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作成:2018年1月1日
名古屋大学名誉教授・明治学院大学名誉教授 加賀山 茂
2018年のホームページの更新記録を兼ねた,私の教育・研究・生活の日誌です。
私が,日々,どこで,何を考え,何をしたのかを記録しております。
ただし,個人名(公刊物の著者名等を除く)を含めて,プライバシーに関することは記録していません。
2017年の総括を踏まえて,以下のように,2018年の目標を設定しました。このページの最後に記録されることになる「2018年の総括」,および,「2018年の業績」において,この「2018年の目標」が達成されたか否かが検証されることになります。
高い目標を立てると,それを実現することは至難の業ですが,人間は安きにつきやすく,面倒くさいことを嫌う傾向にあるため,明確で高い目標を立てておかないと,業績を上げることができないのも世の常です。
確かに,夢を見れば,その実現のために辛いことや,面倒なことが多くなりますが,夢を見ずにいられないのも人間なのですから(中島みゆき,”May
be"),そこは割り切って,自分のできる限りの高くて明確な目標を設定し,その目標を達成するために日々努力を重ねることしか,充実した人生を送る方法はないのかもしれません。
- 自身の自立
- 自立支援のためのボランティア無料塾「寺子屋ひじ塾」の4月開設に向けて,経理(財務諸表の作成,給与計算,税務計算)の仕事がひとりでできるように,Excelと会計ソフトをマスターする。
- 学問への貢献
- 民法学への貢献
- 『法律学の森 事務管理・不当利得』信山社(2018)の執筆を行い,刊行する。
- 『法律学の森 不法行為』信山社(2019)の執筆を始める。
- 『末川民事法研究』第2号(電子出版)の編集・査読を行い,刊行する。
- フランス民法典の改正状況のフォローと翻訳とそのチェックを行う。
- 消費者法への貢献
- 『現代消費者法入門』民事法研究会(2018)の執筆と編集を行い,刊行する。
- 法情報学への貢献
- 著作権法の基本書・判例集を読みこなし,著作権法と民法学との橋渡しのための構想をまとめる。
- 法と経営への貢献
- 『法と経営研究』〔第2号〕信山社(2018)の編集・査読を行い,刊行する。
- 社会への貢献
- 地方創生に役立つ自立支援のための「寺子屋ひじ塾」の開業と運用
- 教材費用,授業料,飲食費,すべて無料(すべて塾負担,収入ゼロ)の「寺子屋ひじ塾」を開設し,別府税務署に個人事業の開業届書を提出する。塾運用の資金は,すべて私の年金以外の収入(28万円/月)でもって賄う。
- 開業初年度の「寺子屋ひじ塾」では,1週間に2日(火曜日,木曜日の午後6時~8時)の夜間コース(4回/月),または,月に2回(第1,第3土曜日・日曜日の午後1時~5時)の休日コースのいずれかを開設し,塾生は,いずれかのコースを受講できるようにする(夏休み,冬休み,春休みは,初等教育機関と同様とする)。
- 初年度の塾生募集は,年齢・性別を問わず,高校を中退したり,大学進学を断念したりしたが,再チャレンジを希望する日出町,および,その周辺の平均収入20万円前後の住民を対象とし,採否は,筆記・面接試験で行う。採用を決定した塾生には,返還不要の奨学金(受講1回に付き5,000円,または,4万円/月)を振込みで支給する。
- 入塾適格者がいる場合には,いっしょに高校卒業認定資格試験とか,再就職に有利な資格試験とかの学習を行いながら,塾生がどこで躓いたのかを発見し,その時点に遡って,再学修を行い,資格試験の合格のため学習を支援(アクティブラーニングのコーチング)を行う。塾生の脱退は自由で,追加募集は次年度まで行わない。
- 入塾適格者がいない場合には,次年度に備え,私自身が,高校卒業認定資格試験とか,再就職に有利な資格試験とかの学習を行い,次年度の塾生(2名)の入塾に備える。
- 塾生が高校卒業資格認定試験に合格した場合には,その中から,希望する2名を塾のボランティアのアシスタントとして採用し,塾生の対象を現役の小学・中学・高校生へと拡大すること(最大で6名)をめざす。ただし,収入ゼロの社会貢献であるため,塾生が2名を超える条件は,OB,篤志家からの寄付が年間で336万円を超えて得られるめどが立ったときからである。
- インターネット社会への貢献
- 金融取引の電子化に協力し,現金の利用を極限にまで減少させる。 少なくとも,法外な通貨発行益(seignorage)を生じさせている紙幣は利用しない。
- 法教育の普及
- 法教育の普及のための絵本の原稿を執筆し,絵本作家の協力を得て,幼児のための法教育の絵本を出版する準備(本文の執筆)を行う。
- 法教育の目標を「憲法79条2項の最高裁判所の裁判官の国民審査の実質化」とし,すべての市民が,最高裁判所の判決を読んで理解し,裁判官としての適否を判断できるレベルにまで到達するよう,法教育の内容と方法を研究する。
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雲の切れ目からの初日の出
2018年1月1日 |
2018年1月1日(日) 曇りのち晴れ。
- 新年おめでとうございます。昨年の初日の出は,地平線から上がるのが見えましたが,今年は,雲の切れ目からの初日の出でした。
- 年頭に当たり,昨年の総括を踏まえて,このページの最初に今年の目標を記載しておきました。この目標を実現すべく,これからも,毎日,更新記録,および,教育・研究・生活日誌を記録していきますので,本年もよろしくお願いします。
- 昨年に引き続き,小泉=田村=駒田=上野編『著作権判例百選』〔第5版〕有斐閣(2016/12/13)を読み続けています(第6日目)。第24事件(データベースの著作物性)~第29事件(著作者の認定)へと読み進めています。
- 著作権に関する判例を読み進めていくと,多様な著作物(著作権法第10条(著作物の例示)参照)について,著作権を認めるべきか認めるべきでないかの基準がなかなか定まらない様子が見て取れます。
- その理由は,著作権が,公益性(人類文化の発展への寄与)と違法性(自由競争を阻害する競争制限)という二つの矛盾する性質を併せ持っており,著作権侵害について,多くの違法性阻却事由(著作権法第30条~50条)を認めざるを得ないからだと思われます。すなわち,著作物は,公開され,一般大衆がそれを利用するならば,人類の文化の発展に寄与するという性質を持つとともに,経済法的には,独占禁止法が禁止する競争制限に該当する(独禁法違反)という性質を併せ持っているのです。
- 経済法の観点からは,著作権は,本来は,独禁法に違反する競争制限の性質を有していることに留意しなければなりません。ただし,著作物の公益への寄与を考慮して,例外的に,著作者が費やした投下資本の回収を保護するため,一定期間に限って,著作者に著作権料を独占的に支配することが,独禁法の例外的な適用除外として許されているのです(独禁法第21条)。
- 人類文化の発展という観点からは,著作物は,一定期間の経過の後に,パブリックドメインという人類の共有財産となって,誰でもが,無料で,かつ,自由に利用できることが本来的に予定されています。したがって,著作物を利用するのは,本来的に適法行為であり,一定期間内においてのみ,著作権料を支払うことが義務づけられており,それに違反した場合が違法行為(不公正な利用)となるに過ぎません。
- 著作物は,将来的には,人類の共有財産として自由に無料使用ができるのですから,著作権法違反のサンクション(制裁)は,利用制限ではなく,利用料の支払(強制徴収,または,罰金,悪質な場合は課徴金)に限定すべきであることがわかります。したがって,著作権法が,著作物の利用の差止請求(著作権法第112条)を認めていることは,そもそも,著作権が,著作物の利用を促進することによって「文化の発展に寄与することを目的とする」(著作権法第1条)と規定していることと矛盾していることに気づくべきです。
- 本来,独禁法違反としての性質(著作物の利用の排他的支配)を有する著作権法は,著作物の利用が人類文化の発展に寄与することを考慮して,独禁法の適用除外(独禁法第21条)とされているだけなのですから,著作物の利用を差し止めることは,そもそもの制度趣旨に反し,権利の濫用として禁止すべきでした(この点で,著作権法第112条は,制限的な改正がなされるべきでしょう)。著作物の利用は,一定期間内であれ,一定期間経過後であれ,常に促進されるべきであり,制限されるべきではありません。禁止されるのは,一定期間内に,著作権料を支払わずに利用する行為であり,そのサンクションは,著作権料の前払い(著作物の再現装置への課税),違反者に対する著作権料の強制執行,違反者に対する罰金(著作権料の強制徴収,悪質な場合の課徴金の徴収)に限定されるべきです。
- 視点を変えれば,著作権法違反の件数が多いということは,むしろ,その著作物が,広く利用される価値を持った人類の文化の発展に多くの寄与をしていることの証明であると考えることができます。したがって,著作権違反の多い著作物については,その著作物の価値を高く評価し,公益の観点から,公的機関による著作権の徴収代行制度,課徴金の著作者への還元制度を創設するなど,著作権料の徴収を支援すべきであると考えるべきでしょう。
- このように考えると,著作権法違反に対して,差止請求を求める訴訟は,そもそも,著作権法の制度趣旨をはき違えた濫訴であり,その請求は,すべて棄却すべきであり,著作権料の支払についてのみ,請求を認めるという判断を下せばよいことになります。その上でなら,創作的な表現としての著作物について,広く著作権を認めることが許されることになると思います。
- つまり,「著作権の要件は,多様な著作物に即して緩和するように解釈すべし。これに対して,著作権の効果は,差止請求の禁止などのように制限的に解釈すべし。」
これが,現段階での私の感想です。著作権法の具体的な改革案は,基本的な文献を読みながら,徐々にまとめていくことにしたいと思います。
- (HP訪問者の延べ人数:14,580人)
- 2018年1月2日(火) 晴れ。
- 昨年に引き続き,小泉=田村=駒田=上野編『著作権判例百選』〔第5版〕有斐閣(2016/12/13)を読み続けています(第7日目)。第30事件(共同著作物の認定と結合著作物,集合著作物との区別)~第36事件(職務著作)へと読み進めています。
- 職務著作について,著作権法第15条1項は,「法人等が自己の著作の名義の下に公表するもの」として,著作物の公表を前提としています。それなのに,この「公表するもの」の意味は,実際に公表していないばかりか,「公表は予定されていないが〔筆者注:本件では機密事項とされていた〕,仮に公表されるとすれば法人等の名義で公表されるものもの含まれると解される」(東京高判昭60・12・4判時1190号143頁)とされているのを知って驚きました。
- 著作権が保護されるのは,それが公表されることを通じて,人類の文化の発展に寄与するからでしょう。機密事項として,公表の予定がないものについてまで,「仮に公表されるとすれば」などという論理を使って,秘密主義の法人を,著作権法を使って保護する必要があるのでしょうか? また,「公表が予定されていない著作物」を,「仮に公表されるとすれば」と考えて保護するというのは,論理矛盾であることに,著作権法の専門家たちは気づかないのでしょうか?
- 職務著作に関する著作権法の判例や学説の解釈は,僭越ながら,本来の趣旨ではなく,条文の個々の文言についての立法趣旨(常に,潮海久雄『職務著作制度の基礎理論』東京大学出版会
(2005/04)が引用される)にこだわるという,いわゆる権威主義に犯されているように感じました。
- 仕事始めとして,『末川民事法研究』〔第2号・中川淳先生追悼記念〕の査読を開始します(第1日目)。末川民事法研究会における判例研究が,法律時報に掲載されていた頃は,紙面の都合で,事案を図解することは困難でした(もっとも,私自身は,判例時法条においても,あえて,すべての判例研究について,事案の図解を実行してきました)が,電子出版となった現在においては,そのような紙面上の制約はなくなったのですから,事案を図解することができます。そこで,査読においては,査読通過の条件ではないものの,事案の理解を重視する立場から,また,読者の理解を深めるという読者本位の立場から,事案の図解をするよう提言してみました。
- (HP訪問者の延べ人数:14,595人)
- 2018年1月3日(水) 曇りのち晴れ。
- 昨年に引き続き,小泉=田村=駒田=上野編『著作権判例百選』〔第5版〕有斐閣(2016/12/13)を読み続けています(第8日目)。第37事件(映画の著作物の著作者)~第42事件(氏名表示権と公正な慣行)へと読み進めています。
- 著作者の権利には,著作権(著作者財産権)の外に,「著作者人格権」という特別の権利が存在します(著作権法17条~20条)。これまで,私は,この著作者人格権という権利に対して,何の不思議も感じなかったのですが,今回,著作権の判例を読み進めていくうちに,「知的財産権の中で,特許権などの他の知的財産権には存在しない人格権が,著作権にだけ存在するのはなぜなのだろうか」という疑問が湧いてきました。
- 著作権法は民法の特別法としての性質を有していますが,それとの対比で,同じく民法の特別法とされてきた商法の現状を振り返ってみましょう。商法は,市民法の特別法である商人法として隆盛を誇ってきたのですが,インターネット社会において市民が手軽に商売ができるようになると,商人だけを特別扱いする必要がなくなってしまい,商法典からは,会社法,保険法が独立し,さらには,海商法も抜け落ちることになり,今や商法典は,「総則」と「商行為」だけという哀れな姿へと変容しつつあります。そればかりでなく,インターネットが進展した現代においては,商法典に唯一残されるはずの「商行為」も,今や,それを特別扱いする必要性がなくなっており,最終的には,「商法典」自体が,すべて市民の基本法である民法(契約法)に吸収される運命にあるといえるように思われます(民商法統一の実現)。
- このように考えると,誰もがパソコンやスマホ等を使って,気軽に著作権者となりうるインターネット社会においては,著作権法が,他の知的財産とは異なり,市民の人格権とは別に,著作者だけに特別の人格権(著作者人格権)を与えているのは,「時代遅れの差別」ではないかとの疑問を提起せざるをえません。
- 具体的には,著作者人格権の中の公表権(著作権法18条)ですが,著作者にこのような特別の人格権を与えなくても,著作者に無断で勝手に著作物が公表されたとしたら,それは,民法の不法行為法(プライバシー権侵害)とか,不正競争防止法とか,場合によっては,刑法によって対応が可能であり,著作者だけに特別の人格権を付与しなければならない意味が理解できません。氏名表示権(著作権法19条)についても,それは,人物の特定に必要な通常の問題であって,著作者だけに必要とされるものとも思えません。同一性保持権(著作権法20条)についても,市民の権利の範囲内の問題であって,著作者だけに与える必要があるのか疑問です。
- 知的財産権の中で著作権だけが,「著作者人格権」という特別の人格権を与えていることは,著作権が人類の文化の発展に寄与するどころか,公表もしない著作物の著作者が不当に保護されたり,著作物を批判する表現の自由,パロディの自由を奪ったりしており,市民平等の傾向に逆行することになる「特権的身分」を著作者に与えているように思われます。過激すぎる考えかもしれませんが,著作者の権利は,市民の誰もが持つ一般的な人格権と著作権(著作者財産権)だけで十分であり,著作者に特権的身分を与えるに等しい,特別の人格権(著作者人格権)を付与する必要は存在しないのではないのか,そんな疑問を持ちつつ,著作者人格権の判例を読み進めています。
- 『末川民事法研究』〔第2号・中川淳先生追悼記念〕の査読を続けています(第2日目)。判例研究においては,判例の対象とされている事実と,判例が依拠している根拠条文(憲法76条3項参照)との関係が明確でない場合には,当該条文の全体における位置づけから始めて,当該事実に当てはめられている条文の意味を確定する作業を行う必要があります。その作業が欠落している場合には,査読を通過することはできないでしょう。
- (HP訪問者の延べ人数:14,610人)
- 2018年1月4日(木) 晴れのち曇り。
- 昨年に引き続き,小泉=田村=駒田=上野編『著作権判例百選』〔第5版〕有斐閣(2016/12/13)を読み続けています(第9日目)。第43事件(同一性保持権)~第48事件(名誉声望を害する利用)へと読み進めています。
- 昨日も言及したことなのですが,インターネット社会においては,すべての人が,パソコンやスマホ等を使って簡単に著作物を作成し,かつ,その著作物を簡単に公表することができようになっています。そのような情報化の進展した社会の中では,著作権は,もはや特別の権利ではなく,すべての市民が享受すべき一般法上の権利として位置づけられるべきではないかというのが,私の問題提起です。つまり,著作権法で確立された権利は,著作者の特権(特に,著作者人格権という特権)としてではなく,すべての市民が享受すべき民法上の権利へと進化させていく必要があるのではないかというのが,現在の私の考えです。
- そういう問題意識に立って,著作者の権利という「特権(著作者人格権,および,著作者財産権(著作権)」を,民法上の「通常の権利(通常の人格権および財産権)」へと解消することはできないのだろうかという仮説,言い換えれば,民法の財産権の中に,著作権を取り込む改正を行うことによって,著作権法を民法の中に吸収することができるのではないかという仮説を検討・検証しつつ,判例を読み進めていきます。
- もっとも,著作権は,私益だけでなく,公益(人類の文化の進展への寄与)として側面が大きいので,この点は,例えば,名誉権が民法上の人格権(民法723条)として特別に規定されていると同時に,刑法(230条~232条)においても,重要な法益として規定されているように,著作権についても,民法だけでなく,刑法(著作権侵害に対する罰則規定の新設),独禁法(著作権侵害に対する課徴金制度の新設),不正競争防止法(企業秘密との調整規定,または,企業秘密に関する規定の刑法への解消)においても,それぞれの観点から,公法においても,著作者の権利と義務についての規定を用意する必要があると思っています。
- このような私の考え方は,決して,著作権法に敵対しようとする考え方ではありません。すべての人が著作者となって,その著作物を簡単に公表できるようになったインターネットの社会においては,著作者の権利を市民の権利から分離させて特別扱いするのは,もはや,時代遅れの差別以外の何ものでもありません。したがって,繰り返しになりますが,そのような差別的な取り扱いを解消し,著作者の権利のうち,私権に関するもの(著作者人格権,著作権の私権部分)は民法へ,著作者人格権侵害の罰則については,刑法へ,そして,課徴金の制度等については,経済法の一般法である独禁法へと解消されるべきではないかというように,著作者の権利に関する規定を尊重しつつ,特別法から一般法へと昇華させようというのが,私の考え方なのです。
- 『末川民事法研究』〔第2号・中川淳先生追悼記念〕の査読を続けています(第3日目)。今日で,査読を終了するので,今回の査読の経験を活かして,査読の標準化を図るための審査基準を作成し,次回の編集委員会で提案することにします。
- (HP訪問者の延べ人数:14,630人)
- 2018年1月5日(金) 雨のち曇り。
- 明治学院大学消費者法研究会・社会人フォローアップ講座(2008)「滋賀県野洲市のくらし支えあい条例の1年間を検証する」に参加するため,上京します。
- 昨年に引き続き,小泉=田村=駒田=上野編『著作権判例百選』〔第5版〕有斐閣(2016/12/13)を読み続けています(第10日目)。第49事件(著作者死後の人格的利益)~第54事件(類似性-論文)へと読み進めています。
- 一昨日以来,インターネット社会においては,誰もが著作者となって著作物を公表できるのですから,市民の有する人格権とは別に,著作者だけに「著作者人格権」という特権を与えることは,不当で差別的な優遇措置であるとの考えを披露してきました。
- そして,今日は,まさに,その弊害の表れとして,著作者人格権の濫用とも思われる最高裁判決(最一判平17・7・14民集59巻6号1569頁(書籍の廃棄と著作者の人格的利益〔船橋市西図書館事件上告審判決〕)に出会いました。
- この事件は,市立図書館の司書が,著者〔新しい歴史教科書をつくる会〕等に対する否定的評価と反感から,同図書館の除籍基準に違反して,著者らの執筆または編集に係る書籍を含む合計107冊の蔵書を廃棄したため,著者らが,著作者人格権を侵害されたとして,国家賠償法1条1項,および,使用者責任(民法715条)に基づいて慰謝料請求をした事案です。
- 第一審,第二審とも,図書館で閲覧に供されることについてのXらの利益は,「当該図書館がたまたまその書籍を購入して閲覧に供することを決定したことによって生じた事実上の利益にすぎない」として,それを否定し,請求を棄却しました。次に述べるように,一般法の観点からは,この考え方が妥当だと思われます。
- ところが,最高裁は,以下のように判示して,原判決を破棄し,原審に差し戻しました。そして,差戻控訴審(東京高判平成17・11・24)は,著者らに,各自3,000円の慰謝料を認めています。
- 「著作者の思想の自由,表現の自由が憲法により保障された基本的人権であることにもかんがみると,公立図書館において,その著作物が閲覧に供されている著作者が有する上記利益は,法的保護に値する人格的利益であると解するのが相当であり,公立図書館の図書館職員である公務員が,図書の廃棄について,基本的な職務上の義務に反し,著作者又は著作物に対する独断的な評価や個人的な好みによって不公正な取扱いをしたときは,当該図書の著作者の上記人格的利益を侵害するものとして国家賠償法上違法となるというべきである。」
- この事件における判例百選の解説(窪田充見)は,「判決の射程」という構成を用いて,以下のように,上記の平成17年最高裁判決の論理の飛躍を徹底的に批判しています(〔 〕内は,私の補足です)。
- 〔1〕私人が,著作者に対する否定的評価から自己所有の書籍を廃棄しても,それが不法行為にならないのは当然である。〔私立の図書館の場合も同様である。〕それが他人所有の書籍であったとしても,ただちに著作者に対する不法行為となるわけではないだろう。
- 〔2〕そうだとすれば,公立図書館の場合だけ,なぜそうした名誉感情の侵害という不法行為責任が認められるのかが問題となる。
- 〔3〕不法行為法の一般理論に照らしてみたとき,本判決のあまりに概略的な説明,特に,思想・表現の自由という憲法上の基本的人権と損害賠償責任の成否を直結させる論理には,なお多くの課題が残されているといわざるを得ないだろう。
- 本件は,司書が加害者,図書館が被害者という不法行為・国賠事件であり,損害は,所有者である図書館にのみ発生していると考えるべきでしょう。そして,司書の違法行為に対する処分は,図書館の規定によってなされるべきであり,著者を含めた第三者は,器物損壊について刑事告発をするか,憲法15条1項(公務員を選定し,及びこれを罷免することは,国民固有の権利である。)に対応する法律を制定して,その手続きを進めるほかないと思われます。いずれにせよ,この事件は,著作者人格権という,著作者だけに与えられている特権によって解決すべき問題ではないと,私は考えます。
- このように,一般の図書館の蔵書の選定・廃棄について,何の権利も有しない著作権者が,蔵書が不当に廃棄されたからという理由で慰謝料請求が認められるというのは,一般法の考え方からは正当化できないのであって,最高裁が,あえて,これを正当化したのは,著作権法が特許権等の他の知的財産権には認められていない「著作者人格権」という,時代遅れの差別的な特権を認めていることの弊害といわざるを得ないように思われます。
- かかりつけの歯科医院に寄って,歯のクリーニングをしてもらいました。
- 『法と経営研究』の本年第1回の編集会議を開催しました。共同編集者がアジェンダを作成してくれたので,私が,それに沿って議事録を作成しました。その後,一緒に夕食を楽しみました。
- (HP訪問者の延べ人数:14,650人)
- 2018年1月6日(土) 晴れ。
- 昨年に引き続き,小泉=田村=駒田=上野編『著作権判例百選』〔第5版〕有斐閣(2016/12/13)を読み続けています(第11日目)。第55事件(類似性-書)~第60事件(類似性-ゲーム)へと読み進めています。
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NHK「きょうの料理」に
掲載された写真
〔スイカが太陽の光の賜物と感じられる〕 |
カタログへの掲載が
差し止められた写真
〔スイカの清涼感が強調されている〕 |
著作権判例百選〔第5版〕第56事件(東京高判平成13・6・21判時1765号96頁,判タ1087号247頁〔西瓜写真事件控訴審判決〕)を読んで,著作権法における著作者人格権は濫用されており,人類文化の発展という本来の趣旨を逸脱する非常に危険な状態に陥っているとの感を強くしました。
百選の解説(松田政行)は,この判決を「細心の判決」として,高く評価していますが,以下のような写真について,カタログへの掲載の差止請求を認める必要があるのでしょうか。 - 二つの写真は,裁判所Webページに公開されているものを縮小コピーしたものです(〔 〕内は,私が写真から受けた印象です)。
- 判決では,右側の写真が,左側の写真の著作者人格権(同一性保持権)を違法に侵害しているとして,その差止と損害賠償慰謝料100万円)が認められたのですが,差止を認める必要性はないのではないか,両方とも鑑賞できて,批評の対象とする方が,人類の文化の発展に寄与するのではないかと,私は考えました。
- 右側の写真は,左側の写真のアイディアを取り入れつつ,違ったセンスで創作的な表現形式を採用した著作物とも考えられるのであって,このような写真の公表を差し止めることは,1月3日以来,私がずっと批判し続けてきた著作者人格権という時代遅れの特権の弊害以外の何ものでもないと感じた次第です。
- 出版社に立ち寄って,昨日の『法と経営研究』の編集会議の模様を議事録に従って説明し,懸案事項の処理を行いました。出版社からは,早速作成していただいた『法と経営研究』創刊号の宣伝用のパンフレット(裏表一枚もの)をいただきました。
- 私が,最近,著作権法の学習を『著作権判例百選〔第5版〕』で開始しましたと報告すると,そこは,さすがに出版社です。「そうですか。著作権判例百選の第5版といえば,大渕〔哲也〕先生を編者から外したので,大渕先生が怒って出版の差止訴訟を起こされたんですよ」と教えてくれました。
- 早速インターネットで検索すると,東京地裁で出版差止の仮処分決定が出され,その後,知財高裁によってその仮処分が取り消されていることがわかりました(東京地決平28・4・7 裁判所Web,知財高決平28・11・11裁判所Web)。これで,来年度の著作権法の講義のレポート課題は決定されたも同然です。ワクワクしてきました。
- 明治学院大学消費者法研究会・社会人フォローアップ講座(2008)「滋賀県野洲市の『くらし支えあい条例』の1年間を検証する」に参加しました。
- 質疑応答時間に質問すべき内容(予定)…国の政策転換(消費者教育の推進に関する法律)としての「賢い消費者」から「自立する消費者」(論理破綻)への転換について,自治体の消費者行政に携わる方々の見定め方を問う(
実際の質問は,時間の関係で,この要旨のみ)。
- くらしの中には,消費生活だけでなく,収入と貯蓄の生活が存在します。特に,ワーキング・プアとか,格差社会の中で増加している貧困が問題となっている現在において,「くらし」にとって必要なのは,「賢い消費者(事業者ほど悪賢くなれない)」とか,「自立する消費者(消費だけでは自立できるわけがない)」という欺瞞的な消費者像ではなく,「自立する生活者」という生活者像であり,教育の目標も,「消費者」教育ではなく,「自立できる能力を育てる」教育へと舵を切っていくべきではないでしょうか。
- 消費者教育の推進に関する法律 第1条(目的)においては,「消費者が自らの利益の擁護及び増進のため自主的かつ合理的に行動することができるようその自立を支援する」ことの重要性が正当に規定されています。しかし,その実現の方法としての消費者教育の理念については,以下のように,「消費者市民(Consumer Citizenship)社会」という,意味不明の用語が用いられ,消費者像,消費生活,それに対する労働による収益活動,貯蓄や投資もする一般市民,市民生活,市民社会との関係について,混乱を生じさせています。
- 消費者教育の推進に関する法律 第3条第2項における「消費者市民社会」の意味不明。収益も消費も貯蓄も含めた「市民社会」とすべきでしょう。
-
消費者教育は,消費者が消費者市民社会を構成する一員として主体的に消費者市民社会の形成に参画し,その発展に寄与することができるよう,その育成を積極的に支援することを旨として行われなければならない。
- そうすると,消費者行政も,その名前を「自立支援行政」へと変更すべきではないでしょうか。そう考えてこそ,今日のテーマである「くらしの支え合い」というテーマについても,消費の側面だけでなく,収入の確保,貯蓄と収支のバランスなど,総合的な施策を講じることができるようになるのではないでしょうか。
- さらに,その先には,将来を担う若い世代に対して,自立できる能力を育てるには,何を学習してもらわなければならないのかを体系的に考えなければならないと思います。例えば,子どもたちが自立に至るためには,自分自身の生活の中で,小遣帳(現金出納帳)を記録させ,それを通じて,収支バランスを学ばせるとか,家計で家庭教師とかアルバイトを雇ってみて,自分が将来得ることになるであろう給与計算の仕組み,労働環境の整備,社会保険・税金の控除の仕組みなど,自立に必要な生きた知識を経験を積ませながら修得させるという,生活者教育のためのカリキュラムを作成し,学校教育においても,そのような自立のための教育を取り入れるように働きかける必要があるのではないでしょうか。
- パネリストの回答(要旨)
- 「自立」という言葉は,私は,あまり好きではありません。人間,一人では生きていけないのですから,自立よりも,支え合い,助け合うことが大切だと思います。
- むしろ,困ったときは助けてほしいと言える環境を作っていくことこそが,「自立」以上に大切なのではないでしょうか。そうすることによって,生活困窮者が生活保護を受ける一歩手前で救済することが可能となるのです。
- 私の感想
- 生活困窮者を税金等の滞納を契機に発見して,救済の手を差し伸べることにし,市のあらゆる部署が,困窮者の個人情報を共有しながら,様々な救済措置を探究しつつ,救済を図る方法を探究している姿には,頭が下がる思いがしました。この公開講座を主催している大学においても,今後は,先生方が専門分野を超えて,個々の学生の学力をアップするために個々の学生の成績等の情報を共有し,落ちこぼれないように協力をしていくことが必要になると感じました。
- しかし,「自立という言葉は好きではない」という言葉に端的に現れているように,パネリストである市の担当者たちの取り組み(「くらしの支え合い条例」の制定と運用)は,問題の根本的な解決からは程遠いと感じました。なぜなら,このような試みは,結局のところ,税金の滞納者を税金を使って救済しているだけだからです。
- もっと厳しい言葉でいえば,今回のパネリストたちの試みは,生活困窮に陥らせないための試みを放置しておきながら(「自立という言葉は嫌い」という言葉の裏返し),生活困窮に陥った税金の滞納者を税金を使って救済しているだけであり,生活困窮に陥らないための収支のバランスを保つための教育とか,生活の収支バランスを回復させるための起業の方法とか,真の自立を支援するという施策にはなっていないからです。
- 困った状況に対して,助けを求めることは大切です。このことを否定するつもりはありません。しかし,その前に,厳しい経済状況が続く中でも,市民が助けを求めずに済むようにするためには,市民が,どのような実践的な知識を身に着ける必要があるのか,起業の仕方を含めた教育,すなわち,自立支援教育を通じて学習させる必要があるのではないでしょうか。税金を滞納せざるを得ない状況に陥った市民を市の担当者が一丸となって税金を使って救済するというのは,問題解決のように見えて,その場しのぎの対症療法に過ぎず,本当の解決にはなっていないのではないでしょうか。
- 税金で生活している公務員は,税金を使って救済することに抵抗を感じないのかもしれませんが,支払った税金を,このような対症療法に使われる市民の立場からすれば,本当にこれでいいのか,このような施策の実行に「誇りをもって取り組んでいる」公務員を手放しで激励することがよいことなのか,大いに疑問を感じざるを得ませんでした。
- とにもかくにも,「自立という言葉は,私はあまり好きではありません」という言葉にはビックリし,日本の未来を暗示するようで,暗い気持ちになりました。若い人たちは,いつから,このような考え方を身に着けるようになったのでしょうか。
- 大学院で博士論文を執筆中の人会って,食事をしながら論文執筆の悩みを聞きました。
- 厳しい質問を畳みかけながら,その人がどこで躓いているのかを探究し,30分ほどで,どこに問題があるのかを明らかにすることができました。その上で,その人の先行研究に即した問題解決のヒントを与えることができました。
- そうすると,沈んでいた相手の顔が,一瞬にして輝きに変わる様子を見ることができました。直ちに,忘れないように,ノートに結論を書くように指示しました。そして,その人がノートをとる姿を見ながら,私も,先の公開講座で抱いていた暗い気持ちが希望に変化するのを感じることができました。「情は他人(ひと)のためならず」です。
- (HP訪問者の延べ人数:14,670人)
- 2018年1月7日(日) 晴れ。
- 明治学院大学消費者法研究会・社会人フォローアップ講座(2008)「滋賀県野洲市のくらし支えあい条例の1年間を検証する」への参加を終えて,帰郷しました。
- 帰りに,お花屋さんに行って新年のあいさつをし,久しぶりになっていたカラオケ店にも寄って,新年のあいさつをしました。今年も,地域とのかかわりを深めていくことにしたいと思います。
- 昨年に引き続き,小泉=田村=駒田=上野編『著作権判例百選』〔第5版〕有斐閣(2016/12/13)を読み続けています(第12日目)。第61事件(類似性-イラスト)~第66事件(原作者の権利が及ぶ範囲)へと読み進めています。
- (HP訪問者の延べ人数:14,685人)
- 2018年1月8日(月)成人の日 雨 。
- 昨年に引き続き,小泉=田村=駒田=上野編『著作権判例百選』〔第5版〕有斐閣(2016/12/13)を読み続けています(第12日目)。第67事件(みなし侵害における「情を知って」の意味)~第72事件(引用-美術全集への掲載)へと読み進めています。
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原著作物(現物はカラー写真)
〔雪山の自然景観への賛美〕
〔自然との調和を楽しむ人々〕 |
モンタージュ写真
〔疑似ユートピアに対する批判〕
〔自動車公害に怯え逃げ惑う人々〕 |
パロディによる著作物の公正な利用(フェア・ユース)を認めた
東京高裁判決による粋な譬え(東京高判昭51・5・19 裁判所Webページ)↓ |
小倉百人一首〔後徳大寺左大臣〕
「ほととぎすなきつる方をながむれば
ただ有明の月ぞ残れる」 |
江戸時代の狂歌〔池田正式〕
「ほととぎすなきつる方をながむれば
ただあきれたるつらぞ残れる」 |
- 「著作権判例の中で,最も著名な判決の一つ」とされている最三判昭55・3・26民集34巻3号244頁(モンタージュ写真上告審判決)の解説(著作権判例百選〔第5版〕第71事件)にたどり着きました。
- 著作権判例百選の解説においては,問題となっているモンタージュ写真(パロディ写真)が掲載されていません。そのためもあってか,解説が無味乾燥なものとなっているのが残念です。
- そこで,この事件の奥深さを知るために,最高裁判決とは異なり,著作者人格権の侵害を認めなかった控訴審判決(東京高判昭51・5・19)に関して,公式判例集に公開されている「原著作物」(左側)とその著作者人格権侵害が争われた「モンタージュ写真」(右側)を並べて比較してみることにします。
- 右側のモンタージュ写真は,左側の原著作物の一部を切除してスキーヤーがシュプールを描いて滑降している残りの部分の起点にスノータイヤを配置し,その轍に合わせて合成したパロディ作品です。
- 控訴審判決(東京高判昭51・5・19)によると,右側のモンタージュ写真は,左側の写真,すなわち,著作権者の許諾のもとに作成された著作権者の氏名表示がなされていない損保会社A・I・U社の昭和43年用カレンダーに掲載されたカラー写真に対して,「美しい雪山の景観を対象とした本件写真に接し,かえって,これに演出された疑似ユートピア思想を感じたため,フオト・モンタージュの形式で本件写真を批判し,併せて自動車公害におびえる世相を風刺することを意図し,本件写真の一部を素材に利用するとともに,これに自動車公害を象徴する巨大なスノータイヤの写真を合成して,本件モンタージュ写真を作成した」ものであると判示されています。
- なお,上記の東京高裁の判旨に続く,「粋な」判断部分(パロディの作者であるマッド・アマノに呼応して,狂歌を譬えに使っている点)が興味深いので,ここで引用しておきます。
- 本件モンタージュ写真は本件写真のパロディというべきものであつて,その素材に引用された本件写真から独立した控訴人自身の著作物であると認められるのが相当である。
- 被控訴人〔原告〕は,本件モンタージュ写真には控訴人自身の著作物が存在せず,本件写真の剽窃が存在するだけであると主張するが,剽窃とは,一般に,他人の詩歌,文章その他の著作物に表現された思想感情をそのまま自己の作品に移行させる意図のもとに,その表現形式を自己の著作物に取りこむ場合に起る問題であって,たとえ原著作物の表現形式を取りこんでいても,それが原著作物の思想,感情を批判,風刺,揶揄する等まったく異なる意図のもとに行なわれ,しかも,作品上客観的にその意図が認められる場合には,原著作物の剽窃ではなく,原著作物の存在を前提とするものの,それとは独立したいわゆるパロディの領域に属するのである。
- (例えば,小倉百人一首の「ほととぎすなきつる方をながむればただ有明の月ぞ残れる」に対して,江戸時代の狂歌に「ほととぎすなきつる方をながむればただあきれたるつらぞ残れる」があるが,後者は,前者を本歌とするパロディであつて,前者の剽窃と目すべきものではない。)から,被控訴人の主張は当らない。
- 最高裁は,以下のように判断して,右側のモンタージュ写真は,原著作物の著作者人格権を侵害していると判断したのですが,批判的な文化に対する寛容度が低すぎる(無粋)と感じました。
- 他人が著作した写真を改変して利用することによりモンタージュ写真を作成して発行した場合において,右モンタージュ写真から他人の写真における本質的な特徴自体を直接感得することができるときは,右モンタージュ写真を一個の著作物とみることができるとしても,その作成発行は,右他人の同意がない限り,その著作者人格権を侵害するものである。
- 本件モンタージュ写真は,原著作物の無権限利用であることは確かなのですから,モンタージュ写真の著作者が得た収益の一部を不当利得として原著作者に返還することを認めるのであればともかく,著作者人格権によって批判的文化を抑圧しようとする差止請求は権利の濫用ではなかろうかと,私は考えています。
- (HP訪問者の延べ人数:14,700人)
- 2018年1月9日(火) 雨のち曇り のち晴れ。
- 昨年に引き続き,小泉=田村=駒田=上野編『著作権判例百選』〔第5版〕有斐閣(2016/12/13)を読み続けています(第13日目)。第73事件(引用-書籍への引用・絶対音感事件)~第78事件(行政庁内の電子掲示板・社保庁LAN電子掲示板事件)へと読み進めています。
- 上記著作権判例百選の第76事件(社交ダンス教室と非営利上演)における名古屋高裁平成16年3月4日判決,および,著作権判例百選の相澤英孝教授による有益な解説(「本判決は,ダンス教室も,『フロアにおいて客にダンスをさせる営業』に含まれるものとしているが,ダンス教室は,ダンスを教授する施設であって,ダンスホールのように,広い場所で,ダンスを楽しむエンターテイメント施設とは異なるのであり,このような解釈は文言を超えた拡張解釈というべきであり,疑問を感ぜざるを得ない。」)を読んで,著作権における著作物(創作的表現)を排他的に支配するという構成は,やはり,破綻した構成だとの感を強くしました。
- このように演奏権を拡大する解釈は,最判昭和63・3・15民集42巻3号199頁(著作権判例百選〔第5版〕第93事件)の多数意見が,以下のように,スナックにおけるカラオケによる再生を伴奏とし,客の歌唱が演奏権の侵害となると判断したことに始まるというのですから,カラオケ好きの私としては,見過ごすわけに参りません。
- スナック等の経営者が,カラオケ装置と音楽著作物たる楽曲の録音されたカラオケテープとを備え置き,客に歌唱を勧め,客の選択した曲目のカラオケテープの再生による伴奏により他の客の面前で歌唱させるなどし,もって店の雰囲気作りをし,客の来集を図って利益をあげることを意図しているときは,右経営者は,当該音楽著作物の著作権者の許諾を得ない限り,客による歌唱につき,その歌唱の主体として演奏権侵害による不法行為責任を免れない。(意見がある。)
- そもそも,著作権法21条~28条は,「著作権に含まれる権利(複製権,上演権及び演奏権,上映権,公衆送信権,口述権,展示権,頒布権,譲渡権,貸与権,翻訳権・翻案権等,二次的著作物の利用)」のすべてについて,「著作者は,…権利を専有する」と規定し,著作者に行き過ぎた権利を付与しています。本来は,このような独占的権利は,独禁法違反に該当するのですが,独禁法が,人類の文化の発展に寄与する知的財産の性質に鑑み,創造的権利の創設者の投下資本の回収を図る限度で,独占を認めたに過ぎません(独禁法第21条)。
- 独禁法が,知的財産権についてその適用除外を認めている理由は,知的財産権が,人類文化の発展に寄与することにあるのですから,著作権においても,独禁法の適用が除外されるのは,著作物の利用促進とセットになった投下資本の回収としての著作権料の徴収に限定されるべきでしょう。
- したがって,文化の発展に寄与することを目的とする(著作権法第1条)という著作権の制度目的に,まさに,逆行する,著作物の利用を禁止する差止請求は,著作権の制度目的逸脱した濫用的行使と考えるべきであり,著作権法から,差止請求の条項(著作権法第112条)を削除すべきだと,私は考えます。
- 著作権法に必要なのは,著作物の利用促進とセットとなった適正な著作権料の徴収制度(不当利得の返還請求(民法703条),損害賠償(民法704条,709条以下),罰則(著作権法119条以下))で十分だと考えます。もしも,不十分であるとするのであれば,独禁法上の課徴金の制度,または,公的機関による独自の徴収と著作権者への配当制度を新たに創設すべきでしょう。
- (HP訪問者の延べ人数:14,720人)
- 2018年1月10日(水) 曇り後雨ときどき晴れ。
- 昨年に引き続き,小泉=田村=駒田=上野編『著作権判例百選』〔第5版〕有斐閣(2016/12/13)を読み続けています(第14日目)。第79事件(要約引用・血液型と性格の社会史事件)~第84事件(著作権譲渡におけるお特掲要件・ひこにゃん事件)へと読み進めています。
- 今回も,著作者人格権による請求または著作権に基づく差止請求のオンパレードでした。
- 第79事件は,著作者人格権に基づく差止請求(請求棄却),第80事件は,著作者人格権に基づく損害賠償請求(請求棄却),第81事件は,著作権に基づく差止請求(差止請求を一部認容),第83事件は,実質的に差止請求となる著作物複製物の引渡請求(請求棄却),第84事件は,著作権に基づく差止の仮処分申立て(一部認容)という結果でした。
- 差止請求が常に認められるわけではないものの,著作物の利用禁止を認める条文も,著作物の利用の差止を求める当事者の意識も,著作物の利用の促進を通じて人類文化の発展をめざすという著作権法の制度目的とは,乖離していると感じました。
- (HP訪問者の延べ人数:14,740人)
- 2018年1月11日(木) 曇りときどき雪。
- 昨年に引き続き,小泉=田村=駒田=上野編『著作権判例百選』〔第5版〕有斐閣(2016/12/13)を読み続けています(第15日目)。第85事件(登録と対抗要件・Von Dutch ロゴ登録事件)~第90事件(1953年公開映画の保護期間・シェーン事件)へと読み進めています。
- これまでの学習の成果を踏まえて,著作権判例百選〔第5版〕の判例のデータを分析できるように,Excelをつかったデータベースを作成することにしました。出典欄には裁判所Webのデータにもリンクを張って,すぐに判決全文が読めるように工夫するほか,英米法における判例名の表示が可能となるように,原告vs.被告のデータも追加するつもりです。
-
No. |
通称名 |
裁判所 |
年月日 |
出典 |
裁判所Webページ
(全文) |
事件名 |
判旨 |
適用条文 |
大分類 |
中分類 |
小分類 |
原告vs.被告 |
原告代理人 |
被告代理人 |
裁判官 |
1 |
顔真卿事件 |
最二判 |
昭和59年1月20日 |
民集38巻1号1頁,判時1107号127頁,判タ519号129頁,金商692号14頁 |
http://www.courts.go.jp/
app/files/hanrei_jp/
181/052181_hanrei.pdf |
書籍所有権侵害禁止請求事件 |
美術の著作物の原作品の所有者でない者が,有体物としての原作品に対する所有権の排他的支配権能を犯すことなく原作品の無体物としての著作物の面を利用しても,原作品の所有権を侵害するものとはいえない。 |
著作権法2条1項1号 |
Ⅰ著作物 |
1.総論 |
有体物と無体物 |
書道博物館vs.書芸文化新社 |
中村 稔,熊倉禎男 |
田宮 甫 |
宮崎梧一,木下忠良,鹽野宜慶,大橋進,牧圭次 |
- (HP訪問者の延べ人数:14,755人)
- 2018年1月12日(金) 雪ときどき晴れ。
- 昨年に引き続き,小泉=田村=駒田=上野編『著作権判例百選』〔第5版〕有斐閣(2016/12/13)を読み続けています(第16日目)。第91事件(旧法下の映画の保護期間:チャップリン事件)~第96事件(侵害主体(4)-番組関連サービス:まねきTV事件)へと読み進めています。
- 昨日作成した第1事件のフォーマットに従って,上記の第91事件~第96事件について,Excelによるデータベースを作成しました。
- この作業と並行して,上記判例百選で取り上げられているすべての事件(第1事件~債117事件)について,上記のフォーマットに従ったExcelによるデータベースの作成を開始します。
- (HP訪問者の延べ人数:14,780人)
- 2018年1月13日(土) 晴れ後曇り。
- 昨年に引き続き,小泉=田村=駒田=上野編『著作権判例百選』〔第5版〕有斐閣(2016/12/13)を読み続けています(第17日目)。第97事件(侵害主体(5)ストレージサービス:MYUTA事件)~第102事件(差止請求権の制限の可能性:写真で見る首里城事件)へと読み進めています。
- 上記の第97事件~第102事件について,1月11日に示したフォーマットに従ったExcelによるデータベースを作成しました。
- 上記の事件の内,著作権に基づく差止請求事件 を扱った第100事件~第101事件は,裁判所によって差止請求が認められたものであり,第102事件は,差止請求が棄却された事例ですが,判例解説を読むと,以下のように,差止請求を認める判決については疑問が呈され,差止請求を権利の濫用とした判決については,他の場面においても権利濫用が問題となるなど,差止請求を制限すべきとの判断が示されています。
- 【第100事件】将来の著作物の差止(Wall Street Journal発行社vs.全記事抄訳サービス発行社事件)
- 口頭弁論終結日翌日以降に発行される本件新聞の編集著作権に基づく請求が将来の給付の訴え〔民訴法135条〕として許容されるかについては,…既判力の範囲や被告たる債務者が著作物性を争う方法について理論的検討が必要であり,なお慎重な判断を要するのではないかと考える(大渕真喜子)。
- 【第101事件】侵害の停止または予防に必要な措置(レストランカフェ・デサフィナード事件)
- 本件のように本件店舗内における演奏行為中,Yを主体とするものとそうでないものが行われている場合に,そのいずれにも使用されるピアノを,「専ら」Yによる演奏権侵害のように供された物とするには無理があるように思われる(高林龍)。
- 【第102事件】差止請求権の制限の可能性(写真で見る首里城事件)
- 建築の著作権の侵害事案など,ホールドアップ〔いったん行われてしまうと元に戻すのが難しく(埋没費用),しかも交渉の相手の強さを増してしまうような関係特殊投資に関して発生する問題〕が懸念される他の場面においても,差止請求権の行使を権利濫用として制限する可能性は残されているというべきであろう(中山一郎)。
- 著作権は,利用を促進することによって,「文化の発展に寄与することを目的とする」(著作権法第1条)ものなのですから,その利用を禁止する差止請求は,もともと,著作権法の目的と矛盾する目的不適合の制度なのです。したがって,上記の判例解説は,いずれも的を得たものとなっているのです。
- 極言すれば,著作権に基づく差止請求は,常に,著作権法の制度目的に違背するものであって,権利の濫用として認められないと判断すべきなのです。著作権侵害に対する制裁は,著作物の利用を促進しつつ,公益の観点から,適正な著作権料を強制徴収するもの(強制執行,罰金刑,課徴金および著作権者への配分制度の新設など)に限定されるべきであると,私は考えています。
- (HP訪問者の延べ人数:14,800人)
- 2018年1月14日(日) 晴れ。
- 昨年に引き続き,小泉=田村=駒田=上野編『著作権判例百選』〔第5版〕有斐閣(2016/12/13)を読み続けています(第18日目)。第103事件(損害賠償 カラオケリース業者の注意義務:ビデオメイツ事件)~第108事件(損害額の算定(2)使用料相当額:国語教科書準拠教材事件)へと読み進めています。
- 上記の第103事件~第108事件について,1月11日に示したフォーマットに従ったExcelによるデータベースを作成しました。
- 今回の判例百選の解説者には,民法の専門家が複数登場していることを知り,同じ民法の専門家として心強く感じました。しかし,以下のような評釈に関しては,いくら民法の専門家とはいえ,著作権法の専門家に対するリスペクトが足りないのではないかと,自省の念を含めて,感じました。
- 【第103事件】カラオケリース業者の注意義務:ビデオメイツ事件上告審判決(解説:潮見佳男)
- この判決に対しては,著作権法学サイドからは,少なからぬ批判がある。とりわけ,
- (a)…各当事者は法的に独立の主体であり,自己の行為についてはみずからの意思と責任をもって行動すべき私的自治の原則を媒介とした自己責任のが「特段の理由のない限り」尊重されるべきであるところ,このような自己責任の原則に基づく公平な責任の分配をリース業者の注意義務に反映させるべきであるとの観点から,…リース業者に一般的・抽象的な予見義務ないし著作権侵害の予防義務を課すのは妥当でない。
- との批判がなされている。しかし,不法行為の一般理論を踏まえたとき,(a)の指摘は,批判の体をなしていない。…
- さすが,民法の専門家であり,学界において不法行為法をリードする学者からの著作権法学者に対する鋭い批判ではありますが,「批判の体をなしていない」というのは,いくら何でも,言い過ぎでしょう。
- 私も民法学者ですが,「この法律において,物とは有体物をいう」(民法85条)という,時代遅れも甚だしい条文を死守している民法学者が,無体物である「著作物」のリースについて,その法的性質を論ずることなく,著作権法学者を批判するのは,いささか準備が不十分です。お互いのリスペクトのもとで,批判し合うのが大切だと思います。
- なぜなら,有体物のリースではなく,無体物である「著作物のリース」とは,著作物の利用権の割賦販売に類似するものであって,リース業者がユーザーにリースした時点で,著作権の譲渡が生じていると考えることが可能であり,著作権の消尽を含めて,著作権の移転が完全に行われており(残るのは金銭債務のみ),責任主体もリース業者からユーザーへと移転していると考えることが,民法学の理論としても可能だからです。
- つまり,この問題を論じるに際しては,「無体物である著作物のリース」の法的性質は何かについて,民法理論を再構築してからでなければ,不法行為の主体に関する議論は空振りに終わる危険性が大きいというわけです。
- 民法学者が著作権法学に踏み込む際には,有体物本位に構築してきた民法理論から一歩距離を置き,無体物に対する理論を再構築した上で,ここでは,「著作物(無体物)のリース契約」とは何か(利用権のファイナンスリースではないのか)などについて,無体物理論を再構築した上で,著作権法学者に対して,批判を行うのがよいと思います。これは,自らが民法学者であることを念頭に置いた,自己批判でもあります。
- (HP訪問者の延べ人数:14,810人)
- 2018年1月15日(月) 晴れのち曇り。
- 昨年に引き続き,小泉=田村=駒田=上野編『著作権判例百選』〔第5版〕有斐閣(2016/12/13)を読み続けています(第19日目)。第109事件(名誉回復等措置(1) 謝罪広告:駒込大観音事件)~第114事件(未承認国の著作物:北朝鮮事件)へと読み進めています。
- 上記の第109事件~第114事件について,1月11日に示したフォーマットに従ったExcelによるデータベースを作成しました。
- 明治学院大学法学部在職時に親交のあった教授から声がかかり,私が戸塚校舎で基礎演習を行っていた1年次の学生たちが4月から白金校舎にデビューするのに備えて,「民法の全体的理解」というテーマの講義をさせてもらえることになりました。明日の戸塚校舎での講義に臨むため,今日上京します。
- (HP訪問者の延べ人数:14,830人)
- 2018年1月16日(火) 晴れ。
- 昨年に引き続き,小泉=田村=駒田=上野編『著作権判例百選』〔第5版〕有斐閣(2016/12/13)を読み続けています(第20日目)。第115事件(著作権関係事件の国際裁判管轄:ウルトラマン(円谷プロ)事件)~第117事件(未承認国の著作物:北朝鮮事件)へと読み進め,今日で,著作権判例百選〔第5版〕をすべて読み終えました。
- 上記の第115事件~第117事件について,1月11日に示したフォーマットに従ったExcelによるデータベースを作成しました。
- これまで民法学において異端とされてきた私の民法85条(この法律において,物とは有体物をいう)の根本的な改正案についても,著作物という無体物について考察することを通じて,以下のような改正案を提言することに自信を持つことができました(他分野の研究は,常に民法学の改革に直結させるべきであるというのが,民法学者としての私の信条です)。
- 民法85条(物の定義)改正案(加賀山私案)
- ①物とは,有体物又は無体物をいう。
一 有体物とは,人が管理することができるもののうち,固体,液体,気体をいう。
二 無体物とは,人が管理することができるもののうち,有体物でないもの〔例えば,著作物,エネルギー,すべての権利など〕をいう。
②所有権の目的物は,有体物に限定される〔債権の上の所有権という概念は,物権と債権との区別を維持する限りで,認めない〕。
③所有権以外の権利の目的物は,有体物だけでなく,無体物とすることができる。
- 判例百選という選ばれた判決を通じてではありますが,様々な具体例に接しながら,著作権法の争点,および,民法からみた著作権法の問題点を俯瞰することができて,有益でした。
- 第90事件から第117事件までは,Excelを使った判例百選のデータベースを作成し始め,第1事件から遡って,117件のすべての事件について,裁判所Webのデータをワンクリックで見ることができるように編成することができました。こうしておくと,判例データを年月日順に並べ替えたり,ピボット分析ができたりして,判例研究に有用だと思います。
- 細かい点については,第6事件から第89事件までのデータの入力ができていないので,今後,この点の補充を行います。そして,4月からの講義が始まる前まで前には,判例百選のExcelによるデータベースを完成させ,受講生が著作権判例百選〔第5版〕に搭載されている判決だけでなく,その判決に至る総ての審級の判決についても,ワンクリックで全文が読めるように,工夫を凝らしたいと思います。
- さらに,著作権の問題をクリアさせることができれば,私のHP上で,一般にも公開したいと考えています。その場合には,判例百選にはこだわらず,その他の判例集,模範六法,判例六法,および,著作権法の教科書を参考にして,加賀山茂編『著作権重要判例データ』というデータベースをExcelまたはCSV形式で一般に公開できればと考えています。
- 午後から,明治学院の横浜校舎で,白金デビューを控えた2年生(約300名)を対象に,「民法の全体的理解」(PowerPoint,PDF)という講義を行いました。久しぶりの講義でもあり,また,以前1年生のときに教えたことのある学生たちとも再会でき,楽しいひと時を過ごすことができました。
- 講義の直後に,学生たちに講義の感想をリアクションペーパーに記入してもらいました。早速,すべてのリアクションペーパーに目を通したところ,学生たちは,講義で使った以下のマジックワードに敏感に反応してくれていることがわかりました。
- 民法全体を理解するために「民法のGoogleマップ」を作ろう。(教科書は,コピーした目次をチェックしながら読む,難解な用語に出会ったら,索引で説明箇所と事例の紹介箇所を見つけて読もう。)
- 「真理は細部に宿る。」(細部の理解なしに全体の理解はできない。しかも,細部の理解のためには全体像を把握しないとその位置づけができない。)
- 皆さん,「就職までに到達すべき学習の最終目標」を設定していますか?(「生の事実から,適用すべきルール(条文・法理)を見つけ出し,当事者双方が納得できる解決案を提示できる能力を獲得する」(誇りをもって「法学部出身者です」といえる能力の獲得)という,明確で高い目標なしに成果を上げることはできない。スポーツの世界で金メダルを目標に設定して,日々弛まぬ練習を重ねる若者たちを手本にしてみてはどうだろう。「コピペでごまかし,楽して単位を取って,ともかく卒業する」という低次元の目標から脱却できるのではないだろうか。)
- 「トップダウン思考」から「ボトムアップ思考」へ。(「ドクターG」のように,医学部における「症例から病名へ」と法学部における「事例から条文へ」の道(ボトムアップ思考)は同じ。)
- 論文もレポートも,以下のように,「アイラック(IRAC)」で書けば満点が取れる。(レポートは,①問題提起・争点(Issue),②問題解決のための仮説・ルール(Rule),③問題へのルールの当てはめ(Application)と,複数のルールの当てはめによって生じる相反する暫定的な結論同士の議論(Argument)を通じて,④当事者も専門家も,世論も納得するような合理的な解決案を提示するというように,IRACの順序で書けば,まとまったレポートを完成することができる)。
- Issue (争点,問題提起)
- Rule(ルール,問題解決のための仮説の提示)
- Application & Argument(ルールの争点への適用と立場の違う対立する暫定的な結論を踏まえた議論)
- Conclusion(結論)
- 注意すべきは,最後のC(結論)が,最初のI(争点・問題提起)の答えになっているかどうかである。結論が問題提起の答えになっていないのであれば,そのようなレポートは不合格点しか取れない。そもそも,結論がないようなレポート・論文(恥ずかしいことだが,日本の法律家・法学者の論文には,結論のない論文が多数存在する。外国なら,そのような論文は,論文とは認められない)は,読まれるに値しないと心得るべきである。
- 議論は「トゥールミンの議論の図式」を使う。(議論の最初のステップは,主張(Claim)をデータ(Data)を示して開示し,その根拠(Warrant)を示すことから始める。相手方は,主張(Claim)自体を攻撃するのではなく,そのデータの信用性,根拠に対する反論(Rebuttal)をもって反駁を行う。このことを議事録に明示しながら議論をすると,建設的な議論が行える。)
- データ(Data)━━━━(おそらく(Probably)━→主張(Claim)
↑ ↑
根拠(Warrant) 反論(Rebuttal)
↑ ↑
裏付け(Backing)
- 民法の効率的な学習としては,「民法条文適用頻度ベスト10」から始めるのがよい。(『民法条文100選(ひゃくみん)』信山社(2007)を読もう。)
- 民法の全体像を「図解」を利用して理解しよう。(不法行為法の全体的理解は「電気回路図」で,契約法の全体的理解は「契約の流れ図」で行おう。)
- 明治学院大学の「建学の精神である“Do for others”」は,民法697条(事務管理)の規定に宿っている。(本人の意思がわかるときは,その意思に沿って支援する。意思が不明の時は,最も本人の利益に適合する方法で支援を行う。なお,支援ができるためには,支援する側の自立と余裕の精神が必要である。)
- 講義の後に,約300名の学生たちの個性あふれる素晴らしいリアクションペーパーをいただくことができました。このことからも,今回の特別講義「民法の全体的理解」(PowerPoint,PDF)は成功だったと思います。
- その後,特別講義の機会を与えてくださった教授,法科大学院時代の先生・卒業生とともに,レストランでピアノ,バイオリン,チェロの生演奏を聴きながら食事を楽しみました。
- (HP訪問者の延べ人数:14,850人)
- 2018年1月17日(水) 曇りのち雨 のち曇り (気温が春並みに上昇) 。
- 明治学院大学での特別講義「民法の全体的理解」(PowerPoint,PDF)の講義を終えて,帰郷します。講義の際に,私のHPを紹介したのが功を奏したのか,HPの訪問者が,久しぶりに,1日で50人を突破していました。
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第4版の「共同編集者」の一人が
第5版の出版差止を請求した。 |
出版差止の対象となった第5版
第4版との類似性が問題となった。 |
帰りの新幹線の中で,1月6日に出版社でその存在を指摘していただいた,「著作権判例百選〔第5版〕出版差止仮処分事件」をめぐる以下の一連の裁判に関して,Excelのデータベースを作成しました。
- 東京地決平成27年10月26日(平成27年(ヨ)第22071号)著作権判例百選〔第5版〕出版差止仮処分事件
- 東京地決平成28年4月7日(平成28年(モ)第40004号)著作権判例百選〔第5版〕出版差止仮処分保全異議申立事件(判時2300号76頁,裁判所Web)
- 知財高決平成28年11月11日(平成28年(ラ)第10009号)著作権判例百選〔第5版〕出版差止仮処分保全異議申立決定に対する保全抗告事件(判時2323号103頁,判タ1432号103頁,裁判所Web)
- 最三決平成29年3月21日(平成28年(許)第53号)著作権判例百選〔第5版〕出版差止仮処分保全異議申立決定に対する抗告事件
- 裁判所Webには,この事件の端緒となった平成27年東京地裁決定(東京地決平成27・10・2)が搭載されていません。確かに,この平成27年東京地裁決定を維持した平成28年東京地裁決定(東京地決平28・4・7・6)は裁判所Webに搭載されているので問題は少ないのですが,最も基本となる平成27年東京地裁決定を登載していないのは問題だと思いました。なぜなら,著作権判例百選〔第5版〕の出版差止を認めた平成27・28年東京地裁決定は,結論は不当であるとしても,現行の著作権法を前提にするならば必然的に生じるべくして生じた決定であり,仮処分決定を認めた二つの決定をともに取り上げる価値は非常に大きいからです(なお,有料の市販のデータベースは,平成27年,平成28年の二つの東京地裁決定を公表しています)。
- これに対して,著作権判例百選〔第5版〕の出版を是認した平成28年知財高裁決定(知財高決平成28年11月11日)は,裁判所Webの外,判例時報(判時2323号103頁),判例タイムズ(判タ1432号103頁)においても公表されており,著作権法を学ぶすべての人々に対して,格好の教材を提供していると思います(なお,この事件は,最三決平29・3・21が,抗告を棄却して,著作権判例百選〔第5版〕出版を認めたことで決着しています。本書の実際の出版は,平成28年12月15日付で行われています)。
- (HP訪問者の延べ人数:14,900人)
- 2018年1月18日(木) 晴れ(春並みの気温が続く) 。
- 小泉=田村=駒田=上野編『著作権判例百選』〔第5版〕有斐閣(2016/12/13)を読んで得た成果を踏まえて,4月から開始する予定である著作権法の講義のためのシラバス,教員プロフィールを作成して,教務課に送付しました。
教員プロフィールの最後の箇所には,以下のような受講生へのメッセージを記入しておきました。
- 法律の学習の第一歩は,条文から始めて,概説書・コンメンタールでその条文の意味を知り,その条文に該当する判例の事実を読んで,条文と事実との結び付きを知ることです(トップダウン式思考の育成)。
- 法律の学習の最終目標は,この順序を逆転させ,生の事実から始めて,それに適用すべき条文を指摘できるようになり,その条文および関連判例を使って,その事実を合理的に解決する解決案を提言できるようになることです(ボトムアップ式思考の育成)。この目標に向かって一歩ずつ前進しましょう。
- 上記の著作権判例百選〔第5版〕のデータのうち,第1事件~第5事件,および,第90事件~第117事件までのデータは,すでに,Excelのデータベースへと変換しました。しかし,第6事件~第89事件までのデータについては,裁判所Webへのリンク情報を追加しただけで,その他のデータの記入が未完成です。そこで,第6事件~第89事件までのデータをExcelのデータベースに追加する作業を続開始します(第1日目)。
- (HP訪問者の延べ人数:14,930人)
- 2018年1月19日(金) 晴れ(春並みの気温が続く)。
- 小泉=田村=駒田=上野編『著作権判例百選』〔第5版〕有斐閣(2016/12/13)のデータの内,Excelのデータベースが未完の第10事件~89事件までのデータをExcelのデータベースに追加する作業を継続しています(第2日目)。
- (HP訪問者の延べ人数:14,960人)
- 2018年1月20日(土)(大寒) 晴れ(春並みの気温が続く)。
- 小泉=田村=駒田=上野編『著作権判例百選』〔第5版〕有斐閣(2016/12/13)のデータの内,Excelのデータベースが未完の第16事件~89事件までのデータをExcelのデータベースに追加する作業を継続しています(第3日目)。
- 昨年の11月19日から,書斎の冷暖房効率を上げるために天井裏に断熱材を敷き詰める作業を少しずつ行っていましたが,その作業がついに完成しました。
- (HP訪問者の延べ人数:14,980人)
- 2018年1月21日(日) 晴れ後曇り (寒さが戻る)。
- 小泉=田村=駒田=上野編『著作権判例百選』〔第5版〕有斐閣(2016/12/13)のデータの内,Excelのデータベースが未完の第21事件~89事件までのデータをExcelのデータベースに追加する作業を継続しています(第4日目)。
- 久しぶりに日出町の図書館に行って,新着図書に目を通しました。ノーベル賞の記録編集委員会『ノーベル賞117年の記録』山川出版社(2017),森功『悪だくみ
-「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞-』文藝春秋(2017)が目につきました。前者については,類書が多いことがわかったので,後日,図書館でゆっくり読んで『ノーベル法学賞』の構想に役立てます。後者は,切り口が鋭く,キンドル版があることが分かったので入手することにしました。
- (HP訪問者の延べ人数:15,000人)
- 2018年1月22日(月) 雪(積雪には至らず)後みぞれ後曇り後晴れ。
- 小泉=田村=駒田=上野編『著作権判例百選』〔第5版〕有斐閣(2016/12/13)のデータの内,Excelのデータベースが未完の第31事件~89事件までのデータをExcelのデータベースに追加する作業を継続しています(第5日目)。
- 森功『悪だくみ -「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞-』文藝春秋(2017)のキンドル版を入手したので,読み始めました(1日目)。
- (HP訪問者の延べ人数:15,020人)
- 2018年1月23日(火) 曇りときどき晴れ(寒波襲来)。
- 小泉=田村=駒田=上野編『著作権判例百選』〔第5版〕有斐閣(2016/12/13)のデータの内,Excelのデータベースが未完の第41事件~89事件までのデータをExcelのデータベースに追加する作業を継続しています(第6日目)。
- (HP訪問者の延べ人数:15,040人)
- 2018年1月24日(水) 晴れたり曇ったり,ときどき雪(積雪なし)。
- 小泉=田村=駒田=上野編『著作権判例百選』〔第5版〕有斐閣(2016/12/13)のデータの内,Excelのデータベースが未完の第61事件~89事件までのデータをExcelのデータベースに追加する作業を継続しています(第7日目)。
- (HP訪問者の延べ人数:15,070人)
- 2018年1月25日(木) 曇り(最低気温-3℃を記録) のち晴れ。
- 小泉=田村=駒田=上野編『著作権判例百選』〔第5版〕有斐閣(2016/12/13)のデータの内,Excelのデータベースが未完の第75事件~89事件までのデータをExcelのデータベースに追加する作業を継続してきましたが(第8日目),ついに,第1事件~第117事件の全部について,Excelのデータベースが完成しました。
- 完成したExcelデータベースは,そのフォームを1月11日の箇所で示していますが,小泉=田村=駒田=上野編『著作権判例百選』〔第5版〕有斐閣(2016/12/13)には記載がない,簡潔な判決要旨,参照条文,原告
vs. 被告,訴訟代理人,裁判官のデータをわかる範囲で付加したこと,そして,ワンクリックで,裁判所Webの判決全文データを閲覧できるのが特色です。
- このExcelデータベースに,審級,および,図表とか写真とかの資料のデータを付加し,ワンクリックで,例えば,最高裁判決なら,一審・二審の判決,および,著作物の視覚情報(図表とか写真)が公開されている場合には,それらが閲覧できるようにすると便利なので,明日からは,そのことを実現する作業を開始します。
- (HP訪問者の延べ人数:15,100人)
- 2018年1月26日(金) 晴れ。
- 昨日までに,小泉=田村=駒田=上野編『著作権判例百選』〔第5版〕有斐閣(2016/12/13)で取り上げられている117件の判決(2件は決定)データについて,この判例集には記載がない①簡潔な判決要旨,②参照条文,③原告
vs. 被告,④訴訟代理人,⑤裁判官のデータをわかる範囲で付加したExcelのデータベースを作成しました(「著作権判例Excelデータベース」という)。今日から,この「著作権判例Excelデータベース」に,ワンクリックで全文を閲覧できる裁判所Webの⑥「審級」情報,および,著作物の理解に有益な⑦「図表」情報を付加する作業を開始します(第1日目)。
- (HP訪問者の延べ人数:15,120人)
- 2018年1月27日(土) 曇りのち晴れ。
- 「著作権判例Excelデータベース」に,ワンクリックで全文を閲覧できる裁判所Webの「審級」情報,および,著作物の理解に有益な「図表」情報を付加する作業を行っています(第2日目)。 「図表」情報の追加を完成させました。残るは,「審級」情報の追加のみです。
- 森功『悪だくみ -「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞-』文藝春秋(2017)のキンドル版を入手したので,読んでいます(2日目)。
- 日本における立身出世の王道とその腐敗の構造が見事にとらえられています。
- 総理とか加計らとかの責任を追及しようにも,ほとんどすべての日本人がこの腐敗の構造の中で立身出世を夢み,その腐敗の構造の中にどっぷりとつかっているので,結局,そのような夢を追いかけてきた人,特に,その夢を実現して功成り名を遂げた人々は,誰一人としてまともな批判ができないこともよくわかりました。
- 総理の欺瞞を批判できるのは,このような腐敗の構造から距離を置ける人だけであり,それが,私の目標とする「利益集団からの自立」とも,どこかでつながっているように感じました。
- (HP訪問者の延べ人数:15,140人)
- 2018年1月28日(日) 晴れのち曇り時々雪。
- 末川民事法研究会「2017年判例回顧(第2回:債権,不法行為)」,および,それと前後して開催する『末川民事法研究』の編集会議に出席するため,京都に出張します。
- 「2017年判例回顧」では,数多くの判例紹介を時間内にまとめて報告するためのノウハウについて,アドバイスを行いました。
- 編集会議では,投稿原稿の分量の目安について追加する「『末川民事法研究』原稿募集要項・改正案」を修正の上で決定するとともに,複数の査読者からの審査結果をどのように取りまとめるかを決定し,編集委員が交代した場合にも,査読における評価基準を一定に保つための査読の内規である「末川民事法研究投稿原稿審査に課する内規」(案)に,審査の実質的な規定を追加して,査読の内規を決定しました。
- 研究会後,「2017年判例回顧」の報告者,および,以前に報告した経験者を交えて懇親会を主催し,今後の判例回顧のあり方,判例研究の方法について,お互いの意見を交換しました。その結果,今後の報告の改善のための方法を共有することができたように思います。
- 「著作権判例Excelデータベース」に,ワンクリックで全文を閲覧できる裁判所Webの「審級」情報を付加する作業を行っています(第3日目)。
- (HP訪問者の延べ人数:15,160人)
- 2018年1月29日(月) 曇りのち晴れ。
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テレサテン生誕65周年記念
「春の心」を持参して,
カラオケ店で「償還」を歌う |
昨日は,末川民事法研究会「2017年判例回顧(第2回:債権,不法行為)」に出席して議論を盛り上げ,『末川民事法研究』の編集会議で,査読の結果を確定し,査読の内規(末川民事法研究投稿原稿審査に課する内規)を決定することができました。今日は,ホテルのバイキング料理(野菜が豊富で,砂糖不使用のプレーンヨーグルトも楽しめる)をいただき,京都駅付近の専門店で抹茶等の買物をして,帰郷します。
- 帰りの新幹線の中で,「著作権判例Excelデータベース」に,ワンクリックで全文を閲覧できる裁判所Webの「審級」情報を付加する作業を行います(第4日目)。
- 今日は,テレサテン生誕65周年記念日とのことで,帰りにいつもテレサテンの「償還」を歌っているカラオケ店に立ち寄りました。 持参したフラワーアレンジメントは,行きつけの花屋のご主人が,近づきつつある「春の心」を表現してくださったものです。チューリップを二つのグループに分け,そのコミュニケーションによって,菜の花やガーベラの花が春の喜びにあふれるという意味を込めたのだそうです。これも,ただ今学習中の「感情の創作的表現」の一つだと思われます。
- (HP訪問者の延べ人数:15,190人)
- 2018年1月30日(火) 曇りのち晴れ。
- 「著作権判例Excelデータベース」に,ワンクリックで全文を閲覧できる裁判所Webの「審級」情報を付加する作業を行っています(第5日目)。
- 作業を進めていると,小泉=田村=駒田=上野編『著作権判例百選』〔第5版〕有斐閣(2016/12/13)で取り上げられている判決の内,裁判所Webページに掲載されていない判決が13件あることがわかりました。百選で取り上げられているほどに重要な判決が,なぜ,裁判所Webページに掲載されいないのか,掲載の基準が不明です。
- そればかりでなく,裁判所Webページに掲載されている上級審判決について,その判決に,例えば,「原審は〇〇地裁平成〇〇年(ワ)〇〇〇号」と記載されているにもかかわらず,その原審判決が裁判所Webに掲載されていないという例にたびたび遭遇します(合計で16件)。作業を進めるにつれて,裁判所Webページに掲載されるかどうかの基準は,恣意的なのではないかとの感を強くしています。
- 公式判例集の掲載基準については批判的な検討がなされていますが,それと同様に,裁判所Webページの掲載基準についての調査・研究も必要であるように思われます。
- (HP訪問者の延べ人数:15,220人)
- 2018年1月31日(水) 晴れのち曇り。
- 「著作権判例Excelデータベース」に,ワンクリックで全文を閲覧できる裁判所Webの「審級」情報を付加する作業を行っています(第6日目)。今日で,小泉=田村=駒田=上野編『著作権判例百選』〔第5版〕有斐閣(2016/12/13)で取り上げられている117事件のすべてについて,審級情報を付加する作業を完成させます。
- そして,1月11日に作成した「著作権判例Excelデータベース」のフォームに審級情報を追加したデータベースが,以下のような形式で,117件すべてについて完成しました。
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- 著作権法に関する判例を学習する上で,以上のExcelデータベースはかなり有用だと思います。なぜなら,このデータベースは,著作権判例百選には掲載されていない情報(参照条文一覧,原告
vs. 被告,当事者の代理人,裁判官等の情報)が付加されており,かつ,ワンクリックでそれぞれの審級の判決全文を読むことができるばかりでなく,年月日順に並べ替えたり,様々な視点からピボット分析をすることが可能となるからです。
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加賀山茂・金城亜紀 責任編集
『法と経営研究』〔創刊号〕
信山社(2017/12/25)
-「法」と「経営」の複合的視点
による新しい学知と社会の創生- |
1年間かけて編集してきた加賀山茂・金城亜紀 責任編集『法と経営研究』(信山社)の創刊号(222頁)が手元に届きました。
- 表紙の帯には,私たちが目指す目標としての「『法』と『経営』の複合的視点による新しい学知と社会の創生」という文字が刻まれています。そして,以下に示す目次のより詳しい紹介が,信山社のホームページに掲載されています。
- ≪創刊の辞≫ 加賀山茂・金城亜紀
- ≪巻頭論文≫
- 加賀山茂「法と経営(Law & Management)の基本的な考え方」…1
- ≪総論≫
- ≪各論≫
- <グローバル化が問う「法と経営」の重要課題>
- 大出隆「ロビイングに関する法制化の意義」…51
- 森 成城「健全性規制強化の銀行経営に対する影響に関する考察」…107
- <「法と経営」から見た日本企業の最前線>
- 田澤健治「法と経営の観点から見た株主の権利の制約について」…151
- 野田典秀「早期事業再生に資する簡潔な企業評価手法に関する考察」…175
- <「法と経営」への経営史・経済史からの接近 >
- 金城亜紀「1920年の戦後恐慌に見る第十九銀行と日本銀行信用への接続」…177
- ≪編集後記≫ 金城亜紀
- (HP訪問者の延べ人数:15,240人)
- 2018年2月1日(木) みぞれのち曇り のち晴れ。
- 昨年の12月27日から開始した著作権法の学習ですが,昨日で,小泉=田村=駒田=上野編『著作権判例百選』〔第5版〕有斐閣(2016/12/13)の編成に依拠しつつも,各判例につき,①審級情報,②参照条文,③当事者,およびそれらの訴訟代理人,④裁判官の情報を追加し,かつ,⑤当該判例,および,その審級に関する判決全文をワンクリック読むことができる「著作権判例Excelデータベース」を完成させ,著作権の判例に関する学習が一段落しました。
- 今後は,著作権法自体のデータベースの作成に取り掛かる予定です。ただし,著作権法は,TPPの発効によってその全面改正法が施行されることになっているので,現行法ではなく,改正法によるデータベースを作成すべきか,それとも,両方のデータベースを作成すべきなのか,よく検討をした後に作業を開始したいと思います。
- そこで,当面は,著作権法のデータベースの作成に先立って,著作権法の講義レジュメを私の現在の学力の範囲内で作成しておき,著作権法のデータベースを作成しながら,著作権法に関する代表的な教科書を読みこみ,著作権法の講義を始める4月1日までに,判例を取り込んだ著作権法のデータベースを完成したいと考えています。
- (HP訪問者の延べ人数:15,270人)
- 2018年2月2日(金) 晴れのち曇り。
- 加賀山茂・金城亜紀 責任編集『法と経営研究』(信山社)の創刊号(222頁)を冷めた目で読み直しています。避けることができないとはいえ,誤植を発見するのは辛いものですが,今後の発展のためには必要な作業です。
- 著作権法の講義レジュメを作成しつつ,著作権法の概説書(半田正夫『著作権法概説』〔第16版〕法学書院(2015))を読み始めました(第1日目)。
- 第1章(序説)は,著作権の意義と著作権法の歴史です。著作権が,精神的所有権という概念が登場することによって発展してきた経緯がよくわかります。
- (HP訪問者の延べ人数:15,300人)
- 2018年2月3日(土)(今年の節分) 曇りのちみぞれ。
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半田正夫『著作権法概説』
〔第16版〕法学書院(2015) |
