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第3回 契約法の構造(契約の流れと契約の類型)

作成:2006年8月25日

講師:明治学院大学法科大学院教授 加賀山 茂
書記:竹内 貴康,藤本 望 編集:深川 裕佳


講義のねらい


第3回の講義では,契約法の全体像を契約の流れと契約の類型とを用いて明らかにします。それとともに,契約法の構造を一般法と特別法との関係を通じて構造的に理解することを試みます。今回の講義で学ぶべき項目は以下の通りです。

  1. 契約法の構造と講義の全体像
  2. 契約の流れ
    1. 契約の成立・不成立
    2. 契約の有効・無効
    3. 契約の効力の発生・消滅
    4. 契約の履行と債務の消滅または契約の終了
    5. 契約の不履行と債権者の救済(強制履行,解除,損害賠償)
  3. 契約の類型
    1. 契約の13の類型(典型契約)
      • 贈与,売買,交換,消費貸借,使用貸借,賃貸借,雇用,請負,委任,寄託,組合,終身定期金,和解
    2. 契約の目的による分類
      1. 財産権を移転する契約(「与える債務」を生じる契約)
        • 贈与,売買,交換,消費貸借
      2. 財産権を移転しない契約(「なす・なさない債務」を生じる契約)
        1. 物を利用して返還する契約
          • (消費貸借),使用貸借,賃貸借
        2. 役務を提供する契約
          • 雇用,請負,委任,寄託
        3. 物又は役務を利用して事業をする契約
          • 組合,終身定期金
        4. 紛争を解決する契約
          • 和解
    3. 諾成か要物かによる分類
      1. 諾成契約(申し込みに対する承があれば立する契約)
        • 贈与,売買,交換,賃貸借,雇用,請負,委任,組合,終身定期金,和解
      2. 要物契約(合意だけでなく,目的物の引渡しによって初めて成立する契約)
        • 消費貸借,使用貸借,寄託
    4. 片務か双務かによる分類
      1. 片務契約(金銭消費貸借がその典型例。主要部分は,債権総論に規定されている)
        • 贈与,消費貸借,使用貸借,無償委任,無償寄託
      2. 双務契約(契約総論(契約の成立,契約の効力,解除)にその特色が規定されている)
        • 売買,交換,賃貸借,雇用,請負,有償委任,有償寄託,組合,終身定期金,和解
    5. 無償か有償かによる分類
      1. 無償契約(約束だけでは拘束する力が弱く,担保責任もないのが原則)
        • 贈与,無償消費貸借,使用貸借,無償委任,無償寄託
      2. 有償契約(約束だけで拘束する力が強く,担保責任があるのが原則)
        • 売買がその典型例。したがって,民法559条は,売買の規定は,すべての有償契約に準用されると規定している。
        • 売買,有償消費貸借,賃貸借,雇用,請負,有償委任,有償寄託,組合,終身定期金,和解
    6. 要物契約の不合理性とその解消(筆者の夢)
      1. 諾成契約の合理性
        • 無償契約と有償契約との間の契約の拘束力の強弱は,贈与契約と売買契約を比較するとよくわかる。
        • 無償契約である贈与の場合には,書面によらない贈与であれば,目的物の引渡しがあるまでは,いつでも撤回できる。しかし,有償契約である売買の場合には,約束だけで拘束力を生じる。また,贈与の場合には,担保(品質保証)責任が課せられないが,売買の場合には,担保(品質保証)責任が課せられる。
      2. 要物契約の不合理性
        • 無償契約である使用貸借の場合には,目的物の引渡しがあるまでは,契約は成立しないし,契約が成立した後も担保責任は課せられない。これに対して,有償契約である賃貸借の場合には,約束だけで拘束力が生じるし,担保責任が課せられる。
        • しかし,使用貸借を要物契約としなくても,諾成契約としつつ,書面によらない贈与の規定を準用するだけで,無償契約の拘束力を弱めるという目的は実現さできる。さらに,有償の消費貸借や有償の寄託契約を要物契約とする理由は,現状では存在しないし,有害でさえある。
      3. 要物契約の廃止
        • 要物契約を撤廃し,すべての有償契約に売買の規定を準用する(民法559条)のと同様に,すべての無償の契約に贈与の規定を準用することにすれば,上記の問題点が解消されると思われる。
  4. 一般法と特別法
    1. 特別法の特色…類型論とその限界
      1. ローマ法は一般法を知らない。ローマ法は,総論がなく,すべてを個別的な類型論(特別法)で処理しようとした。
      2. 確かに,類型論は,明快だが,その反面,その間隙と重複とに悩まされ,時代の流れには対応できず,常に破綻する運命にある。
    2. 一般法の特色…類型論を超える力
      1. 一般法は,自然法の成果である。一般法の典型例は,フランス民法1832条の一般不法行為であり,わが国の民法709条は,それを受け継いでいる。また,民法415条も債務不履行の一般法であり,類型論を越える規定に仕上がっている。
      2. 一般法は,一見,曖昧であり,証明が困難という難点を有するが,いかなる類型にも対応できるという,類型論をはるかに凌駕する力を有している。既存の規定で解決困難と見られてきた紛争(公害,製造物責任等)のほとんどが,民法709条,415条,1条2項という一般法によって解決されてきたのには,正当な理由がある。
    3. 特別法と一般法との組み合わせ
      • 類型論は常に破綻する。一般法は,曖昧で,証明が困難である。両者の短所を補いつつ,長所を伸ばすには,以下のように,両者をうまく組み合わせることが必要である。
      • 一般法によって,類型論の破綻を防止しつつ,明快な類型論を法律上の推定規定として活用することを通じて,紛争の迅速かつ公正な解決を実現することができる。

