WhatIsLaw2015
24/31 解釈方法論(6/7)例文解釈

【テロップ】
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【ノート】
第6問は,「例文解釈」という特別に難しい解釈なので,法学部に入ってから,ゆっくりと学習してください。 ■概要だけを簡単に説明しておきます。 ■代表的な例は,民法612条(賃貸借の譲渡及び転貸の制限)という条文の解釈です。■ 民法612条は,賃貸人の承諾を得ずに,無断で,借り物,例えば,借家や借地を他人に譲渡したり,又貸ししたりしてはいけません。無断で譲渡したり,又貸ししたりすると,賃貸借契約は解除されてしまいますというものです。■ しかし,借りた家の一間だけを親戚に間借りさせるなどの場合,おおやさんの承諾をとっていなかったとしても,賃貸借契約を解除して,賃借人を追い出すということを認めると,気の毒なことになります。■ そこで,最高裁判所は,「信頼関係」を破壊するとはいえない,特別な事情がある場合には,賃貸借を解除して,賃借人を追い出すことはできないという判決を下しています。■ つまり,最高裁は,民法612条に適合する事実がある事例について,条文の文言とは,全く反対の結論を導いているのです。 ■もしも,条文の文言にない場合であれば,確かに反対解釈が可能です。しかし,この場合は,明確な文言があり,その文言に当てはまる事例なので,反対解釈は使えません。 憲法76条3項によって,裁判官は,法律の条文には拘束されるはずです。なぜ,このようなことが可能なのでしょうか? ■このような解釈を可能にするために,法学者が考え出した理論が,「例文解釈」という解釈です。 ■例文とは,本当の意味の一部を例としてあげたものという意味です。 ■従って,例文解釈というのは,「文言は一例に過ぎない,その本当の意味は,その裏にある」という解釈です。■ つまり,民法612条が挙げている,「無断譲渡・転貸」は,賃借人の「背信行為」,すなわち,信頼関係を破壊する行為のことを,その一例として示したに過ぎません。従って,そのほかの場合でも,条文には書いていないけれども,例えば,長期の賃料不払いとか,無断増改築なども,賃貸借契約の解除原因となると考えるのです。■ もっとも,「無断譲渡・転貸」があれば,それは,通常は,「背信行為」として,解除に値することが原則となります。■ しかし,「無断譲渡・転貸」があっても,それが,「背信行為といえない特別の事情がある」,例えば,「借家の一間を,短い期間に限って親戚に又貸しした」などという場合には,解除ができないことになるのです。 ■これが,例文解釈の例です。