[Home Page]へ
「インスピレーションになろう」から「奉仕を鼓舞する人になろう」へ
-2018-2019年RIテーマ「インスピレーションになろう」と「四つのテスト」-
作成:2018年7月26日
日出ロータリークラブ会員 加賀山 茂
1.今年度のRIのテーマの和訳「インスピレーションになろう」は,「四つのテスト」に適合的でない
(1) 「インスピレーションになろう」は,日本では「インスピレーション(発想力)を強めよう」と理解される
2018-2019年度RI(国際ロータリー)会長であるバリー・ラシン(Barry Rassin)氏が提唱する今年度のテーマは,左のロゴに示されているように,「インスピレーションになろう」である。
日本のロータリアンの一員として,この日本語の意味は,「インスピレーション(発想力)を強めよう」とか,「インスピレーション(発想力)の豊かな人になろう」とかということなのだろうと思って,四つのテスト(①真実かどうか,②みんなに公平か,③好意と友情を深めるか,④みんなのためになるかどうか)に照らして実行しようと試みた。
しかし,「インスピレーション(発想力)を強めよう」とか,「インスピレーション(発想力)の豊かな人になろう」とかというテーマについて,ロータリアンの行動指針である「四つのテスト」に照らし合わせてみた結果は,意外なことに,四つのテストに反することが分かった。
(2) 「インスピレーションになろう:インスピレーションを強めよう」は,四つのテストに適合しない
第1に,「インスピレーション(発想力)を強めよう」と努力することは,果たして,「①真実かどうか」。
|
四つのテスト |
- バリー・ラシン会長は,“BE THE INSPIRATION”と呼びかけておられるのだが,この英語の意味は,「インスピレーション(発想力)を強めよう」とか,「インスピレーション(発想力)の豊かな人になろう」とかではないようである。
- むしろ,「人をインスパイア―(勇気を鼓舞する)人になろう」と解釈するのが正しいらしい。
- 「インスピレーションになろう」という日本語は,日本の多くのロータリアンにとって,「インスピレーション(発想力)を強めよう」とか,「インスピレーション(発想力)の豊かな人になろう」と受け止められているようだが,日本語訳も,その受け止め方も,どちらも,「真実ではない」ようだ。
第2に,「インスピレーション(発想力)を強めよう」とすることは,「②みんなに公平か」。
- たとえ,自分のインスピレーション(発想力)が強められたとしても,人それぞれなので,自分のインスピレーション(発想力)を強めたり,インスピレーション(発想力)の豊かな人になろうとすることが,「みんなに公平になる」とは思えない。
第3に,「インスピレーション(発想力)を強めよう」と努力することは,「③好意と友情を深めるか」。
- 「インスピレーション(発想力)を強めよう」とか,「インスピレーション(発想力)の豊かな人になろう」と努力すれば,自分が瞑想の世界に浸ることにはなるだろうが,そのことによって,「好意と友情が深まる」ことはなさそうだ。 インスピレーション(発想力)は,深い内省によって得られるものであり,他者との関係から生じるものとは考えられていないからである。
第4に,「インスピレーション(発想力)強めよう」と努力することが,「④みんなのためになるかどうか」。
- 「インスピレーション(発想力)を強めよう」とか,「インスピレーション(発想力)の豊かな人になろう」とすれば,自分のためになることは確かである。しかし,そのことが,「みんなのためになる」とは思えない。
(3) 発想の転換の必要性
このように考えると,バリー・ラシンRI会長の主張する“BE THE INSPIRATION”は,普通の日本人が受け止めることになる「インスピレーション(発想力)を強めよう」とか,「インスピレーション(発想力)の豊かな人になろう」とかではなく,他者に対して,「奉仕を鼓舞する人になろう」という呼びかけと解釈しなければならない。
なぜなら,英語の日本語訳としても,“BE THE INSPIRATION”とは,「人を鼓舞する人たれ」という意味であり,「奉仕を鼓舞する人になろう」と訳するのが穏当だからである。
2.「インスピレーションになろう」から「奉仕を鼓舞する人になろう」へと日本語訳を改めよう
(1) 「奉仕を鼓舞する人になろう」は,四つのテストに適合する
このように日本語訳を変えて,改めて四つのテストにかけてみれば,その結果は歴然とする。
- 「奉仕を鼓舞する人になろう」は,バリー・ラシン会長の真意をとらえており,
- ①真実のテストをクリアする。しかも,その努力は,すべてのロータリアンにとって
- ②公平をもたらし,
- ③好意と友情を深めることになり,
- ④みんなのためになる。