1 契約法の構造と講義の全体像


第1回のオリエンテーションで述べたように,この講義では,契約法の全体像を,@契約の成立から履行に至るまでの時間軸の基づく「契約の流れ」と,A契約の目的に焦点を当てた「契約の種類」という2つの観点から説明することにします。

そして,この講義は,@「契約の流れ」に沿って,契約の成立から終了までのメカニズムを,契約類型にとらわれずに説明する契約法総論と,A契約の目的に応じた「契約類型」ごとに,その特色を詳しく説明する契約法各論とで構成されます。

図3-1 契約の流れ 表3-1 民法体系における契約法の位置づけ
民法体系の
新しい解釈
契約の種類 「契約の流れ」との関係
民法総則 法律行為(すべての契約) 契約の有効・無効
契約の効力発生・失効
債権 契約 契約総論 債権総論
契約総論
片務契約・双務契約 契約の履行(弁済)・不履行
契約総則
双務契約総論
双務契約 契約の成立(要物契約(片務契約)を除く)
契約の効力(同時履行の抗弁権,危険負担)
契約の解除
契約各論 13の典型契約 各契約の目的
契約の種類
契約当事者の権利・義務
契約の終了原因
事務管理 合意のない委任(遺失物拾得,海難救助等)の法律関係
不当利得 契約不成立,契約無効の場合の法律関係
不法行為 契約締結前,契約終了後の法律関係

この講義は,従来の民法の体系との関係でみると,上の図のように,民法総則,債権総則,契約総則,契約各論,事務管理,不当利得をカバーすることになります。つまり,民法総則のうち人を除いた部分と,債権のうち不法行為を除いた部分を講義するということになります。このように,この講義の範囲は膨大なものになりますが,契約の流れに沿って講義すると,民法の体系をこれまでとは別の視点から考察できます。また,契約類型ごとの詳細な考察も行いますので,この講義をよく聴き,演習問題が解けるようになれば,契約法全体をマスターした気分になれると思います。


2 契約の流れ(契約法総論)について


この講義の総論では,契約の流れに沿って,契約の成立から終了までを講義します。そこで,最初の契約の成立について,その中身を少し見てみることにしましょう。

A. 契約の成立

図1の契約の流れを見てみましょう。契約を考える際に,最初に考慮すべき問題は,当該契約が成立しているかどうかです。契約の成立については,民法では,521条以下に規定があります。条文を見てください。

これから質問を始めますが,最初に,質疑応答の際の注意事項を申し上げます。法科大学院の講義では,紛争を解決するために適用される条文をすぐに見つけることができるように訓練します。皆さんは,私の質問に対して,まず,条文を示し,かつ,条文の言葉で説明することが要求されます。もちろん,明文の根拠がない場合には,判例の準則,それもない場合には,学説を挙げて説明することが大切です。それでは,質疑応答をはじめましょう。

講師:契約はどのような場合に成立しますか。
学生A:意思の合致です。
講師:いきなり学術用語が出てきましたね。しかし,そんな言葉は,民法のどこに書いてあるのでしょうか。「成立」という言葉は民法の条文ではどこに書かれていますか。わかりませんか,それでは,Bさん,成立という言葉は,民法では何条に書かれていますか。
学生B:書かれていません。
講師:本当ですか。契約の成立ということは,学術用語に過ぎず,民法の条文には出てこないのでしょうか。Cさん,どうですか。
学生C:民法521条に出てくると思います。
講師:そうですか。民法521条に,本当に,契約の成立という言葉が書いてありますか。Dさん,どうですか。
学生D:民法526条に「隔地者間の契約は,承諾の通知を発した時に成立する」と書いてあります。
講師:そうです。民法526条ですね。このように,質問されたら,結論とそれを根拠づける条文を引用して答えるという習慣をつけましょう。ただし,この条文だけからでは,必ずしも,承諾の発信の時に,常に,契約が成立するとはいえないのです。というのは,民法521条2項という民法526条1項とは矛盾するような規定がありますからね。この点については,次回に,練習問題を通じて詳しく説明することにしましょう。

