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3/26 Ⅰ 民法613条の直接訴権との出会い
【テロップ】
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【ノート】
私の研究の出発点となったのは,40年前に,私が29歳の時に,「阪大法学」に公表した「民法613条の直接訴権について」(1977年)という論文です。 ★先ほど,緑色部分は,私の独自説だと申し上げましたが,赤色部分は,私の注目点を示しています。この点に注目することで,私の独自説が次々に誕生したのです。■ ★民法613条第1項は,「賃借人が適法に賃借物を転貸したときは,転借人は,賃貸人に対して直接に義務を負う」と規定しています。■ ★民法613条に登場する主要人物は,賃貸人,賃借人,転借人の三人です。■ この規定は,通説によれば,賃貸人を保護するための規定だとされています。■ ★賃借人が賃貸人に定時に賃料を支払わない場合には,賃貸人は,賃借人を飛び越えて,直接,転借人に対して,転借料の範囲内で賃料を請求することができます。■ ★このことは,転借料債権が,賃料債権の範囲で,賃貸人に移転することを意味するというのが私の考えです。■ ★転借人が賃借人と示し合わせて転借料を前払いしたとしても,それは,賃貸人には対抗できません。前払いでさえ対抗できないのですから,直接訴権が行使されたのちは,転借料は,賃貸人に支払わなければならず,賃借人に支払うことはできません。■ ★直接訴権の移転的効力は,賃借人の他の債権者(D)との関係で,重大な効果を発揮します。■ ★賃借人の債権者(D)が転借料債権を差し押さえようとしても,転借料債権は,すでに,賃貸人へと移転しているため,差押えは空振りに終わります。つまり,直接訴権は,債務者のその他の債権者(D)よりも優先的に弁済を受けることができるのです。■ この優先的効力については,現行民法の立法者の一人である,梅謙次郎の教科書に明確に書かれているのですが,私が,この点を指摘するまで,近時の学説は,この点について,まったく気づいていませんでした。■ ★さらに,賃貸人を保護するために,民法314条によって,賃貸人には,転借人に対する直接訴権に先取特権が与えられており,賃貸人は,転借人の債権者(E)に対しても,優先的な効力を有しています。■ ★その上,民法613条2項は,賃貸人は,転借人に対する直接訴権を与えられたのちも,賃借人に対して,賃料債権の請求をすることができるとしています。■