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担保法の用語解説

加賀山流・担保法辞典

作成:2009年1月25日
明治学院大学法科大学院教授 加賀山 茂


担保
 保証と同じ意味であり,通常は,債務の履行を保証することを意味する。
 人が債務の履行を保証する場合には,保証人というように,もっぱら「保証」の用語を用いる。これに対して,物によって債務の履行を保証する場合は,「担保物権」のように,「担保」という用語を用いることが多い。ただし,「物上保証人」(他人の債務を担保するために物的担保を設定した者のこと[民法351条])のように,物によって債務の履行を保証する場合にも,「保証」の用語を使うことがある。
 売主の「瑕疵担保責任」[民法570条]という場合の「担保」の意味も,それが,品質「保証」ともいわれることがあるように,「瑕疵がないことを保証する」という意味である。
 担保には,「人的担保」[民法432条〜465条の5]と「物的担保」[民法295条〜398条の22]とがある。人的担保,および,物的担保という用語法は,現行民法の土台となった旧民法が採用した「対人担保(sûretés personnelles)」,「物上担保(sûretés réelles)」を参考にしている。
旧民法
 1890(明治23)年に公布されたわが国最初の民法典であり,現行民法の土台となった法典のこと。
 特に担保法(債権担保編)の部分は,人的担保と物的担保とを併せて規定するという斬新な編成をとっている。旧民法の模範とされたフランス民法典でさえ,従来は,人的担保(sûretés personnelles)と物的担保(sûretés réelles)とを別々の箇所に規定していた。フランス民法典は,2006年の改正によって,第4編として担保編(sûretés)を創設し,人的担保と物的担保とを統一的に規定するに至っているが,旧民法は,それより100年以上も前に,担保法の統合を実現していたことになる。この点からだけでも,旧民法債権担保編の先見性は注目に値するが,それだけにとどまらない。旧民法債権担保編は,フランス民法に規定されていない留置権,そして,ドイツ民法にない先取特権を規定しており,その内容は,まさに,わが国の現行民法の基盤を形成している。
 わが国は,1858(安政5)年に締結された日米修好通商条約をはじめ,列強諸国との間で治外法権,協定税率(輸出入一律低率関税・片務的協定関税),最恵国条項を主要内容とする不平等条約を強制され,屈辱とともに経済的な損害を被ることになった。これらの不平等条約を改定するのため,特に,屈辱的な治外法権を撤廃するという国民の悲願を達成するための必要条件として,列挙諸国と同等の民法を制定することが明治政府の最大の課題となった。そこで,明治政府は,近代民法典の祖とされるフランス民法を模範としてわが国の民法を制定することを決意し,当時,パリ大学助教授であったボワソナードを明治政府の法律顧問として迎えることにした。その交渉が成立して1873(明治6)年に来日したボワソナードは,政府の法律顧問としてさまざまな法律問題について助言,献策,回答を与えるとともに,拷問を廃止する必要から,刑法典(旧刑法),治罪法典(刑事訴訟法のこと)の制定を行った。これが,わが国最初の近代法典である。
 肝心の民法の起草は,その後の1879(明治12)年から10年の歳月を費やして行われ,1890(明治23)年に公布されることになった。これが,わが国最初の民法典である旧民法である。
 現行民法が,総則,物権,債権,親族,相続というパンデクテン(学説彙纂)方式を採用しているのに対して,旧民法は,フランス民法と同様のインスティトゥティオーネン(法学提要)方式に,ボワソナードの独創による債権担保編,証拠編が加えられ,財産編,財産取得編,債権担保編,証拠編,人事編の併せて5編からなっている。これらは,ほとんどの部分がボワソナードによって起草されたが,人事編(親族法)と財産取得編の一部(相続法等)は日本人起草委員によって起草された。
 旧民法は,1893(明治26)年から施行されることになっていたが,その施行をめぐって法典論争が起こり,断行派(フランス法派)と延期派(イギリス法派等)とが争った結果,延期派の勝利に帰し,旧民法は,一度も施行されることなく廃止となり,ボワソナードは,1895年に帰国した。現行民法は,この旧民法の修正するという方法で行われることになり,穂積陳重(延期派),梅謙次郎(断行派),富井政章(延期派)の3人が起草委員に選ばれ,法典審議会での議論を経て,総則・物権・債権が1896(明治29)年に公布され,親族・相続が1898(明治31)年に公布され,ともに1898(明治31)年7月16日から施行された。これが,明治民法であり,戦後に大改定された親族,相続編を除いて,現行民法にそのまま受け継がれている。現行民法は,旧民法とは異なり,当時成立過程にあったドイツ民法典の第2草案と同じく,パンデクテン方式を採用しており,旧民法とは全く異なる法典のように見える。
 しかし,現行民法が短期間で起草できたのは,それが旧民法の修正として起草されたからであり,民法理由書を仔細に検討すると,形式の違いとは裏腹に,個々の条文については,旧民法の条文をそのまま受け入れたり,字句の修正にとどまるというものが散見される。特に,担保法に関しては,わが国の民法は,形式は,債権編と物権編とに分離され,連続性がないように見えるが,個々の規定については,旧民法の債権担保編(総則,対人担保(保証,債務者間及び債権者間の連帯,任意の不可分),物上担保(留置権,質権,先取特権,抵当))を土台とし,字句の修正にとどまっているものが非常に多い。旧民法は,先に述べたように,人的担保と物的担保とが統合して規定されているばかりでなく,フランス民法に規定がなかった留置権,および,ドイツ民法に規定がない先取特権が規定されており,この点でも,旧民法は,わが国の担保法の形成に大きな役割を果たしている。
人的担保
 保証[民法446条以下]と連帯債務[民法432条以下]のこと。
 債権の担保となる責任財産が量的に拡大され,債権者は保証人の責任財産から弁済を受けることができる。これに対して,物的担保の場合には,債権の担保となる責任財産が質的に強化され,債権者は,責任財産から他の債権者に先立って弁済を受けることができることになる。この点に,人的担保と物的担保との違いがある。
保証
 債務者に代わって債務者の債務(主たる債務)を履行する責任を負うこと。債権の掴取力を量的に強化(責任財産の個数を拡大)するものである。
 民法は,保証を保証「債務」として規定しているが[民法446条以下],保証は,厳密には「債務」ではなく,物上保証(他人の債務を担保するための物的担保[民法351条])と同じく,「債務のない責任」である。すなわち,保証は,保証「責任」であって,保証「債務」ではない。「保証債務」という民法の用語法は,便宜上のものであり,民法全体の体系及び理論上からは,誤用といわなければならない。
 この点をさらに詳しく説明すると,民法は,保証「債務」という用語を用いているが,「債務」は債権者と債務者との間にだけ存在するのであって,保証人は決して債務を負わない。保証人は,通常の保証人の場合も,また,物上保証人の場合も,常に,唯一存在する「債務者の債務」について,一定の場合に,その債務を「肩代わりして履行する責任を負う」だけである。そうだからこそ,保証人が「肩代わりの責任」を果たして,債権者に弁済をした場合には,債務者に求償ができるのである。もしも,保証人が,本来の債務(主たる債務)とは別に,保証債務という独立した別の債務を負っているのであれば,その債務を履行したからといって,他人である債務者に対して求償することはできないはずである。保証人の債務者への求償を通じて,保証人は,最初から最後まで,債務を負担しておらず,債務者のみが債務を負担していることが明らかとなる。つまり,一言で言えば,保証は「債務ではなく,責任」なのである。