著作権法の講義レジュメを作成しつつ,著作権法の概説書(半田正夫『著作権法概説』〔第16版〕法学書院(2015))を読んでいます(第2日目)。
- 第2章(著作権の目的)は,以下のように,著作権法の概念を著作権を財産的所有権に対する精神的所有権として把握してきたことが記述されています。
- 「肉体的労働によって有体物を獲得した者がその物について所有権の保障を受けるのであれば,同様に精神的労働によって著作物を作成した著作者はその著作物について一種の所有権が与えられ,国家によって保障されるべきだという理論(精神的所有権論)が生ずるにいたり,これが現在の著作権制度の気を形作ったのである。」(半田・概説(2015)54頁)
- ただし,ここで対比されている財産的所有権とは,所有権を排他的な絶対権として把握するのものであり,「所有権は義務を伴う」という現代における所有権とは異なるものです。このように,絶対的所有権との対比において著作権を基礎づけるという安易な考え方が原因となって,今なお,著作権を「著作物に対する排他的な支配権」と捉える行き過ぎた著作権像が著作権法学説に悪い影響を与えているのではないかと思います。
- どうやら,著作権法学説は,著作権法の目的を文化の発展に寄与した「著作者等の利益保護を第一義」とし,二義的に,「一般公衆による著作物の利用の自由」を図るべきであると考えているようです(半田・概説(2015)55頁)。その上で,著作権法30条~50条の著作権の制限によって,第一義的な著作権者等の利益と第二義的な一般公衆による著作物の利用の自由とが調和すると理解しているように思われます。
- 単純化すると,現在における著作権法学説は,著作権を以下のように理解していることになります。
- 文化の発展に寄与している著作者の保護が最も重要であり,したがって,著作権者による著作物に対する独占的排他的支配が原則である。
- ただし,一般公衆による著作物の利用の自由も考慮しなければならないため,例外的に,著作権の制限(30条~50条)が規定されている。
- しかし,それにしては,例外としての著作権の制限の規定が非常に多く,多岐にわたり,しかも,年を追うごとに増加しています。つまり,原則と例外の関係が逆転しつつあるのが現状であり,それが,むしろ,著作権法の目的に合致するのではないかというのが,私の考え方です。
- 私の考え方によれば,著作権法の目的は,「文化の発展に寄与する」という一義的な目標があるだけです。その手段を実現する方法は,以下の二つです。
- 第1に,この目標を達成するためには,人類が築き上げてきたすべての著作物をパブリック・ドメインに置き,公共財として一般公衆が自由に利用できる環境を整えることが必要である。そのことを例示しているのが,著作権法30条~50条であり,著作権法の原則は,著作物の利用の自由である。このような環境の下でこそ,新しい著作物が次々と生成されるのであり,そのような環境の下でのみ,著作者も自由な創造活動を行うことができるのであるから,著作者といえども,一般公衆による著作物の利用の自由を奪うことはできない(著作者による著作物の利用の差止請求は常に権利の濫用として,禁止される。)
- 第2に,一般公衆による著作物の利用の自由が確保されたのちに,著作者には,独占禁止法の例外(独禁法21条)として,投下資本を回収するための一定期間に限定されたロイヤリティの強制徴収の権利が与えられる。国家は,文化の発展を図るため,この権利を著作者に保障すべきである。
- このように考えると,著作権法1条の条文についての新しい理解が可能となるばかりでなく,その趣旨を明確にするため,著作権法1条を以下のように改正するのが,文化の発展に寄与するためには賢明であると思われます。
- 著作権法 第1条(目的) (改正私案・加賀山私案)
- ①この法律は,文化的所産である著作について,すべての人の自由な利用を促進することを通じて,文化の発展に寄与することを目的とする。
- ②この目的を達するため,すべての著作は,公共財とし,すべての人の利用の自由を保障する。
- ③新たに作成された著作については,著作者等の文化の発展への寄与に留意し,一定期間に限って,公正な著作権料を強制的に徴収する権利を著作者等に保障する。
- ④前3項の趣旨に即して,この法律は,著作並びに実演,レコード,放送及び有線放送に関し,著作者等の権利(以下,「著作権」という。)及びこれに隣接する権利(以下,「著作隣接権」という。)を定めるとともに,すべての人が著作を自由に利用することを阻害する著作者人格権は,民法等の人格権に関する一般規定を適用することに留め,この法律からは削除する。
- 以上の考え方を作成中の著作権法の講義レジュメに追加しました。
- (HP訪問者の延べ人数:15,320人)
- 2018年2月4日(日)(立春) 曇りのち雪のち晴れ。
- 著作権法の講義レジュメを作成しつつ,著作権法の概説書(半田正夫『著作権法概説』〔第16版〕法学書院(2015))を読んでいます(第3日目)。
- 第3章(著作権の主体および客体)では,著作者と著作権者との関係,および,著作物の本質がフィヒテの見解を引用しながら語られています。
- 私の印象に残ったのは,著作の本質について,「フィヒテは,著作物の内容については所有権を否定し,著作物公表と同時に著作者の手を離れて公有になると述べている。」(半田・概説(2015)78頁)という箇所です。
- 私の見解は,昨日も述べたように,一定期間を経ると,すべての著作は,公共財としてパブリック・ドメインに置かれるのであり,最も見本的な著作である「憲法,法律,判例」は,最初から公共財としてパブリック・ドメインに置かれています(著作権法13条)。そこで,すべての著作も,広い意味では,先人の著作の二次的著作に過ぎないのですから,はじめから公共財としてパブリック・ドメインに置くべきであり,その上で,私人が創作した著作についてのみ,一定期間に限って,公正な利用料(ロイヤリティ)を利用者から徴収する権利を与えればよいというものです。
- すべての著作が最初からパブリック・ドメインに置かれるという見解は,一人説で相手にされないだろうと思っていたのですが,先人にも,そのような発想をする人がいたことは,心強く,今後の研究の励みになりました。
- (HP訪問者の延べ人数:15,330人)
- 2018年2月5日(月) 晴れのち一時雪。
- 著作権法の講義レジュメを作成しつつ,著作権法の概説書(半田正夫『著作権法概説』〔第16版〕法学書院(2015))を読んでいます(第4日目)。
- 第4章(著作者の権利)では,著作者人格権と著作権(著作財産権)の各論が論じられています。
- 著作者人格権については,私は,「インターネット社会においては,すべての人が簡単に著作者になりうるのであり,他の知的財産権には存在しない権利である著作者人格権という特権を与えるのは,時代遅れの行き過ぎた保護である。著作者に対しても,民法等の一般的な人格権以外の特権を与える必要はない」と考えています。
- しかし,せっかくの機会なので,本書の著作者人格権の擁護論(半田・概説(2015)115~136頁)にも,真摯に耳を傾けることにしました。
- 本書の主張に耳を傾けているうちに,「著作権の内容」は,以下のように,結局,「著作利用権」であることが理解できました(半田・概説(2015)137頁)。
- 著作権=〔著作利用権〕
- 現状利用権
- 複製権(21条),上演権・演奏権(22条),上映権(22条の2),公衆送信権等(23条),口述権(24条),展示権(25条),頒布権(26条),譲渡権(26条の2),貸与権(26条の3)
- 改作利用権
- 二次的著作物利用に関する権利
- さらに,本書の筆者の考え方は,以下のように述べられていることからも,著作の公表が容易でない時代を想定しており,著作の公表が容易になったインターネット社会には適合しない考え方であることも理解できました。
- 著作者は,ごく稀な例を除いては,著作物をみずからの手で公衆に伝達する手段と施設をもたないのがふつうであるから,一般に著作物を利用する場合にはそれを業とする者の手を通して行うことになる(半田・概説(2015)159頁)。
- インターネット社会においては,すべての人が簡単に著作者となることができるのであり,すべての人に著作の自由な利用を保障することが,著作の質を向上させ,文化の発展につながることになることを確信することができました。
- その結果,これまでの「著作者第一主義」の著作権法は,「利用者(将来の著作者)第一主義」の著作権法へとパラダイムを転換し,これまで例外と考えられてきた著作権の制限,すなわち,著作に対する公衆の自由利用を原則とし,これまで原則と考えられてきた著作者の保護,すなわち,一定期間に限定した著作者の公正な利用料の強制徴収権の保障を例外と考えることが必要であるとの結論に到達することができました。
- そこで,作成中のレジュメのタイトルを「著作権法講義」から,「利用者のための著作権法講義」へと変更しました。過激な意見かもしれませんが,将来的には,著作権法自体もタイトルを変更して,「著作権法」から「著作利用権法」へと名称変更することも考慮すべきだと,私は考えています。
- (HP訪問者の延べ人数:15,350人)
- 2018年2月6日(火) 雪のち曇りのち晴れ。
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書斎から初冠雪の実家の庭・別府湾を臨む |
- 著作権法の講義レジュメを作成しつつ,著作権法の概説書(半田正夫『著作権法概説』〔第16版〕法学書院(2015))を読んでいます(第5日目)。
- 第5章(著作者の制限)では,著作権の公共的制限,および,著作の時間的制限が論じられています。
- もっとも,私の考え方によれば,このような著作権に関する支配的な考え方を逆転する必要があります(著作権法におけるパラダイムの転換)。
- 著作者の保護を中心に考えるから,公益的観点からの私的な「著作権の制限」という,著作者の保護の「例外」になるのです。文化の発展に寄与するという著作権の本来の目的(著作権法1条)の観点からすれば,「著作権の制限」とは,実は,「公衆の著作利用権の自由保障」という「原則」になるのです。
- つまり,著作権の目的としての文化の発展への寄与という観点からは,著作という文化的所産について,「公衆の著作利用権の自由」を保障することが原則であり,それと並行して,文化の発展に寄与した著作者に,一定期間に限定して,著作者による公正な利用料を徴収する権利を例外的に認めるというのが,順当ではないかというのが,私の考え方なのです。
- 比喩的にいえば,用益物権(地上権,永小作権,地役権)とか,不動産賃借権(借地借家権を含む)とかは,それを設定した所有者以外の人が,所有者に優先して当該土地・建物を自由に利用できる権利ですが(「所有から利用へ」という最近の潮流),所有者の観点からすると,それは,「所有権の制限」といわれることになるのと同じです。
- 文化の発展への寄与という観点からは,公衆が文化的所産である著作を自由に利用する権利を保障すること,すなわち,著作を公共財として自由利用できる環境を整えることが何よりも大切であり,その環境の中でこそ,質の高い著作が次々と創造されるのです。著作者の私的権利よりも,公衆が著作を自由に利用できる公共的権利が優先すると考えるべきなのです。そして,文化の発展に寄与した著作者の私的権利は,一定期間に限って公正な利用料を強制的に徴収する権利を確保することに限定されると考えるべきではないでしょうか。
- 本書の筆者も,「著作権の制限」が正当化される理由として,著作者の権利に伴う責務について,以下のように述べています(下線部分は,私が変更すべきと考える箇所)。
- 「著作者は著作物の作成にあたって何らかの形で先人の文化遺産を摂取しているのがふつうであるから,新たに作成された著作物も一定の時期以後は国民すべてに解放され,後世の人々の利用に供さなければならぬ責務が当然に課せられているとみるべきであろう。」(半田・概説(2015)161頁)
- この点を,もう一歩前に進めて,以下のように,著作がすべての人々に利用されることを受忍すべき責務が著作者等に課されるだけでなく,著作を利用する国民にも,著作者に報いるロイヤリティを支払う責務が課されるべきだというのが,私の考え方です。この二つの責務が同時に果たされることによって,著作権法の目的である文化の発展(著作権法1条))が実現されるのではないでしょうか。
- 「著作者は,著作の作成に当たって,必ず,何らかの形で,先人の文化的所産を摂取しているのであるから,新たに作成された著作も,国民すべてに解放され,将来の著作者を含めてすべての人々の利用に供さなければならぬ責務が当然に課せられている。それと同時に,著作を利用する国民にも,その著作の著作者等が文化の発展に寄与していることを考慮して,一定の期間に限っては,著作者等に,投下資本に見合う公正な利用料(ロイヤリティ)を支払う責務が課せられている。」(半田・概説(2015)161頁の改変による加賀山説の表現)。
- 上記の私の考え方は,半田・概説(2015)161頁のパロディによって表現されているのですが,著作権法の従来の考え方の原則(著作者の権利の保護)と例外(著作者の連理の制限)とを逆転し,国民の著作利用権を原則とし,著作者等の権利の保護を例外とするというように,著作権法のパラダイムの転換を提唱するものであり,原文を踏まえつつも,原文とは思想内容が全く異なる新たな著作となっています。
- このような私の表現は,従来の著作権法の通説によれば,著作者人格権のうちの同一性保持権(著作権法20条)を侵害すると解される危険性があり,パロディを著作権法違反と断定した昭和55年最高裁判決(最三判昭55・3・28民集34巻3号244頁(モンタージュ写真事件上告審判決:著作権判例百選〔第5版〕第71事件))にも反するものです(私は,この最高裁判決によって破棄された原審である控訴審判決(東京高裁昭和47年(ネ)2816号)を幅広い教養に裏付けられ,文化の発展に寄与する高度な著作として高く評価しています)。
- しかし,このような改変を禁止することは,著作権法の目的である文化の発展にも寄与しないし,表現の自由を認める憲法にも違背すると思われます。そして,このような逆転的思想を単に新規の思想として表現するのではなく,通説的見解に新たな表現を追加することによって表現することは,パラダイムの転換を提唱する思想と従来の思想との違いだけでなく,両者の連続性をも明らかにする点で有用であると思われます。
- したがって,このような改変は,現行著作権法の下でも,著作権法20条2項4号の「著作物の性質〔学術書〕並びにその利用の目的及び態様〔逆転的思想を通説的見解の連続的発展として表現することができることを示すため〕に照らしやむを得ないと認められる改変」であり,しかも,改変する前の原文を比較の対象として明示しているのですから,文化の発展に寄与する「許される改変」であると,私は考えています。
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- 2018年2月7日(水) 曇りのち晴れ。
- 著作権法の講義レジュメを作成しつつ,著作権法の概説書(半田正夫『著作権法概説』〔第16版〕法学書院(2015))を読んでいます(第6日目)。
- 第6章(著作者の変動)では,著作権の譲渡,および,著作権の消滅,並びに,著作権の質入れ等の担保化が論じられています。
- この問題については,私は,著作は消滅することなくパブリック・ドメインの中で生き続け,著作者等のロイヤリティ請求権(著作権)だけが消滅すると考えていますので,本書によって,著作権の消滅に関する通説的見解の矛盾点(著作権を所有権との対比で構築しながら,期間の経過によって著作権が消滅すると考える矛盾点など)について,新たな発見ができるであろうと,期待しながら読み進めました。
- やはり,著作権の相続と消滅に関しては,筆者が組する「著作権と著作者人格権とを一元的に説明すること」は,一身専属性のはずの著作者人格権(59条)に相続を認めざるえなくなる点で(半田・概説(2015)207頁),無理があり,また,二元論はそもそも統一的な理解に達していないのですから,わが国の学説においては,著作権の統一的な理論的体系は,いまだに完成していないように思われます。
- しかし,著作権を一元的に理解することは,それほど難しいことではないように思われます。なぜなら,。本書でも,以下のように,著作権の真の意味での一元的理解に近づいているからです。
- 「最終遺族の死亡と同時に著作者人格権のみならず著作権全体が消滅し,著作物は自由利用となる。」(半田・概説(2015)213頁)
- したがって,この考え方を拡張し,もう一歩を進めて,すべての著作は,創作的表現(公表)の時点で,法令や判例と同様,パブリック・ドメインに帰属し,すべての人の利用が可能になると考え,しかも,著作者人格権は,民法の人格権に依拠することによって「特権」としない工夫(例えば,文化的所産である著作の利用差止は,著作権者といえども,権利の濫用として禁止されるなど)ができるならば,著作権法の一元的理解が可能となるように思われます。
- すなわち,すべての人は,文化的所産としての著作を自由に利用できる。ただし,その利用が「無料」か「有料かにおいて,以下の区別が生じると考えればよいのです。
- 無料利用…以下の二つの場合がある。
- 原始的無料利用
- 著作の性質による無料利用…法令,判例等(13条)
- 利用者の資格による無料利用…著作者等の自己利用(従来からの著作権者の権利の考え方)(17条)
- 利用の態様による無料利用…いわゆる著作権の制限としての私的使用等(30条~50条)
- 後発的無料利用
- 保護期間経過後の著作の利用(51条~58条)
- 著作権の消滅後の著作の利用(62条)
- 有料利用…その他のすべての場合
- このように考えることによって,著作権を一元的に理解が実現すると思われます(加賀山説)。
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- 2018年2月8日(木) 晴れ。
- 4月から岡山にある大学の大学院で民法と著作権法を講義することになり,その前に理事長面接を受けることになりました。そこで,今日,岡山に出張します。
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理事長面接に同行してくださった知財の専門家から,大阪地判平27・9・24(平25(ワ)1074号)判時2348号62頁(著作権侵害差止等請求訴訟)を紹介され,以下のような判旨について,特に,第2点について,民法学の立場からの感想を求められました。
- 第1に,大阪城や海遊館などの観光施設を表す「ピクトグラム」等について著作物性を構成し,ピクトグラムの「使用許諾契約」の終了による原状回復義務等を認めたものの,第2に,契約当事者(板倉デザイン研究所)たる地位を承継したと主張する原告(仮説創造研究所)は,著作権の登録なくして契約上の地位を主張することはできないとした事例
- これに対して,私は以下のように考えました。
- この判決は,著作権を物権と同じように考えて(準物権),その対抗要件を登録に求めたのでしょう。
- しかし,著作物は,無体物であることに争いはないので,民法上は,無体物は物権の対象とはなりません。なぜなら,民法は,「物とは有体物をいう」(民法85条)としており,無体物(債権を含む)に対する物権を認めることは,債権の上の所有権という概念を認めることになり,結果的に,債権者とは債権の所有者ということになってしまい,債権と物権との区別が崩壊してしまうからです(このことは,現行民法の立法理由書にも明確に記載されております)。
- 本件における著作物(ピクトグラムという無体物)の使用許可契約は,したがって,物権的に理解するのではなく,債権的に考えるべきであり,その譲渡の対抗要件は,民法467条1項の譲渡の通知又は承諾であると考えるのが妥当でしょう。したがって,元の著作権者である訴外板倉デザイン研究所から被告に対して譲渡又は通知通知がなされていると認められる事実があるかどうかが,決め手となります。
- 判決は,無体物である著作物に対して,有体物である不動産の対抗要件に関する規定等を類推していますが,本件については,無体物である著作物の契約上の地位の譲渡なので,債権譲渡・債務引受の対抗要件に関する規定・法理等を類推すべきだと思われます。
- 著作権法の講義レジュメを作成しつつ,著作権法の概説書(半田正夫『著作権法概説』〔第16版〕法学書院(2015))を読んでいます(第7日目)。
- 第7章(著作部の利用(著作権の行使))では,著作物の利用の許諾,著作物の出版契約,裁定による著作物の利用が論じられています。
- 前二者は,すでに何度も経験したことなのですが,これまで,理論的な考察をないがしろにしてきたので,じっくりと考えながら読み進めています。
- (HP訪問者の延べ人数:15,410人)
- 2018年2月9日(金) 晴れ。
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前途を祝して贈った送別の花 |
『法と経営研究』の編集会議を開催し,また,明日は,明治学院大学消費者法研究会に出席するため,上京します。
- 新幹線の中で,大阪地判平27・9・24(平25(ワ)1074W号)判時2348号62頁(著作権侵害差止等請求訴訟)を読み込みました。学説も判例も,著作物を有体物であるかのようにとらえたり,無体物に対する権利である著作権を不動産物権変動であるかのようにとらえる考え方からはそろそろ卒業し,当初から無体物(債権)を想定した債権譲渡・債務引受の法理に立ち返るべきだと思います。
- 明治学院大学の法と経営学研究所を訪問して,創刊された『法と経営研究』を教学補佐にお届けし,委員長,主任,編集担当の先生に渡していただくよう依頼しました。また,明治学院を退職される方をお招きして,昼食会を開催し,別れを惜しむ春の花を贈りました。新しい就職先も決まりそうだとのことで,前途を祝う花となりました。
- 『法と経営研究』の編集会議では,第2号の編集・出版に向けて,出版社のHPに原稿の応募・投稿規定に関するバナーを立ち上げてもらうための準備を急ぐこと,私のHPの記事も改訂する必要があることを確認しました。
- (HP訪問者の延べ人数:15,420人)
- 2018年2月10日 曇りのち雨。
- 明治学院大学の消費者法研究会に参加して,前回のシンポジウムの成果と問題点を議論し,二つの報告を拝聴して,改善のためのアドバイスを行いました。
- 第1報告の「改正民法543条が担う課題」については,買主が消費者となるため,消費者である買主の保護が十分であるかどうかという検討を合わせて行うべきではないかとの観点から,議論を行いました。その議論を通じて明らかとなった改正民法543条の問題点は,以下の通りです。
- 改正民法543条は,「債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは,債権者は,前二条の規定による契約の解除〔催告による解除,および,催告によらない解除〕をすることができない。」と規定している。
- この条文が,消費者問題として登場する場合というのは,例えば,売買契約において,売買目的物に契約不適合がある場合,すなわち,現行民法でいうところの,売主の担保責任(民法561条以下)が問題となる場合である。
- 改正民法は,契約目的物に契約不適合がある場合に,消費者である買主に追完請求権(新562条),代金減額請求権(新563条)を与えているが,いずれの場合にも,その不適合が「買主の責めに帰すべき事由によるものであるとき」には,それらの権利をすべて否定している。
- 問題は,これまで,消費者の強い味方となってきた,瑕疵担保責任に基づく解除権(現行570条)が改正民法の下でも,きちんと行使しうるかどうかである。
- 改正民法564条は,契約不適合がある場合に,その不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは,追完請求権(新562条)も,代金減額請求権(新563条)も行使できないが,「第541条及び542条の規定による解除〔催告による解除,および,催告によらない解除〕権の行使を妨げない」として,一見したところでは,消費者保護に資する規定のように見える。
- しかし,改正民法564条によって適用されるはずの民法541条及び542条の規定による解除は,実は,「債権者(買主)の責めに帰すべき事由によるものであるときは」,本報告のメインテーマとなっている改正民法543条によって,契約の解除をする道が塞がれている(条文を見ても,この結論が導かれる過程を説明するのは専門家にとっても困難である。このような専門家にもわかりにくい改正をしたこと自体が,民法(債権関係)改正の失敗の一斑を示している)。
- そこで,契約不適合が「買主の責めに帰すべき事由によるものである」という場合というのは,どんな場合であるのかが焦点となる。
- 売買契約における売買目的物の契約不適合は,通常は,売主の責めに帰すべき事由によって生じるのであるが,ここで問題となる契約不適合が,「買主(債権者)の責めに帰すべき事由によるものである」場合というのは,民法548条に規定されているように,発生した解除権が消滅する場合か,そうでなければ,改正民法567条2項に規定されているように,「売主が契約の内容に適合する目的物をもって,その引渡し債務の履行を提供したにもかかわらず,買主がその履行を受けることを拒み,又は受けることができない場合において,その履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその目的物が滅失し,又は損傷したとき」であろう。
- 後者の場合には,買主は,契約の解除をすることができない(改正民法567条2項)。この場合には,売買目的物に契約不適合がない場合であるから,その結論は妥当である。しかし,現実問題としては,目的物が滅失した場合には,契約目的物に契約不適合があった場合なのか,不適合がなかった場合なのかは,もはや,証明することができない。そして,たとえ,売買契約の目的物に隠れた瑕疵(契約不適合)があった場合でも,不適合を調べるために目的物をの引渡を受けた場合以後に,その目的物が双方の責めに帰することができない事由によって滅失し,または損傷したときは,改正民法567条1項によって,買主は契約の解除をすることができなくなる。
- この結果は,売買の目的物に隠れた瑕疵(契約不適合)がある場合には,明らかに不当であるが,改正民法に則った場合には,その場合の履行不能は,改正民法413条の2第2項によって,「その履行不能は,債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなす」という「推定」にとどまらず,「みなす」という不条理な条文によって正当化されてしまうことになる。
- 売買の目的物に隠れた瑕疵がある場合に,目的物の引渡を受けた買主である消費者の救済に大きな貢献をしたきた民法570条が,今回の民法改正によって削除され,現行民法570条の代わりに規定された561条~567条の規定は,上記のように,消費者被害の救済を大きく後退させるものであり,その元凶が,改正民法543条,413条の2第2項,567条であることを認識すべきである。
- 以上の点を踏まえた上で,次回の研究会で,引き続き報告をしていただくことになりました。
- 第2報告の「消費者団体による金銭請求とその帰属-シ・プレ原則の活用と問題点の検討」については,シ・プレ原則について論文を執筆した会員や,その他の他の会員から,消費者被害による金銭請求権の類型についての問題点の指摘と修正提案など有益なアドバイスがなされ,また,刑法の専門家である会員からは,被害回復給付金支給金制度(犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律)の仕組みについて的確なアドバイスがなされたので,私からは,消費者団体が回収した金銭の配分の優先権の順位に関して,先取特権の規定の活用を検討すべきであるとの指摘にとどめておきました。
- 『法と経営学研究』の紹介記事をアップデートしました。
- (HP訪問者の延べ人数:15,440人)
- 2018年2月11日(日) 曇り後晴れ。
- 東京でのすべての仕事(『法と経営研究』の編集会議,消費者法研究会でのアドバイス)を終え,帰郷します。
- 新幹線の列車中で,来る3月4日に開催されることが決まった明治学院大学の白金法学会士業倶楽部,および,民事法共同研究「債権法改正を考える」の共催による講演会「民法(債権関係)改正を考える」のレジメ(第一次案)を作成しました。
- 日程:2018年3月24日(土)16:30~18:00
- 場所:明治学院大学法律科学研究所
- テーマ:「民法(債権関係)改正の第三者評価」
- 講演レジュメ:講演「民法(債権関係)改正の第三者評価」の概要は以下の通り。
- Ⅰ.第三者評価基準:改正法は,諮問に答えるものとなっているか?
- (1) 現行民法は,1898年に成立したが,制定以後,わが国の社会・経済は,大きく変貌しており,民法の規定の一部には,時代の進展に対応できないものが生じている。そこで,法務大臣は,2009年10月28日,法制審議会に対して,以下のような諮問(第88号)を行った。
- 民事基本法典である民法のうち債権関係の規定について,〔1〕同法制定以来の社会・経済の変化への対応を図り,〔2〕国民一般に分かりやすいものとする等の観点から,国民の日常生活や経済活動にかかわりの深い契約に関する規定を中心に見直しを行う必要があると思われるので,その要綱を示されたい。(番号数字は筆者が挿入)
- (2) この諮問に応えるべく長い時間をかけて準備され,2015年3月31日に,国会に提出された民法改正案に関する「民法の改正理由」は,以下の通りである(http://www.moj.go.jp/content/001142183.pdf)。
- 社会経済情勢の変化に鑑み,〔1〕消滅時効の期間の統一化等の時効に関する規定の整備,〔2〕法定利率を変動させる規定の新設,〔3〕保証人の保護を図るための保証債務に関する規定の整備,〔4〕定型約款に関する規定の新設等を行う必要がある。これが,この法律案を提出する理由である。(4つの番号は筆者が挿入)
- Ⅱ.評価基準(その1):現行民法制定後の社会・経済の変化への対応が図られているか?
- (1) 高齢化社会の進展に対応しているか? ←全く対応していないのではないか。
- 高齢化社会の進展によって成年後見制度は,一方でその重要性を増しているが,他方で,精神的障害者の人権が侵害される恐れがあるため,その調整を行うべきであるというのが国際的な動向である。
- 今回の改正は,そのような国際的な動向について,対応しているか?
- (2) 情報化社会の進展に対応しているか? ←全く対応できていないのではないか?
- 国民の資産の多くの割合を占める預金債権について,その利用の際たるものとしての振込み,市民の多くが利用している電子マネー,クレジットカード,さらには,仮想通貨に関する基本的な法律関係について,民法上の対応がなされているか?
- 民法477条によって,はじめて振込に関する規定が1か条だけ追加されたが,この規定は,振込に関する法律関係を明らかにしているか,また,規定そのものがわかりやすいといえるか?
- 改正法 第477条(預金又は貯金の口座に対する払込みによる弁済)
債権者の預金又は貯金の口座に対する払込みによってする弁済は,債権者がその預金又は貯金に係る債権の債務者に対してその払込みに係る金額の払戻しを請求する権利を取得した時に,その効力を生ずる。
- メガバンクによる振り込みの実態においては,預金者が振込を依頼すると,その時点で,銀行預金が引き落とされてしまい,その後の危険は,振込を依頼した預金者が負担することになる。振込の相手方が預金債権を取得するのは,預金を引き落とされた後のことであり,次の取引営業日まで,数日を要する場合も稀ではない。これでは,銀行の手違いによる誤振込み,依頼者の手違いによる誤振込みを含めて,預金者がすべての危険を負担することになって不合理である。
- そこで,発想の転換が必要となる。銀行は,私的機関であるとはいえ,国家によって厚く保護されており,国民の信頼も厚い。したがって,銀行振込の場合には,預金が引き落とされた時点で,弁済の提供があると考え,かつ,供託と同様に扱うことが合理的である。そのように考えると,改正法第477条は,以下のように改正するのが妥当ではないか。
- 改正法 第477条(預金又は貯金の口座に対する払込みによる弁済)の再改正私案(加賀山説)
①債権者の預金又は貯金の口座に対する払込みによってする弁済の場合には,弁済者が振込みを依頼し,弁済者の預金又は貯金の口座から振込相当額が引き落とされた時点で,弁済の提供及び供託が行われたのと同様に扱い,弁済者は,その時点から,債務の不履行によって生ずべき一切の責任を免れる。
②前項の振込みによってする弁済の場合には,債権者がその預金又は貯金に係る債権の債務者(以下,「銀行等」という。)に対してその振込みに係る金額の払戻しを請求する権利を取得するまでは,弁済者は,銀行等に対して,振込みの組戻しを請求することができる。この場合においては,弁済者は,振込みをしなかったものとみなす。
③第1項の振込によってする弁済は,債権者がその預金又は貯金に係る債権の債務者に対してその払込みに係る金額の払戻しを請求する権利を取得したときは,弁済者の預金又は貯金の口座から振込相当額が引き落とされた時点に遡って,その効力を生ずる。
- 定型約款の規定が新設されたが(改正案548条の2以下),約款の有効性と無効の基準を明らかにされたか?
- 国際基準としての「約款作成者不利原則」が規定されていないのはなぜか?むしろ,『約款作成者,事後改定自由の原則』へと堕していないか?
- 改正法 第548条の4(定型約款の変更)
①定型約款準備者は,次に掲げる場合には,定型約款の変更をすることにより,変更後の定型約款の条項について合意があったものとみなし,個別に相手方と合意をすることなく契約の内容を変更することができる。
一 定型約款の変更が,相手方の一般の利益に適合するとき。
二 定型約款の変更が,契約をした目的に反せず,かつ,変更の必要性,変更後の内容の相当性,この条の規定により定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無及びその内容その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき。
- 消費者契約法第10条と比較した場合,無効とすべき不当約款の判断基準から,「任意規定」という公正かつ明確な概念が脱落し,その代わりに,「取引上の社会通念」という,約款の無効とは逆に,約款の有効性を担保するのに好都合な概念を基準としていることは,妥当か?
- 改正法 第548条の2(定型約款の合意)
②前項の規定にかかわらず,同項の条項のうち,相手方の権利を制限し,又は相手方の義務を加重する条項であって,その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして第1条第2項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては,合意をしなかったものとみなす。
- ところで,改正法では,民法の中でも,最重要とされる以下の九つの問題の解決基準として,「社会通念」という用語が使われている。これは,「社会通念」の濫用による理論の放棄(重要事項を裁判官の恣意的判断に委ねること)ではないのか?
- 「錯誤に基づく取消しができるかどうか」(改正法 第95条)
- 「善管注意義務を尽くしたかどうか」(改正法 第400条)
- 「履行が不能かどうか」(改正法 第412条の2)
- 「責めに帰すべき事由があるかどうか」(改正法 第415条)
- 「弁済受領権限の外観があるかどうか」(改正法 第478条)
- 「特定物の現状引渡しとして免責されるかどうか」(改正法 第483条)
- 「債権者の担保保存義務違反が免責されるかどうか」(改正法 第504条)
- 「催告による契約解除ができるかどうか」(改正法 第541条)
- 「約款が無効かどうか」(改正法 第548条の2)
- (3 )国際化社会の進展に対応しているか? ←むしろ国際化に逆行しているのではないか?
- 国際的な動向を押さえて,承諾について,発信主義から到達主義へと変更がなされ,現行法527条が削除されたが,国際的な対応に必要な部分的な発信主義の規定が補われていない(現行法527条の削除を補うための例えば,ウィーン売買条約(CISG)16条1項のような規定が補われていない)。これで,国際化に対応したと言えるのか?
- 改正法 第522条(契約の成立と方式)
①契約は,契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という)に対して相手方が承諾をしたとき〔第97条第1項により承諾が到達したとき〕に成立する。
現行民法 第526条(隔地者間の契約の成立の時期)
①隔地者間の契約は,承諾の通知を発した時に成立する。
現行民法 第527条(申込みの撤回の通知の延着)
①申込みの撤回の通知が承諾の通知を発した後に到達した場合であっても,通常の場合にはその前に到達すべき時に発送したものであることを知ることができるときは,承諾者は,遅滞なく,申込者に対してその延着の通知を発しなければならない。
②承諾者が前項の延着の通知を怠ったときは,契約は,成立しなかったものとみなす。
- ウィーン売買条約 第16条【申込みの撤回】〔承諾の到達主義の例外規定・承諾の発信時点の重視〕
(1) 申込みは,契約が締結されるまでの間,相手方が承諾の通知を発する前に撤回の通知が当該相手方に到達する場合には,撤回することができる。
- 国際条約と全く同じ内容の重要な条文である現行民法522条の削除は,正当化できるのか?
- ウィーン売買条約 第21条【遅延した承諾,通信の遅延】
(2) 遅延した承諾が記載された書類その他の書面が,通信状態が通常であったとしたならば期限までに申込者に到達したであろう常況の下で発送されたことを示している場合には,当該承諾は,承諾としての効力を有する。ただし,当該申込者が事故の申込みを失効していたものとすることを遅滞なく相手方に対して口頭で知らせ,又はその旨の通知を発した場合は,この限りでない。
現行法 第522条(承諾の通知の延着)
①前条第1項の申込み〔承諾期間の定めのある申込み〕に対する承諾の通知が同項の期間の経過後に到達した場合であっても,通常の場合にはその期間内に到達すべき時に発送したものであることを知ることができるときは,申込者は,遅滞なく,相手方に対してその延着の通知を発しなければならない。ただし,その到達前に遅延の通知を発したときは,この限りでない。
②申込者が前項本文の延着の通知を怠ったときは,承諾の通知は,前条第1項の〔承諾〕期間内に到達したものとみなす。
- 国際化に対応する場合,国によって対応が異なる場合にどのような判断基準を用いるべきか?
- 民法420条の改正において,ドイツ民法は,過大な賠償額の予定についてだけ,裁判所の介入を認めている。これに対して,フランス民法は,過大な場合だけでなく,大企業が中小企業に対して行う過少な賠償額の予定の場合にも,裁判所の介入を認めている。
- 改正法が,3つの解釈(①賠償額が過大の場合の減額のみ可能(消費者保護的解釈・潮見説),②賠償額が過大の場合の減額だけでなく,大企業が中小企業に対して賠償額を過小に定めた場合の増額も可能(市民法的解釈・加賀山説),従来通り増減とも不可(契約自由への復帰・加藤雅信説))の余地を残すような中途半端な改正をしたことは正当化できるのか?
- 改正法 第420条(賠償額の予定)
①当事者は,債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。 この場合において,裁判所は,その額を増減することができない。
- (4) 格差社会の是正,貧困化傾向の防止対策に連動しているか? ←連帯保証人・連帯債務者の保護に逆行しているのではないか?
- 改正法によって保証人の保護が図られたとされているが,保護されるべきは,連帯保証人の保護であり,連帯保証人の保護にとっては,その規定が準用される連帯債務者の保護が不可欠である。この点に関して,連帯債務者の一人に生じた事由の効力が弱められたのはなぜか。保証人を保護ずるための,保証の付従性を規定していた現行法437条,439条を削除して,改正法445条によって連帯債務者の地位を害しているが,それで,連帯債務者の保護,ひいては,連帯保証人の保護といえるのか?
- 改正法 第445条(連帯債務者の一人との間の免除等と求償権)
連帯債務者の一人に対して債務の免除がされ,又は連帯債務者の一人のために時効が完成した場合においても,他の連帯債務者は,その一人の連帯債務者に対し,第442条第1項の求償権を行使することができる。
現行法 第437条(連帯債務者の1人に対する免除)
連帯債務者の1人に対してした債務の免除は,その連帯債務者の負担部分についてのみ,他の連帯債務者の利益のためにも,その効力を生ずる。
現行法 第439条(連帯債務者の1人についての時効の完成)
連帯債務者の1人のために時効が完成したときは,その連帯債務者の負担部分については,他の連帯債務者も,その義務を免れる。
- 保証人の保護の規定として重要な規定である504条が,債権者の有利に改正されている。民法504条の簿法であるフランス民法典においては,保証人を保護するための規定の強化がなされている。このような潮流に反する改正法の追加規定は,保証人の保護に資するといえるのか?
- 改正法 第504条(債権者による担保の喪失等)
①弁済をするについて正当な利益を有する者(以下この項において「代位権者」という。)がある場合において,債権者が故意又は過失によってその担保を喪失し,又は減少させたときは,その代位権者は,代位をするに当たって担保の喪失又は減少によって償還を受けることができなくなる限度において,その責任を免れる。その代位権者が物上保証人である場合において,その代位権者から担保の目的となっている財産を譲り受けた第三者及びその特定承継人についても,同様とする。
(新設)②前項の規定は,債権者が担保を喪失し,又は減少させたことについて取引上の社会通念に照らして合理的な理由があると認められるときは,適用しない。←保証人の保護の後退
- 現行法 第504条(債権者による担保の喪失等)
第500条〔法定代位〕の規定により代位をすることができる者がある場合において,債権者が故意又は過失によってその担保を喪失し,又は減少させたときは,その代位をすることができる者は,その喪失又は減少によって償還を受けることができなくなった限度において,その責任を免れる。
- フランス民法典 第2314条(旧2037条)
債権者の行為によって保証人が債権者の権利,抵当権及び先取特権について代位をすることができなくなった場合には,保証人はその責任を免れる。この規定に反するすべての条項は無効とする。←保証人の保護の強化
- Ⅲ.評価基準(その2):改正法は,国民一般にわかりやすいものとなっているか?
- (1) 無効と取消しの関係はわかりやすくなったか? 大混乱を生じさせているのではないか?
- 意思能力のない状態でなした法律行為は無効とされることになった(改正法3条の2)。それなのに,認知症などで日常生活もままならないために成年被後見人となった者,すなわち,精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者のした法律行為は,取消しとされている(9条)。この区別は,市民にとってわかりやすくなったと言えるのか?
- 改正法 第3条の2
法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは,その法律行為は,無効とする。←追認ができない
- 第9条(成年被後見人の法律行為)
成年被後見人の法律行為は,取り消すことができる。ただし,日用品の購入その他日常生活に関する行為については,この限りでない。←追認が可能。
- 第7条(後見開始の審判)
精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については,家庭裁判所は,本人,配偶者,4親等内の親族,未成年後見人,未成年後見監督人,保佐人,保佐監督人,補助人,補助監督人又は検察官の請求により,後見開始の審判をすることができる。
- 錯誤の効果取消しとなったが,心裡留保や通謀虚偽表示のように錯誤よりも保護の必要がないものが無効のままとなっているのはなぜか?民法学者は,このことを市民にわかりやすく説明することができるか?
- 改正法 第95条(錯誤)
①意思表示は,次に掲げる錯誤に基づくものであって,その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは,取り消すことができる。
一意思表示に対応する意思を欠く錯誤
二表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
- 現行法 第95条(錯誤)
意思表示は,法律行為の要素に錯誤があったときは,無効とする。ただし,表意者に重大な過失があったときは,表意者は,自らその無効を主張することができない。
- 改正法 第93条(心裡留保)
①意思表示は,表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても,そのためにその効力を妨げられない。ただし,相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り,又は知ることができたときは,その意思表示は,無効とする。
②前項ただし書の規定による意思表示の無効は,善意の第三者に対抗することができない。
- (2) 時効制度は,単純化されたか?市民生活にとってそれが恩恵となっているか? 市民生活に不便を生じさせているのではないか?
- 短期消滅時効は,例えば,塾の月謝の領収書は1年,売買代金は2年,医療費は3年というように,領収書の保存期間としての役割も果たしてきた。これを廃止し(現行法170条~174条の削除),一律に領収書を5年間保存しなければならないとする改正が市民の利益につながるのだろうか?
- (3) 法定利率を変動させる規定が新設されたが,わかりやすい規定となっているか? 改正法404条4項・5項の計算方法を理解できる人が何人いるのか?
- ゼロ金利が続く中,3パーセントの金利が維持されるのは,変動制を採用したといえるのか。市中銀行の短期貸付の平均利率に連動させなかったのはなぜか?
- (4) 債務不履行の救済として,原始的不能と後発的不能の区別をなくすことは,国際化に対してものといえるが,条文に明確に規定されていた原始的不能と後発的不能の文言(現行410条)を削除することに意味があるのか?
学者の趣味を押し付けているだけではないのか?
- 現行法410条文から二つの不能の区別を削除しておいて,解説書には,「この不能には,二つの不能が含まれているので注意が必要である」と説明するのは,条文をわかりやすくするという趣旨に逆行しているのではないか?むしろ,そのやり方は,滑稽ではないのか?
- 改正法 第410条(不能による選択債権の特定)
債権の目的である給付の中に不能のものがある場合において,その不能が選択権を有する者の過失によるものであるときは,債権は,その残存するものについて存在する。
- 現行法 第410条(不能による選択債権の特定)
①債権の目的である給付の中に,初めから不能であるもの又は後に至って不能となったものがあるときは,債権は,その残存するものについて存在する。
②選択権を有しない当事者の過失によって給付が不能となったときは,前項の規定は,適用しない。
- (5) 第三者による弁済しかなかった条文(現行法第474条)に,債務者による弁済の規定が追加された(改正法473条)。しかし,それで,弁済の効果が国民にとってわかりやすくなったか?
混乱を生じさせているだけではないのか?
- たとえば,保証債務という債務を弁済したら,本当に,債権は消滅するのか?債権は,消滅せず,民法501条によって,保証人に移転するのではないのか?
- 改正法 第473条(弁済)
債務者〔通説・判例では,保証債務の債務者である保証人を含む〕が債権者に対して債務の弁済をしたときは,その債権は,消滅する。
- (6) 消費者保護のかなめとなっていた,瑕疵担保責任の規定(民法570条)が削除された。その規定はどこに行ったのか? 消費者いじめではないのか?
- 商品を購入して,契約の適合性を検査し,不適合を発見して売主に通知した直後に,不可抗力でその商品が滅失または損傷したとする。現行法570条であれば,契約を解除して,代金の返還を受けることも場合によっては損害賠償も請求ができた。
- 現行法
第570条(売主の瑕疵担保責任)
売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは,第566条〔地上権等がある場合等における売主の担保責任〕の規定を準用する。ただし,強制競売の場合は,この限りでない。
- 現行法
第566条(地上権等がある場合等における売主の担保責任)
①売買の目的物が地上権,永小作権,地役権,留置権又は質権の目的【物】である場合において,買主がこれを知らず,かつ,そのために契約をした目的を達することができないときは,買主は,契約の解除をすることができる。この場合において,契約の解除をすることができないときは,損害賠償の請求のみをすることができる。
②前項の規定は,売買の目的【物】である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する。
③前2項の場合において,契約の解除又は損害賠償の請求は,買主が事実を知った時から1年以内にしなければならない。
- しかし,改正法567条によれば,この場合,買主は損害賠償も,解除も請求できなくなるのではないか?
- 改正法 第567条(目的物の滅失等についての危険の移転)
①売主が買主に目的物(売買の目的として特定したものに限る。以下この条において同じ。)を引き渡した場合において,その引渡しがあった時以後にその目的物が当事者双方の責めに帰することができない事由によって滅失し,又は損傷したときは,買主は,その滅失又は損傷を理由として,履行の追完の請求,代金の減額の請求,損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。この場合において,買主は,代金の支払を拒むことができない。
②売主が契約の内容に適合する目的物をもって,その引渡しの債務の履行を提供したにもかかわらず,買主がその履行を受けることを拒み,又は受けることができない場合において,その履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその目的物が滅失し,又は損傷したときも,前項と同様とする。
- 改正法 第413条の2(履行遅滞中又は受領遅滞中の履行不能と帰責事由)
①債務者がその債務について遅滞の責任を負っている間に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは,その履行の不能は,債務者の責めに帰すべき事由によるものとみなす。
②債権者が債務の履行を受けることを拒み,又は受けることができない場合において,履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは,その履行の不能は,債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなす。
- 改正法 第543条(債権者の責めに帰すべき事由による場合)
債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは,債権者は,前二条の規定による契約の解除〔第541条による催告による解除,および,第542条による催告によらない解除〕をすることができない。
- 改正法 第564条(買主の損害賠償請求及び解除権の行使)
前2条の規定〔買主の追完請求権及び買主の代金減額請求権〕は,第415条の規定による損害賠償の請求並びに第541条及び第542条の規定による解除権の行使を妨げない。
- 売主の瑕疵担保責任を削除して,それぞれの条文の関係がわかりにくい条文(改正法564条と543条との関係は文言上は不明。また,改正法567条1項の正当化の根拠は,413条の2第2項に求められるのであろうが,理論的な矛盾が生じている)へと変更した上,消費者市民の権利を不当に制限する改正は,本当に必要だったのだろうか?
- Ⅳ.結論
- 今回の民法(債権関係)改正は,改正理由に取り上げられている点に限ったとしても,以下のように,諮問に答えるものとなっていない。
- 諮問の第1点については,立法事実となるはずの「民法制定後の社会・経済の変化とは何か」,「それに対して,どのような基準で改正を行うのか」という必要最小限の基準さえを明確にすることなく,市民生活にとって有益とはいえない改正を行っているに過ぎない。
少なくとも,高齢化社会の進展,情報化の進展,国際化の進展には,対応できていない。
- 第1に,消滅時効の期間の統一化等の時効に関する規定の整備を行っているが,市民生活にとって必要性のない整備であり,むしろ,領収書の長期間の保管等,市民生活に負担を強いるものとなっている。
したがって,今回の消滅時効に関する改正は,以下の点を考慮するならば,改正のメリットよりもデメリットの方がはるかに大きいと評価しなければならない。
- 第1に,改正法は,市民生活にとって必要であるため削除すべきでない条文(現行法170条~174条)を削除している。
- 第2に,改正法は,「時効の中断」(実質的な意味は,時効期間のリセット,すなわち,時効の中止・再開)という用語を「時効の更新」へと変更している。しかし,「更新」とは,期間の終了後に同じ内容を継続することを意味するのであるから,時効期間の継続を前提としつつ期間計算をリセットするという現象を説明する用語法としては不適であり,しかも,これまでの「更新」という用語法に混乱を生じさせるという重大な過ちを犯している。あえて,「更新」という用語を使うのであれば,現行法の「時効の停止」(現行法158条~161条)を「時効の完成猶予」とするのではなく,「時効の短期更新」と読み替えるべきであろう。
- 第3に,改正法は,従来の条文の条数の連続性を無視して,条文の判例検索を不可能にするという乱暴な改正をしている。例えば,現行法の第148条は,「時効の中断の効力が及ぶ者の範囲」であるが,改正法は,この条文の内容を第153条へと移動させている。しかし,第153条といえば,現行法においては,「催告」である。ところで,改正法で「催告」はどこに規定されているかというと,改正法第150条である。ところが,現行法の第150条は,「支払督促」である。改正法で「支払督促」はどこに規定されているかというと,改正法第147条1項2号である。しかし,第147条1項2号といえば,現行法では,「差押え,仮差押え又は仮処分」である。…。このように,現行法と改正法の条文との連続性が遮断されているため,一般国民ばかりでなく,法曹専門家にとっても,条文による判例検索は,困難を極めることになるであろう。なぜなら,「時効の中断の効力が及ぶ者の範囲」の判例を検索しようとして改正法に従って第153条で検索すると,出てくる判例は,「催告」に関するものだけという結果になりかねないからである。
- 第2に,法定利率を変動させる規定の新設を行っているが,短期貸出の平均利率に必ずしも連動しない中途半端な規定になっており,再改正が必要であり,改正のメリットよりもデメリットの方が大きい。
- 改正法第404条は,一般国民にとって理解が著しく困難であり,しかも,その困難を乗り越えてであり,同条4項および5項理解した場合に,の計算式をゼロ金利が続く現在の状況に計算式を適用した場合に,第3項における法定利率を3パーセントとする結論を導くことができるのかどうか根拠が不明である。
- したがって,本条は,第2項の3パーセントを4項・5項の計算式に基づいて再計算するとともに,第3項を,端的に,「前項の規定にかかわらず,法令利率は,3年を1期とし,1期ごとに短期貸出利率の平均を考慮して,直近の6年間の短期貸し付けの平均利率を考慮して法務省令で定める」とし,国民一般に取って理解が困難な上に,不要な4項および5項は削除すべきである。
- 第3に,保証人の保護を図るための保証債務に関する規定の整備を行っているものの,最も保護が必要な連帯保証人,連帯債務者の保護を後退させており,保証人保護というよりも,むしろ,債権者保護に傾き過ぎており,保証人の保護が図られていると評価することはできない。
- このデメリットを解消するためには,以下のように,削除した現行条文(現行法437条,439条)を復活し,改正した条文(改正法445条)を削除して,元の条文に戻すべきである。すなわち,この点に関する改正法は,無意味であったということになる。
- 第4に,定型約款に関する規定の新設を行うに際して,自己責任の原則に基づく「作成者不利の原則」ではなく,反対に,「作成者の事後改定の自由の原則」ともいうべき国際的な基準から逸脱した規定を新設しており,改正のいメリットよりも,デメリットの方が大きい。
- したがって,新設された提携約款に関する規定は,消費者契約法第10条を考慮し,「約款作成者不利原則」の精神に基づいて,再改正すべきである。
- このように,改正法は,ある時は,現代的な国際的な傾向よりも古臭い判例の重視し,ある時は,判例を無視して,特定の国の模倣とみられる規定を重視しており,民法制定後の社会・経済の変化に対応するという一貫した改正基準を示すことに失敗している。
そもそも,条文が古くなったから新しくするとしつつ,契約法の国際的な潮流よりも,明治時代に形成された古い判例法理をもそのまま条文化するという今回の改正方法は,改正の正当性を根本的に失わせているといえよう。
- 諮問の第2点については,わかりやすい現行条文をわかりにくく変更したり(例えば,先に述べた改正法404条,473条,546条など),新設した条文のそれぞれの条文間の関係が複雑に入り組んでおり(特に,時効制度,売主の担保責任・契約不適合責任の箇所は,現行法との連続性に顧慮がなされていない),国民一般ばかりでなく,法律専門家にとってもわかりにくい構造となっており,国民一般にとってにわかりやすくするという諮問にも答えていない。
- 今回の改正に従事した審議会のメンバーは,実務家よりも学者が圧倒的に多いことが特色とされている。しかし,その結果は,以下のように,理論的な整合性を欠く結果に陥っているばかりでなく,民法の条文には存在しなかった超不確定概念である「社会通念」を条文の用語に採用するという失態を犯し,重要な判断を裁判官の裁量判断に委ね,学者として理論を放棄したのと同じ結果に陥っている。
- 第1に,現行法が理論的に整合性を保っていた場面において,理論的整合性を放棄している。例えば,現行法は,意思の不存在の場合(現行法93条~95条)には「無効」とし,意思は存在するが意思表示に瑕疵がある場合(現行法96条)には「取消し」とするという理論的な基盤を有していたのに対して,改正法は,意思が存在しない場合について,心裡留保と虚偽表示(改正法93条,94条)は「無効」としつつ,要素の錯誤に該当する場合(改正法95条1項1号)については,「取消し」とするなど,理論的整合性を欠くものとなっている。事理弁識能力を欠く成年被後見人の法律行為を取消し(9条1項)としつつ,意思能力を欠く場合を無効としている(改正法3条の2)のも,理論的な整合性を欠いている。このような状況下において,現職の民法の教員が,学生たちに対して,まともな講義ができるのか,非常に不安である。
- 第2に,今回の改正でも最も重要な改正と思われる①「錯誤に基づく取消しができるかどうか」(改正法第95条),②「善管注意義務を尽くしたかどうか」(改正法第400条),③「履行が不能かどうか」(改正法第412条の2),④「責めに帰すべき事由があるかどうか」(改正法第415条),⑤「弁済受領権限の外観があるかどうか」(改正法第478条),⑥「特定物の現状引渡しとして免責されるかどうか」(改正法第483条),⑦「債権者の担保保存義務違反が免責されるかどうか」(改正法第504条),⑧「催告による契約解除ができるかどうか」(改正法第541条)⑨「約款が無効かどうか」(改正法第548条の2)について,その決定基準の重要部分を「社会通念」に委ねた点は,裁判官の恣意的判断に委ねたのと同じであり,理論の放棄として,厳しく批判されなければならない。
- 以上の理論的不整合,および,理論の放棄に等しいが生じた原因は,立法事実を明確にしない状況の下で,かつ,改正を導く明確な理念がないままに無理な改正(必要な条文の削除・必要のない条文の追加)を行ったためである。
- したがって,民法(債権関係)改正は,いったん反故にして,立法事実としての高齢化の進展,情報化の進展,国際化の進展の内容を明確にし,その上で,立法事実に対応できるように,特に,上記本文で指摘した不具合をすべて再改正するとともに,今後も続く民法(契約外債権関係,および,物権関係)改正においては,最初に,立法事実を明確にし,それを解決すための改正を行うべきである。
- (HP訪問者の延べ人数:15,450人)
- 2018年2月12日(月) 雪のち晴れ時々小雪。
- 3月26日に開催される民法(債権関係)改正に関する講演会のレジュメ「民法(債権関係)改正の第三者評価」を昨日作成しましたが,不十分な点があるため,具体的な条文の追加,および,結論部分の追加と改訂を行いました(内容が倍以上に増加しました)。
- (HP訪問者の延べ人数:15,470人)
- 2018年2月13日(火) 雪のち晴れ。
- 著作権法の講義レジュメを作成しつつ,著作権法の概説書(半田正夫『著作権法概説』〔第16版〕法学書院(2015))を読んでいます(第8日目)。
- 第8章(著作者の登録)では,著作権の登録の意義,および,種類,登録の手続,並びに,対抗要件としての登録制度の是非が論じられています。
- 特に重要なのは,著作権の対抗要件としての登録制度が,機能不全に陥っているという,以下の指摘です(半田・概説(2015)256-257頁)。
- わが著作権法は,著作権または出版権の得喪・変更および質入れに関して登録を対抗要件としており,登録のいかんがその効力の上に重大な性を生ぜしめている。だが,このような対抗要件としての登録制度は実際にはあまり利用されていない。
- 現行登録制度は,①不動産の場合の保存登記に比せられるような登録が認められていないため,著作権変動の公示方法として登録制度はきわめて不十分なものであり,有効に機能しえない。②著作物の同一性の識別・判定は困難であり,したがって,著作物を特定して登録しても類似著作物に排他性を主張することはできず,登録をしたことの意味が無に帰せられる。③対抗要件としての登録制度は著作権のほか出版権についてのみ認められているにすぎず,出版権以外の著作物利用権-上映権・放送権・映画化権など-に関し,これを設定登録して利用者に排他的・独占的権利を確保せしめる方法が現行法上承認されていないという中途半端なものである。④諸外国の例をみても,対抗要件としての登録制度を保持しているものはほとんどなく,比較法的には遅れた制度となっているばかりか,ベルヌ条約の無方式主義に反するおそれもある。
- このように,現在の登録制度は,制度的に完備しているものとはいいがたく,関係者を従わせるには不十分極まりないものである。
- 「それではどのようにすればよいか」という問題について,本書は,登録に代わるべき対抗要件を案出することを条件に登録制度を廃止することを提案しています。しかし,肝心の登録制度に代わるべき対抗要件については,以下のように述べるのみで,現行法上の解決策を提案するまでには至っていません。
- 「他の立法例にもみられるように,複製物に取得した権利の内容を掲げることにし,しかもこれに排他的権利の取得についての表示がなされている時は対抗力を有するということにすれば,公示手段の技術的困難性を濃くすることができるのではあるまいか。いずれにせよ,不徹底な登録制度を根本的に検討すべき段階に達しているものと思われる。」(半田・概説(2015)257頁)
- そこで,民法の基礎理論をマスターし,かつ,旧民法では無体物をも「物」として扱うことを許していたにも関わらず,無体物を「物」と表現すること許さない現行民法の下においても,例外的に,質権を「準用」(民法362条2項」)することを通じて,無体物である権利を対象とすることができる準物権(権利質)という存在を創設している民法上の権利質の対抗要件の制度を参考にして,現行著作権法の下においても,形骸化した登録制度に代わる実質的な著作権の対抗要件を解釈論として展開できるユニークな(ただ一人の)学者の出番となります(先が読める一部のマニアックなファンからは,拍手が聞こえてきそうです)。
- 詳細な解釈論は,今日じっくり考えた後に,明日から「著作権の対抗要件に関する革命的提案」として,執筆を行う予定です。ご期待ください。
- (HP訪問者の延べ人数:15,490人)
- 2018年2月14日(水) 晴れ。久しぶりに気温上昇。
- 大阪地判平27・9・24(平25(ワ)1074号)判時2348号62頁(著作権侵害差止等請求訴訟)を題材に,著作権譲渡の対抗要件について考察しています(第1日目)。
- 考察に先立って,本件の事実関係を図示してみました。
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訴外Z:板倉デザイン研究所, X:仮説創造研究所/Y1:大阪市, Y2:都市センター 弁済請求には,賃貸借構成の場合には,原状回請求・使用料相当額請求が含まれ,
委任(有償の業務委託契約)構成の場合には,ロイヤリティ・報酬請求が含まれる。 |
- この図を参照しながら,以下の問題を検討します。
- 1.著作権者である訴外Zから著作権を譲り受けたXが,訴外ZとY2間で締結されたピクトグラム等の使用契約に基づいて,契約終了に伴う原状回復請求権,および,報酬請求権を,契約外のY1に対して行使できるかどうか。
- 2.著作権者である訴外Zから著作権を譲り受けたXの権利行使には,著作権の登録という対抗要件が必要であるかどうか。
- 大阪地判平27・9・24(平25(ワ)1074号)判時2348号62頁は,以上の点について,概略,以下のように判断しています。
- 1.大阪城や海遊館などの観光施設を表す「ピクトグラム」等について著作物性を肯定し,ピクトグラムの「使用許諾契約」の終了による著作権者である訴外ZのYらに対する原状回復義務等を認めた。
- 2.しかし,契約当事者たる地位を承継したと主張するXは,著作権の登録なくして契約上の地位を主張することはできないとし,結果的に,XのYらに対するピクトグラムの抹消・消除請求は認められないとした。
- 以上のように判断した根拠をもう少し詳しく見てみましょう。本判決は,ピクトブラムの使用許諾契約の直接の当事者ではない大阪市(Y1)の著作権者である訴外Zに対する義務について,以下のように判断しています。
- 〔1〕本件各使用許諾契約〔ピクトグラム使用契約,および,大阪市観光案内図使用契約〕においては,板倉デザイン研究所(訴外Z)が,被告都市センター(Y2)に対し本件ピクトグラム等についての使用を許諾するに当たり,大阪市案内表示ガイドラインに従って実施される大阪市各局の案内表示とそれらを補足する地図等の媒体において,被告大阪市(Y1)が本件ピクトグラム等を使用することが定められている。このような構造からすると,Y1は,訴外Zの承諾の下に,Y2の使用権を前提に,本件ピクトグラム等の一種の再使用許諾を受けているものといえ,これは,賃貸人の承諾を受けて転貸借がされている状況と同様の状況にあるといえる。そして,民法613条の趣旨は,転貸借が適法に行われている場合に,目的物を現実に用益する転借人に対する直接請求権を認めることにより,賃貸人の地位を保護する点にあるが,再使用許諾関係の場合にも,本件ピクトグラムを現実に使用するのが再被許諾者であるY1である以上,同様の趣旨が妥当するというべきである。
- 〔2〕この点について,Yらは,占有移転を前提とする賃貸借と,権利者の権利不行使を本質とする著作権の利用許諾を同一視できない旨主張するが,本件における本件ピクトグラム等の使用は,案内板等における継続的使用を対象とし,本件各使用許諾契約においてY2に原状回復義務が認められるのであるから,賃貸借終了後の原状回復義務に類似した関係にあるといえる。
- 〔3〕したがって,Y1においては,本件各使用許諾契約の当事者ではないものの,民法613条を類推適用し,本件ピクトグラム等の抹消・消除義務を直接負うものと解される。
- 以上の裁判所の考え方については,以下の点で無理があります。
- 第1に,本判決は,訴外ZとY2との間のピクトグラム等使用許諾契約を賃貸借類似の契約だと前提の下に,Y2とY1との関係を転貸人と転借人と類似の関係と捉え,民法613条を類推して,Y1は,訴外Zに対して,契約終了後の原状回復義務に相当する,本件ピクトグラム等の抹消・消除義務を負うと判断しています。しかし,本件ピクトグラム使用許諾契約を賃貸借類似の契約だと考えること自体が誤りです。その理由は,以下の通りです。
- 民法は,有体物に関する契約と,無体物に関する契約を厳密位に区別しており,有体物(動産・不動産)の使利用契約を使用貸借と賃貸借とする一方,無体物(労務)の利用契約については,その一般規定として雇用契約,労務によって仕事の完成まで約する契約を委任契約,専門家に仕事を委ねる契約を委任契約,労務によって保管を行う契約を寄託契約と位置づけています。
- もしも,無体物の利用契約を賃貸借類似の契約と考えると,雇用契約も,請負契約も,寄託契約も,すべて,無体物である労務の利用契約なのですから,役務提供契約はすべて,賃貸借類似の契約となってしまい,典型契約を13に分類した民法の考え方を否定することになってしまいます。
- 確かに,無体物である著作物の利用を目的とする契約を有体物の利用を目的とする賃貸借契約に類似する契約であると考えるならば,契約終了後の原状回復義務を根拠づけることができます。しかし,効果としての原状回復請求を,著作物の抹消・消除だとすることはできないでしょう。なぜなら,この結論は,例えば,建物とか書籍の賃貸借の原状回復をもって,建物とか書籍を抹消・消除することだという,ありえない結論に帰着してしまうからです。つまり,無体物の利用契約を賃貸借類似の契約として構成する場合,契約終了によって生じる効果は,あくまで,賃貸借の目的物の返還であって,目的物の抹消・消除を義務づけるという結論を導くことは出来ないのです。
- 第2に,本件の契約関係は,有体物(動産・不動産)に関する契約の規定を類推するのではなく,無体物である労務の利用契約としての雇用,請負,委任のいずれかの規定を類推すべきです。
- 裁判所が認定した事実関係から素直な法律構成をすると,本件においては,訴外ZとY2との契約は,それに先行する先行するY1とY2との間の案内表示の改善のためのY1を委任者,Y2を受託者とする業務委託契約(有償の委任契約約)を実現するためになされたものであることがわかります。そして,受託者Y2は,契約上の債務を誠実に履行するため,優秀なアートディレクター・デザイナーであるP1が代表取締役を務める訴外Zと交渉を行い,訴外Zに,ピクトグラムを作成してもらい,それを利用するという業務委託契約(有償の委任契約)であると考えるべきです。
- つまり,本件における契約関係は,有体物に関する賃貸借契約を類推するするのではなく,以下のように,無体物である労務の賃貸借の一種である,委任契約に関する規定を適用すべきです。
- すなわち,Y2は,先行するY1との間の案内表示の改善を目的とする業務委託契約を実現するために,訴外Zとの間で,訴外Zにピクトグラムを作成してもらうという業務委託契約(有償委任契約)を締結したと考えるべきなのです。
- 著作物という無体物の利用を目的とする契約について,賃貸借契約を類推する場合には,その契約の終了に際しては,民法619条(賃貸借の更新の推定)を類推して,賃料相当額を請求することができるだけであり,目的物の抹消・消除を請求することはできないことを理解すべきです。
- 第3に,無体物を対象とする契約に賃貸借契約の条文を類推することによって,契約終了後の無体物の抹消・消除義務を根拠づけることはできないのであれば,むしろ,民法619条を類推して契約の更新を推定して,無体物の利用料を請求する方向で問題解決を図るべきだと思われます。なぜなら,民法619条の契約の更新の推定の法理は,無体物である労務の賃貸借とされる,雇用契約において,629条として規定されており,無体物としての労務の賃貸借についても類推が可能だからです。
- (HP訪問者の延べ人数:15,510人)
- 2018年2月15日(木) 曇り一時雨 。
- 大阪地判平27・9・24(平25(ワ)1074号)判時2348号62頁(著作権侵害差止等請求訴訟)を題材に,著作権譲渡の対抗要件について考察しています(第2日目)。
- 昨日の当事者間の法律関係の法的構成を踏まえた上で,著作権の譲渡の対抗要件の問題を考察します。
- 本件では,著作権の譲渡人である訴外Zが以前として著作権者として留まっているのか,譲受人であるXが真の著作権者になっているのかわからないため,著作権者に対して,著作権料の支払義務とか,とか原状回復義務を負っているY1が,二重弁済を強いられるのを防ぐための対抗問題が問題となっています。この問題は,有体物である動とか不動産とかの二重譲渡に関する「食うか食われるか」という問題とは,性格が異なり,無体物の譲渡の場合の典型例である,債権譲渡の対抗要件とか,権利質の対抗要件の問題に類する問題なのです。
- 本判決は,著作権を準物権と捉えて,不動産二重譲渡の場合の民法177条の対抗要件を念頭に置いて,著作権(準物権)譲渡の対抗要件を著作権の登録と考えているのですが,準物権というのは,無体物に関する物権であり,類推すべきは,有体物の譲渡の対抗要件ではなく,準物権である権利質とか,無体物である債権の譲渡の対抗要件を類推すべきです。
- そのような解釈をする理由の背景としては,著作権の対抗要件とされている著作権登記が,著作物の同一性を識別することができないために機能不全に陥っており,したがって,実際には,ほとんど用いられておらず,著作権譲渡の対抗要件としては不適切であり,立法論的にも,解釈論的にも,適切な対抗要件を見出すことが求められているという事情があります。
- 本判決の事実認定によると,対抗要件の一つである債務者の承諾については,「Xは,Yらは平静23年5月以降の協議においてXが著作者であることを認めていたと主張するが,甲47号証に照らして採用できない」として,Y1
の承諾はなかったとされています(判時2348号95頁)。しかし,訴外Zの代表取締役と,Xの取締役・クリエイティブディレクターがP1という同一人物であるため,Xからなされた,「Y2を含む訴外Z研究所の取引先に対し,連絡及び別途著作権譲渡に関するお知らせ文書を送付した」(判時2348号72頁)は,もう一つの対抗要件である譲渡人からの通知とみることができるのであり,本件においては,著作権譲渡の対抗要件は具備されていると考えるべきでしょう。
- 著作権の譲渡の対抗要件は,著作権法上は,「登録しなければ第三者に対抗することができない」とされています(著作権法77条)。しかし,著作権の登録制度が機能不全に陥っており,ほとんど使われていないことを知りながら,形式的な判断に基づいて,登録を欠く著作権の譲渡を著作権の利用者に対抗できないとすることは,具体的な妥当性を確保すべき裁判所として,妥当ではないというべきでしょう。
- 著作権に基づく利用権に関する譲渡の対抗要件については,有体物の譲渡に関する対抗要件ではなく,無体物である債権譲渡の対抗要件(民法467条)とか,準物権である権利質の対抗要件(364条)としての「譲渡人からの債務者に対する通知」又は「債務者の承諾」をもって対抗要件とし,機能不全に陥っている著作権の登録制度を補完すべきだと,私は考えています。
- (HP訪問者の延べ人数:15,530人)
- 2018年2月16日(金) 曇り。
- 大阪地判平27・9・24(平25(ワ)1074号)判時2348号62頁(著作権侵害差止等請求訴訟)を題材に,著作権譲渡の対抗要件について考察しています(第3日目)。
- 本判決は,ピクトグラムの著作者である訴外ZとY2との間のピクトグラム使用契約の終了に基づくY2の原状回復義務について,Y2の債務者であるY1も,民法613条の類推適用によって,訴外Zに対して,直接の原状回復義務を負うと判示しています。
- しかし,有体物を前提にして規定されている民法上の賃貸借契約における原状回復義務(目的物をそのまま返還する義務)を根拠にして,無体物である著作権の原状回復義務(著作物の抹消・消除義務)を導くことはできないことを論じました。
- それでは,無体物である著作物の使用契約を無体物である「労務の賃貸借」である雇用,請負,委任,寄託契約のうちのいずれかに類する契約だと考えた場合に,民法613条の直接訴権を適用,または,類推適用することによって,著作権者は,著作物の利用料・報酬を第三債務者に対して直接に請求がすることができるのでしょうか?
- この問題について,民法613条の母法であるフランス民法が,最近の債務法の大改正によって,債権者の権利として,債権者代位権(action oblique),詐害行為取消権(action paulienne)と並んで,直接訴権(action directe)の一般規定(フランス民法典1341条の3)を制定したことを踏まえて,無体物の利用契約における民法613条の類推適用の問題について考察することにします。
- その前提として,フランス民法典において,2016年に新たに規定された直接訴権の一般規定,および,フランス民法典の制定当時(1804年)から存在する,直接訴権の個別規定について,それぞれの原文と,東京行の新幹線の列車の中で行った翻訳(加賀山試訳)を示しておきます(なお,【 】内,および,〔 〕内は,加賀山による注釈です)。
- Article 1341-3
(Créé par Ordonnance n°2016-131 du 10 février 2016 - art. 3)
Dans les cas déterminés par la loi, le créancier peut agir directement en paiement de sa créance contre un débiteur de son débiteur.
- フランス民法典 第1341条の3【直接訴権の一般規定】
法律に定めがある場合には,債権者は,その債務者の債務者〔第三債務者〕に対して,債権者の債権を弁済するよう,直接に請求することができる。
- Article 1753
(Créé par Loi 1804-03-07 promulguée le 17 mars 1804)
(1)Le sous-locataire n'est tenu envers le propriétaire que jusqu'à concurrence du prix de sa sous-location dont il peut être débiteur au moment de la saisie, et sans qu'il puisse opposer des paiements faits par anticipation.
(2)Les paiements faits par le sous-locataire, soit en vertu d'une stipulation portée en son bail, soit en conséquence de l'usage des lieux, ne sont pas réputés faits par anticipation.
- フランス民法典 第1753条【賃貸人の転借人に対する直接訴権】 ←現行日本民法613条のモデルとなった条文
①転借人は,差押時に転貸人に対して負っていた転借料の範囲の限度において,賃貸人に対して責任を負う。ただし,〔詐害的な〕前払いは,賃貸人に対抗することができない。
②転借人によってなされた前払が,転貸借契約に定められたことによる場合でるとか,地方の慣習に基づいてなされた場合であるときは,前項の〔詐害的な〕前払いとはみなされない。
- Article 1799
(Créé par Loi 1804-03-07 promulguée le 17 mars 1804)
Les maçons, charpentiers, serruriers et autres ouvriers qui font directement des marchés à prix fait, sont astreints aux règles prescrites dans la présente section : ils sont entrepreneurs dans la partie qu'ils traitent.
- フランス民法典 第1799条【下請労務者の注文者に対する直接訴権】
直接に定額請負を行う石工,金物製造者,その他の労務者は,本款〔請負〕に定める規定に従う。これらの者は,その約した部分については,これを請負人とみなす。
- Article 1994
(Créé par Loi 1804-03-10 promulguée le 20 mars 1804)
(1) Le mandataire répond de celui qu'il s'est substitué dans la gestion :
1° quand il n'a pas reçu le pouvoir de se substituer quelqu'un ;
2° quand ce pouvoir lui a été conféré sans désignation d'une personne, et que celle dont il a fait choix était notoirement incapable ou insolvable.
(2) Dans tous les cas, le mandant peut agir directement contre la personne que le mandataire s'est substituée.
