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(創刊号は,2017年12月25日に発刊した。以後,毎年1回,12月25日に信山社から発刊する。将来的には,年2回の発刊をめざす。)
(関連リンク:信山社のホームページ,信山社「法と経営研究」創刊号の紹介)
作成:2017年11月15日
名古屋大学・明治学院大学名誉教授 加賀山 茂
学習院女子大学国際文化交流学部教授 金城 亜紀
加賀山茂・金城亜紀 責任編集 『法と経営研究』〔創刊号〕 信山社(2017/12/25) -「法」と「経営」の複合的視点 による新しい学知と社会の創生- |
わが国では,これまで,法学と経営学は独立した領域として存在し,積極的に相互交流する伝統は必ずしも確立して来なかった。しかし,現実に解決しなければならない問題,および,あるべき未来を展望した施策は,そもそも個別の学問領域とは無関係に存在している。さらに,社会が複雑になるに伴い,個々の狭い学術領域を超えた複合的なアプローチが求められている。このような社会・経済の状況を視野に入れるならば,自然科学においても,理学のみならず工学がなくては画期的な製品が生まれないのと同様に,社会科学においても,社会に生起する複雑な問題を解決していくためには,理論的な研究も重要であるが,理論と現実を結びつけるエンジニアリング的な研究も不可欠である。
このような問題意識の下に,本誌の名称に表象される「法と経営(Law & Management)」という新たな研究領域は,将来的には学会とすることも視野に入れているが,既存の枠にとらわれることなく,法学と経営学とが対象とする領域における理論と現実を媒介するプラットホームとして機能することを目指す。したがって,既に確立した個々の学問領域からは,異質あるいは曖昧な存在として批判を受けることがあるかもしれないが,そのような批判がなされる状況にあることが,むしろ,私たちの使命を遂行している証であるともいえよう。
「法と経営(Law & Management)」とは,経営学と法学の学問分野に生起する諸問題について,経営学と法学の二つの観点から解決する方法を探究することを通じて,究極的には,両者を発展的に融合することをめざす学問である([加賀山・法と経営学序説(2013)1頁])。
それをもう少し具体的にイメージすると以下のような図となる。すなわち,「法と経営(Law & Management)」とは,具体的には,(1)組織自身,(2)金融市場,(3)労働市場,(4)原材料市場,(5)製品市場,(6)政府関係という六つの学問分野に,法学の学問分野,すなわち,(1)会社法,(2)金融法,(3)労働法,(4)契約法・知財法,(5)不法行為法・経済法,(6)行政法・税法をマッピングし,あらゆる組織に生起する問題を,法学と経営学の二つの観点から解決する方法を探究することを通じて,究極的には,法学と経営学とを発展的に融合することをめざす学問であるということができる。
経営学の学問分野 | マッピングする法学の学問分野 |
もっとも,経営学,法学は,社会の要請に応じてダイナミックに変化する学問分野であるため,上記の図は,現時点での概念を表象するものに過ぎない([斎藤・法と経営学の視点(2014)287頁])。
2015年,明治学院大学大学院にわが国ではじめての「法と経営学」研究科が設立された。この研究科では,その主要科目であるビジネス総論では,法学の教員と経営学の教員の二人の教員がひとつの教室に入り,経済小説や実際に生じた経営問題,判例を題材にして,法学と経営学の二つの視点から問題解決の方法を提示し,大学院生との間で議論を重ね,大学院生がグループ討論を通じて結論を導くという方法を取り入れている。
本誌は,「法と経営」という学問分野を切り開いた明治学院・法と経営学研究科の初代委員長を経験した加賀山茂(修士(法学))と経営学と法学との融合を目指して研究を行っている学習院女子大学教授の金城亜紀(博士(経済学))とが編集代表となり,厳格な査読制を実施する学術雑誌として,年1回,すなわち,12月25日に発刊する。創刊号の発刊は,2017年12月25日である。将来的には,年2回の発刊をめざす。
雑誌の刊行が困難となっている現況にもかかわらず,このような学術雑誌の刊行を引き受けていただいた信山社社長の袖山貴氏に対して感謝の意を表したい。
上記のような存在である以上,既存の枠組み内にある層を対象にすることは競合が多い中で新たな付加価値を提供できないばかりか,「法と経営研究」の趣旨に反しかねない。積極的に同じような問題意識を有する同志,さらには志を同じくしてもそれを学術的な実績として表明する場を欲している層に的の焦点を絞るべきであろう。具体的には,現実の問題と格闘しながら,実務をアカデミックに体系化したいと願い研鑽を重ねている実務家,プロフェッショナル,および,それらの人々の考え方を理論的にサポートすることをめざす研究者である。
研究者が現実に埋没することは問題が多いものの,現実を知る実務家からの問題提起は研究する上での貴重なインプットになり得る。したがって,学術的な関心とそれを学ぶ意欲のある実務家との接点を恒常的に有することは研究者にとっても有益であろう。かかる意味において,「法と経営研究」は間口が広く,奥行きの深い場であることをめざす。
これまで,経営学と法学との間で相互交流が必ずしも活発でなかったのは,二つの学問領域にとどまらず,実務家と研究者との間でも見られる現象でもある。本誌は,実務家が研究者をめざす登竜門になると同時に,研究者にも実務家の要求に応える学術成果を発表する場を提供するものでありたいと考えている。
応募資格は,法と経営学に興味を持つ研究者ばかりでなく,別に定める応募要領にしたがって,広く一般に公募を行う。そして,査読を希望しない場合には,編集代表者による審査を行って掲載の可否を決定し,査読を希望する場合には,査読委員による査読を行い,査読に通ったもののみを掲載する。
論文の公募にさいしては,応募者に対して,「なぜ投稿論文の主題が法学と経営学の個別学問領域に固執しては解明できず,両者の複合的な接近方法が必要か」について言及することを求める。また,論文の内容については,最後の「結論」が,最初の「問題提起又は問題の所在」の答えとなっていることが必要不可欠である。
その他の作品(事例・判例研究,学界の動向等のトピックス,書評など)の応募資格は,法学もしくは経営学の研究者(大学院生を含む),または,研究を志す実務家とするが,必要に応じて,編集委員が推薦する者に応募資格を与える。なお,いずれの応募作品についても,本誌への掲載の採否は,編集代表者2名が協議の上で決定する。
「法と経営学研究」は,毎年1回発行する。1頁(49字×30行=1,200字,英文の場合600words)換算で,150~250頁のボリュームとする。
毎年12月25日発行エントリー受付 2月~3月
査読付き論文の原稿締め切り 8月31日
査読による採択の可否決定 10月31日
刊行 12月25日
雑誌の構成は,原則として以下の通りとする。
[加賀山・法と経営学序説(2013)]
加賀山茂「『法と経営学』研究序説」明治学院大学法科大学院ローレビュー 19号(2013/12)1-11頁 (PDF)
[斎藤・法と経営学の視点(2014)]
斉藤和夫「『法と経営学の視点から-『グローバル戦略』経営を考える」(斎藤和夫『民事保全法-民事紛争最前線』慶應大学出版会(2014/12/30)287-293頁所収)
関連リンク:信山社のホームページ,信山社「法と経営研究」創刊号の紹介
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