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第17回 弁済充当,弁済の提供,弁済による代位

作成:2006年9月18日

講師:明治学院大学法科大学院教授 加賀山 茂
書記:竹内 貴康,藤本 望 編集:深川 裕佳


講義のねらい


債務の完全な履行(債務の本旨に従った履行)によって,債務は消滅するのが原則である。つまり,完全な履行(本旨弁済)がない以上,債務は消滅しない。ただし,債務が完全に消滅する一歩手前で,債務に一定の変化が生じる場合がある。

第1に,履行される債務が全部の債務を消滅させるに足りない場合にどの債務から債務を消滅させるかという「弁済充当」の制度がある。例えば,借金の返済で,元本と利子とに合計に満たない額の返済をした場合に,それが元本から充当されるのと,利子から充当されるのとでは,債務の残額に変化が生じる。第2に,債権者の協力が得られないために債務の完全な履行ができない場合に,弁済がないにもかかわらず,債務者の不履行責任を免れさせるという「弁済の提供」の制度がある。そして,第3に,債務の履行によって債権者は満足するのだが,債務を履行したのが債務者本人ではなく,第三者によるものである場合に,この第三者である弁済者が債務者に対して有する求償権を確保するために,債権者の債務者に対する債権・担保権を弁済者に利用させる限度で,債務が消滅しないという「弁済による代位」の制度がある。

今回の講義では,弁済にまつわる以上の3つの制度(弁済充当,弁済の提供,弁済による代位)について説明する。

図17-1 契約の流れにおける履行の位置づけ

1 弁済充当


A. 弁済充当の意味

債務者が弁済として提供した履行した給付が,複数の債務の全体をカバーできない場合,その給付によってどの債務が消滅するかは,債権者・債務者ともに重大な利害関係をもっている。そこで,ここでは,そのような場合にどのような方法で両者の利害を調整するのかについて検討する。民法は,この問題を解決するために,弁済の充当の規定(民法488条〜491条)を置いている。

弁済の充当とは,債務者が同一の債権者に対して,同種の内容の数個の債務を負担している場合(例えば,数口の借金債務)や,1個の債務の弁済として数個の給付をしなければならない場合(例えば,数カ月分の賃料,数回分の月賦払金)に,債務者が弁済として提供した給付が,全部の債務を消滅させるに足りないときに,どの債務,または,債務のどの部分の弁済にあてるかを定めることをいう。

B. 弁済充当に関する規定の構造的な理解

弁済充当に関しては,その順序が命である。ところが,弁済充当に関する民法の条文は,複雑に入り込んでおり,全体を理解するのが困難である。そこで,弁済充当に関する概念(合意弁済充当,指定弁済充当,法定弁済充当)や条文の順序を無視して,充当の順序に従って解説することにする。

まず,弁済充当に関するルールを以下のように構造的に理解する必要がある。構造を理解しやすいように,箇条書きで表現するが,大切な箇所なので,読み飛ばさないよう,一つ一つをよく理解して欲しい。

  1. 合意による充当
  2. 費用・利息・元本に関する充当(民法491条)
  3. 指定による充当(民法488条)
  4. 法定充当(民法489条)

C. 国際的に弁済充当規定との比較

わが国の民法は,弁済充当に関しては,規定間の関係が複雑で理解しにくい点がある。その点,国際基準となっている国際商事契約法原則(UNIDROIT Principles)の弁済充当のルールは非常に簡略化されており,細かい点では異なるものの,弁済充当の全体像を1つのルールとして理解するのに適していると思われるので,参考のために,以下に示しておくことにする。

UNIDROIT Art. 6.1.12 - 支払いの充当
(1) 同一の債権者に対して複数の金銭債務を負う債務者は,支払時に,その支払いが充当されるべき債務を指定することができる。ただし,この支払いによって,まず,諸費用に,次に,利息に,最後に元本に充当される。
(2) 債務者が前項の指定をしない場合には,債権者は,債務の弁済期が到来しており,かつ,争いがないものであるときは,支払いの後の相当な期間内に,債務者に対して,支払いが充当される債務を指定することができる。
(3) 前2項の充当が存在しない場合には,支払いは,以下の基準のひとつを満たす債務であって,かつ,以下に示された順序の債務から充当される。
 (a) 支払期の到来した債務,または,最初に支払期が到来する債務
 (b) 債権者が最小の担保しか有しない債務
 (c) 債務者にとって最も負担の大きい債務
 (d) 最初に発生した債務
前記の基準のいずれをも満たさない場合には,支払いは,すべての債務に,比例的に充当される。

