WhatIsLaw2015
28/31 法解釈の応用問題(1/2)憲法9条の解釈

【テロップ】
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【ノート】
いよいよ,最後の応用問題に取り掛かります。 ■憲法第9条の「戦争の放棄」に関する解釈問題です。確認のため,条文を読んでみましょう。 第1項▲日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。■ 第2項▲前項の目的を達するため、陸海空軍そのたの戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。■ ■さて,応用問題は,「自衛隊は違憲か?」という問題です。■ 文理解釈をしてみましょう。■ 第2項に,「陸海空軍その他の戦力は,これを保持してはならない」とありますから,戦力であることが疑われていない自衛隊をわが国が保持していることは,違憲だということになります。■ これに対して,「前項の目的を達するため」という文言を重視して,反対解釈をしてみましょう。■ 前項の目的とは,「国際紛争を解決するため」ですから,その反対概念である「自衛のため」の戦力は,これを保持することができることになります。 ■つまり,自衛隊の保持は,合憲だということになります。 ■もちろん,これで結論が出たわけではありません。むしろ,先に述べたアイラック(IRAC)の議論の始まりです。 ■違憲論に組する人は,国際紛争を解決する手段としての戦争と,自衛のための戦争を区別することはできないと反論するでしょう。これまでの歴史で,国際紛争は,常に,自衛のための戦争だとされてきたからです。 ■しかし,合憲論に組する人は,侵略されたり,そのおそれが間近に迫ったときに,自国を防衛するために戦争するのと,他国を侵略したり,他国を守るための国際紛争を解決するための戦争とは区別できるし,区別すべきだと主張するでしょう。 ■この議論を収束するためには,どちらもが納得できる高度な解釈原理を確立する必要があります。 ■これを機会に,トゥールミンの図式を参考にして,皆さんで実施してみるとよいでしょう。