 この点について,連帯債務者は,債務者として弁済をした場合でも,他の連帯債務者に求償できるのだから,本来の債務を負う場合でも,求償がありうるのではないかとの疑問が生じるかもしれない。しかし,連帯債務者の一人が弁済をした場合に求償ができるのは,自らの負担部分(本来の債務)を越えて,保証部分を弁済した場合に限られることが想起されるべきである[民法465条,442条]。
 通説は,保証は「債務」であり,これに対して,物上保証は「債務のない責任」であるとしているが,これも誤りである。正しくは,保証も,物上保証も,「債務のない責任」である点で共通している。保証が債務の限度で「無限責任」を負うのに対して,物上保証は,債務の限度で,かつ,提供した物の範囲でしか責任を負わない,すなわち,「有限責任」である点においてのみ,両者に違いがあるに過ぎない。
 保証には,「通常の保証」のほか,保証と連帯債務との橋渡しをするものとして以下に述べる「連帯保証」がある。
物上保証
 債務者のために,担保目的物を債務者の責任財産として提供すること。保証の一種であるが,責任の範囲が目的物に限定される点(有限責任),すなわち,物的担保である点が,通常の保証とは異なる。
 通説は,保証は主たる債務とは別個・独立の債務であるが,物上保証は債務のない責任であるとして両者を区別している。しかし,保証の箇所で詳しく述べたように,主たる債務以外に,保証債務という別個・独立の債務が存在するわけではないことは,通説の主張が,保証債務は主たる債務と別個・独立の債務でありながら,主たる債務に付従することを認めざるを得ない点で破綻していることからも明らかである。
 したがって,保証も物上保証も,債務のない責任として共通しているが,保証は,責任財産について無限責任(履行責任)を負う野に対して,物上保証の場合には,限定された財産について有限責任を負うに過ぎない点に違いがある。
 民法は,質権の総則の最後の条文[民法351条]で,物上保証人を「他人の債務を担保するため質権を設定した者」として定義している。しかし,この条文は,抵当権の総則の最後の規定[民法372条]で抵当権にも準用されているため,広く,「他人の債務を担保するため物的担保を設定した者」と言い換えることができる。
 特定の目的物に対して有限責任を負わされる場合を想定すると,第1に,抵当権が設定されている物件を取得した第三取得者も,抵当権には追及効があるため,第三取得者は,物上保証人と同じ責任を負うことになる(掴取力の質的・量的強化)。さらに範囲を広げて,詐害行為取消権が認められる場合の受益者・転得者も,債権者による追及を受けるので,広い意味では,物上保証人と同じ責任を負わされている(掴取力の量的強化)。
 これらの2つの場合には,物上保証が,当事者の合意(約定)によって生じるのではなく,法律の規定によって生じるため,「法定の物上保証」ということができよう。
 もっとも,第1の第三取得者の場合には,政策的な考慮によって,求償権に基づく代位の範囲が物上保証人よりも制限されている[民法501条第2号]。この点で,第三取得者は,通常の物上保証人よりも不利な立場にある。また第1の第三取得者の場合には,抵当権者は物上保証人の特定財産に対して優先弁済権を行使できるのに対して,第2の場合の受益者・転得者の場合には,債権者は,優先弁済権を行使できない点で,抵当権の第三取得者と詐害行為の受益者・転得者との間には違いが生じている。
連帯保証
 補充性(催告の抗弁権,検索の抗弁権)を有しない保証のこと。
 通常の保証と同様,債権の発生・変動・消滅に従属する性質,すなわち,「付従性・随伴性」を有するが,通常の保証とは異なり,補充性(催告の抗弁権,検索の抗弁権)を有しない[民法454条]。
 また,連帯保証人が数人いても分別の利益[民法456条]をもたない点で[民法456条],連帯保証は,通常の保証よりもさらに厳しい責任であり,債権者にとって有利である。このため,実際の取引界では,連帯保証が通常の保証よりも頻繁に用いられているが,その弊害は目に余るものがある。
 確かに,市販の契約書は,保証に代えて,債権者に有利な連帯保証という用語を使っている場合が多い。しかし,連帯保証実際の運用を見てみると,債務者に催告せずに,いきなり連帯保証人に請求することは稀であり,実質的には,催告の抗弁権と検索の抗弁権が保持されている場合が多い。したがって,市販の契約書を利用して,「連帯保証」契約がなされていても,例えば,賃料債権に関する保証などについての当事者の真の意思は,通常の保証契約が締結されていると考えるのが,契約の解釈として妥当である(例文解釈)。
 連帯保証の本来の意義は,次に述べる「連帯債務」とこれまで述べた「通常の保証」との橋渡しをすることにある。なぜなら,次に述べる連帯債務は,本来の債務(負担部分)と連帯保証(保証部分)とが結合したものであり,負担部分がゼロになった場合の連帯債務が連帯保証だからであり,保証と連帯「債務」は,連帯「保証」を通じて,連続的な理解が可能となるからである。
 連帯債務は,実務的に重要な意義を有する。そこに組み込まれた連帯保証は,債務者と債権者との利害関係を調整する法理として重要な役割を果たしており,特に,共同不法行為の連帯責任の場合のように,被害者の救済を図る上でも,重要な役割を果たしている。しかし,連帯保証が重要な役割を果たしいているのは,連帯債務の中に組み込まれた場合のみである。連帯債務と切り離された連帯保証は,債権者に一方的に有利であり,債務者に過酷な責任を課すものとして制限的に解釈しなければならない。
連帯債務
 本来の債務である「負担部分」と他の連帯債務者に対する連帯保証である「保証部分」とが結合したもの(連帯債務に関する相互保証理論)。
 従来の説は,連帯債務とは,一つの給付(例えば,総額300万円)について,それぞれの連帯債務者が「複数の独立した債務」を負担するもの(連帯債務者S1,S2 ,S3は,それぞれ,100万円ずつしか借りていないとしても,連帯債務を負うことによって,それぞれ,300万円ずつ,3つの独立の債務を負担する)と説明してきた。確かに,この説によると,債権者Gは,すべての連帯債務者(S1,S2 ,S3)に対して,連帯債務の総額(300万円)を請求できることを説明できる。しかし,債務者の1人(例えば,S1)が連帯債務の総額(300万円)を弁済すると,独立の債務と定義されていた他の債務者(S2 ,S3)の債務が同時に消滅するのはなぜなのか,本来の債務を弁済したに過ぎないはずの連帯債務者の1人(S1)が,他の連帯債務者(S2 ,S3)に対して,それぞれ100万円ずつ求償できるのはなぜなのかを理論的に説明することができなかった。
 これに対して,連帯債務を,第1に,それぞれの債務者が本来的に負担する債務(例えば,S1が債権者Gから借りた100万円)としての「負担部分」(本来の債務部分)と,第2に,本来,他の連帯債務者(S2 ,S3)が支払うべき債務について,それらの債務者に代わって支払わなければならない連帯保証部分(例えば,S1がS2を保証する100万円+S1がS3を保証する100万円=200万円)としての「保証部分」(連帯部分ともいう))とを区別して認識し,第1の「負担部分」(本来の債務)と第2の「保証部分」(本来の債務ではなく連帯保証に過ぎない)とが結合したものを連帯債務として考えるというのが,本書が採用する「相互保証理論」である。