D. 国際基準との比較によって変更が必要とされる通説の見解

上記の国際的な基準(UNIDROIT Art. 6.1.12)とわが国の法定弁済充当のルールを比較してみて,国際的な基準に存在して,わが国の法定弁済充当の規定に存在しないのは,UNIDROIT Art. 6.1.12(3)(b)の「債権者が最小の担保しか有しない債務」をより大きな担保を有する債務よりも優先させるという考慮であろう。これは,債権者は,確実な回収が危ぶまれる債務(担保が最小の債務)から先に回収したいという,債権者の利益に対する配慮である。

これに対して,わが国の法定充当のルール(民法489条)では,費用・利息・元本に関する充当ルール(民法491条)とは異なり,債権者のことを考慮したルールが存在せず,民法489条第2号で,「債務者のために弁済の利益が多いもの」というルールだけが存在している。そして,わが国のルールによると,無担保債務よりも担保付債務の方が「債務者のために弁済の利益が多い」という解釈が通説となっている。

しかし,債権者の立場に立ってみると,担保が付いているものは,いざというときには,他の債権者に優先するので比較的安心であり,それよりも,債権者は,無担保の債務への充当を望むものと思われる。指定弁済充当に優先する民法491条のルールにおいて,元本より,利子から優先的に充当することを定めているのは,明らかに債権者の利益のためであり,法定弁済充当の場合にのみ,債権者の利益のみを考えるというのは,説得力に欠けると思われる。

そればかりでなく,人的担保に関しては,判例・通説は,人的担保の付いた連帯債務よりも,人的担保の付かない単純債務の方が,「債務者のために弁済の利益が多いもの」と考えている(大判明40・12・13民録13輯1200頁)。

大判明40・12・13民録13輯1200頁
 単純債務と連帯債務と2箇ありて,共に弁済期に在る場合に於て,当事者が弁済の充当を為さざりしときは,其弁済は単純債務の弁済に充当すべきものとす。何となれば,此場合に於て連帯債務の弁済に充当すべきものとせば,弁済者は連帯債務者に対し其負担に属する部分に付き求償の手続を為さざるべからざるが如き煩労あるのみならず,動もすれば,裁判所に訴求し徒に時日と費用とを費さざるを得ざるが如き不利益を受くることを免れざればなり。

無担保債務よりも担保付債務の方が「債務者のために弁済の利益が多いもの」と考えるわが国の通説の見解は,人的担保に関する上記の判例(大判明40・12・13民録13輯1200頁)の考え方とも矛盾していることは明らかである。民法489条の解釈としては,国際的な基準に従って,従来の解釈を変更し,「債権者が最小の担保しか有しない債務」を「債務者のために弁済の利益が多いもの」と考えることによって,国際基準とも調和の取れた解釈を行うべきであると考える。

なお,一見すると,日本の法定弁済充当のルールには存在せず,国際基準には存在するように見える(2)(d)の基準に関しては,わが国判例によって,同様のルールが行われているので,その点に関する解釈の調整は不要である。

大判大6・10・20民録23輯1668頁
 1.弁済期の定めのない債権は債権発生と同時に弁済期が到来する。民法412条3項は遅滞責任の規定に過ぎない。
 2.弁済期の定めのない債務が2個ある場合には,債務発生の日時の早いものをもつてまず弁済期の至つたものとする。

2 弁済の提供


A. 弁済提供の意味

債務の性質上,債務の履行に際して債権者が受領をするという協力(受領行為)が必要となる場合がある。たとえば,目的物を債権者が指定することになっている場合であるとか,履行の場所で落ち合って目的物の引渡と検認をするとかのような場合である。そのような場合に,債権者の協力のみによって履行の完成が可能となる状態まで,債務者がなすべき行為のことを「弁済の提供」という。