- フランス民法典 第1994条【委任者の復受任者に対する直接訴権】
①以下の各号において,受任者は,事務処理において,自己と交代させた者について,その責任を負う。
一 受任者が退任の復代理人とする権限を受けていないとき
二 人を指定せずにその権限を受任者に付与した場合において,受任者の選任した者が明らかに無能力又は無資力であるとき
②いかなる場合においても,委任者は,受任者と交代した者に対して直接に請求することができる。
- これらの直接訴権の考え方を参考にして,大阪地判平27・9・24(平25(ワ)1074号)判時2348号62頁(著作権侵害差止等請求訴訟)における民法613条の類推適用の是非,および,理想的な直接訴権の法理の適用について,明日以降,帰省してからに考察してみたいと思います。
- 『法と経営研究』の出版社での編集会議,および,明治学院大学を退職する同僚の退職記念パーティに参加するため,上京します。列車の隣席が就活中の学生さんだったので,模擬面接みたいなことをして楽しみました(相手は迷惑だったかもしれませんが…)。
- (HP訪問者の延べ人数:15,555人)
- 2018年2月17日(土) 晴れ。
- J-Scoreでのアジア諸国への援助の在り方についての懇談,『法と経営研究』の編集会議での第2号以下の編集方針・投稿規定等の一連の書式の決定,明治学院大学の定年退職教員の祝賀パーティでの懇談を終えて,帰郷します。
- 著作権法の講義レジュメを作成しつつ,著作権法の概説書(半田正夫『著作権法概説』〔第16版〕法学書院(2015))を読んでいます(第9日目)。
- 第9章(著作隣接権)においては,著作隣接権の意義,種類および内容,制限,譲渡,行使,登録,著作権と著作隣接権との関係が論じられています。
- 「著作隣接権」の説明を読んでいて,「二次的著作物」の説明を読んで感じた違和感(すべての著作物は,これまでの文化的所産に依拠した,広い意味での二次的著作物でないのかという違和感)以上の違和感を覚えました。
- なぜなら,著作隣接権は,著作物の内容を無視して,実演家,レコード製作者,放送事業者,有線放送事業者を画一的に保護するものであり,思想又は感情の創作的表現という著作の定義と要件を全く無視したものとなっているからです。例えば,放送事業者は,原著作である音楽著作をそのまま流したり,原著作である写真とか絵画とかをそのまま放映する場合もあれば,創作的な「番組」という著作を製作して放送する場合もあり,画一的な判断をすることはできないはずだからです。
- さらに,「保護を受ける実演家とは,…著作物を演ずる者に限定されていないから,奇術師など著作物を演じない者も,ここにいう実演家に含まれる」(半田・概説271頁)との解説に出会うと,著作隣接権の意義の箇所で説明されていたことと矛盾していることがわかります。
- すなわち,著作隣接権で保護される実演家,レコード製作者,放送事業者について,本書は,以下のように述べているからです。
- 「これらの者は既存の著作物を利用する者であってみずから著作物を創作する者ではないから著作者とみるわけにはいかず,したがって,著作権によって保護を与えることは理論的には無理といわなければならない。そこで著作権の枠外にいて著作者とほご同等の利益を与えることを目的として新たな権利の設定が必要とされ,かくして生み出された権利が著作隣接権または隣接権といわれるものである」(半田・概説259頁)
- このような矛盾を放置すべきではなく,上記の三者(実演家,レコード製作者,放送・有線放送事業者)を画一的に保護するのをやめ,その内容である著作物の性質,利用の態様によって,ある時は著作物の利用(複製)として相当額を徴収したり,あるときは,著作物の創作として保護したり,というように,その保護の態様も変化させるべきであり,著作物等の定義に立ち返るならば,著作隣接権という概念自体が不要となるのでないのかと,私は考えています。
- (HP訪問者の延べ人数:15,565人)
- 2018年2月18日(日) 晴れ。
- 著作権法の講義レジュメを作成しつつ,著作権法の概説書(半田正夫『著作権法概説』〔第16版〕法学書院(2015))を読んでいます(第10日目)。
- 第10章(私的録音・録画補償金)においては,私的録音・録画補償金制度導入の経緯,私的録音・録画補償金の内容について,図解入りで論じられています。
- この制度こそが,著作権を保護するための本質的で,かつ,最も効率的な制度ではないかとの期待を込めて,読んだのですが,問題点が,5頁にわたって長々と論じられており,(半田・概説303-307頁)「私的録音・録画補償金制度の帰趨については改めて根本から考え直す時期が到来していると言えるように思われる。」とされているのには,驚きました。
- この問題は,第13章(著作権・著作隣接権の集中管理)を読んだ後に,電子書籍を含めた書籍等の著作物のAmazon等によるネット販売,YouTube等を利用して広告収入を得る方法など,総合的な考察をしなければラチがあかないのではないかと感じました。
- そして,この考察こそが,著作権の管理に関する「法と経営」の大きなテーマになり得るとの確信を得ることができました。
- (HP訪問者の延べ人数:15,580人)
- 2018年2月19日(月) 曇り後雨。 午前3時30分ごろ震度3の地震で目が覚めました。震源地は豊後水道でしたが,当地に被害はなく,平穏な生活を続けております。
- 著作権法の講義レジュメを作成しつつ,著作権法の概説書(半田正夫『著作権法概説』〔第16版〕法学書院(2015))を読んでいます(第11日目)。
- 第11章(紛争処理)においては,和解,あっせん,調停,仲裁契約の概要が取り上げられています。
- 地域の親睦団体の懇親会(別府での食事会)に誘われたので,参加しました。自己紹介の際に,「寺子屋ひじ塾」の構想を述べたところ,ボランティアによる基礎教育の重要性に賛同して,数学・理科(物理)講師を勤めたいという人や,塾生になりたいという人々に出会うことができました。
- 『法と経営研究』の投稿規定等をダウンロードできるページが信山社のホームページに開設されました。社会に生起する様々な問題について,法と経営という複合的な視点から問題解決を提案する論考の投稿を期待したいと思います。
- (HP訪問者の延べ人数:15,600人)
- 2018年2月20日(火) 晴れのち曇り。
- 4月1日から勤務することになった岡山の通信制の大学院の特任教授に就任するに際して,必要となる書類(私学共済組合に再加入するための書類)を作成し,大学院の事務局に送付しました。
- 「日出ロータリークラブ」の例会にゲストとして招かれ,夕食(ふぐの調理師免許を持つ会員が捌いたふぐ料理)をいただきながら,会員の方々(自動車整備工場の代表取締役,信用金庫の支店長,調剤薬局の代表取締役夫妻,病院の院長・医学博士夫妻,産婦人科院長・日出ロータリークラブ会長,建築士事務所代表取締等々)と名刺交換をし,楽しく懇談をしました。
後日,例会の模様と,私がゲストとして招かれたことが,写真入りで,「日出ロータリークラブ」のHPに掲載されているのを発見して驚きました。
この会の会員から,会員になることを勧められたのですが,毎週火曜日に夕食会に出席しなければならなくなるため,よく考えて決めることにしました。
- (HP訪問者の延べ人数:15,620人)
- 2018年2月21日(水) 曇りのち晴れ。
- 著作権法の講義レジュメを作成しつつ,著作権法の概説書(半田正夫『著作権法概説』〔第16版〕法学書院(2015))を読んでいます(第12日目)。
- 第12章(著作権法上の権利の侵害)においては,侵害の態様,侵害に対する民事上の救済,侵害に対する刑事上の制裁が取り上げられています。
-
読んで力づけられた点
- 「旧法においては,法文上差止め請求権は認められていなかった。」[半田・概説(2015)321頁] ←現行法よりもまともです。
- 「旧法には差止請求権の明文の規定は存在しなかった」という事実は,以下のような考え方を持つ私のとって,力強い味方となってくれるように思います。
- 著作者,著作権者,出版権者,実演家,または,著作隣接権者という特定の人(特権階級)に与えられている「著作の利用を差し止める」という制度は,著作権法の目的である文化の発展を阻害する誤った利権であり,このような利権の行使は,常に,権利の濫用となって許されない(民法1条3項)。(加賀山説)
- 矛盾に気づいて,見解を改めてほしい点
- 差止請求権は,「著作権者等の法律上の武器である。」[半田・概説(2015)321頁] ←武器は放棄し,平和的な手段を構築しよう。
- この考え方は,著作者第一主義に基づいて主張されています。しかし,「この武器は誰に向けられているのか」という点が重要です。この武器は,著作権の制度目的である文化の発展に寄与したいと願うすべての市民に向けられる危険性がある点でも,また,濫用の危険が大きい点でも,文化の発展と矛盾する危険な考え方です。
- むしろ,著作権者は,このような危険な「武器を放棄」し,市民による著作の利用の自由を促進しつつ,自らの力で,または,公益の力を借りて,ロイヤリティを確保できる平和的な制度を作り上げていく必要があるのではないでしょうか。(加賀山説)
- 侵害行為組成物の廃棄[半田・概説(2015)3231頁] ←著作物という無体物と有体物とを分離して構築するという著作権法の大原則に矛盾しています。
- 「著作者,著作権者,出版権者,実演家または著作隣接権者は,差止め請求をするに際し,侵害行為組成物(たとえば,無断頒布した映画フィルム,無断展示に使用された絵画など),侵害行為によって組成された物(たとえば,無断で複製された小説の印刷物,実演家等に無断で作成された演奏レコードの複製物など)または専ら侵害の行為に供された機械もしくは器具(たとえば,無断複製を行うための紙型,版画の無断複製を行うための版木など)の廃棄その他侵害の停止に必要な措置を請求することができる(112条2項)」[半田・概説(2015)323頁]
- これらの措置は,著作権の利用の自由を阻害するばかりでなく,著作権法の大前提となる,無体物(著作)と有体物(侵害組成物)との分離という原理と矛盾しています。
- 侵害組成物は,ロイヤリティの支払を確実にするために,担保に供させる等の適当の措置(譲渡担保の設定等)をとれば,廃棄する必要はなく,むしろ,有効活用ができます。
- 著作者第一主義に固執するから,資源を無駄にする行き過ぎた考え方に陥っているのだと思います。発想を180度転換して,著作は文化的所産という公共財であって,市民の自由な利用が第一である。著作権者らには,その利用に相応するロイヤリティを平和的な手段で徴収する権利が,独禁法に違反しない範囲で与えられているに過ぎないと考えるべきでしょう。(加賀山説)
- 結局のところ,現在の著作権法の解釈論は,著作者第一主義の立場をとることによって,文化的所産である著作を自由に利用して新たな文化を創造しようとしている一般市民に向けて,差止請求権という「著作権者等の武器」を乱射している状況にあるといってよいでしょう(名付けて,著作権テロ)。
- このような状況が,著作権法が目的としている「文化の発展に寄与する」とは思われません。著作権法は,従来のパラダイムを転換し,第1に,文化的所産である著作を一般市民が自由に利用できるようにすることを確保し,第2に,一定期間かつ一般市民の自由な利用を制限しない範囲で,文化の発展に寄与した著作権者等に対して公正なロイヤリティの平和的な回収手段(有体物の購入・ネットの利用等の代金にロイヤリティを組み込み,著作権者等に配分する手段)を確保するという理念に基づいて,根本的な改正が必要であると,私は考えています。
- (HP訪問者の延べ人数:15,660人)
- 2018年2月22日(木) 曇り。
- 著作権法の講義レジュメを作成しつつ,著作権法の概説書(半田正夫『著作権法概説』〔第16版〕法学書院(2015))を読んでいます(第13日目)。
- 第13章(著作権・著作隣接権の集中管理)においては,侵集中管理制度,著作権等管理事業法の概要が取り上げられています。 今日で,本書を読み終わりました。読後感は以下の通りです。
- 著作権法の理念は,著作権法1条に記載されている順序に従って,第1に,文化的所産〔公共財〕である著作の公正な利用を促進し,第2に,著作者の権利を保護し,その二つの手段を通じて,最終目標である文化の発展に寄与することであると考えるべきである。
- それにもかかわらず,本書は,手段の順序を入れ替え,著作者等の権利を保護することを第一義的に考え,第二義的に,文化的所産である著作物の公正な利用にも,それなりに留意するという考え方に立っている。
- 確かに,著作者等の権利保護を第一義とするの考え方は,著作権法の章立てには忠実である。なぜなら,著作権法の第1章(総則)に続く第1章は,著作者の権利であり,著作物の公正な利用については,その中において,第3節(権利の内容)の最後に,第5款(著作権の制限)として,例外的に規定されているに過ぎないからである。
- しかし,著作権法を経済法という大局的な観点から見るならば,著作権という権利は,公正自由な競争を促進することを目的として規定されている独禁法においては,公正自由な競争を阻害する独占の一種として位置付けられ,それが文化の発展に寄与するという理由で,独禁法21条(適用除外)を通じて,例外的に著作者等の独占的な権利が認められている権利に過ぎないことに留意すべきである。
- 問題となる文化の発展は,果たして,一握りの著作者等に独占的な特権を与えることによって実現されるのか,それとも,文化的所産である著作の利用をすべての国民に開放することによって実現されるのかを改めて考えなおす時期に来ているといえよう。
- 私の考え方は,著作者等に特権を与えて保護するよりも,すべての国民に文化的所作であるすべての著作の自由な利用を認めることの方が,文化の発展に寄与する度合いが大きいというものである。
- したがって,私は,著作権教育の第一歩は,最初から最後まですべての国民に自由な利用が認められている,すなわち,著作権フリーの理想的な著作である法令,判例等が,なぜ,著作権の対象とならない(著作権法13条)とされているのかを検討することから始めるべきだと考えている。
- すべての法律の改正手続は,現行法が旧法の二次著作に過ぎず,理想的な著作はすべて二次著作に過ぎないことを教えてくれる。すべての判決も先例の二次的著作に過ぎない。そのような著作権の対象とならない法令・判例に依拠して作成された,法の編集物に過ぎないはずの概説書が著作権の対象となっていることの方が,本来的にはむしろ奇妙なことである。
- 著作者といえども,これまでの文化的所産である著作に依拠して創作的表現を獲得できたのであり,広く国民一般にすべての著作の利用を開放することが,第一義的に考えられるべきであり,第二義的に,新たな創作的表現を作成した著作者に,一定期限に限って,投下資本の回収をするための平和的な手段を与えるべきなのである。
- このような私の考え方を世に問うため,『著作権法のパラダイム転換』(仮称)というテーマで単行本の執筆を行うことにする。もちろん,その前に,基本的な概説書は,すべて読み,その上で,本のアウトラインを決定してから,徐々に執筆を進めることにしたい。
- (HP訪問者の延べ人数:15,680人)
- 2018年2月23日(金) 晴れ。
- 著作権法の概説書(半田正夫『著作権法概説』〔第16版〕法学書院(2015))を読み終えたので,これまで得た著作権判例百選と著作権法の概説書による知見に依拠して,講義レジュメ(第1版)(PowerPoint,PDF)を完成させました。
- (HP訪問者の延べ人数:15,695人)
- 2018年2月24日(土) 晴れ。
- 名古屋大学で開催される第4回「民法史研究会」(大久保研究会)研究会に出席するため,名古屋に主張します(今回は,出張旅費が支給されます)。千種で1泊した後,末川民事法研究会に出席するため,京都に参ります(こちらは,常に自費です)。研究会終了後,『末川民事法研究』の編集会議を開催して,京都で1泊した後,帰郷の予定です。
- 名古屋大学での,民法史研究会での報告は大変興味深いものでした。
- 第1報告「ロェスラーの商法典とその運命」は,商法が「戦前はドイツ法」,その裏返しとしての「戦後はアメリカ法」とわれているが,「戦前はドイツ法」というのが「民法はドイツ法」といわれるのと同等の神話に過ぎないことを論証するものでした。特に,起草(起草員:梅謙次郎,岡野敬次朗,田部芳)と旧商法公布までの審議プロセスを商法編局(鶴田委員会),寺島委員会,井上委員会,山田委員会の4段階に分けてた丁寧な説明によって,ドイツ人ロェスラー(ロエスレル)に抱いていた片面的な見方をみごとに覆していただきました。
- 第2報告「明治商法における参照外国法-民法との比較を中心に-」は,明治民法における外国法参照の根拠資料である「民法第一議案」に相当する資料が商法学者には知られていなかったので,国立公文書館でそれに該当する資料として「商法第一案」(請求番号ヨ325-0193)を発見し,その資料に基づいて,外国法の参照条文の頻度,割合を分析するものでした。商法も,34か所の国と地域,124種類の法令を参照しており,主な内訳は,ドイツ法790ヵ条,フランス法714ヵ条,イタリア法695ヵ条というもので,「戦前の商法はドイツ法」が神話であることを裏付ける結果となっていました。なお,明治商法における参照条文としては,フランス法よりも,ポルトガル法,ルーマニア法の方が頻度が高いというのも,新たな発見でした。
- 議論の中で,私は,現行法における商法の劣化,民商統一の動きに触れつつ,民法と商法との合同研究の重要性を指摘し,参加した商法学者,監査役協会の実務家の賛同を得ることができました。
- (HP訪問者の延べ人数:15,710人)
- 2018年2月25日(日) 晴れのち曇りのち小雨 。
- 名古屋大学での「民法史研究会」での活発な議論,懇親会での楽しい語らいを終えて,末川民事法研究会に出席するため,京都に赴きました。
- 第1報告「入会権の処分における全員一致原則と全員の同意を要件としない慣習について—最近の裁判例の整理と検討—」
- 最一判平20・4・14民集62巻5号909頁
- 所有権移転登記抹消登記手続等,入会権確認請求事件)(共有の性質を有する入会権に関する各地方の慣習の効力は,入会権の処分についても及び,入会集団の構成員全員の同意を要件としないで同処分を認める慣習であっても,公序良俗に反するなどその効力を否定すべき特段の事情が認められない限り,有効である。
- 本報告は,「入会集団の構成員全員の同意を要件としないで同処分を認める慣習」が存在するとの根拠が何も認定されていないことを最高裁の反対意見に依拠して指摘し,最高裁の法廷意見を批判するものであり,論理一貫したものとなっていました。
- しかし,私は,そのような慣習がない場合に,「全員一致の原則」が合理的であるかどうか,むしろ,「全員一致は,危険なバイアスの表れ」と考えるべきであり,一人の裏切り者の存在によって何もできなくなることになるのが,それでよいのだろうか。区分所有(現代の入会)の場合の4分の3の特別決議の合理性を検討すべきではないのかという質問をして,議論を盛り上げました。
- また,カネにモノをいわせて,最終処分ができないために土地を永久に汚染することになる原発の誘致の決定は,公序良俗に違反しないのかの検討も必要でないのか,少なくとも,考えてみる価値があるのではないのかという質問もしてみました。
- 第2報告「100日面会交流事件」(最二決平29・7・12日〔上告不受理〕・東京高判平29年1月26日判時2325号78頁)
- 東京高判平29年1月26日判時2325号78頁の事実関係は以下の通りです。
- 控訴人(妻・43歳)が,被控訴人(夫・43歳)の暴力により,婚姻関係が破綻したとして,離婚,長女(8歳)の親権者の控訴人への指定,養育費,慰謝料及び年金分割を求めた事案。
- 原審は,離婚請求を認容するとともに,「寛容性の原則(フレンドリー・ペアレント・ルール)」に基づいて,親権者を面会交流に寛容な被控訴人(父)に指定,年金分割割合を0.5とし,その余の請求を棄却したのに対し,控訴人(母)が控訴した。
- 控訴審は,控訴人(妻)は,被控訴人(夫)が子育てに関与しないせいで国連への復職を断念せざるを得なかったとの思いが強く,被控訴人(夫)は,控訴人(妻)が家庭や子よりも自分のキャリアアップを優先させているとの思いが強く,対立が激化し,婚姻関係が破綻したもので,破綻原因は被控訴人だけにあったとは認められず,慰謝料請求は理由がないとしたが,長女の親権者については,これまでの監護状況と子の利益から,控訴人(母)と定めるのが相当,養育費は月額5万円が相当などとし,原判決の一部を変更した。
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会員にとって理解が困難だったと思われる
「面会交流権の事務管理による構成」
(加賀山説・愛(Do for others)の家族法) |
私は,第1に,家族法の研究者や裁判官が,条文の根拠を示さずに,「面会交流原則」とか「寛容性の原則」とかを振り回すのではなく,親族相続関係においても,財産法的な視点を活用すべきではないかとの提案を行いました。
- 具体的には,本件における非親権者である父の面会交流権も,親権者であり法定代理人の母がその方法について争い,合意形成がなされていないのが現状です。したがって,本件の面会交流を,父による子の監護に関する事務管理として構成すれば,第1に,子の意思を尊重すべきこと(民法697条2項)も,第2に,子の意思が明確でなく,推知することも困難である場合にも,最も子の利益に適合する方法によって面会交流を行うべきこと(民法697条1項)も,すべて,明文の規定によって根拠づけられるのですから,そのような構成を試みるべきではないのかとアドバイスを行いました。
- しかし,会員からは,「面会交流に事務管理の規定を適用できるとする理由がわからない」との疑問が提示されたので,上のように図解して説明しないと,理解できない人が多いのだということがわかりました。
- 私は,第2に,面会交流は,非親権者が単独で行うと,現に起こっているように,子に偏見を与えたり,殺人に発展したりする危険がある(2017年1月:長崎市,2017年4月:伊丹市面会交流殺人事件)ため,利益相反の規定(民法108条,826条)の趣旨に則り,裁判所の監督下にある第三者の関与の下で,たとえ婦夫としては仲たがいをしていても,親子としては,子に対する変わらぬ愛情を持ち続けていることを確認できるオープンスペースを裁判所の責任で設置すべきであることを提案しました。
- しかし,残念なことに,会員からは,全く支持を受けることができませんでした。その理由は,仲たがいしている父と母とが一緒になって面会交流を行うことは無理であり,父と母とが別々の場所で行うほかないと考えていることが分かりました。
- 確かに,そのように考えるのが,社会通念なのでしょう。しかし,子の立場に立ってみれば,子の願いは,別々の親から他の親の悪口を聞くことではなく,両親が揃った場所で,たとえ両親同士の愛情は失われてしまったとしても,自分に対する愛情だけは,両親ともに変わらず持ち続けていることを両親が揃っている場所で確認したいのではないでしょうか。
- 会員には,全く理解されなかったのですが,私は,「離婚は,婦夫間では有効」だが,「子を害することになる子の養育・監護との関係では」,「離婚は,子には対抗できない」と考えています(加賀山説,民法108条2項本文参照)。すなわち,子を持った親は,離婚後も,子に対する関係では,可能な限り(少なくとも,面会交流の時は),以前の婦夫関係と同じ状態を保持したり,演じたりする義務があると考えているのです。
- 具体的には,裁判所の監督下にある交流施設において,子と両親とが,例えば,母-子-父と手をつなぎ合って,両親の子に対する愛情が不変であることを示すことが,「子の利益」を優先しなければならない,すなわち,「離婚をもって子に対抗できない」両親の義務だと,私は考えています。
- (HP訪問者の延べ人数:15,720人)
- 2018年2月26日(月) 晴れ。 気温も日差しも春を感じる日です。
- 名古屋出張(民法史研究会,名古屋大学),および,京都出張(末川民事法研究会,立命館大学)を無事終了し,帰郷します。
- 2018年3月24日(土)16:30~18:00に,明治学院大学法律科学研究所で開催される,白金法学会士業倶楽部の勉強会で報告するレジュメ「民法(債権関係)改正の第三者評価」を帰りの新幹線の列車内で完成させて,事務局に送付しました。
- (HP訪問者の延べ人数:15,740人)
- 2018年2月27日(火) 晴れ。 昨日よりも気温は下がりましたが,近くでウグイスが鳴き始めました。
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岸見一郎『愛とためらいの哲学』
PHP新書(2018/3/1) |
アドラー心理学の研究者である岸見一郎の新刊『愛とためらいの哲学』PHP新書(2018/3/1)が届いたので,読み始めました。
- 男を女の心に近づけ,女を男の心に近づける奇跡の恋愛ホルモンの継続時間は最大でも4年半。その後も,男女が愛情関係を保ち続けるには,どうすればよいのか。共通の目標を持って連帯することが重要であることはわかっていますが,それでもうまくいかないことが多いのが現実です。
- 本書は,「私たちは,一人で成し遂げることができる課題,あるいは,多人数で成し遂げる課題については教育を受けてきましたが,二人で行う課題については何も教えてこられなかった」という観点から,幸福な愛を育む技術について,徹底的に考え抜こうとするもののようです。
- 久しぶりの「アドラー心理学」に接し,ワクワクしながら,本書を読んでいます。
- (HP訪問者の延べ人数:15,760人)
- 2018年2月28日(水) 晴れのち曇りのち雨。
- アドラー心理学の研究者である岸見一郎『愛とためらいの哲学』PHP新書(2018/3/1)を読み終わりました。
- 恋愛(最長で4年半しか続かない)を終えた後も愛を育み幸福になるためには,以下の努力が必要であるというのが,アドラー等の考え方に依拠した筆者の考え方のようです(本書207-230頁)。
- 尊敬
- 相手のありのままの姿を見て,その人が,自分と同じく,唯一無二の存在であることを知る。それでこそ,対等な関係を築くことができる。
- 信頼
- 相手を無条件で信じる。どんな時もいささかも疑うことなく信じる人がいれば,その人を裏切り続けることはできないから。信頼の内容は以下の二つ。
- 相手には課題解決能力があると信じる。
- 相手の言動にはよい意図があると信じる。
- 協力
- ドラッカーは,非営利組織の経営理念を以下の三つ項目にまとめて紹介しています(P.F.ドラッカー(上田惇生訳)『非営利組織の経営』ダイヤモンド社(2007/01/26))。本書を読んでいて,思い出しました。
- 本質における一致(目標・ミッションを一致させて協力する。)
- 行動における自由(戦略を共有し,戦術は各人に委ねる。)
- あらゆることにおける信頼(組織のすべての人々との間で信頼関係を構築する。)
- そうすると,結婚生活の理念も,非営利組織の経営理念も,①目標の一致,②目標達成のための相互協力,③信頼関係に基づく行動の自由という3つの点で共通していることに気づかされます。
- また,愛の悩みを解決するためには,回り道のようでも,「そもそも二人の関係がどうあるべきかということを知っている必要があります」(本書110頁)という記述は,「理想は現実と違うから理想なのであり,理想こそが現実を変えることができる」(121頁)という記述とともに,拍手喝さいを送りました。そして,愛の「闇」を解決するための以下の方法論を通じて,「無体物の哲学」(無体物の差止請求の無意味さと透明化の推進の必要性)ともいえる着想を得ることできたように思います。(〔 〕内は,私による説明の追加です)
- 闇は物〔有体物〕ではないので,それを取り除くことはできません〔無体物における消去・廃棄の不能〕。闇を取り除くためには,光を当てればいいのです〔透明化の必要性〕。恋愛においても同じように,闇(問題点)を取り除こうとするのではなく,光を当てる(正しい愛し方を知る)ことこそが必要になるのです(岸見・愛とためらいの哲学(2018)110-111頁)。
- 「持つ」ことにおいては,持っているもの〔有体物〕は使うことで減るが,「ある」こと〔無体物〕は実践によって増加する(E. Fromm, Haben oder Sein)(岸見・愛とためらいの哲学(2018)133 頁)。
- 愛とは,支配とか見返りとかを求めることなく,与えることである。「自分の喜び,興味,理解,知識,ユーモア,悲しみなど,自分のなかに息づいているもののあらゆる表現〔著作〕を与えるのだ。このように自分の生命を与えることによって,人は他人を豊かにし,自分自身の生命観を高めることによって,他人の生命観を高める」(フロム・愛するということ)(岸見・愛とためらいの哲学(2018)139頁)。
- ここ1か月間の著作権の学習を通じて,そして,全く関係がないように見える本書(岸見・愛とためらいの哲学(2018))を読むことを通じて,無体物の概念をうまく扱えるようになると,民法学においても,従来の考え方をうまく説明できることに気づかされます。そればかりでなく,新しいアイディアが湧きでてくることに気づきます。
- 労務という無体物(役務)を扱えるようになると,すべてのサービス契約は,労務の利用(使用貸借・賃貸借)契約であるとまとめることができます。
- 時間決めの一般的な「労務の利用」契約…雇用
- 仕事の完成を目的とした「労務の利用」契約…請負
- 事務処理を目的とした「労務の利用」契約…委任
- 物の保管を目的とした「労務の利用」契約…寄託
- 事業を営むことを目的とした「労務の利用」契約…組合
- 思想・感情の創作的表現という無体物(著作)を扱えるようになると,著作権とは,無体物の利用権をめぐる問題であることも理解できるようになります。
- 文化の発展に寄与することを目的とした著作の公共財への添付…著作者
- 文化の発展に寄与することを目的とした著作の有体物への転換と配布・販売…著作権者,出版権者,著作隣接権者
- 文化の発展に寄与することを目的とした著作の利用と著作権者に対する寄付・ロイヤリティの支払い…一般国民
- 最後に,労務と著作という無体物を扱えるようになると,愛の契約である婚姻も以下のように考えることができるのではないでしょうか。
- 家庭を営むことを目的とした,見返りを求めない,労務・著作等の無体物の出資契約…婚姻
- (HP訪問者の延べ人数:15,780人)
- 2018年3月1日(木) 台風並みの春一番が吹き荒れたのち,晴れ。
- 岸見一郎『愛とためらいの哲学-あなたの愛は,なぜ幸福をもたらさないのか-』PHP新書(2018/3/1)を読み終えて,「法教育の絵本」の構想が少しばかり進展したように思います。
- 法教育の必要性は,本書の最初の章に記述されている,「私たちは,一人で成し遂げることができる課題,あるいは,多人数で成し遂げる課題については教育を受けてきましたが,二人で行う課題については何も教えてこられなかった」[岸見・愛とためらいの哲学(2018)34頁]というのと同じであり,この点を中心において法教育の絵本を構成すべきだと考えました。[岸見・愛とためらいの哲学(2018)146-147頁]を読んでいて,これまで温めてきた構想(「わたしの物,きみの物,皆んなの物?」)に,このアイディアを追加します。
- 具体的には,人の知能の発達段階に応じて,有体物と無体物をめぐる人間関係の闇に光を当てるという方法を採用したいと考えています。
- 一人の世界…自己中心の世界観に基づいて,有体物を所有し,無体物を独占する。
- 二人の世界
- 初期状態…異物である相手を有体物と同じように支配しようとする。そこから,敵対(喧嘩),競争(勝負)が発生する。勝った方が負けた方を支配し,支配された方は従属しつつも,逆転・再起を狙う。
- 私のものは,私のもの。あなたのものも,私のもの。⇔僕のものは,僕のもの。君のものも,僕のもの。
- けんかになった,どうしよう。お母さん,お父さん,助けて。どうしたら,仲よく遊べるのかな。
- 改善状態…二人の興味がある,しかし,一人では実現がむつかしいできる課題を与え,協力するとそれが実現できることを体験させる。二人が課題に向かって横並びになり,課題に向かって協力することで,新しい成果を生み出せることを体験させる。その成果は,所有ではなく,共有となる。
- 区別しよう。 私のものとあなたのもの,僕のものと君のものとを区別しよう。人のものはとってはいけない,「いいよ」をもらわなければ使ってもいけない。
- 比べっこしよう。 比べてみよう,私とは違うあなたの使い方。じっと見てみよう,僕のやり方とは違う君のやり方。
- 真似っこしよう。 あなたのやり方,君のやり方を真似してみよう。なるほど,なるほど。面白いことを考えたよ。
- 取り換えっこしよう。 取り換えっこして,それぞれのやり方で遊んでみよう。でも,時間が来たら元に戻そうね。
- 決まりを決めて約束しよう。 一人で使うときの順番や二人で遊ぶ時の決まりを作って,仲よく遊ぼう。いつでも取り換えっこできたり,一緒に遊べたりすると楽しいね。
- 三人以上の世界…自立に基づく他者への貢献。共有から合有,総有,公有へ。
- まだ,構想段階に過ぎませんが,主人公である一人っ子に姉妹兄弟ができて,その世界が,所有,共有,合有,総有,公有へと変化していく過程を描き,その中で,法が最も優れた公共財の一つであること(著作権法13条参照)を主人公が理解できるようになるという物語にしたいと思っています。
- 最終目標は,法教育の絵本を通じて,すべての国民が,最も優れた公共財の一つである「法」を理解し,そのことに誇りを持ち,そして,時代に適応した法律を立案できる能力を育成することです。その過程で,すべての有権者が,最高裁判所の裁判官の国民審査(憲法79条2項~4項)において,自信をもって「×」をつけることができる能力を獲得することもできるようになり,さらには,「公務員を選定し,及びこれを罷免することは,国民固有の権利である」(憲法15条1項)という規定を,実際に実現できる法律を制定できる能力を獲得できるようになると,私は考えています。
- (HP訪問者の延べ人数:15,800人)
- 2018年3月2日(金) 晴れ
- 日出ロータリークラブに出席した際に,会員からいただいた,日出ロータリークラブ編『大夢翁 土屋元作』(1996/10/1)を読み始めました。
- 土屋元作(ツチヤ モトサク)という戦前のジャーナリストの名は,あまり知られていないのですが,日本のロータリークラブの創設者である米山梅吉と密接な親交があり,米山梅吉を支えて日本ロータリーの発展に尽力し,大阪ロータリークラブに在籍しつつ,東京ロータリークラブの融和と日本化に取り組んだ人物であり(本書6-7頁),その出身が日出町(現在の私の住所地)であったことから,日出町の郷土の誇りとされている人物であることがわかりました。
- 日出町の郷土の誇りといえば,「荒城の月」を作曲した瀧廉太郎であり,ここ日出町では,毎日の正午の時報に,「花」(春のうららの…)の曲が流れています(私も毎日聞かされています)。なお,瀧廉太郎は,東京育ちなのですが,廉太郎の生家は,代々豊後国日出藩の家老を勤めていたこともあり,廉太郎の墓は,日出町にあります。
- 日出ロータリークラブ編『大夢翁 土屋元作』(1996/10/1)を読んでいて,土屋元作が,瀧廉太郎のいとこであることも,はじめて知りました。この本には,土屋元作と滝廉太郎が一緒に写った,家族の集合写真(本書の内表紙から5頁目)も掲載されており,貴重な本をいただいたことを実感しました。
- ロータリーの字義は,「回転する」ということですが,土屋元作は,ロータリーの日本化に勤める際に,二宮尊徳が,実は,ロータリアンなのだと説き,二宮尊徳の「植物は種から芽を出し,花を開き実をつけ,再び又種に返る」を引用しています(本書17頁)。
- 私は,日出町での社会貢献として,すべて無料の「寺子屋ひじ塾」を開設する準備を進めていますが,「植物は種から芽を出し,花を開き実をつけ,再び又種に返る」という二宮尊徳の言葉は,寺子屋ひじ塾の開設の精神とも重なるところがあると思いました。
- なぜなら,二宮尊徳の言葉は,それを補って考えると,「種→(発芽環境)→発芽→(成長環境)→開花→(生殖環境)→成熟(育成環境)→種」という生態系の循環とともに,その「発芽・成長,生殖,育成環境」,人間に譬えるならば,「教育環境」の重要性を暗示していると考えたからです。
- どうやら,「寺子屋ひじ塾」の開設と,「日出ロータリークラブ」との接点が,土屋元作の伝記を通して見えてきたように思います。
- (HP訪問者の延べ人数:15,820人)
- 2018年3月3日(土) 晴れのち曇り のち雨
- 日出ロータリークラブに出席した際に,会員からいただいた,日出ロータリークラブ編『大夢翁 土屋元作』(1996/10/1)を読んでいます(第2日目)。
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ひな祭りの
フラワーアレンジメント |
誕生祝いにいただいた花瓶
春の花を活けてもらいました。 |
- 昨日は,土屋元作が瀧廉太郎と従兄弟同士であることを知ったのですが,今日は,土屋元作が,以下のように(本書174頁),私が勤めていた明治学院大学とも縁があることを知って驚きました。
- そこで私〔土屋元作〕は上京早々〔明治17年(1884年)〕正則の英語を学ぶ目的で,築地の英和一致学校に入学した。これが後の明治学院で,宣教師の名を取ってバラの学校と呼んでいた。そのバラ先生を初めマコーレ石本三十郎等が先生であったが,校舎が築地にあるので冬は非常に寒い。私は何分通学の途中が寒くて我慢し切れず,遂に三箇月ばかりで退学してしまった。
- 雲行きが怪しいので,雨が降らないうちにと,午前中にパンを焼いて,暘谷苑へ父(96歳)の見舞いに行きました。
- 父は,個室のベッドに伏していたが,目を覚ましており,珍しく受け答えができました。元気で何よりです。
- (HP訪問者の延べ人数:15,840人)
- 2018年3月4日(日) 晴れのち曇り 5月並みの陽気
- 日出ロータリークラブに出席した際に,会員からいただいた,日出ロータリークラブ編『大夢翁 土屋元作』(1996/10/1)を読み終わりました。
- 日出町の郷土の誇りである土屋元作の伝記を通じて,日出町の歴史や偉人の活躍の一斑に触れることができ,今後,この町で過ごす上で,参考になることが多く,読んでよかったと思います。
- 一昨日は,土屋元作が,この地で正午の時報に使われている「花」(春のうららの…)の作曲家の瀧廉太郎といとこ同士だったことを知り,昨日は,土屋元作が,私が昨年まで勤めていた明治学院の前身である「英和一致学校」に在籍していたという,不思議な縁を知ることができました。今日は,土屋元作が,学問の目的を「自立」と答えたところ,「目的が小さすぎる」と批判されたという逸話に出会いました。タイトルが,「独立など問題でない」という刺激的なものであったので,〔 〕で,補足をしながら,該当箇所(本書176頁)を引用して考えたいと思います。
- 〔高橋嘉右衛門〕 お前さんは一体何の為に学問をなさるか。
- 〔土屋元作〕 独立の為に学問します。独立即ち人の世話にならぬように世を渡るのが人間の道と考える。
- 〔高橋嘉右衛門〕 独立くらいが何だ。独立なら,…蜆〔シジミ〕を売る小僧でもやっているではないか。堂々たる男子が独立ぐらいの事に苦心するのは小さいじゃないか。
よくお聞きなされ,人間には幸と不幸とがある。お前さんのように自分に稼がずに親から金をもらって学問をするものもあれば,子どもでも食う事を稼がねばならぬ者もある。お前さんなどは即ち幸福の部に属する。蜆〔シジミ〕売りの小僧などは毎日の生活費を自分で稼がねばならぬから不幸の人間である。
親の金で学問する身分の者が世の中の不幸のものを幸福に導く事を考えないで何とする。自分の生活の独立などは問題にならぬ。
- 時代の違いなのでしょうが,当時は,子どもでも物売りをして自立ができていたのでしょう。若いころの土屋元作が,高橋先生から,「親から金を貰って学問をするからには,目標が自立では足りない。他者のために貢献せよ」と言われ,「その言に敬服して恐れ入った」というエピソードです。
- 現代に置き換えて,「親に金を貰って大学で学問をするのなら,自立は当然の前提として,貧しい人のために社会貢献をすること目指せ」ということになると,企業や公共機関に依存して生きていこうとして,効率よく単位を修得して就活に励む現代の学生たちは,高橋先生の以上のような問いかけに対して,どう答えるのでしょうか。
- 大学で効率よく単位を修得し,就活に励んで首尾よく就職ができたとしても,その程度のレベルなら,国際的な競争にも,人工知能にも太刀打ちできず,遠くない将来,その職を追われることなると予想されるのですが,社会貢献は大丈夫なのか,現代の学生たちは,大学で学ぶことをどのように考えているのか,機会があったら,話をじっくり聞いてみたいと思ました。
- 2018年3月5日(月) 雨ときどき曇り
- 日出ロータリークラブに出席した際に,会員からいただいた,岩藤みのる『暘谷城の残影-豊後日出藩・家老〔加賀山半左衛門〕の殉教』(1998/9/20)を読み始めました。
- この小説の主人公の名前が日出藩の家老「加賀山」なので,日出ロータリークラブの会員が,昨日までに読み終えた『大夢翁 土屋元作』と一緒に,私に読むように勧めてくれたのです。この2冊の本を通じて,日出町の歴史,日出ロータリークラブの根本理念を私に理解させよううというお考えだったのだと思います。1冊目の『大夢翁
土屋元作』は,まさに,日出ロータリークラブの根本理念を理解するのに役立ちました。2冊目の岩藤みのる『暘谷城の残影-豊後日出藩・家老の殉教』(1998/9/20)は,日出藩の家老の視点から見た日出町の地勢と歴史であり,日出町を知るための格好の書物であるように思います。
- そこで,著作権法の学習と確定申告の準備を少しばかり先送りにして,この本を読むことにしました。
- (HP訪問者の延べ人数:15,870人)
- 2018年3月6日(火) 晴れ時々曇り
- 日出ロータリークラブに出席した際に,会員からいただいた,岩藤みのる『暘谷城の残影-豊後日出藩・家老〔加賀山半左衛門〕の殉教』(1998/9/20)を読んでいます(2日目)。
- 本書の主人公である加賀山半左衛門の足取りを地図で追っていくと,豊後国日出藩(現在の大分県速見郡日出町)の地勢がわかってきました。
- さらに,住民にかかる「同調圧力」の原因の一つが,自然災害を前にした無力感から来ていることを前提として,以下のように分析されていました。
- この国の民は何故一律横並びを好むのであろうか? ことの善悪に拘わらず,すべてが同じ方向で,同じように肩を並べなければことが納まらぬ。それが良いこと,美しいことと決めている。そして,それに外れた者は異端者として疎外し,体制の意のままに動く人を,従順とか円満とかいう言葉で表現し,その習癖に人格という格をつけるのでしょうか?(本書58-59頁)
- 人は,生まれてから死ぬまで,将棋の駒のように格付けが決まっているのでしょうか? いや,将棋でさえ,歩が,ト金になることがあります。いや,ト金になったら,同じ歩から足を引っ張られるのです。だから,弱い歩は,横並びに並んでいるのが一番楽なのです。…歩が本当に戦っているのは,向こうの側の駒ではない。自分の側の歩ではないでしょうか?(本書84頁)
- 庶民の目は,絶えず横を見ている。自分の進むべき真っ直ぐな道の前を見通した目ではない。何時も周囲の動きを気にしながら,隣の細やかな声に耳を傾けながら生きている兎の目であった。(本書84-85)
- 現代の私たちにとっても,何かを成し遂げようとするのであれば,横並びの「同」ではなく,目標を同じくしつつも,各人が個性を発揮し,自由に行動しつつ調和を保つ「和」が必要であることを再確認しなければならないと思います。十七条の憲法にいうところの「和の精神」も,日本書紀に〔孔子〕と明記されているように,「君子は和して同ぜず,小人は同じて和せず」(論語
子路編13の23)から来ていることも考慮すべきでしょう。
- (HP訪問者の延べ人数:15,890人)
- 2018年3月7日(水) 曇り時々晴れ
- 日出ロータリークラブに出席した際に,会員からいただいた,岩藤みのる『暘谷城の残影-豊後日出藩・家老〔加賀山半左衛門〕の殉教』(1998/9/20)を読み終わりました。
- 本書は,徳川幕府によるキリシタン弾圧を未然に防止するために奔走し,一人で責任を背負って殉教した日出藩家老のる加賀山半左衛門の物語であり,ストーリー展開も非常に興味深いのですが,法律家の視点からは,以下の2箇所が心に残りました。
- 組織の中にいる人間が陥りやすい人間の価値に関する誤解,および,自立の意味について(本書219頁)
- こうして,海に出て二人だけの船の上になると,武士も町人も百姓も皆同じ人間である。権力も地位も名誉も,それは人間が社会の中で勝手に作ったしきたりであって,その人間の本質には全く関係ない。…要はその中身の問題である。
- いま,この海を泳がせて見ろ,この海で魚を釣らせて見ろ,この船を見事に操って見ろ,何一つとして〔この漁師に〕勝るものはないではないか。
- 俺の価値は,あの城の中で,あの城を支える何百人かの力を背景にして成り立っている。俺を支えているのは,あの城であり,この漁師は一人でこの小さな船で家を支えている。
- 法の趣旨・目的に反して独り歩きする法の運用の危険性,および,時代の変化に合わせた柔軟な法の運用の妙について(本書289-290頁)
- 法と言うものは可笑しなものでござっての。
- 当初は,その必要があって「法」を制定し趣旨や目的が定められている。ところが世の中というものは,日々年々変化して行くのに「法」は依然として旧態のままだ。
- いや「法」は一旦制定されると,社会の変化と同じように運用面でどんどん変化し,当初の趣旨目的と全く違った方向に向いてしまう。
- 「法」は化け物の象徴である墓石のようなもので,その石自体は何もせぬ何も出来ないのに世人はそれを恐れる。「法」とは案外庶民から恐れられるが故に価値があるのかもしれぬ。
- 何れにしても,切れもせぬダンビラを振り回して恐れさせる役人が悪いのか,それを恐れる庶民の意気地がないのか,世の中は不思議だ。
- 本書を読んだのをよい機会として,日出町の名所・旧跡をナビの付いた自転車で訪ねてみようと思いました。
- 前掲書を読み終わり次第,確定申告の準備のための準備作業を開始するつもりでしたが,大分大学経済学部から,来年度から非常勤講師として「消費者と法」の講義を担当してもらうことに決定したとの通知が来たため,必要書類を作成し,送付してから,確定申告の準備作業を開始することにしました。
- 確定申告を終えた後,著作権法改正に向けて準備された,山中信弘=金子俊哉編『しなやかな著作権制度の向けて-コンテンツと知的財産法の役割-』信山社(2017)を読み始めます。
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廣瀬久和=河上正二編
『消費者法判例百選』
別冊ジュリスト(2010) |
2018年3月8日(木) 雨
- 『法と経営研究』の編集会議を開催するため,東京に出張します。
- 大分大学経済学部の非常勤講師として「消費者と法」(春学期・2単位)の講義を担当することになったため,必要書類を作成する作業を開始したところ,講義に使用する教材としては,私独自のレジュメだけで講義するよりも,市販されている教科書と参考書を指定して,それらを併用した方が,学習効果を高める効果があるように感じました。
- いろいろ考えた後に,学生の出費をできるだけ少なくするこを念頭に置いて,廣瀬久和=河上正二編『消費者法判例百選』別冊ジュリスト(2010/6)を教科書兼参考書として指定することにしました。この教科書・参考書を利用するならば,私が今回の講義に際して設定した「消費者苦情相談に法的観点からアドバイスできる能力を育成する」という学習目標に対して,学生の一人ひとりがそれに向かって努力し,目標に到達することが可能となると考えたからです。
- この目的を達成するための補助教材として,私独自のレジュメを作成することは当然として,講義の予習・復習を促す教材として,『消費者法判例百選(2010)』のコラム(1~24)を抜き出し,体系的に並べ替えた簡易な補助教材を作成することを思いつきました。
- そこで,これから3日間をかけて,『消費者判例百選(2010)』のコラム欄(1~24)を抜き出してデータベース化し,体系的に並べ替えて,15回分の補助教材とするための作業を開始します(第1日目)。
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- 2018年3月9日(金) 雨のち曇り 4月中旬の暖かさ
- 『消費者判例百選(2010)』のコラム欄(1~24)を抜き出してデータベース化し,体系的に並べ替えて,15回分の補助教材とするための作業を行っています(第2日目)。
- 明治学院大学で,『法学研究』定年退職記念号の贈呈式があり,記念号を拝受しました。
- 『法と経営研究』編集会議を開催し,創刊号の総括と,第2号の発刊に向けた方針等を議論の上決定しました。
- 『法と経営研究』創刊号の出版記念祝賀会を編集委員会が主催し,出版社をゲストに迎えて開催しました。
- (HP訪問者の延べ人数:15,940人)
- 2018年3月10日(土) 曇りのち晴れ
- 『消費者判例百選(2010)』のコラム欄(1~24)を抜き出してデータベース化し,体系的に並べ替えて,15回分の補助教材とするための作業を行っています(第3日目)。
- 大阪大学で勤めていた頃のゼミ生たちが中心となって,大阪で私の古稀記念の食事会を開催してくれることになり,その会に参加しました。参加者は私を含めて7名で,その内訳は,民間企業の社員2名,法曹関係3名(裁判官2名,弁護士1名),研究者1名,公務員1名でした。食事をしながら,お互いの近況報告等を行いました。その後の懇親会では,家庭・職場の問題点,民法(債権関係))改正の問題点などについて,白熱の議論を展開しました。
来年も,ゼミOBの集まりをこなうことを約して別れました。
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- 2018年3月11日(日) 晴れ 東日本大震災から今日で7年。その当時,私は,明治学院大学の法科大学院で補習授業をしていました。直ちに授業を中止し,法科大学院の建物の玄関で,学生たち,警備員さん,先生方と,向いのビル(高輪レジデンス)や電線が激しく揺れるのを見ながら,じっと待機していたのを思い出します。
- 明治学院大学での『法学研究』退職記念号を受け取り,市ヶ谷での『法と経営研究』第2号の編集会議,神楽坂での創刊号の記念パーティ,大阪でのゼミ生OBによる古稀記念パーティを終えて,帰郷します。
- 『消費者判例百選(2010)』のコラム欄(1~24)を抜き出してデータベース化し,体系的に並べ替えて,15回分の補助教材とするための作業を行っています(第4日目)。
作業を完成させて,大分大学の「消費者と法」のシラバスを完成させました。
- (HP訪問者の延べ人数:15,980人)
- 2018年3月12日(月) 晴れ時々曇り
- 大分大学経済学部の学務係にメールで「消費者と法」のシラバスを送付するとともに,印鑑が必要なため,郵送すべき履歴書の形式を確認しました。すぐに,先方から履歴書のフォームの送付を忘れていたとの返事とともに,履歴書のフォームをメールでいただいたので,履歴書のフォームに従った履歴書の作成を行い,郵送すべき3点セット(履歴書,給与振込依頼書,振込口座の通帳の中表紙の写し)を郵便局から速達で郵送しました。
- お花屋さんによって,15日(木)~16日(金)に行われる明治学院大学・消費者法研究会の合宿場所であるソラージュ(大分県日出町)の会議室にフラワーアレンジメントを配達してもらうよう依頼しました。和やかな雰囲気で参加者(7名)の報告と議論ができることと思います。
- (HP訪問者の延べ人数:16,000人)
- 2018年3月13日(火) 曇り時々晴れ
- 「消費者と法」のシラバスの作成,独自のフォームに従った履歴書の作成などの仕事に追われたため,遅れに遅れた確定申告の作成を開始し,国税庁のホームページにある「確定申告書等作成コーナー」を利用して確定申告書を完成させました。
- 1日で確定申告書を作成できたのは,このWebサイトのおかげです。作成した確定申告書を管轄の別府税務署に郵送し,一息つくことができました。
- (HP訪問者の延べ人数:16,020人)
- 2018年3月14日(水) 晴れ
- 明日から始まる明治学院大学消費者法研究会の合宿の準備(報告レジュメ「著作利用者のための著作権法改革」の作成)を始めます。また,合宿の最終日には,メンバーに自宅に来てもらうので,机周りの書類の山の片づけも並行して行います。
- (HP訪問者の延べ人数:16,040人)
- 2018年3月15日(木) 晴れ後曇り後雨
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ソラージュの会議室 |
消費者法研究会での報告と検討 |
大分県速見郡日出町で,明治学院大学・消費者法研究会の合宿(1泊2日)をソラージュで行いました(第1日目)。参加者は7名(消費者法2名,民法2名,刑法2名,法情報学1名)です。多彩なメンバーが報告し,活発な議論がなされました。
- 第1報告 通信販売のいわゆる「定期購入」の紛争
- 最近増加している消費者トラブルとして,以下のような例(定期購入トラブル)がある。
- 通常価格5,000円のところを,「初回お試し500円,2回目以降特別価格4,000円」と表示されているので,お試しだけのつもりで購入してみると,別の箇所に「割引は5回以上の定期購入が条件」と小さく記載されており,お試し限りで終わりにしようとすると,「初回5,000円と発送準備に入った2回目4,000円を支払え」と請求される。消費者にとっては寝耳に水である。お試し部分500円のはずが,5,000円ばかりか,まさかの2回分4,000円まで請求されるという。
- このトラブルに対して,改正特定商取引法は,その施行規則8条7号において「商品の売買契約を2回以上継続して締結する必要うがあるときは,その旨及び金額,契約期間その他の販売条件」を表示する義務があるとして,問題を解決しようとしているが,最初の1回の契約で複数の給付を申し込ませているので,そもそも,この規定(複数契約,または,契約の更新を前提としている)が適用できないのではないか,というのが報告者の問題提起です。
- トラブルとなっている契約について,そもそも,契約は不成立であるとか,契約は成立しているが,要素の錯誤があるとの見解が主張されているが,どのように考えるべきかについて,議論を行いました。
- この問題について,私は,私の『契約法講義』日本評論社(2017)160頁に記載されている,ドイツ民法の規定が有用ではないかとのアドバイスを行いました。
- ドイツ民法 第454条(旧495条)【売買契約の成立】
①試味売買または試験売買(Kauf auf Probe oder auf Besichtigung)においては,売買目的物の認諾は,買主の任意に委ねられる。売買は,疑わしいときは,認諾を停止条件として締結されたものとする。
②売主は,買主に客体の吟味を許容する義務を負う。
- このような規定を有しないわが国においても,意思表示の解釈として,事業者の申込みの誘引に対して,消費者は,気に入ったら2回目以降の給付の提供を受けることもあり得るという,2回目以降の給付について,停止条件条件付きの意思表示をしていると解することができると思われます。
- このように考えるならば,初回については,無条件で契約が成立しているが,2回目以降の給付と代金の支払はは,消費者の任意の意思に委ねられているか,少なくとも,消費者の2回目以降の給付の認諾を停止条件として効力が生じると考えることが可能になると思われます。
- この問題については,これまでのところ,そもそも「契約が成立しない」とか,契約は成立しているが,「錯誤によって無効である」とか,「契約は完全に有効である」とかではなく,この研究会での検討を通じて,2回目以降の給付については,「消費者の認諾を停止条件として契約が成立している」という,新しい説が登場したことになります。
- もっとも,上記の説と結果はほぼ同じですが,一つの契約が,消費者の2回目以降の給付の拒絶を解除条件として成立していると考えることも可能です。しかし,この考え方によると,消費者が拒絶の意思をしない限り,次回以降の契約が有効となってしまう危険性があるため,停止条件説を採用するのが妥当であると思われます。
- 第2報告 大学退学の自由について
- 札幌地裁平成29年12月26日判決 裁判所Webサイト
- 授業料の未納がある場合には,大学からの除籍処分はできるが,学生からの退学願を受理しないことができるという運用は,合理的な根拠があるか,学足に明確な規定がなく,周知性もない場合に,法的効力を有するかが問われた事例について,検討しました。
- 裁判所は,以下のように判断しています。
- 授業料を納付するまで退学を認めない本件運用が学生の在学契約の解除権の行使を制約するものであることは明らかであるところ,退学が学生の身分に重大な影響を及ぼすことからすれば,本件運用が学生に及ぼす不利益の程度は看過することができず,また,当該制約をすることに合理的理由があるとは認められない。したがって,本件運用を根拠に授業料の未納がある学生からの退学,すなわち在学契約の解除を認めないとすることは許されないというべきである。
- 私からは,確かに,大学は当然に未納の授業料を請求する権利がある。しかし,未納の授業料を請求できることと退学を認めないということとは別問題である。授業料が未納である限り,退学を認めないということは,団体からの脱退の自由を奪うことになるので,合理性がない。したがって,両者の関係を切り離し,退学を認めた上で,別途,未納の授業料の強制履行を行うべきではないかとのアドバイスをしました。
- 第3報告 著作利用者のための著作権法改革
- 消費者の自立を考えた場合に,消費だけでなく,収支バランスを考えると,雇用契約,預金契約,投資に関する契約も念頭に置かなければならない。そうすると,消費者法は,単独では,自立支援の機能を果たすことができない。したがって,自立支援のための消費者法とは,結局,市民生活の基本法である民法に統合されることにならざるを得ない。
- これと同様なことが,著作権法についても生じている。従来の著作権法は,偉大な著作者を保護することを通じて,文化の発展に寄与することを目的としていた。しかし,インターネットの発展によって,すべての国民が著作者となり得る現状においては,著作者に特権としての公表権,差止請求権,同一性保持権を与えることは,著作者に行き過ぎた保護を与えるものとなっている。
- 著作権法の目的である文化の発展に寄与するためには,著作を利用する権利を第一義的に考えるべきである。なぜなら,著作の幅広い利用を推奨することにを通じて,より高度の著作が創造されるのであり,それこそが,文化の発展に発展に寄与する最も妥当な方法だからである。
- 第4報告 仮想通貨とセキュリティ-コインチェックを例にして
- 2018年1月26日,コインチェック社から,約580億円の仮想通NEMが流失した。
- 仮想通貨の信頼性を確保するためには,ホットウォレットにおける秘密鍵の機密をいかに守るかが最重要課題となるが,コインチェック社は,秘密鍵の管理がずさんであった。
- 被害を防止するためには,アドレスと秘密鍵の管理を銀行並みに強化する必要があるし,消費者に対しても,アドレスと秘密鍵が漏洩すれば,仮想通貨の喪失を防ぐことができないことを周知すべきである。
- 第5報告 景表法に基づく課徴金納付命令
- 三菱自動車に対する景品表示法に基づく課徴金納付命令(消費者庁平成29年1月27日命令)
- 景表法は,従来は,独禁法の特別法(経済法)とされてきたが,消費者庁の発足に合わせて,消費者法としての改正がなされた。しかし,平成26年の改正によって課徴金制度が導入とされ,独禁法的性質が復活したように思われる。
- 三菱自動車に対する課徴金事件を題材に,課徴金の制度は,刑事的な懲罰なのか,民事的な利益の掃き出しなのか,議論を行った。
- (HP訪問者の延べ人数:16,060人)
- 2018年3月16日(金) 雨後曇り
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私の実家を訪れた消費者法研究会のメンバー |
大分県速見郡日出町で,明治学院大学・消費者法研究会の合宿(1泊2日)をソラージュで行いました(第2日目)。
- 第6報告 消費者団体による金銭請求とその帰属-シ・プレ原則の活用と問題点の検討
- 前回の報告の大幅な改定とバージョンアップ。不当収益剥奪請求の帰属について,被害回復給付金支給制度(組織犯罪処罰法の改正)を含めて活発な議論を行った。
- 合宿終了後,合宿参加者全員に私の実家に来てもらい,母を紹介し,私の書斎案内しました。その後,日出の町に出て,一緒に昼食をとり,鉄道組は杵築駅にお送りし,飛行機組は,実家でひと時を過ごした後,大分空港までお送りしました。
- (HP訪問者の延べ人数:16,080人)
- 2018年3月17日(土) 晴れ
- 明治学院大学・消費者法研究会の合宿(1泊2日)の報告レジュメをパソコンに取り込んで整理しました。
- 大分大学経済学部から,授業時間割・講義室・学年歴等の事務連絡が送られてきたので,私のスケジュール表に授業日と講義時間(月・3限)を記入しました。4月9日(月)から8月6日(月)まで,毎週月曜日に,「消費者と法」の講義をするために,自宅から1時間20分を掛けて大分大学へ通うことになります(自宅→(徒歩15分)→大神駅→(日豊本線40分)→大分駅→(豊肥本線15分)→大分大学前駅→(徒歩10分)→大分大学)。
- 『消費者判例百選(2010)』のコラム欄(1~24)を抜き出してデータベース化し,体系的に並べ替えて,15回分の補助教材とするための作業を行っています(第5日目)。そのタイトルを「2018年度『消費者と法』定期試験予想問題(15題)」として,教材として配布できるデータに変更しています(第1日目)。
- (HP訪問者の延べ人数:16,095人)
- 2018年3月18日(日) 晴れ後曇り
- 『消費者判例百選(2010)』のコラム欄(1~24)を抜き出してデータベース化し,体系的に並べ替えて,15回分の補助教材とするための作業を行っています(第6日目)。そのタイトルを「2018年度『消費者と法』定期試験予想問題(15題)」として,教材として配布できるデータに変更しています(第2日目)。
- 2017年10月8日に開催された私法学会シンポジウムの速記録の校正(第2校)依頼が届いたので,誤りがないかどうか確認し,郵送に備えてコピーしました。
- 久しぶりにカラオケ店によって,「NHKプロフェッショナル仕事の流儀」のテーマソングなっている,スガシカオ『Progress』に挑戦してみました。ボーカル・アシストがないと,旋律を歌うことができないほど難しかったのですが,良い経験になりました。DVDを購入して練習するので,たぶん,1週間ほどで,アシストなしで持ち歌として追加することができそうです。
- (HP訪問者の延べ人数:16,115人)
- 2018年3月19日(月) 雨
- 『消費者判例百選(2010)』のコラム欄(1~24)を抜き出してデータベース化し,体系的に並べ替えて,15回分の補助教材とするための作業を行っています(第7日目)。そのタイトルを「2018年度『消費者と法』定期試験予想問題(15題)」として,教材として配布できるデータに変更しています(第3日目)。
- スガシカオ『Progress』を歌う練習をしていて,「他者への貢献 “Do for others”」という歌詞を思いつきました。誰かが作曲してくれるとうれしいのですが…。
- “Do for others”
- 自分のことしか 考えなかった私なのに, 恋をしたら 人を思いやれるようになった。
自分よりも その人のことが大切になった。 「あなた変わったね」って 家族からもいわれた。
今までどれだけ 自分本位だったんだろう! 自己中のダメな私に 今もなりそうだけれど…。
- ずっと探し続けている 人のためになること。 その人の思い その人の理想に気づくこと,
その人の立場に立てることが とても大切。 無意識の内にできるように それを繰り返そう。
- 何かをする前に 目標をデザインして, 人が嫌がる面倒なことを 楽しくやり抜こう。
それが 他者への貢献“Do for others”
- 向かい合って お互いを知ったら, 星を眺めながら 二人の目標を語り合おう。
仕事は別々でも 目標は同じにできる。 失敗続きで 挫けそうになっても,
目標が確かなら 何度でも立ち直れる! 生まれかわっても 同じことをするか確かめよう…。 - 二人で決めた目標が 同じであっても, 二人がやる仕事は 別々で同じじゃない。
でも二人がやることは いつもハーモニー。 そしてゴールに向かって 進んでいる。
- 何かをする前に 目標をデザインして, 人が嫌がる面倒なことを 楽しくやり抜こう。
それが 他者への貢献 “Do for others”
- 作詞して気づいたのは,“Do for others”には,以下のように3つの局面があるということでした。
- 己の欲せざることを人に施すことなかれ(孔子)
- 自分がして欲しいと思うことを人にしなさい(イエス・キリスト)
- 人が嫌がる面倒なことを見つけたら,率先して楽しくやり抜こう。(恐れながら,加賀山 茂)
- (HP訪問者の延べ人数:16,130人)
- 2018年3月20日(火) 曇り後雨
- 『消費者判例百選(2010)』のコラム欄(1~24)を抜き出してデータベース化し,体系的に並べ替えて,15回分の補助教材とするための作業を行っています(第8日目)。そのタイトルを「2018年度『消費者と法』定期試験予想問題(15題)」として,教材として配布できるデータに変更しています(第4日目)。
- Do For others の歌の作詞を作詞をして,興に乗ったのか,定年退職して実感した思いを川柳(サラリーマン川柳?)にしてみました。
- 定年退職 4部作
- ある人の 若いときに詠める歌(立場の違い)
- パワハラも 何とか我慢 できたのは 誰にでも来る めでたい定年
- ある人の 定年間近に詠める歌(恨み節)
- 近づいて 始めてわかる 究極の 差別の権化 定年退職
- ある人の 定年後に詠める歌(覚醒)
- 定年で やっとわかった 個人の非力 10年前に 気付くべきかな
- ある人の 未来を展望して詠める歌(総ての世代のための提言・遺言)
- 10年ごとに やって来るべき 更新制 己の非力 幾度もわかる
- (HP訪問者の延べ人数:16,150人)
- 2018年3月21日(水) 雨 (ツバメが飛来しているのを見つけました。)
- 『消費者判例百選(2010)』のコラム欄(1~24)を抜き出してデータベース化し,体系的に並べ替えて,15回分の補助教材とするための作業を行っています(第9日目)。そのタイトルを「2018年度『消費者と法』定期試験予想問題(15題)」として,教材として配布できるデータに変更しています(第5日目)。
- 昨年の11月16日(木)に開催され,はじめて出席した「日出会」ですが,今日も招待されたので,2回目の出席をしました。この「日出会」は,ほぼ2か月に1回のペースで,暘谷駅のすぐ近くの日本料理店「幸喜屋」開催される親睦会です。私にとって,地元の人たちと出会いの機会があり,幅広く交流ができるので楽しみにしており,今日も,はじめて参加された税理士の方や若い人達と名刺交換をしました。
- (HP訪問者の延べ人数:16,170人)
- 2018年3月22日(木) 曇り後晴れ
- 『消費者判例百選(2010)』のコラム欄(1~24)を抜き出してデータベース化し,体系的に並べ替えて,15回分の補助教材とするための作業を行っています(第10日目)。そのタイトルを「2018年度『消費者と法』定期試験予想問題(15題)」として,教材として配布できるデータに変更しています(第6日目)。
- 愛媛県宇和島市吉田町の従兄弟婦夫が大分に訪ねてきて,一緒に父の見舞いに行きました。今日は別府に一泊して,明日,従兄弟が所有する私の隣地の竹木の剪定,草刈りを行うとのことでした。
- (HP訪問者の延べ人数:16,190人)
- 2018年3月23日(金) 晴れ
- 『消費者判例百選(2010)』のコラム欄(1~24)を抜き出してデータベース化し,体系的に並べ替えて,15回分の補助教材とするための作業を行っています(第11日目)。そのタイトルを「2018年度『消費者と法』定期試験予想問題(15題)」として,大分大学での「消費者と法」という講義の副教材として配布できるデータに変更しています(第7日目)。
- 予想以上に長くかかった作成作業でしたが,今日で,この副教材「2018年度『消費者と法』定期試験予想問題(15題)」を完成させることができました。
- 4月1日から,「消費者と法」のシラバスに従って,この副教材をフルに活用しながら講義を行う準備が整いました。
- (HP訪問者の延べ人数:16,210人)
- 2018年3月24日(土) 晴れ
- 明治学院大学法学部で,民法(債権関係)改正のポイントと問題点について,以下の要領で講演するため,東京に出張します。
- 日時:3月24日(土)午後4時半~6時。その後,懇親会
- 場所:明治学院大学法律科学研究所
- テーマ:「民法(債権関係)改正の第三者評価」(参照文献:加賀山茂『民法改正案の評価-債権関係法案の問題点と解決策-』信山社(2015/11/15) )
- (HP訪問者の延べ人数:16,230人)
- 2018年3月25日(日) 晴れ
- 昨日は,明治学院大学法学部での「民法(債権関係)改正の第三者評価」の公演を30名以上の参加者を得て,盛会裏に終えることができました。
- 今日は,末川民事法研究会に出席し,議論を盛り上げました。
- 第1報告「裁判所の行う情報管理の問題点…民事訴訟記録閲覧制度を中心に」
- 報告者は,興味深い判決・決定が出るたびに,その裁判所に出かけて,訴訟記録一式(①判決・決定原本,②証拠書類,③その他の資料)を閲覧している猛者です。その際に経験した事実に基づいて,閲覧の際にメモが取れるかどうか等の「公開」基準が,全国の裁判所によって,訴訟記録情報管理がまちまちであることが報告されました。
- そして,憲法によって国民に保障されている「裁判の公開」(憲法82条)とは,国民が私法を監視するために正確な裁判記録を公開することなのか(記録の閲覧だけでなく情報公開と同様にコピーを含むのか),それとも,裁判をその場で傍聴できるようにしておくだけでよく,記録を閲覧させること(民訴法91条)は裁判所の義務であるとしても,それ以外は,国民に対する単なるサービスに過ぎないのか,白熱の議論が展開されました。
- 報告者は,以下の民訴法91条,92条を一応合理的なものと前提として報告したのですが,私は,情報公開制度が進展しつつある現在において,以下の民訴法の規定は,「閲覧」という概念を使って,国民のための情報「公開」の仕組みを阻害するものであり,憲法に違反しているおそれがあるのではないか。したがって,民訴法91条・92条は,公開を原則とする理念の下に,根本的な改正が必要であると考えました。その理由は,閲覧した後の国民の正確な情報発信のため,および,最近問題となっている「フェイクニュース」を防止するためには,国民に裁判記録を閲覧させるだけでは不十分であり(誤った情報が拡散されるのを防止できない),非公開情報を除いて,総ての裁判記録を裁判所自身が,裁判所のWebページで公開すべきであると提案しました。
- 民事訴訟法91条(訴訟記録の閲覧等)
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①何人も,裁判所書記官に対し,訴訟記録の閲覧を請求することができる。
②公開を禁止した口頭弁論に係る訴訟記録については,当事者及び利害関係を疎明した第三者に限り,前項の規定による請求をすることができる。
③当事者及び利害関係を疎明した第三者は,裁判所書記官に対し,訴訟記録の謄写,その正本,謄本若しくは抄本の交付又は訴訟に関する事項の証明書の交付を請求することができる。
④前項の規定は,訴訟記録中の録音テープ又はビデオテープ(これらに準ずる方法により一定の事項を記録した物を含む。)に関しては,適用しない。この場合において,これらの物について当事者又は利害関係を疎明した第三者の請求があるときは,裁判所書記官は,その複製を許さなければならない。
⑤訴訟記録の閲覧,謄写及び複製の請求は,訴訟記録の保存又は裁判所の執務に支障があるときは,することができない。
- 民事訴訟法92条(秘密保護のための閲覧等の制限)
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①次に掲げる事由につき疎明があった場合には,裁判所は,当該当事者の申立てにより,決定で,当該訴訟記録中当該秘密が記載され,又は記録された部分の閲覧若しくは謄写,その正本,謄本若しくは抄本の交付又はその複製(以下「秘密記載部分の閲覧等」という。)の請求をすることができる者を当事者に限ることができる。
一 訴訟記録中に当事者の私生活についての重大な秘密が記載され,又は記録されており,かつ,第三者が秘密記載部分の閲覧等を行うことにより,その当事者が社会生活を営むのに著しい支障を生ずるおそれがあること。
二 訴訟記録中に当事者が保有する営業秘密(不正競争防止法第二条第六項に規定する営業秘密をいう。第132条の2第1項第3号及び第2項において同じ。)が記載され,又は記録されていること。
②前項の申立てがあったときは,その申立てについての裁判が確定するまで,第三者は,秘密記載部分の閲覧等の請求をすることができない。
③秘密記載部分の閲覧等の請求をしようとする第三者は,訴訟記録の存する裁判所に対し,第1項に規定する要件を欠くこと又はこれを欠くに至ったことを理由として,同項の決定の取消しの申立てをすることができる。
④第1項の申立てを却下した裁判及び前項の申立てについての裁判に対しては,即時抗告をすることができる。
⑤第1項の決定を取り消す裁判は,確定しなければその効力を生じない。
- 報告者は,一日に何万と出されている裁判について,それをすべて公開することは無理があると考えているようでしたが,記録を紙媒体ではなく,徐々に電子記録にしていけば,ビッグデータの時代において,その程度の情報量を理由にして公開に歯止めをかけることは,結局,国民による司法の監視を困難に陥らせ,司法の腐敗を助長することになるのではないのかとの反論を行って,議論を盛り上げました。
- 第2報告「後見人の追認拒絶と信義則」(最三判平6・9・13民集48巻6号1263頁)
- 報告者は,上記の最高裁判決の判例研究を行った上で,わが国の認知症の人口が,2015年時点で517万人に達しており,2030年には744万人になることが予想されることを考慮して,事務管理の規定を活用して,限定的に事務管理に代理権を認めるべきではないかとの提言を行いました。
- フロアからは,本判決の事案に即して,事務管理に代理権を認めることについての危険性の指摘が相次ぎました。
- 私は,以下の助言を行いました。
- 第1に,本件の事案は,過酷な損害額の予定(民法420条)が問題となっているので,今後の課題を考慮に入れるのであれば,民法改正によって,420条1項から,「その場合において,裁判所は,その額を増減することができない」という文言が削除されたのであるから,その解釈論を行うべきではないか。
- 第2に,事務管理の規定には,委任の規定(民法645条~647条)が準用されており,準用される民法646条2項は,委任者(ここでは事務管理者)に対して,代理権というよりは,授権とか信託に近い仕組みを用意しているのであるから,その観点から報告を組み立て直すべきではないか。
- 研究会のあと,都合のつく4名で,報告者の慰労をかねて懇親会を行いました。
- 私のホームページのメニュー欄を改訂し,吉備国際大学大学院(通信制)知的財産学研究科の講義,および,大分大学経済学での講義について,それぞれの講義のシラバス,講義レジュメ,補助教材をすべて閲覧できるようにしました。
- (HP訪問者の延べ人数:16,250人)
- 2018年3月26日(月) 晴れ 20℃を超える暖かさ
- 一昨日の明治学院大学での講演会,昨日の末川民事法研究会での議論という日程を無事にこなして,大分に帰ってきました。
- 帰りの新幹線の中で,『末川民事法研究』第2号(中川淳先生追悼記念号)に掲載予定の追悼文「中川淳先生との出会いと激励をいただいた思い出」を執筆し,担当者に送付しました。
- 大分大学経済学での講義「消費者と法」について,講義のシラバス,補助教材のほか,レジュメも追加して閲覧できるようにしました。
- (HP訪問者の延べ人数:16,270人)
- 2018年3月27日(火) 晴れ
- 一昨日の末川民事法研究会で,次回の報告予定者から,「民法185条(占有の性質の変更)のうち,後段の新権原についてはよくわかるが,前段の他主占有者が『自己に占有をさせた者に対して所有の意思があることを表示し』という場合の具体例がよくわからないので教えてほしい」との調査の課題をいただきました。
- そこで,名古屋大学の佐野智也氏が運営する「明治民法情報基盤」で,民法185条の立法の経緯をたどって行くと,以下のことがわかりました。
- 現行民法185条(占有の性質の変更)は,旧民法財産編185条を修正したものである。
- 旧民法財産編185条は,ボワソナード起草のプロジェ(Projet de Code Civil)第2編(財産編)の第197条に該当している。
- プロジェ第197条の解説によると,本規定は,ローマ法に起源を有するフランス民法典(旧)第2238条(現行法2268条)を採用したものであることがわかる。
- そこで,外国法典叢書の仏蘭西民法第2238条の解説(327頁)を読んでみると,以下のような具体例が挙げられている。
- 占有名義の転換の第2(現行民法185条前段に該当)は,所有権者に対し占有者が抗弁をもって対抗した場合である。例えば,賃借人が賃貸により返還を請求せられて,その所有権に対し,自己が真の所有者であると主張して占有を継続する場合である。この時に,今までの賃借人名義は転換して所有者名義となる。
- しかし,転換を生じるためには,単に賃貸人の所有権の否認の程度であっては不十分である。例えば,賃借人が他人の前で自分が賃借物の所有権者であると主張したり,賃借物を破壊したり変更を加えたり,あたかも外部に対しその物の所有権者であるかのごとく振舞っても,これでもって名義の転換が生じるわけではない。
- 転換を生じるためには,所有権者に対抗する抗弁,すなわち,両者の間に所有権について争いのあることを主張することが必要である。
- 争いは訴訟の形式でなされることもある。例えば,物の返還に対し,自己が所有者であると主張し,賃料支払の請求に対し同様の主張をもってその支払いを拒絶するがごときである。
- もっとも訴訟があることは必要ではなく,例えば小作人が土地が自己の所有に属することを主張し事後借地料を支払わざる旨の通告を裁判外の行為,例えば,送達証書をもってなす場合にも転換はある。
- 以上の調査結果を来月の報告予定者に通知して,報告の充実に寄与することにしました。
- 昨日購入したお花と,今朝焼いたパンを携えて,暘谷苑に父の見舞いに行きました。目の力は少し弱くなっていましたが,顔色もよく,一人で声を出してしゃべることができているので,安心しました。
- 岸見一郎の「勇気」シリーズ(嫌われる勇気,幸せになる勇気,人生を変える勇気)の最新刊である『老いる勇気-これからの人生をどう生きるか』PHP研究所(2018/3/30)を読み始めました。
- (HP訪問者の延べ人数:16,300人)
- 2018年3月28日(水) 晴れ
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岸見一郎『老いる勇気
-これからの人生をどう生きるか』
PHP研究所(2018/3/30) |
岸見一郎『老いる勇気-これからの人生をどう生きるか』PHP研究所(2018/3/30)を読み終わりました。
- 両親の実家で暮らすようになって初めて気がつくことが,本書には前もって紹介されており,とても参考になります。介護をする上で参考になるエピソードも豊富です。
- 本書の趣旨は,キリスト教社会で口承されてきたとされる,以下の「ニーバーの祈り」に凝縮されているように感じました。
- 「神よ,願わくばわたくしに,変えることのできない物事を受け入れる〔他者の課題に土足で踏み込まない〕落ち着きと,変えることのできる物事を変える〔自分の課題に取り組み,対人関係に入って他者に貢献する〕勇気と,その違いを常に見分ける知恵〔例えば,「他人を変えることはできないが,自分を変えることは勇気があればできる」など〕とを授けたまえ」(本書65頁)
- 大分でも,桜が一斉に咲き始めたので,92歳になった母に楽しんでもらおうと,タクシーで付近の桜も名所に花見に行きました。菜の花と青空を背景に咲き誇る桜の写真を撮ることができました。
- これから1週間は,穏やかな日が続くとのことなので,明日からの東京,岡山への出張中,そして,大分に帰ってからも,花見を楽しめそうです。
- (HP訪問者の延べ人数:16,320人)
- 2018年3月29日(木) 晴れ
- 明治学院大学・消費者法研究会に出席するため,東京に出張します。
- 明治学院大学の共同研究室で懇談をした後,法科研で,消費者判例を題材として,「詐欺的商法」に利用された人々の救済方法について検討を行います。
- 詐欺的商法に利用された加害者側の幇助者と被害者側の加担者のそれぞれの寄与割合,または,又は過失(原因)相殺について,議論しました。
- 久しぶりに,大阪大学時代のゼミ生と日本評論社の編集者と会って,「民法改正」と「法と経済学」をネタに,会食をします。
- 民法(債権関係)改正について,法学部・法科大学院で利用できる教科書の候補と作成すべき理想的な教科書像について議論しました。
- 最後に,転用物訴権が話題となり,事務管理として構成できないかとの疑問について,第1に,この問題は,Y→M→Xという契約の連鎖を前提としている問題であるため,私は,直接訴権で説明していること,第2に,現行民法701条(委任の規定の準用)に関する『民法正案(前三編)理由書』の以下の記述を取り上げて,事務管理といっても,結局,委任の規定(民法645条)に基づく直接訴権を利用するのであれば,契約外構成としての事務管理で押し切るのは,少しばかり強引ではないかとの感想を述べました。
- (理由)本条〔現行民法701条〕は,事務管理より生ずる直接訴権,即ち,本人が管理者に対して請求することを得べき事項を規定するものにして,既成法典財産編第362条第1項は,之を以て事務管理より生ずる管理者の第一義務と認むることの不当なるは,既に説明せし如くなるのみならず,聊か欠点あるに因り,
- 本案は本人が管理者に対して有する請求権に付ては,委任に関する第644条〔現行法645条〕乃至第647条〔現行法648条〕の規定を準用すとし,管理者は事務を管理するに当りて,受取りたる金銭其他の物及び其収取したる果実を本人に交付し,又自己の名を以て取得したる権利は,之を本人に移転すべきは勿論,
- 本人が請求するときは,何時にても管理の状況を報告し,或は本人に交付すべき金額又は其利益の為めに用ゆべき金額を自己の為めに消費したるときは,其利息を支払ひ,又は損害を賠償せざるべからずとす。
- 蓋し,管理者が本人に対する関係と,受任者が委任者に対する関係との間に於て,本人又は委任者の請求権に付き,特に其規定を異にすべき所なければなり。
- (HP訪問者の延べ人数:16,340人)
- 2018年3月30日(金) 晴れ
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鎌倉(ハイランド) での花見 |
鎌倉在住のJ-Scoreの会員から,鎌倉で花見をしましょうとのお誘いをいただいたので,午前中に花見をしました。
- 今日が,ご夫妻の結婚記念日ということが分かったので,初対面の奥様に花束をプレゼントしました。
- 午後から,明治学院大学・消費者問題研究会に出席し,会員の報告に対して,コメントを行い,議論を盛り上げました。
- 第1報告「いわゆる公害罪法について」
- 刑法211条(業務上過失致死傷罪)では,不十分であるとして,両罰規定,および,因果関係の推定規定を盛り込んだ「人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律」が制定されたにもかかわらず,最高裁判決では,この法律が適用されず,相変わらず,業務上過失致死傷の適用にとどまっているのはなぜなのかについて,報告に基づいて議論を行ない,議論が白熱しました。
- そこで,引き続き,次回に,この問題に関する判例研究の続きをすることになりました。
- 第2報告「BGH Urt. v. 13.1.2011(BGHZ 188,71; NJW 2011,756)について」
- トランプ占いの報酬に関して,従来のドイツ民法では,原始的不能=無効として判断していた事件に関して,報告者によって,債務法改正後のドイツ連邦裁判所の判例が詳しく紹介され,検討されました。
- このような問題は,ドイツ債務法改正によって,後発的不能の問題と同様に,債務不履行の問題として扱われることになったのですが,一審・二審が債務不履行に基づく解除を認めたところ,連邦最高裁は,債権者である顧客が不能の危険を引き受けていたとして,解除を認めず,占い師の報酬請求を認めるべきかどうかについては,それが,暴利行為に該当するかどうかを審理するため,原審に差し戻しました。
- しかし,不能の危険を引き受けたというのは,結局,給付が完全になされたと考えて,反対給付を認めるべきであるとも考えられ野ではないか,つまり,債務不履行(履行不能)が債権者の危険の引受けによって解除ができなくなると考える必要はないのではないか,など,議論が盛り上がりました。
- なお,トランプ占いによる報酬請求が,消費者問題となるのであれば,連邦最高裁が指摘するように,そのような契約自体が,暴利行為に該当するかどうか,わが国の問題であれば,消費者契約法4条に基づいて,取消しができるかどうかは,別途考えればよいのではないかなど,活発な議論が展開されました。
- 第3報告「相殺規定と強行法・任意法」
- 相殺の個別の規定が強行法か任意法かについては,様々な考え方がありうるのですが,強行法規だと考える根拠が,「公序に反するからかどうか」が,ホットな論点となりました。私は,以下のように考えました。
- 任意規定と強行規定の区別について,衝撃的な変更をもたらしたのは,以下に示す消費者契約法第10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)の出現です。
- 第10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって,民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは,無効とする。
- 第1に,公序に関しない消費者契約の条項が,民法1条2項の規定に反する場合には,その条項が無効となるとしている点が重要です。このことは,民法90条の公序良俗違反でない場合でも,場合によっては,無効となることがあることを示しているからです。すなわち,契約条項が無効になる場合とは,常に,公序良俗違反となる場合に限られるわけではなく,公序良俗に違反しない条項が,他の理由で無効になることが示されている例と捉えることが可能となったのです。
- 第2に,公序に関しない規定のことを「任意規定」と呼ぶとすれば,この場合,任意規定であるのに,無効となる場合が示されているのですから,この現象を任意規定の強行法規化と呼ぶことができるのです。しかし,この場合を,決して,任意規定の公序良俗違反化とは呼べないことに注意する必要があると思われます。なぜなら,消費者契約法10条の出発点は,「法令中の公の規定に関しない規定」であって,公序良俗に違反する規定は,当然に無効(民法90条)であって,はじめから,この条文の適用から除外されているからです。
- このように考えると,「公序良俗に違反する契約条項は,常に無効となる」(民法90条)とはいえても,「契約条項が無効となるのは,常に,その条項が公序良俗に違反するからである」とはいえないことがわかります。
- つまり,消費者契約法10条の出現によって,単に,民法1条2項の信義則に違反するに過ぎず,民法90条の公序良俗違反するとは言え場合であっても,無効となる場合があることを認めざるを得ない状況が生じたことになるのです。
- 例えば,改正後の民法548条の2第2項において,「第1条第2項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては,合意をしなかったものとみなす。」と規定していることも,定型約款の条項が効力を有しないのは,この規定が,強行法規(民法1条2項)に違反するからであって,消費者契約法10条の場合と同様,公序良俗に違反するからであるという必要はないということになります。
- 改正後の民法521条2項(契約の内容の自由)が,「契約の当事者は,法令の制限内において,契約の内容を自由に決定することができる。」と規定している点についても,「法令の制限内」という「法令」の中に,民法90条ばかりでなく,民法1条2項を含めて考えることが可能となります。
- さらに,公序良俗違反でなくても,強行法規に違反する場合にも,契約が無効になる場合があるということを認めると,以下のように,無効の説明が容易となるのではないでしょうか。
- 例えば,民法446条2項が,「保証契約は,書面でしなければ,その効力を生じない」と規定しているのも,書面でしない保証契約は,公序良俗に違反するからというまでもなく,民法446条は,保証債務の冒頭条文であり,その定義を含めた強行法規であるからという説明の方が,説得力があると思われます。
- 同様にして,相殺と関係する「弁済」について,改正後の民法473条は,「債務者が債権者に対して債務の弁済をしたときは,その債権は,消滅する」と規定しています。この場合に,当事者が,「債務者が債権者に対して債務の弁済をしても,その債権は消滅しない」との合意をしても,無効でしょう。なぜなら,債務の弁済は,「債権の消滅」の節の冒頭に規定されており,このような冒頭条文の定義規定に違反する条項は,「強行法規に違反して無効である」といえるからです。
- 午後5時に品川に向い,新幹線と電車を乗り継いで,備中高梁駅にある高梁国際ホテルで一泊します。明日の吉備国際大学大学院のオリエンテーションに参加するためです。
- (HP訪問者の延べ人数:16,360人)
- 2018年3月31日(土) 晴れ
- 順正学園の備中高梁キャンパスで開催される,吉備国際大学大学院(通信制)のオリエンテーションに参加しました。
- 国際ホテルを出て,会場の順正学園の備中高梁キャンパスに向かう途中で,満開の桜の下で写真撮影をしている留学生に出会い,一緒に花見をしました。
- オリエンテーションに先立って,教務部長にご挨拶をし,通信教育事務課長から,『研究費使用マニュアル〕等に基づいてにレクチャーを受けました。
- オリエンテーションは,以下の流れで行われました。
- 研究科長挨拶
- 教員(10名)の自己紹介
- 大学院学生(5名)の自己紹介
- 研究科長による『知財研究科ガイド(平成30年度版)〕に基づいた,カリキュラム・授業の種類・修士論文の作成・弁理士試験等についての懇切丁寧な説明
- 参加した教員(10名)と大学院生(5名)との間での作成予定の修士論文のテーマに対応した個人面談
- 自己紹介では,私は,経歴を簡単に述べた後,用意した教材を示しながら,授業の内容を簡潔に紹介しました。また,最後の個人面談で,私は,2名の大学院生(理系と文系)との面談を行い,それぞれの大学院生に対して,修士論文の書き方のノウハウ,および,民法学習のノウハウについて,詳しい解説と質疑応答を行いました。
- オリエンテーションの後,平成29年度第7回大学院(通信制)知的財産学研究科の教授会に参加し,9つの案件がテキパキと処理される様子を観察することができました。教員間のコミュニケーションもよく取れており,人間関係で苦労をする恐れはなさそうだと感じました。
- 明日,岡山キャンパスで開催される辞令交付式に参加するため,国際交流会館で一泊します。
- 国際会館で宿泊することになった,研究科長,昨年着任した弁護士,私との三人で,備中高梁駅近くの料理店で会食をしながら,今後の教育の在り方,科研費に応募するプロジェクトについて,構想を話し合いました。
- (HP訪問者の延べ人数:16,385人)
- 2018年4月1日(日) 晴れ(岡山でもツバメが飛来しているのを確認しました)
- 順正学園の備中高梁キャンパスにある国際交流会館を出て,岡山に移動し,吉備国際大学大学院(通信制)知的財産学研究科の特任教授として,岡山キャンパスで開催される辞令交付式に参加しました。
- 順正学園の理事長から,建学の理念「学生一人ひとりのもつ能力を最大限に引き出し引き伸ばし,社会に有為な人材を育成する」が生まれたいきさつ,順正学園の歴史と現状と課題に関する講和を拝聴しました。
- 建学の理念の内,前段(教育理念)は,私が授業で採用しようとしている「アクティブラーニング」および「反転授業」の理念に一致しており,後段(教育目標)は,学生の「自立」とともに「他者への貢献(“Do for others”)」を実現させることと同じであり,まさに,明治学院大学で培った私の能力をいかんなく発揮できるように思います。
- また,大学が直面している「少子化」による経営危機の問題については,理事長も言及されていたように,留学生受け入れることが必要であり,将来的には,半数を留学生とし,英語だけで修了できるコースを徐々に増やし,日本人と留学生との間の英語での議論を通じて,両者の語学力を飛躍的に向上させることができるように思われます。この点では,名古屋大学で培った,私のアジア法整備支援の能力をいかんなく発揮できるように思います。
- これから,1か月をかけて,吉備国際大学大学院(通信制)知的財産学研究科の「アクティブラーニング・反転授業」プロジェクトの概要を,科研費の申請を念頭に置いて起案することにします。この点では,大阪大学時代から明治学院大学に至るまで,私が培ってきた科研費獲得のノウハウが存分に発揮できます。
- こうしてみると,順正学園は,恐れながら,「稀代の人材」をスタッフとして確保できたように思われます。
- 辞令交付式の後,懇親会に参加し,その後楽ホテルで一泊しました。
- (HP訪問者の延べ人数:16,410人)
- 2018年4月2日(月) 晴れ (気温が25℃の夏日)
- 吉備国際大学大学院(通信制)知的財産学研究科のオリエンテーション,特任教授の辞令交付を終えて,大分の実家に帰りました。
- 注文していた128GBのSDメモリカードとカードリーダーが届いたので,パソコンのHDに記録されたデータが壊れる前に,私が作成したデータを中心に,SDメモリカードにデータをバックアップしました。時間はかかりましたが,いざというときに備えて,気分が楽になりました。
- (HP訪問者の延べ人数:16,430人)
- 2018年4月3日(火) 晴れ
- 明治学院大学・消費者法研究会で配布された資料,並びに,吉備国際大学大学院(通信制)知的財産学研究科のオリエンテーション,および,辞令交付式の際に配布された資料を整理し,すべてスキャンしました。
- 加賀山茂『“Do for others”の民法学-事務管理・不当利得・不法行為』信山社(2018)の執筆の準備作(その1)立法理由書の整理作業を開始します(第1日目)。
- (HP訪問者の延べ人数:16,450人)
- 2018年4月4日(水) 晴れ後曇り
- 加賀山茂『“Do for others”の民法学-事務管理・不当利得・不法行為』信山社(2018)の執筆の準備作(その1)立法理由書の整理作業をしています(第2日目)。事務管理・不当利得・不法行為に関する『民法修正案(前三編)の理由書』の整理を終えました。作業中に,データベースの誤字等の誤り(第七百十一条:然ントモ←然レトモ)などを発見しました。
- (HP訪問者の延べ人数:16,470人)
- 2018年4月5日(木) 曇り
- 加賀山茂『“Do for others”の民法学-事務管理・不当利得・不法行為』信山社(2018)の執筆の準備作(その2)法典調査会議事速記録に即して,どのようなQ&Aがなされたのかを明らかにする作業をしています(第3日目)。
- 法典調査会『民法議事速記録』の該当箇所(原案七百六条~七百三十二条)を読みながら,理由書の内容に追加を行う作業を開始します(第1日目:事務管理)
- 事務管理に関する民法理由書を読み終えて,事務管理については,よくわかったと思っていたのですが,法典調査会の議事速記録を読み始めてみると,そう甘くはないということがよくわかります。その理由は以下の通りです。
- 起草委員の説明は,民法理由書を読んでおくと,ほぼその繰り返しなので,理解は容易です。つまり,民法理由書は,起草委員の優れた要約となっています。
- しかし,各委員からの起草委員に対する鋭い質問については,理由書の知識だけでは足りないことがわかります。なぜなら,自分が起草員の立場に立って,各委員が発する質問に答えようとすると,理由書を読んで得た知識だけでは,十分に答えることができないことがわかるからです。各委員の質問に答えるためには,理由書で得た知識をさらに深めておく必要があるのです。具体例で説明してみましょう。
- 事務管理の規定の必要性に対する土方寧の質問の要旨は,以下の通りです。
- 事務管理の規定は不要であると思う。道徳上は,善意の行為を奨励すべきであるが,法律上は,それは個人に対する不当な干渉,すなわち,「余計なお世話」であって,奨励すべきではない。法律上必要な場合があれば,そのときは,「黙示の委任」の考え方によって対処できる。そうしてみると,契約,不法行為,不当利得の規定があれば,事務管理に関する権利義務の規定は,不要ではないか。
- 理由書による起草委員の立法理由は,旧民法とは異なり,事務管理を不当利得の規定から独立させたのはなぜかという観点からしか述べられていないので,その論理を,土方寧の質問に対応できるようにするには,以下のように組み立て直す必要があります。
- 第1に,事務管理は,たとえ法律上奨励されない行為であるとしても,善意の行為であるから,その要件を満たしている場合には,不法行為ではないので,不法行為の規定があるからといって,十分ではない。
- 第2に,事務管理は,錯誤による委任などのように,契約が無効の場合,すなわち,委任契約が黙示でも存在しない場合についてもカバーしており,委任の規定があるからといって,十分ではない。
- 第3に,事務管理は,不当利得の場合とは異なり,返還義務が生じるばかりでなく,管理義務,通知義務,継続義務等も生じるのであるから,不当利得の規定があるからとって,十分ではない。
- 以上の質疑応答は,ほんの一例過ぎませんが,事務管理の理解を深めるには,理由書のようなアリストテレス的な体系的な説明(弁論術)のほかに,鋭い質問に対処するための論理の組み換え(ソクラテス・プラトン的な対話法・弁証法)が必要であると思われます。
- そこで,私の『“Do for others”"の民法学-事務管理・不当利得・不法行為』信山社(2018)においては,体系的な説明の次に,Q&Aの形式を取り入れて,反対論を含めた多面的な視点からの深い理解ができるように工夫することが必要であると感じました。
- (HP訪問者の延べ人数:16,490人)
- 2018年4月6日(金) 雨のち曇り(寒さが帰ってきました)
- 加賀山茂『“Do for others”の民法学-事務管理・不当利得・不法行為』信山社(2018)の執筆の準備作(その2)法典調査会議事速記録に即して,どのようなQ&Aがなされたのかを明らかにする作業をしています(第4日目)。
- 法典調査会『民法議事速記録』の該当箇所(原案七百六条~七百三十二条)を読みながら,理由書の内容に追加を行う作業を行っています(第2日目:事務管理)
- 事務管理に関する法典調査会・議事速記録を読んでいると,起草委員が苦心惨憺して作成した条文を法典調査会の委員の面々にが理解してもらうには,どのようなプロセスを踏む必要があるのかがわかってきたような気がします。その要点は,以下のように,事務管理の要件と効果について,何が原則で,何が例外かを明らかにし,それを,原則とその具体例の例示,例外とその具体例の例示という順序で示すこと,それらのことを,条文と条文との関係についても,同様に示すことであると思われます。
- 事務管理の意義,並びに,共通の要件および効果
- (意義・共通の要件)
- 合意等から生じる義務なしに,他人の事務を管理すること(民法697条1項前段)
- (共通の効果)
- (管理者の義務=本人の権利)
- 本人の意思を探究し,それを優先しながら,最も本人の利益に適合する方法によって事務を管理する義務(適合性原則)(民法697条1項,2項)
- 事務管理開始に伴う,本人へ通知義務(民法699条)
- 事務管理の継続義務(民法700条)
- 経過・顛末に関する本人への報告義務(民法701条による民法645条の準用)
- 受取物の本人への引渡義務(民法701条による民法646条1項の準用),引渡すべき金銭を消費した場合の賠償義務(民法701条による民法647条の準用)
- 取得した権利の本人への移転義務(事務管理の直接訴権)(民法701条による民法646条2項の準用)
- (本人の義務=管理者の権利)
- 必要費・有益費の管理者に対する償還義務(民法702条1項)
- 管理者が負担した債務の代弁済義務(事務管理の反対訴権)(民法702条2項による民法650条2項の準用)
- 管理者が本人の意思に反して事務管理をした場合の現に利益を受けている限度においての管理者への償還義務(民法702条3項)
- 事務管理の種類,並びに,それぞれの種類における要件および効果
- (種類)緊急(必要)事務管理(民法698条)
- (要件)管理の必要が切迫していること
- (義務)本人の意思に配慮しつつ,最も本人の利益に適合する方法によって事務を管理しなければならない。
- (種類)有益事務管理(民法697条)
- (要件)管理の必要が切迫していないが,管理が必要かつ有益であること
- (要件)本人の意思を知ることができるか,推知できるとき
- (義務)本人の意思に従って事務を管理しなければならない(民法697条2項)。
- (要件)本人の意思を知ることも推知することもできないとき
- (義務)最も本人の利益に適合する方法によって事務を管理しなければならない(民法697条1項)。
- 明日は,以上の体系的な理解を前提に,事務管理の条文ごとに,各委員から発せられた質問について,Q&Aの形式に基づいて,質問と回答のヒントをまとめる作業を行います。
- (HP訪問者の延べ人数:16,510人)
- 2018年4月7日(土) 曇りのち晴れのち一時雨(強風で寒い一日だが,夕方に虹を観察しました)
- 加賀山茂『“Do for others”の民法学-事務管理・不当利得・不法行為』信山社(2018)の執筆の準備作(その2)法典調査会議事速記録に即して,どのようなQ&Aがなされたのかを明らかにする作業をしています(第5日目)。
- 法典調査会『民法議事速記録』の該当箇所(原案七百六条~七百三十二条)を読みながら,理由書の内容に追加を行う作業を行っています(第3日目:事務管理)
- 事務管理の条文ごとに,各委員から発せられた質問について,Q&Aの形式に基づいて,約10問の質問と回答のヒントをまとめる作業を行いました。
- 事務管理の規定の必要性…黙示の委任,不当利得の規定だけで十分ではないのか。
- 本人の意思と利益との矛盾…本人の利益と本人の意思とが矛盾した場合,どちらを優先して管理すべきなのか。
- 民法697条1項と2項との関係…1項と2項ではなく,本文と但し書きの形式にすべきではないのか。
- 民法697条と民法698条との関係…有益事務管理と必要事務管理という関係なのか,有益事務管理と緊急事務管理という関係なのか。
- 緊急事務管理における注意義務…緊急事務管理において管理者の注意義務が軽減されるのはなぜか。(2018年4月4日の大相撲巡業場所の土俵上での女性による救命措置の場合は?)
