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31/64 複数加害者の責任分配の原理→民法717条交通事故責任と製造物責任の競合

【テロップ】
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【ノート】
民法717条による危険物の関与者の責任分配を参考にして,交通事故が欠陥自動車という危険物によって発生した場合の関与者の責任分配を行ってみましょう。■ 自動車に構造上の欠陥があり,それによって,被害者(歩行者)に損害が発生したとします。 この場合,欠陥自動車の運行供用者(赤松運送)が 自賠法3条によって,責任を負います。 欠陥自動車の運行供用者は,被害者に損害を賠償しなければなりません。 運行供用者が弁済すると被害者は満足します。 欠陥自動車の運行供用者である保有者は,欠陥自動車の売主と売買契約を締結していますので, 民法415条に基づいて損害賠償請求をして,被害者に支払った賠償金の求償をすることができます。 しかし,自動車に欠陥を生じさせたのが,第三者であった場合には, 損害賠償を支払った欠陥自動車の売主は,欠陥自動車の製造者に対して製造物責任法3条又は民法415条によって賠償金の求償をすることができます。 もっとも,欠陥自動車の売主が,無過失であることを証明できる場合には,売主は,契約責任を免れることができます。 その場合には,欠陥自動車の売主の製造業者等に対する求償権も生じないことになります。 ■その場合でも,運行供用者は,被害者に弁済した額を 原因者である欠陥自動車の製造者(ホープ自動車)に請求して,全額の支払を受けることができるのです。 これによって,欠陥自動車によって交通事故が生じた場合の責任の分配が明らかになりました。 しかし,そもそもの原因を作った究極の責任者は,第三者である欠陥自動車の製造業者(ホープ自動車)です。 したがって,もともと,欠陥自動車によって損害を被った被害者は,製造物責任法3条に基づいて,損害賠償を請求することができたのです。 欠陥の原因者である製造業者が被害者に対して損害賠償をすれば,すべての責任が消滅します。 つまり,自動車の欠陥によって被害が生じた場合に,その原因を作り出したのが自動車の製造者であったときは,製造者が最終的な過失責任を負うのであり, 自賠法3条の運行供用者,および,自動車の販売業者の責任は,その責任を肩代わりする責任だったことになります。 ■運行供用者と販売業者とが,製造業者に求償できるのは,運行供用者も,また,販売業者も,究極の責任を負う者ではないことがわかります。 ■最後に,欠陥自動車による交通事故における責任分配を振り返ってみましょう。 自賠法3条の運行供用者の責任は,欠陥を生じさせた原因者が自動車の製造業者である場合には,交通事故を起こした運行供用者は,いったん責任を負わなければなりません。 また,欠陥自動車を販売した販売業者も,契約責任を免れることはできません。 しかし,製造物責任法3条によって究極の責任を負うべきであるのは,原因者である欠陥自動車の製造業者です。 保有していた自動車に欠陥があったために交通事故を起こしてしまった欠陥自動車の運行供用者は,その欠陥自動車を製造した製造業者に対して被害者に支払った損害賠償金を求償することができます。 また,欠陥自動車の販売業者も,買主である欠陥自動車の保有者に損害賠償をした場合には,同様にして,原因者である欠陥自動車の製造者に対して求償することができます。 ■その理由は,究極の責任を負うのは,自動車が交通事故を引きこした原因を作り出した,欠陥自動車の整合業者だけだからです。 ■被害者を救済するため,欠陥自動車の運行供用者も,また,欠陥自動車の販売業者も,いったんは責任を負担させられますが,その場合には,欠陥自動車の製造者に求償することによって,最終的には免責されます。 ■求償ができるということは,究極の責任を負っていないことを意味しているのです。 ■以上で,『空飛ぶタイヤ』事件の法的分析を終了します。