大判大10・7・8民録27輯1449頁
 〔弁済の〕提供なるものは…債権者の協力有るに非ざれば履行を完了するを得ざる場合に,債務者が当該事情の下に於て其為し得る限りのことを為し,唯唯債権者の協力無きが為めに履行を完了するを得ずと云う程度に迄,総てのことを為し尽すを謂うものとす。

債務者がそのような弁済の提供を行った場合には,債権者が弁済の目的物を受領しなかったために債務の履行が完了しなくても,弁済提供の効果によって,債務者は債務不履行責任を免れることができる(民法492条)。

B. 弁済提供の方法

具体的な弁済提供の方法(@現実の提供とA口頭の提供)については,民法493条に規定されている。その要点は以下の通りである。

C. 弁済提供の効果を生じさせる際に必要な信義則の考慮

債務者の行為が不履行責任を免除するものとしての弁済の提供に該当するかどうかの判断に際しては,信義則が考慮されなければならない。

大判大9・12・18民録26輯1947頁
 売主が有する買戻権を行使するには,買戻の期間内に代金および契約の費用を提供する必要があるが,売主の現に提供した代金および契約の費用の合計額が529円8銭のところを528円を提供したというように,極めて些少の不足であるのに過ぎないときは,買主がこれに藉口して買戻の効力を生じないと言うようなことは,信頼関係を支配する信義誠実の原則に反する。
最一判昭35・12・15民集14巻14号3060頁
 消費貸借上の債務弁済のため提供供託された元利合計金153,140円が,正当な元利合計額に金1,300余円不足するとしても,この一事により弁済提供および供託の効果を否定することはできない。

そもそも,弁済の提供が問題となるのは,債務の履行に債権者の協力が必要なことを示している。それはまさに,民法1条2項にいう,「権利の行使及び義務の履行は,信義に従い誠実に行わなければならない」に即した協力義務の問題である。したがって,債務者(売主)が指定した場所で債権者(買主)が引渡しを受領すべき債務について,債務者(売主)の行った指定(「深川渡し」)が不明瞭な場合には,債権者(買主)は,債務者(売主)に対して,その場所を明瞭にするために,進んで問い合わせをするなどの協力をする義務が要求されることになる。

大判大14・12・3民集4巻685頁(損害賠償請求事件(深川渡し事件))
 仮に買主(債権者)Yが之〔「深川渡し」とは,売主指定の深川所在の倉庫又は附近の艀船繋留河岸で引渡し行うことであるとの慣習があること〕を知らざりしとするも,買主(債権者)Yに於て誠実に取引するの意思あらば,相手方〔売主(債務者)X〕に対する一片の問合せに依り,直に之を知ることを得べかりしものにして,斯かる場合には,信義の原則に依り,買主(債権者)Yは右問合せを為すことを要し,之を怠りたるに於ては,遅滞の責を免るるを得ざるものとす。

3 弁済による代位


A. 弁済による代位の要件と効果

債務者以外の第三者(保証人を含む)が弁済し,債務者に対して求償権を取得した場合に,弁済者に,その求償権の範囲で,債権者の債務者に対する権利を行使させることを弁済による代位という。なお,弁済による代位には,「弁済者の代位」,「代位弁済」という用語法も使われている。

民法は,代位による弁済を以下のように,任意代位と法定代位とに分類して,それぞれの特色を明らかにするとともに,共通の効果について規定している。

弁済による代位の問題の中で複雑な問題を生じさせているのは,保証人と物上保証人との関係に関するものである。そこで,以下では,具体的な2つの問題(練習問題1,連取問題2)を解くことを通じて,弁済による代位の問題の理解を深めることにする。