 相互保証理論とは,一言で言えば,連帯債務者は,債権者に対して,それぞれ,「負担部分」(100万円)と「保証部分」(200万円)の総和(300万円)を負担するという考え方である。
 相互保証理論によると,例えばS1が,連帯債務の総額300万円を債権者Gに弁済する意味が,次のように理論的に説明できる。S1が支払った300万円のうち,第1に,100万円の弁済は,負担部分(自らが借りた100万円)の返済である。このことによって,他の連帯債務者(S2 ,S3)の保証部分がいわゆる「保証の付従性」によって消滅する。第2に,残りの200万円の弁済は,S2が負担する100万円,および,S3が負担する100万円をS1が肩代わりして弁済したものである。この第2の弁済,すなわち,S1の200万円の支払い(肩代わりの弁済)によって,S2 ,S3の債務も消滅し,すべての連帯債務が付従性によって消滅する(このことによって,1人の連帯債務者が連帯債務総額を支払うと,独立とされてきた他の連帯債務者の債務も消滅することが,理論的に説明される)。もっとも,S1が支払った200万円の部分については,S1の負担部分の弁済ではなく,他の連帯保証人に対する保証部分の支払いであるに過ぎないため,S1は,S2 ,S3のそれぞれに対して,100万円ずつ,求償することができることも,同時に説明できる。
 このようにして,相互保証理論は,これまでベールに包まれてきた連帯債務の中身を「負担部分と連帯保証部分との結合」として明らかにした理論であるために,連帯債務の性質(連帯債務のいわゆる独立性,連帯債務の付従性,1人の連帯債務者に生じた事由の他の連帯債務者に対する効力(絶対効,相対効))をすべて理論的に説明することができる。この点が,通説とは異なる相互保証理論の優れた特色となっている。
物的担保(担保物権)
 いわゆる担保物権[民法295条〜398条の22]のこと。債権の掴取力を質的に強化(債権者平等の例外としての優先弁済権の付与)されたもの。
 債務者または物上保証人の責任財産について特定の債権者に優先弁済権を与える点に意義がある。
 民法に規定された物的担保は,留置権[民法295条〜302条],先取特権[民法303条〜341条],質権[民法342条〜368条],抵当権[民法369条〜398条の22]の4つに限定されているが,判例法によって認められている譲渡担保,特別法によって認められている仮登記担保,所有権留保も非典型の物的担保として認められている。そのほかにも,相殺の担保的機能を利用した代理受領,振込み指定も,担保物権,または,それに類するものとして分類する学説がある。本書では,相殺の担保的機能については,最近の深川説(深川裕佳『相殺の担保的機能』信山社(2008))に基づき,先取特権の一種であるとの位置づけを行っている。
 債権者が物的担保を有する場合の特色は,債務者が目的物を担保に供しても,債務者は担保目的物の所有権を失わない点にある。債務者が債務不履行に陥った場合であっても,所有権が直ちに債権者に移転することはない。確かに,債務者に債務不履行がある場合には,債権者は担保目的物を処分する権限を取得する。しかし,債権者が目的物の所有権を取得できるのは,競売手続き等を通じて目的物を買い受けるという例外的な場合に限られる。債権者は,債権の回収のために債務者に物的担保を設定させるのであり,他の債権者に先立って債権の回収ができれば,すなわち債権の優先弁済権が確保できれば,それで満足すべきであり,債権者に目的物の所有権を取得させる必要はない。このことは,民法が定める典型担保においては,条文上も明らかであるが,非典型担保であっても,同様である。物的担保の債権者には,いかなる場合にも,清算が義務でけられるのであり,譲渡担保であれ,仮登記担保であれ,債務不履行後の清算手続きなしに,債権者が自動的に所有権を取得することはありえない(非典型担保の所有権的構成の否定と担保的構成の肯定)。
物的担保の物権性(これまで物権性があるとされてきた理由とその否定)
(1)物的担保が,担保「物権」と呼ばれるようになった経緯
 旧民法の起草者であるボワソナードは,人的担保(保証と連帯債務),および,物的担保(留置権,先取特権,質権,抵当権)の双方を「債権担保編」の中で,債権を担保するものとして統一的に規定していた。ところが,現行民法の立法者は,債権と物権とを峻別するドイツ民法に習って両者を峻別し,人的担保を債権編へ編入する一方で,物的担保を物権編へ編入した。このために,わが国の通説は,債権担保のうちの物的担保を「担保物権」と呼んでいる。ただし,「担保物権」という用語は,学術用語に過ぎず,民法の条文には「担保物権」という用語は存在しない。
(2)物的担保の物権性の否定
 担保物権といわれている権利の内容を民法の編別(物権編)にこだわらずによく読んでみると,第1に,留置権[民法295条]は,使用・収益権も,換価・処分権もなく,積極的な権利(物権)でもない。すなわち,留置権は,引渡拒絶の「抗弁権」に過ぎないことがわかる。現行民法の起草に際して,その編別が手本となったドイツ民法は,留置権を,わが国の場合と同様,給付拒絶の抗弁権として定義した上で,わが国とは異なり,債務法の中に編入している[ドイツ民法273条]。ドイツ民法のように債権と物権を厳密に区別するのであれば,わが国においても,留置権は債権編に編入するのが正しい。第2に,留置権以外の担保物権については,それぞれの冒頭条文において,すべて,「他の債権者に先立って弁済を受ける権利」として定義されている[民法303条,342条,369条]。そこで規定されている「弁済を受ける権利」とはまさに,債権の定義そのものである。したがって,形式的な編別にこだわらず,個々の条文の意味を重視するならば,担保物権といわれているものは,債権の効力(債権の効力として誰もが認める掴取力が強化されたもの)であって,物権でないことが明らかとなる。そうだとすれば,いわゆる担保物権は,債権回収のための権利として,人的担保と物的担保とを合わせて規定するのが至当である。もともと旧民法はそのような編別を採用していたし,最近改正されたフランス民法典は,そのような編別を採用するに至っているのであって,現行民法の担保法の編別は,中途半端なものとなっている。
 さらに,担保物権といわれている権利の内容について,詳細に検討してみると,担保物権とされる物権の第三者対抗要件は,そのほとんどが,物権編総則の規定[民法177条,178条]に従っていない(留置権,先取特権,質権ばかりでなく,物権の対抗要件に従っていると考えられてきた抵当権においても,その処分については,債権譲渡の対抗要件が準用されている[民法377条])。そうだとすると,物的担保を物権として規定した意味(担保物権への物権法総則の適用)は,そのほとんどが失われている。
(3)物的担保に関する新たな解釈
 このように見てくると,いわゆる担保物権については,第1に,物権という編別を重視して,「弁済を受ける権利」として規定された個々の条文の内容に目をつぶるという解釈方法を採用するか,第2に,それとは逆に,「弁済を受ける権利」として規定された個々の条文の内容を重視して,編別にはこだわらないという解釈を採用するかという2つの方法が選択可能であることがわかる。わが国の通説は,編別を重視して,第1の解釈方法を採用したわけであるが,その結果は,「担保物権の通有性」,担保物権の「対抗要件」など,担保物権の理論的中核となる問題について,ことごとく破綻をきたしているだけでなく,原則よりも例外ばかりが目立つという混乱状態に陥っている。さらには,現代社会において,最も重要な課題である抵当権と用益権との調整においても,具体的な妥当性を欠く結果に陥っている。
