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第11回 物的担保総論

作成:2010年9月24日

明治学院大学法科大学院教授 加賀山 茂


第5章 物的担保


□ 第11回 物的担保総論 □

担保法各論のうち,債権の掴取力の量的強化としての人的担保の解説を終えたので,これから,債権の掴取力の質的強化としての物的担保の解説を始める。

物的担保とは,債権の保全と回収とを確実にするために,債権の掴取力を質的に強化するものであり,具体的には,債権の掴取力に事実上の優先弁済権(留置権),または,法律上の優先弁済権(先取特権,質権,抵当権)を与えるものである。

物的担保として,民法は,4つの権利を規定しており,それらは典型担保と呼ばれている。民法には規定されていないが,判例によって認められている譲渡担保,特別法によって認められている仮登記担保(仮登記担保に関する法律),所有権留保(割賦販売法7条など)は,非典型担保と呼ばれている。非典型担保も,典型担保と同様に,法律上の優先弁済権が認められており,しかも,物的担保の通有性である付従性,不可分性という性質を有している。したがって,本書では,非典型担保も物的担保として論じることにする。


第1節 物的担保総論


1 物的担保の種類

物的担保は,その性質と効力にしたがって,以下のように分類されている。

*表25 性質と効力に着目した物的担保の分類
大分類 中分類 小分類 本質・効力
(債権の掴取力の質的強化)
通有性
物的担保 典型担保 法定担保権 留置権 事実上の優先弁済権(引渡拒絶の抗弁権) 付従性(随伴性),
不可分性
先取特権 法律上の優先弁済権
(他の債権者に先立って弁済を受ける権利)
約定担保権 質権
抵当権
非典型担保 約定担保 仮登記担保
譲渡担保
所有権留保

従来の考え方によれば,これらの物的担保は,被担保債権とは別個・独立の物権である担保物権であるとされ,物権法の中で,所有権が有する換価・処分権を潜在的に制限する制限物権として位置づけられてきた。

*表26 物的担保の従来の考え方による位置づけ
物権 物権の分類 備考
占有権 本権を取得したり証明したりする機能を有する権利。
物権だけに認められるわけではなく,物権にも債権にも属
さない独自の権利(本来は,民法総則に規定すべき権利)。
本権 所有権 使用・収益権,換価・処分権のすべての権限を有する。
制限
物権
用益物権 地上権,永小作権,地役権 使用・収益権のみを有する物権。
担保物権 典型担保 留置権,先取特権,質権,抵当権 換価・処分権を有する物権(留置権はそれを有しない)。
独立の権利のはずが,債権に付従するという性質を有する。
民法に規定されていない
担保物権
非典型担保 譲渡担保,所有権留保,仮登記担保 売買・買戻し,代物弁済予約等によって構成されており,
物権といえるかどうか明確ではない。

もっとも,従来の考え方に関しては,*表26の備考欄でも一部触れているように,3つの点で問題があることに留意しなければならない。

第1は,通説によれば,担保物権とは,一方で,被担保債権とは別個・独立の物権であると定義されているが,他方で,被担保債権が消滅すると担保物権も消滅するという性質(付従性)を有するとしており,被担保債権に対する独立性と従属性という矛盾する性質を与えている点で,理論的に大きな問題を抱えている。

本書では,物的担保とは,「債権の掴取力を質的に強化するもの」と定義しているため,債権が消滅すれば,債権の掴取力も消滅するのは当然であり,物的担保の定義と付従性との間に矛盾点は存在しない。むしろ,付従性は,債権の掴取力の強化という人的担保にも,また,物的担保にも共通する当然の性質として,統一的に理解することができる。

第2は,担保物権を換価・処分権を有する物権であると定義しているが,その中に入っている留置権には,換価・処分権はおろか,使用・収益権も認められておらず,物権の定義からすると,決して,物権とはいえない。物権と債権との区別を厳密に考えるドイツ民法が留置権(Zurückbehaltungsrecht)を物権ではなく,給付拒絶の抗弁権と考え,債権法の中で規定している[ドイツ民法273条]のは理由があるというべきである。