B. 練習問題1

a) 設例

AのBに対する6,000万円の債権について,C,Dが保証人となり,E,Fが物上保証人となって。Eは価格4,000万円の不動産について債権者Aのために抵当権を設定し,Fは6,000万円の不動産に債権者Aのために抵当権を設定したとする。保証人Cが債務者Bに代わって6,000万円を弁済した場合に,保証人Cは債権者Aに代位して,Fの不動産に対する抵当権を実行して,6,000万円全額の回収ができるか。

b) 解説
資格 責任財産 負担部分 計算式
債務者
(その第三取得者)
B 全財産 6,000万円 6,000×(1/1)
保証人 C 全財産 1,500万円 6,000×(1/4)
保証人 D 全財産 1,500万円 6,000×(1/4)
物上保証人
(その第三取得者)
E 4,000万円 1,200万円 6,000×2/4×
(4,000/6,000+4,000)
物上保証人
(その第三取得者)
F 6,000万円 1,800万円 6,000×2/4×
(6,000/6,000+4,000)

保証人Cは,6,000万円支払った場合,C自身の負担部分は,1,500万円と計算されるので,それを超えて支払った分につき,それぞれの保証人の負担部分の範囲で求償することができることになる(民法465条)。すなわち,Dに対しては1,500万円,Eに対しては1,200万円,Fに対しては,1,800万円ということになる。したがって,CはFの不動産からは,抵当権を実行しても,1,800万円の範囲でしか配当を受けることができない。

C. 練習問題2

a) 設例

債権者Aは,Bに対して6,000万円の債権を担保させるため,C,D,E,Yを連帯保証人とし,さらに,CとYとは,その所有するそれぞれの甲不動産(2,000万円),乙不動産(3,000万円)に抵当権を設定させた。その後YはBに代わってBの債務全額を弁済し,Aに代位してCの抵当権を実行した。Cの不動産に後順位抵当権を有するXは,Cの負担部分が最も少なくなる説として,以下のC説(我妻説)を主張している。Xの主張は認められるか。

b) 最高裁の考え方

最一判昭61・11・27民集40巻7号1205頁
 保証人又は物上保証人とその両資格を兼ねる者との間の弁済による代位の割合は,両資格を兼ねる者も一人として,全員の頭数に応じた平等の割合であると解するのが相当である

民法501条但書四号,五号の規定は,保証人又は物上保証人が複数存在する場合における弁済による代位に関し,右代位者相互間の利害を公平かつ合理的に調整するについて,代位者の通常の意思ないし期待によって代位の割合を決定するとの原則に基づき,代位の割合の決定基準として,担保物の価格に応じた割合と頭数による平等の割合を定めているが,右規定は,物上保証人相互間,保証人相互間,そして保証人及び物上保証人が存在する場合における保証人全員と物上保証人全員との間の代位の割合は定めているものの,代位者の中に保証人及び物上保証人の二重の資恪をもつ者が含まれる場合における代位の割合の決定基準については直接定めていない。
したがって,右の場合における代位の割合の決定基準については,二重の資格をもつ者を含む代位者の通常の意思ないし期待なるものを捉えることができるのであれば,右規定の原則に基づき,その意思ないし期待に適合する決定基準を求めるべきであるが,それができないときは,右規定の基本的な趣旨・目的である公平の理念にたち返つて,代位者の頭数による平等の割合をもって決定基準とするほかはないものといわざるをえない。
しかして,右の場合に,二重の資格をもつ者は他の代位者との関係では保証人の資恪と物上保証人の資格による負担を独立して負う,すなわち,二重の資格をもつ者は代位者の頭数のうえでは二人である,として代位の割合を決定すべきであると考えるのが代位者の通常の意思ないし期待でないことは,取引の通念に照らして明らかであり,また,仮に二重の資格をもつ者を頭数のうえであくまで一人と扱い,かつ,その者の担保物の価格を精確に反映させて代位の割合を決定すべきであると考えるのが代位者の通常の意思ないし期待であるとしても,右の二つの要請を同時に満足させる簡明にしてかつ実効性ある基準を見い出すこともできない。
そうすると,複数の保証人及び物上保証人の中に二重の資格をもつ者が含まれる場合における代位の割合は,民法501条但書四号,五号の基本的な趣旨・目的である公平の理念に基づいて,二重の資格をもつ者も一人と扱い,全員の頭数に応じた平等の割合であると解するのが相当である。
c) 解説