B. 契約成立後の契約の流れ

図1の契約の流れ図を見て下さい。最初に「契約成立」について検討しましたので,以下では,上から下に向かう流れに従って,契約有効,効力発生,契約履行の順序で検討し,最後に,右に折れて,債務不履行を検討したいと思います。

a) 契約の有効・無効

契約が成立していなければ,流れ図の右にいって,不当利得が問題となります。反対に,順調に行って,契約が成立していれば,流れ図を1つ下がって,契約の有効・無効が問題となります。民法5条以下ですね。 民法が現代語化される前は,民法4条以下だったのですが,条文数がかわったので注意をしましょう。契約が有効ではない場合には,初めから無効になる場合と,取消しによって,初めに遡って無効となる場合があります。

b) 契約の効力の発生・消滅

契約が有効だとすると,流れ図をさらに下がって,条件・期限などが問題となります。

効力が発生する方向に作用するものとして,停止条件,始期があります。効力が消滅する方向に作用するものとして,解除条件,終期があります。そのほかにも,意思表示によらずに,時の経過によって,効力を発生せる方向に作用するものとして取得時効があり,効力を消滅させる方向で作用するものに消滅時効があります。

c) 契約の履行と債務の消滅,契約の終了

契約の効力が発生すると契約は履行しなければなりません。契約が適切に履行されると,債務は消滅し,通常は,契約が無事終了することになります。

d) 契約の不履行とその救済

これに反して,契約が適切に履行されない場合には,債務不履行などが問題となります。もっとも,契約が適切に履行されない場合のすべてが,直ちに債務不履行となるわけではなく,免責事項(免除や消滅時効など)が問題となります。そして,それらの免責事項がなければ,債務不履行の問題となります。この場合,帰責事由があれば,損害賠償ができ,仮に帰責事由がなくとも,解除ができるというのが最近の有力な学説です。

従来の契約法の講義とは順序が異なりますが,この講義では,この「契約の流れ」に沿って,契約の終了までをお話します。


3 契約の種類(契約法各論)について


A. 契約の13の類型(典型契約)

契約の流れ(契約総論)の次は契約法各論です。民法は,13の典型契約について規定しています。

13の契約は,典型的なものですが,以下で説明するように,契約の目的に応じた分類となっているので,典型契約として規定されていない契約,例えば,リース契約や信託契約等も,典型契約の隙間にはめ込んでみることができます。以下の表は,典型契約を分類するとともに,新しい契約類型を隙間に挿入するという試みの一例です。

表3-2 契約の類型(典型契約を中心に)
典型契約の分類基準 名称 定義条文
目的 性質
財産権の移転 無償 片務 諾成 贈与 第549条(贈与)
贈与は,当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し,相手方が受諾をすることによって,その効力を生ずる。
有償 双務 諾成 売買 第555条(売買)
売買は,当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し,相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって,その効力を生ずる。
交換 第586条(交換)
@交換は,当事者が互いに金銭の所有権以外の財産権を移転することを約することによって,その効力を生ずる。
A当事者の一方が他の権利とともに金銭の所有権を移転することを約した場合におけるその金銭については,売買の代金に関する規定を準用する。
物の
利用
を兼
ねた
財産
権の
移転
価値の
利用と返還
不特定物 無償 片務 要物 消費
貸借
第587条(消費貸借)
消費貸借は,当事者の一方が種類,品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって,その効力を生ずる。
有償
無償 片務 消費
寄託
第666条(消費寄託)
@第五節(消費貸借)の規定は,受寄者が契約により寄託物を消費することができる場合について準用する。
A前項において準用する第591条第1項〔消費貸借における返還の時期〕の規定にかかわらず,前項の契約に返還の時期を定めなかったときは,寄託者は,いつでも返還を請求することができる。
有償
有償 双務 諾成 金銭信託 信託法 第1条(信託の定義)
本法ニ於テ信託ト称スルハ財産権ノ移転其ノ他ノ処分ヲ為シ他人ヲシテ一定ノ目的ニ従ヒ財産ノ管理又ハ処分ヲ為サシムルヲ謂フ
用益権の
設定と返還
特定物 有償 双務 諾成 リース (物の所有者でそれを売却する意図をもつ者と,その物を利用する意図をもつがそれを購入する意図をもたない者の間に,第三者が介在し,第三者が所有者から物を購入し,同時に,それを利用する者に貸し与える取引)
物の利用 特定物 無償 片務 要物 使用
貸借
第593条(使用貸借)
使用貸借は,当事者の一方が無償で使用及び収益をした後に返還をすることを約して相手方からある物を受け取ることによって,その効力を生ずる。
有償 双務 諾成 賃貸借 第601条(賃貸借)
賃貸借は,当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し,相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって,その効力を生ずる。





時間的
拘束
有償 双務 諾成 雇傭 第623条(雇傭)
雇用は,当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し,相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって,その効力を生ずる。

