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16/26 Ⅲ 民法613条2項の不思議民法613条の直接訴権の弁済(その1)
【テロップ】
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【ノート】
★民法613条2項は,賃貸人の転借人に対する直接訴権の発生にもかかわらず,賃貸人は,賃借人に対して「権利を行使することを妨げない」と規定しています。■ この規定がどのような性質を有するものなのかを判断するために,この条文によって,賃貸人A,▲賃借人B,▲転借人Cとの間の法律関係がどのように変化するのかを, 第1に,民法613条1項に基づいて,転借人Cが賃料を賃貸人Aに直接弁済した場合と,■ 第2に,民法613条2項に基づいて,賃借人Bが賃料を賃貸人Aに支払った場合とを対比して考えてみましょう。■ ★転借人Cが,賃料を賃貸人Aに直接支払うと,弁済によって直接訴権は消滅します。■ ★賃貸人Aの賃借人Bに対する賃料債権は,代物弁済,または,目的を達成して消滅します。■ 第1の弁済によって,直接訴権も,賃料債権も消滅することについて,学説上の争いはありませんが,なぜ,一つの債務の弁済によって,すべての債務が消滅するのかについては,学説は一致していません。 3つの権利が独立に併存するとする通説の中でこの問題について,明確な意見を表明されている鈴木禄弥教授は,以下のように述べています。■ すなわち,転借人Cの賃貸人Aに対する直接の弁済によって,賃貸人Aの賃料債権は,目的を実現して消滅する。■ そして,転借人Cは,賃借人に代わって賃貸人Aに弁済したのだから,転借人Cは,賃貸人にBに対して,求償権を有する。この求償権と,賃借人Bの転借人Cに対する転借料債権とが,当然に相殺によって消滅すると説明しています。■ しかし,この説は,以下の二つの点で,矛盾に陥っています。■ 第1は,転借人Cは,賃貸人Aに対して,民法613条に基づく債務を弁済しており,これは,真正な債務の弁済なのですから,転借人Cが賃借人Bに求償権を有するという考え方は,根拠を欠いています。■ 第2は,仮に,転借人Cが賃借人Bに求償権を有するとしても,わが国は,相殺について当然に相殺されるという考え方を否定しているのですから,転借料債権が消滅する理由として相殺を持ち出しても,それは,根拠とはなりません。■ この問題を解決するには,おそらく,加賀山説によるほかないと思います。■ その考え方とは,賃貸人Aの転借人Cに対する直接訴権によって,本来ならば,賃貸人Aの賃借人Bに対する賃料債権は,代物弁済として消滅すべきですが,民法が賃貸人を保護するために,賃料債権を消滅させず,Bを連帯保証人として残したと考えることによって,すべての問題が解決します。■ なぜなら,加賀山説によれば,直接訴権の発生によって既に消滅していた転借料債権,そして,弁済によって消滅する直接訴権,付従性によって消滅する賃料債権というように,三つの権利の消滅を,通説とは異なり,論理的に,矛盾なく説明できるからです。■