 そこで,本書では,形式にこだわって第1の解釈方法を採用したために完全な閉塞状態に陥っている従来の担保物権の考え方を捨て去り,第2の解釈方法を採用することを通じて,理論的にも一貫し,かつ,担保権と用益権との調和を実現できるような担保法の新しい解釈論を提唱している。
担保物権の通有性(結論の妥当性と債権の掴取力からの理論的な解明)
 担保物権に共通する性質のこと。担保物権を1つの概念として成り立たせるための必須の概念である(担保物権法の学問上の出発点)。
 意外に思われるかも知れないが,「担保物権」という言葉は,民法には存在しない。物的担保である留置権[民法295条〜302条],先取特権[民法303条〜341条],質権[民法342条〜368条],抵当権[民法369条〜398条の22]のそれぞれが,物権編に編入されていることから,これらの物的担保を担保物権と呼んでいるに過ぎない。したがって,担保物権という概念を維持するためには,それらの権利が,共通の性質を有していることを示さなければならない。このために,担保物権の「通有性」という概念が作り出され,すべての教科書がこれについて論じている。
 しかしながら,担保物権の通有性の具体的な内容である「優先弁済権」,「付従性・随伴性」,「不可分性」,「物上代位性」について検討してみると,それらは,すべて,「債権の掴取力」に関する性質であり,通説のように,債権とは別個独立に存在する物権の性質であると考えることは,以下に述べるように,理論的に不可能である。
 第1に,優先弁済権も,物を排他的に支配するという物権の性質から導かれるものではなく,債務が任意に弁済されない場合に,強制的に「弁済を受ける権利」として認められている債権の掴取力[民法414条]が,法律の規定により,強化されたものと理解すべきである。つまり,優先弁済権とは,法律の規定により保護されるべきとされた債権の性質に基づいて,または,当事者の合意と公示に基づいて,他の債権者に先立って弁済を受ける権利(債権の掴取力の強化)が認められているものに過ぎない。
 第2に,付従性,随伴性とは,債権の掴取力が債権と運命を共にするということである。もしも,物権が債権に優越する権利であり,債権者平等の原則に反して優先弁済権を有するのだというのであれば,そのような優越的な物権が,物権に劣後する債権に付従するというのは,矛盾である。
 第3に,不可分性[民法296条,305条,350条,372条]も,債権の掴取力が,債権の完全な弁済まで確保されていることを意味するものであって,物権の性質から導くことができるものではない。
 第4に,物上代位性は,目的物が移転,滅失すると同時に,それに代わる債権が発生した場合に,その債権に対して,優先弁済権を及ぼすという制度であり,まさに,債権の掴取力の拡張に過ぎない。もしも,担保物権が物権であるとするならば,目的物の滅失によって,物権は消滅するのが原則であり,かつ,物権であるはずの物上代位の目的物が無体物である債権であること(物上代位の実行は,債権執行である)は,物権の原則からも逸脱することになる(権利の上の物権は認められない)。したがって,物上代位は,債権者が有する債権者代位権と同じような性質を有する債権上の権利であり,優先権を有する担保権者に対して,担保債権者の第三債務者に対する債権執行についても,債権者の債権と債務者の債権との間に密接な関連がある場合(売却,賃貸,滅失・損傷に基づく債権)に限って,優先弁済権を与えたものと解するのが妥当である。
優先弁済権
 特定の債権者が,債務者または第三者の総財産,または,特定の財産から,他の債権者に先立って弁済を受ける権利のこと。
 優先弁済は,債権者平等の原則の例外であるから,法律が特に認めた場合にのみ認められる。
 優先弁済権が認められるのは,第1に,法律上当然に生じる優先弁済権として,民法上は,先取特権[民法303条以下]だけが認められているが,特に保護を与える必要のある債権について,特別法(例えば,[国税徴収法8条],[地方税法14条],[地方自治法231条の3第3項],[厚生年金法88条],[健康保険法182条など])によって優先弁済権が認められている。なお,先取特権と同じく法定担保権である留置権には,法律上の優先弁済権は与えられていないが,履行拒絶の抗弁権を通じて,事実上の優先弁済権が認められる。
 優先弁済権が認められるのは,第2に,当事者の意思とそれが適法に公示された場合であり,これを約定担保という。約定担保には,民法上は,質権[民法342条以下]および抵当権[民法369条以下]だけが規定されているが,その外にも,判例によって認められている譲渡担保(譲渡担保には,所有権留保が含まれる),仮登記担保法によって認められている仮登記担保がある。
優先弁済権の物権性(これまで物権性があるとされてきた理由とその否定)
(1)債権者平等の原則に反するから物権であるとの考え方とその破綻
 通説は,債権者平等の原則が存在することから,一部の債権者が他の債権者に優先するのは,それが債権ではなく,物権だからという説明をしている。しかし,租税債権のように,他の債権に優先する債権が存在することを否定することができない(租税債権は物との関係を全く欠いており,これを担保物権であると考える説は存在しない)。また,一般先取特権は,債務者の総財産を対象としており[民法306条],物権とされながら,物との結びつきが全くない上に,共益費用,雇用関係,葬式費用,日用品の供給という,債権(被担保債権)の性質のみによって優先弁済権が与えられている。このように,物との結びつきがなく,債権の性質によってのみ優先弁済権が与えられている一般先取特権が物権といえないことは明らかである(この点は,有力説も,債権の優先弁済権であり,債権者平等に対する例外であることを認めている)。
(2)第三者に対抗できる権利だから物権だという考え方とその破綻
 通説は,優先弁済権に関して,それが第三者に対抗できることから,債権ではなく,物権であると考えている。しかし,これも,単純すぎる誤りである。このことは,物権の代表である所有権でさえ,対抗要件を備えなければ,第三者に対抗できないこと[民法177条,178条],反対に,債権であっても,対抗要件を備えれば,第三者に対抗できること[民法467条以下,605条]を考えれば,簡単に理解することができる。担保物権の場合も,第三者に対抗できるのは,法律の規定によるか(法定担保),対抗要件を備えた場合か(約定担保)に限定される。しかも,担保物権に関する個々の規定を見てみると,担保物権の対抗要件は,そのほとんどが,物権の対抗要件[民法177条,178条]には従っていない。なぜなら,留置権は,動産,不動産を問わず,占有の継続であって物権法の総則の規定[民法177条,178条]に従っていない。先取特権は,そもそも,債権が存在するればよく,原則として,対抗要件を必要としないので,物権法の総則に反している。質権の場合も,動産質権の対抗要件は,引渡[民法178条]ではなく,占有の継続である[民法352条]。権利質に至っては,債権譲渡の対抗要件[民法467条]が適用されるとしている[民法364条]。不動産質については,抵当権の規定が適用され,対抗要件は,物権総則の対抗要件[民法177条]に従っているように見える。しかし,登記が対抗要件だから物権であると考えるのものは早計である。不動産賃貸借は債権であるが,その対抗要件は,登記であり,不動産に関して登記が対抗要件になっているからといって,物権であるとはいえないことは明らかである。むしろ,抵当権の最も重要な機能である優先弁済権の処分に関しては,民法377条において,物権の対抗要件ではなく,債権譲渡の対抗要件である民法467条が適用されている。このことから考えると,担保物権の対抗要件は,そのほとんどが物権の対抗要件の規定から逸脱しており,債権の優先権を確保するための対抗要件が,物権とは無関係に,独自に発展していると考える方が妥当であろう。