- 法定代理と任意代理の区別…民法700条において,法定代理人だけ規定されて,任意代理人が規定されていないのはなぜか。
- 管理継続義務の根拠…委任の場合にはいつでも解約できるのに,事務管理の場合に継続が義務づけられるのはなぜか。 (2018年4月4日の大相撲巡業場所の土俵上での女性による救命措置の場合は?)
- 事務管理における委任の規定の準用…民法701条による民法646条2項の準用は何と呼ばれているか。また,民法702条2項による民法650条2項の準用は何と呼ばれているか。
- 償還請求できる費用の種類…管理者が償還できる費用は「有益費」だけか,民法702条の「有益な費用」に,「必要費」は含まれないのか。
- 本人の意思に反する事務管理の性質…なお事務管理として扱うことができるのか。この場合には,事務管理ではなく不当利得の問題となるのか。
- (HP訪問者の延べ人数:16,530人)
- 2018年4月8日(日) 晴れ (寒さが続く)
- 加賀山茂『“Do for others”の民法学-事務管理・不当利得・不法行為』信山社(2018)の執筆の準備作(その2)法典調査会議事速記録に即して,どのようなQ&Aがなされたのかを明らかにする作業をしています(第6日目)。
- 法典調査会『民法議事速記録』の該当箇所(原案七百六条~七百三十二条)を読みながら,理由書の内容に追加を行う作業を行っています(第4日目:不当利得(現行法703条))
- 事務管理の整理を終えて,法典調査会において繰り広げられる不当利得に関する白熱の議論を読み解いています。
- 起草委員から法典調査会に提出された一般不当利得(現行法703条)の原案は,以下の通りでした(原文カタカナ,現行法との比較を容易にするためひらかなに変換)。
- 第七百十三条 法律上の原因なくして他人の財産より利益を受けたる者は其利益の現存する限度に於て之を返還する義務を負ふ
- この原案は,議論の末の採決において,委員の可否が同数となり,議長(箕作麟祥)の決するところにより,以下のように修正されます。
- 第七百十三条 法律上の原因なくして他人の財産より利益を受けたる者は其受けたる利益の限度に於て之を返還する義務を負ふ
- ところが,この修正決議は,起草委員たちの納得を得られず,総裁への上申の結果,再議に付されることになります。そして,起草委員のこれまでとは打って変わった下手に出る丁寧な説明の後,さらに白熱した大議論が展開され,その結果として,以下のような再修正案が成立します。
- 第七百十三条 法律上の原因なくして他人の財産より利益を受けたる者は其利益の
現存する限度に於て之を返還する義務を負ふ
- この案が,現行法に最も近いのですが,現行法(703条)では,その後,さらに修正されて,以下のようになります。
- 現行民法703条 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け,そのために他人に損失を及ぼした者は,その利益の存する限度において,これを返還する義務を負う。
- しかし,現行民法703条の「利益の存する限り」という表現は,現行民法121条において,制限無能力者の場合に,「現に利益を受けている限度において,返還の義務を負う」とされている表現とよく似ており,概念の区別に混乱を生じさせるおそれがあります。
- この点について,法典調査会の議論の中で,土方寧が上記の再修正案(現行民法703条の表現も同じ)について,「利益を受けたる者は其財産より生じたる利益を享受する限度に於て」とすべきではないかと述べているのが印象に残りました。
- なぜなら,民法703条の表現が,もしも,「利益を享受した限度において」とされていたならば,民法703条と民法121条(改正民法では,121条の2)の区別は,より明確になったのではないかと,私は考えています。
- 明日から開始する大分大学経済学での「消費者と法」(前期・月・3限)の講義に備えて,HPにアップロードしていたレジュメ(PowerPoint, PDF)をアニメーションを中心に改訂しました。特色のある「定期試験予想問題」はそのままです。
- (HP訪問者の延べ人数:16,550人)
- 2018年4月9日(月) 晴れ (気温が平年並みに戻りました)
- 今日から,春学期の期間中,毎週月曜日の3限に,大分大学経済学部で「消費者と法」という講義科目を担当します。これまでの教育・研究の経験を活かして,「学生一人ひとりの持つ能力を最大限に引き出し」,「消費者市民社会に貢献できる人材を育成する」という目標に向かって第一歩を踏み出したいと思います。
- 目標達成の工夫の一つとして,明治学院大学で活用していたリアクション・ペーパーをまねて,「質問用紙(コミュニケーション・ペーパー)」を作成し,毎回,学生に配布し,次の時間の最初の30分を使って,学生の質問に回答し,学生との意思疎通を図ることにしました。
- 今日の第1回の講義には,3年生7名,4年生9名の合計16人の学生が参加してくれて,ゼミのような雰囲気の中で,気持ちよく講義ができました。
- (HP訪問者の延べ人数:16,565人)
- 2018年4月10日(火) 晴れ
- 大分大学経済学部での「消費者と法」の第1回目の講義で,16名の学生たちに書いてもらったコミュニケーション・ペーパーを読んで,来週の講義の最初に行う解説の構想を練っています。人数が16名(第2回以降,増加しても20名以内)なので,すべてのコミュニケーション・ペーパーにコメントを付して返却するのもありかな,と考えています。
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新井紀子
『AI vs.教科書が読めない
子どもたち』
東洋経済新聞社
(2018/2/15) |
日出町の図書館の「新刊コーナー」で見つけて,借り出していた新井紀子『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』東洋経済新聞社(2018/2/15)を読みました。
- 「東ロボくん」プロジェクトを牽引した数学者によるAIブームに対する批判の書です。最初に,人間と同等の知能を有するという「真の意味でのAI」は,現在も存在しないし,将来も,「シンギュラリティは来ない」と宣言しています(本書12-18頁)。
- 他方で,返す刀で,AI同じ欠点を増幅しているよう見える子供たちの読解力の欠如を全国規模の調査によって明らかにしています(本書174-218頁)。
- そして,子どもたちに,AIにはできない「意味を理解する力(読解力)」をつけるようにしないと,やがて,次世代の若者は,AIに職を場われることになるという最悪のシナリオを示し,教育改革の方法は,どうしたら子供たちに読解力をつけることができるかという観点から見直すほかないことを主張しています(本書254-281頁)。
- 興味深いのは,生活習慣,学習習慣,読書習慣のいずれも,読解力の向上と相関関係がないという指摘です。相関関係があるのは,家庭の貧困が子供の読解力と負の相関があることだけだというのです(本書222-224頁)。
- ただし,筆者が,自信なさそうにではあるけれど,以下のように述べている箇所に最大のヒントがあるように思われます(本書246頁)。
- 「もしかすると,多読ではなくて,精読,深読に,なんらかのヒントがあるのかも,そんな予感めいたものを感じています。」
- まさに,当たりだと思います。
- 少なくとも法律関係では,優秀な法学者へと育った人というのは,例外なく,学生時代(大学院時代を含む)に,諸外国の名著と格闘し,数行の文章を理解するのに,丸1日かけて,他の文献を参照したり,議論をしたりするのが普通という,傍目から見ると無駄に思えるような地道な経験を繰り返してきた人々だからです。
- 更に付け加えるならば,偏見を取り除くために,少なくとも自分の専門分野については,先行研究をすべて読みこなしてから,論文を公表したり,発言をすることを習慣づけさせるとが大切だと思います。
- (HP訪問者の延べ人数:16,610人)
- 2018年4月11日(水) 晴れ 時々曇り
- 大分大学経済学部での「消費者と法」の第1回目の講義で,16名の学生たちに書いてもらったコミュニケーション・ペーパーを読んで,すべてのコミュニケーション・ペーパーにコメントを付しました。
来週,講義の最初の30分を使って,これらを学生たちに返却し,それぞれの質問に対する解説を行うことにします。
- (HP訪問者の延べ人数:16,630人)
- 2018年4月12日(木) 晴れ
- 明日からの「法と経営研究」の編集会議,吉備国際大学大学院(通信制)知的財産学研究科のスクーリングに備えて,東京に出張します。
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船津徹
『世界標準の子育て』
ダイヤモンド社
(2017/7/6) |
日出図書館で借り出しを予約した船津徹『世界標準の子育て』ダイヤモンド社(2017/7/6)を早く読みたくなって,Kindleで購入して,新幹線の中で熟読しました。
- 子育てのコツが,①自信をつけさせる,②考える力を育てる,③コミュニケーション力を育てるという3点に絞って論じられており,しかも,最初にストレートな結論を提示し,その後に理由を解説するという方法で一貫しており,とても読みやすい本に仕上がっていると思いました。
- 私の懸案である,『法教育の絵本』を作成する上で,参考になる箇所がたくさんあり,特に姉妹兄弟げんか,おもちゃの独り占めに対する解決案(巻末Q&A・09)などは,とても参考になりました。
- また,姉妹とか「『兄弟平等』は上の子にとって不平等」というサブタイトルで始まる以下の箇所(本書第3章その5(73-75頁))は,平等主義者の私にとって,全面的に納得できるわけではないとはいえ,とても刺激的でした。
- 二人目以降の子どもができた時,みなさんはどうするでしょうか。「兄妹姉妹は平等に育てるもの!」と思っていないでしょうか?
- 実は,平等の精神は子どもの人格,そして家庭環境に大きな悪影響を及ぼします。兄弟姉妹は平等に育てる必要はありません。上の子を中心に育ててあげてください。
- 特に,「お兄ちゃん(お姉ちゃん)なんだからがまんしなさい」は,絶対に使ってはいけないNGワードです。というのも,上の子は生まれた時から親の愛情を100%独り占めしてきました。つまり,もともとは一人っ子だったわけです。
それが下の子どもができた途端,「あなたはお兄ちゃん(お姉ちゃん) になったので,これからは愛情を 50%ずつに分けます」と言われても納得できるものではありません(親はそんな言い方はしないでしょうが,子どもはそう感じるのです)。
- 弟や妹ができた途端,受けていた愛情が 50%(多くの場合 50%以下) に減ってしまうと,上の子は不安になります。
- たとえば病室で母親に抱かれておっぱいを飲んでいる赤ちゃんを目にした時,上の子は「大好きなママが取られた!」と強いジェラシーを感じるのです。同時に「ママから愛されている!」という自信がグラグラと揺らぎ始めます。そして,母親の愛情を取り戻すために,指しゃぶりをしたり,おもらしをしたり,まとわりついてみたり,駄々をこねてみたり,保育園に行きたくないと泣きじゃくったり,おかしな行動をするのです。
- この寂しいという気持ちを理解せず「がまんしなさい!」「めんどうかけないで!」と突き放してしまうと,子どもの心は冷えきってしまいます。 上の子におかしな行動が目立ってきたら「○○ちゃん,寂しい思いをさせてごめんね」と謝って,ギュッと抱きしめてあげてください。そして下の子のめんどうはお父さんに任せて上の子と二人きりで過ごす時間をつくって下さい。
- 下の子は生まれた時から上の子がおり,親の愛情は100%独り占めできないもの」,「愛情は兄弟姉妹分け合うもの」という前提で生まれてくるので,下の子は少々愛情不足になっても問題がない
のです。 兄弟は上の子を中心に。ぜひ覚えておいてください。
- 確かに,三人兄弟姉妹の一番上であった私にも思い当たる点はありますが,これによって,平等主義の原則が破綻するわけではないと思います。上の子の誕生日にプレゼントをするときは,下の子にもちょっとしたプレゼントを欠かさないことが大切だと思うからです。
- そうはいいつつも,偶然に,新幹線の隣の席を占めていた家族連れ(母親,兄,妹,妹の4人連れ)の行動をそれとなく観察していたところ,末っ子が母親の胸に抱きついて母親を独占しつつ,「私が一番愛されている」という誇らしげな顔を周囲に向けているのを見てしまうと,確かに,下の子は「したたか」だなとは思いました。
- (HP訪問者の延べ人数:16,650人)
- 2018年4月13日(金) 晴れのち曇り
- 午前中に,歯科医で月1回の歯のクリーニングをしてもらいました。 午後から,積立年金『しあわせ物語』の契約内容の確認手続を済ませました。
- その後,宿泊先の三田会館のチェックイン手続を済ませ,私学会館で『法と経営研究』の編集会議を開催しました。
- 『法と経営研究』第2号は,今年12月に発刊予定ですが,7月末の原稿締切に対して,すでに,論文3本,コラム2本の概要がエントリーシートで提出されており,順当な滑り出しをみせています。そこで,提出済みのエントリーシートに従って今後の編集方針を確認するとともに,引き続き,投稿者を開拓するためのネットワークの基盤を構築することにしました。
- (HP訪問者の延べ人数:16,670人)
- 2018年4月14日(土) 曇り後一時雨
- 吉備国際大学大学院(通信制)知的財産学研究科のスクーリング(東京会場)に参加します。午前中は,著作権法入門の講義を拝聴し,午後からは,私が,レジュメ(PowerPoint, PDF)に従って,民法入門の講義を行いました。
- 受講者(7名)は,既に弁理士試験に合格している一人を除いて,全員が弁理士をめざす法学部以外の学部の出身者であり,残りの6名の内,文系は1名のみで,あとは,理系(工学部,理学部)出身者でした。
- そのため,三段論法とは異なり,原則に対して一つだけの例外を許すトゥールミン的な論理的・体系的思考とか,契約を「流れ図」で説明したり,不法行為を「電気回路図」を使って立証責任を含めて説明したりするという,民法学者としては珍しい私の法学方法論は,大いにウケを取ることができました。
- また,最後の1時間を使って,一人ひとりの大学院生と質疑応答ができました。次回の総合演習でも,成長著しい大学院生との質疑応答を楽しむことができそうです。
- 出版社に寄って,『法と経営研究』の編集会議の報告をしました。そして,執筆中の単行本の出版について責任者と意見交換を行い,執筆を加速することにしました。
- (HP訪問者の延べ人数:16,690人)
- 2018年4月15日(日) 雨後晴れ
- 吉備国際大学大学院(通信制)知的財産学研究科のスクーリング(東京会場)を終えて,大分に帰ります。
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野口悠紀雄『仮想通貨革命』
ダイヤモンド社(2014/6/5) |
新幹線の中で,日出町の図書館で借りていた野口悠紀雄『仮想通貨革命』ダイヤモンド社(2014/6/5)を読み始めました(第1日目)。
- 本書を読み始めて,革命は,フランス語では,Révolution,英語では,Revolutionですが,これらの言葉には,第1に,個人の力では抵抗できない動きという「革命」という意味のほかに,第2に,回転・公転という意味があることを思い出しました(なるほど,本書に指摘があるように,コペルニクスの著書の表題は,『天体の回転(Revolution)について』です)(本書1頁)。
- 現代社会に革命的な変化をもたらした,いわゆる「三種の神器」は,パソコン(広義ではスマホも含む),インターネット,ビットコインであるというのが,本書の主張だと思います。確かに,PCとインターネットの組合せは,産業革命によって大企業しかなしえなくなっていた事業を個人の力でもなし得るように歴史を回転させつつあります。ビットコインは,中央銀行と銀行の組合せでしかできなかった資金の決済と送金を個人の力だけで可能にするように歴史を回転させているのだから,「通貨革命(Currency Revolution)」だというわけです。
- このような流れを人々が押しとどめることが出来ないのは,それらが,従来のものよりも優れているからであり,「優れているものは,劣るものをいつか駆逐する」からだというのが本書の筆者の主張です。「いやいや『悪貨が良貨を駆逐する(グレシャムの法則)』のではないか」,という反論に対しても,筆者は,グレシャムの法則が成立するのは,すでにハイエクが指摘しているように,悪貨と良貨の交換比率が法律によって固定されている場合だけなのであり,両者の交換比率が変動するのであれば,「良貨が悪貨を駆逐する」と再反論を行っています(本書2頁)。
- ところで,私の代表作の一つに,『担保法革命』信山社(2009)があります。これも,上記の視点から眺めると,ボワソナードが日本にもたらしてくれた『旧民法 債権担保編』をヒントにして,新しい判例・学説を吟味しつつ最新の知識を背景にして旧民法への回帰を実現したものともいえます。
- そして,本書が正しい解釈だとして引用しているハイエク流のグレシャムの法則に従えば,いずれは,論理破綻した現代の「担保物権」理論,および,人的担保(保証・連帯債務)に関する通説・判例という「悪貨」は,私の主張する担保法革命という「良貨」によって駆逐されるという,回転(Revolution)の日が来るのかもしれません。
- (HP訪問者の延べ人数:16,710人)
- 2018年4月16日(月) 晴れ
- 大分大学経済学部で「消費者と法」の第2回目の講義を行いました。
- 第1回目の受講希望者16名のうち,就活等を理由に10名が受講を断念し,新たに5名が受講を希望して講義に参加したため,受講者の人数は11名となりました。
- このように,新たな受講希望者が5名いたので,前回の復習を丁寧に行い,消費者の権利について講義しました。
- 講義の最後に学生たちが書いてくれた回収したコミュニケーション・ペーパーの内容を,Wordファイルに追加しました。
- (HP訪問者の延べ人数:16,730人)
- 2018年4月17日(火) 曇り後雨
- 大分大学経済学部の「消費者と法」の第2回目の講義で,11名の学生たちに書いてもらったコミュニケーション・ペーパーを読んで,添削を行いました。
- 来週の講義(第3回)では,その冒頭で,添削したコミュニケーション・ペーパーを返却し,代表的な質問について,詳しい解説を行う予定です。
- 経済学部の学生は,木構造に基づく体系的な思考表現に慣れていないようで,以下のような木構造に興味を持ったようです。
- 役務(サービス)提供契約の木構造 → 個々の概念の区別の根拠と,相互関係,全体における位置づけを把握できる。
- ┏ 時間決めで一般的な労務を提供 ………… 雇用
┏ 最大努力義務 ━╋ 事務処理のために専門的な労務を提供 … 委任
役務提供契約 ━┫ ┗ 物や金銭を預かるために労務を提供 …… 寄託
┗ 結果達成義務 ━┳ 仕事の完成のために労務を提供 ………… 請負
( ┗ 財産権を移転するために労務を提供 …… 売買)
- ケネディの4つの消費者の権利の木構造 → その後の8つの権利への発展も自由自在である。
- ┏━ 安全を求める権利(危険・危害に晒されない権利)
┏ 目的 ━┫
┃ ┗━ 選ぶ権利(選択を強制されない権利)
消費者の権利 ━┫
┃ ┏━ 知る権利
┗ 手段 ━┫
┗━ 意見を聞かれる権利(救済を求める権利)
- どこの大学でも,学生たちは一般的に,「楽して単位を修得しよう」という腐敗した学習方法を伝統的に引き継いでいるので,次のような話には,興味を持ったようです。
- 人と同じことをしていても,就活で重要となる人材としての「差別化」を実現することはできない。
- 大学生は予習・復習をするという習慣を持っていない。したがって,予習・復習をするという習慣を形成することだけでも,差別化を実現できる。
- 特に,予習は,「教えてもらう前に,新しい問題に自力でチャレンジしてみる」という作業なので,最もすぐれた学習方法であるばかりでなく,社会に出てからも,新しい問題に直面したときに役に立つ,実践的な学習方法である。
- つまり,当たり前のことを当たり前にやる,すなわち,予習・復習を習慣的に行うならば,「継続は力なり」で,いつの間にか,普通の大学生とは差別化された人格を形成できる。
- (HP訪問者の延べ人数:16,770人)
- 2018年4月18日(水) 晴れ
- 野口悠紀雄『仮想通貨革命』ダイヤモンド社(2014/6/5)を読み終わりました。
- 本書を読んで,私の関心事を中心にして,その概要を述べると,以下の通りです。なお,〔 〕内は,私の個人的な感想です。
- PC(スマホを含む)とインターネットの組合せ,すなわち,ICT(Information & Communication Technology)の発展は,産業革命を通じて,大企業,中央政府を中心に構築されてきた社会を一変させ,小企業や個人による分散経済・分散管理の方が,むしろ効率的な生産を実現するという経済の発展を逆戻りさせるような現象を生じさせつつある。
- その動きを決定的にしたのが,ビットコインが採用している「ブロックチェーン」と呼ばれる仕組みである。「ブロックチェーン」は,公開の取引簿にすべての取引を記録するという仕組みであり,これがP2P(peer
to peer)ネットワークによるプルーフ・オブ・ワーク(Proof of work)によって安全に維持されることによって,ビットコインは,中央銀行を必要とせず,資金決済も資金移動も行えるような仕組みを実現している(本書166頁)。
- ビットコインの登場以後,個人は,(1) PC(又はスマホ),(2) インターネット接続,(3) ビットコインを手に入れることにによって,大企業に引けを取らない事業展開を行うことができるようになった(本書210頁以下)。
〔この3つの道具(C.I.B: Computer, Internet and Bitcoin)を,私としては,現代における個人の自立のための「三種の神器」と呼びたいと思っております。〕
- ビットコインの中核をなす「ブロックチェーン」という技術は,公開した記録の書き換えを不可能にするというものであるため,汎用性が高く〔今まさに問題となっている公文書の書き換えも阻止できます〕,それを応用することによって,通貨革命にとどまらず,少人数の古代社会でしか実現できないとされてきた直接民主主義,仲介者を必要としない安全な直接取引など,社会全体の仕組みを大きく逆転する可能性を有している。その意味で,ビットコインの発明は,〔ICTを補完して,個人の自立と尊厳を回復するものであり〕,現代社会における画期的なRevolution(革命,転回)というにふさわしい。
- (HP訪問者の延べ人数:16,790人)
- 2018年4月19日(木)
- 加賀山茂『“Do for others”の民法学-事務管理・不当利得・不法行為』信山社(2018)の執筆の準備作業(その2)法典調査会の議事速記録に即して,どのようなQ&Aがなされたのかを明らかにする作業をしています(第7日目)。
- 法典調査会『民法議事速記録』の該当箇所(原案七百六条~七百三十二条)を読みながら,理由書の内容に追加を行う作業を行っています(第5日目:不当利得(現行法704条))
- 一般不当利得(現行民法703条)の整理を終えて,法典調査会において繰り広げられる悪意の不当利得(現行民法704条)に関する白熱の議論を読み解いています。
委員の質問の概要は,以下の通りです。←以下の文章は,起草委員の考え方を推知した,私の回答案です。
- 悪意の受益者という場合の「悪意」と,不法行為における「故意」とはどう違うのか。
- ←民法704条の「悪意」とは,正当な利得でないことを知っていることであって,不法行為上の損害を与える「故意」ではない。
- 効果が不当利得と同じ損害賠償であれば,この条文は不要であり,不法行為の条文で十分ではないか。
- ←民法704条の場合,利息を付して返還しなければならない点が不法行為とは異なる。
- 目的物が値上がりしたときも,その利益を返還しなければならないのか
- ←「利息を付した受けた利益」とは,民法190条の悪意の占有者の「収取を怠った果実の代価の償還」と同じく,「目的物から生じる果実を含む,生じうる利益」である。したがって,悪意の受益者は,不当な利益は,自らの労力で利益を拡大した場合でも,それを含めて,すべて返還しなければならない。
- 実質的に利益を受けていない場合(即時に天災地変で目的物が滅失した場合など)でも,返還をしなければならないということになると,返還できない利益を返還するということになり,対象の存在しない返還請求は,返還とはいえないのではないか。
- ←実際に利益を得ていなくても,「生じうる利益」ということはできる。もちろん,受けた利益に相当する価値の損害賠償という説明も可能である。
- 事務管理の場合と同様,不当利得の場合にも,民法理由書による記述は,ほとんどが起草委員による立法理由の説明の要約に過ぎず,条文に内在する問題点を知るためには,法典調査会・議事速記録に記録された各委員の疑問点をすべて抽出し,それぞれの疑問に対して,現在の状況を踏まえた上で答えてみる必要があると感じました。
- (HP訪問者の延べ人数:16,810人)
- 2018年4月20日(金) 晴れ
- 加賀山茂『“Do for others”の民法学-事務管理・不当利得・不法行為』信山社(2018)の執筆の準備作業(その2)法典調査会の議事速記録に即して,どのようなQ&Aがなされたのかを明らかにする作業をしています(第8日目)。
- 法典調査会『民法議事速記録』の該当箇所(原案七百六条~七百三十二条)を読みながら,理由書の内容に追加を行う作業を行っています(第6日目:不当利得(現行法705,706条))
- いわゆる一般不当利得(現行民法703条,704条)の整理を終えて,法典調査会において繰り広げられる非債弁済(現行民法705条),期限前弁済(現行民法706条)に関する白熱の議論を読み解いています。現行民法705条(非債弁済)に関しては,起草員の作成した原案通りに議決されるのですが,現行民法706条(期限前の弁済)に関する原案は,以下のように,普段あまり発言しない委員(尾崎三良委員)の修正案が採択されるという大逆転劇が勃発しています。(読みやすくするため,カタカナをひらかなヘ変換し,句読点を追加しています。)
- 法典調査会原案716条(甲46)
- 債務者が錯誤に因りて弁済期に在らざる債務を弁済したるときは,債権者は,
其選択を以て,其受取りたるものを返還し,又は,弁済期に至るまでの法定利息を支払ふことを要す。
- 法典調査会決議案716条→現行民法706条
- 債務者が弁済期に在らざる債務の弁済として給付を為したるときは,其給付したるものの返還を請求することを得ず。但し,債務者が錯誤に因りて其給付を為したるときは,債権者は之に因りて得たる利益を返還することを要す。
- 不当利得に関する原始的な規定は,広い意味での非債弁済です。広義の非債弁済には,狭義の非債弁済(民法705条),債務は存在するがまだ期限が来ていないのに弁済した場合(民法706条),債務は存在するが債務者でない者が錯誤で弁済した場合(民法707条),公序良俗に違反する債務が弁済された場合(民法708条)です。
- 現行民法における不当利得の規定は,一般規定とされていて返還を認める民法703条および704条と,特別規定とされていて返還を認めない場合を明らかにする705条~708条の2つの類型から成り立っています。不当利得のいわゆる一般規定は,損失者に対する受益者の返還義務を定める規定であるのに対して,特別規定は,反対に,損失者に対する受益者の返還義務の否定,すなわち,受益者の抗弁を認める規定です。
- ところが,現行民法705条以下の規定は,原則である返還義務がある場合を規定することなく,返還義務の否定の要件だけを規定しているため,非常にわかりにくい規定となっています。
- 法典調査会に提出された現行民法706条(期限前の弁済)原案は,不当利得の原則規定はおろか,例外規定も規定せず,いきなり,例外規定の但し書きに相当する部分だけを規定していたのですから,このような原案が,法典調査会の議論を通じて修正されたのは当然だと思われます。
- しかし,修正された706条ばかりでなく,不当利得の特別規定(民法705条~708条)は,原則との関係がわかりにくい規定となっており,不当利得の原則である「返還を請求できる」という文言をすべての条文において使用するという方針に基づいて,以下のように改正されるべきであると,私は考えています。
- 不当利得の特別規定(民法705条~708条)の加賀山改正私案
- 民法705条(債務が存在しないのにした給付(非債弁済))〔加賀山改正私案〕
- 債務が存在しないのに債務の弁済として給付をした者は,その給付したものの返還を請求できる。ただし,その者が,給付の時点で債務の存在しないことを知っていたときは,この限りでない(その給付したものの返還を請求することができない)。
- 民法706条(債務は存在するが,期限前にした弁済(期限前弁済))〔加賀山改正私案〕
- 債務者は,弁済期にない債務の弁済として給付をしたときは,債務が存在する以上,その給付したものの返還を請求することができない。ただし,債務者が錯誤によってその給付をしたときは,債権者が,すでに利息の天引きをしていたなど,これによって利益を得ることになる場合には,債権者は,得たその利益を返還しなければならない。
- 民法707条(存在する他人の債務の錯誤弁済(他人の債務の弁済))〔加賀山改正私案〕
- ①債務者でない者が他人の債務を錯誤によって弁済したときは,その弁済した者は,その給付したものの返還を請求できる。ただし,弁済を受けた債権者が,善意で証書を滅失させ若しくは損傷し,担保を放棄し,又は時効によってその債権を失ったときは,この限りでない(その弁済をした者は,返還を請求することができない)。
- ②前項の規定は,弁済をした者から債務者に対する求償権の行使を妨げない。
- 民法708条(不法な原因のために債務が存在しない場合の給付(不法原因給付))〔加賀山改正私案〕
- 不法な原因のために債務が存在しないにもかかわらず給付をした者は,その不法な原因が受益者について存在するときは,その給付したものの返還を請求できる。ただし,不法な原因が損失者についてのみ存したときは,この限りでない。
- (現行民法705条~708条(特別不当利得)の改正私案理由)
- 現行民法の不当利得の規定,特に,民法705条~708条が民法を学ぶ者にとって難しいと感じる理由は,それらの規定の法律効果が,すべて「返還を請求することができない」と書かれている,すなわち,不当利得に基づく返還請求ができない場合の要件だけが書かれており,肝心の不当利得に基づく返還請求ができる場合の要件が隠されているからです。
- したがって,上記の私の民法改正私案のように,現行民法に対して,不当利得に基づく返還請求権が認められる場合の要件を補い,返還請求が認められる場合と認められない場合とを明確に規定すれば,不当利得の条文は,国民一般に取って非常にわかりやすくなると,私は考えています。
- また,条文見出しについても,債務が存在しない場合なのか(民法705条,708条),それとも,債務は存在するが期限が到来していないに過ぎないのか(民法706条),債務は存在するがそれが他人の債務だったに過ぎないのか(民法707条),それらを明確に区別せず,非常に曖昧なものとなっているため,単なる給付なのか(民法705条,708条),錯誤による弁済なのか(民法706条,707条)を明確にすべきです。
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- 2018年4月21日(土) 晴れ 大分県速見郡日出町に転居してから,ちょうど1年が過ぎました。
- 加賀山茂『“Do for others”の民法学-事務管理・不当利得・不法行為』信山社(2018)の執筆の準備作業(その2)法典調査会の議事速記録に即して,どのようなQ&Aがなされたのかを明らかにする作業をしています(第9日目)。
- 法典調査会『民法議事速記録』の該当箇所(原案七百六条~七百三十二条)を読みながら,理由書の内容に追加を行う作業を行っています(第7日目:不当利得(現行法706条))
- (HP訪問者の延べ人数:16,845人)
- 2018年4月22日(日) 晴れのち曇り
- 末川民事法研究会に出席し,議論を盛り上げるためにするため,京都に出張しました。
- 第1報告:「総合救済システム論再考——いわゆる“第四次産業革命”を契機として」
- この報告では,産業の高度化に伴う社会の変化に対応するためには,「被害の未然防止か,被害の救済か,どちらも必要だとしたら,保険制度の充実か,社会保障の拡張か?」という問題が提起されると思います。
- この問題の背景には,「AI(人工知能)の発展に伴って,人間の生き方はどう変化するのか,個人の自立と他者との共存はどのようにして実現されるのか?」という新しい問題が存在しており,この問題に対峙するためには,AIの将来を見通した知見を持つことが必要だと思われます。
- 私としては,保険制度,社会保障制度の充実は必要だが,民法における過失責任主義は,被害の未然防止の点でも,また,保険や保証で足りない部分をを補完する上でも堅持すべきであるとの観点から,議論を盛り上げようと思いましたが,そこに至らない部分での議論が沸き起こり,アシストを必要としないほどの盛り上がりを見せました。
- 第2報告:「民法185条前段『所有の意思の表示』の判断基準—他主占有者による建替え事例」(最一小決平成28年9月1日決定【LEX/DB:ID25545714】)
- この報告では,民法185条の立法趣旨と比較法の知識を前提にした,判例研究のあり方が問われることになると思います。
- 第185条(占有の性質の変更)
権原の性質上占有者に所有の意思がないものとされる場合には,その占有者が,自己に占有をさせた者に対して所有の意思があることを表示し,又は新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始めるのでなければ,占有の性質は,変わらない。
- 「占有者が,自己に占有をさせた者に対して所有の意思があることを表示」するというのは,具体的には,どのような行為をすることなのでしょうか?
- 現行民法185条(占有の性質の変更)は,旧民法財産編185条を修正したものであり,旧民法財産編185条は,ボワソナードのプロジェ(第2編第197条)の説明によると,ローマ法に起源を有するフランス民法典旧2238条(現行法2268条)(Néanmoins, les personnes énoncées dans les articles 2266 et 2267 peuvent prescrire, si le titre de leur possession se trouve interverti,
soit par une cause venant d'un tiers, soit par la contradiction qu'elles
ont opposée au droit du propriétaire.:他主占有者であっても,第三者から生じた原因によって又はその者が所有者の権利に対抗できる抗弁によって,その占有の権原が転換されたときは,時効によって取得することができる。)を採用したものであるとされています。そこで,外国法典叢書の仏蘭西民法第2238条の解説(327頁)を参照すると,以下のような具体例が挙げられていることがわかります。
- 占有名義の転換の第2(現行民法185条前段に該当)は,所有権者に対し占有者が抗弁をもって対抗した場合である。例えば,賃借人が賃貸人より返還を請求せられて,その所有権に対し,自己が真の所有者であると主張して占有を継続する場合である。この時に,今までの賃借人名義は転換して所有者名義となる。
- しかし,転換を生じるためには,単に賃貸人の所有権の否認の程度であっては不十分である。例えば,賃借人が他人の前で自分が賃借物の所有権者であると主張したり,賃借物を破壊したり変更を加えたり,あたかも外部に対しその物の所有権者であるかのごとく振舞っても,これでもって名義の転換が生じるわけではない。転換を生じるためには,所有権者に対抗する抗弁,すなわち,両者の間に所有権について争いのあることを主張することが必要である。
- 争いは訴訟の形式でなされることもある。例えば,物の返還に対し,自己が所有者であると主張し,賃料支払の請求に対し同様の主張をもってその支払いを拒絶するがごときである。もっとも訴訟があることは必要ではなく,例えば小作人が土地が自己の所有に属することを主張し事後借地料を支払わざる旨の通告を裁判外の行為,例えば,送達証書をもってなす場合にも転換はある。
- 私は,以上の知見を前提として,議論を盛り上げようと努力しました。しかも,今回は,原告側の意見書を書かれた会員が2名参加してくださったので,事実関係の細部までお尋ねすることができて,実りある議論ができました。
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- 2018年4月23日(月) 曇り
- 京都から大分大学へ直行して,「消費者と法」の講義を行いました。
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製造物責任における
特別法(PL法)と一般法(民法)の
相互補完関係
(電気回路図による表現) |
今回は第3回「安全性の確保(製品安全と消費者)」なので,前回の復習とコミュケーション・ペーパーの紹介とコメントの後,民法の不法行為法と製造物責任法との関係を電気回路図を使って説明しました。
- 簡単に言えば,一般不法行為の過失の証明は困難であり,問題となっている製造業者等の過失の証明については,立証責任の転換が必要です。そこで,民法の特別法である製造物責任法は,製造業者等の過失の証明に換えて,購入者が製品の欠陥さえ証明できれば(製造物責任法2条,3条),過失について法律上の強い推定が働いて,あたかも,電気回路にバイパスが生じたのと同様に,被害者の救済が実現する。製造業者は,製造物責任法4条の免責事由の証明(無過失の証明)をしない限り,免責されないということです。
- 学生たちは,私が教室の白板にスラスラと描く電気回路図を興味深そうに眺めていましたが,一般法である民法の不法行為法の電気回路図に,民法の特別法である製造物責任法の電気回路図がバイバスとして表現され,その結果,一般法と特別法とが同一平面上でお互いに補完し合っている図が完成すると,感嘆の声を上げました。
- 学生たちは,一般法(民法709条~724条)と特別法(製造物責任法(わずか6条))との関係(特別法は一般法に優先するが,一般法によって補完されるという関係)を電気回路図のバイバス表現によって,一瞬で理解したようなのです。
- 授業の後に集めたコミュケーション・ペーパーには,複数の学生によって,その時に受けた感銘が熱く語られていました。
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- 2018年4月24日(火) 雨
- 大分大学経済学部の「消費者と法」の講義で提出されたコミュニケーション・ペーパーに,コメントを書き込みました。今回のコミュニケーションペーパーは,すべての学生が,紙面を埋め尽くすほどの量を書いてくれているので,私のコメントは少ない余白を使って圧縮して書かなければならなくなりました。うれしい悲鳴です。
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- 2018年4月25日(水) 曇り時々晴れ
- 2018年5月8日に日出ロータリークラブに招かれて行う「卓話(循環と回転)」について,以下のような骨子のスピーチ原稿を作成しました。
- 縁と自覚
- 2018年2月20日,私が日出ロータリークラブの会合にゲストとして招かれたときに,会員から2冊の本(日出ロータリークラブ編『大夢翁 土屋元作』,岩藤みのる『暘谷城の残影-豊後日出藩家老の殉教』)をいただいた。それを熟読し,第1に,ロータリークラブの歴史とロータリアンのミッション(Rotate:自転・循環)を知るとともに,第2に,日出藩の危機を救った家老加賀山半左衛門と同姓の私は,半左衛門と同じように,日出町の発展に尽力する必要があることを自覚した。
- 貢献
- 私の専門は,民法,消費者法,「AIと法」,「法と経営学」。その知識と体験に基づいて,法教育に革命(Revolution:公転・転回)をもたらすために,無料の「寺子屋ひじ塾」を開設し,貧困,いじめなど,様々な理由で学校教育から落ちこぼれた青少年を対象にして,その人たちが躓いた箇所に遡って再教育すること(自学自習のアシストを行うこと)を通じて,個人の能力を最大限に引き出し,社会に有為な(自立できる)人材を育成する。
- 要望
- 学習の過程で,職場経験(インターンシップ)を実施したいと考えている。会員には,「自慢できる職場」(従業員がミッションに向かって信頼関係で結ばれ,生き生きと仕事をしている職場)を用意していただけないだろうか。そのような職場で,将来の塾生たちに生きた学習を体験させたい。
- (HP訪問者の延べ人数:16,930人)
- 2018年4月26日(木) 晴れ
- 三田パブリック法律事務所の開設兼祝賀会を兼ねたリーガル・クリニックのシンポジウムに参加するため,東京に出張しました。
- シンポジウム自体はよく練られていて,とても素晴らしかったのですが,フロアとか来賓のあいさつを聴いていて,未だに「リーガル・クリニックの意義と役割」を理解していない先生方が多いことがわかって驚きました。
- 法科大学院の先生方は,理論家も実務家も含めて,そもそも,法科大学院の理念である「理論と実務の架橋」とは何かを理解していないようなのです。「理論と実務との架橋」とは,学生たちに,「書面をもって弁論に換えます」というような腐敗した民事裁判実務を見学させたり,きれいごとの模擬法廷を運営させたりして済む問題ではないことを法科大学院の関係者が理解していないようなのです。
- リーガルクリニックの理念を支える「理論と事務の架橋」とは,実は,以下の3つのプロセスを踏むことなのです。
- 第1に,理論を学んで「頭でっかちになっている」学生たちに対して,生の事実を提示して,学生たちが,これまで学んだ理論だけでは,生の事実に対して,どの条文,どの判例,どの書式を当てはめてよいのかわからなくなり,「どうしたらよいのか途方に暮れる」という厳しい現実に直面させることから始めなければなりません。
- 第2に,生の事実は,必ず分野横断的な問題であり,たとえ専門家であっても一人の力で解けるような生易しい問題ではなく,実は,教師自身もその問題を一人の力で解くことはできないことを自白しなければなりません。そして,理論家と実務家の複数の教員がタグを組んで,やっと解決の方向がみえてくるほど困難な問題であって,学生たちがうろたえるのは「おかしなこと」ではなく,むしろ,当然のことであるとして,学生たちの不安を取り除くことが必要です。
- 第3に,やる気を取り戻した学生たちによる,生の事実に関連する資料(判例・学説など)についての徹底した調査,および,原告側・被告側に分かれた真剣な議論,並びに,学生に対する複数の教員からのアドバイスが組み合わされて,やっとのことで,解決案の候補がいくつか見えてくることを示す必要があります。このような解決のプロセスを通じて,学生たちに,失われそうになった自信を回復させ,さらに,苦しくて面倒な協力作業の後にはじめて得られる,「生の事実を解決するプロセスの楽しさ」を体験させることができるのです,これこそが,クリニックの醍醐味なのです。
- しかし,この段階では,「理論と実務の架橋」は,単に,学生たちの頭の中で実現されたに過ぎません。その成果を記録にとどめても,それだけでは,「理論と実務の架橋」を実現したことにはなりません。
- クリニックに参加した理論家と実務家が協力して,「生の事実から適用されるべき条文・判例を発見する方法」を理論化するための作業を開始し,その成果を公表する必要があります。このような努力を継続して行い,医学のクリニックに匹敵するクリニックの理論を確立することが,リーガル・クリニックの意義と役割なのです。したがって,リーガル・クリニックを実施せずに「理論と実務の架橋」ができると思うこと自体が,私にとっては,摩訶不思議です。
- このようなリーガル・クリニックの意義と役割についての理解を欠いたまま,惰性で運営されている法科大学院は,まさに,危機的な状況にあるといわざるを得ません。
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小林雅一『ゲノム編集からはじまる新世界
-超先端バイオ技術がヒトとビジネスを変える-』
朝日新聞出版(2018/3/30) 77頁 図5 |
上京する新幹線の中で,小林雅一『ゲノム編集からはじまる新世界-超先端バイオ技術がヒトとビジネスを変える-』朝日新聞出版(2018/3/30)を読みました。
- 本書では,ゲノム(全遺伝情報)を編集するメカニズムが,以下のように,素人でもわかるように解説されており,予想に反して,一気に読み終えることができました。
- ゲノム編集のプロセスは,第1に,DNAの連鎖の中で編集すべき遺伝子の所在箇所をピンポイとで探索する,第2に,探索に成功した遺伝子を分子レベルで切除(削除)する,第3に,削除した個所に,修正すべき新たな遺伝子を挿入するという3段階で実現されます。
- この一連の作業のうち,第1段階と第2段階は,「クリスパー(CRISPR)」という塩基配列を使って,それが有する適応免疫力,すなわち,ガイドRNAによるターゲットの照合と接近,そして,核酸分解酵素によるターゲットの破壊・切断を行います(本書75-77頁,特に77頁の図5は,非常にわかりやすいと思います)。
- 第3段階は,すべての真核生物が有する自己修復復力に委ねるだけでよいのです。なぜなら,ターゲットとする細胞に核酸分解酵素とDNAの断片を挿入するだけで,細胞は自力で切断された箇所に挿入されたDNAを挿入して修復するからです(本書78-79頁)。
- 本書は,3章以下の応用編で,ゲノム編集による食品の品種改良による効用と問題(第3章),医療への応用がもたらす夢と悪夢(第4章)とが,推進派と反対派の意見をきちんと踏まえた上で客観的に記述されており,近い将来に顕在化するであろう問題を議論する上で,非常に参考になる良書であると思います。
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- 2018年4月27日(金) 曇り 朝鮮半島の板門店(パンムンジョム)で南北首脳会談・共同宣言締結
- リーガル・クリニックのシンポジウムで感じた法科大学院の危機的状況を実感し,「理論と実務の架橋」には,まだまだ時間がかかることを認識しつつ,大分へ帰郷しました。
- 帰りの新幹線の中で,日出図書館で借りた木村汎『プーチンとロシア人』産経新聞出版(2018/1/22)を読み始めました。血液型による性格判断を思わせるような非学術的な箇所も多いのですが,参照文献が豊富で,なるほどと思わせる記述を楽しむことができます。
- (HP訪問者の延べ人数:16,965人)
- 2018年4月28日(土) 晴れ 長いゴールデンウィーク始まる
- 日出図書館で借りた木村汎『プーチンとロシア人』産経新聞出版(2018/1/22)を読んでいます(2日目)。
- プーチンの考え方の根底には,体が小さく,貧乏だった幼少期に受けたいじめを柔道を通じて克服した体験からか,「力」だけを信じ,自分よりも「力があるか否か」によってものごとを判断するという傾向があるという本書の記述(101頁-104頁,133-136頁)には,多少の誇張はあるにせよ点は,説得力があると感じました。
- (HP訪問者の延べ人数:16,980人)
- 2018年4月29日(日) 晴れ
- 木村汎『プーチンとロシア人』産経新聞出版(2018/1/22)を読み終えました。
- 前半のプーチンに対する人間的アプローチ(第1章~第6章)よりも,後半のロシアに対する制度的アプローチ(第7章~第10章),すなわち,制度的な欠陥は,人々から,まじめに行動しようとする意欲を奪い,つまるところ創意工夫の芽を摘み,ひいては,国家の没落を徐々に進行させるという解釈を可能にする後半部分に興味を感じました。
- この点については,ロシアとか北朝鮮ばかりでなく,制度的な欠陥ゆえに人口減少・人口流出が起こっている国に共通の問題点が指摘されていると思うからです。したがって,本書で指摘されている,制度的欠陥が人々の真面目な行動意欲を減退させるという側面は,制度的欠陥によって女性が子を産む意欲を失い始め,留まるところを知らない人口減少を経験しているわが国にも,少なからず妥当することのように思われます。
- 加賀山茂『“Do for others”の民法学-事務管理・不当利得・不法行為』信山社(2018)の執筆の準備作業(その2)法典調査会の議事速記録に即して,どのようなQ&Aがなされたのかを明らかにする作業をしています(第10日目)。
- 法典調査会『民法議事速記録』の該当箇所(原案七百六条~七百三十二条)を読みながら,理由書の内容に追加を行う作業を行っています(第8日目:不当利得(現行法707条))
- (HP訪問者の延べ人数:16,990人)
- 2018年4月30日(月) 曇り一時雨のち晴れ
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雨宮処凛
『「女子」という呪い』
集英社(2018/4/10) |
雨宮処凛『「女子」という呪い』集英社(2018/4/10)を読みました。
- 最近,しばしば地元の日出町立図書館に顔を出し,新刊書とビジネス書を中心に本を眺め,面白そうな本を借りて読んでいるのですが,この本は,図書館でなければ手にしなかっただろうと思われるものであり,日出町立図書館の選書者に感謝したいと思います。
- 本書の執筆の動機は,あとがきに当たる「なんだ,みんなおかしいと思っていたんだ」に,以下のように書かれています(本書222-223頁)。
- この本は,私にとってはじめての「ジェンダー問題を真正面から扱った一冊」となる。
- なぜ,これまでそのようなことを正面から書いてこなかったのか。それは,ちょっとでも「これって不平等じゃない?」「男女差別じゃない?」「セクハラでは?」などと書こうものなら,こちらの予想を超える数のバッシングが寄せされてきたからだ。…よくわからないけれど,ジェンダーをめぐるもろもろには「地雷」が多く存在するのだ-。いつからか,そんなふうに思い込んでいた。だけど,そう思わされていたことそのものが,まぎれもなく「呪い」なのだ。
- 本書は,情報・知識&オピニオン「イミダス」で2012年5月から始まった連載エッセー『生きづらい女子たちへ』の原稿を厳選し,大幅に書き下ろしを加えたものである。この連載を通して,私はジェンダー諸々に関する「思考停止」をやめてみた。一旦やめてみたら,世の中は大いなる矛盾と男に都合のいい戯言に満ちていることに気づいた。そうして「おかしい」と思ったことを,片っ端から書いていった。スッキリした。
- そして,本書の特色である「女子」という呪いを説く方法は,以下のようにまとめられています(本書221頁)。
- …思い出してほしいのは,本書で何度も紹介してきたように,「性別を入れ替えてみる」ということだ。…例えば,「女だから〇〇できて当然だよね」なんて言い分に,「男だから〇〇できて当然って言われたら,どう思います?」とさらりと返してみる,といったことだ。
- その時,非対称性が明らかになる。それはきっと,多くの人に新鮮な「気づき」を与えるだろう。そう,「非対称性」という言葉を知ったことも,私にとっては<「女子」という呪い>を解くための大きな手がかりとなった。
- 「性別を入れ替えてみる」という思考方法については,本書の最初の章「すべての生きづらい女子たちへ」に,以下のように詳しく紹介されています(7-8頁)。
- メディアでたまに目にする,「夫の不倫を謝罪する」妻 →「妻の不倫を謝罪する夫」はいない。
- 「頑張れ」「努力しろ」と言うわりには,「でも,男以上には成功するな」というダブルスタンダード →「頑張れ,でも,妻・彼女以上には成功するな」とは言わない。
- 「女子力」とか「女性の活躍」という言葉。 →「男子力」という言葉はないし,「男性の活躍」なんてわざわざ言わない。
- 「そんなこと言ってるとモテないぞ」「お前は女の本当の幸せを知らない」などと余計なことを言ってくるオッサン。 →「お前は男の本当の幸せを知らない」なんて若い男に言うオバサンに会ったこともない〔うーん。与謝野晶子だったら,言うかも〕。
- 男が子育てをすれば「イクメン」と言われ,介護をすれば「ケアメン」と名付けられ持ち上げられる,女が仕事してく育てして家事してその上,介護までしても誰も名付けてくれないし褒めてもくれないという現実 〔→「イク女」,「ケア女」は,たぶん違う意味になってしまように思われる〕。
- 本書を読んでいて,「性別を入れ替える」という思考方法には賛成なのですが,単に思考方法の次元にとどまるのでは不十分であり,さらに一歩を進めて,日本語の慣習的用法に対しても,新しい選択肢を与えるところまで行くべきだと思いました。
- このことについては,私は,以前から考えてはいたのですが,さすがに,日本語を変えることに対しては躊躇していました。しかし,本書を読んだおかげで,確かに,制度改革は,みんなが賛成するかどうかを考えることが重要だけれども,自分が責任をもってする行動する分については,他人の意見は,「余計なお世話」として,無視しても構わないことに気づきました。そこで,日本語には,ルビという,とてつもなく強力な表現方法があることを思い出し,次のような日本語を私の責任で使い始める決心をして,単語登録まで済ませました。
- 男女 →女男
- 男女平等→女男平等
- 兄弟姉妹→姉妹兄弟
- 男尊女卑→女卑男尊
- もっとも,このような用語は,逆差別となるのではないかとの反論が当然に予想されますが,従来通りの用語法は,一般的にも,また,女卑男尊がお好きな方々によって使われ続ける続けるのであり,別の選択肢が増えることは,決して逆差別にはならないと思います。たとえ,今までの日本語が使われてきた期間と同じだけの長い期間,用語が逆になっても,それは,女に対する男のささやかな「償い」として,むしろ,奨励されるべきではないかと,私は考えています。
- いずれにせよ,女に対して男は総懺悔をし,100年以上にわたる償い(償還)を経た後に,初めて「女男」平等を語る資格を得るのだとの感を強くしました。
- 民法学者として恥ずかしいことに,1945年の敗戦によって日本国憲法が制定されて民法が大改正されるまで,民法,特に,家族法(親族・相続編)は,ひどい女男差別の規定を有していました。女男差別がそれ程ひどくない財産法(総則・物権・債権編)においても,「妻の無能力」(民法旧規定14条~18条:夫の同意がなければ重要な契約を締結することができない制度)を置いていたのです(それら規定を「削除規定」として残すのではなく,成年後見制度を制定した際に,上書きによってそれらの条文(妻の無能力)を隠蔽してしまったことは,本当に恥ずべき行為だと,私は考えています)。
- 現行民法では,女男差別が,かなり解消されましたが,いまだに,明らかな女男不平等が現存しています。例えば,女だけに課せられている「再婚禁止期間」(現行民法733条)については,引き続き,女に対する過酷な追い打ちの規定が残されています。なぜなら,民法744条2項は,女が再婚禁止に違反して婚姻した場合の制裁として,別れた前の夫が,100日以内,または,女が再婚後に出産するまでは,女が別の男とした婚姻を取り消すことがことができるという,「嫌がらせ・ハラスメント」を公認しているからです。そのほかにも,現行民法には,婚姻年齢の差別(民法731条),夫だけに与えられている嫡出否認,嫡出承認の制度(民法774条~778条)など,まだまだ,不合理な差別が残されています。
- 女男平等を実現するためには,単に制度を平等にするという生易しい方法ではなく,女男差別が実施されてきた期間と同じ期間に亘って,逆差別(積極的優先待遇:Affirmative Aciton)を実施すべきであると,私は考えています。そして,自己責任でできることから,償い(償還)を行動指針として実行していきたいと思います(償いプロジェクト)。
- 加賀山茂『“Do for others”の民法学-事務管理・不当利得・不法行為』信山社(2018)の執筆の準備作業(その2)法典調査会の議事速記録に即して,どのようなQ&Aがなされたのかを明らかにする作業をしています(第11日目)。
- 法典調査会『民法議事速記録』の該当箇所(原案七百六条~七百三十二条)を読みながら,理由書の内容に追加を行う作業を行っています(第9日目:不当利得(現行法706条修正案))
- (HP訪問者の延べ人数:17,000人)
- 2018年5月1日(火) 晴れのち曇り一時雨
- 加賀山茂『“Do for others”の民法学-事務管理・不当利得・不法行為』信山社(2018)の執筆の準備作業(その2)法典調査会の議事速記録に即して,どのようなQ&Aがなされたのかを明らかにする作業をしています(第12日目)。
- 法典調査会『民法議事速記録』の該当箇所(原案七百六条~七百三十二条)を読みながら,理由書の内容に追加を行う作業を行っています(第10日目:不当利得(現行法708条本案・修正案),幻の民法708条の2(第七百十九条:三者間不当利得の一般規定)の削除:歴史に残る立法の過誤)
- 第118回法典調査会(明治28年(1895年)9月27日)では,第1に,前回に原案第七百十六条(現行民法706条)を修正することが決まったため,起草委員が修正案を提出し,厳しい議論の後てそれが認められ,第2に,起草委員の間で結論が分かれたため(原案(穂積・富井)
vs. 修正案(梅)),歴史的な大論争が展開された原案第七百十八条(現行民法708条(不法原因給付))の審議の後,梅・修正案が否決され,第3に,旧民法
財産編第369条【三者間不当利得】をほぼそのままの形で承継した原案第七百十九条が審議されています。
- この原案第七百十九条【三者間不当利得】は,起草委員の懸命の説得にもかかわらず,他の委員の賛同を得ることができず,七百十三条・七百十四条(現行法の民法703条・704条)があれば十分との理由で,原案第七百十九条は,あっさりと削除されてしまっています。もっとも,起草委員たちは,ボワソナードのプロジェを精読していないせいか,この条文の中で最も重要な概念である「対価の移付」の説明が拙劣であり,これでは多くの委員を説得できなても仕方なかったのかもしれません。
- しかし,今から振り返るならば,民法703条・704条は,二者間の法律関係しか扱っておらず,原案第七百十九条の三者間不当利得に関する条文は貴重であり,このことを理解せず原案を否決した多数意見は,全くの誤解に基づいていたといわざるをえません(立法の過誤)。
- もしも,この原案第七百十九条が,現行法に取り込まれていたならば,三者間不当利得,転用物訴権に関する学説も今とは全く異なったものとなっていたように思います。
- そこで,参考までに,原案第七百十九条,その雛形となった旧民法財産編第369条,および,ボワソナードのプロジェの「対価の移付」の解説の核心部分を以下に示します。
- 原案第七百十九条【三者間不当利得】
- ①受益者が原因なくして受領したる財産を有償にて第三者に譲渡したるときは,供与者は其選択を以て第三所持者に対して其財産の返還を請求し又は其譲渡を追認して受益者より其対価の移付を請求することを得。但其財産が適法に第三者に移転したるときは其対価の移付のみを請求することを得。
②悪意の受益者に対しては,供与者は其供与した財産の評価額を請求することを得。
- 旧民法財産編 第369条【三者間不当利得】
- ①不当に領受したる物が不動産にして,且,之を第三者に譲渡したるときは初の引渡人は其選択を以て或は第三所持者に対して其不動産の回復を訴へ或は領受者に対して其代金の取戻を訴ふることを得
②善意なる領受者に対しては単に不動産の譲渡代金を取戻し又は其代金に関する訴権を要求し悪意なる領受者に対しては其代金を評価にて取戻すことをも得
- ボワソナードのプロジェの第389条の核心部分である,対人訴権,特に,「代金に関する訴権」,すなわち,「対価の移付」に関する解説
- フランス語
- Si celui qui a livré préfère intenter l'action personnelle en répétition contre qui a reçu et aliéné, il obtiendra la valeur estimative intégrale de l'immeuble contre le vendeur de mauvaise foi; mais contre le vendeur de bonne foi, il n'obtiendra que le prix de cession, et si ce prix n'a pas encore été payé, il pourra seulement se faire céder l'action en payment et l'action en résolution qui appartiennent au cédant.
