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2/64 『空飛ぶタイヤ』事件の法的分析 目次

【テロップ】
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【ノート】
『空飛ぶタイヤ』事件の法的分析の目次です。 ■この講義は,第1の「前提問題」,および,第2の「自賠法と製造物責任法の競合問題」から成り立っています。■ まず前提問題です。 ここでは,第1に,法学全体に係わる問題として, 法学の目的と教育目標について言及し,「法と経営学」の中での,法的視点からの分析とは何を目指すのかを解説します。 第2に,刑事事件と民事事件の分離と目的の違いについて解説します。 第1の違いは,刑事責任が「犯罪の処罰」を目的とするのに対して,民事責任は,「被害の救済」を目的とする点が異なります。 第2の違いは,原則として「故意」だけを罰する刑事責任と 故意と過失とを同等に見て,二つを区別せず,被害者救済をめざす点が,刑事責任と民事責任の最大の違いであることを説明します。 ■第3に,民事責任に焦点を当てて, ■交通事故と民事責任について,3つの法律の関係について説明します。 ■すなわち,民法と自賠法と製造物責任法の3つの法律です。■ 民事責任の一般法としての民法については, 圧倒的な適用頻度を誇る一般不法行為法としての民法709条と,民法の中で,最近の適用頻度第2位の特別不法行為法としての使用者責任について説明します。 また,一般不法行為と特別不法行為との違いについては,過失の証明責任が被害者にある一般不法行為と無過失の証明責任が加害者にあるという違いについても,中間責任という観点から説明とともに,練習問題での知識の確認を行います。 ■次に述べる自賠法は,人身事故だけに適用される上に,賠償額に制限を設けていますので,その額を超えて請求する場合には,民法709条と715条が頻繁に使われています。■ 交通事故の場合にまず適用されるのは,確実な賠償金が確保できる自賠法です。 そして,責任の要件は,自賠法第3条に規定されています。 自賠法は,責任保険ですので,被保険者の立場に関する自賠法15条と, 被害者の保険会社に対する保険金の直接請求権を規定している自賠法16条が重要です。 そこで,保険金の請求主体について,図解によって説明します。■ 個別法の最後は,製造物責任法です。 ■製造物責任には,理論的には,欠陥商品を販売した売主の責任も含まれます。■ ■しかし,わが国の製造物責任法は,製造物責任を不法行為責任と性質づけし,原則として販売業者を責任主体から除外してしまいました。したがって,販売業者の責任を追及する場合には,民法の契約法の条文を利用しなければなりません。 製造物責任法には,製造物とは何か,欠陥とは何かなど,重要な定義が規定されていますので,用語の説明をします。 そして,製造物責任の要件について,製造物責任法の第3条にそって説明を行い, 中間責任か無過失責任かという議論に触れながら,免責規定についても説明をします。■ 前提問題をクリアした後に,本論として,「自賠法の責任と製造物責任の競合問題について解説します。 ■ここで中心となるテーマは,最初の解説ですでに説明したように, 自賠法3条が,欠陥自動車の保有者を免責しないのはなぜか?という問題です。 ■具体的には,「自動車の保有者の『整備不良』ではなく,製造者による自動車の『構造的な欠陥』であっても,自動車の保有者(運行供用者)が免責されないのは,なぜか」という問題です。 この問題は,一般論としては,「危険物(欠陥物)による事故における複数当事者の責任分配の基本原則は何か?」という問題に還元できます。 この問題の解決に指針を与えてくれるのが,危険物責任の典型例とされている, 民法717条の土地工作物責任であり,この条文に示されている責任分配の法理が,参考になります。 この条文の一般原理を製造物責任における責任分配にあてはめてみると,どのような解決案が出てくるでしょうか? この点について,詳しく検討することが,この講義の最終目的となります。