(2) 「インスピレーションになろう」に代えて「奉仕を鼓舞する人になろう」という日本語訳を採用するよう「勇気を鼓舞して」働きかけよう
四つのテストによって,私たち日本のロータリアンがやるべきことが明らかになったと思われる。そこで,日出ロータリークラブのロータリアンに以下のことを提案したい。
- 「インスピレーションになろう」という4つのテストに不適合な日本語は,少なくとも,日出ロータリークラブとしては,不採用としよう。
- なぜなら,バリー・ラシンRI会長の主張する“BE THE INSPIRATION”を原語で理解している世界のロータリアンと,誤った日本語訳で「インスピレーションになろう」という誤った日本語訳を信奉する日本のロータリアンとで共通理解ができない状態に陥っているからであり,ロータリアンとして,このような齟齬を放置すべきではないと考えるからである。
- 日出ロータリークラブでは,「インスピレーションになろう」に代えて,「奉仕を鼓舞する人になろう」という日本語を採用しよう。
- バリー・ラシンRI会長の主張する“BE THE INSPIRATION”における“THE INSPIRATION”は,「勇気を鼓舞する人」という意味である。
- たとえば,Chicagoのラブソングである,“YOU ARE THE INSPIRATION”の中でも,“THE INSPIRATION”は,以下のように「勇気を鼓舞する人」の意味で使われている。
-
You're the meaning in my life, |
|
あなたは,私の人生に意味を与え, |
you're the inspiration. |
|
勇気を鼓舞してくれる人。 |
You bring feeling to my life, |
|
あなたは,私の人生に感性をもたらし, |
you're the inspiration. |
|
勇気を鼓舞してくれる人。 |
- しかし,日本語の「インスピレーション」には,「天からの啓示によるひらめき,創造的な発想」などの意味はあるものの,英語におけるような,天に代わって「勇気を鼓舞する人」という意味は存在しない。
- つまり,「インスピレーションになろう」という日本語は,善意に解釈したとしても,「インスピレーション(ひらめき)を感じれる人になろう」と理解されるにとどまり,「内向き志向」が推奨されることになってしまう。これは,「他者への働きかけ」を推奨するバリー・ラシンRI会長の真意を表わしていない。バリー・ラシンRI会長の真意を伝える日本語としては,内向き志向の「インスピレーションになろう」ではなく,他者への働きかけを推奨する「奉仕を鼓舞する人になろう」が適切である。
- 他のロータリークラブに対して押し付けることはできないが,RIのテーマの日本語を変更できる権限を有する人々に対して,色々な機会を捉えて,以下のことを丁寧に説明しよう。
- 「インスピレーションになろう」というテーマは,日本語として意味不明である。むしろ,日本の多くのロータリアンに,「インスピレーション(発想力)を強化しよう」という意味であろうとの誤解を生じさせており,日本のロータリアンのテーマとしては,不適合である。
- この日本語訳に代えて,「奉仕を鼓舞する人になろう」が採用されるよう,あらゆる機会を利用して地道に働きかけよう。
(3) 結論 ロータリアンとして迷うことがあれば,「四つのテスト」に従って行動しよう
ロータリアンならば,言行に迷いが生じたときは,「四つのテスト」に即して行動すべきである。「インスピレーションになろう」という日本語は,“BE THE INSPIRATION”という原語で理解している世界のロータリアンと,「インスピレーション(発想力)を強化しよう」と誤解している日本のロータリアンとの間に重大な齟齬を生じさせており,この事態を放置すべきではない。
「インスピレーションになろう」という日本語は,公式訳であるが,それが日本の多くのロータリアンに誤解を生じさせている。そして,内向き志向の「インスピレーションになろう」よりも,他者への働きかけを推奨する「奉仕を鼓舞する人になろう」とする方が,四つのテストに適合的であることも明らかである。
そうだとすれば,このことをロータリークラブの機関誌である『ロータリーの友』への投稿をしたり,それぞれの地区のガバナーに上記の事情を説明したりすることを通じて,ミスリーディングな日本語は改訂するように働きかけるのが,わが国のロータリアンとしての使命であろう。
「インスピレーションになろう」に代えて,「奉仕を鼓舞する人になろう」という日本語訳を広めることによって,はじめて,バリー・ラシンRI会長の主張する“BE THE INSPIRATION”の意図が日本のロータリアンの心に響くようになるのではないだろうか。
[Home Page]へ