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55/64 銀行取引約定書(2/5)

【テロップ】
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【ノート】
銀行から融資(貸金)を受けた場合に,借主は,いつの時点でそれを返還しなければならないのでしょうか? ■民法591条(返還の時期)は,以下のように規定しています。 ■民法591条▲第1項■当事者が返還の時期を定めなかったときは,貸主は,相当の期間を定めて返還の催告をすることができる。 ■民法591条▲第2項■借主は,いつでも返還をすることができる。 ■つまり,貸金の借主は,返還時期があるときはその時期まで,返還時期が定められていないときは,貸主からの請求があってから,相当期間が経過するまでは,期限の利益を享受できるので,その期限後に返還すればよいのです。 ■ところが,この期限の利益は,債務者の利益のためにあるので,債務者は,この期限の利益を放棄することができますし(民法136条),破産手続きが開始したり,担保を害したりした場合には,期限の利益を失います(民法137条)。 ■さらに,銀行取引約定書▲第5条によると,銀行の借主は,以下のように,さらに,過酷な責任を負わされています。 銀行取引約定書▲第5条(期限の利益の喪失)■第1項■ 私について,つぎの各号の事由が一つでも生じた場合には,キコウから通知催告等がなくてもキコウに対するいっさいの債務について当然期限の利益を失い,直ちに債務を弁済します。■ 第1号■支払いの停止,または,破産,和議開始,会社更生手続開始,会社整理開始もしくは特別清算開始の申立があったとき。■ 第2号■手形交換所の取引停止処分を受けたとき。■ 第3号■私または保証人の預金その他のキコウに対する債権について仮差押,保全差押または差押の命令,通知が発送されたとき。 第4号■住所変更届け出を怠るなど,私のセメニキスベキ事由によってキコウに私の所在が不明となったとき。■ ■以上の期限の利益の喪失事由のうち,仮差押,仮保全または差押については,証拠がなくてもできる簡単な手続であるため,借主にとっては,防御する手段がなく,非常に過酷な責任となっています。 ■銀行が債権回収として行なうソウサイの場合には,その効果がさかのぼって効果を生じるのですから,差押えだけで,自動的に期限の利益を失わせるという条項は,不当条項と解されるヨチがありあます。 ■のちに述べるように,民法(債権関係)改正によって新設される予定の民法548条の2によると,この条項は,無効となる可能性があります。 ■期限の利益の喪失約款のうち,以上の第5条▲第1項は,民法の条文と比較すると,借主にとって過酷な責任を負わせるものですが,それでも,その要件は明確です。 ■ところが,以下の第5条▲第2項は,借主の責任が非常に軽微なものが含まれており,特に,第5号は,「前各号のほか債権保全を必要とする相当の事由が生じたとき」というように,要件が非常にあいまいで,銀行の恣意的な判断で,借主の期限の利益を喪失させることができる危険な条項です。■ 銀行取引約定書▲第5条▲第2項■次の各場合には,キコウの請求によってキコウに対するいっさいの債務の期限の利益を失い,直ちに債務を弁済します。 第5条▲第2項▲第1号■私が債務の一部でも履行を遅滞したとき。 第5条▲第2項▲第2号■担保目的物に対する差押,または,競売手続の開始があったとき。 第5条▲第2項▲第3号■私がキコウとの取引約定に違反したとき。 第5条▲第2項▲第4号■保証人が前項または本項の各号の一つにでも該当したとき。 第5条▲第2項▲第5号■前各号のほか債権保全を必要とする相当の事由が生じたとき。 ■以上の規定のうち,最後の第5号は,先に述べたように,要件が非常にあいまいで,銀行の恣意的な判断で,借主の期限の利益を喪失させることができるという,非常に危険な条項です。 ■このため,第5号の規定は,消費者契約法第10条のみならず,民法(債権関係)改正の法律案▲第548条の2によって,無効とされる可能性があると,私は考えています。