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8/32 民法の法理を凝縮した条文→過失とは何か?民法211条1項(囲繞地通行の方法)

【テロップ】
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【ノート】
過失責任主義における行動基準は,「法と経済学」の知見を取り込むと,「必要なことはしてよい。しかし,損害を最小にするような注意を払うべきである」ということでした。 ■このような行動基準を明確に規定した条文は,存在するのでしょうか? ■実は,存在するのです。それが民法211条1項です。 ■民法211条1項と聞いて,すぐにその内容を思い起こせるヒトは,民法の専門家でもまれでしょう。 ■したがって,今回,民法211条1項をマスターすれば,民法の専門家も舌を巻くほどの議論を展開することができるようになります。 ■もっとも,民法211条1項は,「前条の場合には,」という言葉で始まっていますので,民法211条1項の解説に入る前に,民法210条(イニョウチ通行権)の規定を見ておきましょう。 民法210条は,以下のように規定しています。■ 民法210条第1項▲「タノ土地に囲まれて公道に通じない土地〔すなわち,袋地〕の所有者は,公道に至るため,その土地を囲んでいるタノ土地〔すなわち,囲繞地〕を通行することができる。■ 民法210条第2項▲「池沼,河川,水路もしくは海を通らなければ公道に至ることができないとき,又は崖があって土地と公道とに著しい高低差があるときも,前項と同様とする。」 ■公道に道が通じていない袋地,または,それに類する土地は,そのままでは利用ができず,死んだ土地になってしまいます。 ■そこで,袋地の所有者は,袋地を取り囲んでいるイニョウチを公道に達する限度で通行する権利(すなわち,イニョウチ通行権)を与えられるというルールを定めたのが,民法210条です。 ■前提問題がクリアできたので,肝心の民法211条の説明に入ります。 民法211条(イニョウチ通行権の行使方法)は,以下のように規定されています。■ 民法211条第1項▲「前条の場合には,通行の場所及び方法は,同条の規定による▲通行権を有する者のために必要であり,かつ,他の土地のために損害が最も少ない▲ものを選ばなければならない。」■ 民法211条第2項▲「前条の規定による通行権を有する者は,必要があるときは,通路を開設することができる。」 ■民法211条1項の権利を与えられる者にとって「必要であり」かつ, ■権利が与えられることによって迷惑をこうむる者にとって,「損害が最も少ない」方法を選ばなければならないとしている点が重要です。 ■先に述べた,過失責任主義のもとでの,私たちの行動原理である「必要なことはしてよい。しかし,損害を最小にするような注意を払うべきである」という行動基準が,民法211条1項に見事に結実していることが理解できたでしょうか? ■問題解決の際に,困難に出会ったときは,この行動原理を思い出してください。 ■きっと,問題解決のヒントになることと思います。