- 日本語訳
- もしも,不動産を引渡した者(供与者)が,その不動産を受け取って譲渡した者(売主)に対して,返還を求める対人訴権を選択する場合には,不動産の悪意の売主に対しては,不動産の全部の見積価格を得ることができる。しかし,不動産の善意の売主に対しては,その譲渡の代価か,もしも,代価がまだ支払われていない場合には,供与者は,単に,その譲渡人に帰属している代価の支払訴権を自分に譲渡(移付)すること,および,解除権を自分に譲渡(移付)することを請求することができるに過ぎない。
- 以上の経緯を踏まえるならば,わが国の民法から脱落した,三者間不当利得について,以下のような一般規定を追加することが望ましいように思われます。
- 民法改正私案((加賀山私案)
- 第708条の2(三者間不当利得)
- ①法律上の原因なしに受領した財産を受益者が第三者に譲渡したときは,その財産の供与者は,第三者に対してその財産の返還を請求できる。ただし,その財産が適法に第三者に移転したときは,供与者は,第三者に対する財産の返還に換えて,受益者に対してその譲渡の代価,または,代価が支払われていないときは,受益者に帰属している代価の請求権の移転を請求することができる。後者の場合には,供与者は,直接に第三者に対してその代価の請求をすることができる。
②悪意の受益者に対しては,供与者は,その財産の譲渡の対価の移付に換えて,その財産の評価額を請求することができる。
- ③受益者が無資力である等の事由によって,一方で,供与者が前二項の規定による救済を受けることができず,他方で,これによって第三者が利得を享受するという結果が生じた場合において,それが公平の観点から正当化されないと評価できるときは,第703条又は第704条を準用し,供与者は,第三者に対して利得の返還を請求できる。
- (HP訪問者の延べ人数:17,020人)
- 2018年5月2日(水) 雨のち曇り
- 加賀山茂『“Do for others”の民法学-事務管理・不当利得・不法行為』信山社(2018)の執筆の準備作業(その2)法典調査会の議事速記録に即して,どのようなQ&Aがなされたのかを明らかにする作業をしています(第13日目)。
- 法典調査会『民法議事速記録』の該当箇所(原案七百六条~七百三十二条)を読みながら,理由書の内容に追加を行う作業を行っています(第11日目:不法行為(現行法709条)。
- 2018年4月5日(木)に事務管理の箇所(第113回法典調査会(明治28年(1895年)9月13日))から開始した法典調査会議事速記録の解読も順調に進んでおり,以下の二つの発見は,「直接訴権の研究者」としての私にとっては,とても大きいものだと感じています。
- 第1は,事務管理における「委任の規定の準用」に関して,起草委員の説明の中で,「直接訴権」,「反対訴権」という用語が使われていたことを発見したことです。
- 第2は,現在の学説の中で激しく争われている「三者間不当利得」ですが,この点に関して,不当利得の審議において,「三者間不当利得の一般規定」が原案(七百十九条)として提案されており,その原案中に存在する,「対価の移付」という概念を通じて,実は,「対価訴権の移付」による損失者の第三取得者に対する「直接訴権」の発生が示唆されていたことを発見したことです。
- これらの発見の成果については,加賀山茂『“Do for others”"の民法学-事務管理・不当利得・不法行為』信山社(2018)で,大きく扱うつもりです。
- このような経過を経て,私の作業は,事務管理,不当利得の作業を終え,いよいよ最後の不法行為(第119回法典調査会(1895年10月2日)~第123回法典調査会(1895年10月11日))の議事速記録の解読作業に差し掛かりました。
- (HP訪問者の延べ人数:17,040人)
- 2018年5月3日(木) 曇りのち晴れ 憲法記念日
- 平成最後の憲法記念日に寄せて
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前泊博盛(編著)
『本当は憲法より大切な
「日米地位協定入門」 』
創元社(2013/2/28) |
来年5月1日に元号が変わるため,今年は,「平成最後の」憲法記念日になります。安倍政権の下で憲法改正論議が活発化しており,「憲法は風前の灯」などと言われています。しかし,以下の理由に基づいて,日本国憲法は,日本国の安全保障という「高度に政治的な判断を伴う問題」に関する限り,国民の基本的人権を保障することすらできないのが,日本の悲しい現状なのです。
- 第1に,米軍の押し付けによって締結された安保条約(その後改定されたとはいえ,実質は同じである)を具体化するための機関である「日米合同委員会」は,治外法権下で,米軍の制服組と日本の官僚のと間で会議を開き,日本国の安全保障に関するすべての重要な決定を行っています(詳細については,矢部宏治『知ってはいけない隠された日本支配の構造』講談社現代新書(2017/8/17),前泊博盛『本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」』創元社(2013/3/1)を参照してください)。
- そして,その決定に基づいて国内法化された航空法特例法によって,米軍は,わが国の航空法の厳格な規制から除外されています。この航空法特例法という国内法に基づいて,米軍は,日本国民の基本的人権を害する場合であっても,オスプレイを含む,あらゆる航空機を使って,日本中で,規制を受けることなく,いつでも,どこでも,低空飛行を含めたあらゆる飛行を実施できるのです。また,米軍が事故を起こして,日本国民に被害を及ぼしたとしても,日本国には事故の捜査権は認められていません。日本国は,加害者を罰することもできないのです(日米地位協定第17条)。
- つまり,日本国は,憲法違反の国内法(安保条約に基づく特例法)によって,米軍の治外法権を認めており,実質的には,いまだに米軍の占領下にあるといっても過言ではありません。日本は独立しており,かつ,米軍に守られていると信じている人は多いのですが,米国法上も,日本法上も明らかなか違法行為(殺人,強姦,業務上過失致傷,暴行・傷害)であっても,米軍や米軍に属する加害者を罰することもできず(日米地位協定第17条),損害賠償も実現できない(日米地位協定第18条)のですから,日本国は,米軍に守られているのではなく,治外法権が認められている米軍によって支配されていると考えるのが現実的でしょう。
- もう少し卑近な例で考えることにして,以下のような状況を想像してみましょう。
- 「君を守りたい」という男(上記では米軍)を信じて,女(上記では日本国)が「守ってもらえる」と思って,婚姻費用の多くを妻が負担することにして結婚(上記では,安保条約を締結)した。
- 確かに,夫は,ボディガードとしては費用分の力を発揮するが,家庭内では,実は「DV夫」であり,「誰のおかげで安全が確保できているかわかっているのか」と言いつつ,妻に対して,やりたい放題の致命的な暴力を振るっており,このままでは妻の命が危ない。
- しかし,DV防止法(上記では日本国憲法)が機能不全に陥っていて,夫の暴力を止めることができない(上記では,米軍による違法行為を止めることも,罰することも,損害賠償も求めることもできない)。
- このような場合,DV防止法を機能させて(上記では,安保条約を改訂し,治外法権を破棄し,現行日本国憲法なり,改正日本国憲法なりを機能させて),外からも内からも「家庭生活の安全」(上記では,日本国民の基本的人権)が守られるのが,本来の姿ではないでしょうか。
- 第2に,日本の最高裁判所は,国の安全保障という「高度に政治的な判断を伴う問題」に関する限り「統治行為論」に基づいて,憲法判断を行わないことにしています(砂川事件最高裁判決)。つまり,司法は,日本国憲法で保障されている国民の基本的人権よりも,米軍の権利を実質的に優先しているのです。
- したがって,航空法特例法という憲法違反の国内法に基づいて,米軍が日本において何でもありの行動(アメリカ法上は違法の行動)をしても,日本国は,立法上も,司法上も,もちろん行政上も,米軍の行動をコントロールできません。
- 日本政府がいくら米軍にお願いしても,オスプレイの配備・飛行の禁止も,日本国内で墜落した場合の原因調査も,犯罪捜査も,原因究明までの飛行停止も全く実現できないのは,国内法と最高裁の解釈によって,米軍に「合法的な」権利(治外法権)が認められているからです。
- 最近,自衛隊のシビリアン・コントロールが問題とされていますが,米軍が戦時と判断すれば(蓋然性はほとんどないでしょうが,近日中に行われる米朝首脳会談が決裂した場合には起こり得ます),自衛隊は,有無を言わさず,米軍の指揮監督下に置かれてしまうのであり(自衛隊と米軍の合同演習は,その準備の意味を兼ねています),そもそも,一番重要な時には,自衛隊のシビリアン・コントロールなど吹き飛んでしまうのです(自衛隊は戦時には国軍にあらず)。
- このように考えると,アメリカに押し付けられた日本国憲法を改正して,日本の真の独立を実現したいというのであれば,その前に,アメリカに押し付けられた安保条約とそれに基づく治外法権を破棄して,日本の真の独立を実現することが憲法改正の前提とならなければならないのではないかと,私は考えています。
- 安保条約とそれに基づく治外法権を放置したまま,いくら憲法を改正しても,改正後の憲法自体が,現行憲法と同様に機能不全に陥るだけであり,肝心の「押し付けの排除」,「治外法権の破棄による日本の独立」には何の寄与もしないからです。憲法を改正するのであれば,同時に,安保「条約改正による治外法権の破棄(明治維新以来のわが国の一貫した外交政策)」,および,米軍主導の「日米合同委員会」の廃止(アメリカ大使館を通じた正規の外交ルートへの全面回復)を実現しなければなりません。
- 加賀山茂『“Do for others”の民法学-事務管理・不当利得・不法行為』信山社(2018)の執筆の準備作業(その2)法典調査会の議事速記録に即して,どのようなQ&Aがなされたのかを明らかにする作業をしています(第14日目)。
- 法典調査会『民法議事速記録』の該当箇所(原案七百六条~七百三十二条)を読みながら,理由書の内容に追加を行う作業を行っています(第12日目:不法行為(現行法712条~713条)。
- (HP訪問者の延べ人数:17,055人)
- 2018年5月4日(金) 晴れ みどりの日
- 加賀山茂『“Do for others”の民法学-事務管理・不当利得・不法行為』信山社(2018)の執筆の準備作業(その2)法典調査会の議事速記録に即して,どのようなQ&Aがなされたのかを明らかにする作業をしています(第15日目)。
- 法典調査会『民法議事速記録』の該当箇所(原案七百六条~七百三十二条)を読みながら,理由書の内容に追加を行う作業を行っています(第13日目:不法行為(現行法714条~715条)。
- (HP訪問者の延べ人数:17,070人)
- 2018年5月5日(土) 晴れのち曇り こどもの日
- 加賀山茂『“Do for others”の民法学-事務管理・不当利得・不法行為』信山社(2018)の執筆の準備作業(その2)法典調査会の議事速記録に即して,どのようなQ&Aがなされたのかを明らかにする作業をしています(第16日目)。
- 法典調査会『民法議事速記録』の該当箇所(原案七百六条~七百三十二条)を読みながら,理由書の内容に追加を行う作業を行っています(第13日目:不法行為(現行法716条~717条)。
- 現行民法 第717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)は,立法理由書によれば,はじめから,二次的責任者として所有者が想定されていたような書きぶりですが,実は,起草者が提案した原案(第七百二十五条)には,但し書き部分が存在せず,占有者だけを責任主体としていました。このため,梅謙次郎のいわば宿敵である磯部四郎(旧民法の解釈書を執筆している仏法派)が,真っ先に反対意見を述べ,原案に反対する多数の委員(長谷川喬,横田國臣,土方寧,元田肇)の意見陳述によって,起草委員の一人である富井政章も説得され,磯部四郎の修正案が採択された結果,「但占有者カ損害ノ発生ヲ防止スルニ必要ナル注意ヲ為シタルトキハ其損害ハ所有者之ヲ賠償スルコトヲ要ス」という修正案が実現するに至ったことが,議事速記録を読むとよくわかります。
- 法典調査会で,磯部四郎の意見が通ることは比較的に珍しいことなので,磯部四郎の反対意見が,議論を通じて次第に多数意見となっていくプロセスは,議論のあり方として,現代においても,非常に参考になると思います。
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- 2018年5月6日(日) 曇りのち雨
- 加賀山茂『“Do for others”の民法学-事務管理・不当利得・不法行為』信山社(2018)の執筆の準備作業(その2)法典調査会の議事速記録に即して,どのようなQ&Aがなされたのかを明らかにする作業をしています(第17日目)。
- 法典調査会『民法議事速記録』の該当箇所(原案七百六条~七百三十二条)を読みながら,理由書の内容に追加を行う作業を行っています(第14日目:不法行為(現行法718条~719条)。
- (HP訪問者の延べ人数:17,150人)
- 2018年5月7日(月) 雨
- 大分大学経済学部で,「消費者と法」の第4回目の講義を行いました。
- 第4回目の講義のテーマは,シラバスで予告しているように,「表示の適正化」であり,以下の順序で講義を行いました。
- 第1に,前回の「安全性の確保」の講義の際に学生たちから回収して添削した「コミュニケーションペーパー」を返却し,復習を兼ねた講評を行います。
- 第2に,「消費者の4つの権利」の内の一つである「知らされる権利(Right to be informed)」を概観します。すなわち,「知らされる権利」の典型例である「消費者教育を受ける権利」,「必要な情報を開示される権利」,および,「一般的な表示を求める権利」について,レジュメに従って概観しました。
- 第3に,今回のテーマである「表示の適正化」の問題について,「知らされる権利」の内の「一般的な表示を求める権利」として位置付け,関連する権利との関係を中心に具体的な問題を「補助教材」に沿って,検討しました。
- (HP訪問者の延べ人数:17,165人)
- 2018年5月8日(火) 曇り一時雨
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日出ロータリークラブで外来卓話を行い,会長から
母の日に因んだフラワーアレンジメントを頂いた。 |
第4回「消費者と法」の講義で回収した学生たちの「コミュニケーション・ペーパー」の添削を行いました。 - 加賀山茂『“Do for others”の民法学-事務管理・不当利得・不法行為』信山社(2018)の執筆の準備作業(その2)法典調査会の議事速記録に即して,どのようなQ&Aがなされたのかを明らかにする作業をしています(第18日目)。
- 法典調査会『民法議事速記録』の該当箇所(原案七百六条~七百三十二条)を読みながら,理由書の内容に追加を行う作業を行っています(第15日目:不法行為(現行法720条)。
- 日出ロータリークラブの例会に出席して,卓話「医学教育・法教育における共通の課題とその克服-循環と回転-」を行いました。会場が別府湾ロイヤルホテルのため,自宅から会場までは,花精のご主人が車で迎えに来てくださり,帰りは,上野建築の社長に車で送っていただきました。
- 上記の卓話は,数日後に,日出ロータリークラブの週報(No.35)に掲載され,2018年5月13日(日)に九重森林公園で開催された玖珠・大分1985・日出ロータリークラブの「3クラブ合同例会・交流親睦会」において配布されました。
- (HP訪問者の延べ人数:17,190人)
- 2018年5月9日(水) 晴れ (久しぶりの快晴) (ホトトギスの初音を聞くことができました。もっとも,盛んに鳴いているウグイスにとっては迷惑なことなのでしょうが…。)
- 加賀山茂『“Do for others”の民法学-事務管理・不当利得・不法行為』信山社(2018)の執筆の準備作業(その2)法典調査会の議事速記録に即して,どのようなQ&Aがなされたのかを明らかにする作業をしています(第19日目)。
- 法典調査会『民法議事速記録』の該当箇所(原案七百六条~七百三十二条)を読みながら,理由書の内容に追加を行う作業を行っています(第16日目:不法行為(現行法721~722条)。
- (HP訪問者の延べ人数:17,210人)
- 2018年5月10日(木) 晴れ
- 加賀山茂『“Do for others”の民法学-事務管理・不当利得・不法行為』信山社(2018)の執筆の準備作業(その2)法典調査会の議事速記録に即して,どのようなQ&Aがなされたのかを明らかにする作業をしています(第20日目)。
- 法典調査会『民法議事速記録』の該当箇所(原案七百六条~七百三十二条)を読みながら,理由書の内容に追加を行う作業を行っています(第17日目:不法行為(現行法710~711条,723~724条)。
- 今日で,事務管理,不当利得,不法行為に関する民法典議事速記録の議論の詳細をすべて読み終わりました。その成果を踏まえて,明日から,上記の本の執筆を開始します。
- 上記の本の執筆にあたっては,“Do for others”の視点から見た事務管理,不当利得,不法行為の特色と相互関係を踏まえた上で,各条文,または,ひとまとまりの条文ごとに,以下の順序で記述を行うことにします。
- 第1に,現代に通じる適切な設例を最初に掲げます。この設例に対して,読者が適切な解答案を作成できるようになることが本書執筆の目標となります。
- 第2に,法典調査会に提出された原案と修正後の条文,口語化の際に変更された現行民法文の対照表を作成した上で,起草員の民法修正理由,それに対して法典調査会の委員によって提出された質問・疑問の要旨,それに対する起草員の答弁と結論を示し,条文の立法理由を完璧に理解することにします。法典調査会での議論に基づいて,各条文ごとにQ&Aをまとめますので,そのQ&Aが理解を大いに助けることになると思います。
- 第3に,その後の学説と判例の動向を新・旧『注釈民法』を中心に概観し,設例に対する解答のヒントを示します。
- 第4に,今後の展望を兼ねて,現行民法の改正(加賀山)私案とその理由を示し,その案に従った場合の設例に対する私の解答例を示します。
- 以上の記述を読んだ読者は,それまでの考え方が,おそらく,以下のように変化すると思われます。
- 第1に,これまで,きちんと学習することがなかった,現行民法の立法理由,さらに,立法に至るまでに何が議論されてどのような解決策として現行民法の条文が誕生したのかを正確に理解できるようになることでしょう。大学におけるゼミの議論も,この理解こそが前提とされるべきでしょう。
- 第2に,完璧に見える現行民法が,実は,問題を積み残したまま誕生しており,インターネット現代社会の現状から見直すならば,法典調査会の議論の中で捨てられた条文(原案第七百十九条【受益者に対する損失者の介入権,直接訴権・転用物訴権】)や,否決された提案(現行民法708条(原案第七百十八条)に対する梅・修正案)が,むしろ,紛争解決の指針として現代社会にとって適合的である場合があることを発見することでしょう。
- 第3に,設例への回答案の作成練習を通じて,読者のそれぞれが,現行民法の条文に対して,傍観者的な立場を捨てて,確固とした擁護論者とか,または,確固たる批判者とかへと生まれ変わることになり,各条文に設けられた設例に対して,自分なりの解釈論・または,立法論を展開できるようになると思われます。
- (HP訪問者の延べ人数:17,230人)
- 2018年5月11日(金) 晴れ
- 『法と経営研究』(信山社)第2号の編集会議の開催,および,明治学院大学「消費者法研究会」に出席して議論を盛り上げるするため,東京に出張しました。
- 新幹線の中で,加賀山茂『“Do for others”の民法学-事務管理・不当利得・不法行為』信山社(2018)の執筆を開始しました(第1日目)。目次,はしがき,はじめに,そして,序章(民法における“Do for others”(他者への貢献)の精神)を書き上げました。
- 歯医者に寄って,歯垢の除去,歯茎の腫れの治療を治療を受けました。
- 私学会館アルカディアで開催した『法と経営研究』(信山社)第2号の編集会議では,共同編集代表者の作成したアジェンダに従って議事を進め,その後,共同編集代表者と神楽坂の和食店で夕食をし,飯田橋で1泊しました。
- (HP訪問者の延べ人数:17,250人)
- 2018年5月12日(土) 晴れ
- 明治学院大学の「消費者法研究会」に出席して,議論を盛り上げました。
- 今回の報告は,個人情報保護法の立法に関与した個人情報保護法の専門家(弁護士)による人情報保護法の基本的な考え方の解説であり,大いに参考になりました。
- 具体的には,個人情報保護委員会事務局「改正個人情報保護法の基本」,および,「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」,「個人データ漏えい等の事案が発生した場合等の対応について」に関する「Q&A」に基づいて,多くの具体例を使いながら丁寧な報告がなされました。
- 報告自体は,非常にわかりやすく,質疑応答も充実したものでした。しかし,この法律が,行政法規であって,刑事罰の規定については保護法益が明らかでなく,民事救済に根拠を与えるものでもなく,しかも,立法の理念が明確でないのには驚くほかありませんでした。特に,この法律の適用除外が余りにも広範であることには,驚きました。
- すなわち,この法律は,放送機関,新聞社,通信社その他の報道機関が報道の用に供する目的で個人情報を取り扱う場合にはこの法律の適用が除外されます。同様にして,著述を業として行う者(インターネットが発達した現在では,ほとんどの市民が該当しうる),大学その他の学術研究を目的とする機関もしくは団体又はそれらに属する者,宗教団体,政治団体がそれぞれの目的の範囲内で個人情報を取り扱う場合には,この法律がすべて適用されないのです。このように,声の大きい者に対して法規制を抜ける特権が与えられていることは,致命的な欠陥であり,立法の理念が定まらない法律の深刻な問題点を実感することになりました。
- 私は,個人情報の保護は,本人の本人による本人のための権利保護(個人情報の正確性の担保および適正利用)を中心に制度設計が行われるべきであると考えています。
- すなわち,個人情報の保護は,本人による個人情報の開示請求権,他人からの個人情報へのアクセスに関する記録情報の開示請求権,誤情報の訂正権,誤情報の利用停止権を中心に制度設計がなされるべきであり,それを実現するために有用な限度で,しかも,適用除外を認めることなく,行政規制を行うべきであると,私は考えています。
- この観点から見るならば,現行の個人情報保護法は,「個人情報の正確性を担保し,利用の適正化を図る」という理想の姿からは程遠いレベルあると考えざるを得ませんでした。
- 九重森林公園で開催される開催される玖珠・大分1985・日出ロータリークラブの「3クラブ合同例会・交流親睦会」に出席するため,別府に行き,1泊しました。
- 帰りの新幹線の中で,加賀山茂『“Do for others”の民法学-事務管理・不当利得・不法行為』信山社(2018)の執筆を続けます(第2日目)。昨日,序章までを書き上げたので,今日から,第1章(事務管理)の執筆を行います(第1日目)。
- (HP訪問者の延べ人数:17,270人)
- 2018年5月13日(日) 曇り後雨 母の日(出生・保育に対する感謝の日ではまだ足りず,女性に対する男性の「償いの日」へと昇華したいと考えています。)
- 九重森林公園で開催された玖珠・大分1985・日出ロータリークラブの「3クラブ合同例会・交流親睦会」に出席しました。
- 別府駅からマイクロバスで会場に向かい,3クラブで50人以上の会員(家族連れが多かったのが今回の特色だとのことです)が集まって,合同例会と交流親睦会が開催されました。私は,5月22日に日出ロータリークラブに入会する予定ですが,既に会員であるかのように扱っていただき(成り行きで,無料法律相談も行いました),たくさんの方々と知り合うことができました。
帰りは,鈴木病院の院長が自宅までベンツで送ってくださいました。
- 会場で参加者に配布された日出ロータリークラブの週報に,5月8日に私が行った卓話の全文が,その時の写真とともに収録されており,情報処理のスピードに感心しました。
- 加賀山茂『“Do for others”の民法学-事務管理・不当利得・不法行為』信山社(2018)の執筆を続けます(第3日目)。一昨日に序章までを書き上げ,昨日から第1章(事務管理)の執筆を行っています(第2日目)。
- 事務管理の「直接訴権」(民法701条の準用による民法646条2項,および,民法650条2項)について,『注釈民法』の該当箇所を参照してみると,例によって,「直接訴権」を知らないドイツ民法学説の影響を受けたわが国の通説・判例によって,現行民法の起草者たちの努力が踏みにじられているのが分かりました。そして,特に,三者間関係については,立法趣旨という原点への回帰(Revolution)が必要であることを実感しました。
- そういうわけで,立法理由だけでなく,法典調査会での議事速記録に従って立法過程を明らかにし,さらに,インターネットとAIによって変貌を遂げつつある現代社会の視点から,現行民法の条文の本来の意味を明らかにすることことを主眼とした上記の本を出版する意義は大きいことを確信することができました。
- (HP訪問者の延べ人数:17,290人)
- 2018年5月14日(月) 晴れ(午前5時少し前に,ホトトギスの鳴く声で目覚めました。昨日の雨の影響で,庭の先は見渡す限り霧で覆われていました。
)
- 加賀山茂『“Do for others”の民法学-事務管理・不当利得・不法行為』信山社(2018)の執筆を続けます(第4日目)。一昨日から第1章(事務管理)の執筆を行っています(第3日目)。
- 大分大学経済学部で,「消費者と法」の第5回目の講義を行いました。
- 第5回目の講義のテーマは,シラバスで予告しているように,「投資家保護と消費者保護」であり,以下の順序で講義を行いました。
- 第1に,前回の「表示の適正化」の講義の際に学生たちから回収して添削した「コミュニケーションペーパー」を返却し,復習を兼ねた講評を行いました。
- 第2に,前回に話題となった「錯誤と心裡留保・虚偽表示」との関係を「意思の不存在」と「瑕疵ある意思表示」に関する体系図を板書しながら詳しく説明し,そのことが,消費者契約法4条(消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し)の理解につながることを,レジュメに従って概観しました。
- 第3に,今回のテーマである「投資家保護と消費者保護」の問題について,「適合性原則」とは何かについて,「補助教材」,および,民法697条(事務管理)の新しい解釈を参考にしながら,検討しました。
- (HP訪問者の延べ人数:17,310人)
- 2018年5月15日(火) 晴れ
- 第5回「消費者と法」の講義「投資家保護と消費者保護」で回収した学生たちの「コミュニケーション・ペーパー」の添削をパソコン上で行いました。
- 自転車で,暘谷苑に父親の見舞いに行きました。元気で何よりです。
- (HP訪問者の延べ人数:17,330人)
- 2018年5月16日(水) 晴れ
- 秋口から冬,春,そして昨日まで使っていた書斎のこたつを屋根裏に移し,今年初めて,冷房を使い始めました。
- こたつの移動に合わせて,書斎の整理・整頓を行いました。
- (HP訪問者の延べ人数:17,360人)
- 2018年5月17日(木) 曇り
- 母の診察のため,病院に同行しました。検査結果は良好で,4日間の服薬で完治するとのことで安心しました。
- 第5回「消費者と法」の講義「投資家保護と消費者保護」で回収した学生たちの「コミュニケーション・ペーパー」のパソコン上で行った添削を手書きをして,返却に備えました。
- (HP訪問者の延べ人数:17,375人)
- 2018年5月18日(金) 曇り後雨
- 2018年5月22日(火)の日出ロータリークラブ例会において,入会の挨拶をするため,そのスピーチ原稿「自己紹介を兼ねたSWOT分析」を書き上げました。
- 2018年5月29日(火)に,学習院女子大学で講義する「法学とリーダーシップ-各国のリーダーに法学部出身者が多いのはなぜか?」について,昨年度のプレゼンを改訂する作業を開始しました(第1日目)。
- (HP訪問者の延べ人数:17,390人)
- 2018年5月19日(土) 晴れ
- 2018年5月29日(火)に,学習院女子大学で講義する「法学とリーダーシップ-各国のリーダーに法学部出身者が多いのはなぜか?」について,昨年度のプレゼンを改訂し(第2日目),今年度のプレゼン(PowerPoint,PDF)を作成しました。
- (HP訪問者の延べ人数:17,405人)
- 2018年5月20日(日) 晴れのち曇り
- 2018年5月29日(火)に学習院女子大学で講義する「法学とリーダーシップ-各国のリーダーに法学部出身者が多いのはなぜか?」の今年度のプレゼンを改定し,最終版(PowerPoint,PDF)としました。
- 加賀山茂『“Do for others”の民法学-事務管理・不当利得・不法行為』信山社(2018)の執筆を続けます(第5日目)。第1章(事務管理)の執筆を行っています(第4日目)。
- (HP訪問者の延べ人数:17,420人)
- 2018年5月21日(月) 晴れ後曇り
- 加賀山茂『“Do for others”の民法学-事務管理・不当利得・不法行為』信山社(2018)の執筆を続けます(第6日目)。第1章(事務管理)の執筆を行っています(第5日目)。
- 大分大学経済学部で,「消費者と法」の第6回目の講義を行いました。
- 第6回目の講義のテーマは,シラバスで予告しているように,「環境保護と消費者保護」であり,以下の順序で講義を行いました。
- 第1に,前回の「投資家保護と消費者保護」の講義の際に学生たちから回収して添削した「コミュニケーションペーパー」を返却し,復習を兼ねた講評を行いました。
- 第2に,前前回に問題を提起し,前回においても引き続き話題となった「錯誤と心裡留保・虚偽表示」との関係,「意思の不存在」と「瑕疵ある意思表示」について復習し,そのことが,消費者契約法4条(消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し)の理解につながることを,レジュメに従って概観しました。 また,前回話題となった,「適合性原則」と「事務管理」との関係について復習しました。
- 第3に,今回のテーマである「環境保護と消費者保護」の問題について,廃棄物に関しては,消費者が生産者の立場へと逆転する点について検討した後,環境保護に不可欠の差止請求権について,「補助教材」,および,レジュメに即して検討しました。
- (HP訪問者の延べ人数:17,435人)
- 2018年5月22日(火) 晴れのち曇り
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日出ロータリークラブ入会式 |
大分大学経済学部での第6回「消費者と法」の講義「環境保護と消費者保護」で回収した学生たちの「コミュニケーション・ペーパー」の添削をパソコン上で行いました。
- 加賀山茂『“Do for others”の民法学-事務管理・不当利得・不法行為』信山社(2018)の執筆を続けます(第7日目)。第1章(事務管理)の執筆を行っています(第6日目)。
- 自家製パンと花精で購入したフラワーアレンジメントをもって,暘谷苑に父の見舞いに行きました。父は,顔色もよく,何かを思い出したのか,久しぶりに声を出して思い出し笑いをしたので,施設の方々から良くしてもらっているのがよくわかりました。帰りに,理事長・施設長から声をかけていただき,「いつもお花をいただいてありがとうございます」と,お礼の言葉をいただきました。名刺を持っていたので,初対面の理事長と名刺交換をして,しばらく歓談しました。
- 日出ロータリークラブに入会し,入会のスピーチの原稿を用意しましたが,時間がなかったため,プリントアウトしたものを会員に配布するにとどめました。そして,入会のスピーチは,次回の新入会員歓迎会で行うことにしました。なお,有難いことに,自宅から会場までの送り迎えを花精のご主人にしていただきました。
- (HP訪問者の延べ人数:17,450人)
- 2018年5月23日(水) 一日中雨
- 大分大学経済学部での第6回「消費者と法」の講義「環境保護と消費者保護」で回収した学生たちの「コミュニケーション・ペーパー」のパソコン上で行った添削を手書きをして,返却に備えます。
- 加賀山茂『“Do for others”の民法学-事務管理・不当利得・不法行為』信山社(2018)の執筆を続けます(第8日目)。第1章(事務管理)の執筆を行っています(第7日目)。
- (HP訪問者の延べ人数:17,470人)
- 2018年5月24日(木) 晴れ
- 加賀山茂『“Do for others”の民法学-事務管理・不当利得・不法行為』信山社(2018)の執筆を続けます(第9日目)。第1章(事務管理)の執筆を行っています(第8日目)。
- この作業と並行して進めてきた,事務管理・不当利得・不法行為のすべての現行条文・民法(債権関係)の改正条文(民法697条~民法724条の2)の改正案(加賀山私案)とそれぞれの条文の改正理由を完成させました。
- (HP訪問者の延べ人数:17,490人)
- 2018年5月25日(金) 晴れのち曇り
- 加賀山茂『“Do for others”の民法学-事務管理・不当利得・不法行為』信山社(2018)の執筆を続けます(第10日目)。第1章(事務管理)の執筆を行っています(第9日目)。
- この作業と並行して進めてきた,事務管理・不当利得・不法行為のすべての現行条文・民法(債権関係)の改正条文(民法697条~民法724条の2)の改正案(加賀山私案)とそれぞれの条文の改正理由を完成させたので,上記の本の原稿に,現行法との対照表の形で組み込みました。
- (HP訪問者の延べ人数:17,510人)
- 2018年5月26日(土) 曇りのち晴れ
- 吉備国際大学大学院(通信制)知的財産学研究科の教授会に出席するため,岡山に出張しました。
- 大学院生1名の民法に関連する修士論文の研究指導を担当することになりました。
- 9月1日,9月2日に開催される,修士論文(2年生),および,修士論文計画(1年生)の報告会のスケジュールが決まりました。
- 10月13日に開催される知的財産学研究科特別講演会で,「著作権法のパラダイム転換-著作者第一主義から利用者第一主義への展望-」というテーマで,講演をすることになりました。
- 吉備国際大学大学院(通信制)知的財産学研究科の10周年記念論文集の出版に関連して,学生の論文の査読者を決定し,教員の論文提出の締め切りを来年1月末とすることを決定しました。
- 教授会終了後,京都に行き,今年度から顧問を務めることになる民法学研究会の懇親会に参加しました。
- 参加できなかった午後の研究会に関する資料をいただきました。
- 次回の研究会は,7月21日に開催されることを聞き,スケジュールを確認した上で,参加することを決めました。
- (HP訪問者の延べ人数:17,525人)
- 2018年5月27日(日) 晴れ
- 気候も良く,天気にも恵まれたので,午前中は,京都の街を留学生を案内して散策しました。
- 末川民事法研究会に参加して,議論を盛り上げました。
- 第1報告:「アスベスト被害をめぐる紛争における主張立証の壁となる問題の検討 ―これまで注目されなかったケースを中心に―」
- 宮崎地判平25・3・26(遺族補償給付等不支給処分取消請求事件(処分取消し,請求認容事件))を題材にして,因果関係の立証の困難さを打開する方法について報告がなされました。
- 具体的には,自動車整備工場で就労し,労働者災害補償保険に加入していた中小事業主の死亡原因が,厚生労働基準局長通達である石綿認定基準に基づいて「業務上の疾病」によると認められるかどうかについて検討するものでした。
- 確かに,病状(特発性間質性肺炎)だけでは,死因が石綿肺であると認定することが困難ですが,自動車整備工場で石綿粉じんにばく露していたことが証明された結果,形勢が逆転し,本件においては,疾病は石綿ばく露作業に従事したことのある労働者に発症したものであって,じん肺法4条2項に規定するじん肺管理区分の石綿肺に該当すると認定されました。その結果,本件は,石綿認定基準を充足すると認められ,労災保険法に基づく遺族補償給付及び葬祭料の支給をしないとした労働基準監督署長の処分が取消されることになったのです。
- 民訴法上の因果関係の認定において,消去法を使った選択的判断に助けられているとはいえ,原因と結果との間の蓋然性が,「石綿粉じんにばく露していたこと」の証明によって劇的に変化するという点に焦点を当てた本報告は,「ベイズ統計学」の観点からも,優れた報告であると感じました。
- 第2報告:「ドイツにおける死因贈与(約束)について-死因贈与と第三者のためにする契約の区別を中心に-」
- ドイツの相続契約と死因贈与との明確な差をヒントにして,わが国の死因贈与の撤回可能性について,贈与者の死亡当時に受贈者が生存していることを停止条件としているかどうかを判断基準として,以下のような場合分けによって,死因贈与の撤回可能性を判断するべきであるという,興味深い報告でした。
- 死因贈与契約を,原則として,受贈者が,贈与者の死亡当時に生存することを停止条件とする贈与契約と解釈する。…撤回可能
- 反対事実の証明がなされて,死因贈与契約が,不確定期限付きの死因贈与契約であると認定されたとき。…撤回不能
- 研究会終了後,第2報告者と会食を行い,今後の研究について,意見交換を行いました。
- (HP訪問者の延べ人数:17,550人)
- 2018年5月28日(月) 曇り一時雨
- 大分大学経済学部で「消費者と法」の講義をするため,朝早く京都を出て,大分に帰りました。
- 第7回目の講義のテーマは,シラバスで予告しているように,「被害救済の実効性の確保(消費者団体訴訟,医療問題と消費者)」であり,以下の順序で講義を行いました。
- 第1に,前回の「環境保護と消費者保護」の講義の際に学生たちから回収して添削した「コミュニケーションペーパー」を取り上げ,復習を兼ねた講評を行いました。
- 第2に,前回に問題を提起した「民法上の差止請求」について復習し,そのことが,消費者契約法12条以下の「適格消費者団体による差止請求」の理解につながることを,レジュメに従って概観しました。
- 第3に,今回のテーマである「被害救済の実効性の確保(消費者団体訴訟,医療問題と消費者)」の問題について,「補助教材」,および,レジュメに即して検討しました。
- 大分大学での講義の後,学習院女子大学国際文化交流学部・国際コミュニケーション学科で特別講義「法学とリーダーシップ-各国のリーダーに法学部出身者が多いのはなぜか?-」(PowerPoint,PDF)について講義するため,東京に出張しました。
- 新幹線の中で,加賀山茂『“Do for others”の民法学-事務管理・不当利得・不法行為』信山社(2018)の執筆を続け(第11日目),第1章(事務管理)の執筆を行うのと並行して(第10日目),事務管理,不当利得,不法行為の全体的理解を促進するための以下のような図を作成しました。
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事務管理の全体像
(権利・義務) |
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不当利得の全体像
(一般規定・類型論) |
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不法行為の全体像
(要件・類型) |
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- (HP訪問者の延べ人数:17,565人)
- 2018年5月29日(火) 曇り
- 学習院女子大学国際文化交流学部・国際コミュニケーション学科で特別講義「法学とリーダーシップ-各国のリーダーに法学部出身者が多いのはなぜか?-」(PowerPoint,PDF)について講義しました。
- (HP訪問者の延べ人数:17,585人)
- 2018年5月30日(水) 曇り一時雨
- 5月26日(土)から始めた,実家→①岡山(吉備国際大学大学院(通信制)知的財産学研究科教授会)→②京都(末川民事法研究会),③大分(大分大学経済学部非常勤講師「消費者と法(第7回・差止請求)」)→④東京(学習院女子大学特別講義「法学とリーダーシップ-各国のリーダーに法学部出身者が多いのはなぜか?-」(PowerPoint,PDF))という強行スケジュールをこなして,4日ぶりに実家に帰ります。
- 加賀山茂『“Do for others”の民法学-事務管理・不当利得・不法行為』信山社(2018)の執筆を続けます(第12日目)。第1章(事務管理)の執筆を行っています(第11日目)。
- 上記の執筆と並行して,新幹線の中で,「他者への貢献“Do for others”」の全体像うを示す以下のような図を作成しました。
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他者への貢献“Do for others”に関する金・銀・銅ルール |
- (HP訪問者の延べ人数:17,610人)
- 2018年5月31日(木) 曇りのち晴れ
- 加賀山茂『“Do for others”の民法学-事務管理・不当利得・不法行為』信山社(2018)の執筆を続けます(第13日目)。第1章(事務管理)の執筆を行っています(第12日目)。
- この作業と並行して,事務管理の全体像を簡略化して,分かりやすい図に改訂しました。 そして,本書の目次(アウトライン)を以下のように作成しました。
- 加賀山 茂 『他者への貢献 “Do for others” の民法学 -事務管理・不当利得・不法行為-』信山社(2018)
- はしがき
- はじめに
- 1.“Do for others”の精神
- 2.民法上の“Do for others”の一例(民法697条)
- 3.本書のねらい
- 序章 民法における他者への貢献“Do for others”のルール
- 第1節 “Do for others”のための三つのルール
- 1.適合性原則(黄金律:Golden Rule)
- 2.一般的禁止原則(白銀律:Silver Rule)
- 3.利得の帰属原則(唐金律:Bronze Rule)
- 第2節 黄金律・白銀律・唐金律の相互関係と適用順位
- 第3節 法的思考方法の必要性-土俵上での女性による救護活動を通じて-
- 第1章 事務管理
- 第1節 事務管理 総論
- 第2節 事務管理 の種類
- 1.通常事務管理(民法697条)
- 2.緊急事務管理(民法698条)
- 第3節 管理者の義務(本人の権利)
- 1.(開始)通知義務(民法699条)
- 2.管理継続義務(民法700条)
- 3.引渡し物・権利の移付義務(民法701条による民法646条の準用)
- 4.(経過・顛末)報告義務(民法701条による民法645条の準用)
- 5.利益相反行為の禁止(民法701条による民法647条の準用)
- 第4節 管理者の権利(本人の義務)
- 1.費用償還請求権(民法702条1項)
- 2.免責請求権(民法702条2項)
- 3.本人の意思に反する事務管理の場合の法律関係(民法702条3項)
- 第5節 事務管理の対第三者関係(直接訴権)(民法702条の2の新設の提案)
- 第2章 不当利得
- 第1節 不当利得の位置づけと機能
- 第2節 一般不当利得
- 1.一般不当利得の原則(善意不当利得)(民法703条)
- 2.一般不当利得の拡張(悪意の不当利得)(民法704条)
- 第3節 給付不当利得,支出不当利得
- 1.給付利得の制限(広義の非債弁済)
- (A) 非債弁済(民法705条)
- (B) 期限前弁済(民法706条)
- (C) 原状回復義務(民法121条の2)
- 2.給付利得の否定と支出利得の肯定:他人の債務の錯誤弁済(民法707条)
- 3.給付利得の否定から肯定への復帰:不法原因給付(民法708条)
- 4.占有不当利得
- (A) 善意の占有不当利得(民法189条)
- (B) 悪意の占有不当利得(民法190条)
- 第4節 侵害不当利得
- 1.占有者による侵害利得(民法191条)
- 2.添付による侵害利得(民法248条)
- 第5節 三者間不当利得(民法708条の2の新設の提案)
- 第3章 不法行為
- 第1節 一般(単独加害者)不法行為
- 1.一般不法行為の成立要件と効果
- (A) 一般不法行為の位置づけ(民法709条)
- (B) 一般不法行為の要件(民法709条)
- (C) 一般不法行為の効果(民法722条1項)
- 2.慰謝料請求の特則(民法710条)
- 3.近親者に固有の慰謝料請求権(民法711条)
- 4.一般不法行為の障害要件としての責任無能力
- (A) 未成年者の責任能力(民法712条)
- (B) 責任無能力(民法713条)
- 第2節 特別不法行為
- 1.責任無能力者の監督者責任(民法714条)
- 2.使用者責任(民法715条)
- 3.注文者責任(民法716条)
- 4.土地工作物責任(民法717条)
- 4.土地工作物責任(民法717条)
- 6.動物占有者責任(民法718条)
- 第3節 一般(複数加害者)不法行為:共同不法行為(民法719条)
- 第4節 一般不法行為の障害要件(続き)
- 1.責任阻却事由(民法720条)
- 2.胎児の権利能力と法定条件(民法721条)
- 3.いわゆる「過失相殺」としての因果関係の分割(民法722条2項)
- 第5節 不法行為の効果の拡大
- 1.原状回復請求(民法723条)
- 2.差止請求(民法709条の2の新設の提案)
- 第6節 不法行為に基づく請求権の消滅時効(民法724条,724条の2)
- 終章 結論
- おわりに
- 参考文献
- 索引
- (HP訪問者の延べ人数:17,630人)
- 2018年6月1日(金) 晴れ
- 加賀山茂『他者への貢献“Do for others”の民法学-事務管理・不当利得・不法行為』信山社(2018)の執筆を続けます(第14日目)。第1章(事務管理)の執筆を行っています(第13日目)。
- この作業と並行して,事務管理の全体像を簡略化して,さらに分かりやすい図に改訂しました。 そして,本書の特色等を以下のようにまとめました。
- 本書の特色
- 1.他者への貢献“Do for others”の精神による「事務管理・不法行為・不当利得」の統一的把握
- 「契約外」の債権・債務関係として消極的に位置づけられていた「事務管理・不法行為・不当利得」を「他者への貢献“Do for others”の債権・債務関係」として,統一的に再構成している。
- 2.他者への貢献“Do for others”と「事務管理・不法行為・不当利得」の相互関係の明確化
- 「事務管理・不法行為・不当利得」の相互関係を,「黄金律(Golden Rule)」,「白銀律(Silver Rule)」,「唐金率(Bronze
Rule)」として,分かりやすく表現している。
- 3.「事務管理,不当利得,不法行為」に関するすべての条文の立法理由を明確化
- 「事務管理,不当利得,不法行為」のすべての条文について,立法に至る経緯を『法典調査会・民法議事速記録』の議論のポイントを要約・再現し,それとともに『民法立法理由書』の全文について,見出しを付加し,ひらかな表記にし,かつ,難読漢字にルビを付することによって読みやすく再現している。
- 4.民法(契約外債権・債務関係)改正案の提示
- 「事務管理,不当利得,不法行為」の立法の経緯を現代的視点から再評価し,立法の過誤・改善点を明らかにすることを通じて,独自の民法(契約外関係債権・債務)改正案(加賀山私案)を提示している。
- 5.総ての条文解説を統一見出しの下で記述
- 本文のすべて条文に関する解説を以下の順序に従って統一的に記述している。
- 設例 と問題
- 現行条文と参考条文の比較
- 立法に至る経緯
- 立法理由
- 民法改正案(加賀山私案)
- 設例の問題の解答例
- 本書の用途
- 1.ボランティア活動家の必携書
- ボランティア精神としての「他者への貢献“Do for others”」の法律上の根拠をわかりやすく体系的に解説するわが国で最初の本。
- 2.ゼミの報告準備のための必読書
- 民法の契約外債権・債務関係(事務管理,不当利得,不法行為)のすべての条文の立法の経緯,立法理由,現代社会における問題点,改正案に至るまで,網羅的に解説しており,ゼミ等で与えられる課題について,現代的視点から解決策を提言する能力を養うことができる。
- 本書を読まずに,適用されるべき条文の立法の経緯を知らないままゼミの報告をすると,恥をかくことになる。ゼミの報告の前には,本書で,条文の立法の経緯,立法理由を確認し,現代における改正の動向を押さえておくことが必要であろう。
- 本書の効用
- 1.トップダウン的思考をマスターできる
- 民法の学習順序(条文からスタート,立法の経緯,立法趣旨,その後の学説・判例の動向,現代社会に対応するための改正案の提言)がわかるようになる。
- 2.ボトムアップ式思考をマスターできる
- ゼミでの報告準備(設例に対して,立法の経緯,立法の趣旨,通説・判例の問題点,今後の方向性を知る)ことを通じて,様々な具体例からスタートして,立法理由・立法の問題点を踏まえた上で,客観性に裏付けられた自分の見解を的確に述べることができようになる。
- 3.説得力のある文章の書き方がマスターできる
- 当事者双方,専門家,世論のいずれをも納得させることを目標と決める。
- アイラック(IRAC)に従って,この順序で文章を作成する。
- 議論の部分は,トゥールミンの図式に基づいて,必ず反対意見に応接する。
- (HP訪問者の延べ人数:17,645人)
- 2018年6月2日(土) 晴れ
- 加賀山茂『他者への貢献“Do for others”の民法学-事務管理・不当利得・不法行為-』信山社(2018)の執筆を続けます(第15日目)。第1章(事務管理)の執筆を行っています(第14日目)。
- この作業と並行して,本書の「基盤となる原理(黄金律,白銀律,唐金律)」と「事務管理,不法行為,不当利得」との関係について執筆を行い,かつ,対応するすべての条文に関する解説の統一的な記述方法(①設例,②現行条文と参照条文の比較,③立法に至る経緯,④立法理由,⑤民法(契約外債権・債務)改正案(加賀山私案))を確定し,全体のアウトライン(目次)を一昨日に完成させました。
- このアウトラインに従って,すでに,各条文に対応する①,②,④,⑤の執筆を完成することができたので,残りの③について,事務管理の途中(民法7000条)から不法行為の最後の条文に至るまで,この項目だけに特化して執筆を続けていくことにします。
- 現在のペースで進むと,6月末には,本書の第1バージョン(本にすると約250頁)の執筆が完成します。これで出版するか,それとも,④と⑤との間に,立法以後の「学説・判例の動向」を挿入すべきかどうかについて出版社と相談し,もしも,それが必要であるとすると,新・旧の『注釈民法』を中心とした複数文献の読み込みが必要となるため,本書の第2バージョン(本にすると300頁)の執筆の完成は,7月末~8月中旬になると思われます。いずれにしても,10月1日の出版を目標に執筆を続けます。
- 東京に来られた日本語の堪能なドイツ人が,わざわざ,日出町の私の実家を訪ねてこられるので,アルバイトの方に運転をお願いして,客人の希望する大分の名所の見学を行う予定でした。
- ところが,最初に訪れた日出町観光協会(二の丸館)で,私の名前が「加賀山」だとわかると,隠れキリシタンを救った郷土の名士「加賀山半左衛門」について,係りの方が資料を探してくれたり,郷土史の専門家に電話をつないでくれて,その方と直接電話で話をしたりと,観光予定の客人をも巻き込んで,大いに盛り上がりました。
- さらに,係りの人から連絡を受けた以前観光案内をしていた方が,観光案内所にはなくなっていた「加賀山半左衛門」の貴重な資料をわざわざ持ってきてくださいました。その後,その方も加わって,12時を回っても話が尽きず,食事の時間となったため,近くのレストランで「城下かれい」いただいて,結局,観光には出かけませんでした。
- その代わり,客人を私の実家に案内し,お茶と自家製パンをお出しし, 書斎からの絶景を堪能していただいて,客人を最寄り駅までお送りしました。
- (HP訪問者の延べ人数:17,655人)
- 2018年6月3日(日) 晴れ時々曇り
- 加賀山茂『他者への貢献“Do for others”の民法学-事務管理・不当利得・不法行為-』信山社(2018)の執筆を続けます(第16日目)。第1章(事務管理)の執筆を行っています(第15日目)。
- 大分大学経済学部での第7回の講義「被害救済の実効性の確保(消費者団体訴訟,医療問題と消費者)」で回収した学生たちの「コミュニケーション・ペーパー」の添削をパソコン上で行い,さらに,添削を手書きをして,返却に備えます。
- (HP訪問者の延べ人数:17,670人)
- 2018年6月4日(月) 晴れ
- 大分大学経済学部で,「消費者と法」の第8回目の講義を行いました。
- 第8回目の講義のテーマは,シラバスで予告しているように,「情報化の進展(インターネットと消費者,銀行取引・電子決済と消費者)」であり,以下の順序で講義を行いました。
- 第1に,前回の「被害救済の実効性の確保(消費者団体訴訟,医療問題と消費者)」の講義の際に学生たちから回収して添削した「コミュニケーションペーパー」を返却し,復習を兼ねた講評を行いました。
- 第2に,前前回に問題を提起し,前回においても引き続き話題となった「差止請求」を,レジュメに従って概観しました。 また,前回話題となった,「権利外観法理(Rechtsscheintheorie)」について復習しました。
- 第3に,今回のテーマである「情報化の進展(インターネットと消費者,銀行取引・電子決済と消費者)」の問題について,消費者特別法(電子消費者契約法,電子商取引法,および,資金決済法等)の概観,並びに,民法(債権関係)改正によって,はじめて民法に規定されることになった「払込み(振込み)」の法的性質等について,「補助教材」に即して検討しました。
- (HP訪問者の延べ人数:17,685人)
- 2018年6月5日(火) 曇り後雨 (梅雨を感じさせるかなり強い雨)
- 加賀山茂『他者への貢献“Do for others”の民法学-事務管理・不当利得・不法行為-』信山社(2018)の執筆を続けます(第17日目)。第1章(事務管理)の執筆を行っています(第16日目)。
- 大分大学経済学部での第8回「「情報化の進展(インターネットと消費者,銀行取引・電子決済と消費者)」の講義で回収した学生たちの「コミュニケーション・ペーパー」の添削をパソコン上で行い,その後,それをコミュニケーション・ペーパー手書きをして,返却に備えました。
- 日出ロータリークラブの例会に出席し,ニコボックス(Smile Box)で,6月2日にイギリスのロータリークラブからこられた客人にらいただいた「四つのテスト(①真実かどうか,②みんなに公平か,③好意と友情を深めるか,④みんなのためになるか)」の「解説」のコピーを示しながら,その内容を紹介しました。そして,「四つのテスト」は,実は,4つのF(good Faith, Fair trade, Fiduciary relation, WelFare)にまとめることができるのではないかとの感想を述べました。
- (HP訪問者の延べ人数:17,700人)
- 2018年6月6日(水) 一日中雨
- 加賀山茂『他者への貢献“Do for others”の民法学-事務管理・不当利得・不法行為-』信山社(2018)の執筆を続けます(第18日目)。第1章(事務管理)の執筆を行っています(第17日目)。
- (HP訪問者の延べ人数:17,730人)
- 2018年6月7日(木) 曇り後晴れ(梅雨の合間の晴れ)
- 加賀山茂『他者への貢献“Do for others”の民法学-事務管理・不当利得・不法行為-』信山社(2018)の執筆を続けます(第19日目)。第1章(事務管理)の執筆を行っています(第18日目)。
- 『法と経営研究』の編集会議,『他者への貢献“Do for others”の民法学』の出版に関する出版社との打ち合わせ会議,および,明治学院大学消費者法研究会に出席するため,東京に出張します。
- (HP訪問者の延べ人数:17,750人)
- 2018年6月8日(金) 晴れ後曇り
- 加賀山茂『他者への貢献“Do for others”の民法学-事務管理・不当利得・不法行為-』信山社(2018)の執筆を続けます(第20日目)。第1章(事務管理)の執筆を行っています(第19日目)。
執筆した分量がWordで,150ページを越えました。
- 白金高輪の喫茶店で,イギリスのロータリアンと懇談しました。 桐光学園中学校・高等学校編『高校生と考える希望のための教科書-高等学園 大学訪問授業-』を読むよう勧められました。寺子屋ひじ塾の発展に寄与しそうな本のようなので,大分に帰ったら読むことにします。
- 歯科医で毎月行っている歯のクリーニングをしてもらいました。また,数年前にインプラントした2本の奥歯の骨がやせ細り,歯茎の内部が化膿していたので,歯茎と切開して膿を除去してもらいました。
- 『法と経営研究』の編集会議を私学会館アルカディアで開催しました。 第2号に向けて,投稿論文の申込みが4本になったことが分かりました。順調な発展が期待できます。
- (HP訪問者の延べ人数:17,780人)
- 2018年6月9日(土) 曇り後晴れ
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他者への貢献“Do for others”のルールと
「事務管理・不法行為・不当利得」との対応関係 |
加賀山茂『他者への貢献“Do for others”の民法学-事務管理・不当利得・不法行為-』の執筆した部分(Wordで150頁)を出版社に持ち込んで,今後の執筆方針について,編集者と議論しました。
- その結果,同一テーマの下で,①教科書,②ブックレット,③モノグラフィーという3冊の本を出版するという結論に達し,その執筆スケジュールを以下のように確定しました。
- 現在の執筆をそのまま進め,さらに,統一項目に「6.設例の解答のヒントと解答例」という新たな項目を追加し,「契約外の債権・債務関係」の教科書として,加賀山茂『事務管理・不当利得・不法行為-他者への貢献“Do for others”の民法学-』信山社(250頁)を6月末までに書き上げる。
- 現在執筆中の教科書の内容を易しく・分かりやすく解説したブックレットとして,加賀山茂『“Do for others”の法の精神』信山社(50頁未満)を7月末までに執筆する。
- さらに,「4の2.学説・判例の動向」を追加したモノグラフィーとして,加賀山茂『事務管理・不法行為・不当利得(法律学の森)』信山社(400頁)を10月末までに執筆する。
- 明治学院大学消費者法研究会に参加して,議論を盛り上げました。
- 報告:「民法761条〔夫婦の日常家事債務〕の果たしている機能から導かれる同条廃止論」
- ドイツ法における民法典第1357条(日本民法761条に該当)の廃止論を紹介するとともに,日常家事債務の規定を維持しているヨーロッパ各国(オーストリア,スイス,フランス)の現状を踏まえた上で,民法761条の廃止論に組するべきだとする報告です。
- 私の立場は,問題点があれば,まずは,改正論を展開することが大切である。その上で,現行法の体系の中で,その規定が,他の規定によってによってカバーされることが明らかになった場合に,はじめて廃止論に踏み切るべきだというものです。したがって,その立場から,反論を展開し,議論を盛り上げました。
- その議論の中で,消費者法の専門家からは,わが国では,妻は夫名義で消費者契約を締結することが多く,代理関係が複雑になっていることが指摘されました。また,日常家事債務の連帯連帯債務の根拠は,代理理論では説明がつかない。なぜなら,代理人にも効果が生じることを認めなければ,連帯債務とはならないからということも明確となりました。さらに,婦夫財産の共有とパラレルに考えられている婦夫債務の共同責任として連帯債務を構成するのであれば,婦夫財産の組合的性質にも考察を広げるべきではないかなど,今後の研究課題への展望にも議論が及び,会員同士の活発な議論が展開されました。
- 研究会の終了後,都合の付く会員4名で,品川駅に行き,イタリアンレストランで食事を楽しみました。
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- 2018年6月10日(日) 曇り後雨
- 3日間にわたる東京出張の目的(『法と経営研究』第2号の編集会議,『他者への貢献“Do for others”の民法学』の出版に向けた執筆スケジュールの確定,消費者法研究会での議論の盛り上げ)をすべて果たして,大分の実家に帰ります。
- 新幹線の中で,加賀山茂『他者への貢献“Do for others”の民法学-事務管理・不当利得・不法行為-』信山社(2018)の執筆を続けます(第21日目)。第1章(事務管理)の執筆を行います(第20日目)。
- (HP訪問者の延べ人数:17,815人)
- 2018年6月11日(月) 激しい雨 後曇り
- 加賀山茂『他者への貢献“Do for others”の民法学-事務管理・不当利得・不法行為-』信山社(2018)の執筆を続けています(第22日目)。
- 第1章(事務管理)の執筆を行ってます(第21日目)。明日で,第1章(事務管理)の本文の執筆を完成させます。そして,序章,第1章のまとめを終えてから,第2章(不当利得)の執筆を開始します。
- 大分大学経済学部で,「消費者と法」の第9回目の講義を行いました。
- 第9回目の講義のテーマは,シラバスで予告しているように,「国際化の進展(国際化と消費者)」であり,以下の順序で講義を行いましたす。
- 第1に,前回の「情報化の進展(インターネットと消費者,銀行取引・電子決済と消費者)」の講義の際に学生たちから回収して添削した「コミュニケーションペーパー」を返却し,復習を兼ねた講評を行いました。
- 第2に,前前回に問題を提起し,前回においても引き続き話題となった「消費者契約法10条の衝撃」を,レジュメに従って復習しました。 また,前回話題となった,「権利外観法理(Rechtsscheintheorie)」,および,銀行振込みについて復習しました。
- 第3に,今回のテーマである「国際化の進展(国際化と消費者)」の問題について,消費者特別法(電子消費者契約法,製造物責任法,国際私法(法の適用に関する通則法4条以下))について,「補助教材」に即して検討しました。
- (HP訪問者の延べ人数:17,835人)
- 2018年6月12日(火) 晴れ
- 加賀山茂『事務管理・不当利得・不法行為-他者への貢献“Do for others”の民法学-』信山社(2018)の執筆を続けています(第23日目)。
- 第1章(事務管理)の執筆の残されていた個所を埋めました。
- 日出ロータリークラブの例会に出席して,前回の卓話「大分の方言について」で参照されており,1週間お借りした本『豊後日出藩方言考』をお返しし,読後感を含めたコメントをしました。
- (HP訪問者の延べ人数:17,855人)
- 2018年6月13 日(水) 晴れ
- 加賀山茂『事務管理・不当利得・不法行為-他者への貢献“Do for others”の民法学-』信山社(2018)の執筆を続けています(第24日目)。
- 第1章(事務管理)の問題に通し番号を振り,第2章(不当利得)の執筆を開始するつもりでしたが,設例の問題に「解答のヒントと解答例」を付す前提として,事務管理・不当利得・不法行為のすべての問題について,通し番号を付ける作業を先行させました。
- 通し番号をつけてみると,現在の段階で,問題の数がすでに89問になっていることがわかりました。そこで,不当利得以降の執筆の過程で問題数を調整し,全体で100問(事務管理30問,不当利得30問,不法行為40問)にすることを目標に執筆を継続することにしました。
- (HP訪問者の延べ人数:17,855人)
- 2018年6月14日(木) 晴れ後曇り,夜に雨
- 加賀山茂『事務管理・不当利得・不法行為-他者への貢献“Do for others”の民法学-』信山社(2018)の執筆を続けています(第25日目)。
- 序章について,女性が土俵で緊急治療を行った事件を取り上げて,“Do for others”のルールと事務管理を中心とした法律家の思考方法についての記述を補いました。
- また,事務管理・不法行為・不当利得の関係について,事例に適用する順序を中心に解説を補いました。
- 寺子屋ひじ塾の国語,韓語のアシスタントを勤めたいという方と日出町の図書館で打ち合わせを行いました。ただし,実際の開塾は,数年後になりそうです。
- (HP訪問者の延べ人数:17,890人)
- 2018年6月15日(金) 雨のち晴れ
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実家の庭を駆け回るウリ坊たち |
加賀山茂『事務管理・不当利得・不法行為-他者への貢献“Do for others”の民法学-』信山社(2018)の執筆を続けています(第26日目)。
- 序章および第1章(事務管理)の補足・調整を終えた後,第2章(不当利得)の執筆を開始するつもりでしたが,事務管理の補足を行っているうちに,設例の解答を執筆することを先行させる方が良いのではないかと思い立ち,事務管理の設例の問題(Q1~Q30)に対する解答を執筆することにしました(第1日目:A1~A9
)。
- 昼間の庭にイノシシの親と子(ウリ坊5~6匹)が現れ,夏ミカンの落ちたのを食べていました。とっさに,親イノシシの後を追うウリ坊の行進を写真に撮ることができました。
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- 2018年6月16日(土) 曇り後晴
- 加賀山茂『事務管理・不当利得・不法行為-他者への貢献“Do for others”の民法学-』信山社(2018)の執筆を続けています(第27日目)。
- 第2章(不当利得)の執筆を開始する前に,第1章(事務管理)の設例の問題に対する解答を執筆しています(第2日目:A10~20)。
- 猪が出入りしていた庭の境界の網の破れた箇所を修復し,出入りができないようにしました。
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- 2018年6月17日(日) 晴れ後曇り
- 加賀山茂『事務管理・不当利得・不法行為-他者への貢献“Do for others”の民法学-』信山社(2018)の執筆を続けています(第28日目)。
- 第1章(事務管理)の設例の問題に対する解答を執筆しています(第3日目:A21~A30)。
- 設例の問題の解答(A1~A30)をすべて執筆することができたため,これで,第1章(事務管理)の執筆を完了しました。
- 明日から,いよいよ第2章(不当利得)の執筆を開始します。
- (HP訪問者の延べ人数:17,940人)
- 2018年6月18日(月) 曇り一時雨
- 加賀山茂『事務管理・不当利得・不法行為-他者への貢献“Do for others”の民法学-』信山社(2018)の執筆を続けています(第29日目)。
- 第2章(不当利得)の執筆を開始します(第1日目:Q&A31(不当利得の「受け皿」とか「箱庭」的性質とは何か?))。
- 大分大学経済学部で,「消費者と法」の第10回目の講義を行いました。
- 第10回目の講義のテーマは,シラバスで予告しているように,「高齢化・格差社会化の問題点(社会保障法と消費者法,多重債務問題)」であり,以下の順序で講義を行いました。
- 第1に,前回の「国際化の進展(国際化と消費者)」の講義の際に学生たちから回収して添削した「コミュニケーションペーパー」を返却し,復習を兼ねた講評を行いました。
- 第2に,前回話題となった「国際化の意味」について,補足のレジュメに従って復習しました。
- 第3に,今回のテーマである「高齢化・格差社会化の問題点(社会保障法と消費者法,多重債務問題)」の問題について,「補助教材」に即して検討しました。
- (HP訪問者の延べ人数:17,950人)
- 2018年6月19日(火) 雨(梅雨らしく,一日中しかも一時は激しく降り続く雨でした)
- 加賀山茂『事務管理・不当利得・不法行為-他者への貢献“Do for others”の民法学-』信山社(2018)の執筆を続けています(第30日目)。
- 第2章(不当利得)の執筆を続けています(第2日目:Q&A32(不当利得返還請求権の範囲の原則と例外の違いとは?))。
- 日出ロータリークラブの例会に出席しました。 今回は,いつものホテル&リゾーツ別府湾ではなく,持ち回りの事業所である,みらい信金日出支店での開催でした。
- (HP訪問者の延べ人数:17,970人)
- 2018年6月20日(水) 雨
- 加賀山茂『事務管理・不当利得・不法行為-他者への貢献“Do for others”の民法学-』信山社(2018)の執筆を続けています(第31日目)。
- 第2章(不当利得)の執筆を続けています(第3日目:Q&A32(不当利得返還請求権の範囲の原則と例外の違いとは?(その2)))。
- 東京に出かけて,2週間前の6月8日(金)に受けた歯茎の切開手術の後処理(抜糸)と,取れた奥歯の詰め物を再接着してもらいました。
- ついでに,QBハウスに寄って,丸刈り以後何もしていなかった。髪を整えてもらいました。
- (HP訪問者の延べ人数:17,985人)
- 2018年6月21日(木) 曇り 後晴れ(夏至)
- 加賀山茂『事務管理・不当利得・不法行為-他者への貢献“Do for others”の民法学-』信山社(2018)の執筆を続けています(第32日目)。
- 第2章(不当利得)の執筆を続けています(第4日目:Q&A32(不当利得返還請求権の範囲の原則と例外の違いとは?(その3)))。
- 2週間前の6月8日(金)に受けた歯茎の切開手術の後処理(抜糸)を終え,大分に帰ります。
- 新幹線の中で,第115回法典調査会の議事において,民法703条(原案713条)の返還義務の範囲が,「現存する利益の限度」から「受けたる利益に限度」へと修正されて議決されたのを不満とする起草委員たちが議長を通じて,総裁の許可を取り付け,第116回法典調査会において,民法704条の「受けたる利益」と矛盾が生じないように,しかも,もともとの原案の不都合(民法121条との矛盾)をも除去しようと,「現存する」の「現」の一字を削除して,「存する利益の限度」へと何とか持っていく過程における白熱した議論を熟読しました。
- 前回の議決を覆せねばならないとの意気込みで,起草委員の穂積陳重を援護しようと立ち上がった同じく起草委員の一人である梅謙次郎が,「私はいつも少し饒舌りすぎる方でありますので,波瀾を静めておくという時には私は黙っておる方が良いと思って黙っておりましたが」,と前置きしながらも,活字になった議事速記録(商事法務版)で二段組の4頁にわたって([法典調査会・民法議事速記録五(1984)189-193頁])延々と饒舌り続けているのには,苦笑を禁じえませんでした。
- もっとも,この議論を通じて,以下の3つの「利得(利益)」概念が明確となったのは,大きな収穫だったように思います。
- 受けた利益…不当利得の成立時点で受益者に発生した利益(民法704条の用語法)
- 存する利益…不当利得の成立時から返還時までの期間を通じて,受益者がその間に享受した利益(民法703条の用語法)
←「(返還までに)享受した利益」と修正する方が分かりやすいと,私は考えています。
- 現に受けている利益…不当利得の返還時点で受益者に残っている利益(受益者を特に保護するための民法32条2項,121条(改正法121条の2第2項),191条,462条,702条3項等の用語法)
- (HP訪問者の延べ人数:18,010人)
- 2018年6月22日(金) 晴れ
- 大分大学経済学部での第10回「高齢化・格差社会化の問題点(社会保障法と消費者法,多重債務問題)」の講義で回収した学生たちの「コミュニケーション・ペーパー」をパソコンに入力し,添削を行いました。
- 7月末(7月28日)に経営実務法学会で,最近の「相続法改正の動向」について報告することになったため,現行条文と改正条文を比較する作業を開始しました(第1日目)。
- 梅雨期間中の貴重な晴れ間だったので,買物帰りに,久しぶりに日出のカラオケ店に寄りました。NHKのドキュメンタリー番組「プロフェッショナル仕事の流儀」の主題歌となっているスガシカオ「Progress」を持ち歌といえる(歌詞を暗記して,画面を見ずに主旋律なしの伴奏だけで歌える)レベルにまで高めることができました。
- (HP訪問者の延べ人数:18,030人)
- 2018年6月23 日(土) 雨
- 大分大学経済学部での第10回「高齢化・格差社会化の問題点(社会保障法と消費者法,多重債務問題)」の講義で回収した学生たちの「コミュニケーション・ペーパー」について,パソコ上で行った添削を手書きをして,返却に備えました。
- 7月末(7月28日)に経営実務法学会で報告する予定の「相続法改正の動向」について,現行条文と改正条文を比較する作業を続けています(第2日目)。
相続法の改正法を盛り込み,漢数字をアラビア数字に変換し,条文本文中に引用されている条文にも見出しを補充し(Textデータ),さらに,改正部分に下線を引いたデータ(Word)を完成させました。
- (HP訪問者の延べ人数:18,045人)
- 2018年6月24 日(日) 晴れ
- 末川民事研究会6月例会に出席して,議論を盛り上げるため,京都に出張します。
- 第1報告:主債務者が中小企業者の実体を有しないと判明した場合における信用保証協会の錯誤(最一判平28・12・19判時2327号21頁,判タ1434号52頁,金判1508号28頁・1513号48頁,金法2066号68頁)
- 今回の報告の中心テーマは,「表示された動機の錯誤は,常に要素の錯誤となるか?」という問題なのですが,問題が生じている背景には,「信用保証協会を保証人として特別にを保護すべきか」という問題が隠されています。
- そこで,私は,錯誤論が一段落した時点で,信用保証協会の保証は,これまで,保護されるべき,債務者から委託を受けた保証契約と考えられてきたが,その実質は,債権者である銀行から担保のために債権を譲り受けた債権者と考えるべきであり,保証人としての保護は必要がないと考えるべきでないかとの問題を提起して,議論を盛り上げました。
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信用保証協会の保証は,有償であり,
実質的には,担保のために行う
債権売買(ファクタリング)である。
銀行は,協会に対して,民法569条
1項の担保責任を負うのではないか? |
信用保証協会の保証は,有償であり,
実は,銀行との間で締結される
有償の併存的債務引受である。
したがって,信用保証協会を保証人として
保護する必要はないのでは? |
- 議論を通じて,フロアからは,上の右の図のように,信用保証協会が行っている有償の保証は,確かに典型的な保証契約ではないので,むしろ,債務引受と考えるべきではないのかとの意見も飛び出して,議論が大いに盛り上がりました。
- 第2報告:結婚式場解約金条項の消費者契約法9条1号該当性について(最二決平27・9・2(http://kccn.jp/mousiire-kekonsiki.html))
- 詳細な判例分析の後に,平均的損害とは何かについて,議論が盛り上がりました。
- 私は,時期を3つに区別し,それぞれの段階ごとに以下のような区別をすべきだと考えました。
- 第1期は,結婚式の具体的なプランが決まる3か月以前であって,まだ,予約の段階であり,申込金は,予約手付と位置付ける。その上で,手付金の額は,ブラックショールズ式に基づく通常の金額か,手付の相場としての1割を平均的手付金額と考えて,それ以上の手付金額は無効とする。
- 第2期は,結婚式の3か月前以降,結婚式までの間の期間であり,この間は,事業者によるサービス契約の履行がない時期なので,すべてのサービス契約について,後払いを規定している民法の規定を尊重し,損害賠償額の予定は,平均的な実損(逸失利益は報酬の前払いとして認めない)のみが認められるというのが,消費者契約法9条にいう,「平均的損害」の意味であると考える。
- 第3期は,事業者による履行が開始される履行期以降の段階であり,通常の債務不履行における損害賠償額の予定が問題となるが,サービス契約における報酬はあくまで後払いが原則であり,事業者の履行が終わるまでは,実損以外の賠償は認められないと考えるべきである。
- サービス契約について,民法が総ての契約類型において,後払いとしているのは, サービス提供者によるモラル・ハザードを防止するためです。この任意規定に反して,消費者を一方的に害する報酬の前払特約とか,損害賠償額に逸失利益(サービスを全く提供しないのに報酬を請求するという悪質な前払特約)を含める契約は,すべて,消費者契約法10条によって無効となるというのが,私の議論の背景にあります。
- 研究会の終了後,第2報告の報告者の慰労懇親会を都合の付く4名で行いました。
- 懇親会の参加者からは,本日の報告について,コメントが述べられたほか,改正民法に関して,錯誤が無効から取消しに変わった点ばかりでなく,瑕疵担保責任が契約不適合責任に変わったため,改正民法の講義では苦労しているとの話が披露されたので,改正民法に関する一貫した説明の仕方のコツを伝授して差し上げました。
- 加賀山茂『事務管理・不当利得・不法行為-他者への貢献“Do for others”の民法学-』信山社(2018)の執筆を続けています(第33日目)。
- 第2章(不当利得)の執筆を続けています(第5日目:Q&A33(受益者悪意で,利益が現存しない場合の返還すべき利益とはか?)。
- (HP訪問者の延べ人数:18,060人)
- 2018年6月25日(月) 晴れ
- 末川民事法研究会の議論を終えて,大分に帰り,そのまま,大分大学経済学部で「消費者と法」の第11回目の講義を行いました。
- 第11回目の講義のテーマは,シラバスで予告しているように,「民法(民法と消費者法,民法改正と消費者法)」であり,以下の順序で講義を行いました。
- 第1に,前回の「高齢化・格差社会化の問題点(社会保障法と消費者法,多重債務問題)」の講義の際に学生たちから回収して添削した「コミュニケーションペーパー」を返却し,復習を兼ねた講評を行いました。
- 第2に,前回話題となった「契約解除の統一要件」について,補足のレジュメに従って復習しました。
- 第3に,今回のテーマである「民法(民法と消費者法,民法改正と消費者法)」の問題について,「補助教材」に即して検討しました。
- (HP訪問者の延べ人数:18,075人)
- 2018年6月26日(火) 晴れ後曇り時々雨 後晴れ
- 加賀山茂『事務管理・不当利得・不法行為-他者への貢献“Do for others”の民法学-』信山社(2018)の執筆を続けています(第34日目)。
- 第2章(不当利得)の執筆を続けています(第6日目:Q&A34(受益者悪意の場合の不当利得返還請求権の性質は不法行為か?)。
- 日出ロータリークラブの現役員慰労会および新入会員歓迎会に出席しました。
- (HP訪問者の延べ人数:18,095人)
- 2018年6月27日(水) 晴れ
- 加賀山茂『他者への貢献“Do for others”の法の精神-』信山社ブックレット(2018)の執筆を開始しました(第1日目)。
- 加賀山茂『事務管理・不当利得・不法行為-他者への貢献“Do for others”の民法学-』信山社(2018)の全体像が見えてきて,事務管理・不当利得・不法行為を一元的に説明できる原理が発見できたと確信できるようになり,そのため,一般市民に優しく説明できる方法が見つかったからです。もちろん,先行している書物の執筆も並行して行います。現在のところ,二つの書物の執筆の同時完成予定を7月末に設定しています。
- 日出市役所に出向いて,町・県民税の第1期分89,800円を支払い,第2期,第3期,第4期の支払を金融機関からの引き落としにしてもらうことにしました。
- 一昨年度は,確かに収入が1千万円を超えていたので,昨年度の町・県民税が100万円を超えても驚かなかったのですが,昨年度は,給与所得が名古屋大学の非常勤講師分だけで,印税もなく,あとは年金収入(月額にして22万余円)しかないと安心していただけに,町・県民税が意外に高額(34万余円)であることに驚きました。
- 今年度からは,新規の給与収入が加わるため,来年度の町・県民税は倍増することが予想されます。したがって,今後は,“Do for others”として,食費,本代よりも気前よく使っている交際費を少しばかり押さえる必要がありそうです。
- (HP訪問者の延べ人数:18,110人)
- 2018年6月28日(木) 曇り時々晴れ
- 加賀山茂『事務管理・不当利得・不法行為-他者への貢献“Do for others”の民法学-』信山社(2018)の執筆を続けています(第35日目)。
- 事務管理,不当利得,不法行為の相互関係をヴェン図を使って表現してみました。 これまでは,不当利得がパイプ役となって,事務管理,不法行為に補正が行われていると考えていたのですが,この相関関係図を作成してみて,むしろ,事務管理によって,不当利得,不法行為に補正(変質)が行われているのではないかとの仮説が生じました。
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事務管理は,不当利得より出でて,不当利得よりも影響力強し。 |
- 加賀山茂『他者への貢献“Do for others”の法の精神-』信山社ブックレット(2018)の執筆を続けています(第2日目)。
- 上記の図が描けたことによって,事務管理,不当利得,不法行為の殻を破り,条文を活かしながらも,条文の編別とか見出しとかに捕らわれない自由で分かりやすい記述ができるようになったように思います。
- (HP訪問者の延べ人数:18,125人)
- 2018年6月29日(金) 曇り 一時雷雨
- 加賀山茂『他者への貢献“Do for others”の法の精神-』信山社ブックレット(2018)の執筆を続けています(第3日目)。
- (HP訪問者の延べ人数:18,145人)
- 2018年6月30日(土) 雨
- 加賀山茂『他者への貢献“Do for others”の法の精神-』信山社ブックレット(2018)の執筆を続けています(第4日目)。
- (HP訪問者の延べ人数:18,165人)
- 2018年7月1日(日) 晴れたり曇ったり一時雨
- 加賀山茂『他者への貢献“Do for others”の法の精神-』信山社ブックレット(2018)の執筆を続けています(第5日目)。
- 大分大学経済学部での第11回「民法(民法と消費者法,民法改正と消費者法))」の講義で回収した学生たちの「コミュニケーション・ペーパー」について,パソコ上で行った添削を手書きをして,返却に備えました。
- (HP訪問者の延べ人数:18,175人)
- 2018年7月2日(月) 晴れ後曇 一時雨
- 加賀山茂『他者への貢献“Do for others”の法の精神-』信山社ブックレット(2018)の執筆を続けています(第6日目)。
- 大分大学経済学部で「消費者と法」の第12回目の講義を行いました。
- 第12回目の講義のテーマは,シラバスで予告しているように,「製造物責任法(製造物責任と消費者法,取締規定と消費者法)」であり,以下の順序で講義を行いました。
- 第1に,前回の「民法(民法と消費者法,民法改正と消費者法)」の講義の際に学生たちから回収して添削した「コミュニケーションペーパー」を返却し,復習を兼ねた講評を行いました。
- 第2に,前回話題となった「契約解除の統一要件」,および,一般不法行為の要件について,補足のレジュメ,よび,本来のレジュメに従って復習しました。
- 第3に,今回のテーマである「民法(民法と消費者法,民法改正と消費者法)」の問題について,「補助教材」に即して検討しました。
- (HP訪問者の延べ人数:18,181人)
- 2018年7月3日(火) 雨 (台風7号の影響でかなり強い風雨)
- 加賀山茂『他者への貢献“Do for others”の法の精神-』信山社ブックレット(2018)の執筆を続けています(第7日目)。
- 日出ロータリークラブの例会(今回が年度初め)に出席しました。 日出ロータリークラブは,大分県の第3グループ(6団体)に属しているのですが,湯布院を除く4つのロータリークラブ:別府RC,別府北RC,別府東RC,別府中央RC)それぞれの会長とに幹事がゲストとして出席されたので,いつもよりも規模の大きい例会でした。
- (HP訪問者の延べ人数:18,205人)
- 2018年7月4日(水) 雨 のち晴れ
- 加賀山茂『他者への貢献“Do for others”の法の精神-』信山社ブックレット(2018)の執筆を続けています(第8日目)。
- 加賀山茂『他者への貢献“Do for others”の法の精神-』信山社ブックレット(2018)の第1ヴァージョン(A4版で50頁相当)の執筆を一応完成させました。
- 第1ヴァージョン目次は以下の通りです(ただし,第5章は,項目を追加して第2ヴァージョンとし,量の少ない第2章を1章の第3節として,4章構成にしたのを第3ヴァジョンとしました)。
- はじめに-土俵上での女性の救護活動を考える
- 第1章 他者への貢献“Do for others”の意義 と実践
- 第1節 人間は社会的動物であり,助け合う心をもって生まれてくる
- 第2節 自己実現と他者への貢献の相互関係
- 第3節 他者への貢献n“Do for others”の実践
- 1.他者の意思の尊重
- 2.他者の利益の尊重
- 3.他者への貢献“Do for others”の行動指針
- 第2章 他者への貢献“Do for others”のルール
- 第1節 黄金律(Golden Rule)-事務管理
- 第2節 白銀律(Silver Rule)-不法行為
- 第3節 唐金律(Bronze Rule)-不当利得
- 第3章 事務管理,不法行為,不当利得の相互関係
- 第1節 事務管理と不法行為との関係
- 1.事務管理の原則
- 2.管理者の逸脱を裏から制御する不法行為
- 3.必要事務管理における例外としての不法行為責任の軽減
- 4.本人の管理者に対する義務
- 第2節 不法行為と不当利得との関係
- 1.不法行為の原則
- 2.善意の占有者の不法行為における責任の軽減
- 3.善意の占有者の不法行為責任と不当利得との関係
- 4.善意の占有者の不法行為責任と事務管理との関係
- 第3節 不当利得と事務管理との関係
- 1.不当利得の原則
- 2.返還請求権の範囲に関する三つの区別
- 3.事務管理の規定に残る不当利得の影響
- 4.不当利得に残る事務管理の影響
- 第4章 他者への貢献“Do for others”に関する法教育の課題と展望
- 第1節 法教育・学習方法の改善案
- 1.二つのタイプの法教育・学習法と問題点
- 2.事例に条文を適用できる能力を養うための条文の具体的な学習方法
- 3.条文の理解は編別にはこだわらず,全体における位置づけを大切に
- 第2節 民法条文の構造の統一化案
- 1.民法の条文が市民にとってわかりにくい原因
- 2.条文構造の統一化の試み
- 3.制度間の相互関係の明示の必要性
- 第3節 民法(契約外の債権・債務関係)改正案
- 1.事務管理に関する民法改正案(加賀山私案)
- 2.不当利得に関する民法改正案(加賀山私案)
- 3.不法行為に関する民法改正案(加賀山私案)
- おわりに
- 参考文献
- (HP訪問者の延べ人数:18,22人)
- 2018年7月5日(木) 雨
- 加賀山茂『他者への貢献“Do for others”の法の精神-』信山社ブックレット(2018)の執筆を続けています(第9日目)。
- ブックレットの執筆がひとまず完成したのですが,熱い思いで執筆した作品を,第三者的な視点で冷静に見直すことにました。そして,余計な部分は削除し,不十分な点を補充し,納得いくものになってから,中断していた教科書,すなわち,加賀山茂『事務管理・不当利得・不法行為-他者への貢献“Do
for others”の民法学-』信山社(2018)の執筆を再開します。
- ブックレットの記述が不十分であった最後の第5章を全面的に書き直しました。
- (HP訪問者の延べ人数:18,245人)
- 2018年7月6 日(金) 雨
- 加賀山茂『他者への貢献“Do for others”の法の精神-』信山社ブックレット(2018)の執筆を続けています(第10日目)。
- 参考文献のうち,本文と関係のないものを削除し,読み上げソフトを使って全文を読み上げさせながら,第三者的な視点目で,不十分な部分を補充しました。
- (HP訪問者の延べ人数:18,265人)
- 2018年7月7 日(土) 雨 後曇り
- 加賀山茂『他者への貢献“Do for others”の法の精神-』信山社ブックレット(2018)の執筆を続けています(第11日目)。
- 悪意の不当利得と事務管理との関係について,自己のために他人の事務を管理するという,「非真正事務管理(unechte
Geschäftsführung(ドイツ民法687条))」の説明を追加しました。
- ドイツ民法687条1項の「善意」で自己のために他人の事務を管理する場合,および,ドイツ民法687条2項の「悪意」で自己のために他人の事務を管理する場合のうち,わが国では,同条第2項だけについて,それを「準事務管理」と呼んで,事務管理の内部で検討しています。
- しかし,事務管理と不当利得とを峻別し,かつ,自己のために他人の事務を管理する場合について,明文の規定を持たないわが国において,これを「準」事務管理を呼ぶのは用語法としても問題があります。
- この問題は,わが国においては,事務管理ではなく,「悪意の不当利得」の問題として位置づけた上で,悪意の不当利得の法的性質について,事務管理との関係を丁寧に議論をするのがよいと,私は考えています。
- 加賀山茂『事務管理・不当利得・不法行為-他者への貢献“Do for others”の民法学-』信山社(2018)の執筆を続けています(第36日目)。
- 第2章(不当利得)の執筆を続けています(第7日目:Q&A35,36(非債弁済の要件(他人の債務の錯誤弁済との違いは?),非債弁済の効果は贈与か?)。
- (HP訪問者の延べ人数:18,285人)
- 2018年7月8日(日) 晴れ後雨のち晴れ
- 加賀山茂『事務管理・不当利得・不法行為-他者への貢献“Do for others”の民法学-』信山社(2018)の執筆を続けています(第37日目)。
- 第2章(不当利得)の執筆を続けています(第8日目:Q&A37,38(期限前弁済は非債弁済なのか?,どこが不当利得なのか?))。
- (HP訪問者の延べ人数:18,305人)
- 2018年7月9日(月) 晴れ (大分県も梅雨明け)
- 加賀山茂『事務管理・不当利得・不法行為-他者への貢献“Do for others”の民法学-』信山社(2018)の執筆を続けています(第38日目)。
- 第2章(不当利得)の執筆を続けています(第9日目:Q&A39(未成年者の契約と理契約取消しの場合の返還義務の範囲は?))。
- 大分大学経済学部で「消費者と法」の第13回目の講義を行いました。
- 第13回目の講義のテーマは,シラバスで予告しているように,「労働法(労働契約と消費者契約)」であり,以下の順序で講義を行いました。
- 第1に,前回の「造物責任法(製造物責任と消費者法,取締規定と消費者法)」の講義の際に学生たちから回収して添削した「コミュニケーションペーパー」を返却し,復習を兼ねた講評を行いました。
- 第2に,前回話題となった,一般不法行為の要件と製造物責任の要件の異同,自賠法との関係について,補足のレジュメ,よび,本来のレジュメに従って復習しました。
- 第3に,今回のテーマである「労働法(労働契約と消費者契約))」の問題について,特に,労働契約法と消費者契約法との対比に重点を置いて,「補助教材」に即して検討しました。
- (HP訪問者の延べ人数:18,320人)
- 2018年7月10日(火) 晴れ
- 加賀山茂『事務管理・不当利得・不法行為-他者への貢献“Do for others”の民法学-』信山社(2018)の執筆を続けています(第39日目)。
- 第2章(不当利得)の執筆を続けています(第10日目:Q&A40~42(他人の債務の錯誤弁済は,非債弁済か?))。
- 日出ロータリークラブの例会に出席しました。今日の会議のテーマは,「公式訪問に向けての資料『クラブ現況及び活動計画』の作成でした。
- 最後の方に職業分類があり,No.166に私が,「法学者,Legist」と分類されているのが目に入りました。法学者はJuristとされるのがふつうであり,Legistという単語は見たことがなかったので,辞書で調べてみたのですが,普通の辞書には出てきません(Oxfordの英英辞典にも出ていません)。
- インターネットで検索して(ググって)みると,Wikipediaの英語版に,Legistの解説があり,この用語は,主としてローマ法学者,教会法(カノン法)の専門家の意味で使われていることが分かりました。普通の辞書に載っていないLejistよりも,Juristにした方が良いと思い,事務局にメールで用語の変更をお願いしました。
- このように,英語と日本語との対応関係を気にしだすと,ロータリークラブの配布資料に,カタカナ英語があふれているのに気づきました。国際ロータリー(RI)のバリー・ラシン(Barry Rassin)会長の今年度のテーマは,「インスピレーションになろう」です。しかし,日本人にとって,インスピレーションとは,霊感とか,思いつきとしか理解していないので,「インスピレーションになろう」といわれても,まさか,「霊感師になろう」という意味ではないとして,せいぜいのところが,「アイデアの出る人になろう」という意味ぐらいしか思い浮かびません。
- そこで,英文を見てみると“BE THE INSPIRATION”となっています。直訳すると「鼓舞する人たれ」という意味です。インスピレーションが,ある種の人を指していることが分かったので,さらに,インターネットで検索してみると,Chicagoが歌う,“You
are The Inspiration”というラブ・ソングの歌詞の中に,以下のような節があることが分かりました。
-
You're the meaning in my life, |
|
あなたは,私の人生に意味を与え, |
you're the inspiration. |
|
私に生きる勇気を与えてくれる人。 |
You bring feeling to my life, |
|
あなたは,私の人生に感性を持たらし, |
you're the inspiration. |
|
私に生きる勇気を与えてくれる人。 |
- これで,“The inspiration”の意味が分かりました。そうすると,RI会長がとなえる“BE THE INSPIRATION”の訳は,カタカナに頼らずに,「人に勇気を与える人になろう」とか,カタカナを使うとしても,少なくとも,「インスピレーションを与える人になろう」と訳すべきだと思います。
- ロータリークラブが発行する『ロータリーの友』で訳されている「インスピレーションになろう」では,普通の日本人にとっては,「霊感になろう」という意味に取られ,「霊感溢れる人になれってことなのだろうか?」という疑念を生じさせるおそれがあります。
- ふり返ってみると,英語を日本語に訳すときに,うまい訳が見つからないと,とにかく,カタカナにしておけば無難であると考える人が多いのが現状です。そのことが,日本中に,カタカナ語が氾濫する原因なのですが,そういう風潮に染まることは,そもそも,RI会長の唱える“BE THE INSPIRATION”の精神に反しているのではないでしょうか?
