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48/64 出版物の差止請求の肯定事件(1/2)最大判昭61・6・11民集40巻4号872頁(北方ジャーナル事件)

【テロップ】
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【ノート】
民法723条は,名誉毀損の場合に損害賠償請求だけでなく,謝罪広告等の原状回復請求権を認めています。 ■最高裁判所は,それをさらに一歩進めて,ひとたび損害が発生すると損害の回復が困難な場合については,言論の自由の一環として,検閲が禁止されている出版物についてさえ,その差止請求を認めるに至っています。 ■最高裁昭和61年6月11日▲大法廷判決▲民事裁判集40巻4号872頁(北方ジャーナル事件)■ 出版物の頒布等の事前差止めは,このような事前抑制〔表現の自由を保障し検閲を禁止する憲法21条の趣旨に照らし,厳格かつ明確な要件のもとにおいてのみ許容されうるものといわなければならない〕に該当するものであって,とりわけ,その対象が公務員又は公職選挙の候補者に対する評価、批判等の表現行為に関するものである場合には,そのこと自体から,一般にそれが公共の利害に関する事項であるということができ,ゼンジのような憲法21条1項の趣旨に照らし,その表現が私人の名誉権に優先する社会的価値を含み憲法上特に保護されるべきであることにかんがみると,当該表現行為に対する事前差止めは、原則として許されないものといわなければならない。 ただ,右のような場合においても,(1) その表現内容が真実でなく,又は,(2) それが専ら公益を図る目的のものでないことが (3) 明白であって,かつ,(4) 被害者が,重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があるときは,当該表現行為はその価値が被害者の名誉に劣後することが明らかであるうえ,有効適切な救済方法としての差止めの必要性も肯定されるから,かかる実体的要件を具備するときに限って,例外的に事前差止めが許されるものというべきであり,このように解しても,上記説示にかかる憲法の趣旨に反するものとはいえない。 (最高裁昭和61年大法廷判決の解説をしておきます。) ■ノット(①又は②)とは,ノット①,かつ,ノット②のことです。 ■逆からいえば,(専ら公益目的 かつ 内容が真実)ならば,違法性阻却事由がある,ということになります。 ■このように,逆を考えると,最高裁判所の判断構造を理解することが容易となります。 ■①,または,②とは,違法性が存在する場合のことです。 ■③は,予見可能性の一部に該当します。 ■④は,差止めの特別要件としての「回復が困難な損害のおそれ」のことです。