仕事の
完成
有償 双務 諾成 請負 第632条(請負)
請負は,当事者の一方がある仕事を完成することを約し,相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって,その効力を生ずる。
仕事を
委ねる
無償 片務 諾成 委任 第643条(委任)
委任は,当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し,相手方がこれを承諾することによって,その効力を生ずる。
有償 双務
第三者の
信用を
増加させる
無償 片務 書面 保証 第446条(保証人の責任等)
@保証人は,主たる債務者がその債務を履行しないときに,その履行をする責任を負う。
A保証契約は,書面でしなければ,その効力を生じない。
B保証契約がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式,磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって,電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)によってされたときは,その保証契約は,書面によってされたものとみなして,前項の規定を適用する。
有償 双務 諾成 機関
保証
 弁済によって債権者に代位し,債権回収を行う地位を獲得する契約。
保証が,一時的な債務者の肩代わりをするものであるのに対して,機関保証は,債権者に代位して債権を回収することをめざすものである点で,保証契約とは性質をことにする。
 代位する債権に対して,上記の無償の保証を付加して,回収を確実にすることまで行っているのが,両者の違いを明らかにしている。
物を
預ける
無償 片務 要物 寄託 第657条(寄託)
寄託は,当事者の一方が相手方のために保管をすることを約してある物を受け取ることによって,その効力を生ずる。
有償 双務
物又は
労務を
利用し
事業を
する
事業を行う 有償 双務 諾成 組合 第667条(組合)
組合契約は,各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することによって,その効力を生ずる。
2 出資は,労務をその目的とすることができる。
年金を
給付する
無償 片務 諾成 終身
定期金
第689条(終身定期金)
終身定期金契約は,当事者の一方が,自己,相手方又は第三者の死亡に至るまで,定期に金銭その他の物を相手方又は第三者に給付することを約することによって,その効力を生ずる。
有償 双務
紛争の解決 有償 双務 諾成 和解 第695条(和解)
和解は,当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約することによって,その効力を生ずる。

B. 契約成立における諾成契約・要物契約の関係について

契約の類型論の最初は,諾成契約と要物契約との違いです。

その区別を明らかにすることを通じて,民法の契約総則(契約総論)に出てくる契約の成立という項目(民法第3編債権,第2章契約,第1節総則,第1款契約の成立)が,実は,全ての契約の成立を扱っているわけではなく,双務契約を中心とした「諾成契約」にしか適用されないことを明らかにしていきましょう。

講師:契約の成立は,普通,申込みと承諾で成立します。しかし,そうではない契約がありますが,知っていますか。
学生E:…。
講師:申込みと承諾の合致で成立するというのは一般論としては正しいですが,全部がそうであるのかというと間違いです。Fさん,どうですか。
学生F:要物契約の場合は,たとえ申し込みと承諾が合致したとしても,目的物の引渡しがなければ,契約は成立しません。
講師:そうですね,それでは,それは,どういう条文に書かれていますか?Gさん,どうですか。
学生G:賃貸借です。
講師:残念ながら,賃貸借は諾成契約ですね。申込みと承諾だけで成立します。Hさん,わかりますか。
学生H:使用貸借契約です。
講師:そうです。そして,要物契約の場合は,契約書を作らないことが多いのです。そして,実際に引渡しを受け,契約が成立した後に,借用書を書きます。それが,契約書の代わりになります。というのも,物を渡した場合にのみ契約が成立するわけですから,契約書は作っても意味がないのです。要物契約には,ほかにどんな契約がありますか。
学生I:消費貸借契約です。
講師:そうです。この契約の場合も,消費貸借契約書を作っても契約は成立しないのですね。それでも,消費貸借の場合にも,何か書くでしょう。これは証明責任の問題と関連します。消費貸借契約が成立したら,貸主としては,裁判に備えて証書を作る必要があります。しかし,その証書は契約書ではないのです。契約書ではなくて,借用書です。借用書には,「確かに金いくら借りました。○○日までに返します」と書くのです。もっとも,諾成の消費貸借契約というのが,特別の場合に限って,判例や特別法(特定融資枠契約に関する法律)で認められていますから,契約書を作る意味が全くないわけではありません。
講師:では,要物契約をもう1つ挙げてもらいましょう。Jさん,どうですか。
学生J:寄託です。
講師:そうです。寄託は物を渡して初めて成立するとされています。したがって,諾成契約ではありませんね。

ところで,寄託と紛らわしい契約にコインロッカーを利用する契約があります。手荷物預かり所に物を預けると寄託になることは疑いがありません。しかし,コインロッカーに荷物を預ける場合には,コインロッカーのスペースを借りてその空間を利用しているだけなので(コインロッカーの間借り),寄託ではなく,賃貸借なので注意をしてください。逆に,寄託とは無関係のようで,寄託契約が含まれるものに,クリーニング契約があります。クリーニング契約は,衣服の風合いを損なわずに,衣服の汚れを落とすという請負が主眼の契約なのですが,クリーニングのあと,一時的にその洗濯物を預かるということが契約内容に含まれているため,クリーニング契約は,請負と寄託との混合契約であるとされています。