担保権の付従性(結論の妥当性とその理論的な解明)
 人的担保も,物的担保も,債権(被担保債権)が成立しなければ成立せず,債権が移転すれば,これに伴って移転し(随伴性),債権が消滅すれば,同時に消滅するというように,担保権が債権と運命をともにするという性質のこと。
 本書の立場によれば,物的担保も,人的担保と同様,債権の掴取力を拡張したものである。債権のほかに,「保証債務」という別の債務があるわけではないし,債権の他に,「担保物権」という別の物権が存在するわけではない。人的担保は,債権の掴取力が量的に拡張されたものであり,物的担保は,債権の掴取力質的に拡張され,債権の掴取力に優先権が付与されたものに過ぎない。したがって,債権が不成立,無効,消滅となった場合には,債権の掴取力は,人的担保,物的担保を含めて,すべて運命をともにする。これが,担保権の付従性という性質の意味(債権がなければ債権の掴取力もない)である。
 通説は,債権のほかに,保証という独立の債務が存在すると考えた上で,保証「債務」は付従性を有すると考える。また,通説は,債権のほかに,独立の担保「物権」という物権が存在すると考えた上で,担保物権は付従性を有すると考えている。しかし,保証債務とか担保物権とが,債権とは別に存在するというのは,通説の見解ではあるが,全くの幻想に過ぎない。確かに,通説は,保証債務も,担保物権も,債権(主たる債務,または,被担保債権)が成立しなかったり,成立しても無効となったり,消滅した場合には,それに応じて,担保物権も,それぞれ,成立せず,無効となり,消滅すると考えており,その結論は正しい(担保物権の付従性)。しかし,通説の考え方は,債権の他に独立の保証債務,独立の担保物権が存在するという前提から出発しながら,それらはすべて債権に従属するというのであるから,理論的に破綻している。
 保証は債務ではなく,唯一の債務(債務者が債権者に対して負う債務)について,保証人がそれを「肩代わりして履行する責任」を負うに過ぎない。だからこそ,債務が消滅すれば,保証責任も必然的に消滅するのである(保証の付従性の理論的意味づけ)。また,物的担保は,債権とは別の物権ではなく,債権の掴取力に優先権が付与されたものに過ぎない。だからこそ,債権の不成立,無効,消滅によって,その事実上または法律上の優先弁済権も運命をともにするのである(担保物権の付従性の理論的な意味づけ)。
追及効(追及権)
 担保の目的物が第三者に譲渡された場合にも,担保の効力が及ぶことをいう。
 必ずしもすべての物的担保に備わっているものではなく(例えば,民法333条は,先取特権について追及効を否定している),第三者対抗要件を備えたものに限定される。例えば,抵当権が設定された不動産が第三者に譲渡された場合でも,抵当権はその第三者に対しても効力を有する。その結果,第三者取得者は,物上保証人と同じように,抵当権の負担を甘受しなければならなくなる。
 債権は,その相対性の原則により,当事者以外の第三者には,効力が及ばないとされている。しかし,債権の場合でも,例外的に第三者に対して,その掴取力を及ぼすことができる,すなわち,追及できる場合がある。
 第1の例外は,債権者取消権である。債務者と第三者が債権者を害する目的で,債務者の財産を第三者に移転した場合には,債権者は,民法424条以下の規定に基づき,第三者である受益者,または,転得者に対して,債務者の財産が逸失していないかのように(責任移転の無効),強制執行を行うことができる。したがって,この場合には,悪意の受益者,または,転得者は,債権者に対して,物上保証人と同じような負担を負うことになる。
 第2の例外は,債権が対抗要件を備えた場合には,その効力を第三者に及ぼすことができる場合がある。民法605条は,不動産賃借権について,賃借権の登記をした場合には,目的物が譲渡された場合でも,譲受人に対して,賃借権を対抗できるとしている。
物上代位
 物的担保の目的物が売買,賃貸,滅失・損傷によって,債権者が目的物に対して追及できなくなる一方で,債務者がその目的物に関して,それに代わる債権(売買代金債権,賃料債権,損害賠償債権)を取得した場合に,それらの債権に対して,担保権者が優先弁済権を取得すること。
 このことは,先取特権について規定されているが[民法304条1項本文],質権,抵当権にも準用されている[民法350条,372条]。
 物的担保の「追及効」は,債務者以外の第三者に移転した目的物に対する物的担保の効力が及ぶかどうかを問題とするものであった。これに対して,「物上代位」は,目的物が第三者に移転され,債権者が目的物の追及が不可能または困難になったことを前提にして,債務者の財産に帰属している目的物に代わる債権(代金債権,賃料債権,損害賠償債権など)に対して優先弁済権を確保しようとするものである。このように,追及効と物上代位とは,第三者に移転した目的物に対する効力が保持できるかどうか,それとも,目的物の追及をあきらめて,目的物の代わりに債務者に帰属している債権に対して優先弁済権を及ぼすことができるかという点で相違がある。
 物上代位の行使に際しては,目的物が有体物から無体物である債権に変更されるため,目的となる債権が弁済,譲渡される前に,担保権者が差押えをし,債権執行手続きによって優先弁済権を確保する必要がある[民法304条1項ただし書き]。
 物上代位の法的性質については議論があるが,すでに述べたように,担保目的物に対する追及ができなくなった事由に関連して債務者が取得した債権(牽連性を有する債権)に対して,担保権者に優先弁済を受ける権利を与えたものと解することができる。物上代位の実行は,債権に対する担保権の実行手続きとして,民事執行法193条2項によって準用される民事執行法143条,145条に従って行われる。
留置権
 目的物を適法に占有する者が,その目的物に関して債権を有している場合に,その物について権限を持つ者(債務者,所有者等)から目的物の返還を求められた場合に,上記の債権の弁済を受けるまで,目的物の返還を拒絶することができる権利(返還拒絶の抗弁権)のこと。
 この引渡拒絶の抗弁権の行使を通じて,債権者は,誰に対しても,事実上の優先弁済権を取得できる。
 このように,留置権は,引渡拒絶の抗弁権であり,競売権などの「積極的な権利」としての側面は有していない。また,留置権には,法律上の優先弁済権は与えられていないため,物権として構成する必然性は全く存在していない。留置権は,目的物の占有の継続という対抗要件を通じて,第三者にも対抗できる引渡拒絶の抗弁権となっているが,物権法総則の規定[民法177条,178条]には全く従っていない(動産,不動産を問わず,その対抗要件は,占有の継続である)。ドイツでは,留置権は,給付拒絶の抗弁権として,債権法の分野に規定されているが[ドイツ民法273条],わが国においても,留置権は,引渡拒絶の抗弁権として,債権法の分野に位置づけられるべきものである。
先取特権
