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63/64 民法(債権関係)改正の動向→消費者契約法10条第3編債権 第2章 契約 第1節 総則 第5款 定型約款 の新設
【テロップ】
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【ノート】
2015年3月31日に国会に提出された民法の一部を改正する法律案によると,民法548条の2以下に,「定型約款」の款が新設されます。 新設される規定のタイトルである「定型約款」とは,「定型取引において,契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総称である」と定義されています。■ ここで,最初に出てくる「定型取引」とは,何でしょうか? ■定型取引とは,第1に,ある特定の者が,不特定多数の者を相手方として行う取引であり,しかも,第2に,その契約内容が画一的であることが双方にとって合理的なものとされています。 ■第1の要件である,「ある特定の者が,不特定多数の者を相手方として行う取引」とは,B to C 取引がその典型であり,よく理解できます。 ■しかし,第2の要件である,「その契約内容が画一的であることが双方にとって合理的なもの」という要件については,大数法則が契約の基盤となっており,事故にあったヒトを相互に扶助するために,画一的な拠出金を設定するという保険契約以外に,その例を見出すことは,困難です。 ■なぜなら,消費者向けに大量生産される画一的な商品についても,現在では,量販店の競争が激化して価格は一定とは限らないばかりか,しかも,インターネット取引が発達し,コンプライアンスとして,個別の顧客対応が義務付けられている現代の取引社会においては,サービスについても,個人によってその内容を変化させることが簡単に実現できるため,契約内容の重要な地位を占める価格も,サービス内容も,必ずしも,一定とはなっていないからです。■ そうだとすると,ある特定の者が,一方的に作成した定型約款が効力を有するのは,合意がある場合に限られるはずであり, 表示さえすれば,拘束力が生じるというのは,説得力を欠きます。 ■インターネット取引では,すべての場合に,合意のプロセスが用意されており,表示をしただけで契約が成立するというのは,公示を紙に頼っていた時代の残滓であり,時代の流れに逆行しているといわざるを得ません。 したがって,民法548条の2▲第1項▲第二号は,削除すべきであるし,少なくとも,インターネット取引においては,適用されないと解すべきでしょう。■ しかし,新設規定第548条の2の肝心な点は,第1項ではなく,第2項です。 ■この民法改正の法律案第548条の2▲第2項(相手方の利益を一方的に害する定型約款の無効)を消費者契約法第10条と比較してみましょう。 ■文言は非常に良く似ていますが,約款が無効かどうかを判断する基準が,天と地ほどに異なることに気づくと思います。 ■さきに述べたように,消費者契約法第10条の場合には,無効かどうかを判断する基準として,任意規定という明確な判断基準が示され,その上で,具体的な事例に任意規定を適用した結果と,契約条項を適用した結果とを比較して,契約条項を適用した結果が,任意規定を適用した結果よりも,一方的に消費者の権利を害するときは,契約条項を無効とするというように,判断のプロセスも明確に規定されています。 ■それに比較して,民法改正の法律案は,このような明確な判断基準として,「取引上の社会通念」という,ほとんど意味が不明であり,かつ,不明確な判断基準を持ち出し,その上,判断のプロセスもあいまいなまま,無効かどうかを判断せざるを得ず,公正な判断を期待することができないものとなっています。 ■したがって,この法律案は,欠陥法案であることが明らかであり,「取引上の社会通念」というあいまいな概念ではなく,消費者契約法第10条と同様に,任意規定という明確な判断基準を示した上で,判断のプロセスも明確にするように,修正すべきだと,私は考えています。