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49/64 出版物の差止請求の肯定事件(2/2)最三判平14・9・24判時1803号60頁(「石に泳ぐ魚」事件)
【テロップ】
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【ノート】
出版物の差止請求が認められた,比較的最近の判例を紹介しておきます。 ■最高裁平成14年9月24日▲第三小法廷判決▲判例時報1803号60頁(「石に泳ぐ魚」事件)■ 人格的価値を侵害された者は,人格権に基づき,加害者に対し,現に行われている侵害行為を排除し,又は将来生ずべき侵害を予防するため,侵害行為の差止めを求めることができるものと解するのが相当である。 どのような場合に侵害行為の差止めが認められるかは,侵害行為の対象となった人物の社会的地位や侵害行為の性質に留意しつつ,予想される侵害行為によって受ける被害者側の不利益と侵害行為を差し止めることによって受ける侵害者側の不利益とを比較衡量して決すべきである。 そして,侵害行為が明らかに予想され,その侵害行為によって被害者が重大な損失を受けるおそれがあり,かつ,その回復を事後に図るのが不可能ないし著しく困難になると認められるときは侵害行為の差止めをコウニンすべきである。 被上告人は,大学院生にすぎず公的立場にある者ではなく,また,本件小説において問題とされている表現内容は,公共の利害に関する事項でもない。さらに,本件小説の出版等がされれば,被上告人の精神的苦痛が倍加され,被上告人が平穏な日常生活や社会生活を送ることが困難となるおそれがある。そして,本件小説を読む者が新たに加わるごとに,被上告人の精神的苦痛が増加し,被上告人の平穏な日常生活が害される可能性も増大するもので,出版等による公表を差し止める必要性は極めて大きい。 以上によれば,被上告人のA及び上告人(新潮社ら)に対する本件小説の出版等の差止め請求はコウニンされるべきである。