 先取特権は,民法303条の定義条文により,「債務者の財産について,他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける」権利として定義されている。「債権の弁済を受ける権利」とは,債権の定義に他ならず,決して,物権ではない。
 先取特権には,第1に,目的物が特定せず,債務者の全財産に対して,対抗要件を全く必要とせずに優先弁済権を有する「一般先取特権」,第2に,債務者の動産について,対抗要件を必要とせずに,優先弁済権を有する「動産先取特権」(その中には,実は,民法304条,民法314条2文のように,債権に対する先取特権(債権先取特権)が含まれている),第3に,債務者の不動産について,対抗要件を備えると,それに先立って対抗要件を備えている抵当権に対しても優先弁済権を主張できるという,物権法秩序からは説明のできない優先順位を有する「不動産先取特権」[民法339条]が含まれている。
 先取特権は,物権としては説明できない性質を数多く含んでいるが,それだからこそ,立法者が保護したいと考える債権者に対して,強力な優先権を与えることができる優れた制度である。特に,優先権の順位に関して,民法330条1項2文に規定されている「数人の保存者があるときは,後の保存者が前の保存者に優先する」という優先順位決定の法理は,まさに,物権法秩序とは正反対(時間的順序が逆)の法理(「遠因ではなく,直近の保存者を優先せよ」)が含まれている。先取特権を物権として見ていたのでは,このような優先順位に関する優れた法理を理解することは到底不可能である。
 物的担保の通有性の中で最も重要な機能は,優先弁済権である。したがって,物的担保を理解しようとすれば,優先弁済権そのものともいえる先取特権について理解することが何よりも大切である。
質権
 質権は,民法342条の定義条文により,「債権の担保として債務者又は第三者から受け取った物を占有し,かつ,その物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利」と定義されている。
 もっとも,この定義は,動産質[民法352条〜355条]および不動産質[356条〜361条]には妥当するが,権利質[民法362条〜368条]には必ずしも妥当しない。権利質の場合には,目的物を受け取ることは必ずしも必要ではないからである[民法363条,364条]。
 したがって,一般的にいえば,質権とは,「債務者から債権の弁済を受けるまで,債務者から目的物の使用・収益を奪うとともに,債務者が弁済をしない場合には,目的物から他の債権者に先立って弁済を受けることのできる権利」として定義するのが妥当である。いずれの定義によっても,「債権の弁済を受ける権利」とは,債権の定義に他ならず,決して,物権ではない。
 質権のうち,不動産質については,抵当権の規定が準用されるため[民法361条],対抗要件は登記であり,不動産物権変動に関する物権の総則と矛盾しない。しかし,その他の質権,すなわち,動産質と権利質については,それらの対抗要件は,それぞれ,占有の継続[民法352条]と債権譲渡の対抗要件[民法364条]であり,いずれも物権変動の対抗要件の規定には従っていない。
抵当権
 抵当権は,民法369条の定義条文により,「債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について,他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利」として定義されている。
 「債権の弁済を受ける権利」とは,債権の定義に他ならず,抵当権も,決して物権ではない。
 もっとも,抵当権の対抗要件は,登記であるため,不動産物権変動の対抗要件[民法177条]に従っているようにみえる。しかし,抵当権の処分,すなわち,抵当権の最も重要な要素である優先権の放棄や譲渡,順位の譲渡や順位の放棄の場合の対抗要件は,債権譲渡の対抗要件と同じであり[民法377条],必ずしも,物権変動の対抗要件に従っているわけでない。
 抵当権は,債務者から使用・収益権を奪うことなく,債権の回収を確保する制度であり,本来的には,理想的な物的担保である。しかし,現実の抵当権の運用は,債権者の保護に傾き過ぎており,残念なことに,債務者から使用・収益権を奪わないという抵当権のメリットを損うものとなっている。したがって,抵当権の解釈に際しては,抵当権といえども,債権の担保権に過ぎないこと,決して,用益権を害することができないことに留意した解釈を行うべきである。
 抵当権が債権に優先する物権として解釈されていることに基づく最大の弊害は,抵当権の登記に遅れて契約される借地権,借家権が抵当権に劣後すると考えられている点に集約される。借地借家法によって,売買でさえ,賃貸借を破ることができないことが明らかにされているにもかかわらず,その実行方法が競売という売買に基づいている抵当権が,賃貸借を破ると考えられており,その結果,通常の借家人が抵当権の実行によって追い出されている現状は,悲惨でさえある。
 抵当権は,債権の優先弁済権に過ぎず,たとえ,賃貸物件について,抵当権の登記が先になされていても,その物件を賃借した賃借人は,競売という売買からも保護されるべきである。後で登記をした不動産先取特権が先に登記した抵当権に優先することが認められているように[民法339条],さらには,抵当権に基づく賃料債権に対する物上代位と,賃借人の敷金返還債権に基づく相殺権とが対立した場合に,賃借人の敷金返還請求権に基づく賃料債権の相殺権(充当権)が先に登記を備えた抵当権に基づく物上代位に優先するように〈最一判平14・3・28民集56巻3号689頁〉,抵当権の設定登記に遅れて対抗要件を取得した賃借人[借地借家法10条,31条]も,先に登記した抵当権者に優先するという,本書が展開する解釈が認められなければ,賃借人の保護はありえない。本書において,抵当権を含めたすべての物的担保について,用益権を害さないような解釈論を展開できているのは,物的担保を債権に優先する物権ではなく,用益権を害しない範囲でのみ優先弁済権を有する債権に過ぎないとする考え方に基づいているからである。本書の最大の特色は,抵当権といえども,用益権を害することができないということを理論的に明らかにすることができる点にあるといえよう。
仮登記担保
 債務が任意に履行されない場合に備えて,当事者間で目的不動産でもって債務を代物弁済とすることを約し(停止条件付代物弁済契約,または,代物弁済予約),それを仮登記することによって第三者に対して優先順位を保全する物的担保のこと。
 不動産の担保制度に関しては,動産とは異なり,目的不動産に対する使用・収益権を奪わずに目的不動産を担保に供することができる抵当権という制度が民法によって認められている。しかし,不動産に抵当権を設定した場合には,その実行方法が,競売手続きに限定されている。競売手続きによる場合は,現状では,目的物の市場価格を正確に反映できず,それよりも低い価格でしか売却できないという弱点がある。そこで,実務では,目的物を市場価格で売却するさまざまな方法が考案されることになった。仮登記担保は,債務者が債務を任意に履行しない場合に,担保目的である不動産を代物弁済として債権者に目的物の所有権を帰属させ,債権者が目的物を市場で売却することを通じて,結果的に,債権の回収を図るという目的に奉仕するものである。
 しかし,停止条件付代物弁済,または,代物弁済予約の問題点は,債権者が債権額以上に値打ちのある不動産を担保目的物としながら,担保不動産を丸取りし,清算を行わないという行き過ぎた商慣習を生み出した点にある。
