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52/64 貸剥しと「期限の利益の喪失」(1/2)池井戸潤『空飛ぶタイヤ』(下)講談社文庫(2013)第8章第6節

【テロップ】
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【ノート】
池井戸潤『空飛ぶタイヤ』講談社文庫(2013)第8章(不経済的選択)からの引用です。 ■赤松運送の大型トラックが脱リンにより死亡事故を起こしたことにより,取引銀行からカシハガシを受ける場面です。 ■ここでは,請求によって期限の利益を喪失させて,貸金の期限を到来させることができるかどうかの問題を扱います。 ■銀行の支店長と赤松社長との間の掛け合いの文章を読んだあとに,質問をします。 ■皆さんは,質問のつど,ビデオを一時停止し,自分で考え,答えてみてから,つぎに進むようにしてください。 ■では,最初の掛け合いの文章を読みます。■ 田坂(東京ホープ銀行・自由が丘支店長):「御社のおかれております状況,ならびに御社の業績を勘案しますに,債権保全を必要とするに相当の事由があると判断いたしました。従いまして,当行としては御社に対して供与してまいりました期限の利益を--」■ 赤松(赤松運送・社長)「ちょっと待ってくれ。すまないが,何をいっているのか,まったく理解できない…」■ ■この場面では,田坂支店長が,赤松運送は,期限の利益を喪失させようとしています。 ■赤松社長は,法律の専門家ではないので,理解できないかもしれません。しかし,実は,田坂支店長は,法律的には,きちんと根拠のあることを述べようとしているのです。 ■田坂支店長は,どのような法律上の根拠に基づいて,慇懃無礼な主張をしようとしているのでしょうか? ビデオの続きを見る前に,根拠となる文書を探して,答えてみてください。■ ■ポケット六法をお持ちなら,巻末の資料にその根拠となる銀行取引約定書が載っているので,根拠となる条項を探してみましょう。その作業をしてから,ビデオをつぎに進めましょう。 ■ポケット六法を持っていないヒトは,たぶん根拠が見つからないので,仕方がありません。ビデオを進めてください。 ■次の場面では,田坂支店長が,期限の利益を喪失させる法的な根拠を裏付ける具体的な事実を述べています。 ■注意深く聞いたあとで,田坂支店長が根拠として出している事実について,証拠があるものと,ないものとに分けていただきます。 ■そのつもりで,つぎの掛け合いをよく聴いてください。■ 田坂▲「つまりですね,私どもとしましては,御社の信用状態に大きな懸念を抱いております。具体的に申し上げますと,まもなく行き詰る可能性が高いと。銀行のルールでは,そのような事態になったとき,債権回収ができるようになっていました,そんなわけですから今融資している金額を全額返済していただきたいと,こういうことで。」■ 赤松▲「ふざけないでください。何の根拠があってそんなことをおっしゃるんです。」■ 田坂▲「根拠? いまさら根拠といわれるんですか,社長。」 「あれだけの事故を起こし,さらに大口取引先も失われたでしょうに。その穴埋めもできないまま,今度は訴訟ですよ。さらに警察の捜査もまだ続いていて,依然として逮捕される可能性は拭いきれない。これが根拠じゃなくて,なんです。十分すぎるぐらいですよ」■ 赤松▲「事故原因は整備不良じゃないっていってるでしょう! それはまもなく明らかになるはずです。」■ 田坂▲「いわゆる希望的観測って奴ですか?」 ■田坂支店長と赤松社長との掛け合いを聞いたので,これから,以下のことをじっくりと考えてみましょう。 ■以下の質問に答える際には,トゥールミンの議論の図式を描いてみるとよいでしょう。 ■第1に,田坂支店長の主張は何でしょうか? ■第2に,田坂支店長の主張の根拠はなんでしょうか? ■第3に,田坂支店長の主張の根拠を裏付ける具体的事実は何でしょうか? ■第4に,田坂支店長があげている具体的事実のうち,証拠があるものは,何でしょうか? ■第5に,田坂支店長があげている具体的な事実のうち,証拠がないものは,何でしょうか?