本書では,物的担保を債権の掴取力の質的強化,すなわち,特定の債権に与えられた事実上,または,法律上の優先弁済権として定義しているため,物権ではない留置権であっても,物的担保の通有性を有するばかりでなく,事実上の優先弁済権を有している以上,物的担保の1つとして取り扱うことができる。

第3は,物的担保の分類として,従来は,担保権者が目的物を占有するかどうかで,占有を伴う物的担保(留置権,質権),占有を伴わない物的担保(先取特権,抵当権,非典型担保)との2つに分類していた。しかし,質権の場合,権利質については,債権者が必ずしも占有を得る必要がないため,このような分類基準を貫徹することができなくなっている。

*表27 設定者の使用・収益権に着目した物的担保の分類
債務者等から目的物の使用・収益権を奪うもの
(いわゆる占有担保物権)
典型担保 留置権
質権 動産質
不動産質
権利質
債務者等から目的物の使用・収益権を奪わないもの
(いわゆる非占有担保物権)
典型担保 先取特権 一般先取特権
動産先取特権(債権先取特権を含む)
不動産先取特権
抵当権 普通抵当
根抵当
非典型担保 仮登記担保
譲渡担保 動産譲渡担保
不動産譲渡担保
債権譲渡担保
所有権留保

本書では,物的担保の分類として,債権者が目的物を占有するか,占有しないかという観点からではなく,*表27のように,「設定者から目的物の使用・収益権を奪うものであるかどうか」という基準によって分類しており,通説とは異なり,分類基準を貫徹することができる。

2 非典型担保における典型担保の役割

非典型担保というと,非典型契約を思い出す人がいるかもしれない。物権と債権とでは,世界が違うようにも思うかもしれないが,実は,関連しあっている。典型契約と非典型契約とが存在する契約法の世界と,典型担保と非典型担保とが存在する物的担保の世界を比較してみると,非典型担保の存在理由が理解できるとともに,物的担保の過去,現在,未来までもが見えてくる。

第1に,比較のため,契約の世界を見てみよう。典型契約は,融通無碍の契約自由の下では,当事者の意思を補充・補完するものとして位置づけられる。非典型契約は,むしろ,契約自由の所産である。契約法において非典型契約が認められるのは当然であるが,自由は,常に濫用の危険を伴う。そこで,現代においては,契約正義等の理念の下に,優越的な地位を利用した濫用的な契約を規制する法理が発展している。補充規定に過ぎないとされてきた任意規定に反して消費者を一方的に害するすべての契約は無効とし[消費者契約法10条]任意規定で補完するというの考え方は,現代における契約正義を実現するための1つの到達点といえよう。つまり,契約自由の世界では,力の強いものが契約条項を予め定め,力の弱いものはこれを押し付けられるという優越的地位の濫用が多発し,これを規制するために,契約正義という名において,契約自由を制御する必要がある。

第2に,物的担保の世界においては,典型担保は,最初から法によるコントロール下に置かれている。これに対して,非典型担保は,以下に詳しく論じるように,融通の利かない物権法定主義をすり抜けるために「嘘も方便」として「所有権移転型」として生成したため,所有権を取得する債権者の濫用が必然的に生じているのであり,これを制御する必要がある。

第3に,非典型契約と非典型担保の両者を優越的地位の濫用という観点で比較してみよう。

一方で,契約自由の当然の結果として生成した非典型契約においては,自由の名の下で,強者による弱者に対する支配すなわち優越的地位の濫用が生じている。これを防止するため,契約法の世界では,公序良俗,信義則,契約的正義という原理を用いて,典型契約で規定された標準的なルールとしての任意規定によって非典型契約の行き過ぎをコントロールするという必要が生じている[消費者契約法10条参照]。他方で,物権法定主義の制約の中で,立法の不備のために,その潜脱行為として生成した非典型担保においては,債権者が,担保権を逸脱する所有権の移転まで要求するため,その濫用が必然的に生じている。このような濫用を防止するために,非典型担保においては,債権者に対して,典型担保におけると同様のコントロールをする必要が生じているのである。