寄託の最後に,消費寄託の規定があります(民法666条)。そして,消費寄託には,消費貸借の規定が準用されています。消費寄託と消費貸借とは,お金を預けるのとお金を借りるのというように,一見違う契約なんですが,実は,同じところが多い。たとえば,有償契約でも片務契約であるという点が同じです。利子つきの有償の消費貸借の場合,義務者は,お金を借りて,利子と元本を返す人は一人(借主)だけでしたね。利子つきの消費寄託の場合も,利子を払って,元本を返す義務者は一人(銀行)だけなんです。つまり,消費貸借と消費寄託とは,有償契約なのに,片務契約であるという珍しい点が,一致しているのです。このように,消費寄託は,一般的には消費貸借契約と同じ処理になるんですね。もっとも,消費貸借の場合は,期間の定めがない場合には,すぐには返してもらえない。借りたお金を返すには,お金を用意しなければなりませんからね。しかし,消費寄託の場合は,いつでも返還請求ができます。ここが,消費寄託と消費貸借との違いです。

なお,要物契約の例として,質権設定契約があげられることもありますが,質権設定契約を要物契約とすることには批判もあります。諾成契約だが,対抗要件として目的物の引渡しが要求されていると考えるだけでよいのではないかとの批判です。私も,この立場に立っております。

講師:いろいろ検討してきましたが,民法521条以下は,厳密には,どのような契約について定めていますか。
学生K:双務契約です。
講師:正確には諾成契約ですが,双務契約はすべて諾成契約なので(逆はいえませんが),よろしいでしょう。民法521条以下は,諾成契約についてのみ規定し,要物契約は除外されています。そして,要物契約の多くは片務契約なので,ほとんどの片務契約は,民法521条以下から脱落しています。

以上のことから,民法521条以下の「契約の成立」という款は,要物契約には適用できないことがわかります。要物契約は,ほとんどが片務契約であって,現行民法の契約の成立の箇所は,そのような契約には適用できないのです。つまり,現行民法の契約総則は,真の意味で,契約の総則になっているわけではなく,主として,双務契約についての総論なのですね。

C. 契約の効力における双務契約・片務契約の関係について

契約の類型論の第2は,片務契約と双務契約との違いです。

a) 片務契約と双務契約との区別

片務契約と双務契約との違いは,条文(各契約類型の冒頭条文)を見ればすぐにわかります。

講師:片務契約を全部挙げよといわれたら,各契約の最初の条文(冒頭条文とか定義条文とかいう)を見てください。片務契約は,「約して」という言葉が1つしか書かれていないのです。他方,双務契約として売買の条文見てください。ほら,2つ書いてありますね。 次の人,交換の冒頭条文(民法条文586条)を読んで下さい。
学生L:「交換は,当事者が互いに金銭の所有権以外の財産権を移転することを約することによって,その効力を生ずる。」
講師:「約す」がいくつ書いてありますか。
学生L:1つです。
講師:いいえ。「互いに」ってあるでしょ。「約して」が2倍だから,これで2つです。次に消費貸借契約に行きましょう。「約す」はいくつありますか。
学生M:1つです。
講師:そうです。だから片務契約ですね。貸した方は義務を負わずに,返す方だけが元本を返す義務を負うことになります。有償の場合は,元本に加えて利子も返さなくてはいけません。

次に,寄託は,有償の場合には双務契約,無償の場合には片務契約となります。これに対して,さきほどの消費貸借は,有償・無償を問わずに,片務契約です。有償の消費貸借として利息付金銭消費貸借があるけれども,これは片務・有償契約とされています。消費貸借契約の場合,有償(利子付き)でも無償(無利子)でも,借主だけが義務を負うのです。だから,片務契約なのです。

このようにして,13の契約のそれぞれについて,冒頭条文(定義条文)を見ながら,「約する」という用語がいくつ使われているかという観点から,片務契約と双務契約とを区別する方法をマスターしてみてください。

b) 契約総則(民法521〜548条)における契約類型としての双務契約

現行民法の契約の効力(民法533〜539条)の箇所を見てみましょう。ここでも,現行民法の契約総則の適用範囲の限界(双務契約に限定されている)を見ることができます。

講師:現行民法の533条以下の「第2款 契約の効力」というところを見てください。契約の効力というところでは,どう書いてあるかな。
学生N:民法533条の同時履行の抗弁です。
講師:そうですね。でも,条文見出し(「同時履行の抗弁」は,実は,「同時履行の抗弁権」の誤り)ではなく,本文の出だしは,どう書いてあるかな。
学生O:双務契約の…。
講師:その通り。出だしは,「双務契約」ですね。はい,次の人,次の条文を読んでください。
学生P:特定物の…双務契約。
講師:はい,双務契約ですね。次の人,その次の条文を読んでみて下さい。
学生Q:前条の規定は,…双務契約。
講師:そうです。双務契約のオンパレードですね。このように,現行民法の「契約総論」は,実は,ほぼ「双務契約」だけの総論であって,片務契約の総論は,「債権総論」のところに行ってしまっているのです。
講師:次の款の「第3款 契約の解除」もそうです。解除は,一般的には,双務契約だけで問題となるのです。