最高裁の考え方は,理論的に正しい。簡易なことは好ましいという観点から解説する概説書もあるが,保証人の責任は,無限責任であるのに対して,物上保証人は有限責任しか負わないという点が重要である。保証人と物上保証人の責任が1人に重なったときは無限責任にあわせるのが妥当である。つまり,最高裁の考え方は単純なのではなくて,理にかなっているといえる。

A説(最高裁) B説
物上保証人を兼ねる保証人も
すべて一人の保証人とみなす
物上保証人を兼ねる保証人は,
物上保証人とみなす
資格 責任財産 負担部分 計算式
債務者 B 全財産 6,000 6,000×(1/1)
保証人 C 全財産+
2,000万円
1,500 6,000×(1/4)
保証人 D 全財産 1,500 6,000×(1/4)
保証人 E 全財産 1,500 6,000×(1/4)
保証人 Y 全財産+
3,000万円
1,500 6,000×(1/4)
資格 責任財産 負担部分 計算式
債務者 B 全財産 6,000 6,000×(1/1)
保証人 D 全財産 1,500 6,000×(1/4)
保証人 E 全財産 1,500 6,000×(1/4)
物上保証人 C 全財産+
2,000
1,200 6,000×2/4×
(2,000/2,000+3,000)
物上保証人 Y 全財産+
3,000
1,800 6,000×2/4×
(3,000/2,000+3,000)
C,Yの物上保証人としての性質が無視されるのが難点
 
C,Yの保証人としての性質が無視される上,
Cが単なる保証人よりも負担が少なくなるのが難点
 
C説(我妻) D説
物上保証人を兼ねる保証人は,
保証人と物上保証人の二人であるとみなす
物上保証人を兼ねる保証人は,
保証人と物上保証人という競合した責任を負担する
資格 責任財産 負担部分 計算式
債務者 B 全財産 6,000 6,000×(1/1)
保証人 C 全財産 1,000 6,000×(1/6)
保証人 D 全財産 1,000 6,000×(1/6)
保証人 E 全財産 1,000 6,000×(1/6)
保証人 Y 全財産 1,000 6,000×(1/6)
物上保証人 C 2,000 800 6,000×2/6×
(2,000/2,000+3,000)
物上保証人 Y 3,000 1,200 6,000×2/6×
(3,000/2,000+3,000)
資格 責任財産 負担部分 計算式
債務者 B 全財産 6,000 6,000×(1/1)
保証人 C 全財産 1,500 6,000×(1/4)
保証人 D 全財産 1,500 6,000×(1/4)
保証人 E 全財産 1,500 6,000×(1/4)
保証人 Y 全財産 1,500 6,000×(1/4)
物上保証人 C 2,000 1,200 6,000×2/4×
(2,000/2,000+3,000)
物上保証人 Y 3,000 1,800 6,000×2/4×
(3,000/2,000+3,000)
Y,Cの負担部分が極端に増加する一方で,Cの物的負担が極端に少なくなるのが難点)
 
Dが全額弁済して,Aに代位し,Yの不動産の抵当権を実行して1,800万円配当を受け,C,Eから1,500万円ずつ回収すると,回り求償が生じるという難点がある
 

北川善太郎『債権総論』有斐閣(1993)74頁は,「まず,両者を含めて1人と算定し,あとで物上保証の財産額の比率で割る方法でよいと解する。」と主張しているが,これも,D説の資格融合論と解されているようである(潮見佳男『債権総論』信山社(1994)407頁)。


参考文献


[我妻・債権総論(1964)]
我妻栄『新訂・債権総論』岩波書店(1964)
[我妻・債権の強制執行(1966)]
我妻栄「作為又は不作為を目的とする債権の強制執行」『民法研究X』有斐閣(1966)
[平井・債権総論(1994)]
平井宜雄『債権法総論』〔第2版〕弘文堂(1994)
[内田・債権総論(1996)]
内田貴『民法V〔債権総論・担保物権〕』東大出版会(1996)

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