このように考えると,非典型「契約」と非典型「担保」の出発点は,契約自由と物権法定主義という全く正反対のものであるが,非典型契約,非典型担保における優越的地位の濫用を制御するためには,いずれの場合にも典型契約および典型担保における法理(民法の規定)が,非典型契約および非典型担保における優越的地位の濫用をコントロールするという重要な役割を演じているのである。すなわち,非典型契約においては,任意規定と一般条項が,非典型担保においては,優越的な地位は義務を伴う(ノブレス・オブリージュ)および,清算義務の法理が,優越的な地位の濫用をコントロールするための基準とされなければならない。

*表28 非典型契約と非典型担保における問題点とその解決方法の比較
非典型契約 非典型担保
出発点 「契約自由」の当然の帰結 「物権法定主義」からの逸脱またはそれからの解放
問題点 優越的の濫用による不公正な取引および消費者被害 所有権移転構成による不公正な取引および債務者被害
解決の方向 任意規定によるコントロール([消費者契約法10条]参照) 帰属清算の廃止と処分清算のコントロール(立法の課題)

非典型担保に対するこのようなコントロールが可能になった後は,翻って,典型担保における債権者の優越的の地位の濫用についても,当然に,メスが振るわれなければならない。その典型例が,王座を占める抵当権による賃借権の覆滅であることは,すでに述べた通りである。この問題が,我妻民法[我妻・担保物権(1968)8-9頁,297-298頁]で提起されながら,抜本的な解決が図られていない担保法の最大の課題となっているといえよう。

3 非典型担保に置ける「嘘の効用」

物的担保が物権だとすると,物権法定主義[民法175条]に基づき,典型担保だけが許され,非典型担保は禁止されるはずである。それにもかかわらず,譲渡担保に始まり,仮登記担保法が制定された経緯を見てみると,以下に詳しく述べるように,「民法の不備」と,物権法定主義の網の目をくぐろうとして,「国民が嘘つきになる」という構図が透けて見えてくる。

「民法の不備」とは,債務者に担保目的物を使用・収益させつつ,債権の回収を図り,債務が履行されない場合に限って担保目的物を換価・処分する権限を債権者に与えるという,物的担保の理想である抵当権について,これを動産および債権に認めることを怠ったことである。もちろん,これには,それなりの理由がある。不動産については,公示方法として登記制度が存在するが,これまでは,動産および債権については,明確な公示制度が存在しなかったからである。しかし,第1に,動産の場合にも,古くから明認方法という公示制度が認められており,最近では,動産登記[動産・債権譲渡特例法]までもが実現しているのであるから,実務の要請が高い動産抵当の制度が民法で規定されていないというのは,立法の怠慢というほかない。第2に,債権については,債権質の場合にも[民法364条以下],抵当権の処分にも[民法377条],債権譲渡の対抗要件[民法467条]が準用されており,最近では,債権登記[動産・債権譲渡特例法]が実現しているのであるから,債権の抵当権を認めないのも,これまた,立法の怠慢である。このような不備があるために,実務は,譲渡担保と仮登記担保という所有権移転型といわれる嘘で固めた非典型担保を生み出し,判例がこれを追認してきたのである。

「国民が嘘つきになる」という意味は,[末弘・嘘の効用(1923)31頁]に明確に述べられているように,「親が厳格だと,子供はうそつきになる。法律に融通性がないと,国民は実を取るために嘘をつく。立法者は,国民が嘘をつくようになったら,立法の改正を行わなければならない」という趣旨である。

つまり,非典型担保は,民法の不備(動産抵当・債権抵当の原則的否定)から生じる,国民のやむにやまれぬ「嘘」であり,通謀虚偽表示である。民法が動産および債権の上の抵当権を認めていないため,国民は担保の目的で動産および債権を譲渡するという,目的を超えた概観を作り出さざるを得なかったのである。真意(担保の設定)と表示(所有権の移転)とが完全に食い違っているのであるから,非典型担保としての所有権移転型担保は,例外なく,通謀虚偽表示である。譲渡担保の場合には,当事者は,担保設定時に,所有権が債権者に移転するという大きな嘘(設定時所有権移転)を表示する。仮登記担保の場合には,債務者が債務不履行に陥ったときに,初めて,所有権が債権者に移転するという小さな嘘(債務不履行時所有権移転)を表示する。大きな嘘は,判例によって見抜かれるようになり,所有権的構成は,担保的構成へと徐々に組みかえられてきた。しかし,小さな嘘は,なかなか見抜けない。立法者も,仮登記担保が通謀虚偽表示であることを見抜くことができず,所有権移転を前提とする受戻制度や帰属清算制度を構築したため,実務から見捨てられ,利用されない制度へと堕している。