契約の類型は,契約各論だけにとどまる問題ではなく,債権総論・各論を通じた問題となります。片務契約・双務契約を問わずに該当するものは,契約各論ではなく,実は,契約総論としての性格を有する債権総論に出てくるのです。現行民法の契約総則(契約総論)は,実は,契約の本当の総論ではなく,あくまで双務契約の総論に過ぎません。

表3-3 適用される契約の種類という観点から見た債権各論
債権各論 契約各論が
適用される契約
契約 契約
総則
契約の成立 申込と承諾による成立 諾成契約のみ
(要物契約を除く)
懸賞広告(承諾の発信不要)
契約の効力 同時履行の抗弁権 双務契約のみ
(片務契約を除く)
危険負担
第三者のためにする契約
(生命保険,責任保険契約等)
契約の解除 要件 履行遅滞 原則として,
双務契約のみ
(片務契約を除く)
履行不能
効果
契約
各論
財産権の移転 贈与,売買,交換 諾成契約,
要物契約

片務契約
双務契約

無償契約,
有償契約
物の利用 消費貸借使用貸借,賃貸借
労務の利用 雇傭,請負,委任,保証,寄託
物と労務の結合 組合,終身定期金
紛争の解決 和解
事務管理 準契約
不当利得 契約の不成立,
契約の無効・取消
不法行為 契約成立前,
契約終了後

このように見てくると,現行民法の契約総則は,決して,真の意味での契約総則にはなっていません。全ての契約についての総論は,契約総則ではなく,実は,債権総則(債権総論)に書いてあるのです。この講義で,いわゆる契約総論と契約各論だけでなく,債権総論についても,詳しく説明するのは,以上の理由に基づいています。なお,「債権編の総則」を「債権総則」と言わずに,「債権総論」と言っているのは,「総則」と言うと,「民法総則」のことと混同する恐れがあるからです。

上の表で,契約以外の事務管理,不当利得,不法行為のうち,不法行為は,不法行為法の講義で行います。しかし,事務管理は,合意のない委任(合意のない頼まれ仕事)と考えることができます。例えば,隣家の屋根が台風で飛んだため,大工さんに頼んでやろうかといった場合です。さらに,不当利得は,契約不成立の場合の規定として,捉えることができます。詳しくは,「契約になり損ねた不当利得」(給付不当利得)として,第12回の講義で説明しましょう。

D. 無償契約と有償契約

契約の類型論の第3は,無償契約と有償契約との違いです。

a) 無償契約の典型としての贈与

無償契約の典型例は,贈与です。

贈与は,今では,あまり学問的価値がないと,書かれているのです。しかし,違うでしょう。子どもは,両親の愛,つまり無償の愛によって贈与を受けて育てられているのです。 商品経済においても,経済主体は,愛する人に物を贈ろうとするときに張り切るのです。自分のためなら,模造ダイヤでもいいが,人にあげるためには,本物のダイヤを買う。その贈与のために,売買契約が締結されるのです。贈与とは,愛と恐怖の契約と定義できます。恐怖というのは,あげないと相手がいなくなってしまうからです。この典型例は貢物です。これに対して,子どもに物をあげるのは愛です。 以上から,贈与契約が社会を活性化させているのです。しかし,法律学小事典では,社会的に価値がない,法律学的に価値がないといっているのです。おかしいですよね。

贈与契約の特色を示す条文としては,次の2つが重要です。第1は,書面によらない贈与について,目的物の引渡しを受けるまでは,いつでも撤回できるという民法550条です。第2は,無償契約について,債務者は,不完全履行について原則として責任を負わない,すなわち,債務者は原則として担保(品質保証)責任を負わないとする民法551条です。例えば,無償契約である使用貸借契約においては,無担保責任原則である民法551条が,民法596条によって準用されています。

b) 有償契約の典型としての売買

有償契約については,非常に重要な条文を1つだけ覚えてもらいます。民法559条です。有償契約の場合,有償契約の総則というのはありません。しかし,民法559条によって,売買の規定が,有償契約の総則となっています。

第559条(有償契約への準用)
この節の規定は,売買以外の有償契約について準用する。ただし,その有償契約の性質がこれを許さないときは,この限りでない。

このようにして,売買の規定は,有償契約の総則になっています。売買には担保責任が規定されています。担保責任は,新司法試験の短答式の第1番目に出題されています。この規定は,非常に重要なものなので,後に詳しく説明しますが,その他の有償契約に使えるようになっています。

