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29/64 複数加害者の責任分配の原理→交通事故民法717条の法理の図解

【テロップ】
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【ノート】
民法717条における責任分配の構造を図式化してみましょう。■ 土地工作物の設置又は管理に瑕疵(欠陥)があり,それによって,被害者に損害が発生したとします。 この場合,土地工作物の占有者が 民法717条1項▲本文によって,第一順位の責任を負います。 占有者は,被害者に損害を賠償しなければなりません。 占有者が弁済すると被害者は満足します。 しかし,土地工作物に瑕疵を生じさせたのが,第三者であった場合には, 占有者は,民法717条3項によって,その原因者に対して,求償をすることができます。 すなわち,占有者は,被害者に弁済した額を 原因者に請求して,全額の支払を受けることができるのです。 しかし,第1順位の責任を負担する占有者が自らに過失がないこと,すなわち,占有者が「必要な注意をした」ときは,占有者の責任は中間責任ですので,占有者は,責任を免れ,その代わりに土地工作物の所有者が, 民法717条1項▲但し書きによって,責任を負います。この責任は,無過失責任といわれています。 この場合においても,土地工作物に瑕疵を生じさせたのが,第三者であった場合には,占有者の場合と同様にして, 土地工作物の所有者は,民法717条3項によって,原因者に対して求償をすることができます。 すなわち,所有者は,被害者に弁済した額を 原因者に請求して,全額の支払を受けることができるのです。 これによって,土地工作物責任に関する責任の分配が明らかになりました。 ■しかし,そもそもの原因を作った究極の責任者は,第三者である原因者です。 したがって,もともと,土地工作物の設置又は保存の瑕疵によって被害を被った被害者は,民法709条に基づいて,損害賠償を請求することができたのです。 瑕疵の原因者が被害者に対して損害賠償をすれば,すべての責任が消滅します。 つまり,土地工作物の瑕疵によって被害が生じた場合に,その原因を作り出したのが第三者であったときは,その第三者が最終的な過失責任を負うのであって,民法717条の占有者,および,所有者の責任は,その責任を肩代わりする責任だったことになります。 瑕疵のある土地工作物の占有者と所有者とが,原因者に求償できるのは,占有者も,また,所有者も,究極の責任を負う者ではないことがわかります。 ■最後に,民法717条の責任分配を振り返ってみましょう。 民法717条1項▲本文▲の占有者の責任は,工作物に瑕疵を生じさせた原因者が第三者である場合には,第1に責任を負担する占有者も, 占有者が無過失の場合に,第2に責任を負う所有者も, いずれも,究極の責任を民法709条によって責任を負うべき,原因者の責任を肩代わりさせられた責任なのです。 占有者も,また, 所有者も,原因者に求償ができるのは,いずれも,究極の責任を負っていないことを示しています。