 これに対しては,まず,学説によって厳しい批判が行われ(米倉明「抵当不動産における代物弁済の予約」ジュリ281号(1963)68頁,椿寿夫『代物弁済予約の研究』有斐閣(1975)がその代表。学説の展開については,井熊長幸「仮登記担保」星野英一編『民法講座3』有斐閣(1984)241頁以下参照),これを受けた判例によって,債権者に清算が義務づけられ,優先弁済権の範囲が,清算によって被担保債権の範囲に限定されることになった〈最一判昭42・11・16民集21巻9号2430頁〉,〈最大判昭49・10・23民集28巻7号1473頁〉。
 このような学説・判例の動向を踏まえて,1978(昭和53)年に,仮登記担保契約に関する法律(仮登記担保法)が制定され,代物弁済として債権者に所有権の移転が認められる前提として,清算額を適正にするたけの利害関係者への通知の義務づけ[仮登記担保法2条,5条],清算金に対する後順位担保権者の物上代位権の付与[仮登記担保法4条],清算金が支払われるまでの債務者の受戻権の確保[仮登記担保法11条],清算金が適正でない場合の抵当権への移行[仮登記担保法12条]等を骨子とする仮登記担保制度が確立した。
 仮登記担保の債権者は,仮登記担保を実行しようと思えば,目的不動産の価値を評価し,債権額との差額である清算額を見積もって債務者および利害関係人に通知しなければならず,その清算金を支払うまでは,目的物の所有権を取得することができない[仮登記担保法2条1項]。適正な清算をするためのやむをえな措置とはいえ,目的物を処分する前に精算金を支払わなければならないことは,債権者にとって大きな負担となる。このため,仮登記担保は,債権者にとって旨味がなくなっただけでなく,むしろ,利用しにくいものとなってしまった。その結果として,仮登記担保法の施行以後,停止条件付代物弁済,または,代物弁済予約の利用が激減し,ほとんど使われない状態となっている。
 学説・判例を集大成する形で成立した仮登記担保法の出現によって,仮登記担保自体が余り利用されなくなってしまったことは皮肉な結果である。このような結果となった原因としては,仮登記担保法が,代物弁済の方形式を尊重して,清算方式を「帰属清算」方式のみを認め,市場で処分して,売却代金から清算するという方法「処分清算方式」を否定した点にあると思われる。最初に述べたように,物的担保とは,どのような法形式が利用されようとも,目的物の所有権は債権者に移転せず,債務者に債務不履行が生じた場合にのみ,債権者は目的物を処分・換価することができ,換価代金から優先的に債権の弁済を受けることのできる権利であるという基本に立ち返る必要があると思われる。
 仮登記担保が利用されなくなったこともあり,現在では,仮登記担保に代わって,処分清算方式が認められる不動産「譲渡担保」が,広く利用されるに至っている。
譲渡担保
 民法の規定に不備があるために,実務が考え出し,それが,判例を通じて認められるに至った物的担保のこと。
 譲渡担保の隆盛をもたらす原因となった物的担保に関する民法の不備は,以下の3点に及ぶ。
 第1点は,動産について,債務者から使用・収益権を奪うことになる質権のみが用意され,債務者から使用・収益権を奪うことなく担保に供することのできる制度(動産抵当)を欠いていることである。このため,債務者から目的動産の使用・収益を奪うことなく,動産を担保に供することができる動産「譲渡担保」(いわゆる動産抵当)が発達することになった。
 第2点は,民法は,動産担保(動産質)については,競売によらないで,市場価格で評価して弁済に当てるという,簡易の実行方法([民法354条],[非訟事件手続法83条の2,89条])を規定しているにもかかわらず,不動産担保(不動産質,抵当権)については,目的物を市場価格で評価して(市場で処分して)清算するという担保権の実行手続きを認めていないことである。確かに,民法は,動産の場合とは異なり,不動産については,債務者から使用・収益権を奪わずに不動産を担保に供する「抵当権」という優れた制度を有している。しかし,抵当権の唯一の弱点は,その実行方法が競売手続きに限定されており,競売手続きの改善にもかかわらず,不動産競売によっては,市場価格よりも低い価格でしか売却できないというのが現実である。このため,実務では,競売によらずに担保権の実行ができる「仮登記担保」(代物弁済予約を仮登記するという方法)が発達することになった。もっとも,この制度が立法化されるに際して,立法者は,担保目的物の所有権を債権者が取得して清算を行うという「帰属清算」のみを認め(仮登記担保法2条],目的物を債権者市場で処分(売却)して清算を行うという「処分清算」を認めなかった。これが原因となって,仮登記担保は余り利用されておらず,現在においても,「処分清算」が認められる不動産「譲渡担保」が広く行われている。
 第3点は,債権(財産権)担保については,民法は権利質を認めているが[民法362条以下],質権は,債務者から債権の使用・収益権を奪うことになる。そのため,特に,将来債権や集合債権を担保に供する場合に,その弱点が露呈する。集合債権を担保に供する場合には,通常の状態では,債務者に債権の処分を認めておき,債務者が債務を履行しなくなった段階で,かつ,担保権設定の時点の順位で集合債権に対して優先弁済権を確保する必要がある。債権質では,このようなこと(債務者に処分権限を留保させること)を実現することができないため,集合債権「譲渡担保」が広く行われているのである。
 以上のように,民法は,債務者から使用・収益を奪わずに目的物を担保に供することができ,しかも,その実行方法について競売によらずに市場で処分し,清算することができる制度を用意していない。そこで,目的物に譲渡担保を設定する形式としては,目的は担保であるにもかかわらず,目的物を売買する(譲渡する)という通謀虚偽表示[民法94条]によって行う方法が広く利用されるようになったのである。
 以上の理由から,譲渡担保は,すべて,通謀虚偽表示であって,目的物の所有権等の移転は無効である(譲渡担保の担保的構成)。しかし,そうだからといって担保権の設定が無効となるわけではない。民法94条の適切な解釈によれば,結果は,むしろ,逆である(〈大判大3・11・2民録20輯865頁〉,〈大判大8・7・9民録25輯1373頁〉)。なぜなら,譲渡担保に基づく担保権の設定は,当事者間では,所有権の移転の外形が否定され,真意である担保権の設定が効力を生じるからである[民法94条1項]。ただし,譲渡担保の外形である所有権の移転を善意・無過失で信頼した第三者には,外形である所有権の移転が効力を生じ,当事者は,その第三者には担保権の設定であることを対抗できなくなる[民法94条2項]。第三者に対して,当事者が担保権であることを対抗するためには,適切な公示(明認方法等)または通知が要求されるのである。
 このようにして設定された譲渡担保の実行方法については,目的物の種類を問わず,簡易な実行方法として,処分清算方式が認められるべきである〈最一判平14・9・12判時1801号72頁,判タ1106号81頁〉。そして,債権者の清算義務を確保するために,動産質に関しては,質権の簡易の実行手続き[民法354条]が準用されることになる。また,債権譲渡担保については,債権質の直接取り立ての規定[民法366条]が準用されることになる。さらに,不動産譲渡担保については,清算額が適正でない場合に限ってであるが,仮登記担保法12条以下の規定等が類推適用されるべきであり,そのことを通じて,適正な清算が確保されることになると思われる。
 将来,譲渡担保に関する立法を行う場合には,公示の方法についての改善策と,処分清算を認めつつ,適切な清算を確保する方法についての規定を用意すべきであろう。

