TracficAccident&PLver2
6/64 民事責任における故意と過失との同等性→刑法と民法との違い

【テロップ】
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【ノート】
『空飛ぶタイヤ』事件では,交通事故と製造物責任とが問題となっています。 ■このような事件に適用される法律は,特別法としては,自賠法(すなわち,自動車損害賠償保障法)と,製造物責任法です。 ■しかし,そのような特別法には,適用にいくつかの制限があります。 ■自賠法の場合には,人身事故だけに適用され,ブッソン事故にとどまる場合には,適用されませんし,損害保険ですので,支払われる保険金額に上限があります。 ■また,製造物責任法の場合には,訴えることができるのは,原則として,メーカーだけであり,メーカーよりも,販売店の方が,ずっと資力がある場合でも,製造物責任法によっては,訴えることができません。 特別法に,そのような制限がある場合であっても, 一般不法行為法である民法709条(不法行為による損害賠償)は,適用が可能です。 ■民法709条は,以下のように規定しています。■ 「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は,これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」 ■民法709条の特色は,適用の要件が,第1に,故意又は過失,第2に,被害者に対する損害の発生,第3に加害者の故意又は過失と被害者に対する損害の発生の間に因果関係があること,という3つであるというように,非常にシンプルであることが特色となっています。 『空飛ぶタイヤ』の場合には,従業員が事故を起こしていますので,特別不法行為である民法715条も適用される可能性があります。 ■民法715条(使用者等の責任)は,以下のように規定しています。■ 民法715条1項▲「ある事業のために他人を使用する者は,被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。」■ 「ただし,使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき,又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは,この限りでない。」 ■民法715条1項で,使用者が「相当の注意をしたとき」というのは,使用者に「故意も過失もない」ということを意味しますので,「過失がない場合には,責任を負わない」という民法の大原則である「過失責任」の主義には従っています。 ■しかし,一般不法行為である民法709条の場合には,加害者の「故意又は過失」の要件は,被害者が証明しなくてはなりません。 ■これは困難を極めることなので,特別不法行為の場合には,被害者の証明責任を軽減し,使用者のホウで,使用者が無過失であること,すなわち,「相当の注意をした」ということを証明させることにし,その証明が確実にできない場合には,被害者が勝訴できるようにしているのです。 ■これを,「証明責任の転換」といい,特別不法行為法は,この証明責任の転換によって,一般不法行為の場合よりも,被害者の救済を厚くしているのです。 ■つまり,特別不法行為責任は,被害者が過失を証明する必要がある原則的な過失責任主義と,加害者が無過失を主張しても責任を免れることができない無過失責任主義との中間にあることがわかります。 ■この点を捕らえて,特別不法行為責任は,中間責任といわれることがあります。 ■一般不法行為である民法709条と,特別不法行為である民法715条との関係を,皆さんは,理解できたでしょうか? 1989年(平成元年)から2014年までの間に,裁判所によって適用された民法条文を頻度の多い条文から順に10位までを並べてみました。 ■どのような条文が,最近の民法適用条文のベストテンに入るのでしょうか? 第1位は,709条です。▲第2位は,715条です。▲第3位は,415条です。 ▲第4位は,710条です。▲第5位は,722条です。 ▲第6位は,1条です。▲第7位は,719条です。▲第8位は,703条です。 ▲第9位は,90条です。▲第10位は,95条です。 ■以上が,民法適用条文のベスト10です。 ■それぞれの条文がどのような条文であるのか,六法を開いて調べてみましょう。