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56/64 期限の利益の放棄と喪失

【テロップ】
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【ノート】
さきに,銀行取引約定書第5条による期限の利益の喪失事由を見てきました。 ■この規定が社会通念上妥当であるかどうかを考えるに際しては,普遍的正義の基準を規定している民法の任意規定と比較してみるのが妥当です。契約正義を判断する上で,消費者契約法▲第10条が,消費者契約条項が正義に合致しているかどうかを判断するに際して,民法,または,商法の任意規定と比較すべきことを規定しているのは,その意味で理にかなっているといえます。 ■民法136条は,以下のように,期限の利益は誰のためにあるのかを明確にしています。 民法136条(期限の利益及びその放棄)■ 民法136条▲第1項■期限は,債務者の利益のために定めたものと推定する。■ 民法136条▲第2項■期限の利益は,放棄することができる。ただし,これによって相手方の利益を害することはできない。■ ■このような期限の利益について,民法は,以下の場合に限って喪失するとしています。 民法137条(期限の利益の喪失)■ 次に掲げる場合には,債務者は,期限の利益を主張することができない。■ 民法137条▲第1号■債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。■ 民法137条▲第2号■債務者が担保を滅失させ,損傷させ,又は減少させたとき。■ 民法137条▲第3号■債務者が担保を供する義務を負う場合において,これを供しないとき。■ ■普遍的な契約正義を述べている民法137条と比較したとき,これまで見てきた銀行取引約定書▲第5条の期限の利益の喪失条項が,いかに,銀行に有利であり,取引の相手方にとって過酷なものであるかが理解できると思います。 ■破産手続の場合に比較して,債権の仮差押え,保全差押えの場合には,債権者は証拠をソメイで済ますことができ(民事保全法13条),債権の差押えの場合でも,債務者および債務者をシンジンすることなしに差押命令が発せられるため,債務者はこれを妨げる手段を持ちません。 ■したがって,銀行取引約定書▲第5条第1項第3号(預金債権に対する仮差押え,保全差押え,または,差押えによる期限の利益の喪失),および,第5条▲第2項▲第2号は,削除するか,債務者の言い分を考慮する手段を講じる必要があります。 ■また,銀行取引約定書▲第5条▲第2項▲第5項の「前各号のほか債権保全を必要とする相当の事由が生じたとき」という,あいまいで,銀行の恣意的な判断を助長する条項は,削除するか,第1号から第4号までを「債権保全を必要とする相当の事由がある」との「法律上の推定の前提」と変更することによって,債務者の反論権を認めるべきでしょう。