事項索引


悪意の抗弁

一物一権主義

異時配当

イソップ物語

 北風と太陽

 牡鹿と猟師

一括競売

一般先取特権

 共益費用の−

 葬式費用の−

 日用品供給の−

 雇用関係の−

違約金

受戻権

 −の効用

 −嘘のデパート

 大きな−

 小さな−

売渡担保

運輸の先取特権

営業質

 担保制度の−座

大人の学問

恩給担保

確定請求

掴取力

 −の定義

 −の質的拡張

 −の量的拡張

価値権

かわい過ぎる犬(留置犬)

かわいそうな犬(留置犬)

元本確定期日

企業担保

北風と太陽

旧民法

 −債権担保編

共益費用の先取特権

強制競売

強制執行

共同抵当

 −における後順位抵当権者

 −における第三取得者の代位権

 −における物上保証人

 −における割付主義

共同根抵当

共有根抵当

極度額

近代抵当権の特質

区分所有

競売

 強制−

 任意−(廃止)

競売開始決定

競売権

 留置権に基づく−

競売法(廃止)

減額請求権

権利質

権力は腐敗する

牽連性

 先取特権における−

 敷金と賃料債権との間の−

 相殺における−

 優先弁済権の正当化の根拠としての−

 留置権における−

公示の原則

後順位抵当権者

 順位上昇の原則と−

 共同抵当における−

工場抵当

更生担保権

公吏保証金の先取特権(廃止)

国税徴収法

債権質

債権者代位権

債権者平等の原則

債権担保

 −法

 −編

債権と物権との違い

債権の掴取力

財団抵当

債務

債務のない責任

詐害行為取消権

先取特権

 −の順位

 −の物上代位

差押え

 −の効力

 物上代位における−

更地上の抵当権

敷金

 −の性質

 −と相殺

 −返還請求権

自己借地権

質入れ

 −裏書

質権

 −の留置的効力

 −の優先弁済的効力

自動車損害賠償請求権

自動車抵当

指名債権

集合債権の譲渡担保

集合動産の譲渡担保

従たる権利

従物

種苗または肥料供給の先取特権

順位確定の原則

順位決定のルール

順位昇進の原則

順位の譲渡

順位の放棄

準共有

商業信用状

承諾転質

譲渡担保

 −と帰属清算

 −と処分清算

 −と嘘の効用

 −の所有権移転的構成

 −の担保的構成

 −の物上代位性

 後順位−

 債権−

 集合債権−

 集合動産−

 動産−

 不動産−

女王

 担保の−

 担保物権の−

所有権移転構成

所有権移転型担保

人的担保

随伴性

 先取特権の−

 質権の−

 抵当権の−

 根抵当権の−

 留置権の−

請求異議の訴え

清算方式

 帰属型−

 処分型−

清濁合わせて飲む

責任

 有限−

 無限−

責任転質

責任説

責任のない債務

占有訴権

増価競売(廃止)

相殺

 −の担保的機能

造作買取請求権

葬式費用の先取特権

訴権説

租税債権

その物に関して生じた債権

代位

 392条2項−

 500条−

代位権

 債権者−

 物上−

代位弁済

代価弁済

第三取得者

大は小を兼ねる(根抵当の登記は,普通抵当の登記を兼ねる)

代物弁済の予約

短期賃貸借(廃止)

担保

 −物権

 瑕疵−

担保物権

 −の効力

 −の通有性

 −の法的性質

直接訴権

賃借権

 抵当権は対抗力を有する−を破らず

 売買は−を破らず

賃借人の保護

賃料債権に対する物上代位

追及効

角を矯めて牛を殺す

停止条件付代物弁済

抵当権

 −と用益権の調和

 −に基づく物上代位

 −の一般財産に対する執行

 −の効力の及ぶ範囲

 −の消滅時効

 −の実行

 −の順位の譲渡

 −の順位の放棄

 −の譲渡

 −の処分

 −の消滅

 −の侵害

 −の随伴性

 −の付従性

 −の登記

 −の物上代位

 −の放棄

抵当権消滅請求

抵当直流れ

抵当証券

抵当不動産

滌除→抵当権消滅請求

典型担保

典型契約

転質

 承諾−

 責任ー

転抵当

ドイツ民法

動産質

動産抵当

動産先取特権

 運輸の−

 公吏保証金の−(廃止)

 種苗または肥料供給の−

 動産売買の−

 農・工業労務の−

 不動産賃貸の−

 旅館宿泊の−

流れ抵当

荷為替手形

憎たらしい犬(留置犬)

肉を切らせて骨を絶つ

日用品供給の先取特権

任意競売(廃止)

盗人を捕らえて縄をなう

根質

根抵当

後の保存者が前の保存者に優先する

 果実における−

 譲渡担保と動産先取特権における−

 抵当権と不動産先取特権における−

 動産先取特権における−

 物上代位における−

 不動産先取特権における−

ノブレス・オブリージュ(Noblesse oblige)

 敷金を得た賃貸人(動産先取特権者)の−

 抵当権者の一般債権者に対する−

 物上代位権者の−

売却決定

配当

 −請求

 −表

被担保債権

非典型担保

非典型契約

付加物

付合物

不可分性

付従性

負担部分

普通抵当

物上代位

物上保証人

物的担保

不動産

 −工事の先取特権

 −売買の先取特権

 −保存の先取特権

不動産先取特権

不動産質

浮動担保

フランス民法典

併用型賃貸借

別除権

防衛的賃貸借

法科大学院

包括根抵当

法定担保権

法定借地権

法定地上権

保証

 継続的−

 物上−

 根−

 連帯− 

保証部分

増担保請求権(旧民法債権担保編201条2項,3項)

街金

廻り手形

未払賃料

無記名債権

無限責任

無体財産権

無体物

免除

 −の絶対効

 債務の−

 連帯の−

黙示の質(gage tacite)

黙示の抵当権(hypotheca tactica)

黙示の動産抵当

約定担保権

優越的地位の濫用

有限責任

優先権保全説

優先順位決定

 −のルール

優先弁済権

 −の定義

 −の物権性(否定)

有体物

要件事実

予約

 代物弁済の−

濫用

 相殺権の−

 優越的地位の−

履行強制

流質

留置権

留置犬

留置的効力

立木抵当

旅館宿泊の先取特権

累積的共同根抵当

連帯債務

連帯の免除

連帯部分

連帯保証

論理矛盾

割付主義


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