大阪大学大学院法学研究科 博士課程後期
加賀山 茂
目 次
一 論文を書く意味
三 論文を書く手順
収集した文献を、どの範囲で、どのように引用するかについて、頭を悩ます必要がなくなる。
引用の恣意性から免れることができ、主観性と、客観性とを、同時に保つことができる。
他人の論文に引摺られて、関連のないことまでダラダラと引用したり、自分の論点がぼやけるのを防ぐことができる。
その論点についての意見を誰が初めて主張したのか、また、誰と誰とによって論争が行なわれているかが、一目瞭然となる。
完成された論文を読んで、論者の発見した光を新鮮と感じ、その道を一緒に通って見て、論者の感動を追体験してくれる人が多ければ多いほど、その論文の評価は高くなる。そして論者にとっても、その喜びは大きい。しかし論文の書き手にとって一番大切なことは、論者とは別の光を発見して、同じ、または、別の目標に到達した人の批判を受けることである。そして、その人との討論を通じて、よりよい道を見つけることができるならば、それ以上の喜びはないといってよい。
論文が学問の水準を高めるものであるとすれば、それは論文を読んだ者が、その論文により、もっと次元の高い観点を発見できるような機会を与えられるからであろう。そのような人が一人でもあれば、その論文を書いた意味は十分に果されるのである。
初出 : 大阪大学法律相談部『法苑』復刊3号(1977年)15頁