- 日本のロータリアンならば,もう少しカタカナ英語を減らす努力をする必要があると思います。それが,ロータリアンとして,「自分で考える力」をつけることになり,そのことを通じて,「人に勇気を与える人」,奉仕活動を躊躇する人の「背中を押してあげる人」になると考えるからです。
- (HP訪問者の延べ人数:18,340人)
- 2018年7月11日(水) 晴れ ・猛暑
- 日出ロータリアンの一員として,おおいた夏の交通事故ゼロ運動に参加しました。
- 加賀山茂『事務管理・不当利得・不法行為-他者への貢献“Do for others”の民法学-』信山社(2018)の執筆を続けています(第40日目)。
- 第2章(不当利得)の執筆を続けています(第11日目:Q&A43~44(不法原因給付の規定は公平・正義の原則に反しないか?))。
- 月刊誌『ロータリーの友』の「声」欄に,Webサイト投稿フォーム(www.rotary-no-tomo.jp/form.php)を通じて,以下のような投稿をしてみました。
- 2018-19年のRIのテーマである“BE THE INSPIRATION”の日本語訳が,「インスピレーションになろう」となっているのに違和感を覚えます。日本語の「インスピレーション」の意味は,「霊感」とか「思い付き」なので,これでは,「霊感を感じる人になろう」と誤解されると思います。Chicagoの歌にあるように,“THE INSPIRATION”は,「勇気を与えてくれる人」なので,“BE THE INSPIRATION”の訳を,「人に勇気を与える人になろう」など,一般人に理解できる訳に変更していただけると幸いです。
- (HP訪問者の延べ人数:18,360人)
- 2018年7月12日(木) 晴れ ・猛暑
- 昨日の『ロータリーの友』への私の投稿記事について,ロータリーの友事務所編集部から,以下の返事がありました。
- ご投稿確かに拝受いたしました。ご厚志深謝いたします。畏れ入りますが,掲載欄などにつきましては,「友」投稿規定に基づき,一般社団法人ロータリーの友事務所理事会ならびに編集部にご一任の程お願い申し上げます。
- そこで,私も,以下の趣旨の返信をしておきました。
- 今年度のRIのテーマの日本語訳の問題点を指摘したので,影響は甚大だろうと思います。したがって,掲載不可(ボツ)になることは覚悟の上です。しかし,非常に重要な今年度のテーマについて,原語の "BE THE INSPIRATION" で理解している世界のロータリアンと日本のロータリアンの理解が異なることを放置すべきではないと考え,新米会員にもかかわらず,あえて投稿した次第です。ロータリーの友事務所理事会がどのような決定を下されるのか,一人のロータリアンとして,注目したいと思います。
- 加賀山茂『事務管理・不当利得・不法行為-他者への貢献“Do for others”の民法学-』信山社(2018)の執筆を続けています(第41日目)。
- 第2章(不当利得)の執筆を続けています(第12日目:Q&A45~46(不法原因給付の規定は不法な給付の未然防止に役立つか?))。
- (HP訪問者の延べ人数:18,380人)
- 2018年7月13日(金) 晴れ ・猛暑
- 『法と経営研究』の編集会議を開催し,明治学院大学・消費者法研究会に出席するため,東京へ出張します。
- 〔法と経営研究〕第2号の目玉企画ともいえる「対談・コーポレートガバナンス(企業統治)は,日本企業の衰退(20年以上にわたる世界ランキングの慢性的降下現象含む)を救えるか?」を成功に導くため,共同編集者から,コーポレート・ガバナンス(企業統治)のイロハについて,レクチャーを受けました。そして,対談の中で,「たるんだ経営に対してガバナンスが効く」ようにするために,「法の果たす役割」についても,話題にしてもらうことにしました。
- 加賀山茂『事務管理・不当利得・不法行為-他者への貢献“Do for others”の民法学-』信山社(2018)の執筆を続けています(第42日目)。
- 第2章(不当利得)の執筆を続けています(第13日目:Q&A47~48(善意占有者は果実を取得するが,不当利得にはならないのか?))。
- (HP訪問者の延べ人数:18,400人)
- 2018年7月14日(土) 晴れ ・猛暑
- 出版社に行き,加賀山茂『他者への貢献“Do for others”の法の精神-事務管理,不当利得,不法行為の統一的な理解のために-』信山社プックレト(2018)60頁の原稿を渡し,加賀山茂『事務管理,不当利得,不法行為-他者への貢“Do
for others”の民法学-』信山社(2018)の執筆の進捗状況を報告しました。
- 明治学院大学・消費者法研究会に出席して,議論を盛り上げました。
- 第1報告:電子マネーサービスを提供する事業者に,同サービスの不正利用を防止するために登録会員員が採るべき措置について適切に約款等で規定し,それを周知する注意義務があるとした上,それを怠ったとして事業者に不法行為責任を認めた事例(東京高裁平成29年1月28日)の判例研究
- 携帯電話の置忘れは,日常茶飯事となっています(今回,私が上京した際にも,新幹線を下車する際に,斜め向かいのシートに携帯電話が置忘れられているを発見し,直ちに乗務員に通報しました)。それを拾った者による携帯電話の不正利用も増加しているとのことです。
- そこで,不正利用を未然に防止するために,電子マネー会社,および,電子マネーのチャージ機能を果たしているクレジット会社は,すでに,水道事業者が行っているように,前月分の利用状態と今月分の利用状態とに目立った差が生じている場合には,その旨の通知を顧客に行い,不正利用を防止したり,早期に発見して保険に乗せるという「システム責任」を負わすべきではないかとの意見を述べて,議論を盛り上げました。
- 第2報告:刑法における所有の保護-遺失物等横領罪の考察から-(ビットコインを客体とする所有権の成立の可能性を否定した東京地判平成27年8月5日の判例研究を含む)
- 遺失物の占有は,民法上は,「事務管理の開始」と捉えるべきだとの意見を述べて,民法(遺失物法を含む)と刑法との架け橋を行いました。
- 次に,通貨と仮想通貨との本質的同質性(偽造防止技術に支えられた個人が管理可能な価値情報)を指摘して,議論を盛り上げました。
- 銀行がブロックチェーンを利用した決済システムの導入を検討している現在において,現金とビットコインを含む仮想通貨とを区別する理論的根拠は失われつつあります。
- ビットコインに代表される仮想通貨とは,価値の帰属と移転を実現するために,公開鍵と秘密鍵の組合せによる偽造防止技術(暗号技術)と,勝手に書き換えることができなブロックチェーンによって情報の正確性を担保された管理可能な価値情報です。
- 現金に代表される通貨も,現代の観点からすれば,実は,偽造を防止するための印刷技術を駆使した管理可能な価値情報に過ぎないのです。
- そのように考えると,現金と仮想通貨を区別して,現金の窃盗罪を認めつつ,仮想通貨の窃盗罪を認めないという刑法理論にしがみつくのは,時代錯誤も甚だしいのではないでしょうか。
- 同様にして,現金を排他的な支配が可能な有体物であると考え,反対に,仮想通貨を排他的な支配可能がない無体物として物権的取り扱いを否定する上記の判例の考え方,および,民法理論は,もはや,その価値を有しないのではないでしょうか。
- (HP訪問者の延べ人数:18,420人)
- 2018年7月15日(日) 晴れ・猛暑
- 東京での2日間の日程を終えて,大分に帰ります。
- 学習院女子大学での講義後に回収して送っていただいた学生たちのレポート課題ですが,本の執筆のため,添削作業の着手が遅れていました。昨日,ブックレットの原稿を出版社に渡し,教科書の原稿締切を8月末に延期してもらったため,時間の余裕ができました。今日からレポート課題の添削を開始し,2日間で完了する予定です。
- 帰りの列車の中で12名分,帰宅後に10名分のレポート課題添削を行いました。 残り40人分については,明日添削します。
- (HP訪問者の延べ人数:18,430人)
- 2018年7月16日(月)(海の日) 晴れ・猛暑
- 学習院女子大学での講義後に回収して送っていただいた学生たちのレポート課題を添削しています。
- 午前中に15名分,午後に10名分,夜に15名分を添削し,その結果(昨日分の添削を含めて62人分のレポートの添削結果)を学習院女子大学の担当者に送付しました。
- (HP訪問者の延べ人数:18,450人)
- 2018年7月17日(火) 晴れ・猛暑
- 大分大学経済学部で「消費者と法」の第14回目の講義を行いました。
- 第14回目の講義のテーマは,シラバスで予告しているように,「刑事法(刑事法と消費者法,薬害と刑事責任)」であり,以下の順序で講義を行いました。
- 第1に,前回の「労働法(労働契約と消費者契約)雇用契約と労働契約法の対比)」の講義の際に学生たちから回収して添削した「コミュニケーションペーパー」を返却し,復習を兼ねた講評を行いました。
- 第2に,前回話題となった,連帯債務の「相互保証理論」について復習しました。
- 第3に,今回のテーマである「刑事法(刑事法と消費者法,薬害と刑事責任)」の問題について,「補助教材」に即して検討しました。
- 日出ロータリークラブの例会に出席し,今年度のRIのテーマ「インスピレーションになろう」が,Barry Rassin会長の唱える“BE THE
INSPIRATION”の意図に適合しているのかどうか,議論しました。
- (HP訪問者の延べ人数:18,460人)
- 2018年7月18日(水) 晴れ・猛暑
- 大分大学経済学部で「消費者と法」の第14回目の講義「刑事法(刑事法と消費者法,薬害と刑事責任)」で回収したコミュニケーションペーパーをパソコンに入力して,添削しました。
- 暘谷苑からの依頼を受けて,猛暑の中,父親の健康保険証を自転車で児玉病院に持参し,診療費の支払を行いました。
- 余りの暑さのため,今日は研究を中断して,休息の日としました。
- (HP訪問者の延べ人数:18,480人)
- 2018年7月19日(木) 晴れ ・猛暑
- 経営実務法学会(7月28日)で報告するため,「高齢化社会における相続法改正」というテーマでレジュメの作成を開始しました(第1日目)。
- 参考文献は,山川一陽=松嶋隆弘『相続法改正のポイントと実務への影響』日本加除出版(2018)を利用しています。
- (HP訪問者の延べ人数:18,495人)
- 2018年7月20日(金) 晴れ ・猛暑
- 日出ロータリアンの一員として,「おおいた夏の交通事故ゼロ運動」(第2回目)に参加しました。
- 経営実務法学会(7月28日)で報告するため,「高齢化社会における相続法改正」というテーマでレジュメを作成しています(第2日目)。
- 民法・相続法の改正箇所すべてに下線を引き,現行法で
削除された部分を左のように赤字に取消線を引いて示しました。
- (HP訪問者の延べ人数:18,505人)
- 2018年7月21日(土) 晴れ ・猛暑
- 経営実務法学会(7月28日)で報告するため,「高齢化社会における相続法改正」というテーマでレジュメを作成しています(第3日目)。
- 相続法の6つの改正項目のうち,第1項目(配偶者の居住権を保護するための方策)について概要をまとめました。
- 民法学研究会(21日),および,末川民事法研究会(22日)に出席するため,京都に出張します。
- 第1報告「生存内縁者の居住権」
- 今回の相続法改正の中心的課題である「配偶者の居住権」の規定を「内縁・事実婚」の配偶者にも準用できるかどうかを従来の学説,判例を丁寧に検討することを通じて,それを肯定しようとする優れた報告でした。
- 今回の相続法改正について,私は,「妻たちの怒りに恐れをなした男たちによる,見当はずれも甚だしい茶番の相続法改正 」と位置づけています。そのその理由は,以下の通りです。
- 相続法改正の契機としての妻たちの怒り
- 今回の相続法改正(2018年7月6日成立・7月13日公布)は,平成25年の最高裁大法廷決定(最大決平25・9・4民集67巻6号1320頁)が,嫡出でない子の相続分が嫡出子の2分の1であるのは違憲であると判断したため,民法900条4号ただし書き前段が削除されたことに端を発しています。
- このことによって,夫とともに妻が築き上げてきた婦夫財産から,夫の死後,わが子と同じ相続分が,妻とは無縁の子(夫の浮気相手の子)へと流出ることに対して,妻たちが怒りの声を上げたからです。
- なぜなら,そのことは,生前の話に置き換えるならば,本来,自分たちの子に与えるべき養育費を削って,浮気相手の子に同等の養育費を与えるのに等しい行為(父としては当然の行為であっても,妻にとっては背信行為)だからです。
- 妻たちの怒りをなだめるための勘違いの方策
- そこで,怒れる妻たちをなだめるために,身に覚えがある男たちが考えついたのが,夫の死後も妻の居住権を確保すること(民法新137条-1041条,新1028条-1036条),婚姻期間が20年以上の妻については,居住用の不動産の贈与・遺贈について,夫の持戻免除の意思表示を推定すること(新民法903条4項)を通じて,夫の死後の妻の権利を拡大することだったのです
- 当初は,妻の相続分の拡大を目指したのですが,さすがに,これには反対が強くて実現できなかったため,上記の権利を与えるにとどまっています。
- しかし,これは,勘違いも甚だしい,おバカな発想です。もしも,夫が自分の財産を処分するのなら,それは自由です。 しかし,婦夫財産を夫の特有財産(夫の単独所有)と考えること自体が時代錯誤(おバカな考え方)だからです。
- 婦夫の氏を同じにすべきであるとか,日常家事債務は連帯にすべきだと主張し,夫婦の一体性を唱える人々が,夫婦財産についてだけ,夫の単独所有と主張すること自体が,矛盾する行為なのです。
- 相続法の改正の前提とすべきは,婦夫財産制の見直し
- 確かに,現行民法の762条(夫婦間の財産の帰属)は,以下のように規定されており,形式上は,女男平等に見えますが,実態は,「妻」の犠牲において「夫」を保護する規定になっています。
- 第762条(婦夫間における財産の帰属)
①夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は,その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。
②夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は,その共有に属するものと推定する。
- この規定は,戦前までは,以下のように,無能力者の地位に置かれていた妻(入り婿も同じ)を保護する規定でした。
- 旧・第807条〔夫婦間における財産の帰属〕
①妻又は入夫が婚姻前より有せる財産及び婚姻中自己の名に於て得たる財産は,其特有財産とす。
②夫婦の孰れに属するか分明ならざる財産は,夫又は女戸主の財産と推定す。
- 妻を保護するためのこの規定を,現行民法は,形式的な女男平等にこだわって,「妻又は入夫」から,「夫婦の一方」と変更したために,実質的に「夫」だけを保護する規定となってしまったのです。つまり,現行民法762条は,立法の過誤によって生じた,最優先で改正すべき悪法なのです。
- 共働き世帯が専業主婦世帯よりも数を増した現代において,婦夫財産を夫の単独所有と考える人は,徐々に減少しており,意思解釈上も,居住用不動産に代表される婦夫財産について,夫の単独名義としていることは,「虚偽表示」(民法94条)として無効であり,婦夫財産は,婦夫の共有財産(組合的共有財産)と解釈すべきなのです。
- この考え方を条文の形で表現すれば,以下のようになると,私は考えています。
- 第762条(婦夫間における財産の帰属)の改正案(加賀山私案)
①婦夫財産とは,婦夫が婚姻生活を維持するために明示又は黙示に出資して形成する組合的共有財産をいう。
②婦夫の持分はそれぞれの出資の多寡にかかわらず,常に平等とする。婦夫財産について,たとえ配偶者の一方を登記名義とした場合であっても,その登記は,他方の配偶者との共有名義とみなされる。
③婦夫の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産であっても,その財産を婦夫の共用に供した場合には,初めに遡って婦夫財産となる。
④婦夫の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産であって,かつ,婦夫の共用に供しない場合には,婦夫の一方の特有財産(婦夫の一方が単独で有する財産をいう。)とし,婦夫財産から除外される。
⑤婦夫のいずれに属するか明かでない財産は,婦夫財産(組合的共有財産)と推定する。
- 相続法改正における妻の保護の規定のむなしさ
- 婦夫財産を夫の単独所有であることを前提にして,夫の死後の妻の居住権を確保したり,妻への贈与・遺贈について持戻し免除の推定をすることが無意味であることは,これまでの議論を通じて明らかになったと思います。
- 婦夫財産は,夫と妻の組合的共有財産であって,夫の死後は,共有の弾力性(民法255条)によって妻の財産となるのであって,妻の居住権はもともと確保されているし,贈与・遺贈の持戻し免除の推定規定も不要だからです。
- 以上の議論を踏まえるならば,婦夫財産の組合的共有の考え方は,事実婚(憲法婚),同性婚にも等しく適用されるべきであり,法律婚だけを優遇する必要もないことになります。
- このように考えると,相続法の改正に先立って,婦夫財産制の改正を先行させるべきだったのであり,そうすれば,妻の保護に関する規定は,不十分であって,むしろ,不要だったと思われます。婦夫財産を組合的共有と考えるならば,婦夫財産には相続の規定は全く適用さえないので,婦夫財産から除外される,婦夫の固有財産(衣服とか固有の趣味の品,別宅など)のみが相続法の対象となるため,相続法改正の必要性はほとんどなくなります。
- したがって,今回の相続法改正は,相続の効力に関して,登記の対抗要件の重要性をを明らかにした点だけが,かろうじて意味を有するのではないかと,私は考えています。
- 第2報告「相続回復請求権の消滅時効」
- フランス法,スイス法を比較の対象とした優れた報告であり,わが国の相続回復請求権の意味はほとんどないに等しいとの結論を導くものでした。
- 報告の後,私が,白板に具体例を図示することによって,議論を盛り上げました。
- (HP訪問者の延べ人数:18,520人)
- 2018年7月22日(日) 晴れ ・猛暑
- 末川民事法研究会(22日)に出席して議論を盛り上げました。
- 第1報告:判例研究「自動車売買で所有権留保の合意がされ,代金債務の保証人が販売会社に代金残額を支払った後,購入者の破産手続が開始した場合において,その開始の時点で自動車につき販売会社名義の登録がされているときは,保証人は,留保所有権を別除権として行使することができる」最一小判平成29年12月7日〔上告棄却〕
(平成29年(受)第408号自動車引渡請求事件)(裁時1689号14頁・金判1533号36頁・金法2080号6頁)
- 私は,保証人とされる信販会社は,販売会社のためにファクタリング(担保のための債権譲渡)によって融資を行っているとの自説をもっています。そこで,割賦販売における,所有権留保(割賦販売法7条)は,一般に知られた担保権(留保所有権,譲渡担保,先取特権など諸説はあるものの,担保権であるとの共通理解が存在する)であり,本件では,従たる権利として信販会社に移転しており,その対抗要件は,割賦販契約に基づく割賦代金債権の譲渡の対抗要件(通知・承諾)で足りると,黒板に事実関係図を描きながら説明し,議論を大いに盛り上げました。
- 第2報告:判例研究「貸金の支払督促による時効の中断効が当事者間で締結された保証契約に基づく保証債務履行請求権に及ぶか」(最二小判平成29・3・13裁時1671-9)
- 一審判決は,Xを貸主,Yを借主として平成6年8月18日(保証契約に書面が必要とされるに至るのは,平成16年の民法改正を待たなければならない)に作成された公正証書(債務弁済契約公正証書)について,実態は,Xが貸主,Aが借主,Yは連帯保証人であるため,効力を生ぜず,連帯保証契約の成立を認める証拠もないとして,XのYに対する請求を棄却した。
- もしも,これが平成16年の改正後の事件であれば,この判決で決まりのはずです。したがって,これに反する二審判決も,次に述べるように,それに引きずられて理論的な破綻に陥った最高裁判決も,現在においては,すでに意味を失っています。したがって,これら判決を取り上げて研究する意義は,この時点において,なぜ,二審判決のような誤った判決がなされたのか,それを正しく破棄した最高裁判決が,理論的に破綻しているのは何故なのかを分析することにのみ意義があるに過ぎない,と私は考えています。
- 二審(原審)判決は,Xを貸主,Aを借主,YをAから委託を受けた連帯保証人と認定し,貸金債権がの消滅時効が完成する前に,XがYに対して行った支払督促によって,「保証債務履行請求権」について,消滅時効の中断の効力を認めた。
- 最高裁は,原審判決を破棄し,控訴を棄却して,以下のように自判した。
- A(借主)のX(貸主)に対する貸金債務についてY(連帯保証人)がXとの間で保証契約を締結した場合において、YがXから金員を借り受けた旨が記載された公正証書が上記保証契約の締結の趣旨で作成され、上記公正証書に記載されたとおりYが金員を借り受けたとしてXがYに対して貸金の支払を求める旨の支払督促の申立てをしたとの事情があっても、上記支払督促は、上記保証契約に基づく保証債務履行請求権について消滅時効の中断の効力を生ずるものではない。
- 最高裁の判断は,二審判決を破棄した点では正しいのですが,一審判決のまっとうな事実認定に反する原審の事実認定について,これを経験則違背に基づいて変更することを自ら禁じることにしたためなのでしょうが,「保証債務履行請求権について消滅時効の中断」という,そもそも,ありえない議論に引っ張られて,理論的な破綻に陥っている,と私は考えています。その理由は,以下の通りです。
- 時効中断は,主たる債務について生じるものであり,本件のように,主たる債務についてすでに時効が中断している場合に,従たる債務とされる保証債務が独自に時効消滅することはありえません。
- なぜなら,民法457条1項は,「主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の中断は,保証人に対しても,その効力を生ずる」と規定しており,本件のように,主たる債務について時効が中断している場合に,保証人から独自の消滅時効の抗弁を主張することはできないからです。
- 主たる債務が時効中断しているのに,保証人から独自の消滅時効の主張を許すことになれば,民法457条1項は,無意味な規定となってしまいます。つまり,原審の「本件支払督促は,…保証債務履行請求権について消滅時効の中断の効力を生ずる」という判断が完璧な誤りであるのと同様に,それに引きずられて,「本件支払督促は,上記保証債務履行請求権について消滅時効の中断の効力を生じるものでない」と論じることは,結論自体は当然ですが,主たる債務に従属する「保証債務について,独自の消滅時効とその中断」を云々すること自体が,民法475条1項に反しており,原審と同様,完璧な誤りなのです。
- (HP訪問者の延べ人数:18,535人)
- 2018年7月23日(月) 曇り後晴れ・猛暑
- 京都で開催された,民法学研究会の例会,末川民事法研究会の例会での,議論を終えて,大分に帰りました。
- 大分大学経済学部で「消費者と法」の第15回目の講義を行いました。
- 第15回目の講義のテーマは,シラバスで予告しているように,「経済法(経済法と消費者法)」であり,以下の順序で講義を行いました。
- 第1に,前回の「刑事法(刑事法と消費者法,薬害と刑事責任)」の講義の際に学生たちから回収して添削した「コミュニケーションペーパー」を返却し,復習を兼ねた講評を行いました。
- 第2に,学生たちによる,プレゼンテーションを実施し,質疑応答を行いました。
- 第3に,「補助教材」に掲載済みの定期試験の予想問題について,質疑応答を行いました。
- 大分大学での講義の後,別府アサヒビールの会に出席しました。
- (HP訪問者の延べ人数:18,560人)
- 2018年7月24日(火) 晴れ・猛暑
- 7月28日(土)に開催される経営実務法学会の経営実務レポート「高齢化社会における相続法改正」で報告する資料をプリントアウトし,プレゼンテーションファイル(PowerPoint)の作成を開始しました(第1日目)。
- テーマの副題は,「妻たちの怒りに恐れをなした夫たちによる勘違いも甚だしい茶番の相続法改正」です。
- 日出ロータリークラブの例会に出席しました。
-
RI会長が提唱する今年度のテーマである"BE THE INSPIRATION"は,日本での公式訳として「インスピレーションになろう」が採用されていますが,日本語としては意味不明です。身近なロータリアンたちに「この日本語の意味が分かりますか」と聞いてみても,誰一人として意味が分かるという人はいません。
- そこで,日本語として意味不明の「インスピレーションになろう」ではなく,日出ロータリークラブの独自の翻訳として,「奉仕を勇気づける(鼓舞する)人になろう」とするように検討してみてはどうかと,会員に呼び掛けてみました。
- (HP訪問者の延べ人数:18,585人)
- 2018年7月25日(水) 晴れ・猛暑
- 経営実務法学会の経営実務レポート「高齢化社会における相続法改正」で報告するプレゼンテーションファイル(PowerPoint,PDF)の作成を続けています(第2日目)。
- (HP訪問者の延べ人数:18,605人)
- 2018年7月26日(木) 晴れ・猛暑
- 2018年7月27日(金) 晴れのち曇り・猛暑
- 2018年7月28日(土) 晴れ後曇り後雨(台風12号は,夜に三重県に上陸し,通常とは逆のルートで近畿に向かう)
- 経営実務法学会に出席し,経営実務レポート「高齢化社会における相続法改正」(PowerPoint,PDF)の報告を行うほか,以下の報告に質問・コメントをして,議論を盛り上げました。
- 研究報告
- 第1報告:住宅宿泊事業法〔民泊新法〕に関する一考察
- 住宅宿泊事業法(民泊新法)は,民泊を旅館業法で規定しているホテル,旅館,簡易宿所(ゲストハウス等)に続く,第4の宿泊施設として日本に根づかせ・育て上げる内容になっておらず,単に闇民泊を排除するための新たな規制強化を図ったに過ぎないのではないかというのが報告の趣旨でした。
- 第2報告:中国における地震災害に関する法制面の企業支援施策と中日比較
- 2008年5月12日に発生したマグニチュード8.0の四川大地震を契機として防災対策の重要性が再認識されるに至った。これに対して,1995年1月17日の阪神・淡路大震災(マグネチュード7.2),2004年10月23日の新潟県中越地震(マグニチュード6.8),2011年3月11日の東日本大震災(マグニチュード9.0),2016年4月14日の熊本地震(マグニチュード7.3)という4つの大規模地震を経験したわが国では,事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)が進んでおり,この観点から,日中の企業支援施策を比較する。その上で,防災計画,救助法政,融資ルートの確保,補修のための補助金政策補助金施策について提言するというのがこの報告の趣旨でした。
- 中国における重点施策にについて質問があり,報告者から,IPO(Initial Public Offering:新規上場株式)を中心とした融資ルートの確保であるとの回答があり,議論が盛り上がりました。
- 私は,阪神・淡路大震災→9年後→新潟県中越地震→7年後→東日本大震災→5年後→熊本地震→3年後(2019年)→?地震というように,日本で発生している大震災の発生の間隔が定期的に縮まっていることに気づき,この報告の重要性を再認識することができました。
- 第3報告:2012年公務員制度改革が国家公務員人事に及ぼした影響
- 2012年の公務員制度改革によって何が変わって何が変わらなかったのかについて,第1に,変わらなかったキャリア制度(見かけ上は廃止),キャリア官僚の学閥問題,第2に変わったものとして,人事院の権限縮小,内閣・各省庁の人事権の強化があり,公務員庁の設置によってその傾向がさらに拍車がかかるだろうというのが,この報告の趣旨です。
- 私は,民主政治の根幹を支える公文書を勝手に書き換える・廃棄するという暴挙を平気で行う公務員を産み出している現在の公務員制度を改革するためには,日本国憲法第15条1項「公務員を選定し,及びこれを罷免することは,国民固有の権利である。」に立ち返り,各省庁の公務員が公文書の廃棄や書き換え等を行った場合,すなわち,公務員が国民に対する背信行為を行った場合に,最高裁判所の裁判官の国民審査の制度を一歩進めて,各省庁の公務員のトップを国民が直接に罷免できる制度を創設することが必要ではないのかとの意見を述べて,議論を盛り上げました。
- 第4報告:法律専門家の行う証明についての一考察
- 平成29年5月から運用が開始された「法定相続情報証明制度」とくに,相続人の申請によって法務省が交付する「法定相続情報一覧図」(被相続人と相続人の氏名,生年月日,続柄等が記載された図)について,これまで,それを行政書士が「事実証明に関する書類」として作成してきたという経緯に照らして,法務省の法定相続情報証明制度を批判的に考察するというのがこの報告の趣旨です。
- フロアから,法務省が「法定相続情報証明制度」を創設し,登記官が認証文を付けて,「法定相続情報一覧図」の写しを交付することは,非難に値しないのではないかとの反論がなされる一方で,登記の促進を狙うのであれば,法務省は,まず,登録免許税を減免・廃止すべきではないのかとの意見が出され,議論が盛り上が上がりました。
- 私は,「法定相続情報一覧図」は便利であり,遺言執行者も利用できるようにすべきである。登記の促進のためには,契約とか相続とかの不動産物権変動が生じた場合に,速やかに登記をし,真正な登記制度の促進に協力した者に対して,法務省はむしろ奨励金を出すべきであり,時代錯誤の登録免許税の徴税制度は,直ちに廃止すべきであると意見を表明しました。
- 経営実務レポート
- 第5報告:高齢化社会における相続法改正(PowerPoint,PDF)
- 2018年7月6日に成立し,2018年7月13日(わずか15日前)に公布された相続法改正について,「妻たちの怒りに恐れをなした夫たちの,勘違いも甚だしい見当違いの改正」であり,法律家の悪い癖である「ごまかしのきれいごとは,もう止めよう」という観点から,今回の相続法改正について,その概要を伝えるとともに,根本的な批判を行った報告です。
- ここでいう「ごまかし」しとは,以下のことを意味しています。
- 今回の改正の出発点となったのは,平成25年最高裁大法廷判決です。この大法廷判決によって生じた不都合とは,「夫の死後,婦夫財産における妻の本来の持分が,なぜ,自分の子ではなく,夫の不倫相手の子へと流出するのか」という根本的な問題であり,このことに対して,権利が侵害されていることを敏感に感じたた妻たちが怒りの声を上げたことに,問題の本質が端的に表れています。
- 妻たちの怒りを解消する方法は,実は,相続法の改正ではありません。婦夫が築き上げた婦夫財産について,名義が夫であるという理由だけで,「夫の単独所有」を許している,諸悪の根源としての民法762条(夫婦間における財産の帰属)の改正こそが,必要不可欠なのです。
- 民法762条を改正して,共用に供されている財産は,婦夫の共有(組合的共有:合有)であるとし,夫の固有財産を共用に供していない財産に限定すれば,妻の子でない夫の不倫相手の子に夫の財産が相続されても,不倫は別として,夫の固有財産についての平等相続について,妻の怒りは生じないからです。
- 諸悪の根源である民法762条を改正しないまま,相続法の改正によって,すなわち,使用貸借や賃貸借の準用によって,「配偶者の保護」をしても問題の解決にはなりません。そもそも,「妻の本来的な共有持分について,居住権を与える」ということ自体が,とんでもない「ごまかし」なのです。
- ここでいう「きれいごと」とは,以下のことを意味しています。
- 今回の改正の出発点は,平成25年大法廷判決によって生じた,「妻たち」の怒りです。問題を起こした夫が含まれる概念としての「配偶者」の保護ではないのです。「妻」の保護なのに,「配偶者」の保護としか言えないのが,法律家の「きれいごと」です。
- 民法旧規定807条が「妻」を保護すると規定していたのを,現行民法が,「配偶者の一方」と改正したために生じた立法上の「失敗」をここでも繰り返しています。
- しかも,「配偶者」の概念には,現状では,事実婚(憲法婚)の配偶者も含まれており,現実にも,そのように使われています。それにもかかわらず,今回の相続法の改正において,事実婚(憲法婚)の配偶者は保護から除外されるとするのは,法律家の「ごまかしのきれいごと」にほかなりません。
- フロアからは,婦夫財産制を見直して,組合的合有とした場合には,今回の相続法改正で積み残された事実婚(憲法婚)の場合とか,同性婚の場合とかの問題についても,平等な解決がもたらされることになるとの意見が述べられました。
- 第6報告:相続税-小規模宅地の適用要件改正
- 小規模宅地等の特例(家なき子特例)の適用要件の厳格化の詳細についての報告でした。
- これまで許されてきた節税対策は,改正によってできなくなるという場合に,税理士としての助言の一貫性は保たれるのか,理論的にはどのような説明が可能なのかについて,議論が盛り上がりました。
- 経営実務トピックス
- 第7報告:店舗デザインの法的保護―コメダ珈琲店事件-
- ミノスケが経営するマサキ珈琲中嶋本店(和歌山市)とコメダ珈琲店和歌山県岩出の「コメダ珈琲店」の店舗外観(店舗の外装,店内構造及び内装)が,不正競争防止法2条1項1号・2号所定の特定の営業主体の出所を表示する著名又は周知商品等表示に該当しうるものとして,コメダが,当該店舗概観の使用差止めを求めたのに対して,東京地裁がコメダの主張を認めて,「マサキ珈琲」店舗の外観の差止めを認める仮処分(東京地裁平27(ヨ)22042号),および,和解に至った本案訴訟(東京地裁2平27(ワ)1299号)について紹介し,検討を行う報告でした。
- 私が和解の内容について質問したところ,報告者から,和解の内容は不明だが,その後,マサキ珈琲店は,外観と内装を改装し,誤認惹起が生じないようにして,営業を続けているとの回答を得ることができ,その後,活発な議論が行われましたました。
- 第8報告:学会創立20周に記念「日中経営実務法シンポジウム」
- 2018年9月14日に開催予定の上記シンポジウムについての説明がなされました。
- 台風の影響を考慮して,研究会を1時間早く終了しました。研究会終了後,台風の影響を受けない会員とともに懇親会に出席し,報告で話題になったトピックスについて,意見交換を行いました。その後,数人の会員とカラオケを楽しみました。
- (HP訪問者の延べ人数:18,670人)
- 2018年7月29日(日) 曇り後晴れ後雨(台風12号近畿地方から九州へ)
- 経営事務法学会の年次大会を終えて,台風を追いかけるようにして,大分に帰ります。広島県まで晴れていたのですが,山口県に入ったところで,台風に追いつき,雨になりました。
- 新幹線の中で,昨日の経営実務法学会の報告の要旨と,議論の模様,私のコメント等をまとめる作業を行いました。
- (HP訪問者の延べ人数:18,680人)
- 2018年7月30日(月) 晴れ
- 一昨日の経営実務法学会の報告の要旨と,議論の模様,私のコメント等をまとめる作業を継続しています(第2日目)。
- このことを通じて,『法と経営研究』第2号に寄稿すべき,「法律家の『ごまかしのきれいごと』に翻弄される経営実務-2018年相続法改正批判-」というテーマ(仮題)が浮かんできました。
- (HP訪問者の延べ人数:18,695人)
- 2018年7月31日(火) 曇り後晴れ 後一時雨
- 月末の恒例行事とすることにした,未整理の領収書の整理を行いました。また,一日かけて,机の上に散乱している書類をScanして,廃棄の準備を行いました。明日が燃えるゴミの収集日なので,良いタイミングです。
- 日出ロータリークラブの例会に出席しました。
- ニコボックス(Smile Box:寄付金を出して短いスピーチをするコーナー)で,①入会から無事に1か月過ぎたこと,②「インスピレーションになろう」から「奉仕を鼓舞する人になろう」へと日本語訳を変更する働きかけを開始したこと,③相続法が40年ぶりに大改正されたことを報告し,②と,③については,いつか卓話をしたいので予定に入れてほしいとのお願いをし,資料を配布・回覧しておきました。
- 日出ロータリーの事務局から,上記のニコボックス(Smile Box)の原稿を送るようメールが届いたので,すぐに返信しました。その内容は,以下の通りです。
- 入会してから無事1か月が過ぎました。
- 有難いことに,会長に毎週会場まで送迎をしていただいております。会長は,入会促進と退会防止のためだといってくださっており,恐縮しつつ,感謝しております。
- 先週の土曜日(8月28日)に,大阪の経営実務法学会で,40年ぶりの大改正がなされた「相続法」の改正の概要と問題点について報告してきました。
- 改正の骨子は,①妻の居住権の確保,②遺産分割における妻の保護,③自筆証書遺言の要件の緩和と保管制度,遺言執行者の権限拡大,④遺留分の完全債権化,⑤登記の対抗力の強化,⑥相続人以外の親族の貢献に対する特別の寄与の制度の創設の6項目です。
- その時の報告レジュメを回覧しますのでご覧ください。私のホームページにもアップしております。事業承継,融資業務にも大きくかかわる問題なので,いつか,卓話をさせていただきたいと思っております。
- 今年度のRIのテーマの日本語訳である「インスピレーションになろう」は,意味不明なので,日出ロータリーの会員の皆様の協力を得て,分かりやすい日本語訳である「奉仕を鼓舞する人になろう」と改定する活動を開始したいと思います。
- RI会長バリー・ラシン氏の提唱する今年度のテーマは,"BE THE INSPIRATION"です。この英語の意味は,直訳すると,「鼓舞する人たれ」です。ロータリアンが,他の人たちに奉仕を鼓舞する人になってほしいというのが,その真意だと思います。
- ところが,日本語の「インスピレーションになろう」という訳は,会長の真意を伝えるものとなっていないので,日本語を「奉仕を鼓舞する人になろう」と変更するように働きかけるべきではないかと思っております。そのことを文章にしてみました。私のホームページにアップしておりますので,ご覧いただけると幸いです。
- (HP訪問者の延べ人数:18,715人)
- 2018年8月1日(水) 曇り後晴れ・猛暑
- 今月の予定(私情協・法律学教育FD/ICT活用研究委員会(8月10日),名古屋大学非常勤講師(8月13日~16日,8月27日~30日))に即して,出張で利用する列車・ホテルの予約をしました。
- 日出ロータリークラブで知り合いになった印刷会社(電子印刷センター)の営業部長に教えてもらって注文していた,InDesignの教科書が届いたので,少しずつ読んで,概要を知ることに努めます。有料のソフトウェアの購入は,本を読みながら判断しようと思っています。
- 瀧野福子『In Designクリ工イター養成講座(CC2018/CC 2017対応)』マイナピ出版(2018/4/26)
- ベクトルハウス『世界一わかりやすいInDesign操作とデザインの教科書(CC/CS6対応)』技術評論社(2018/4/1)
- 森裕司『lnDesign パーフェクトブック(CC2018対応)』マイナピ出版(2018/4/2)
- (HP訪問者の延べ人数:18,730人)
- 2018年8月2日(木) 曇り後晴れ・猛暑
- 昨日のNHKの「ガッテン」で,「ニンニクの臭いを消す簡単な調理法」を学習したので,朝一番で暘谷のスーパーマーケットに出かけて,ニンニクを購入しました(人気が出て売り切れる前に購入できました)。
- 買物から帰って,すぐにニンニクを煮物に使ってみました。確かに,臭いが気にならない程度に消えることがわかったので,これから,毎日ニンニク料理を楽しむことができそうです。
- ロータリークラブの友2018年8月号の特集「会員増強の可能性」を読んで,「声」の欄に以下の投稿をしました。
- わが国で会員増強の可能性を求めるのなら,1割に満たない女性会員を増やすために,「会長・幹事のいずれかは,女性でなければならない」というルールを作ることから始めませんか。会長・幹事のいずれかが欠員というのでは,クラブは機能しませんから,女性会員の獲得が必須となり,劇的な会員増強・維持が実現するでしょう。ガバナーの紹介写真とは裏腹に,会員に女性がいないのでは,羊頭狗肉のそしりを免れないと思います。
- (HP訪問者の延べ人数:18,745人)
- 2018年8月3日(金) 晴れ・猛暑
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黄宗樂
『天公疼戇人七十三自述』
前衛出版(2018/05 |
- 台湾の黄宗樂先生から,自伝的回想録である黄宗樂『天公疼戇人 七十三自述』前衛出版(2018/05)が送られてきました。
- 書名の意味は,辞書で調べた限りでは,『天は愚直な人を愛す 73歳の自伝』だと思います。反対から言えば,「公職に就く人は愚直(バカ正直)でなければならない」という意味が含まれているのでしょう。
- 発音は,「天公 疼 戇 人」であり,書き下し文だと,「天公ハ 疼ル 二 戇人ヲ一」となるはずです。
- この本の59-63頁に私の推薦の辞「黄 宗樂先生との切磋琢磨の思い出」のうち,小見出しと私の経歴を除いた本文が掲載されています。中国語に翻訳して掲載されるものと思っていたので,日本語の文章がそのまま掲載されているのには,驚きました。
- 大分大学経済学部での講義「消費者と法」の定期試験(8月6日(月))で学生に配布する問題・解答用紙を作成し,人数分をプリントアウトしました。
- 受講生の平常点,プレゼン点を記入した採点表をExcelで作成し,答案回収後に,すぐに採点できる態勢を整えました。
- (HP訪問者の延べ人数:18,770人)
- 2018年8月4日(土) 晴れ・猛暑
- InDesignCCを購入しました。
- CCとは,Creative Cloudの略で,Webサイトからダウンロードして利用する形式が採られており,InDesignCC利用し続けるためには,年間で,28,252円を支払う必要があります。
- しかし,InDesignなら,印刷所にそのまま入稿できる版下を作成することができるため,本を安く出版することができます。しかも,出版した本の元データを自分で管理できるため,改訂版の出版も容易ですし,電子書籍用フォーマットである「EPUB」への書き出しにも対応しているため,将来性も有望です。
- 今年は,3冊の本を出版する予定ですので,年間使用料の28,252円は,高くないと判断しました。
- InDesignCCの使い方をマスターするため,本格的な自学自習を開始します。
- 自習用の教科書として,ベクトルハウス『世界一わかりやすいInDesign操作とデザインの教科書(CC/CS6対応)』技術評論社(2018/4/1)
を使うことにしました。
- この教科書(以下,[ベクトルハウス・InDesign操作とデザインの教科書(2018)]という)の15のレッスンを毎日実践し,それぞれのレッスンの終わりにある練習問題で腕試しをすることにします。
- 妹婦夫が実家に泊まりに来たので,今回の相続法改正について,特に,配偶者の居住権の制度によって,「妻の保護は実現できるのか」について議論しました。
- (HP訪問者の延べ人数:18,790人)
- 2018年8月5日(日) 晴れ・猛暑
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ベクトルハウス
『世界一わかりやすいInDesign
操作とデザインの教科書
(CC/CS6対応)』
技術評論社(2018/4/1) |
[ベクトルハウス・InDesign操作とデザインの教科書(2018)]のレッスン1~2を行います。
- Lesson01:Indesignの基本
- Lesson02:ドキュメントを作ってみよう
- 妹婦夫と母と私で,父の見舞いに行きました。 父は,この猛暑の中でも夏バテをしておらず,安心しました。
- 親戚の千鳥さんの息子さんから電話があり,相続の後始末についての相談を受けました。昨日の妹との議論でも,薄々とは感じていたのですが,高齢化社会が進むにつれて,相続の法律問題がますます増加するであろうことを実感しました。
- 中舎寛樹『債権法』日本評論社(2018)を出版社経由で贈っていただいたので,著者にお礼の留守電を入れておいたところ,折り返し電話があり,著者に私の大分での生活・研究等の近況を報告しました。
- (HP訪問者の延べ人数:18,805人)
- 2018年8月6日(月) 晴れ・猛暑
- [ベクトルハウス・InDesign操作とデザインの教科書(2018)]のレッスン3(ドキュメント設定)を行います(第1日目)。
- 昨日のレッスン1~2がスムーズに進んだので気を良くしていたのですが,レッスン3は,急に難しくなり,私は,あちこちで躓いています。
- その原因は,レッスン3は,レッスン1~2のような手取り足取りの実習ではなく,やってみればわかるだろうくらいの断片的な説明の箇所が多く,しかも,丁寧な説明が省略されている箇所(例えば,49頁には,[ページ]パネルメニューの開き方の説明がないため,そのメニュー開けるようになるまでに大変な時間を費やしてしまう)が多いためだと思います。
- しかし,レッスン3には,私が最も重要と考えている「マスターページを作成する」というレッスンが含まれているので,ここは無理に急がずに,2~3日かけてゆっくりとマスターすることにします。
- 大分大学経済学部での講義「消費者と法」の定期試験の試験監督を行いました。
- 定期試験の終了後,夕方から,大分大学経済学部の有志の先生方が,「消費者と法」の非常勤講師の慰労会を開催してくださいました。
- (HP訪問者の延べ人数:18,825人)
- 2018年8月7日(火) 晴れたり雲ったり・猛暑
- [ベクトルハウス・InDesign操作とデザインの教科書(2018)]のレッスン3(ドキュメント設定)を行います(第2日目)。
- 信山社から,私が先日送付したブックレットの執筆原稿の第1校が,異例の速さで送られてきました。
- 書名が,加賀山茂『求められる法教育とは何か-他者への貢献“Do for others”』(事務管理,不当利得,不法行為を考える)信山社(2018/8)と変更されているのにも驚きました。
- タイトルの範囲が,ここまで広がるとは予想していなかったので,以下の趣旨の「はしがき」を急いで追加執筆しました。
- 法教育の中心に他者への貢献“Do for others”の精神を置くのはなぜか
- ←「一人では生きていけない」人間が生来持つ最も崇高な精神だから。
- 内容を「契約外債権・債務」とするのは何故か
- ←当事者の合意がない場合に,誰もが納得できる紛争解決案を提言できるようになれば,合意がある場合の解決はさらに容易だから。
- (HP訪問者の延べ人数:18,845人)
- 2018年8月8日(水) 晴れ・猛暑
- 加賀山茂『求められる法教育とは何か-他者への貢献“Do for others”』(事務管理,不当利得,不法行為を考える)信山社(2018/8)の「はしがき」の執筆と出版社による原稿校正が終了したので,第1校の校正を開始します(第1日目)
- RI2720地区ガバナーの公式訪問を受けて湯布院で開催される日出ロータリークラブと湯布院ロータリークラブとの合同例会・合同懇親会に出席するため,湯布院に出かけます。
- 湯布院で一泊した後,明日は自宅に帰らず,直接,台風13号が接近中の東京に出張します。私情協の「英語・法律・政治・国際関係コミュニケーション関係学グループの合同会議」に出席するためです。
- (HP訪問者の延べ人数:18,865人)
- 2018年8月9日(木) 晴れ後曇り 後晴れ
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加賀山 茂
『求められる法教育とは何か
他者への貢献“Do for others”
事務管理,不当利得,不法行為を考える』
信山社(2018/8)(出版予定)100頁 |
私情協の「英語・法律・政治・国際関係コミュニケーション関係学グループの合同会議」に出席するため,5時半に日出ロータリークラブの会員の方の車に乗せてもらって湯布院の旅館を出発し,別府駅からソニックに乗り,小倉から新幹線に乗り換えて,東京に向かいました。
- 新幹線の中で,加賀山茂『求められる法教育とは何か-他者への貢献“Do for others”』(事務管理,不当利得,不法行為を考える)信山社(2018/8)の校正(第2日目)と,事項索引項目の選定を行いました。
- 台風13号は,東京を直撃せずに太平洋上を北上したため,東京に到着したときは,すでに晴れていました。
- ホテルに寄って,荷物を軽くし,歯科医院で,歯のクリーニングをしてもらいました。
- 出版社に赴き,上記のブックレット『法教育とは何か』の校正刷りを届け,今後,様々な分野で「求められる」シリーズとなることが予定されるブックレットの表紙見本(右の写真)を見せてもらいました。
- (HP訪問者の延べ人数:18,890人)
- 2018年8月10日(金) 晴れ
- 私情協の「英語・法律・政治・国際関係コミュニケーション関係学グループの合同会議」に出席しました。
- 12月22日(土)午後2時から開催される全国対話集会における各グループの話題提供について,以下のような共通の報告項目を設けることを提案しました。
- 各分野の教育目標・学修到達目標
- 例えば,法律分野であれば,条文からスタートして判例・事例を説明できる能力の育成を前提として,それとは反対に,生の事実からスタートして,適用すべき複数の条文または法原理の候補をを発見し,厳格な議論を重ねることを通じて,誰もが納得する結論を提案できる能力を育成することが,最終目標となる。
- 平均的な教員の教授方法,平均的な学生の学修意識,学修実態
- 例えば,法律分野における平均的な教員の授業方法(腐敗の構造その1)
- 条文からスタートして,判例・事例を説明できる能力の育成にとどまっており,生の事実からスタートして,適用されるべき条文や法原理を発見する能力の育成を行うことを断念している(時間が足りない,方法論が確立していない,学生のレベルが低すぎるなど,言い訳は山ほどある)。
- 例えば,法律分野における平均的な学生の学習意識・学修実態(腐敗の構造その2)
- 平均的な学生は,楽して単位を修得することしか考えていない。予習もせずに講義に臨んでおり,教員が質問しても答えられない。最後の定期試験に合格して単位が修得できれば,それでよいと考えている。
定期試験における平均的な教員の甘い採点が学生の腐敗を助長している。
- よくできる学生であっても,条文とそれに対応する判例を学修するにとどまっている。したがって,生の事実に対して,適用すべき条文を発見して,解決案を提言できる学生は,ほとんど存在しない。存在するとしても,特定分野のゼミに所属する一部の学生に限定される。
- 教育・学習方法を改善するために必要な方法論
- 例えば,法律分野であれば,条文の意味を理解する際に,典型的な事例を設定し,その事例に即して条文の要件と効果を理解するという方法を採用する。
- 逆に,生の事実を前にして,適用されるべき複数の条文を発見する訓練を行い,それぞれの候補が選択さえた場合,どのような結論が導き出されるのかを体験させるとともに,原告・被告の立場に立った学生同士の議論を通じて,問題解決能力を育成する。
- 目的を達成するためのICTを活用した授業の提案・実践報告
- 例えば,法律分野であれば,昨年提案した「法政策法政策フォーラム型授業モデル」の改善案と実践のプロセスと成果を報告する。
- 今後の展望と残された課題
- 例えば,法律分野であれば,教員も学生もルーティンワークに埋没しており,先に述べたように,両者ともに目に余る腐敗が進行している。このままでは,AIの発展に伴い,教員も学生もその多くが職を失いかねない。
- 腐敗を発酵に変えるための雑菌の除去と有用菌の注入が求められている。すなわち,教員組織改革,入試から卒業認定までの学部改革を含む大胆な制度改革,および,革命的な教育・学習方法論の開発と実践が必要である。
- (HP訪問者の延べ人数:18,905人)
- 2018年8月11日(土) 晴れ (“Do for others”の実践等いいこと尽くめの日)
- 私情協の「英語・法律・政治・国際関係コミュニケーション関係学グループの合同会議」の仕事を終え,大分への帰路につきました。
- 帰りの新幹線の指定席に座ろうとしたところ,他の客とのバッティングが発生しました。私の指定券をよく見てみると,帰りの新幹線の指定券,ソニックの指定券が,どれも行きの日付と同じとなっているという,とんでもない間違いを犯していることに気づきました。
- 8月2日(木)(ニンニク騒ぎの日)に大神駅で乗車券と指定券を購入(私情協の負担となるため,節約してグリーン席が利用できない格安切符を購入)した際に,駅のパソコンがクラッシュし,途中から発券手続をやり直したことを思い出しました。その際に,ミスが生じたようです。
- 発券後,指定券の時間だけを確認し,日付の確認確認を怠った私のミスでもあるのですが,大変な苦境に立たされました。というのも,この日は,お盆の帰省ラッシュのピークと重なっており,指定席もすべて満席,自由席も120%の混雑ぶりで,座る席はどこにも残っていなかったからです。
- 結局,東京から広島までの4時間の間,新幹線の通路で立ちっぱなしという苦行に耐えることになりました。その苦行の間,「これは,願ってもない筋トレの機会に恵まれたのだ」と気持ちを切り替え,苦行を楽しむことにしました。東京から広島まで,一切,座ることなく立ち続けましたが,背筋を伸ばし,疲れを感じることがなかったので,普段の筋トレの成果が発揮できたと,自己満足に浸ることができました(広島から小倉までの45分間は,たまたま空いた自由席に座ることができ,良い休憩になりました)。
- 日豊本線のソニック35号でも,当然に席はなく,途中の中津駅で目の前の席が空いたので座ったところ,近くに,座れなくて途方に暮れている高齢者(おばあさん)を発見したため,すぐに席を譲り,別府までまた立ち続けるという他者への貢献“Do for others”を体験することもできました。「他者への貢献ができたのだから,きっと良いことがあるだとう」と,ここでも気持ちを切り替えたのは,もちろんのことです。
- 定年退職後,悠々自適で,かつ,幸運に恵まれた人生を送っていますが,今日ほど自分の体力の充実ぶりを実感でき,同時に“Do for others”も実践できたという幸せ(自己満足?)をかみしめた日はなかったように思います(8/11記念日)。
- (HP訪問者の延べ人数:18,915人)
- 2018年8月12日(日) 雨のち晴れ後一時雨
- 8月13日(月)から4日間にわたって,名古屋大学の留学生に契約法の講義(英語)を行うため,名古屋に出張します。
- 小倉駅の構内にある本屋さんで,池上彰『知らないでは済まされない自衛隊の本当の実力』SB新書(2018)が目に留まったので,購入し,新幹線の中で読み始め,一気に読み終えました。8月21日(火),日出ロータークラブに別府駐屯司令が外来卓話に来られるので,良い予習になりました。
- (HP訪問者の延べ人数:18,925人)
- 2018年8月13日(月) 晴れ後一時雨
- 名古屋大学大学院の留学生に対してContract(契約法)の講義を英語で行います(第1日目)。
- 受講生が少ないのは,事前に通知を受けて知っていましたが,マンツーマンの講義になるとは思っていませんでした。マンツーマンの講義なので,最初から,その留学生の関心事を尋ねた上で,質問を受け付け,即座に体系的な解説を行ってから,通常の講義を以下の順序で開始しました。
- オリエンテーション
- 日本民法の制定の歴史
- 契約法の統一化に関する国際的動向
- 最初の2日間は,名古屋大学も,お盆休みでいろいろな施設が使えなくなっているため,大学院の教員が心配して,講義室まで来てくださいました。白板用の水性マジックなくて不自由していたため,それを調達してくださいました。また,留学生が調達してくれた油性マジックの跡が消えずに困っていたのも洗剤を使って消していただき,とても助かりました。
- 講義終了後,その教員と研究室で他害の近況を含めて懇談し,近くのレストラン(グランピアット)に移動し,夕食をとりながら,民法学界の動向等について懇談を続けました。
- (HP訪問者の延べ人数:18,935人)
- 2018年8月14日(火) 晴れ
- 名古屋大学大学院の留学生に対してContract(契約法)の講義を英語で行います(第2日目)。
- 契約の流れ(その1):契約の成立 ・不成立
- 契約の流れ(その2):契約の有効・無効
- 契約の流れ(その3):契約の不成立・無効の場合の後始末の問題:不当利得・事務管理の法理
- 一人だった受講生が二人に増え,安心しました。さらに,名古屋大学の大学院で博士号を取得した留学生OBが講義を傍聴してくれました。
- (HP訪問者の延べ人数:18,950人)
- 2018年8月15日(水) 雨 敗戦記念日(無謀な戦争の責任を問い直すとともに,原爆を投下した米軍による日本の占領状態が今なお続いていることを自覚すべき日)
- 名古屋大学大学院の留学生に対してContract(契約法)の講義を英語で行いました(第3日目)。
- 契約の流れ(その4):契約の種類・性質と契約の履行
- 契約の流れ(その5):契約の不履行の種類とその分類
- 契約の流れ(その6):契約の不履行の場合の救済(その1):解除
- ボランティア精神に溢れる高齢者の科学的な行動が,幼い子の命を救いました。
- 山口県周防大島町で,8月12日から行方がわからなくなっていた2歳の藤本理稀くんを,わが大分県日出町から駆け付けた尾畠春夫(78)さんが,幼児の行動心理の経験知に基づいて,8月15日に,捜索開始からわずか30~40分で発見するという快挙をなし遂げました。
- このような人を私たちロータリアンは,奉仕を鼓舞する人(the inspiration)として賞賛し,見習うべきなのです。
- (HP訪問者の延べ人数:18,970人)
- 2018年8月16日(木) 晴れ後雨
- 名古屋大学大学院の留学生に対してContract(契約法)の講義を英語で行いました(第4日目)。
- 契約の流れ(その7):契約の不履行の場合の救済(その2):損害賠償,強制履行
- 不当利得,事務管理 :以下のドイツにおける有名な事件について,事務管理の視点から,受講生と徹底的な議論を行いました。
- 3人がロット当選を狙って役割を分担をし,当選した場合の山分けを企図していたところ,役割分担者の一人(事務管理者)が重過失を犯したために,みすみす当選を逃がした場合における,他の二人(本人)による損害賠償請求事件
- 妻(事務管理者)が夫の意思に反してピルを飲み忘れたために妊娠し,子を出産した場合の夫(本人)の養育費相当額の損害賠償請求事件
- 講義のまとめ
- 名古屋大学大学院での契約法の講義を終えて,大分に帰りました。
- 帰りの新幹線の中で,加賀山茂『求められる法教育とは何か-他者への貢献“Do for others”の視点から事務管理,不当利得,不法行為を考える-』信山社(2018/8)の第二校の校正をしました。
- (HP訪問者の延べ人数:18,985人)
- 2018年8月17日(金) 曇り後晴れ
- 加賀山茂『求められる法教育とは何か-他者への貢献“Do for others”の視点から事務管理,不当利得,不法行為を考える-』信山社(2018/8)の第二校の校正を完成させて出版社に送りました。
- (HP訪問者の延べ人数:19,010人)
- 2018年8月18日(土) 晴れ 気圧が西高東低となり,秋の気配が感じられます。
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集英社インターナショナル
(2016/5) |
来週の火曜日に,日出ロータリークラブに別府駐屯地司令が外来卓話に来られるので,予習を兼ねて,安保条約,日米地位協定を参照しながら,矢部宏治『日本はなぜ,「戦争ができる国」になったのか』集英社インターナショナル(2016)を読み始めました。(第1日目)
- よく行くお花屋さんがバーベキューに招待してくださったので参加します。
- 山口県周防大島町で,8月12日から行方がわからなくなっていた2歳の男の子(藤本理稀くん)を8月15日に捜索開始からわずか30~40分で発見したボランティアの男性(尾畠春夫さん(78))が,私が現在住んでいる大分県日出町の人だったので,バーベキューでは,地元の人たちの率直な感想(もともとは,別府の人。頑固者だが,今回の件は町の誇り)を聴くことができました。
- バーベキューに参加された方が,たまたま自衛隊関係の方だったので,上記の外来卓話の予習を兼ねて,懇談をしました。
- (HP訪問者の延べ人数:19,025人)
- 2018年8月19日(日) 曇り後晴れ
- 矢部宏治『日本はなぜ,「戦争ができる国」になったのか』集英社インターナショナル(2016)を読んでいます。(第2日目)
- 東京で知り合った太陽光発電等の研究・開発をしている方が訪ねて来られたので,ソラージュで食事をしながら,話を伺いました。 その後,国東半島の周辺をドライブしました。
- (HP訪問者の延べ人数:19,040人)
- 2018年8月20日(月) 晴れ後曇り
- 矢部宏治『日本はなぜ,「戦争ができる国」になったのか』集英社インターナショナル(2016)を読んでいます。(第3日目)
- 大学の教員募集に応募する人のために,必要な推薦状を書いて差し上げました。定年で現職を退いているため,義務ではないのですが,これも他者への貢献“Do
for others”(民法697条)の実践のひとつです。
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加賀山茂『求められる法教育とは何か
-他者への貢献“Do for others”の視点から
事務管理,不当利得,不法行為を考える-』
信山社(2018/8) |
加賀山茂『求められる法教育とは何か-他者への貢献“Do for others”の視点から事務管理,不当利得,不法行為を考える-』信山社(2018/8)の表紙と裏表紙の校正をしました。
- (HP訪問者の延べ人数:19,060人)
- 2018年8月21日(火) 曇り後晴れ後雨 (台風19号の影響)
- 矢部宏治『日本はなぜ,「戦争ができる国」になったのか』集英社インターナショナル(2016)を読み終わりました。(第4日目)
- 吉備国際大学大学院(通信制)の学生の修士論文の中間発表の報告レジュメについて,教務課らから,提出の締め切り前にも指導をして欲しいとの電話連絡を受けたため,掲示板システムを使って,以下のような論文指導を開始しました。
- 論文で取り上げるべき論点が多岐にわたっているため,それらを,①主体,②客体,③侵害に対する権利の発生・変更・消滅としてまとめるとよい。
- それぞれの論点について,どのような視点(従来の権利者志向か,それとは異なる利用者志向か)に基づいて論じるのかを明確にするとよい。
- 日出ロータリークラブの例会に出席します。別府駐屯地司令の外来卓話があるので,ロータリークラブの「四つのテスト」に則って,ニコボックス(Smile Box)を使って,以下の質問を予めしておきました。
- 真実かどうか
- 自衛隊は,日本の自衛隊というよりも「在日米軍の後方支援部隊」であるとの見解があります。自衛隊は,「自衛という名に恥じない」と考えられていますか。ある自衛隊員は,以下のように述べています。これは,真実でしょうか?
- 自衛隊が使っている兵器は,ほぼすべてアメリカ製で,コンピュータ制御のものは,データも暗号もGPSもすべて米軍とリンクされている。「戦争になったら,米軍の指揮下に入る」というようななまやさしい状態ではなく「最初から米軍の指揮下でしか動けない」。アメリカと敵対関係になったら,もう何もできない。自衛隊が守っているのは日本の国土ではなく,「在日米軍と米軍基地」だ。それが自衛隊の現実の任務だ(ある自衛隊員の見解)。(矢部宏治『日本はなぜ,「戦争ができる国」になったのか』集英社インターナショナル(2016)125-126頁)。
- みんなに公平か
- 南スーダンでの「在日米軍の後方支援部隊(自衛隊)」の活動を記録した日報を自衛隊が隠蔽した件で,「自衛隊に対する文民統制(シビリアン・コントロール)」の欠陥問題視されています。
- しかし,この点については,文民統制の欠陥ではなく,以下のように,自衛隊が「日本国民よりも内閣を重視し,内閣の意向を忖度した結果」であるとの見解があります。この点について,どのようにお考えですか?国民の意思(憲法15条1項)は忖度されないのでしょうか?
- 自衛隊が武力攻撃を受けた事実が明るみに出ると困るのは,〔国民でも自衛隊でもなく〕「自衛隊は戦闘地にいない」という嘘をつき続けている政府である。自衛隊は文民政府の意向を「忖度」して,日報を隠ぺいしたのである(井上達夫「虚偽が真理に勝つのか?」『法と哲学』第4号(2018/6)iii頁)。
- 好意と友情を深めるか
- 「在日米軍の後方支援隊(自衛隊)」の駐屯地での実弾射撃演習では,住民は騒音と振動に悩まされています。
- 現代戦においては,戦闘主体は,人間から,AIを駆使したロボットに移行するとおもわれます。実弾演習から,AIによる戦闘のシミュレーション演習へと移行していただけると,騒音・振動の被害もなくなり,自衛隊と住民との間の行為と友情を深めることができると思うのですが,いかがでしょうか?
- みんなのためになるかどうか
- 朝鮮戦争の終結が近づくにつれ,戦争終結から続けられてきた在日米軍の駐留の法的根拠が消滅する可能性が大きくなりつつあります。朝鮮戦争を契機に警察予備隊を経て誕生した自衛隊は,朝鮮戦争が終結すれば,完全に生まれ変わることになるのです。
- 日本が米軍の支配から独立した場合に,「自衛隊」が「みんなのためになる」には,どのような課題があると考えらえていますか?
- 自衛隊には,命令に従うだけではなく,国際法をも駆使して,自分たちで何かを考えるという力は残っていますか?
