ホープ自動車は,どのような責任を負うのか?」という問題です。 この問題を解く順序として,第1に,自賠法3条のなぞである「自動車の欠陥を証明しても,運行供用者が免責されないのはなぜなのか?」という問題から解くことにしましょう。 ■この問題を解くために,背理法を使うことにしましょう。すなわち, ■「欠陥自動車の保有者が整備不良のないことを理由に,もしも,欠陥自動車の保有者に対して,交通事故の損害賠償責任を免れることにしてしまうと,どういう事態が生じるか?」という問題を検討することにします。 ■この問題は,次のことを意味します。■ 「加害者である欠陥自動車の運行供用者が免責された場合,被害者は,自賠法の責任保険金を受け取ることはできるだろうか?」という問題です。 ■もしも,交通事故の加害者に責任がないということになると,それを前提にして被害者に給付される自賠法の保険金を被害者が受け取ることができなくなってしまいます。 ■被害者が保険金を受け取れるようにするためには,被保険者である自動車の保有者の責任を免責してはならないのです。 ■民法の一般理論としても,自動車を利用して,利益を享受していた保有者は,たとえ,自動車の欠陥を自らが作り出したのではなく,本来の責任を負うのは,事故の原因を作り出した製造業者であるとしても欠陥のある自動車を運行に供していた保有者は,いったんは,被害者に損害賠償をしたのちに,原因者である製造業者に損害賠償額を求償すべきだと思われます。 なぜなら,自動車が発明される前に制定された民法においても,欠陥不動産によって事故が生じた場合に,その欠陥を作った原因者がいたとしても,欠陥不動産から生じた損害は,その占有者,または,所有者がいったん責任を負い,そののちに,原因者に求償すべきであるとの条文が存在しており,その条文が,欠陥自動車の事故についても,解決の指針を与えているからです。 ■そこで,次の問題を先に検討することにします。 ■危険物責任について,民法は,どのような工夫をしているのでしょうか? 民法においては,土地の工作物に瑕疵(欠陥)があって,その欠陥によって他人に損害を生じさせた場合,その危険物の占有者,所有者,欠陥の原因者について,それぞれの責任の分配はどのようになされているのでしょうか? 危険物責任の責任分配規定である民法717条を参照してみることにしましょう。