*表29 非典型担保における嘘の程度と内容の比較
譲渡担保 仮登記担保 抵当権
嘘の程度 嘘がない(真意)



所有権の移転とその時期 契約時に所有権が移転する(売買代金は,実は貸金に過ぎない) 債務不履行または清算期間終了時に所有権が移転する(実は,債権者は換価・処分権を取得するだけで,所有権は移転しない) 所有権は移転しない
設定者の利用権 実行まで設定者が目的物を賃借する(賃料は,実は利息に過ぎない) 設定者の賃借の必要なし(嘘はない) 設定者の賃借の必要なし
弁済による原状回復 設定者が弁済して所有権を買い戻す(買戻しは,実は弁済に過ぎない) 債務不履行または清算期間終了後に設定者が所有権を買い戻す(買戻しは,実は,弁済) 弁済により,付従性によって担保権は消滅する
注意点 嘘が大きいため,嘘が見抜かれて次第に,所有権移転構成から担保権的構成へと移行しつつある。 嘘が小さいため,所有権の移転が嘘であることがわかりにくい。このため,帰属清算方式が採用され,それがあだとなって,自滅の方向にある。 競売のメリットである公正さともに,市場価格よりも低価格でしか換価・処分できないというデメリットをかかえている。

見抜かれる嘘は罪が少ない。真実への矯正が可能だからである。見抜かれない嘘は罪が深い。プロフェッショナルでもだまされ,矯正の機会が失われるからである。しかし,その結果は,長い目で見れば,そのような嘘で固めた存在は,それ自体の自滅へと向かうことになる。

4 非典型担保における優越的地位の濫用に対するコントロールの必要性とその方法

国民がやむにやまれずにつく嘘としての通謀虚偽表示は,それ自体がすべてが無効となるというわけではない。非典型担保は,通謀虚偽表示であるが故に,所有権的構成が無効となるだけで,担保的構成が有効となる。なぜなら,通謀虚偽表示においては,当事者間では真意が尊重され(担保の設定が有効),表示が無効(所有権の移転が無効)となるからである。しかし,善意の第三者との関係では,表示(所有権の移転)が優先する。したがって,担保の目的であるにもかかわらず,所有権まで移転するという概観を作らざるをえない非典型担保は,債権者がこれを濫用するという危険を防止することが困難となる。

そこで,判例は,虚偽の概観を作り出している非典型担保について,債権者の濫用を防止し,債務者を保護するため,第1に,債権者に清算義務を課すことにした。これは画期的なことであり,物権法定主義に反するという疑いのあった非典型担保が適法なものとして正当化される最初のステップとなった。非典型担保を,典型担保と同様の地位に置くための第2のステップは,非典型担保を所有権の移転的構成から担保的構成へと組み換え,第1ステップで確立した債権者の清算義務について,抵当権と同じく,債権者の権限を目的物の換価・処分に限定し,所有権の移転を前提とした帰属清算を廃し,処分清算の原則を確立することである。譲渡担保においては,判例は,所有権的構成をとりつつも,徐々にそこから抜け出し,処分清算を広く認め,最近では,後順位譲渡担保権者の存在をも認めるようになっている。所有権について,後順位所有権などという,段階的な所有権を認めることは,物権法定主義に反することが明らかであり,後順位の譲渡担保権を認めるに至った判例は,譲渡担保についても,所有権的構成から担保的構成へと移行しているといってよい。

今後の課題としては,さらに一歩を進める必要がある。

第1は,譲渡担保の法理を進展させ,所有権移転的構成(帰属清算)から決別し,処分清算方式を発展させつつ,公平の観点から,その手続きを公正かつ透明にする方法を追求していかなければならない。

