TracficAccident&PL
4/32 刑事責任と民事責任との区別

【テロップ】
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【ノート】
『空飛ぶタイヤ』事件では,赤松運送の社長は,刑事事件のヒコクニンとなる恐れがありましたし,交通事故の被害者から民事事件である損害賠償請求訴訟で実際に訴えられています。 ■そこで,ここでは,刑事責任と民事責任とは,どこが違うのかをそれぞれの責任の目的の違いと言う観点から考察してみましょう。 ■刑事責任と民事責任とは,どこが違うのでしょうか? ■刑事事件では,国家権力による不当な逮捕等から人権を保護するために,「罪刑法定主義」という原則がとられています。 ■法律であらかじめ規定された犯罪だけが罰せられ,法律で規定されていない行為によって個人が罰せられることはないという原則です。 ■したがって,刑法においては犯罪の要件は厳格に規定されます。 法律で規定された犯罪類型である傷害の罪を犯せば, 罰せられます。 同じく,法律で規定された犯罪類型である詐欺の罪を犯せば,罰せられます。 しかし,法律に規定されていない行為をしても,それが,道徳的には悪とされるとしても,国家によって罰せられることはありません。 行為者は,無罪となります。 つまり,刑事責任の特色は,類型論による列挙主義にあるといえます。 ■これに対して,民事責任は,被害の救済です。 ■法律に規定された要件を満たせば,法律効果が生じます。この点は刑法の場合と同じです。 例えば,被用者が不法行為を行った場合には, 民法の規定によって,使用者が被害者に損害賠償責任を負います。 同じく,他人の名誉を毀損すると,被害者に対して損賠賠償責任を負います。 刑事責任との違いは,法律に規定した類型的な個別の要件を満たさない場合でも,例えば,公害や製造物責任法が制定される以前であっても,加害者は被害者に対して, 一般不法行為法である民法709条によって損害賠償責任を負わされてきました。 ■一般法と特別法とが同時に適用の要件を満たしている場合には,特別法が優先して適用されます。特別法の法が,故意又は過失の要件を被害者が証明する必要がないなど,救済が厚くなっているからです。 ■しかし,特別法の要件に該当しない場合,例えば,使用者責任が問われた場合に,被用者に故意も過失もないことが証明されて,民法715条の使用者責任が適用されない場合でも,被害者は,使用者の故意又は過失を証明することによって,使用者本人に対して,民法709条の責任を問うことができるのです。 つまり,民事責任の特色は,一方で,類型論によって被害救済を容易にする(すなわち,特別法は一般法に優先する)ばかりでなく,他方で,類型論の限界を一般法が補充する(すなわち,一般法は特別法を補充する)ことによって,類型論にとらわれずに,多様な被害を救済することを可能にしている点にあります。