E. 要物契約の不合理性とその解消(筆者の夢)

要物契約については,こちらで,比較対照表を作っておきました(表3-4:「諾成契約と要物契約との比較」参照)。要物契約を無償契約と有償契約とに分類して対比したものですが,この表を見ると,無償契約と要物契約とが関連していることがわかると思います。

表3-4 諾成契約と要物契約との比較
契約の目的 無償契約 有償契約
財産権の移転 贈与保証 売買・交換
書面によらない契約 書面による契約
契約の成立後も,
履行までは
撤回が可能
合意のみで
契約成立
合意のみで契約成立
代替物の利用 無償の消費貸借 有償の消費貸借
合意があっても,目的物を引き渡すまでは,
契約は成立しない
左に同じ
特定物の利用 使用貸借 賃貸借
合意があっても,目的物を引き渡すまでは,
契約は成立しない
合意のみで契約成立
労務の利用 無償の寄託 有償の寄託
合意があっても,目的物を引き渡すまでは,
契約は成立しない
左に同じ
a) 無償契約を要物契約とすることの合理性

要物契約をそれとよく似た有償契約と対比してみると面白いですよ。 贈与は諾成契約です。しかし,契約が成立しても,物を引き渡すまでは,もしくは,書面によらない限りは,いつでも「撤回」できる。これは,契約は成立していないというのとよく似ています。ということは,これは要物契約に近いですね。

次に,使用貸借と賃貸借とを対比してみましょう。これが非常に面白いのです。契約の内容(目的物を使用・収益する)としては全く一緒なのですよ。どこが違うかといえば,有償か無償かという点です。有償だと諾成契約,無償だと要物契約です。

書面によらない贈与の撤回と使用貸借の要物性を比較しましょう。書面によらない贈与は諾成契約にもかかわらず,物の引渡しを受けるまでは,いつでも撤回することができます。これは,物の引渡しを受けるまでは契約が成立しないといっているのと,ほとんど同じです。ですから,無償契約を要物契約とする代わりに,諾成契約としておきながら書面によらない贈与の規定を準用すれば同じことになります。面白いでしょう。また,ただであげたり,ただで貸したりする場合には,贈与者の気が変わってあげないことにしたり,貸主が他の人に貸す気になったりすると,受贈者や借主から「契約があるだろ,強制執行だ」というのは言いすぎですね。だから,自由に撤回ができたり,要物契約となったりしているのです。

b) 有償契約を要物契約とすることの不合理性

ところが,契約目的が同じ場合に,無償契約の方は要物契約となり,有償契約の場合は諾成契約となるという法則には例外が2つあります。消費貸借,寄託がその例外です。これは,有償でも無償でも要物契約なのです。有償だったら拘束されても良いのではないでしょうか。

例えば,消費貸借や寄託の場合,銀行は,お金を貸すとか,お金を預かりますと約束しておきながら,「やはりやめた」といえるのですよ。例えば,銀行からそんな目にあったら,借主は,倒産するかもしれないのですよ。ひどいと思いませんか。

確かに,有償契約について,要物契約を認めるという理由を説明することは難しいですね。これは,銀行を保護しましょうということなのです。民法が出来たのは100年以上前なのです。そのころは,安全な金融システムを構築するためには,銀行を保護しなければならなかったのです。つまり,銀行は何でも出来るようにしようという当時の立法政策が自由平等のはずの民法の考え方にゆがみを生じさせたのです。銀行にフリーハンドを与えてしまったのです。しかし,今では銀行は強すぎる。保護に値しないのに,保護しているのはおかしい。というわけで,次の図を見てください。

表3-5 要物契約の廃止(民法改正私案)
契約の目的 無償契約 有償契約
財産権の移転 贈与保証 売買・交換
書面によらない契約 書面による契約
契約の成立後も,
履行までは
撤回が可能
合意のみで
契約成立
合意のみで
契約成立
その他 無償の消費貸借,
使用貸借,

無償の寄託
有償の消費貸借
賃貸借,
有償の寄託
書面によらない契約 書面による契約 合意のみで
契約成立
契約の成立後も,
目的物の引渡しまでは
撤回が可能
合意のみで
契約成立

現行法の要物契約と諾成契約とを比較した図と比べると,ずっと,きれいで,すっきりした図となっているでしょう(自画自賛)。内容も,お金(利子)をとってお金を貸すなら,契約を守りなさい(諾成契約にしなさい)というものですから。

上の表は,現行民法よりも,ずっと,まともです。つまり,有償だったら,全部拘束されるというものです。この案では,売買が有償契約総論としての役割を果たしているのと同様,贈与に無償契約総論としての位置づけが与えられており,体系的にも,美しく仕上がっています(自画自賛)。理論的にいえば,要物契約を廃止するという,国際的な考え方にもマッチしています。

しかし,この表は,私の夢に過ぎません。この表のの美しさにはまると,元の世界(試験の合格をめざすという現実)に戻れなくなる危険性があります。忘れようとしても,夢でうなされますから,今のうちに忘れましょう。