第2は,所有権的構成を採用したために,清算方式を帰属清算方式とせざるをえず,実務から見放されている仮登記担保について,公正かつ透明な手続きを保持しつつ,所有権的構成を担保的構成へと組み換え(立法論すれすれの解釈論),処分清算を可能とする解釈方法が探究されなければならない。

本書では,以下において,従来の解釈を前提としつつ,最終目標を達成するための新しい解釈方法を提案することにする。

5 非典型担保の種類

非典型担保は,すべて,債務者が目的物を使用・収益することを認める物的担保(いわゆる非占有型物的担保)である。非典型担保は,さらに,代物弁済型の仮登記担保,買戻・再売買予約型の買戻,譲渡担保,所有権留保,債権質型の代理受領,相殺予約,振込指定に分類できる。

*表30 非典型担保の分類

契約形態 物権としての説明 債権の優先弁済権としての説明
代物弁済予約型 仮登記担保 借金を弁済できない場合に,担保目的物をもって弁済に代えるもので,その状態を予約法理と仮登記によって保全するもの。ただし,担保目的物の価額が債権額を超える場合には,清算が義務づけられており,厳密な意味での代物弁済ではない。 弁済期前の契約をもって,債務を弁済できない場合には目的物によって債務の弁済に充てることを約することであり,「抵当直流れ」として説明できる。 弁済期前の契約をもって,債務を弁済できない場合には目的物から優先弁済を受ける権利を仮登記によって保全するもの。
譲渡・買戻型 譲渡担保 借金の担保を貸主に売却し,かつ,担保目的物を貸主から借り受けるが,一定期間内に借金の返済が可能になった場合には,担保物を借主から買い戻す権能が借主に留保される契約。 買戻しまたは再売買の予約を利用して,担保目的物の私的実行を行うことによって抵当権よりも効率的な担保を実現するもの。 債権(貸金債権等)の担保として所有名義と対抗要件を得た物権から優先弁済を受けることができるもの。
所有権留保 割賦販売に際して,買主が代金を完済するまで,売主が所有権を留保する契約。 売主が所有権を移転した後に,残代金債権の担保として,売買目的物を譲渡担保にすること。 債権(貸金債権等)の担保として所有名義と対抗要件を得た物権から優先弁済を受けることができるもの。
債権充当・相殺型 代理受領 債権者(銀行)が融資するにつき,融資先(債務者)が第三債務者に対して有する債権の弁済受領の委任を受け,その融資金の弁済に充当するという契約 融資先が第三債務者に対して有する債権に対する銀行の取立のためにする委任(譲渡担保)契約。 融資先の債務者(第三債務者)から代理受領(取立のための債権譲渡)の承諾を得ていることを対抗要件として銀行が第三者に対して優先的に弁済を受けることができるもの。
振込指定 債権者(銀行)が,債務者(融資先)の債務者(第三債務者)に対して有する債権の支払い方法を銀行の融資先名義の口座に振り込むことを指定し,それによって振り込まれた金銭(預金債権)を銀行が融資先への貸金債権と相殺する契約。 貸金債権と相手方の預金債権による相殺(相殺の担保的機能)を実現するための振込み指定。 貸付債権を自働債権とし,預金債権を受働債権として相殺し,実質的な優先弁済を受けることができるための振込みの指定。
相殺契約 銀行が顧客に貸付債権を有し,顧客が銀行に預金債権を有している場合に,相殺契約(期限の利益の喪失条項等)によって相殺適状を繰り上げ,預金債権の範囲内で他の債権者に優先して貸付債権の回収を行うための契約。 顧客に対する銀行の貸付債権を被担保債権として,銀行に対する顧客の預金債権の上に設定された債権質。 貸付債権を自働債権として,融資先の銀行に対する預金債権を相殺契約に従って繰り上げ相殺し,預金債権は貸付債権の額の範囲ですでに消滅しているとして,融資先からの預金債権の返還請求,第三者の差押えを拒絶することにより,優先弁済を確保するもの。

これらの非典型担保のうち,相殺については,すでに説明したので,以下においては,仮登記担保,譲渡担保,所有権留保について解説する。


□ 学習到達度チェック(11) 物的担保総論 □


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