- 今回は,主催者側から,「自衛隊の災害派遣」についての卓話を依頼されていたとのことで,卓話者からは,第3点(迷惑をおかけしていることは重々承知しているが,実弾での射撃演習をしないと,弾が的に当たらない)と第4点(災害派遣だけでなく,国境の守りについても,「みんなのためになっている」と信じている)についてのみ,当たり障りのない解答を得るだけに終わりました。質問が予想外だったらしいのと,任務を忠実にこなすのが精いっぱいという雰囲気だったので,それ以上の議論はしませんでした。
- もっとも,報告のテーマの「自衛隊の災害派遣」に関しては,その実施の可能性判断基準となる三原則(①公共性,②緊急性,③非代替性)について,私は,①公共性は必然だが,②緊急性と③非代替性については,andではなく,orでよいのではないか,すなわち①公共性及び②緊急性又は非代替性とすべきでなないかとの疑問を提起して,議論を行いました。
- (HP訪問者の延べ人数:19,080人)
- 2018年8月22日(水) 曇り後雨(台風19号・20号の影響)
- 吉備国際大学大学院(通信制)のスクーリング(9月1日~2日)で使うレジュメ「論文の書き方」(PowerPoint,PDF)を作成しました。
- (HP訪問者の延べ人数:19,100人)
- 2018年8月23日(木) 降ったり降ったりやんだりの雨(台風20号の影響)
- 台風の接近の前に必要品(青野菜など)の買い出しに暘谷の街に出かけました。途中,にわか雨に遭遇しましたが,幸にも,日出町には大雨・大風という台風の強い影響が及ばす,平穏な日を過ごすことができました。
- 『法と経営研究』に待望の「情報セキュリティの法と経営」に関する原稿が送られてきたので,内容を確認しました。これで,査読手続を開始できます。
- 吉備国際大学大学院(通信制)のスクーリング(9月1日~2日)で論文指導を行う学生から,掲示板システムを介して報告原稿が送られて来たので,コメントを付けて,返却しました。
- (HP訪問者の延べ人数:19,115人)
- 2018年8月24日(金) 晴れ ・猛暑
- 8月26日(日)~8月30日(木)の名古屋出張(名古屋大学でのLaw of Tortの非常勤講師)の後,9月に予定している,以下の出張に関する列車(ソニックと新幹線)とホテル(東京,京都)の予約を完成しました。
- 8月31日(金)~9月3日(月)の東京出張(吉備国際大学大学院(通信制)のスクーリング)
- 9月 7日(金)~9月 9日(日)の東京出張(明治学院大学・消費者法研究会)
- 9月22日(土)~9月24日(月)の京都出張(民法学研究会,末川民事法研究会,中国語勉強会)
- 明治学院大学白金法学会の会報『白金通信』に掲載される「名誉教授の近況」の原稿を執筆し,白金法学会に送付しました。
- (HP訪問者の延べ人数:19,135人)
- 2018年8月25日(土) 晴れ ・猛暑
- 吉備国際大学大学院(通信制)のスクーリング(9月1日~2日)で論文指導を行う学生から,掲示板システムを介して報告原稿(改訂版)が送られて来たので,さらに大量のコメントを付けて,返却しました。
- 加賀山茂『事務管理・不当利得・不法行為-他者への貢献“Do for others”の民法学-』信山社(2018)の執筆を続けています(第43日目)。
- 第2章(不当利得)の執筆を続けています(第14日目:Q&A47~51(悪意占有者はなぜ果実を取得する義務を負うのか?))。
- (HP訪問者の延べ人数:19,145人)
- 2018年8月26日(日) 晴れ ・猛暑
- 8月27日(月)から4日間にわたって,名古屋大学の留学生に不法行為法の講義(英語)を行うため,名古屋に出張します。
- 新幹線の中で,著作権法改正(2019年1月1日施行)全文 を横書き対応へと変換し,各条文で引用されている条文の見出しを付加する作業を開始しました(第1日目)
- (HP訪問者の延べ人数:19,160人)
- 2018年8月27日(月) 晴れ
- 著作権法改正(2019年1月1日施行) 全文を横書き対応へと変換し,各条文で引用されている条文の見出しを付加する作業を続けています(第2日目)
- 名古屋大学大学院の留学生に対してTort(不法行為法)の講義を英語で行っています(第1日目)。
- (HP訪問者の延べ人数:19,175人)
- 2018年8月28日(火) 曇り 一時雨
- 著作権法改正(2019年1月1日施行) 全文を横書き対応へと変換し,各条文で引用されている条文の見出しを付加する作業を完成しました(第3日目)
- 名古屋大学大学院の留学生に対してTort(不法行為法)の講義を英語で行っています(第2日目)。
- (HP訪問者の延べ人数:19,190人)
- 2018年8月29日(水) 晴れ
- 名古屋大学大学院の留学生に対してTort(不法行為法)の講義を英語で行っています(第3日目)。
- 法定地上権の歴史と問題点について,名大の先生と議論を行いました。
- 2018年9月30日(木) 晴れ
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加賀山茂『求められる法教育とは何か
-他者への貢献“Do for others”の視点から
事務管理,不当利得,不法行為を考える-』
信山社(2018/8/30)1,200円(税別) |
名古屋大学大学院の留学生に対してTort(不法行為法)の講義を英語で行っています(第4日目)。
- 受講生が自国(タイ)における損害賠償額の算定,ケース研究のプレゼンテーションを行い,学生同士,私との間で議論を行いました。
- ついに,加賀山茂『求められる法教育とは何か-他者への貢献“Do for others”の視点から事務管理,不当利得,不法行為を考える-』信山社(2018/8/30)が出版され,昼前に5冊の本が手元に届きました。
- そこで,お世話になった先生に献呈するとともに,名古屋大学法学部図書館,および,昨年11月1日に開館した名古屋大学ジェンダー・リサーチ・ライブラリに,発刊されたばかりの著書を寄贈しました。
- 学生の成績を出して教務に報告し,名古屋大学での非常勤講師のすべての日程(Contract, Tortの講義)を終えて,大分に帰りました。
- 新幹線の中で,上記の新著書を読み返し,引用箇所でポイントが下げられていな箇所をいくつか見つけ,増刷の機会に恵まれたら,訂正すべきだと思いました。
- (HP訪問者の延べ人数:19,235人)
- 2018年9月30日(金) 晴れ一時雨
- 9月1日(土)~9月2日(日)に開催される吉備国際大学大学院(通信制)知的財産学研究科のスクーリングで講義「論文の書き方」(PowerPoint,PDF)と大学院生の研究指導を行うため,東京に出張します。
- 吉備国際大学大学院(通信制)知的財産学研究科の先生方に贈呈するため,東京駅近くの「丸善」で,加賀山茂『求められる法教育とは何か』信山社(2018/8/30)を購入しようとしたのですが,9月5日にならないと入荷しないとのことでした。そこで,信山社の本社に立ち寄って,著者割引で本書を10冊購入しました。
- (HP訪問者の延べ人数:19,260人)
- 2018年9月1日(土) 曇り一時雨
- 吉備国際大学大学院(通信制)知的財産学研究科のスクーリングで,研究指導を行いました。
- 大学院の事務局と,大学院の先生方(9名)全員に,加賀山茂『求められる法教育とは何か-他者への貢献“Do for others”の視点から事務管理,不当利得,不法行為を考える-』信山社(2018/8/30)を献呈しました。
- 研究指導の後,第1期生から8期生,および,現役の9期・10期生が集う,同窓会総会に出席しました。その後に開催された懇親会では,著書の紹介を兼ねて,出席した10名ほどのの卒業生と歓談することができました。二次会は,近くのカラオケ店で仏・中・英・日の歌を披露し,その場を盛り上げました。
- (HP訪問者の延べ人数:19,280人)
- 2018年9月2日(日) 曇り時々雨
- 吉備国際大学大学院(通信制)知的財産学研究科のスクーリングで,「論文の書き方」(PowerPoint,PDF)について講義をし,その後,研究指導を行いました。
- 大学院一年生で最も研究が遅れている学生に対して,一般的な研究指導から,精読中心の指導方針を切り替えました。
- 学生が提出した修士論文計画書の一文一文について,本当に意味を理解しているかどうか,徹底的な質問を行い,わずか1頁の内容について,2時間にわたる集中的な研究指導を行いました。
- 時間がかかっても,このような方法以外に,学習の遅れを取り戻すことはできないと思うので,機会があるごとに,精読に基づく集中的な研究指導を続けるつもりです。
- (HP訪問者の延べ人数:19,300人)
- 2018年9月3日(月) 曇り後雨のち晴れ
- 吉備国際大学大学院(通信制)知的財産学研究科のスクーリングを終え,大分に帰ります。
- (HP訪問者の延べ人数:19,310人)
- 2018年9月4日(火) 雨(台風21号の影響)後晴れ 関西空港冠水
- 『法と経営研究』第2号の査読に関する作業を開始します(第1日目)
- 日出ロータリークラブの例会に出席します。
- ニコボックス(Smile Box)で著書を紹介し,出席者全員(今回は12名)に著書を献呈しました。
- (HP訪問者の延べ人数:19,320人)
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書斎から眺める別府湾も秋の気配 |
2018年9月5日(水) 晴れ(朝夕は秋の気配 )
- 『法と経営研究』第2号の査読に関する作業を行っています(第2日目)
- 日出町立図書館に著書を寄贈しました。 ついでに,ジャック・ペレッティ(関美和訳)『世界を変えた14の密約(Done: The secret deals
that are changin our world)』文藝春秋(2018/5/30)を借りました。
- (HP訪問者の延べ人数:19,340人)
- 2018年9月6日(木) 晴れ 北海道で震度7の大地震
- 『法と経営研究』第2号の査読に関する作業を行っています(第3日目)
- (HP訪問者の延べ人数:19,355人)
- 2018年9月7日(金) 曇り
- 『法と経営研究』第2号の査読に関する作業を行っています(第4日目)
- 明治学院大学・消費者法研究会に出席するため東京に出張します。
- 新幹線の中で,ジャック・ペレッティ(関美和訳)『世界を変えた14の密約(Done: The secret deals that are changin
our world)』文藝春秋(2018/5/30)を読んでいます(第1日目)。
- この本を読むと,世界を変えてきたのは,「問題を作り出して,解決策を売る」という方法だった,ということが実例を交えて説得的に論じられています。ただし,この解決策というのは,実質は,常に問題を悪化させるというしろものです。
- 例えば,糖質グルメを推奨してメタボを作り出します。そして,その解決策として,ダイエット提案します。しかし,ダイエットをすれば,体は,飢餓状態になったと勘違いして,リバウンドが生じるので,ダイエットとリバウンドの悪循環を利用するという,「悪魔のビジネスチャンス」を生み出すことができます(本書第4章)。
- その他にも,病気の定義を新たに作りだしたり,病気の基準を厳しく改定したりすることによって,国民の不安をあおり,不必要な薬を売り込む方法など,利益追及という考え方は,わざわざ「問題を作り出しておいて,一見もっともらしい解決策を売り込み,それによって問題をさらに悪化させるという悪循環を作り出して,それをビジネスチャンスとする」という傾向があるようです(本書第5章)。
- わが国は,もともと,地震,台風,火山の爆発による悲惨な問題を抱えているのですから,利益追求のために,わざわざ困った問題を作り出す必要はないのであって,このような切実で本当の問題に対する解決策を考え,実行に移すべきではないのかと,ボランティア活動の在り方に思いを巡らせました。
- (HP訪問者の延べ人数:19,380人)
- 2018年9月8日(土) 晴れ
- ジャック・ペレッティ(関美和訳)『世界を変えた14の密約(Done: The secret deals that are changin our world)』文藝春秋(2018/5/30)を読んでいます(第2日目)。
- 『法と経営研究』第2号の査読に関する作業を行っています(第5日目)
- 明治学院大学・消費者法研究会に出席して,議論を盛り上げます。
- (HP訪問者の延べ人数:19,400人)
- 2018年9月9日(日) 曇り後雨,
- 明治学院大学・消費者法研究会を終えて,大分に帰ります。
- 帰りの電車の中で,ジャック・ペレッティ(関美和訳)『世界を変えた14の密約(Done: The secret deals that are changin
our world)』文藝春秋(2018/5/30)を読み(第3日目),読み終えました。
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ジャック・ペレッティ(関美和訳)
『世界を変えた14の密約』
文藝春秋(2018/5/30) |
- 私企業の取引は,別段公開義務があるわけでないので,密約というのは違和感を感じますが,本書の意図は,世間に注目されない普通に行われている取引のうちのあるものが,実は,世界を変えるほどの意味を持つ場合があり,そればかりか,今後の世界の行く末を暗示する場合があるというものです。そして,本書は,世界を変えた取引は,そのほとんどすべてが,「問題を作り出して,解決策を売る」(本書9頁)取引であったとの視点から,実際に世界を変えた(政治のビジネス化と人間のロボット化という世界の潮流を作り出した)と筆者が考える以下の14の重大取引(「科学的」な重大発見・発明を含む)を紹介するものです。
- 第1章 現金の消滅…2002年,ペイパルとイーベイの取引。
- 第2章 小麦の空売りとアラブの春…2005年,世界四大食品会社による小麦の空売りによる小麦価格の高騰→貧困とイスラム国家。
- 第3章 租税回避のカラクリ…1996年,ジョン・レノンとロスミンスターとの契約。
- 第4章 貧富の格差で大儲けする…2006年,銀行家トビアス・レヴコヴィッチの貧富の二極化を予言するレポート。
- 第5章 肥満とダイエットは自己責任か…1945年,保険会社の統計家ルイ・ダブリンがボディ・マス(肥満)指数(BMI)を発明。
- 第6章 国民全体を薬漬けにする…1960年,ヘンリー・ギャドセンが全ての人に売れる予防薬を発明。
- 第7章 働き方が改革されない理由…1878年,フレッド・ウィズラー・テーラーが,時間動作研究によって「科学的経営」を発明。労働の監視が始まる。
- 第8章 終わりなき買い替え(アップグレード)…1932年,世界最大の電球製造メーカー5社は「6か月以上長持ちする電球を作った会社を廃業に追い込む」という秘密のカルテル「ボイボス」を締結した。「計画された陳腐化」が始まる。
- 第9章 権力を持つのは誰か…1997年,マッキンゼーが「人材競争」を宣言。
- 第10章 企業が政府を支配する…1958年,ニューヨークで「国家と投資家の間の紛争解決手続(ISDS)と呼ばれる法廷が実現。
- 第11章 フェイクニュースが主役になるまで…2001年,フェイクニュースが「ポスト真実」社会の病状として浮かび上がる。ダートマス大学ブレンダン・ナイハン教授は,「全ての情報は,自分の既に存在するバイアスを通じて処理される」ことから「炎上効果」が生じることをを確認。2013年イエール大学ダン・カハン教授は,1,000人の実験を通じて,「人間は,証拠を曲げ,自分の効きたい方に持っていく」ことを確かめた。
- 第12章 ロボットと人間の未来…1997年,IBMのディープブルーはチェスの世界チャンピオンを破り,2011年,IBMのワトソンが,クイズ番組「ジェパディ!」の元優勝者2人と戦い,2,000万人の視聴者の前で2人を破った。
- 第13章 人類史上最大案件=「知性」の取引…2014年,イギリスのAI会社ディープマインドの若者3人がラリー・ペイジと交渉し,人工知能でもなく人間の知能でもない「知性(知性のアルゴリズム)」を扱うこの会社は,6億5,000万ドルでグーグルに買収された。
- 第14章 21世紀のインフラストラクチャー…高速衛星インターネットが21世紀のインフラを変える。衛星によるインターネットの同時通信によって,物理的なインフラが必要なくなる。インフラが崩壊した場所や,そもそもインフラのない場所では,インフラが障害でなくなるからという。
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- 2018年9月10日(月) 晴れ
- 『法と経営研究』第2号の査読に関する作業を行っています(第6日目)
- 渡邉泉『会計学の誕生-複式簿記が変えた世界-』岩波新書(2017)を読み返しています。
- 先日の台風21号の暴風雨で,私が京都府向日市寺戸町山縄手で所有し,賃貸しをしている家の屋根とテレビアンテナが損傷し,修理費を含めて百万円ほどの損害が生じているとの報告が,物件を管理している不動産会社からありました。
- (HP訪問者の延べ人数:19,430人)
- 2018年9月11日(火) 曇り一時晴れ
- 『法と経営研究』第2号の査読に関する作業を行っています(第7日目)
- 読み終えた,ジャック・ペレッティ(関美和訳)『世界を変えた14の密約(Done: The secret deals that are changin
our world)』文藝春秋(2018/5/30)を日出町立図書館に返却しました。
- この本によって,以下の三つの示唆を得たように思います。
- 政治の企業化を受け入れざるを得ないとすれば(本書第9章:権力を持つのは誰か,第10章:企業が政府を支配する),企業の規制と国の規制のギャップを解消すべきでしょう。
- 第1に,企業会計の進化に合わせて,国(日銀を含む)の会計も,取得原価主義だけでなく,割引現価主義に基づく,将来予測を含めた情報提供を義務づけるべきだと思います。
- 第2に,民間企業の破たんで損害を受けるのが株主なら,国家財政の破たんで苦しむのは国民なのですから,企業にコーポレート・ガバナンスを課すのであれば,国家にも,同様の厳しい規範を課すべきでしょう。
- 第3に,民間に対する規制と国に対する規制のギャップを埋めるべきだと思いました。私文書の偽造が罰せられるのと同様に,公文書の書き換え・削除も,常に罰せられるように法改正を行うべきです。民間企業の障害者雇用についてを罰則付きで規制しながら,国家の障害者雇用については,罰則がついていないのも,改められるべきです。
- 第4に,そろそろ,憲法15条1項(公務員〔内閣総理大臣・最高裁長官・検事総長を含む〕を選定し,及びこれを罷免することは,国民固有の権利である。)の実質化(株主・投資家の権利と国民の権利との等質化)が必要な時期になってきたと思います。
- 「問題を作り出して,解決策を売る」(本書9頁)ことによって,企業が利益を生み出しているのであれば,企業の「利益」そのものを不当利得の観点から見直すべきだと思います。
- 企業の利益のほとんどが,「問題(例えば,グルメで肥満)を作り出し,または,それに便乗して,その問題を解決できそうに見えて,実は,その問題をさらに悪化させる可能性が高い解決策(例えば,95パーセントが失敗することが証明されているダイエット)を売る」という方法によって作り出されているとすれば(本書第5章:肥満とダイエットは自己責任か),そのような利益を,公序良俗に違反する悪意の不当利得という観点から再検討することができそうです。
- 不当な利益をもたらす契約の無効化と,悪意の不当利得を「事務管理(Management of Business)」とみなすという私の解釈(『求められる法教育とは何か』信山社(2018)57-59頁,62-63頁)が広く認められるようになれば,ついに,「法学と経営学の融合」が実現できることになります。
- AIの進化によって,「人類滅亡後の世界」をも思い描くことができるようになったのですから(本書第12章:ロボットと人間の未来,第13章:人類史上最大案件=「知性」の取引),人類の滅亡を遅らせるための方法から優先的に取り扱うべきでしょう。
- 教育改革をAIに頼ってはいけません。AIは,必ず,地球を破壊する元凶が人類であることを見抜き,人類を滅亡に導くための教育を推進することになりかねないからです。
- 教育改革は,地球を破壊しない人材を育てるという観点に立ち,しかも,はじめから,終わりまで,AIを超える方法(例えば,時間をかけて,文章の意味を徹底的に理解させるなど)によって行うべきでしょう。
- 速読を競うなら,人間がAIに勝てるわけがありません。例えば,多義的な単語を翻訳する場合に,AIのように,単語の意味の頻度とか,前後の単語の頻度とかに頼って訳すのであれば,その速度に人間がかなうわけがないのです。
- しかし,AIは,確率だけに頼っているのですから,確率計算では,AもBもどちらも等しく起こり得る場合,または,AよりもBの確率が高いという場合に,判断不能に陥ったり,誤った判断をしかねません。確率計算とは異なり,正確な意味の理解と論理に基づいて,あえて確率の高くないAを選択できるところに人間の役割があると,私は考えています。
- 国家の企業化の進展は,企業の国家化も進展させます。その結果は,国の「すべて公務員は,全体の奉仕者であつて,一部の奉仕者ではない」(憲法15条2項)のと同様に,企業も,ステークホルダー全体の奉仕者とならざるを得なくなるでしょう。そこでの目標は,もはや,「利益」の追求ではなく,「費用」に基づく「奉仕」であり,必要とされる根本規範は,「事務管理(Management of Business)」となることでしょう。
- 日出ロータリークラブの例会に出席しました。
- 杵築日出警察署長をゲストに迎え,外来卓話を拝聴しました。その中で,配布された「警察だより」(平成30年盛夏号)の記事「おせっかいな自転車ロック作戦」に質問が集中しました。
- この作戦の結果は,「ありがた迷惑」(90%)と「迷惑有難い」(10%)とが交錯する「事務管理」であり,質問を通じて,警察は,法律を知らずに,「自転車盗難被害(今年の1月から6月までで7件))を防止する」という意図だけで行われていることが分かりました。「法律による行政」という観点からは,再検討が必要だと感じました。
- (HP訪問者の延べ人数:19,450人)
- 2018年9月12日(水) 曇りのち一時雨
- 『法と経営研究』第2号の査読に関する作業を行っています(第8日目) 。第2号に掲載を希望している投稿論文の査読作業が完了しました。9月14日に開催する編集委員会で,査読の結果に基づいて今後の方針を確定します。
- (HP訪問者の延べ人数:19,480人)
- 2018年9月13日(木) 曇りのち雨
- 『法と経営研究』第2号の編集会議に出席するための準備(ソニック,新幹線,ホテルの予約,アジェンダに即した準備)を行います。
- 9月4日の台風21号の暴風雨で,私が京都府向日市寺戸町山縄手で所有し,賃貸しをしている家の屋根とテレビアンテナが損傷し,修理費を含めて百万円ほどの損害が生じた件について,損害保険会社にその対処方法について問い合わせをしました。
- 昨日から食物と水の飲み込みが困難となった父の病状を病院で診断してもらった結果,レントゲン・血液検査の結果からは,どこも悪いところはなく,老衰だということが分かりました。
- 血管が脆くなっているため,点滴は危険が大きく,食道へのチューブの挿入も不快で苦しがるため,病院としては,どちらも勧められないとのことでした。
- 96歳の長寿である父に対して延命治療はせず,行き届いた看護の下,7年9か月にわたって気分よく生活してきた特別養護老人ホームの個室で,最後の看取りをすることにします。
- (HP訪問者の延べ人数:19,500人)
- 2018年9月14日(金) 曇り後雨
- 『法と経営研究』第2号の編集会議に出席するため東京に出張します。父の状態が心配なので,翌日に大分に帰ります。
- 新幹線の中で,「著作権法革命-著作者第一主義から著作利用者第一主義へのパラダイムシフト-」の執筆を開始しました(第1日目)」
- 明治学院大学に立ち寄り,学長,図書館,広報,企画,白金法学会に私の著書『求めれる法教育とは何か-他者への貢献“Do for others”の視点から事務管理・不当利得・不法行為を考える-』信山社(2018)を寄贈しました。
- 『法と経営研究』第2号の編集会議に出席し,査読委員会の査読結果を承認し,第3号の編集方針を協議しました。
- 編集会議後,共同責任編集者が,即席で,私の著書の出版記念会を開催してくださいました。
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- 2018年9月15日(土) 曇り
- 『法と経営研究』第2号の編集会議を終えて,大分へ帰ります。
- 父の状態が心配なため,いつもの帰りの時間のグリーンの指定を変更し,時間を早めて指定を取ろうとしたところ,早い時間帯の新幹線の指定席がすべて満席だったため,自由席に座ることにしました。
- 3号車の一番後ろの席の通路側を狙っていたら,見事にその席が空いていました。隣の窓際に座っておられたご婦人に空席であることを確認して,後ろのコンセントから電源を確保して,新幹線の中で,「著作権法革命-著作者第一主義から著作利用者第一主義へのパラダイムシフト-」の執筆を続けました(第2日目)。
- 執筆が一段落して,隣のご婦人と会話を交わしたところ,とても(超)聞き上手の方だったので,小倉に到着するまで,ずっと会話を続けました。この方(お名前を伺うのを失念しました)は,以前はホテルに,現在は東京の介護関係の会社にお勤めとのことだったので,阿部桂『わたしはコンシェルジュ』講談社新書(2010)とか,私の著書とHome pageとかを紹介し,名刺もお渡ししました。私のHPのファンになっていただけると嬉しいと思いました。
- 父の見舞いに来ていた妹と杵築駅で会って,今後のことを話し合いました。
- (HP訪問者の延べ人数:19,550人)
- 2018年9月16日(日) 晴れ
- 「著作権法革命-著作者第一主義から著作利用者第一主義へのパラダイムシフト-」の執筆を続けています(第3日目)。分量的には1,000字を超えました。
- お花を買って父の見舞いに行ったところ,食堂の方から父の元気な声が聞こえ,食べ物を飲み込む力が奇跡的に復活していました。なんと,三食(流動食)を食べきることができ,水分も500g取れるようになったので,少し安心しました。
- (HP訪問者の延べ人数:19,580人)
- 2018年9月17日(月) 晴れ後曇り(敬老の日)
- 「著作権法革命-著作者第一主義から著作利用者第一主義へのパラダイムシフト-」の執筆を続けています(第4日目)。
- 父が入っている特別養護老人ホームで開催される敬老の日の催し(昼食会,足湯と足のマッサージ)に参加しました。 父は,朝食は完食しました。受け答えも確かですが,昼食は,半分で終わりました。
- (HP訪問者の延べ人数:19,590人)
- 2018年9月18日(火) 晴れ
- 「著作権法革命-著作者第一主義から著作利用者第一主義へのパラダイムシフト-」の執筆を続けています(第5日目)。
- 第1バージョンを完成させたので,吉備国際大学大学院(通信制)での特別講義(10月13日)の資料として,通信教育事務課に送付しました。
- 著作権侵害に関する著作権法の規定(著作権法113条以下)を民法理論に適合させるための記述を追加する第2バージョンを執筆しています。
- 父の見舞いに行きました。今日は,朝食,昼食とも完食したとのことです。 お風呂にも入れてもらって,肌もツルツルで,とても気持ちよさそうでした。
- (HP訪問者の延べ人数:19,610人)
- 2018年9月19日(水) 晴れ後曇り
- 「著作権法革命-著作者第一主義から著作利用者第一主義へのパラダイムシフト-」の執筆を続けています(第6日目)。
- 著作権侵害に関する著作権法の規定(著作権法113条以下)を民法理論に適合させるための記述を追加する第2バージョンを完成させました。
- 著作権に関する文献を読んで,引用を充実させる第3バージョンを執筆しています(1日目)。
- 父の見舞いに行きました。今日は,朝食は完食できたのですが,昼食は食べることができず, 見舞いに行ったときは,父の顔が少し赤かったので,体温を測ってもらったところ,38℃を超えていました,頭を冷やして様子を見ていたところ,少し体温が下がってきたので,帰宅しました。
- (HP訪問者の延べ人数:19,630人)
- 2018年9月20日(木) 雨
- 「著作権法革命-著作者第一主義から著作利用者第一主義へのパラダイムシフト-」の執筆を続けています(第7日目)。
- 著作権に関する文献を読んで,引用を充実させる第3バージョンを執筆しています(2日目)。
- 父の見舞いに行きました。 体温も下がって,36.5℃になり,朝食・昼食ともに完食だったので,一安心です。
- (HP訪問者の延べ人数:19,650人)
- 2018年9月21日(金) 雨のち曇り
- 「著作権法革命-著作者第一主義から著作利用者第一主義へのパラダイムシフト-」の執筆を続けています(第8日目)。
- 著作権に関する文献を読んで,引用を充実させる第3バージョンを執筆しています(3日目)。
- 日出ロータリアンの一員として,おおいた秋の交通事故ゼロ運動に参加する予定でしたが,雨のため中止となりました。
- 長年使ってきたPHSですが,2020年7月末でサービスが停止されることになったため,大分のワイモバイル店に出かけて,比較的安価なスマートフォン(androidone)に買い換えました(44,604円)。毎月の通信費は,1年目は589円,2年目は1,669円,3年目からは3,760円とのことです。PHSの通信費用は,毎月3,610円だったので,妥当な値段だと思います。
- 父の見舞いに行きました。 朝食は完食。昼食は取れなかったが,夕食は,回復したのとことで,お風呂にも入れてもらって,元気そうでした。
- (HP訪問者の延べ人数:19,670人)
- 2018年9月22日(土) 晴れ
- 民法学研究会(今日),および,末川民事法研究会(明日)に出席するため,京都に出張します。
- 民法学研究会9月例会に出席して,議論を盛り上げます。
- 第1報告:「死後委任契約をめぐる諸相」
- 民法653条を任意規定と考えて,委任の規定を類推するというのもよいのですが,私は,思い切って,事務管理の規定を適用するのが良いのではないかとの立場(すでに,高松高判平22・8・30判時2106号52頁が,一部については,この立場に立っている)から,議論を盛り上げました。
- 第2報告:「相続を原因とする他主占有から自主占有への転換の可否について」
- ボワソナードのプロジェ(第2編(財産編)の第197条)とか,そこで引用さえているフランス民法(旧・第2238条(現行法2268条))の解釈を踏まえて,議論を盛り上げようと思っていましたが,報告者の報告を聴いて,以下のように主張して,議論を楽しむことにしました。
- 私は,「他主占有が自主占有に変更される場合というは,2つの場合しかない(民法185条)。第1は,条文とは順序は逆だが,新権原(贈与など)を得た場合である。第2は,新権原が証明できない場合であっても,贈与等の可能性のある状況(公租公課を支払っているとか,他人から賃料を受け取り続けているとか等)を証明し,新権原があるのかどうか,すなわち,他主占有なのか,自主占有なのか真偽不明となる場合である。この場合には,民法186条の原則によって,非占有者が立証責任を負担するので,その結果,非占有者が敗訴する。すなわち,第2の場合には,占有の性質が他主占有から自主占有に変更されると解すべきではないか」と主張して,議論を盛り上げました。
- (HP訪問者の延べ人数:19,690人)
- 2018年9月23日(日) 曇り
- 午前中は,黄先生から紹介していただいた京大の留学生に会って,これから,毎月1回,中国語を教えてもらうことができました(第1回目)。
- 使用するテキストをいただき,会話練習(第1課~第2か)を行った後,宿題を出してもらったので,ホテルに帰って,その宿題の解答を作成しました。
- 午後からは,末川民事法研究会に出席して,議論を盛り上げました。
- 第1報告:「個人識別情報の漏えいによる不法行為の成否—ベネッセコーポレーション個人情報漏えい損害賠償請求事件(最高裁平成29年10月23日判タ1442号46頁)」
- 何でもかんでも不法行為構成によって責任を追及するのではく,契約当事者を訴える場合には,契約責任を追及し,予想される損害賠償額の制限に対しては,消費者契約法を活用すべきではないかと,私は考えました。
- 第2報告: 「専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても、直ちに当該養子縁組について民法802条1号にいう『当事者間に縁組をする意思がないとき』に当たるとすることはできない—最判平29・1・30裁時1669号1頁−
」
- 事実上の婦夫が観念できることによって,事実婚(憲法婚)とか,内縁とか,婚姻無効を観念できる。しかし,わが国の養子制度においては,親子関係が年齢が1日違いの同年齢でも認められるため,事実上の親子関係という概念を構成することができない。
- 平成29年最高裁判決のように,養親子関係の成立要件についての立証責任を緩和するのではなく,もう少し成立要件を厳しくすべきではないのか。本件は未成年養子なので問題は少ないが,家制度の残滓にすぎない成年養子については,脱法行為を未然に防止するためにも,18歳以上の年齢差を要件とするなど,養親子関係の成立について,なんらかの追加要件を設けるべきでないのかと,私は考えました。
- (HP訪問者の延べ人数:19,700人)
- 2018年9月24日(月) 曇り
- 午前中は,台風21号によって被害を受けた向日市寺戸町山縄手の私の家屋の屋根の損傷状態況を調査し,修理の方法等について,不動産会社と打合せを行いました。
修理の見積書は明日翌日に,屋根の写真は,危険で取れないため,順番待ちの大工さんの作業ができるようになる11月に,撮影して,送ってもらうことになりました。
- 家の修理の打合せが比較的短時間終わり,時間の余裕ができたので,本屋巡りをして,私の著書(求められる法教育とは何か)が置かれているかどうか見てみました。京都駅近くの本屋に行ってみると,法律一般の棚に,3冊もかためて並べられていたので,写真に撮りました。次に四条烏丸に出て,「ジュンク堂」に行ってみると,私の本は,すべて売り切れのことでした。しかし,親切な店員が,河原町の「丸善」にには置いてあるかもしれないと,すぐに電話で問い合わせをしてくれ,私の著書が置いてあることを確認してくれました。そこで,信山社に報告したら喜ばれるだろうと思い,河原町の「丸善」へ写真を取りに出かけることにしました。
- 尋ねて行った「丸善」で,本の写真を撮ることができたのですが,さらに,「ずっと探していた」とても良いものを見つけることができました。
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リヒトラブ
用紙が差替え可能な
8つ穴メモ帳 |
これまで,胸のポケットに入る小さなのメモ帳(8つ穴)を活用して,歌の歌詞を暗記したり,列車の予約番号を確認したりしてきたのですが,メモ帳のページがすべて埋まってしまい,買い替えの必要が生じました。
- ところが,古いメモ帳の中には,今後も活用すべきデータがたくさん書きこまれており,それを新しいメモ帳に書き写すのは大変な作業になることが分かりました。その点,差替え可能な小さなメモ帳ならば,一度書いたデータを使い続けることができるので,大いに手間が省けます。
- そこで,メモ紙の入れ替えが可能な小さなメモ帳を探していたのですが,普通の文具店には置いておらず,しかも,ネット通販では,存在を確認したものの,使い勝手の良さまではわかりません。今回,私の本が置いてあるという情報を得て,河原町のBANという店の中に入っている「丸善」に尋ねて行ったので,そのついでに,紙の差替え可能な小さなメモ帳を探してみました。すると,さすがに「丸善」です。ネットで見つけていたメモ帳が,2種類とも置いてありました。
- 一つのタイプは,とても丈夫そうで良いと思ったのですが,紙が罫線で,横にして使うことができないことが分かり,断念しました。もう一つは,外観は華奢でしたが,紙が方眼で,横にして使うこともできるため,早速購入しました(ツイストリングノート・リヒトラブ)。
- 店の休憩スペースで,古いメモの「我只在乎你」の歌詞を書き写してみたところ,紙が取り外せるため,書き心地もよく,とても気に入りました。去年のメモ帳の大切なデータを書き写しておけば,それ以後は,そのデータを使い続けることができるので,大変助かります。
- これからは,電気を使わなくて済む小さなメモ帳,とっさの時に頼りになるスマホ,ゆっくり考えて書くためのパソコンと,3つの道具を持ち歩くことになりそうです。
- 午後に,今回の出張の目的をすべて達成して,大分に帰ります。
- 新幹線の中で,9月21日に購入したスマホを使ってみました。
- これまで,窓の景色を眺めながら,「今,どこを通っているのだろうか?いちいち車掌さんに聞くわけにいかないし。」と思っていたのですが,スマホのGoogleマップを見ると,新幹線の動きがGPSを使って常時地図上に表示されており,現在,どこを通過中なのかが手に取るように分かりました。
- 窓の景色と,スマホの地図を眺めながら,長年の希望が実現できたことがわかり,幸せな気分に浸ることができました。
- 父の見舞いに行き,今日も食事を完食したことを聞いて安心しました。
- (HP訪問者の延べ人数:19,715人)
- 2018年9月25日(火) 晴れ
- 購入したばかりの,用紙が差替え可能なメモ帳(ツイストリングノート・リヒトラブ)に,暗記すべき歌詞を移し替えています(第1日目:中国語(我只在乎你,甜蜜蜜,又見炊烟))
- 加賀山茂『求められる法教育とは何か-他者への貢献“Do for others”の視点から事務管理,不当利得,不法行為を考える-』信山社(2018/8/30)の書評がネットに投稿されました。「法教育というタイトルの割には,内容がむつかしすぎる」と酷評されるのではないかと思っていたところ,意外にも,とても好意的な書評でした。有難いことです。
- 父の見舞いに行きました。朝食と昼食は完食とのことでしたが,夕食は,痰を吸引してもらって,気分が良くなったのか,うとうとと寝てしまい,食べることができませんでした。
- (HP訪問者の延べ人数:19,730人)
- 2018年9月26日(水) 晴れ後曇り後雨
- 用紙が差替え可能なメモ帳(ツイストリングノート・リヒトラブ)に,暗記すべき歌詞を移し替えています(第2日目:中国語(海恋,月亮代表我的心,償還))
- 父の見舞いに行きました。朝食,昼食とも完食。夕食も,昨日とは異なり,よく噛んで,完食しました。元気を回復してよかったです。
- (HP訪問者の延べ人数:19,750人)
- 2018年9月27日(木) 晴れ
- 用紙が差替え可能なメモ帳(ツイストリングノート・リヒトラブ)に,暗記すべき歌詞を移し替えています(第3日目:イタリア語(Voi che sapete che cosa è amor, la donna è mobile, Libiam ne' lieti calici)) 。小瀬村幸子=岩下久美子『オペラ・アリア発音と解釈』音楽之友社(2005)を読んで,これらの歌詞の正確な意味をメモ帳に注記しました。
- 花精でお花を買って,父の見舞いに行きました。 今日も,朝食・昼食・夕食ともに完食でした。
- (HP訪問者の延べ人数:19,780人)
- 2018年9月28日(金) 晴れ後曇り
- 日出ロータリアンの一員として,おおいた秋の交通事故ゼロ運動に参加しました。
- 台風24号に備えて,太陽発電装置を倉庫に収納しました。
- 用紙が差替え可能なメモ帳(ツイストリングノート・リヒトラブ)に,暗記すべき歌詞を移し替えています(第4日目:ドイツ語(Ave Maria, Die
Forelle, In mir kling ein Lied, Die Lorelei)) 。
- 日出ロータリ―クラブの幹事の奥様が亡くなられたため(享年70),通夜に参加しました。
- (HP訪問者の延べ人数:19,800人)
- 2018年9月29日(土) 雨(台風24号の影響)
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西垣 通
『AI原論-神の支配と人間の自由』
講談社選書メティエ(2018/4/10) |
西垣通『AI原論-神の支配と人間の自由』講談社選書メティエ(2018/4/10)を読み始めました(第1日目)
- 著書は工学部の出身なので,AIのシステムについての記述が分かりやすいだけでなく,哲学的な考察を前面に出し,「自由と責任」という法律問題にも取り組んでいるので,法教育に対する示唆をも得ることができるのではなかと期待しながら読んでいます。
- 用紙が差替え可能なメモ帳(ツイストリングノート・リヒトラブ)に,暗記すべき歌詞を移し替えています(第5日目:フランス語(Hymne à l'amour,
Sans toi Mamie)) 。
- 「著作権法革命-著作者第一主義から著作利用者第一主義へのパラダイムシフト-」の執筆を続けています(第9日目)。
- 著作権に関する文献を読んで,引用を充実させる第3バージョンを執筆しています(4日目)。
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- 2018年9月30日(日) 雨(台風24号が大分に最接近)
- 西垣通『AI原論-神の支配と人間の自由』講談社選書メティエ(2018/4/10)を読んでいます(第2日目)
- 久しぶりに本格的なモノグラフィーを読んでいる気がします。
- 本書で著者は,「知」に関する,哲学,心理学,情報学の先行研究に丁寧に応接しつつ,人間(広く生命体)とAI (広く機械)とを対比して,両者には決定的な違いがあると,以下のように論じています(本書170-171頁)。
- 人間(生命体)は,自分自身で身体と行動を創出しながら生きており,自分で身体に基づく行動のルールを作り出さざるを得ない自律的な存在であり,それゆえに,その行動に対して責任を問うことができる。これに対して,AI(機械)は,たとえ,深層学習(deep learning)によって,入力に応じて自らルールを変更していくことができるように見えるとしても,ルールの変更の仕方を定める高次のルール(メタ・ルール)が,実は,人間によって設計されている,すなわち,過去のデータに基づいて現在の処理を行う存在なのだから,本質的に他律系であって,その結果について,それ自身に対して責任を問うことことができない。
- 本書の結論は,一言でいうならば,おそらく,「AI(Artificial Intelligence)とは,あくまで,人間の生きる知恵を支えるIA(Intelligence Amplifier)に過ぎない」(本書186頁)ということだと思います。
- さらに,一般的な〔与えられた仕事をまじめにこなす,悪気のない〕科学技術者に対する批判も,以下のように,まことに鋭く,参考になりました。
- 現代の多くの科学技術者は,カントのように人減の理性の限界を認め,物自体の認識不可能性の壁で悩んだりはしていない。宇宙(世界)が人間とは独立に客観的に存在しているという素朴実在論を前提に,一生懸命活動しているのである。
- 情報学的な観察者の議論からすると彼らは,神の視点〔人知を超えた絶対知による視点〕と人間の視点〔間主観的な世界を構成するが,あくまで,疑似的な客観性しか持ちえない者の視点〕を無意識に重ね合わせているのだ。ところが一般の人々にとっては,科学技術の専門家の言葉は中世の聖職者の説教のような権威と重みをもっている(本書162-163頁)。
- 創造神にもロゴス中心主義にも選民思想にも無関心なまま,ただ表面的に欧米のAI技術を崇拝し追随するだけでは,われわれの未来は暗い(本書189頁)。
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- 2018年10月1日(月) 台風一過の秋晴れ (強い南風は残る)
- 西垣通『AI原論-神の支配と人間の自由』講談社選書メティエ(2018/4/10)を読み終わりました。
- 本書は,以下の文章で閉じられています(本書189頁)。
- いったんAIの宗教的背景についての洞察力を得れば,「やがてAIロボットが人間のように自律的に,主体として賢い判断を下せるようになる」などといったグロテスクなお伽噺に惑わされることはなくなるはずだ。われわれが真に目指すべきは,AIという仮面をかぶった世界支配の野望を批判的に相対化しつつ,人間の生きる力を根源的に高める活路を切り開くことなのである。
- しかし,その目標を達成するための具体的方法は,示されていません。特に,AIと協働していかなければならならなくなる若い世代に,その具体的な方法をどのように示すべきなのかは,自分で考えなければなりません。
- 私としては,以下の文章を参考にして,法教育の立場から,偏見の塊となりつつある若者の脳を解きほぐししていくために,「平和を実現するためには,『正しい解決』を示すのではなく,『当事者も,専門家も,やがては世論をも納得させるような解決案』を発見できる力を育成することが必要である」という定理を,絵本を含めて,物語で表現する方法を突き詰めていきたいと考えています。
- テキストに書かれた機械情報(文字)が,権威者によって解釈されて社会情報(言葉)となり,一般人の心の琴線に触れる生命情報として共有されていくというのが,キリスト教世界の情報伝播の基本形に他ならない(本書155頁)。
- ↑
┗━ この文章は,以下のように変形すると,法教育にも,そのまま妥当すると思います。
- 条文に書かれた機械情報(文字)が,法学者・裁判所によって解釈されて社会情報(言葉)となり,一般人の心の琴線に触れる生命情報(判例解説などの物語)として共有されていくというのが,法教育の世界の情報伝播の基本形に他ならない。
- 知的合理性だけでは,広く一般の人々の心を深くとらえるのは難しい。…人を動かそうとするのなら,定理を示すのではなく物語を語るべきなのだ(本書156頁)。
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- 2018年10月2日(火) 晴れ
- 西垣通『AI原論-神の支配と人間の自由』講談社選書メティエ(2018/4/10)を読んで,インスピレーションを得たので,10月16日に日出ロータリークラブで行う卓話「大学教授とは,どんな仕事をしている人なのか」の構想の概要をまとめておきます。
- 大学教授の仕事とは何か? その評価基準は何か?
- ←杉原厚吉『大学教授という仕事』水曜社(2010),プロフェッショナル仕事の流儀(NHK)
- 法律はなぜ難しいと思われているのか? 分かりやすくする方法はあるのか?
- ←ひゃくみん(2017),求められる法教育とは何か(2018),ドクターG(NHK)
- 法律を理解するための具体的な方法とは? 条文の構造とは何か?
- ←ひゃくみん(2017),求められる法教育とは何か(2018)
- 法学の究極の目標とは何か? その実現方法とは何か?
- わが国における喫緊の法的問題とは何か? AI,財政危機,治外法権?
- ←新井紀子『AI vs.教科書が読めない子どもたち』東洋経済新聞社(2018/2/15)
- ←法と経営研究(2017,2018),小林慶一郎編『財政破綻後 危機のシナリオ分析』日本経済新聞出版社 (2018/4/19)
- ←矢部宏治『日本はなぜ,「戦争ができる国」になったのか』集英社インターナショナル(2016)
- まとめ 決め手は大政奉還?
- 将来のリスクを後回しにして,与えられた仕事を淡々とまじめにこなしている人ほど罪深い人はいない。だから,チコちゃんに叱られる?
- 日出ロータリークラブの例会に出席して,今後のクラブの発展のための戦略等について議論しました。
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- 2018年10月3日(水) 晴れ
- 西垣通『AI原論-神の支配と人間の自由』講談社選書メティエ(2018/4/10)を読み終えたので,書評を書いておこうと,はじめから丁寧に読み直しています(第1日目)
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ScanSnap SV600 |
吉備国際大学大学院(通信制)知的財産学研究科の研究費で購入を依頼していたScanSnap SV600とブックプレッサー が届きました。
- ScanSnap SV600は,本を裁断することなく電子化できるだけでなく,A3まで(工夫するとA2まで)の書類がスキャンできる優れモノなので,大いに活用しようと思います。
- ブックプレッサーBP600は,本をスキャンする際に,指が映り込んだりすることなく,しかも,光の反射を抑えてスキャンすることができるので,便利だと思います。
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- 2018年10月4日(木) 雨後曇り後雨
- 吉備国際大学大学院(通信制)知的財産学研究科の研究費で購入したScanSnap SV600 は,機能が充実しているだけでなく,思いのほか場所も取らず,ブックプレッサーの使い勝手もとても良いことも分かりました。
- そこで,今日は,いつの間にかたまった机の上の書類を集中的に片付けることにしました(第1日目)。
- 雨が止んだころ合いを見計らって,街に買物に行き,連日続けている父の見舞いに行ってきました。朝は食事を十分にとれているのですが,昼食と夕食は,水分補給だけで,ほとんど食べることができないようです。少し心配です。
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- 2018年10月5日(金) 雨
- 研究費で購入したばかりのScanSnap SV600と,従来から使っているScnaSnap S1500とを併用しながら,机の上にたまった書類を整理しています(第2日目)。
- 一つのソフトで,裁断しない資料とかA4を超える資料とかはScanSnap SV600で電子化し,裁断できるA4以下の資料はScnaSnap S1500で電子化するというように,2つの機械をシームレスにコントロールしてくれるので,とても便利です。
- 作業を進めてみて気づいたことですが,これまで,本をコピーするには,ページをめくる際に,その都度,本を裏返さなくてはならず,重い本の場合には手が疲れることがありました。ところが,ScanSnap
SV600の場合には,本を固定したまま,ページだけめくって,ブックプレッサーで押さえるだけでよく,重い本でも,力を入れる必要がないことが分かりました。その上,光源も上から照らすので,強い光が直に目に入ることもありません。印刷機能を切り捨てたために実現したとはいえ,「逆転の発想」が素晴らしいと思いました。
- 明日から始まる明治学院大学・消費者法研究会並びに明後日に開催される私情協の法律学教育FD/ICT活用研究会および5分野連携による合同会議に出席するため,明日の朝早く出張するつもりでしたが,大型の台風25号が接近しており,明日になると新幹線が止まるおそれが出てきたため,予定を早めて,今日,東京へ向かいます。
- 新幹線の中で,日本私法学会シンポジウム資料(2018年10月14目)「強行法と任意法民法財産法を中心として」NBL1128号抜刷りを読み始めました(第1日目)。
- 第1論文は,「具体的規範」と,具体的な規範の効力を制御する「メタ規範」との区別ができていないため,混乱が生じていることが分かりました。
- 第2論文は,公序に関するのか関しないのかの基準が不明確であり,有益性が減少していることが分かりました。また,付合を論じるに際して,民法248条の規定の性質に触れていない,担保物権の規定に反する特約の効力について論じるに際して,法定担保物権と約定担保物権の区別がなされていない,物権法定主義(民法175条),代理占有禁止(民法345条),流質禁止(民法349条)をことごとく脱法する譲渡担保がなぜ有効なのかについても触れていないなど,突っ込みどころ満載です。
- 一つ一つの論文を読みながら,論文の評価,質問事項をPDFファイル書き留めており,作業を楽しんでいます。
- 私の論文「民法改正案における『社会通念』概念の不要性」明治学院大学ローレビュー第23号(2016/03)1-20頁を読んだ 東京新聞の記者から,原発の差止請求を否定した判決の理由に出てくる「社会通念」とは何かについて,電話での取材を受けました。
- (HP訪問者の延べ人数:19,910人)
- 2018年10月6日(土) 曇り一時晴れ
- 日本私法学会シンポジウム資料(2018年10月14目)「強行法と任意法民法財産法を中心として」NBL1128号抜刷りを読んでいます(第2日目)。
- 第3論文は,第1論文と第2論文が探究している無駄な区別を良い意味でぶち壊すものとなっており,今回のシンポジウムが大荒れとなることを予感させるものでした。
- この論文を通じて,今回のシンポジウムのテーマは,「強行法と任意規定との区別」を云々するのではなく,「法律行為を全部,または,一部を無効とするメタ規範とはどのような規範か」を問うものであることが明らかとなったと思われます。
- 明治学院大学・消費者法研究会に参加して議論を盛り上げました。
- 第1報告:「アメリカの紛争前仲裁合意PDAAs等の有効性についての一考察」
- アメリカにおいては,仲裁制度が進展するにつれて,「紛争前仲裁合意(PDAAs:Pre-Dispute Arbitration Agreements)」が,国民の裁判を受ける権利を奪いかねない力を持つようになり,裁判所も,MacMahon事件(1987)以降,仲裁合意の有効性を認める傾向にあり,この考え方が日本でも採用されると,消費者保護を危機に陥れかねないという,重大な報告でした。
- 裁判を受ける権利という基本的人権が,仲裁廷(Arbitration Tribunal)の名の下に,仲裁合意という契約に過ぎない法律行為によって奪われかねないという重大な問題について,私は,仲裁法の附則第3条(消費者と事業者との間に成立した仲裁合意に関する特例)という経過措置が消滅する前に,消費者が,紛争解決の場所として,裁判所と中裁廷とを選択できる権利を確保するための新しい理論(仲裁合意を制御できるメタ規範)を作り出さなければならないのではないかと主張して,議論を盛り上げました。
- 第2報告:「仮想通貨の法的性質」
- フランスにおいて,仮想通貨がどのように定義され,どのような性質のものと考えられているかについての興味深い報告でした。
- 第1は,物(有体物,無体物)という視点からのアプローチです。消去法により,仮想通貨は,不動産(土地及び定着物)ではないので,残りの動産であるとし,しかも,有体物ではないので,無体動産(biens meubles incorporels)として定義できるという考え方です。無体物である知的財産に繋がるアプローチです。
- 第2は,債権(金銭債権)という視点からのアプローチであり,利用を合意した者の間での契約上の金銭(monnaie contractuel)のひとつであるという考え方です。金銭債権である外国通貨とか,預金通貨(預金債権)に繋がるアプローチです。
- 第3は,有価証券という視点からのアプローチであり,デリバティブ(biens divers)のひとつであるという考え方です。金融商品取引につながるアプローチです。
- 私は,仮想通貨(電子情報処理技術に信頼を置く,偽造できない公開記録(ブロックチェーン)としての情報),預金通貨(銀行(日銀を含む)に信頼を置く,記帳された情報),従来の通貨(国家に信頼を置く,偽造できない紙切れに記載された情報)を比較した時に,預金通貨の本質を中心に据えて考えると,いずれも,「何らかの信頼(担保)に基づいて排他的に処分できる情報」であるとの方向性が見えてくるのではないかと考え,議論を盛り上げました。
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- 2018年10月7日(日) 晴れ
- 昨日の明治学院大学・消費者法研究会の第2報告「仮想通貨の法的性質」の講評を書いていて,以下のような財産法の体系に関する着想を得ることができました。
- 個人財産
- 不動産(土地及びその定着物)
- その他の物
- 有体物(固体,液体,気体)
- 無体物
- 無体動産(知的財産)… 一定期間内の発明,商標,意匠,ノウハウ,ブランド,著作
- 有価証券(金融商品)… 株式,公社債,デリバティブ
- 金銭情報(偽造困難情報)… 期待値(宝くじなど),ポイント,電子マネー,仮想通貨,預金通貨(預金債権),通貨(偽造防止装置を施した媒体に記録された金銭情報)
- 秘密情報(管理可能情報)… 企業秘密,個人情報の一部
- エネルギー
- 公共財
- 私情協の法律学教育FD/ICT活用研究会および5分野連携による合同会議に出席して,議論を盛り上げます。
- アメリカ,ドイツを中心に研究活動を続けておられる法律学教育FD/ICT活用研究会の前委員長が久しぶりに帰国されて会議に参加されたので,一段と議論が盛り上がりました。
- 日本私法学会シンポジウム資料(2018年10月14目)「強行法と任意法民法財産法を中心として」NBL1128号抜刷りを読んでいます(第3日目)。
- (HP訪問者の延べ人数:19,960人)
- 2018年10月8日(月) 曇り後晴れ
- 明治学院大学・消費処方研究会,および,私情協の法律学教育FD/ICT活用研究会および5分野連携による合同会議を終えて,大分に帰ります。
- 帰りの新幹線の中で,日本私法学会シンポジウム資料(2018年10月14目)「強行法と任意法民法財産法を中心として」NBL1128号抜刷りを読み終えました(第4日目)。
- 最終論文まで読み込んだので,引き続き,各報告者に対する質問票の作成を開始します(第1日目)。
- (HP訪問者の延べ人数:19,980人)
- 2018年10月9日(火) 晴れのち曇り
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HPの閲覧者の延べ人数が2万人になりました。
閲覧者の皆さまに,心からお礼申し上げます。 |
日本私法学会シンポジウム資料(2018年10月14目)「強行法と任意法民法財産法を中心として」NBL1128号抜刷りを読み返しながら,各報告者に対する質問票を作成しています(第2日目)。
- 質問を行う基本的な視点は以下の通りです。
- Ⅰ 強行法規と任意法規との区別は,定義通り,公の秩序に関するものかどうかで足りる。
- Ⅱ 法律行為の効果を決定するために,「半強行規定」という概念を導入する必要はない。たとえ,導入するにしても,任意規定の強行法化を表現するための「片面的強行規定化」と,法律効果を左右しない「半強行規定化」とを厳密に区別すべきである。
- 片面的強行規定化…任意規定の強行法規化を表現する際に使う。
- 半強行規定…強行規定のうち,法律効果に影響を与えないものを表現する際に使う。
- Ⅲ 法律行為の効力に影響を与えるのは,民法90条の外は,メタ規範としての一般条項(民法通則)のみである。
- 1.法律行為は,公序良俗に違反しない限り,原則として有効である(民法90条の反対解釈)。
- 2.それにもかかわらず,法律行為が,強行法規であれ任意法規であれ,その規定の適用による場合に比して,情報力・交渉力弱者(社会的弱者)の権利を制限し,または,義務を加重するものであって,公共の福祉(民法1条1項),または,信義則(民法1条2項)に反して社会的弱者の利益を一方的に害するおそれがある場合には,それは,契約自由の濫用(民法1条3項)であって,その法律行為は,無効となる(書面契約の場合には,その条項は書かれなかったものとみなされる)。
- 今回も,シンポジウムの予稿集を読んでいるうちに,強行法・任意法に関する以上のような加賀山独自説が誕生しました。勉強って本当に楽しいです。
- (HP訪問者の延べ人数:20,000人)
- このHPの閲覧延べ人数が2万人を突破しました。閲覧者の皆様に心からお礼を申し上げます。
- このHPの閲覧者の延べ人数が3万人を超える日を予測してみました。
- ここ1年間の1日平均の延べ閲覧者数は,19人強です。そうすると,あと1万人の閲覧者数を達成するには,518日が必要です。したがって,このHPの閲覧者延べ人数が3万人を突破するのは,2020年3月10日になる予定です。
- 2020/3/10よりも,少しばかり達成日を短縮し,72歳の誕生日までに達成できるように,日々精進したいと考えております。
- 2018年10月10日(水) 曇り時々雨
- 末川民事法研究会の10月例会で,私が,第2報告として判例研究を行います。その題目と報告の概要について,以下の内容をメールに書き,末川民事法研究会の事務局に送りました。
- 【報告題目】
- 名義貸しによる割賦販売(個別信用購入あっせん)の効力と購入者の抗弁
-最三判平29・2・21民集71巻2号99頁(立替金等請求本訴,不当利得返還請求反訴事件)-
- 【報告者より】
- 本件は,個別信用購入あっせんにおいて,購入者が名義上の購入者となることを承諾してあっせん業者との間で立替払契約を締結した事案です。
- ただし,この契約は,販売業者の依頼に基づく締結されたものであり,販売業者は,その際に,名義借りをする理由,および,あっせん業者に対して支払がされない事態が生じたときは,販売業者が確実にあっせん業者に支払う意思および能力があることを購入者に対して告知していました。
- 本判決は,この告知は,割賦販売法35条の3の13第1項6号にいう「購入者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの」に当たるとして,購入者の請求を棄却した原審判断を破棄し,原審に差し戻しました。
- この事件では,購入者の請求を認容した第一審判決に対して,第二審判決がこれを取り消し,最高裁がこれを破棄して差し戻したのですが,この最高裁判決には反対意見が付されています。このように,本件は,名義貸しの場合の割賦販売契約(個別信用購入あっせん)の効力に関して,どのような解釈を行うべきかが問われている興味深い事件です。
- そこで,報告者は,消費者法の視点(消費者契約における組換え理論)を考慮しつつ,民法学(第三者のためにする契約における抗弁の対抗可能)の観点から個別信用購入あっせんの法的性質について検討し,この事例に関する結論を述べた上で,会員の皆様と議論を行いたいと考えております。
- <参照文献>千葉恵美子「個別信用購入あっせんと名義貸し-最三小判平29・2・21の意義と影響」金法20666号38-45頁
- 日本私法学会シンポジウム資料(2018年10月14目)「強行法と任意法民法財産法を中心として」NBL1128号抜刷りを読み返しながら,各報告者に対する質問票を作成しています(第3日目)。
- 来週火曜日の日出ロータリークラブの例会で報告する「大学(法学部)教授はどんな仕事をする人か」で紹介すべき本として,渡辺信一『AIに負けない「教育」』大修館(2018/8/1)を読み始めました。
- (HP訪問者の延べ人数:20,030人)
- 2018年10月11日(木) 雨のち曇り
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渡辺信一
『AIに負けない「教育」』
大修館(2018/8/1) |
日本私法学会シンポジウム(2018年10月14目)に参加するための列車の予約,ホテルの予約を済ませました。 - 日本私法学会シンポジウム資料(2018年10月14目)「強行法と任意法民法財産法を中心として」NBL1128号抜刷りを読み返しながら,各報告者に対する質問票を作成しています(第4日目)。
- 来週火曜日の日出ロータリークラブの例会で報告する「大学(法学部)教授はどんな仕事をする人か」で紹介すべき本として,渡辺信一『AIに負けない「教育」』大修館(2018/8/1)を読み終えました(第2日目)。
- 本書は,AIの進展から見えてくるAIの判断(統計的にだいたい正しいという判断)とは異なる人間の判断の特色(個人の「好み」や「価値観」が大きく関わった上での「その人にとってだいたい正しい」という判断)を踏まえて,教師の役割を明らかにしようとする本です。
- 本書の特色は,AIと人間の決定的な差異(西垣・AI原論によれば,開放系・疑似自律系と閉鎖系・自律系との差)を踏まえながらも,AI(たとえば,「アルファ碁」)のディープラーニングの方法が,「問題と答えから,問題の解決方法を自動的に学習している」ことにヒントを得て,これからの教育は,従来のように,「問題と解答方法を示して,解答する能力を育成する」ことだけでなく,むしろ,「問題と答えを与えて,解決方法を自分で考させる」という方法を積極的に採用すべきでないかと提言している点にあります。
- この点は,このような教育方法が,実は,伝統的な芸能の伝承においては,すでに,実践されていたことが本書において明らかにされており,筆者の障害者教育の実践によって得られた知見とあいまって,上記の提言の説得力を強めていると思います。
- (HP訪問者の延べ人数:20,060人)
- 2018年10月12日(金) 晴れ
- 今日開催される『法と経営研究』の編集会議に出席するため,また,明日の吉備国際大学大学院(通信制)知的財産学研究科の教授会と特別講演会に出席するため,さらに,明後日の日本私法学会シンポジウム(2018年10月14目)に参加するため,東京と仙台へ出張します。
- 日本私法学会シンポジウム資料(2018年10月14目)「強行法と任意法民法財産法を中心として」NBL1128号抜刷りを読み返しながら,各報告者に対する質問票を作成しています(第5日目)。
- (HP訪問者の延べ人数:20,090人)
- 2018年10月13日(土) 曇り
- 吉備国際大学大学院(通信制)知的財産学研究科の教授会に出席し,その後の特別講演会で,「著作権法のバラダイム転換-著作者第一主義から利用者第一主義への展望-」(PowerPoint)というタイトルの講演を行いました。
- 講演会の終了後,学生の研究指導を行い,明日の日本私法学会シンポジウムに参加するため,仙台へ移動しました。
- 仙台で,私法学会に参加した先生方とイタリアンレストランで夕食を楽しみました。楽しく議論をして,喉がかれるほどでした。
- (HP訪問者の延べ人数:20,110人)
- 2018年10月14日(日) 曇り
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2018年日本私法学会第82回大会シンポジウム
「強行法と任意法-民法財産法を中心として」
質疑応答の一場面 |
東北大学・川内萩ホールで開催される,日本私法学会第82回大会シンポジウム「強行法と任意法-民法財産法を中心として」シンポジウム)に参加しました。
- 午後からの質疑応答時間に,あらかじめ用意した私の「質問・意見」(本文のうち青字部分が,各報告者の報告を拝聴した後の修正部分であり,実際は,その部分を手書きで追加して提出しました)に沿いつつも,午前中の報告者の発言,午後の最初になされるコメンテーターの意見を考慮しながら,質疑を行いました。
- シンポジウムの途中で退席せざるを得なくなった高名な質問者から,質問の補足を依頼されたため,本人に代わって,その質問の趣旨を補足する発言をせざるを得なくなるというハプニングが生じました。
- 解答者からは,「委任に親しむ問題かどうか」というユーモアのある反撃を受けたりしましたが,無事に代理を務めることができました。
- 私自身の質問つについても,補足の質問をさせていただくことができました。その上,予定した時間内で議論を終わることもできて,とても充実した時間を過ごすことができました。
- 私法学会の終了後,シンポジウムに参加した先生と仙台駅付近のお店で,情報交換をしながら,夕食を楽しみました。
- 東京への帰りの東北新幹線は,二人掛けの窓際の席を予約していたのですが,通路側の乗客が,座席のテーブルに倒れこむようにして熟睡されていたので,起こすのも気の毒になり,筋トレを兼ねて,デッキでグーグルマップの位置情報を楽しみながら待機しました(Do
for others)。宇都宮付近でその乗客が目覚めた後は,窓際の席に座って,久しぶりの東北新幹線の旅を満喫することができました。
- (HP訪問者の延べ人数:20,130人)
- 2018年10月15日(月) 曇り後晴れ
- 吉備国際大学の著作権法に関する講演,一年に一度の私法学会のシンポジウムでの質疑を終えて,大分に帰ります。
- 東京からの帰りの新幹線の中で,シンポジウムの写真を整理し,質疑応答の一場面をアップロードしました。
- 吉備国際大学を経由して,毎日新聞広島支局の記者から,「社会通念」の意味について,電話取材の申込みがありました。
- 東京新聞(2018年10月6月号 24-25頁)の場合と同様で,私の論文「民法改正案における『社会通念』概念の不要性」明治学院大学法科大学院ローレビュー第24号(2016/03) 1-20頁を読んだ上での,「社会通念」を根拠に伊方原発の再稼働を認めた裁判所の判断を検討するための電話取材でした。
- 「社会通念」の意味だけでなく,「差止請求の要件」について詳しく説明しました。法学部出身ではない記者によって,どんな記事が出来上がるのか,楽しみです。
- (HP訪問者の延べ人数:20,160人)
- 2018年10月16日(火) 曇り 一時にわかあめ
- 吉備国際大学・大学院生の著作権法・民法のレポート課題の添削を行い,事務局に送りました。
- 日出ロータリークラブの例会に出席し,卓話「大学(法学部)教授とは,どんな仕事をする人か」を行いました。
- ゲストに経営学者を招待して,都合がつく折に,外来卓話をお願いすることができました。
- (HP訪問者の延べ人数:20,210人)
- 2018年10月17日(水) 晴れ後曇り
- 末川民事法研究会で報告する判例研究の準備を開始します。(第1日目)
- 城内明「判例研究・個別信用あっせんにおける名義貸し(最判平29・2・21)」『現代 消費者法』26号(2017/9/15)109-118頁
を入手したので,検討を開始しました。
- (HP訪問者の延べ人数:20,240人)
- 2018年10月18日(木) 晴れ
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ユヴァル・ノア・ハラリ
(柴田裕之訳)『ホモ・デウス:
テクノロジーとサピエンスの未来』
河出書房新社(2018/9/5) |
ニュースでも取り上げられた話題の本,ユヴァル・ノア・ハラリ(柴田裕之訳)『ホモ・デウス:テクノロジーとサピエンスの未来』〔上・下〕河出書房新社(2018/9/5)を購入して,読み始めました。(第1日目)。昨日から開始していた判例研究は,一時中断します。
- 人類は,不幸の原因である災厄(飢饉,疫病,戦争)を除去することに努めてきました。そして,それらを克服しつつある人類は,これまで神の領域としてあきらめてきた「不死,幸福,さらには神性」を目指すようになり,ホモ・サピエンス(知恵のヒト)から,「ホモ・デウス(神のヒト)」へと自らをアップグレードすることになるだろうというのがこの本書の趣旨のようです。そして,そこで生じる不幸と幸福についても論じられているとのことです。
- 遺伝子操作,人工知能の開発に邁進する人類なら,これまで愚かなこととされてきた「不死を求めて大金を無駄につぎ込む」こともやりかねないと思い,複雑な思いに駆られながらも,丁寧に読んでいます。
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- 2018年10月19日(金) 晴れ 一時雨(虹の撮影に成功)
- ユヴァル・ノア・ハラリ(柴田裕之訳)『ホモ・デウス:テクノロジーとサピエンスの未来』〔上・下〕河出書房新社(2018/9/5)を読んでいます。(第2日目)
〔上巻〕を読み終えました。
- 本書によれば,ヒトが他の動物を超えたのは,ヒトが道具を使える力を有していたからではなく,多数の個体を束ねて協力できる能力を獲得したからだとされています。そして,口述のコミュケーションだけでは最大でも150人の集団を維持することができるに過ぎないのに対して,ヒトは,書き言葉を獲得することによって,何万という集団を束ねることができるようになり,ついに地上に君臨するようになったとしています。しかも,多くの集団を束ねているのは,いつの時代も,ヒトの信頼を得ることができる「物語」を創作できる少数の集団であったことを明らかにしています。
- このような集団を束ねることのできる「物語」は,中世は,神の物語だったのですが,近・現代では,「人間至上主義」の物語が,神の物話にとって代わります。そして,20世紀には,人間至上主義の三つの分派(自由主義,社会主義,進化論主義)による「宗教戦争」を経て,自由主義が主流となりますが,21世紀の「物語」は人間至上主義の究極の目標である「不死,幸福,神性」を獲得するという物語に突き進むであろうというのが本書の予言です。その行く手に何が待ち構えているのかが,〔下巻〕の主要なテーマです。
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- 2018年10月20日(土) 晴れ
- ユヴァル・ノア・ハラリ(柴田裕之訳)『ホモ・デウス:テクノロジーとサピエンスの未来』〔上・下〕河出書房新社(2018/9/5)を読んでいます。(第3日目)
〔下〕を読み終わりました。
- 予告では,〔下巻〕において,ヒトがバイオテクノロジー(遺伝子操作)を利用してグレードアップし,「不死・幸福・神性」を備えたホモ・デウスになるという可能性が強調されていました。確かに,その可能性は否定されないのですが,本書を読み進めていくと,その話はトーンダウンしていきます。私が考えるに,遺伝子操作によって脳や身体ををグレードアップしても,社会の進化に合わせてそれをアップグレードする必要があるため,とても非効率です。それよりは,常にアップグレードできるAIロボットを味方につけて,AI(開放系)とヒト(閉鎖系)とがタッグを組んで協力し合う方が現実的であり,本書の筆者もそのことに薄々とは気づいているからではないかと思いました。
- したがって,〔下巻〕の中心的テーマは,もしも,ヒトを含めた生物の本質がアルゴリズムに過ぎないとすれば,AIによって人間至上主義は崩壊し,感覚によって情報を処理してきたヒトは,それよりも情報処理能力に勝るAIに支配権を奪われる可能性があるのではないかという問題です。ヒトよりもAIの方が情報処理能力が高ければ,ヒトが動物にしてきた無慈悲な行為を,今度は,支配者となったAIがヒトにするのを感受せざるを得ないのではないかという問題提起でもあります。
- しかし,ヒトと生物(ペット)とがお互いの長所と短所とを深く理解しながら仲良く暮らせるのであれば,ヒトとヒトもお互いに尊敬し合って仲良く暮らせるはずであり,極端な人間至上主義に陥ること回避できるでしょう。その上で,新しい仲間であるAI(ロボット)とを含めた「ペット,ヒト,ロボット」という新しい集団(家族のような小集団)を単位とした緩やかなグローバル・ネットワークを形成するならば,ヒトは,本書が主張するようなホモ・デウスになる必要もないように思われます。
- ペット・ヒト・ロボットの三位一体の協力関係という「物語」の下で,経済成長を最小限に押さえて地球環境の保全に努めるならば,ヒトは,ホモ・サピエンスのままで,21世紀の歴史を切り開いていくことができるのではないかというのが,楽観的に過ぎるかもしれませんが,本書を読み終えた私の感想です。
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- 2018年10月21日(日)
- 末川民事法研究会で報告する判例研究の準備をしています。(第2日目)
- 報告すべきテーマは,「名義貸しによる割賦販売(個別信用購入あっせん)の効力と購入者の抗弁-最三判平29・2・21民集71巻2号99頁(立替金等請求本訴,不当利得返還請求反訴事件)」です。
- 個別信用購入あっせん(クレジット契約とも,立替払契約ともいう)における名義貸しにはいろいろのタイプがありますが,本件で問題となったのは,資金繰りの苦しくなった販売業者が,あっせん業者からの金融を得る目的で,顧客に対し,「絶対に迷惑はかけないので,名義を貸してほしい」等と依頼し,承諾を得るというタイプです。
- 第1に,販売業者と顧客との関係を見れば,クレジット契約を締結する意思もないのに,クレジット会社に対しては,クレジット契約を締結して商品を購入したかのように振舞っているのですから,これは,民法94条の虚偽表示であり,善意の第三者には対抗できません(民法94条2項)。←顧客不利?
- しかし,第2に,クレジット会社と販売業者との関係を見ると,両者は,加盟店契約を締結して密接な関係にあります。しかも,クレジット会社と顧客との間のクレジット契約を締結するに際しては,契約締結交渉にあたるのは,クレジット会社ではなく,販売業者です。販売業者と顧客との間で契約の締結交渉が行われるのですから,販売業者は,クレジット会社の代理人,少なくとも表見代理人と考えなければ,契約自体が無効となりかねません。もしも,販売業者がクレジット会社の代理人(又は表見代理人)だとすると,民法101条に基づき,販売業者の詐欺とか悪意もクレジット会社の詐欺とか悪意とみなされますので,クレジット会社は,先に述べた販売業者と顧客との間の虚偽表示について,悪意の第三者となって,顧客に対抗できないことになります(民法94条2項の反対解釈)。←クレジット会社不利?
- しかも,第3に,販売業者を介して,クレジット会社と顧客との間で締結されるクレジット契約自体が,誰も論じていませんが,実は,虚偽表示なのです。厳密にいうと,クレジット会社に対して,顧客が販売業者のために立替払い(一括弁済)を依頼するという契約の根本構造が,虚偽表示なのです。その理由は,以下の通りです。←クレジット会社不利?
- 先に述べたように,クレジット契約は,顧客と販売業者との間の契約交渉から始まります。両者の交渉の前提条件は,一括弁済ではなく,分割弁済です。一括弁済ならば,そもそも,交渉は成り立ちません。販売業者は,顧客の分割弁済を前提として,それでは自らの経営が苦しくなるので,クレジット会社に全額弁済という融資を依頼しているのです。クレジット契約は,その実体は,割賦販売業者を支援するためのクレジット会社による割賦販売代金相当額の販売業者への融資です。
- それにもかかわらず,クレジット契約の契約条項は,あたかも,全額支払いができない顧客に融資するために,クレジット会社が販売業者に割賦代金の全額を一括立替払いするという形式をとっており,契約の実体(クレジット会社による割賦販売業者への割賦販売代金相当額の融資)と契約の形式(一括払いを拒絶している顧客のための一括立替払い)が食い違っている虚偽表示なのです。
- したがって,クレジット会社は,虚偽表示として無効である契約条項に基づいて顧客に請求することはできません。その契約の実体に即して,販売業者から,割賦販売代金について譲渡を受けた債権譲受人としての請求だけができると解釈しなければなりません(契約実体に即した契約の組み換え理論)。そうすると,問題は,虚偽表示の問題を経て,割賦代金債権の債務者と,割賦代金債権の譲受人との間の抗弁の対抗の問題に移行します。すなわち,債務者は,債権譲受人に対して,債権譲渡人との間に生じた抗弁をもって対抗できるかどうかという民法468条2項(改正後は,民法468条1項)の問題です。
- 第4に,結論は,虚偽表示の問題を脱して,現行民法468条2項,および,現行民法468条2項に関する以下の最高裁判決(最二判昭42・10・27民集21巻8号2161頁)の解釈によって導かれることになります。今後は,この判例の解釈を取り込んだ改正後の民法468条1項が解決のカギを握ることになるでしょう。←クレジット会社不利?