4 民法上適用される頻度の高い条文−民法における一般法の役割


A. 特別法の特色としての類型論とその限界

民法の歴史を遡ると,多くの制度は,ローマ法に由来するといわれています。しかし,ローマ法は一般法を知りませんでした。つまり,ローマ法には,総論がなく,すべてを個別的な類型論(特別法)で処理しようとしたのです。

確かに,類型論は,明快ですが,その反面,その間隙と重複とに悩まされ,時代の流れには対応できず,常に破綻する運命にあります。

B. 一般法の特色としての類型論を越える力

一般法は,自然法の成果です。一般法の典型例は,フランス民法1832条の一般不法行為であり,わが国の民法709条は,それを受け継いでいます。また,民法415条も債務不履行の一般法であり,類型論を越える規定に仕上がっています。

一般法は,一見,曖昧であり,証明が困難という難点を持っていますが,いかなる類型にも対応できるという類型論をはるかに凌駕する力を有しています。既存の規定で解決困難と見られてきた紛争(公害,製造物責任等)は,そのほとんどが,民法709条,415条,1条2項という一般法によって解決されてきたのには,正当な理由があります。

C. 特別法と一般法との組み合わせ

類型論はどれほど緻密な分類をしても,時代の進歩等によって,隙間が生じたり,重複が生じたりして,常に破綻する運命にあります。これに対して,一般法は,曖昧で,証明が困難である。両者の短所を補いつつ,長所を伸ばすには,以下のように,両者をうまく組み合わせることが必要です。一般法によって,類型論の破綻を防止しつつ,明快な類型論を法律上の推定規定として活用することを通じて,紛争の迅速かつ公正な解決を実現することができるのです。

実務の世界では,法曹界に限らず,ほとんどの業界に業法があります。そして,大体の紛争は,マニュアルで解決されます。しかし,それでだめなときは,一般法,特に,民法が頼りにされるわけです。そして,そのうちで,民法709条,415条,1条2項が特に多く利用されます。民法の教科書には,信義則等の一般法は,「伝家の宝刀」であり,むやみに抜いてはならないと書いてありますが,そんなことはありません。データを調べてみれば,裁判官は,伝家の宝刀を抜きっぱなしにしていることがわかります。  

このように,被害者の救済が難しい問題であればあるほど,マニュアルでは対応できずに,結局,民法の一般法に流れ込むのです。たとえば,消費者相談における契約紛争類型を分析すると「相手方の対応が悪い,又は,誠意が感じられない。キャンセルしたいが,法外なキャンセル料を請求された。どうすればよいか。」というのが圧倒的に多いです。このようなトラブルは,不当な約款条項を無効として妥当な解決をしなければならないため,結局,民法の信義則等の一般法と,債務不履行の救済としての解除,損害賠償という民法条文のベスト20に入っている条文の助けを借りて,ようやく解決されることになるのです。

一般法としての総則と特別法としての各論という視点で民法の編成を見直してみると,以下の表の赤字で示されているように,民法総則だけでなく,債権編にも,また,その内部にある契約の章の内部にも,総則が入り込んでおり,総則と各則とが複雑に組み合わされながら,民法の体系が構成されていることに気づくと思います。

表3-6 契約の観点から見た民法の体系
民法総則 債権総論 債権各論
私権の
一般原則
基本原則 憲法24条,29条 債権の目的 特定債権 契約 契約
総則
契約の成立 申込と承諾による成立
信義則 種類債権 懸賞広告
権利濫用の禁止 金銭債権 契約の効力 同時履行の抗弁権
解釈基準 選択債権 危険負担
私権の主体 自然人 債権の効力
(掴取力)
対内的効力
(履行強制,
損害賠償)
第三者のためにする契約
(生命保険,責任保険契約等)
法人 対外的効力
(債権者代位権,
債権者取消権)
契約の解除 要件 履行遅滞
(定期行為を含む)
私権の客体 物(有体物,無体物) 多数当事者の
債権及び債務
総則 履行不能
私権の変動
(発生・
停止・
失効・
消滅)
法律行為
(典型例は,
契約
総則 不可分債権 効果
意思表示 連帯債務 契約
各論
財産権の移転 贈与,売買,交換
代理 保証債務
(保証契約
物の利用 消費貸借使用貸借,賃貸借
無効・取消 債権の譲渡(譲渡契約 労務の利用 雇傭,請負,委任,寄託
条件・期限 債権の消滅 弁済(契約の履行) 物と労務の結合 組合,終身定期金
期間 相殺 紛争の解決 和解
時効 総則 更改(更改契約 事務管理
取得時効 免除 不当利得
消滅時効 混同 不法行為

こうしてみると,民法の体系とはどのようなものなのか,おぼろげながらわかるような気がしませんか。


講義のまとめ


契約法の構造

契約の種類

講義における質疑応答のノウハウ


参考文献


[原田・民法典の史的素描(1954)]
原田慶吉『日本民法典の史的素描』有斐閣(1954年)

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