Law_SetTheory
23/58 System of torts law (1/3)

【テロップ】
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【ノート】
不法行為の条文の中で一番適用頻度の高いのは,民法709条ですが,その適用の条件がすべて満たされているのに,加害者が被害者に損害賠償責任を負わない場合を紹介しました。その理由はなぜでしょうか?■ その理由は,不法行為の体系が,第1に,損害賠償責任を成立させる要件(図の上の部分),第2に,成立を妨げる要件(図の右の部分),第3に,いったん成立した責任を減少させたり,消滅させたりする要件(図のし下の部分)とから成り立っており,民法709条は,第1の要件を規定しているに過ぎないからです。  たとえ,第1の要件(民法709条)をすべて原告が証明しても,第2の成立障害要件(例えば,民法720条の正当防衛・緊急避難)が被告によって証明されると,損害賠償責任は成立しません。  また,損害賠償責任が成立しても,被告が原告の過失を証明すると,損害賠償額が減額されたり(民法722条2項の過失そうさい),被告が消滅時効の要件を証明すると,損害賠償請求権が消滅したりします(民法724条の消滅時効)。  このように,紛争を法律によって解決するためには,その分野に関する法律効果の発生要件,発生障害要件,消滅要件のすべてについて理解することが必要です。  このような全体の構造を知るためには,電気回路とかプロセスの流れ図等を作成して,全体を鳥瞰できる工夫をするのが便利です。