TracficAccident&PLver2
51/64 補遺 その2

【テロップ】
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【ノート】
銀行が,コンプライアンスに違反していると判断した取引先への融資をストップし,さらには,従来の融資を引き上げるべきかどうかという問題を扱った経済小説を読んで,融資の引き上げのリスクと,それに対抗する経営戦略について検討します。■ すなわち,池井戸潤『空飛ぶタイヤ』▲講談社文庫(2013)のうちの,第8章(不経済的選択),▲第6節▲〔カシハガシと期限の利益の喪失〕における▲田坂支店長と▲赤松社長との間の掛け合い▲を読んで,以下の問題を検討します。 ■銀行は,どのような場合に,いわゆる「カシハガシ」ができるのでしょうか? ■銀行がカシハガシをする際に,もっとも有効な債権回収手段は何でしょうか? ■反対に,融資先は,どのような防御手段をとりうるのでしょうか? ■この小説の中でも,経営と法律とが交錯する,重要かつ難解な問題なので,詳しく検討し,Professional への展望を開くことにします。 ■この問題を理解するためには,以下の知識を身につけておく必要があります。 第1は,銀行取引約定書に対する知識です。 銀行取引約定書は,2000年4月18日に廃止されたのですが, 各銀行が独自の約定書に変更して,今なお利用しており, それらの約定書の概略をつかむ上で現在も有益です。■ その中でも,特に重要なのは,第5条の「期限の利益の喪失」条項です。■ これらの問題を理解するためにも,期限の利益とは何か?  期限の利益は,どのような場合に喪失させられるのか? について知る必要があり, 民法136条,137条をよく読む必要があります。 ■その上で,銀行が用いる最強力の債権回収手段であるソウサイについて,その担保的機能を理解しておく必要があります。 銀行取引約定書では,第7条に規定があります。その条項をよく読んで, 第1に,期限の到来,期限の利益の喪失後の債権を自働債権とするソウサイとは何か? 第2に,期限の未到来の債権を自働債権とするソウサイはどのような場合に可能となるのか? について, 民法511条の条文の意味と,それに関する最高裁判決によって確立されている,ソウサイの担保的機能について理解する必要があります。■ 最後に,銀行取引約定書を含めた「定型約款」について,民法(債権関係)改正はどのように対応しようとしているのか, 2015年3月31日に国会に提出された,民法の一部を改正する法律案(第548条の2以下)は,消費者契約法第10条の強い影響を受けていますので,消費者契約法第10条との比較を通じて,改正案の概要と位置づけとを検討することにします。