- 最二判昭42・10・27民集21巻8号2161頁
- 未完成仕事部分に関する請負報酬金債権の譲渡について,債務者の異議をとどめない承諾がされても,譲受人が右債権が未完成仕事部分に関する請負報酬金債権であることを知っていた場合には,債務者は、右債権の譲渡後に生じた仕事完成義務不履行を事由とする当該請負契約の解除をもつて譲受人に対抗することができる。右債権譲渡前に,〔双務契約により〕反対給付義務が発生している以上,債権譲渡時にすでに契約解除を生ずるに至るべき原因が存在していたものというべきだからである。
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- 2018年10月22日(月) 晴れ
- 末川民事法研究会で報告する判例研究の準備をしています。(第3日目)
- 末川民事法研究会で報告すべきテーマ「名義貸しによる割賦販売(個別信用購入あっせん)の効力と購入者の抗弁-最三判平29・2・21民集71巻2号99頁(立替金等請求本訴,不当利得返還請求反訴事件)」に関して,すでに公表されている以下の判例評釈をよく読んで,私の判例研究の原稿の執筆の構想を下書きを始めます。。
- 千葉恵美子「個別信用購入あっせんと名義貸し-最三小判平29・2・21の意義と影響」金法20666号(2017/5/25)38-45頁
- 城内明「判例研究 個別信用購入あっせんにおける名義貸し(最判平29・2・21)」現代消費者法36号(2017/9/15)109-118頁
- 大森直哉「個別信用購入あっせんにおいて,購入者が名義上の購入者となることを承諾してあっせん業者との間で立替払契約を締結した場合に,販売業者が上記購入者に対してした告知の内容が,割賦販売法35条の3の13第1項6号にいう『購入者の判断に影響を及ぼすことになる重要なもの』に該当するとされた事例」ジュリ1516号(2018/3/25)79-82頁
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- 2018年10月23日(火) 曇り一時本降りの雨 後晴れ
- 末川民事法研究会で報告する判例研究の準備をしています。(第4日目)
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個別信用購入あっせんを
一つの契約と考える学説(加賀山説) |
末川民事法研究会で報告すべき判決(最三判平29・2・21民集71巻2号99頁(立替金等請求本訴,不当利得返還請求反訴事件))に関する上記千葉評釈(金法20666号(2017/5/25)38-45頁)を読んでいて,信販会社・顧客間のクレジット契約は,販売会社・顧客間の売買契約とは別個独立の契約だとする,以下の平成23年最高裁判決(最三判平23・10・25民集65巻7号3114頁),および,その源流としての平成2年最高裁判決(最三判平2・2・20判タ731号91頁,判時1354号76頁)の判断を覆す必要があることを思い出しました。
- 最三判平23・10・25民集65巻7号3114頁
- 個品割賦購入あっせん〔現行法の個別信用購入あっせん〕において,購入者と販売業者との間の売買契約が公序良俗に反し無効とされる場合であっても,販売業者とあっせん業者との関係,販売業者の立替払契約締結手続への関与の内容および程度,販売業者の公序良俗に反する行為についてのあっせん業者の認識の有無および程度等に照らし,販売業者による公序良俗に反する行為の結果をあっせん業者に帰せしめ,売買契約と一体的に立替払契約についてもその効力を否定することを信義則上相当とする特段の事情があるときでない限り,売買契約と別個の契約である購入者とあっせん業者との間の立替払契約が無効となる余地はない。
- 最三判平2・2・20最三判平2・2・20判タ731号91頁,判時1354号76頁
- 個品割賦購入あっせんは,法的には,別個の契約関係である購入者・あっせん業者間の立替払契約と購入者・販売業者間の売買契約を前提とするものであるから,両契約が経済的,実質的に密接な関係にあることは否定し得ないとしても,購入者が売買契約上生じている事由をもって当然にあっせん業者に対抗することはできない。
- そうだとすると,私の論文(「『第三者のためにする契約』の活用による立替払い契約の購入者の保護」明治学院大学法科大学院ローレビュー第23号(2015/12)1-12頁)を手短に紹介して,会員と議論をするする必要がありそうです。
- 毎日新聞の記者から,「社会通念」(続き)と「差止請求における予見可能性」(新規)について,電話取材を受けました。予見可能性の必要性(無過失責任の場合には疑問が生じる)と,立証が必要とされる場合の立証責任(厳格責任における立証責任の転換)について説明しだすと熱が入ってしまい,ロータリークラブに出席する時間を忘れるほどでした(会長が迎えに来てくださったので,取材を中断して無事に出席できました)。
- 日出ロータリークラブの例会に出席しました。
- 席上配布された『ロータリーの友』10月号(66巻10号)48頁の「声」欄に私の投書が掲載されていたので,「ニコボックス(Smile Box)」で会員に詳しく紹介しておきました。
- 【対象記事】RIテーマ紹介「インスピレーションになろう」(7月号20頁)
- 【感想】RIのテーマ〔BE THE INSPIRATION〕の翻訳〔インスピレーションになろう〕について
- 日本で「インスピレーション」を使う場合,霊感とか,思い付きといった意味で使われることが多く,このままでは「霊感を感じる人になろう」と誤解する人がいると思います。アメリカのロックバンド「シカゴ」の歌にあるように,
THE INSPIRATION の訳は「勇気を与えてくれる人」です。したがって,「人に勇気を与える人になろう」にすれば,分かりやすいと思います。
- 本日の外来卓話は,日出町の有名なお寺の住職による「大谷光瑞(1876-1948)の観光都市建設私案について」でした。戦後間もない1947年に建てられた構想ですが,日出町を含んだ都市計画案で,興味深く拝聴しました。
- (HP訪問者の延べ人数:20,360人)
- 2018年10月24日(水) 晴れ
- 末川民事法研究会で報告する判例研究(最三判平29・2・21民集71巻2号99頁(立替金等請求本訴,不当利得返還請求反訴事件))の準備をしています。(第5日目)
- 判例研究の全体構想がまとまったので,完成に向けて,執筆を進めます(第1日目)。
- (HP訪問者の延べ人数:20,380人)
- 2018年10月25日(木) 晴れ
- 末川民事法研究会で報告する判例研究(最三判平29・2・21民集71巻2号99頁(立替金等請求本訴,不当利得返還請求反訴事件))の準備をしています。(第6日目)
- 判例研究の全体構想がまとまったので,完成に向けて,執筆を進めます(第2日目)。
- 私の論文「民法改正案における『社会通念』概念の不要性」明治学院大学法科大学院ローレビュー第24号(2016/03) 1-20頁を読んだ朝日新聞大阪本社の記者から,吉備国際大学を通じて,電話取材の申込みがありました。「社会通念」に関する電話取材の申込みは,東京新聞(取材記事の発刊は10月6日 ),毎日新聞に続いて3件目になります。
- 「社会通念」を根拠に伊方原発の再稼働を認めた高裁判決に基づいて10月27日に原発が再稼働されるのを契機にして,裁判所が「社会通念」を根拠に重大な判断をすることの問題点を掘り下げてみたいとのことだったので,30分ほど電話で解説をしました。記事が公表されたら,その新聞を送ってくれるとのことでした。
- (HP訪問者の延べ人数:20,400人)
- 2018年10月26 日(金) 晴れ後雨 (寒さで寝室の窓ガラスがはじめて曇ったのに気づきました。書斎にコタツをセットしました。)
- 末川民事法研究会で報告する判例研究(最三判平29・2・21民集71巻2号99頁(立替金等請求本訴,不当利得返還請求反訴事件))の準備をしています。(第7日目)
- 判例研究の全体構想がまとまったので,執筆を進め,今日で完成させました(第4日目)。
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- 2018年10月27日(土) 晴れ
- 今日,明治学院大学で開催される白金法学会の白金法政フォーラムに出席するため,東京に出張します。引き続き,明日,末川民事法研究会で判例研究(最三判平29・2・21民集71巻2号99頁(立替金等請求本訴,不当利得返還請求反訴事件))の報告をするため,京都に出張します。
- 東京行きの新幹線の中で,末川民事法研究会で報告する判例研究の原稿の改訂を行いました。
- 白金法政フォーラムで,上山泰(新潟大学教授)の講演「障害者権利条約の要請を踏まえた成年後見制度の最新動向」を拝聴しました。この講演を通じて,わが国の成年後見制度が親族後見人が中心を占めていた時代から専門職後見人が中心となる時代へとシフトし,障害者権利条約(12条)のめざす「代理・代行決定から本人の意思決定支援へ」という目標からは,むしろ逸脱する傾向にあるという現状を認識することができました。
- 私は,以下の3点について質問しました。議論を通じて,わが国では,事務管理の考え方に対する理解が十分でないことを改めて実感しました。
- 障害者権利条約の観点からは,一律に行為能力を制限する成年後見制度に問題があるのに対して,民法改正によって新設された意思無能力制度(民法3の2) に問題はないのか。無効ではなく,追認可能な取消しとすべきではなかったのか。
- 障害者権利条約がめざす「意思決定支援」に最も親和的な制度は,民法697条以下の「事務管理」であると考えるが,なぜ事務管理の規定について全く言及せず,この制度の活用を推進しようとしないのか。
- 民法108条の改正によって,専門職による代理行為が利益相反を助長することになる恐れがあるが,この点についてどのような対応が必要か。
- 白金法政フォーラムの講演会の終了後の懇親会,および,二次会に出席し,先生方と議論を楽しみました。
- 民事訴訟法の先生から,「民法改正によって,片務契約とされてきた消費貸借についても,諾成契約化が進行しており,双務契約の範囲が広がっている。この場合,双務契約における牽連関係として,双務契約に必然的に伴うと考えられてきた同時履行の抗弁権(民法533条)が,必ずしも,必然的とはいえなくなっているのではないか」との質問を受けました。私は,以下のように回答しました。
- 同時履行の抗弁権は,履行の順序に関する関する規定であり,双務契約と密接不可分の関係にあるわけではありません。留置権の抗弁権,相殺の抗弁権も,その実質は,牽連関係に基づく同時履行(同時消滅)の抗弁権ですが,双務契約とは無関係です。
- 反対に,双務契約だからといって,貸借関係においては,同時履行は生じませんし,さらに役務契約(雇用,請負,有償委任,有償寄託)では,双務契約であっても,すべて役務が先履行となり,報酬請求権は後払いとなって,同時履行とはなりません。。
- そればかりでなく,瑕疵担保責任から生じる損害賠償請求権については,双務契約から必然的に生じる履行請求権ではないにもかかわらず,現行法においては,損害賠償請求権と代金・報酬請求権との関係において,同時履行の抗弁権の規定が準用されてきました(民法571条,634条2項)。
- 民法改正によって,これらの「同時履行の抗弁権の個別規定」がすべて削除されてしまったのは,「同時履行の抗弁権の悪しき一般化」であり,「双務契約と同履行の抗弁権とは密接不可分の関係にある」という誤った観念を助長してします。この点(有害な削除)においても,今回の民法改正は,改正ではなく,改悪だと思います。
- (HP訪問者の延べ人数:20,450人)
- 2018年10月28日(日) 晴れ
- 末川民事法研究会で判例研究の報告をするため,東京から京都に移動します。
- 第1報告:判例研究「名義貸しによる割賦販売(個別信用購入あっせん)の効力と購入者の抗弁」(最三判平29・2・21民集71巻2号99頁(立替金等請求本訴,不当利得返還請求反訴事件))
- 以下のような歴史的経緯を踏まえた上で,常に原点(割賦販売の基本ユニット)に遡って責任の所在を明確にするという判例研究の手法については会員の会員の理解を得ることができたように思います。
- ①売買契約(同時履行)
- →②割賦販売契約(異時履行(準消費貸借)・購入者信用の完成) <消費者販売信用の基本ユニット>というすべての問題の原点
- →③ローン提携販売(金融機関による販売業者信用の開始・販売業者の民法569条2項責任)
- →④個品割賦購入あっせん(クレジット会社による販売者信用の進展・販売業者の民法569条1項への責任軽減。購入者への責任転嫁の始まりと抗弁権の接続による改善)
- 立替払契約の虚構(割賦販売によってすでに信用を受けている購入者は,クレジット会社に対して,販売業者への一括弁済を依頼する理由も意思も存在しない:一括弁済依頼意思の不存在)に気づかず,立替払契約の別個独立性を妄信する最高裁判決(最三判平23・10・25民集65巻7号3114頁)によって,甚大な弊害が発生し続けている)
- 最三判平23・10・25民集65巻7号3114頁
- 売買契約が公序良俗に反し無効とされる場合であっても,…特段の事情があるときでない限り,売買契約と別個の契約である購入者とあっせん業者との間の立替払契約が無効となる余地はない。
- →⑤個別信用購入あっせん(一括立替払契約という虚構の契約に対するの購入者取消権付与と信義則による制限)
- しかし,以下のような,わが国で一人しか主張していない個別信用購入あっせん・唯一契約説(加賀山説)については,残念ながら,会員の理解を得ることができなかったようです。
- 個別信用購入あっせんとは,販売業者(要約者)と購入者(諾約者)との間の割賦販売契約を前提とし,その割賦代金債権をクレジット会社(受益者)に譲渡するという唯一の契約である「第三者のためにする契約」によって生じる三者間取引であり,「立替払契約」という一括弁済契約は,購入者の真の意思が存在しない虚構に過ぎず,そこには,単に,クレジット会社による受益の意思表示が存在するのみである。
- 新設された,割賦販売法第35条の3の13(個別信用購入あっせん関係受領契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し)は,虚構の立替払契約を取り消すことができるという,当然すぎて,あってもなくても同じ条文に過ぎない。
- 第2報告:「仕組債に関する法人顧客への説明義務」(最高裁第3小法廷平成28年3月15日判決(判時2302号,判タ1424号103頁,金法2046号72頁,金法1495号8頁))
- 本判決は,専門家同士の金融商品取引に関して,高裁段階で説明義務違反が認められた貴重な裁判例なのですが,最高裁は,高裁の認定事実に対して,的確な反論をしないまま,上告を棄却しています。
- これまで,説明義務違反については,どのような内容の説明をしていれば,どのような損害が回避できたのかがポイントとなってきたのですが,本判決では,その点が明確となっておらず,金融商品取引における金融工学上の知識の不足が判決において歯切れの悪さを生じさせています。
- 今回の報告で興味深かった点は,従来は,専門家に対する説明義務について,その説明は簡単でよいと割り切っていたのですが,そうとは限らないとの指摘でした。確かに,専門家であれば,詳しい説明をしても,よく理解でき,詳しい説明の方が,損害回避に役立つ。これに対して,素人への説明は,詳しく説明しても理解できないことが多いので,むしろ,損害回避のための要点だけを完結に説明するのがよいという指摘は,日ごろ,学力のレベルの違う学生を相手に講義をしている先生方には,とても納得のいく指摘のようでした。
- (HP訪問者の延べ人数:20,470人)
- 2018年10月29日(月) 晴れ
- 京大の留学生に中国語会話のレッスンをしてもらいました。
- 留学生に教えてもらって,台湾の民法(中国語)をダウンロードしました。将来の研究に活かせそうです。
- 新幹線に乗ろうと,京都駅に繋がるコンコース歩いていたら,東京から来ていた明治学院大学・消費者法研究会の会員に遭遇しました。喫茶店で話し合った結果,来月の研究報告のテーマを「著作権法のパラダイムシフト」よりも,消費者法にふさわしいと思われる,昨日行った判例研究のテーマ「名義貸しによる割賦販売(個別信用購入あっせん)の効力と購入者の抗弁」へと変更することにしました。
- 東京出張(白金法政フォーラムでのコメンテーター),京都出張(末川民事法研究会での報告)を終えて,大分に帰ります。
- (HP訪問者の延べ人数:20,480人)
- 2018年10月30日(火) 晴れ
- 末川民事法研究会での議論,および,研究会のメンバーからいただいた判例批評の資料を踏まえて,判例研究「名義貸しによる割賦販売(個別信用購入あっせん)の効力と購入者の抗弁」の改定作業を開始します。(第1日目)
- 東京・京都への出張で4日間休んでいた,父の見舞いを再開しました。
- 日出ロータリークラブの例会に出席します。
- (HP訪問者の延べ人数:20,510人)
- 2018年10月31日(水) 曇り
- 末川民事法研究会での議論,および,研究会のメンバーからいただいた判例批評の資料を踏まえて,判例研究「名義貸しによる割賦販売(個別信用購入あっせん)の効力と購入者の抗弁」の改定作業を続けています。(第2日目)
- お花を買って,父の見舞いに行きました。朝食はあまり食べられなかったが,昼食は,すべて完食したとのことで,安心しました。
- (HP訪問者の延べ人数:20,530人)
- 2018年11月1日(木) 晴れ
- 2018年11月2日(金) 晴れ
- 2018年11月3日(土) 晴れ 文化の日
- 『法と経営研究』の編集会議の結果を出版社に報告し,『法と経営研究』第2号の発刊について,出版社と打ち合わせをした後,大分に帰ります。
- 『法と経営研究』について,出版社からは,投稿論文のうち数表があまりに多ものについて,それでは読者が理解できないので,数表は言葉で説明するか,グラフ化するなどの方法によって読者に理解できるようにして欲しいとの要望が出ました。学術的な視点と読者の視点との調和が大切であることを実感しました。
- 民法改正によって生じた体系的不整合のために,講義の準備に難儀している先生方多い現状に鑑み,『求められる改正民法の教え方』というブックレットの出版企画が持ち上がりました。検討の結果,緊急に出版することになり,「余人をもって代えがたい」とされた私が,1週間程度で書き下ろすことに決まりました。
- 末川民事法研究会での議論,および,研究会のメンバーからいただいた判例批評の資料を踏まえて,判例研究「名義貸しによる割賦販売(個別信用購入あっせん)の効力と購入者の抗弁」の改定作業を続けています。(第5日目)
- (HP訪問者の延べ人数:20,570人)
- 2018年11月4日(日) 晴れ
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宇佐神宮 |
日出ロータリークラブのメンバーとして,宇佐八幡RC創立30周年記念式典に参加しました。 - 加賀山茂『求められる改正民法の教え方』信山社ブックレット(2018)の執筆を開始します(第1日目)。
- (HP訪問者の延べ人数:20,580人)
- 2018年11月5日(月) 晴れ
- 末川民事法研究会での議論,および,研究会のメンバーからいただいた判例批評の資料を踏まえて,判例研究「名義貸しによる割賦販売(個別信用購入あっせん)の効力と購入者の抗弁」の改定作業を続けています。(第6日目)
- 最近購入したAcrobat DCと従来から利用していたArobat XI Proとが相互干渉を起こしたためか,Word文章等をPDFに変換できないという不具合が生じていました。そこで,Adobe社のサポート係りに相談してアドバイスを受け,いったんAcrobat DCをアンイントールすることにしました。そうすると,AcrobatXI Proが正常に作動して,問題が解決しました。せっかく購入したのですが,しばらくは,Acrobat DCの使用を中断して,様子を見ることにします。
- 父が入所している特別養護老人ホームで「東京オペラシンガーズ」を招いての「日本の歌」のコンサートが開催されたので,参加しました。プロの歌声はさすがで,楽しいひと時を過ごすことができました。最後に「ふるさと」を皆で歌う機会があり,思い切りハモってみました。
- (HP訪問者の延べ人数:20,590人)
- 2018年11月6日(火) 晴れ
- 2018年11月7日(水) 晴れ (暦の上では立冬だが,暖かい))
- 末川民事法研究会での議論,および,研究会のメンバーからいただいた判例批評の資料を踏まえて,判例研究「名義貸しによる割賦販売(個別信用購入あっせん)の効力と購入者の抗弁」の改定作業を続けています。(第8日目)
- 上記の判例(最三判平29・2・21民集71巻2号99頁(立替金等請求本訴,不当利得返還請求反訴事件))に関するすべての判例評釈について,比較対照表を作成して,上記の判例研究に追加しました。
- (HP訪問者の延べ人数:20,630人)
- 2018年11月8日(木) 晴れ後曇り後雨
- 末川民事法研究会での議論,および,研究会のメンバーからいただいた判例批評の資料を踏まえて,判例研究「名義貸しによる割賦販売(個別信用購入あっせん)の効力と購入者の抗弁」の改定作業を続けています。(第9日目) 今日で,消費者法研究会での報告原稿(上記判例評釈・第2版)を完成させました。
- 加賀山茂『求められる改正民法の教え方』信山社ブックレット(2018)の執筆をしています(第2日目)。
- (HP訪問者の延べ人数:20,660人)
- 2018年11月9日(金) 曇り後晴れ
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日出RCの揃いのジャケットを着て,
秋の交通安全キャンペーンに参加 |
日出ロータリークラブ()の会員として,火曜日にいただいた揃いのジャケットを着て,「横断歩道マナーアップキャンペーン」に参加しました。 - 明治学院大学・消費者法研究会で,判例研究「名義貸しによる割賦販売(個別信用購入あっせん)の効力と購入者の抗弁」を報告するため,東京に出張します。
- 新幹線の中で,加賀山茂『求められる改正民法の教え方』信山社ブックレット(2018)の執筆を続けました(第4日目)。
- 加賀山茂『求められる改正民法の教え方』信山社ブックレット(2018)の執筆をしています(第3日目)。
- 博士論文を執筆中の大学院生に会って,躓いている箇所についてアドバイスをするとともに,WordのOutline機能の上手な使い方を伝授しました。
- (HP訪問者の延べ人数:20,680人)
- 2018年11月10日(金) 晴れ一時雨
- 加賀山茂『求められる改正民法の教え方』信山社ブックレット(2018)の執筆をしています(第4日目)。
- 午前中に,歯科医院に寄って,歯のクリーニングをしてもらいます。
- 午後から,明治学院大学・消費者法研究会に出席して,議論をもりあげました。
- 第1報告:「詐欺罪における財産損害-神戸地裁平成29・9・22LEX/DV25547424を素材として-」
- ライブコンサートのチケットを営利目的で転売する意思があるのにその意思がないように偽ってチケットを購入したことが詐欺罪に該当するとした判決を正当化する報告でした。
- 私は,「騙された人に『一般財産の減少がない』という場合でも罰する」というのは,条文上は詐欺罪の構成要件に該当しているように見えても,それでは,「財産犯の領域を逸脱することになる」との立場から,徹底的な反論を試み,議論を盛り上げました。
- 第2報告:判例研究「名義貸しによる割賦販売(個別信用購入あっせん)の効力と購入者の抗弁」を報告し,質疑応答をしました。
- 個別信用購入あっせんの構造および法的性質に関して,「第三者のためにする契約」を活用することの面白さは会員に理解してもらうことができました。
- 販売業者の不実告知の内容の分析,民法で解決しようとする場合のクレジット会社による抗弁を切断する特約に対する対処法,人助けのための名義貸しと共同不法行為の成否について,質問が出て,議論が盛り上がりました。
- (HP訪問者の延べ人数:20,690人)
- 2018年11月11日(日) 晴れ
- 明治学院大学・消費者法研究会での判例研究「名義貸しによる割賦販売(個別信用購入あっせん)の効力と購入者の抗弁」の報告を終えて,大分に帰ります。
- 新横浜に寄って,一昨年,中国語を教えていただいていた先生に久しぶりにお会いして,先生に紹介していただいたロータリークラブの米山奨学金の留学生と一緒に楽しく歓談しました。
- 新幹線の中で,加賀山茂『求められる改正民法の教え方』信山社ブックレット(2018)の執筆を続けます(第5日目)。 約2万字の第1ヴァージョンを完成させました。
- Ⅰ はじめに-改正民法を教える教員の戸惑い
- Ⅱ 民法教員が説明に窮する代表的な論点
- 1. 無効と取消しの境界の崩壊
- (1) 意思無能力者の法律行為(無効),制限行為能力者の法律行為(取消し)
- (2) 意思の不存在(無効)と瑕疵ある意思表示(取消し)との関係
- 2.用語法の混乱
- (3) 「時効の中断」から,「時効の更新」へ
- (4) 「時効の中止」から「時効の完成猶予」へ
- 3.利益相反行為の制御不能
- (5) 自己契約及び双方代理の許諾による代理人のやりたい放題
- (6) 管財人なしの小破産手続における一債権者のやりたい放題
- 4.債務不履行における履行「不能」の役割の終焉
- (7) 履行不能と履行拒絶との関係
- (8) 履行遅滞と履行不能との関係
- 5.検証不可能な用語の採用
- (9)「善意」か,「善意かつ無過失」か
- (10) 取引上の「社会通念」
- Ⅲ 民法担当教員を混乱に陥れる改正法の失敗の原因
- 1.諮問不適合の改正内容
- 2.法制審議会の委員に真の専門家が選任されなかった理由
- Ⅵ 参考文献
- (HP訪問者の延べ人数:20,700人)
- 2018年11月12日(月) 雨
- 加賀山茂『求められる改正民法の教え方』信山社ブックレット(2018)の 約2万字の第1ヴァージョンを出版社に送って,以下の点について,編集者の意見を伺うことにしました。
- 学生と教員との質疑応答を10問に限定したが,これを20問ほどに拡張して,質疑応答をメインにした5万字のブックレットにするのがよいか?(あと2週間が必要)
- それとも,質疑応答は多少増加させる程度にして,さらに改正法の全体評価を追加して5万字のブックレットにすべきか?(あと3日で完成できる)
- (HP訪問者の延べ人数:20,730人)
- 2018年11月13日(火) 曇り 時々晴れ
- 加賀山茂『求められる改正民法の教え方』信山社ブックレット(2018)の 約2万字の第1ヴァージョンを出版社に送って,編集者の意見を伺ったところ,あと2週間の余裕をいただいたので,学生と教員との質疑応答を現在の10問から20問ほどに拡張して,質疑応答をメインにした5万字のブックレットにすることをめざして,執筆を継続しています。
以下の項目を追加しました。
- 日出ロータリークラブの例会に出席しました。今日は,米山奨学金の留学生(フランス人)との対話があり,少しだけですが久しぶりにフランス語の会話を楽しむことができました。
- (HP訪問者の延べ人数:20,750人)
- 2018年11月14日(水) 晴れ
- 加賀山茂『求められる改正民法の教え方』信山社ブックレット(2018)の執筆を継続しています。 以下の項目を追加しました。
- 6.解釈に全面的に依存する無責任な改正
- (12) 買主の損害賠償請求権・解除権 (改正法564条)
- (HP訪問者の延べ人数:20,770人)
- 2018年11月15日(木) 晴れ
- 加賀山茂『求められる改正民法の教え方』信山社ブックレット(2018)の執筆を継続しています。 以下の項目を追加しました。
- 参考資料
- 改正の主要論点に関する条文(改正法・現行法・再改正法案)対照表
- (HP訪問者の延べ人数:20,790人)
- 2018年11月16日(金) 晴れ後曇り 後雨
- 加賀山茂『求められる改正民法の教え方』信山社ブックレット(2018)の執筆を継続しています。 本文が完成したので,「はしがき」と「あとがき」とを追加して,第2ヴァージョンを完成させました。
- はしがき
- 民法(債権関係)改正法を教えることは容易なことではありません。学生からの素朴な質問・ひねった質問に答えるには,これまで出版されている概説書を読んでもはあまり役に立たないでしょう。従来の概説書は,改正法の立法者の立場で書かれており,改正に反対の立場を考慮していないからです。
- 学生の素朴で鋭い質問に遭遇して,教壇で立ち往生をするという失態を演じる前に,民法担当教員は,本書の想定想定問答を読んで,恥ずかしいことにならない準備をしておきましょう。
- 本書の想定問答では,私法学会のメンバーの中で,最も「嫌な質問」をすることで定評のある筆者が,学生に成り代わって,「教員が最も嫌がる質問」を連発しています。この想定問答に対応できる準備をしておけば,少なくとも,学生の前で立ち往生をする悲劇を未然に防止できるはずです。
- あとがき
- 教えられたことは,分かった気になるものの,身につきにくいものです。これに対して,自ら学んだことは必ず身につきます。
- しかし,勉強嫌いな人たちが本当に学ぶためには,誰かに教えるのが一番です(教えることは,学ぶことである)。
- 教えるというという機会を与えられた時にこそ,人は一番真剣に学ぶからです。大学の教員が優れているのは,学生に教えなければならないという義務を負うことによって,教員が,学生よりもはるかに真剣に学んでいるからなのです。
- したがって,教員が本当に学生の学力を向上させようと思うのであれば,学生にも教える機会を与える必要があります。ゼミによって学生たちの学力が飛躍的に向上するのは,学生たちが前に立って教えるということが義務づけられ,恥ずかしくない報告をするために,ゼミの準備において,学生たちが教え合うからです。教える側に回る学生が伸びて,教わる側の学生が伸びないのは,教える側の学生は,教えられる側の学生以上に真剣に学んでいるからです。だから,一番いいのは,「教え合う」ことを通じて「学び合う」ことなのです。
- 教えるために真剣に学んだ教員の講義を聞いて,学生が素朴で鋭い質問をする。それに答えるために先生はより一層真剣に学ぶ。この繰り返しによって,教員は,見違えるほどに成長していきます。そうだとすれば,学生にも,このような成長の機会が与えられるべきでしょう。ゼミだけでなく,講義においてもこのような機会を学生たちに提供しようとする試みこそが,アクティブラーニングとか,反転授業といわれている新しい教育方法なのです。
- 本書を読んだ教員が,新しい教育方法に目覚め,色々と工夫しながら,学生たちに教える機会を与え,教員と学生が共に教えあい,共に学び合う環境を作り上げることになることを願っています。
- (HP訪問者の延べ人数:20,800人)
- 2018年11月17日(土) 晴れ後曇り
- 加賀山茂『求められる改正民法の教え方』信山社ブックレット(2018)の執筆を継続しています。
- 改正の主要論点に関する条文(改正法・現行法・再改正法案)対照表に改正法120条を追加しました。
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IR第2720地区 地区大会
(ホルトホール大分) |
ローターリークラブ地区大会(ホルトホール大分)に出席しました。 大分の弁護士会に所属する方にもお会いしたので,近著を贈呈しました。
- 地区大会(第2日目)に参加して,素晴らしい地区大会だったとの印象を持ちました。このような素晴らしい企画を実行されたホストロータリークラブに敬意を表したいと思います。以下に,私の印象に残ったことを3点に絞って述べます。
- 1.本会議のアトラクション(津久見樫の実少年少女合唱団)
- 私は,一昨年に日出町に転居してきた者であり,日出RCに入会して1年目であり,本会議場のホルトホール大分に来たのも初めてでした。
- 本会議場に入ったとたんに,美しく,しかも,歌詞が明瞭に聞こえる歌声に魅了されました。合唱の場合,ハーモニーが重視されて,歌の歌詞が聞き取れないことが多いのですが,この合唱団は,美しいハーモニーと歌詞の明瞭さが両立しており,久しぶりに理想的な合唱に出会うことができ,歌声に聞きほれました。今日はこれで帰ってもよいと思うほどに感激しました。
- 2.RI会長代理の挨拶
- ロータリークラブの理念を確認できる格調の高い挨拶で,話に引き込まれました。ただし,少しばかり残念だったのは,RI会長代理が,バリー・ラシンRI会長の言葉“Be
the Inspiration”を引用して,「ロータリーの奉仕が,未来に向けて,人々のより良い生活につながりますように,インスピレーションになって下さい」(会報16頁)と述べられたことです。
バリー・ラシン会長が述べておられる“the Inspiration”は,英語の辞書を引いてみればわかるように,「鼓舞させる人,激励となる人,すなわち,勇気を鼓舞する人」という意味です。これを,「インスピレーション(霊感)」といったのでは,意味がつながりません。
- バリー・ラシンRI会長の言葉“Be the Inspiration”は,意味がつながる日本語に訳すと,「奉仕を勇気づける人になろう」となるのであり,これなら,だれでも理解できます。
- “Be the Inspiration”という今年度のRI会長のテーマについて,その意味も分からずに「インスピレーションになろう」と言い続けているようでは,ロータリークラブの四つのテストの最初の項目である「真実かどうか」にも反するばかりでなく,すべてのロータリアンは,「ボーっと生きてんじゃねえよ!」と,五歳児の「チコちゃんに叱られる」ことになるのではないかと思いました。
- 3.記念講演「トランプ大統領の動向と日本への影響」
- さすがに外交官のキャリアを積まれた方の講演で,トランプ大統領の思考方法が透けて見えるほどに説得力がありました。
- 惜しいと思ったのは,フロアーとの質疑応答の時間がなかったことです。もしも,質疑応答の時間があったら,私としては,日露の領土交渉について,トランプ大統領がどのような対応をすると思われるのかを伺うつもりでした。
- わが国は,日米安保条約と地位協定に基づいて,日本国のいかなる地域においても,米軍が自由に基地を設置し運用することを認めています。したがって,もしも,北方領土が返還されたら,以下のような深刻な問題が生じるでしょう。
- 第1に,北方領土に米軍基地が置かれることを日本国は阻止することができません。
- 第2に,返還されるべき領土について,日露が米軍基地を置かないとする協定(密約)を結んだとしても,それは,米軍には対抗できません。わが国は,米軍を縛ることはできないのです。
- 第3に,わが国の政府が,ロシアとの間で,北方領土に米軍基地を置かないという約束をするならば,米軍基地に苦しんでいる基地周辺の住民,特に,沖縄の人々から,なぜ,北方領土にだけ米軍基地がないのかという抗議が噴出し,ひいては,米軍基地反対運動が激化することになって,収拾がつかなくなるでしょう。
- そんなわけですから,米軍を統帥するトランプ大統領が,この問題について,どのような考えを持っているのか,誰もが興味を持つと思われます。このような質問が許されなかったことは,まことに残念でした。
- したがって,このような興味深い講演会を企画する際には,主催者は,フロアーからの質問を受け付ける時間の余裕を設けるべきだと思いました。
将来,日出RCが記念行事を開催する場合には,ぜひとも,質疑応答の時間を取るようにいたしましょう。
- (HP訪問者の延べ人数:20,840人)
- 2018年11月18日(日) 晴れ後曇り後雨
- 加賀山茂『求められる改正民法の教え方』信山社ブックレット(2018)の執筆を継続しています。
- 本文について,全面的な原稿校正をしています。 原稿の文字数は,目標としていた5万字に達しました。
- (HP訪問者の延べ人数:20,850人)
- 2018年11月19 日(月) 雨後曇り後晴れ
- 加賀山茂『求められる改正民法の教え方』信山社ブックレット(2018)の執筆を継続しています。
- 文字数が5万字となったVer.3の原稿を完成させ出版社に送付します。
- 日産会長カルロス・ゴーン(64)が,有価証券報告書に自らの報酬を過小に報告したとして,金融商品取引法の容疑でに逮捕されました。この問題を「法と経営」の視点から分析することが求められることになると思われます。
- 道徳的な視点からは,一方では,悪事を働いたものは懲らしめるべきだと考えるでしょう。他方では,つぶれそうになった会社を会社を救った恩人を粗末に扱ってよいのかと考えることになるでしょう。そうすると,ジレンマに陥ってしまいます。
- 損得勘定の視点からは,一方では,不正行為を働いて会社に損害を与えた責任は追及すべきだが,長期的な視点からみると,会長を解任すれば,つぶれそうになった過去の経営状態が再現しかねない。会社に与えた損害を賠償させ,高額報酬を見直した上で,会社に利益をもたらすためには,引き続き経営手腕を発揮してもらってはどうかと考えるでしょう。他方では,高額報酬だかれこそ経営手腕を発揮していたのだから,報酬を減額すれば営手腕を発揮できるかどうかわからない。過去に戻らないような経営戦略の下で人心一新による経営を行って,悪化したイメージを立て直すべきではないか考えることになるでしょう。そうすると,やはり,ジレンマに陥ってしまいます。
- それでは,「法と経営」の視点からは,どのように考えるべきなのでしょうか。この問題をうまく解決できる視点を提供できてこそ,「法と経営」の存在価値が見出されるのだと思います。
- 第1は,腐敗防止の視点でしょう。アクトン卿の「権力は腐敗に向かう。絶対的権力は絶対的に腐敗する。」という警告の正しさが,今回の事件でも証明されたといえるでしょう。腐敗防止の方法は,以下の三つです。
- 絶対的な期間制限:役職の任期を,最大4年に限定することです。これ以上に任期を延長すると,必ず腐敗が生じます。
- 1年目は業務の引継ぎです。従来の路線を引き継ぎつつ,新たな視点から業務の改革に着手します。
- 2年目は,独自の戦略を実行します。これで最初の任期を終えて,更新するかどうかが審査されます。更新されたら,あと2年,業務を続けることができます。
- 3年目は,独自の戦略を発展させます。対外的にはブルーオーシャンを切り開き,対内的には,リーダーとフォロワーを育てます。リーダーとフォロワーも固定せず,順次交代して両方の役割を経験させます。
- 4年目は,成果を伸ばしつつ複数の後継者の養成に努めます。4年が経過したら,例外を認めず,必ず役職を交代しなければなりません。
- 権力の分立:権力の一極集中を禁じ,相互監視のシステムを導入します。また,利益相反行為については,代理権を認めず,特別代理人を選任するか,全体会議による承認手続きを義務づけます。
- わが国おける絶対的権力は,すべて男性の手にあります。これを改善せずして,権力の分立を語れないのではないかと,私は考えています。
- 具体的には,すべての権力をいったん女性に「大政奉還」し,その後,徐々に女男平等を回復するというほか,女男平等を実現する方法はないのではないか(償いプロジェクト)というのが,私の個人的な見解です。
- 簡易な解任手続:任期途中でも,腐敗(背任行為)が生じたら,背任の理由を問わず,解任ができる制度を確保することです。民法の委任の規定,すなわち,民法651条(委任の無理由解除)が基本となります。
- 憲法15条1項は,「公務員を選定し,およびこれを罷免することは,国民固有の権利である」と規定していますが,これを実現するための具体的な法律が規定されていないため,有名無実となっています。
- この制度を実現することができるならば,議会だけに任せない国民による国家統治(ガバナンス)が実現できます。経営者だけに任せない,株主による企業統治(コーポレート・ガバナンス)も,これに続くことになるでしょう。
- わずかに,憲法79条2項~4項が,最高裁判所の裁判官について,国民の手による(国民審査による)裁判官の罷免を規定していますが,これまで一度も罷免の実績がないことから,この制度も有名無実化しています。これを実質化することが,法教育の最終目標です。
- 第2は,民事法と刑事法の協働の視点でしょう。
- 今回の解任劇には,民事責任の追及,すなわち,経営者の解任を実現するために,刑事責任の追及が多いな役割を果たしています。一旦権力の集中が実現してしまうと,個々の力で,権力者を引きずり下ろすことは困難です。国家権力を利用した今回の解任劇は,刑事責任の追及が,民事責任御追及を容易にした典型例です。
- ただし,国家権力も腐敗を免れません。特に,司法権力の中枢にある検察組織に対しては,国民による罷免手続が全く規定されていないため,常に権力の濫用の危険が伴うことを忘れてはなりません。 しかも,証明が困難な内心の意思である故意(故意犯)を中心に組み立てられているにもかかわらず,「証拠法(Law of Evidence)」という歯止めを有していない刑事法とそれを武器にしている検察組織は,もともと,腐敗の構造を内在しているのです。
- すでに,「日産社内で通常のガバナンスに基づいてゴーン氏を追い落とすことができないので,特捜部の力を借りてクーデターを起こし,特捜部もそれに加担したように見える」との指摘がなされています。権力が中立であった試しは稀だというのが現実です。
- 今回の逮捕劇は,刑事法の中に取り込まれた「司法取引」があってこそ,内部告発が功を奏することになったとされています。
- ただし,今回の逮捕容疑である「虚偽記載の事実は客観的に明らかで,司法取引の対象となる『捜査協力』が考えられないので正式の司法取引はできません。日産の経営幹部との間で『ヤミ取引』が行われた可能性があります」との指摘がなされています
- いずれにしても,今後は,刑事法に内在する腐敗の芽を摘み取るために,わが国に欠けている「証拠法(Law of Evidence)」を制定する必要があります。そして,民事と刑事に共通する厳格な「証拠法」を制定する過程を通じて,刑事法に内在する腐敗の芽が摘み取られるならば,民事と刑事の垣根が段階的に取り外されることになるでしょう。これと同様に,法と経営の垣根を段階的に取り壊していく試みが,わが国誕生したばかりの「法と経営」の目標の一つなのです。
- 第3は,民間経営と国家経営とで,共通の視点を実現していくことでしょう。これが,「法と経営」が取り組むべき今後の課題となります。
- 今回の事件を契機として,民間の企業統治(コーポレート・ガバナンス)は,進展を続けていくでしょう。これに対応する国家経営は,民間の会計原則も無視した,放漫経営が続いています。民間企業が遵守している」会計原則を,破綻しかけている国家財政にも適用していくことが,「法と経営」課題の一つとなると思います。
- 企業経営は,競争に敗れたり,景気変動の波に飲みこまれたり,東日本大震災のように,自然災害に会ったりすると,破綻の危機に瀕します。そして,放漫経営によって自滅します。
- 国家の滅亡は,以前は,自然災害と戦争と財政破綻によって引き起こされました。現在の喫緊の課題は,財政破綻の防止ではないでしょうか。
- 第1の自然災害については,危険は遠ざかってはいません。例えば,阿蘇山のカルデラ爆発が発生すると,日本中が灰に覆われて滅亡するといわれていますし,南海トラフ巨大地震が発生ると,国家経済が破綻の危機に瀕するといわれています。しかし,この様な自然災害を未然に防止する力は,人類にはありません。
- 第2の戦争については,原爆が開発されたことによって,かえって世界規模の戦争が抑止されるようにり,したがって,戦争による国家滅亡の危機はかなり遠のいたように見えます。戦争に代わって警戒すべきは,むしろ,テロリスト等によるサイバー攻撃による国家的なインフラの破壊でしょう。この点については,「法と経営」による解決策が模索されつつあります。
- 第3の財政危機については,第1・第2よりも差し迫ったの課題であり,しかも,人知を結集すれば,未然の防止が可能だと考えられています。「法と経営」が取り組むべき課題が,国家における会計原則のルール化だと,私は考えています。
- (HP訪問者の延べ人数:20,870人)
- 2018年11月20 日(火) 晴れ後曇り
- 吉備国際大学・大学院生の著作権法・民法の第3回のレポート課題の添削を行い,事務局に送ります。
- 加賀山茂「法と経営の融合を実現するための法技術 -第三者のためにする契約-」の構想を練り始めます。
- 日出ロータリークラブの例会に出席します。
- (HP訪問者の延べ人数:20,880人)
- 2018年11月21日(水) 晴れ後曇り後雨
- 加賀山茂「法と経営の融合を実現するための法技術 -第三者のためにする契約-」の執筆を開始します(第1日目)。
- (HP訪問者の延べ人数:20,900人)
- 2018年11月22日(木) 雨のち曇り後晴
- 加賀山茂「法と経営の融合を実現するための法技術 -第三者のためにする契約-」の執筆を行っています(第2日目)。
- 11月19日のゴーン日産会長の逮捕・解任劇を「法と経営」の視点からどのように位置づけるべきかを考え,原稿に追加できるかどうか検討しています。
- (HP訪問者の延べ人数:20,920人)
- 2018年11月23日(金) 勤労感謝の日 晴たり曇ったり
- 加賀山茂「法と経営の融合を実現するための法技術 -第三者のためにする契約-」の執筆を行っています(第3日目)。
- 11月19日のゴーン日産会長の逮捕・解任劇を「法と経営」の視点からどのように位置づけるべきかを考えたので,その結果を「はじめに」,または,「おわりに」で言及することにします。
- 依頼されていた論文の査読をして,その結果をメールで編集者に送付しました。
- (HP訪問者の延べ人数:20,940人)
- 2018年11月24日(土) 晴
- 民法学研究会(同志社大),および,末川民事法研究会(立命館大)に出席するため,京都に出張します。
- 行きの新幹線の中で,民法学研究会(人の死と生)の報告者の執筆論文を読んで,以下の質問をすることを思いつきました。
- 研究報告:「損害賠償法における人の死と生 ―人と家族の捉え方―」
- 想定質問1:家族の集合論(法概念の出発点)
- 報告者は,「民事責任法が家族と関わる場面を包括的または総合的に分析する作業については,ほとんど試みられることがなかった」との問題提起から出発している。
- しかし,家族とは何か,その内包と外延を明らかにせずに,民事責任(第三者からの家族・家族のメンバーに対する侵害行為に対して,家族のメンバーは連帯債権を取得するのか?反対に,家族のメンバーが行った第三者への侵害行為に対して,家族のメンバーは,連帯債務を負うのか?)について,明確な判断を下すことはできないのではないか?
- 想定質問2:家族のメンバー(法定家族,約定家族という考え方を基本として,組合理論を応用しつつ家族を再構成することは可能か?)
- 民法711条では,姉妹兄弟は,権利主体から除外されている。この問題との関係で,生計を別にする姉妹兄弟は家族から除外することができるか?
- 民法893条では,親に重大な侮辱を加えた子に対して,親はその子を推定相続人から廃除することが認められている。親は,生計を別にする子を,反対に,子は親を家族からを除外することができるか?
- 一人会社という概念が成立しているように,一人家族という概念は成立するか?
- 現状におけるペット,近未来におけるAIロボットは,家族のメンバーになり得るか?
- 実際の報告は,「死亡による損害」に関する報告が中心を占めたので,「人は必ず死亡し,かつ今すぐ死亡するかもしれない」ということを万人が認めているにもかかわらず,「死すべき人の死亡によって,その人に損害が生じると考えることこそが奇妙なことではないのか?」という質問をして,議論を盛り上げました。
- (HP訪問者の延べ人数:20,950人)
- 2018年11月25日(日) 晴れ
- 京大の留学生に中国語会話のレッスンをしてもらいました。 いつもながら,先生の質問に汗だくになりながら必死に答える練習をしています。
- 末川民事法研究会に出席して,議論を盛り上げました。
- 『末川民事法研究』第4号編集会議を開催します。査読委員による審査結果(案)の検討と承認を行いました。
- 第1報告:「共同相続された預貯金債権の遺産分割」(最大決平28・12・19民集70巻8号2121頁,最一判平29・4・6判時2337号34頁・判タ1437号67頁)
- 現在の判例・学説に対して,率直な疑問をぶつける報告であり,優れた報告であると感じました。
- 私は,従来の判例(最判昭29・4・8民集8巻4号819頁),および,学説が,民法427条を分割債権・債務であると考えていることが誤りではないのかという以下の見解を述べて,議論を盛り上げました(今回の発言は,末川民事法研究会の私の発言の中で,最も重要な発言であったと自負しているのですが,後で一部の会員に感想を伺ったところ,残念ながら会員には,私の考え方がよく理解ができなかったようです)。
- 民法427条の立法理由は,以下の通りです。
- 「本案に於ては,不可分債務,連帯債務及び保証債務の総則として本条を設け,以て其主義を明にせり。」
- そうだとすると,民法427条の見出し(現代語化の際に付加されたもの)が「分割債権及び分割債務」としていること自体が誤りであることがわかります(会場が一瞬,凍りつきました)。
- なぜなら,民法427条を「分割債権及び分割債務」と位置づけることは,この条文が,民法第三編(債権)第1章(総則)第3節(多数当事者の債権及び債務)第1款(総則)とされていること,すなわち,第2款(不可分債権及び不可分債務)~第5款(保証債務)を含めた,多数当事者の債権・債務関係の総則であることと矛盾するからです(私のこの発言の意味を理解するのが,会員には難しかったようです)。
- つまり,ほとんどの民法学者が誤解しているのとは異なり,民法427条は,可分債権・債務が,自動的に分割債権・債務となることを根拠づけるものでありません。
- 民法427条の意義は,可分債権・債務だけでなく,不可分債権・債務,連帯債権・債務,保証を含めて,証明がなされない限りは,その実質的な負担割合が多数当事者の人数に応じた割合となることを推定するものなのです。特に,債務者の一人が全額を支払った後の求償割合(実質的な負担割合)が明確でない場合に,民法427条は,その紛争を未然に防止するための重要な推定規定なのです。
- 民法427条が求償関係にとって重要な役割を果たすことは,立法理由書に書かれているばかりでなく,求償割合に疑問が生じた場合に,常に,この規定が使われていることからも明らかでしょう。
- 従来の民法427条の解釈が誤りであり,「可分債権・債務が自動的にに分割債権・債務に変じるものではない」ことが理解できれば,その後の処理は,理路整然と説明することが可能になります。
- なぜなら,民法898条,899条によって,相続財産(相続債権・債務を含む)は,共同相続人の共有に属するとされているのですから,その後の問題は,その共有が,各共有者によっていつでも分割可能な共有(民法249条以下,特に,256条)なのか,それとも,分割が解散時に制限される組合的共有(民法668条,685条以下)なのか,さらには,その共有が,民法906条以下の遺産分割手続によってのみ分割できる共有なのかを論じれば,それで済むことだからです。
- 遺産分割という家族法に分類されている問題について,財産法の根本的な見直し(原点への立ち返り)を通じて,議論することが重要だと感じました。
- 第2報告:「奄美群島にみる司法〔弁護士〕過疎の現状と課題」
- 司法過疎の真っただ中での若手弁護士の奮戦記であり,とても興味深い報告でした。
- 私は,法教育を普及させるためには,国民の法に対する不信感を払拭することが必要であり,なによりも,民事・刑事に共通の「証拠法(Evidence)」を制定して冤罪を防止に努めるべきではないかと主張しました。そうしないと,「刑事被告人の有罪率99.9%」,「行政事件における原告敗訴率90%」,「書面偏重で,口頭弁論を真面目にしない民事法廷」という恥ずべき日本の司法の実態を改善することができません。そのような努力をしない限り,司法への不信感から,日本人の平均的な法意識は,男女不平等・長子偏重を核として家制度を確立した明治民法のままにとどまるのではないでしょうか。
- (HP訪問者の延べ人数:20,970人)
- 2018年11月26日(月) 晴れ後曇り
- 民法学研究会,末川民事法研究会で議論を盛り上げる役目を終えて,大分に帰ります。
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平野敦士カール監修
『1時間だけ話を聞いてください。
仕事で本当に使える
経営学が分かります。』
宝島社(2018/12/10) |
京都駅中の書店で,平野敦士カール監修『1時間だけ話を聞いてください。仕事で本当に使える経営学が分かります。』宝島社(2018/12/10)という,ナンパ型・対話形式の本を見つけて衝動買いし,新幹線の中で読み終えました。経営学の復習になりました。
- 経営学の概要がこの1冊で分かるという触れ込みの本です。そうだとすると,時間に追われるビジネスマンにとって有難いことでしょう。
- 読んでみると,経営学の概要とはいえ,キャッシュフローとか,コア・コンピタンスという,実は奥深い概念も,非常にわかりやすく解説されており,定番の5F,4Pなどの略語も要領よく説明されています。
- しかも,起業に必要なビジネスモデルについては,最新のものを含めて,多数の事例が詳しく説明されており,対話形式であることもあって,飽きずに読むことができました。経営学を一通り学んだ人であれば,本当に,1時間で読み切ることもできて,しかも,復習になると思います。
- 経営全体について講義をする人にとっても,本書の太字部分を穴埋め問題として出題するならば,隔たりのない出題ができる上に,採点の効率もアップすると思われます。
- (HP訪問者の延べ人数:20,980人)
- 2018年11月27日(火) 雨後曇り
- 加賀山茂「法と経営の融合を実現するための法技術 -第三者のためにする契約-」の執筆を行います(第4日目)。
- タイトルを「法と経営のための事実関係の可視化の法技術とその応用」に変更して,法律・事実関係をベクトルで表現する記述を最初に持ってきて,論文を書き上げました。
- 日出ロータリークラブの例会に出席します。
- (HP訪問者の延べ人数:21,000人)
- このHPの閲覧延べ人数が2万人を超えたのは,10月9日のことだったので,48日で延べ1,000人の方に閲覧していただいた計算になります。1日に平均20人の方に見ていただいているという私の推測がこれで裏付けられました。毎日閲覧していただいている方々に,心からお礼申し上げます。
- 2018年11月28日(水) 曇り 後雨
- 『法と経営研究』第2号に掲載する以下の論文を完成させたので,原稿校正をしています。(第1日目)
- 加賀山茂「法と経営のための事実関係の可視化の法技術とその応用」
- Ⅰ 問題の所在
- Ⅱ 法律・事実関係を可視化できるベクトル的表現技術
- 1.事実関係の記述方法に関する現状
- 2.法律・事実関係を厳密に可視化する方法論の提唱
- 3.法律・実津関係の可視化のルールによる法学と経営学との架橋
- Ⅲ 事実関係の可視化に基づく法と経営の共通課題の検討
- 1.ローン提携販売 -割賦販売か,売買と消費貸借の結合か?
- (1) ローン提携販売の法律構成に関する3つの謎
- (2) 経営実態に基づいたローン提携販売の法的性質の再構成
- 2.割賦販売 ―消費者信用か,信用販売か?
- (1) 割賦販売は,特殊の売買契約か?
- (2) 割賦販売は,売買代金の準消費貸借(消費者ローン)
- 3.クレジット販売 -割賦販売か,売買と立替払の結合か?
- (1) クレジット契約の法的性質に関する従来の法律家の考え方
- (2) クレジット契約を一体として捉える経営の視点に接近する法的アプローチ
- Ⅳ 結論
- 参考文献
- (HP訪問者の延べ人数:21,020人)
- 2018年11月29日(木) 晴れ
- 『法と経営研究』第2号に掲載する以下の論文を完成させたので,原稿校正をしています。(第2日目)
- 加賀山茂「法と経営のための事実関係の可視化の法技術とその応用」の引用文献のチェックと追加を行い,完成原稿を出版社に送りました。
- 2日間,雨で休んでいたのですが,小春日和の晴天に恵まれたので,パンを焼いて,お花を買って,京都で購入したお土産を持って,父の見舞いに行ってました。食事もよく取れていて,安心しました。
- (HP訪問者の延べ人数:21,040人)
- 2018年11月30日(金) 晴れ
- 本日行われる,『求められる改正民法の教え方』,および,『法と経営研究』の第2号の編集打合せ(信山社)のため,並びに,明日,明治学院大学での特別講義(最三判平29・2・21民集71巻2号99頁の判例批評 を題材にした販売信用の考え方)を行うため,および,明治学院大学消費者法研究会(キャッシュレス化の現状と今後)に出席するため,東京に出張します。
- 明日,明治学院大学の民法ゼミで特別講義をするのですが,そのゼミの担当教授が,ゼミの学生たちに対して,あらかじめ,私の判例研究「名義貸しによる割賦販売(個別信用購入あっせん)の効力と購入者の抗弁(最三判平29・2・21民集71巻2号99頁)」(末川民事法研究に掲載予定),および,本件に関する判例批評を読んで,以下の3点について,自らの意見を記述すること求め,学生たちの個々の意見を表形式(無記名)にして,私に送ってくださいました。
- 判例(最三判平29・2・21民集71巻2号99頁)に対する意見
- 私の判例研究に関する意見・質問
- 本件に関する最も難解な千葉恵美子教授の判例研究「個別信用購入あっせんと名義貸し-最三小判平29・2・21の意義と影響」(金法2066号(2017年5月)38-45頁)に対する意見
- 講義の前に,すべての学生たちの意見を送っていただけると,学生たちの知的レベルがよくわかるので,どのような内容をどのような方法で講義し,また,どのような質問をすると,学生たちの知的レベルが向上するかがよくわかります。
- 早速,それぞれの学生たちの意見について,問題点を指摘した コメントを作成し,講義の終わりに,学生たちの意見書を返却することにしました。
- (HP訪問者の延べ人数:21,060人)
- 2018年12月1日(土)
- 明治学院大学の民法担当教授のゼミに参加して,招待講義を行いました。
- 個別信用購入あっせんの意味と割賦販売からの発展の歴史
- 売買→割賦販売 →ローン提携販売→個別信用購入あっせん
- 最三判平29・2・21民集71巻2号99頁の位置づけ
- 最三判平2・2・20判タ731号91頁,判時1354号76頁 →最三判平23・10・25民集65巻7号3114頁
- 本件に関する代表的な判例研究としての千葉恵美子「個別信用購入あっせんと名義貸し-最三小判平29・2・21の意義と影響」金法20666号(2017/5)38-45頁の検討
- 「売買契約と立替払契約が別の契約であれば,立替払契約の取消しを認めただけでは,顧客のクレジット会社に対する既払金の返還請求権の発生を基礎付けることはできない。クレジット会社は顧客に代わって販売業者への代金債務を弁済していることから,利得がないとする抗弁が可能であり,かえって,顧客が免責された価値について返還を請求できるはずである。」(44頁)
- 本件に関する民法(第三者のためにする契約,債権の売主の担保責任,共同不法行為,信義則)の適用の検討
- 民法537条~539条 ,民法569条1項,2項 ,民法719条 ,民法1条2項
- 明治学院大学・消費者法研究会に参加して議論を盛り上げます。
- 報告:キャッシュレス化の現状と今後
- インバウンドで日本全国を訪れる外国人観光客がクレジットカード等のキャッシュレス決済を利用できるようにと,政府は,キャッシュレス化を進めようとしています。しかし,わが国のキャッシュレス化の試みは,どの点をとっても,外国のシステムから大きく後れを取っています。どうしてこのような衰退が生じてしまったのでしょうか。
- さらに,キャッシュレス化の推進は,遠からず,銀行自体の不要化を招くことになるはずです。ところが,わが国の銀行は,諸外国の銀行とは異なり,キャッシュレス化の流れに対応するための改革を怠っており,旧来のシステム(メインフレームに依存した非効率なシステム)にしがみついているのが現状です。
- わが国の深刻な事態を前にして,打開策の議論は,諸外国の学生の知的レベルに追いつけないわが国の教員・学生たちの知的レベルをいかにして向上させるのか,研究開発に力を入れない企業風土をどのように改善すべきなのか,低成長時代に逆行するわが国の放漫財政をどのようにして改善すべきなのか等々,多方面へと発散し,残念ながら,収束へと向かうことは出来ませんでした。
- (HP訪問者の延べ人数:21,090人)
- 2018年12月2日(日) 曇り後雨
- 出版社との編集打合せ,並びに,明治学院大学での招待講義,および,消費者法研究会での議論を終えて,大分に帰ります。
- 加賀山茂『求められる改正民法の教え方』信山社ブックレット(2018)の執筆に際して,私は,改正民法に関する講義における「教師と学生との間での質疑応答」という場面設定を行っていました。
- ところが,昨日の出版社との編集打合せにおいて,出版社から,現在の学生は,先生を立ち往生させるようなレベルにはないので,場面設定を変えてほしいとの要望が出されました。
- 確かに,我々のような大学紛争時代の学生の中には,先生を立ち往生させるような猛者がいたのですが,現在の学生には,そのような学生はいないのかもしれないと考え直しました。そして,これまでの「教師と学生との間での質疑応答」という場面設定を以下のように変更することにしました。
- 新米教員がベテラン教員の前で,改正民法の模擬講義を行なう。
- その模擬講義を聴いたベテラン教員が,現行民法の立場から,鋭い質問・突っ込みを入れる。
- 改正民法に詳しい新米教員と,改正民法を勉強していないが現行民法に詳しいベテラン教員との間での対話(想定問答)を通じて,改正民法のあるべき講義像を模索する。
- 以上の場面設定に即して,帰りの新幹線の中で,執筆原稿を全面的に書き直す作業に着手しました。(第1日目)
- (HP訪問者の延べ人数:21,100人)
- 2018年12月3日(月) 雨
- 改正民法の講義における「教員と学生との間で質疑応答」という場面設定を変更して,「新米教員が行う改正民法の模擬講義に参加したベテラン教員との間で行われる想定問答」というコンセプトに変更して,加賀山茂『求められる改正民法の教え方』信山社ブックレット(2018)の原稿を全面的に書き直しています。(第2日目)
- 加賀山茂『求められる改正民法の教え方』信山社ブックレット(2019)の全面的な書き直しを完成させて,出版社に送りました。
- 吉備国際大学大学院(通信制)知的財産学研究科の定期試験問題(民法要論,著作権法特論)を作成しました。併せて,専門家の助言を得て,研究費による物品購入(ノートパソコン(DELL
Inspiron 15inch 3000))の購入申請を行いました。
- (HP訪問者の延べ人数:21,120人)
- 2018年12月4日(火) 晴れ後雨 気温が25℃という異例の高さを記録
- 定期試験問題の提出に際しては,各科目について,「出題の意図(模範解答)」に関する書類の提出が必要であることが分かり,それを作成しました。そして,定期試験問題と出題の意図とを合わせて,大学院の通信課に送りました。
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矢部宏治
『知ってはいけない2
日本の主権はこうして失われた』
講談社現代新書(2018/11/14) |
矢部宏治『知ってはいけない2 -日本の主権はこうして失われた』講談社現代新書(2018/11/14)を読み始めました。
- 前書に引き続き,本書では,「安保条約」と「日米地位協定」によって,国土の軍事利用権だけでなく,自国の軍隊(自衛隊)の指揮権や,巨額の兵器購入費などを言われるままに差し出しているのが,現在の日本という国の形であることが,さらに明確に述べられています。
- そればかりでなく,本書によると,日米地位協定・第2条4項bを根拠にした,今後の米軍の基地拡大のための戦略(「全自衛隊基地の米軍共同利用」計画)が以下のように描かれています。
- 「自衛隊基地」という隠れ蓑によって「米軍基地」への反対運動を消滅させることができる。
- 同じく,基地の運用経費をすべて日本側に負担させることができる。
- 今後海外での戦争で自衛隊を指揮するための,合同軍事演習を常に行うことができる。
- 危険を察知したときは,すぐに撤収して日本国外へ移動することができる。
- 本書によっても,「社会通念」の危うさがよく理解できます。 以下の一自衛隊員のつぶやきに,再度,耳を傾けるべきでしょう。
- 自衛隊が使っている兵器は,ほぼすべてアメリカ製で,コンピュータ制御のものは,データも暗号もGPSもすべて米軍とリンクされている。「戦争になったら,米軍の指揮下に入る」というようななまやさしい状態ではなく「最初から米軍の指揮下でしか動けない」。
- アメリカと敵対関係になったら,もう何もできない。自衛隊が守っているのは日本の国土ではなく,「在日米軍と米軍基地」だ。それが自衛隊の現実の任務だ(ある自衛隊員の見解)。
- 矢部宏治『日本はなぜ,「戦争ができる国」になったのか』集英社インターナショナル(2016)125-126頁。
- 日出ロータリークラブの例会に出席します。
- (HP訪問者の延べ人数:21,140人)
- 2018年12月5日(水) 晴れ
- 日出町図書館で借りた諸富祥彦『スマホに負けない子育てのススメ』主婦の友社(2018/9/30)を読んでいます。(第1日目)
- この本のキャッチフレーズは,「スマホ・リテラシーとは,『自分が主役なスマホとの関係性』をつくっていけるような人間になることです」というものです。
- この本の特色は,2012年のクリスマスプレゼントとして13歳の息子にスマホを貸し与えた,アメリカのボストン近郊に住む母親が作成した,以下のような「スマホ18の約束」が,家族の話し合いの「たたき台」として〔同時並行的に,スマホ関連会社が,家族をサポートするために取り組むべき,社会的責任の課題として〕,詳しく紹介されていることです(本書76-84頁)。
- これは母が買い,料金も払っているものです。あなたに貸し付けたスマートフォンです。
- パスワードは親が管理します。
- 父や母からの電話にも礼儀正しく,必ず電話に出ること。
- 学校がある日は午後7時半にスマホを母に返却すること。週末は夜9時になったら親にスマホを引渡すこと。夜の間は電源を切り,また朝7時半に電源を入れます。固定電話で電話すべきではない時間にメール〔日本ではLINE@(ライン)〕やスマホで話すことはいけません。お互いの家族のプライバシーを尊重しましょう。
- 学校に持って行ってはいけません。メール〔日本ではLINE@(ライン)〕ではなく対話をしなさい。人との会話は大切な技能です。
- 故障・紛失の際の修理や取替費用は,あなたが持ちます。その費用は自分で準備しておきなさい。
- 他の人に対して嘘をつくこと,バカにすること,欺くことに使ってはいけません。たとえ誘われても人を傷つけるような会話には参加しないことです。
- 面と向かっていえないことはメール〔日本ではLINE@(ライン)〕でも言わないこと。
- 自分を検閲しなさい。相手の親がいる前でいえないことはメール〔日本ではLINE@(ライン)〕でも言わないこと。
- ポルノは禁止。必要であればお父さんやお母さんに聞いてください。
- あなたは礼儀正しい子です。それを崩さぬよう公共の場では電源を切るか音を切り,しまっておくこと。
- 隠しておくべき自分のプライベートや,他人のプライベートの写真を送ったり受け取ったりしないこと。あなたは賢い子ですが,そうするようにと誘惑されることがあるでしょう。こうした行為は,あなたのこれからの人生を台無しにする恐れがあります。あなたよりも膨大な力を持つサイバー空間で一度外に出た悪い評判を消すことは困難だからです。
- むやみやたらに写真やビデオを撮らないこと。あなたの経験は永遠にあなたの中のメモリーに保存されます。
- たまにはスマホを家に置いて出かけましょう。スマホがなくても生きていけるようにしなさい。皆がしていることを逃がすのではないかというおそれよりも強くなりなさい。
- 新しい音楽又はクラシック音楽,または,あなたたちの世代皆が聞いている音楽とは違う音楽をダウンロードしてください。あなたの世代は歴史上で今までなかったくらいいろいろな音楽にアクセスできる世代です。それを活用してください。視野を広げてください。
- 時々ワードゲームや,パズルや,知能ゲームなどで遊んでください。
- 上を向いて歩いてください。あなたの周りの世界をよく見てください。鳥の鳴き声を聞いてください。知らない人と会話を持ってみてください。グーグル検索なしで考えてみてください。
- 最後に,あなたがミスを犯したならスマホを取り上げます。そして最初から考え直していきましょう。問題はあなただけの問題ではなく私たち家族の共同のプロジェクトだからです。
- このようなスマホ・リテラシーの考え方は,契約法(使用貸借,組合)家族法(親権・後見)の講義でも必要な教材として,活用すべきだと思います。
- (HP訪問者の延べ人数:21,160人)
- 2018年12月6日(木) 雨 後曇り
- 矢部宏治『知ってはいけない2 -日本の主権はこうして失われた』講談社現代新書(2018/11/14)を読み終わりました。
- 本書は,自民党の結成時の裏側にも言及しています。本書は,『アメリカ外交文書(FRUS: Foreign Relations of the United
States)』2006年版「編集後記」の記述を踏まえつつ,ティム・ワイナー(藤田博司=山田侑平=佐藤信行訳)『CIA秘話』<上・下>文芸春秋(2008,2011)の「自民党血統までの経緯」を引用して,「CIAは,1948年以降,外国の政治家を買収し続けていた。しかし世界の有力国で,将来の指導者〔岸首相〕をCIAが選んだ最初の国は日本だった。」と記しています。
- さらに,「岸は,アメリカに自分を売り込んで,こう言った。『もし私を支援してくれたら,この政党〔=自民党〕をつくり,アメリカの外交政策を支援します。経済的に支援してもらえれば,政治的に支援しますし,安保条約にも合意します。』…CIAと自民党の間で行われた最も重要なやりとりは,情報と金の交換だった。金は党を支援し,内部の情報提供者を雇うのに使われた。アメリカ側は,30年後に国会議員や閣僚,超量政治家になる,将来性のある若者との間に金銭による関係を確立した。…
- …外国の政治家を金で操ることにかけては,CIAは7年前にイタリアで手がけていたとき〔=1948年のイタリア総選挙〕より上手になっていた。現金が詰まったスーツケースを高級ホテルで手渡すというやり方ではなく,信用できるアメリカのビジネスマン〔=経済人〕を仲介役に使って協力相手の利益にあるような形で金を届けていた。こうした仲介役の中に,ロッキード社の役員がいた」と。
- このような記述を読んで,ロッキード事件とは何だったのかと,嘆息せざるを得ませんでした。
- SoftBankの通信設備に不具合が発生し,午後から携帯電話がつながらなくなりました。私は,自宅にいたため,直ぐに固定電話を使って昨日からの懸案事項の連絡をして難を逃れましたが,全国的には,スマホ決済を含めて,様々な問題が生じたようです。
- その後,不具合原因は,エリクソン社が世界各国に提供しているソフトウェアの欠陥によるものであることが判明し,旧システムに復帰することで不具合は解消しました。
- 「伊方原発再稼働 広島高裁が容認-安易すぎる論拠『社会通念』-」というタイトルの下に,以下のような私の「社会通念」に関する見解を引用した毎日新聞11月22日号が,署名入り記事を書いた記者から送られてきました。
- 「司法での社会通念の用いられ方を研究する加賀山茂・明治学院大学名誉教授(民法)によると,訴訟では遅くとも1910年代から使われ,法学者の間でも『あいまいな不確定概念で,裁判官の主観が入りやすい』と指摘する声が多いという。」
- この記事は,そのほかにも,原発関連訴訟で初めて「社会通念」という文言を使った東北電力女川原発差止訴訟仙台地裁判決(1994年)の元裁判長(現在弁護士)にも取材を行って,「無意識に裁判官個人の(現状維持型の)考え方が影響する。」などの貴重な見解を引き出している点で,深みのある良い記事に仕上がっていると思いました。
- (HP訪問者の延べ人数:21,180人)
- 2018年12月7日(金) 曇り 気温が通常の冬並みに下がり始めました。
- 日出町図書館で借りた諸富祥彦『スマホに負けない子育てのススメ』主婦の友社(2018/9/30)を読み終わりました。
- 本書には,以下のような,「思春期の子どもをもつ母親の悩み相談」が紹介されています(本書24頁)。このような事例が,わが国の津々浦々で生じているのでしょう。そうだとすると,この問題を深く考え,問題の解決に向かうべきことが,わが国の教育が抱える最大の緊急課題だと,私は考えています。
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息子は,中学生になってスマホを持つようになったところ,スマホばかリ見ていいるようになってしまいました。 |
いつでもLINE@を見ているか,ゲームをしているかしています。ごはんを食べるときもスマホは手放しませんし,お風呂に入っている時ですら,LINE@が来るとすぐ返事をします。最近は寝る時も枕元に置いています。
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勉強もまったく手につかない様子を見ていて,このままでは息子がダメになる思い,スマホを取り上げたところ大暴れしてきました。しまいには近くにあるものを投げつけてきたり,「このクソババア,おまえなんか死んでしまえ」とまで言われました。
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私も意地になって「そんなことを言うのだったら, スマホはもう渡さない」と言うと,息子の暴力はさらに激しくなってしまったため,私もケガなどしたくないのでとっさにスマホを返してしまいました。
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その後も息子は以前と変わらずスマホばかりいじっています。どうしたらいいのかわからず困りはてています。 |
- どうしてこんなことが起こるのか,本書では,人類が生み出した最強の「依存症」誘発マシンとしてのスマホの根源的な恐ろしさを分析し,解決法を含めて,分かりやすく解説しています。
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諸富祥彦
『スマホに負けない子育てのススメ』
主婦の友社(2018/9/30) |
子どものスマホ使用は1時間未満にさせる。1時間以上使うと,どんなに勉強しても成績は下がる(本書39頁)。 - スマホはこれまで人間が生み出した道具の中で,最も依存性が強くなる道具であるといっていいと思います(本書134頁)。
- まだ依存する前の子どもから,親がスマホを預かるのは,子どもがスマホ依存になるのを防ぐ良い方法です。しかし,すでに依存状態にある子供から取り上げるのは危険です。考えてみてください。アルコール中毒の人からアルコールを取り上げてうまくいくでしょうか?
激しく怒るだろうということは分かりますよね? スマホ依存も同じです。一番気をつけなければならないのは,スマホを無理やり取り上げないこと。とにかくこれに尽きます。カウンセリングをしているとわかるのですが,スマホを取り上げることによってトラブルが起きて,子どもが怒って暴力をふるい,親も振るい返して,家庭内暴力状況に入ってしまう。それが往々にしてヒートアップし,一生もののトラブルになってしまうのです(本書139頁)。
- ギャンブル異存はギャンブル場に行かないとなりません。アルコール依存はお酒を飲まないとなりません。でもスマホ依存は〔いつでもどこにでも持っていけるのがスマホなので〕普通の生活の場ででもなりうるのです(本書146頁) 。
- スマホのいちばん怖い点は依存性,中毒性です。絶えずスマホの刺激にさらされて,LINE@に2秒で返信しなくてはいけないというようなことをやっていると,「刺激が来たら反応する」だけのような,自動反応的な存在に成り下がってしまいます。生きる力の根源,「自分で自分の人生を生きる力」が奪われてしまいます。スマホ依存になるということは,イコール生きる力の根源を奪われてしまうことを意味しています。しかしこれはスマホ依存に限らず,あらゆる依存に共通する問題です。自分で自分の人生を生きるという主体性,自己選択の感覚が損なわれてしまうのが「依存」のいちばん大きな問題なのです(164頁)。
- その上で,第三者が介入する〔アドラー流の勇気づけの〕カウンセリングの重要性が語られた後,以下のフレーズが述べられています。
- 教育・子育ての目標は,例えば5歳の子どもであったら5歳のいい子を育てることではありません。今,中学生だったら,中学生としていい子供を育てることではありません。
子どもが30歳,40歳,50歳,60歳になった時に幸福に生きていける力を身につけることが教育目標だと考えています(本書166頁)。 →渡辺信一『AIに負けない教育』大修館(2018)
- 長い目で見ると,子育てとは,「子どもが自分で決めて自分で実行できる力をつくる」手助け〔勇気づけ〕を親がしていくことなのです(本書182頁)。
- (HP訪問者の延べ人数:21,200人)
- 2018年12月8日(土) 曇り
- 法制史学会中部部会第85回例会(大久保泰甫『ボワソナードと国際法:台湾出兵事件の透視図』岩波書店の書評報告,「福沢諭吉における文明と法」の報告)に出席するため名古屋に出張します。
- ブックレット『求められる改正民法の教え方』,および,「法と経営研究』第2号への掲載予定論文「販売信用の構造分析と事実関係の可視化-「法と経営」融合実現のための法技術(その1)」の執筆が完了したので,特急ソニック,および,新幹線の中で,中断していた『事務管理・不当利得・不法行為-他者への貢献
“Do for others” の民法学-』(法律学の森)の執筆を再開しました。
- 法制史学会中部部会第85回例会
- 第1報告:書評報告「大久保泰甫『ボワソナードと国際法:台湾出兵事件の透視図』岩波書店(2016)」
- 明治新政府の直面した対外危機,すなわち,1874(明治7)年8月~10月に日本の台湾出兵事件の外交交渉において,全権弁理大臣大久保利通の対清交渉を成功に導いたボワソナード法律顧問(私設秘書)の役割については,未解明であり,本書は,その点について,初めて明らかにしたものと評価できる。
- もっとも,英国駐清公使ウェードについては,石井孝『明治初期の日本と東アジア』有隣堂(1982)が明らかにしているが,国際法を駆使したボワソナードの役割については全く踏み込んでいない。
- 本書は,外交史研究のフレームを概念レベルから国際法と国際政治の実践過程へと引き上げたと評価できる。
- 私は,矢部宏治『知ってはいけない2 -日本の主権はこうして失われた』講談社現代新書(2018/11/14)を読んだばかりだったので,ボワソナードの役割をその逆ヴァージョンである,朝鮮戦争によって,日本の占領政策を変更せざるを得なかったマッカーサーの苦悩を解消させたダレスの役割(国連憲章第43条を同憲章第106条によって読み替えるという離れ業を使って日本の再軍備と永続的な米軍の日本占領を正当化することに成功)と対比するならば,国際法を駆使して明治政府を救ったボワソナードの役割をよりよく理解できるのではないかとのコメントをしました。
- 第2報告:「福澤諭吉における文明と法」
- 福澤の「文明論」,「国体論」における「法」の位置づけを探究することを通じて,福沢諭吉の「脱亜論」と穂積陳重の「万法帰一論」との近似性を明らかにしようとする試み。
- 私は,以下のように考え,報告者に質問しました。
- 穂積陳重の「万法帰一論」は,法律進化論に基づいて,法は必然的に「ローマ法族」へと進化するのであるから,「支那法族」を脱して「ローマ法族」へと転籍(脱亜・入欧)すべきであると考えるのに対して,福沢諭吉の「脱亜論」は,「独立自尊」の立場から,「脱亜」を強調しており,だからこそ,「入欧」への主張には至らなかったという点に違いがあるのではないのか。
- 報告者は,穂積陳重は,必然性を強調しているというよりも,脱亜への強い意図を持っており,その点は,福沢諭吉と同じではないかとの考えでした。
- (HP訪問者の延べ人数:21,220人)
- 2018年12月9日(日) 曇り後晴れ
- 法制史学会中部部会第85回例会・民法史研究会での議論を終え,大分に帰ります。
- ホテルのコンシエルジュに諸富祥彦『スマホに負けない子育てのススメ』主婦の友社(2018/9/30)を紹介し,スマホ依存について懇談しました。
- 帰りの新幹線の中で,昨日再開した『事務管理・不当利得・不法行為-他者への貢献 “Do for others” の民法学-』(法律学の森)の執筆を続けています。(第2日目)
- お願いしていた『求められる改正民法の教え方』の原稿校正の結果がメールで帰ってきたので,帰りの特急ソニックの中で指摘していただいたミスの校正をし,次いで,先方から送られてきた執筆中の原稿の校正をして差しあげ,Win
Winの関係を維持することができました。
- 共同編集者と『法と経営研究』の電話による編集会議を開催しました。こちらから発信したOCNのメールが先方に届いていないことが判明し,先方宛のメールは,以後,メーラーを変更することにしました。決議事項を明日出版社に報告し,進捗状況を電話で確認します。
- 明学時代の図書館の司書の方から久しぶりに電話があり,資格獲得の方法について懇談しました。
- (HP訪問者の延べ人数:21,230人)
- 2018年12月10日(月) 晴れ
- 加賀山茂『事務管理・不当利得・不法行為-他者への貢献 “Do for others” の民法学-』(法律学の森)の執筆を続けています。(第3日目)
- 出版社と『法と経営研究』の編集会議の報告,進捗状況等について,電話で打ち合わせをしました。
- (HP訪問者の延べ人数:21,250人)
- 2018年12月11日(火) 雨
- 良い本だったので,諸富祥彦『スマホに負けない子育てのススメ』主婦の友社(2018/9/30)のブック・レビューをしておきました。
- 加賀山茂『事務管理・不当利得・不法行為-他者への貢献 “Do for others” の民法学-』(法律学の森)の執筆を続けています。(第4日目)
- 日出ロータリークラブの例会(今回は忘年会を兼ねる)に出席します。
- ニコボックス(Smile Box)で,諸富祥彦『スマホに負けない子育てのススメ』主婦の友社(2018/9/30)を紹介したところ,孫にぴったりだとか,良い反響がありました。
- (HP訪問者の延べ人数:21,260人)
- 2018年12月12 日(水) 雨後曇り
- 加賀山茂『事務管理・不当利得・不法行為-他者への貢献 “Do for others” の民法学-』(法律学の森)の執筆を続けています。(第5日目)
- 日出ロータリークラブの週報(ニコボックス:Smile Box)の原稿を作成して,事務局に送付しました。
- (HP訪問者の延べ人数:21,280人)
- 2018年12月13日(木) 晴れ
- 加賀山茂『事務管理・不当利得・不法行為-他者への貢献 “Do for others” の民法学-』(法律学の森)の執筆を続けています。(第6日目)
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SAJ=野沢慎司編
緒倉珠巳=野沢慎司=菊池真理著
(マンガ:宮原あきこ)
『ステップファミリーのきほんをまなぶ』
金剛出版(2018/11/10) |
日出町立図書館で借りた SAJ=野沢慎司編,緒倉珠巳=野沢慎司=菊池真理著(マンガ:宮原あきこ)『ステップファミリーのきほんをまなぶ』金剛出版(2018/11/10) を読み始めました。 - (HP訪問者の延べ人数:21,310人)
- 2018年12月14日(金) 晴れ
- 日出町立図書館で借りた SAJ=野沢慎司編,緒倉珠巳=野沢慎司=菊池真理著(マンガ:宮原あきこ)『ステップファミリーのきほんをまなぶ』金剛出版(2018/11/10) を読んでいます(第2日目)。
- 実親,継親,継子のそれぞれの立場から,それぞれの心理を分析している点が参考になりました。特に,以下の継子の心理状態分析は素晴らしいと思いました。
- ステップファミリーの子どもたちには,「3つのL」 と呼ばれる共通点があります。英語ですべてLから始まる共通要素とは, Loss (喪失感), Loyalty (親に対する忠誠心), Lack of Control (死別・離別・再婚など自分でコントロールできない状況)の3つです。子どもたちが困難を経験し,心理的に不安定になる理由の多くは,この3つの要素に関連していると考えられます。(本書58頁)
- (HP訪問者の延べ人数:21,330人)
- 2018年12月15日(土) 晴れ
- 日出町立図書館で借りた SAJ=野沢慎司編,緒倉珠巳=野沢慎司=菊池真理著(マンガ:宮原あきこ)『ステップファミリーのきほんをまなぶ』金剛出版(2018/11/10)
を読んでいます(第3日目)。
- 本書を読んでいて,再婚家族の複雑な構造を従来の家系図とは異なるやり方で図示化する方法を考案しました。『愛の家族法』の執筆に向けて,強い味方を得ることができたように思います。
- (HP訪問者の延べ人数:21,350人)
- 2018年12月16日(日) 曇り後 雨
- 日出町立図書館で借りた SAJ=野沢慎司編,緒倉珠巳=野沢慎司=菊池真理著(マンガ:宮原あきこ)『ステップファミリーのきほんをまなぶ』金剛出版(2018/11/10) を読み終わりました(第4日目)。
- 本書を読んでみて,身分(法律婚,実親子,養親子)を前提とした従来の家族と,必ずしも身分を前提としない再婚家族(縁組をしない継親子関係,継姉妹兄弟関係など)との構造的な違いを理解するとともに,従来の家族も,実は,事実婚・事実上の養子など,身分に捕らわれない家族は存在していたのであって,従来の家族も,再婚家族の法律関係から学ぶことが多いことを実感しました。このことが,『愛の家族法』の執筆への強いインセンティブを与えてくれたように思います。
- 末川民事法研究会(2018年判例回顧1(民法総則,親族・相続),および,忘年会)に出席するため,京都に出張します。
- (HP訪問者の延べ人数:21,360人)
- 2018年12月17 日(月) 晴れ
- 末川民事法研究会(2018年判例回顧1(総則,親族・相続),および,忘年会)を終えて,大分に帰ります。
- 勤務校の吉備国際大学大学院(通信制)知的財産学研究科から,岡山駅前キャンパスに著書のコーナーを設置するので,最近出版された書籍の一覧を送ってほしいとの依頼がきました。
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加賀山茂 著作揃い(左10冊)/
還暦記念論文集/責任編集雑誌(右2冊)
(2018年12月現在) |
そこで,入手可能な書籍につき,値段を含めて,著書の一覧表を新しい順に作成してみました。図書購入費に余裕のある方は,以下の著作一覧を参考にして,図書室等に備えていただけると幸いです。
- 単著
- 加賀山茂『求められる法教育とは何か-他者への貢献“Do for others”の視点から事務管理,不当利得,不法行為を考える-』信山社(2018/8/30)120頁 \1,296
- 加賀山茂『民法条文100選-100ヵ条で学ぶ民法-(ひゃくみん)』信山社(2017/2/24)260頁 \2,808
- 加賀山茂『民法改正案の評価-債権関係法案の問題点と解決策』信山社(2015/11)146頁 \1,944
- 加賀山茂『民法(債権関係)改正法案の〔現・新〕条文対照表』信山社(2015/07)326頁 \2,160
- 加賀山茂『民法入門・担保法革命〕〔(ビジュアル民法講義シリーズ〕信山社(2013/12/12)96頁 \3,240
- 加賀山茂『債権担保法講義』日本評論社(2011/9/13)574頁 ¥4,104
- 加賀山茂『担保法 』〔現代民法シリーズ4〕信山社(2009/12/25)704頁 ¥7,344
- 加賀山茂『契約法講義』日本評論社(2007/11/1)580頁 ¥4,104
- 加賀山茂『現代民法学習法入門』信山社(2007/12)266頁 ¥3,024
- 加賀山茂『法律家のためのコンピュータ利用法―論理プログラミング入門』有斐閣(1990/2)330頁 ¥2,907
- 【近刊】加賀山茂『求められる改正民法の教え方』信山社(2019/1/15)120頁 \1,296(予定)
- 共著
- 加藤新太郎=太田勝造=大塚直=田髙寛貴編『加藤雅信先生古稀記念 21世紀民法学の挑戦』〔下巻〕信山社(2018/3/30) \20,736
- 深谷格=西内祐介編著『大改正時代における民法学の課題と展望』成文堂(2017/12) \16,200
- 植木哲(編)『法律行為論の諸相と展開: 高森八四郎先生古稀記念論文集』法律文化社(2013/9/30)¥9,720
- 加賀山茂=松浦好治編著『法情報学―ネットワーク時代の法学入門』有斐閣(2006/11/1) ¥3,672
- 記念論文集
- 松浦好治=松川正毅編著『市民法の新たな挑戦 ― 加賀山茂先生還暦記念』信山社(2013/2/5)704頁 ¥16,200
- 共同編集雑誌
- 加賀山茂=金城亜紀責任編集『法と経営研究』 〔創刊号〕信山社(2017/12) \3,456
- 【近刊】加賀山茂=金城亜紀責任編集『法と経営研究』〔第2号〕 信山社(2019/1/31) \3,456(予定)
- (HP訪問者の延べ人数:21,380人)
- 2018年12月18 日(火) 晴れ
- 岩本晃一『AIと日本の雇用』日本経済新聞出版(2018/11/20)を読み始めました。(第1日目)
- 近い将来,「寺子屋ひじ塾」を開設するに際して,現在の小・中学生が社会に巣立つ頃(10年~20年後)に,それらの若者が自立して生活することができるようになるためには,どのような能力が必要とされるのかを,AIとの共存という視点から検討する必要があります。本書は,最新のデータを駆使して,20年後の日本の雇用の状況を予測するものなので,参考になると思って,読んでいます。
- 日出ロータリークラブの例会に出席します。
- (HP訪問者の延べ人数:21,400人)
- 2018年12月19日(水) 晴れ
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岩本晃一
『AIと日本の雇用』
日本経済新聞出版
(2018/11/20) |
岩本晃一『AIと日本の雇用』日本経済新聞出版(2018/11/20)を読んでいます。(第2日目)
- AIが普及していく過程で,人間の雇用がどのように変化し,人間がしなければならないことは何なのかがわかりやす例は,以下のような電卓→経理ソフト→税理士ロボットでしょう(本書77-78頁,262-264頁)。
- 人工知能が導入されると,現実に起きる現象は,機械が担う作業と人間が担う作業への役割分担である。
- そろばん→電卓の発明と普及
- ある時,電卓という機械が発明された。それまで手計算またはそろばんで計算していたが,電卓で計算するようになった。人間が行っていた「計算」という作業(タスク)が,機械に代替されたのである。経理業務を行っている人間一人そのものを代替するロボットは出現していないが,計算が短時間でできるようになったため,経理課の職員は10人から9人に減った。
- 表計算ソフト→経理ソフトの発明と普及
- やがて経理ソフトが売り出された。人間そのものを代替するわけではないものの,さらに業務が効率化したため,職員は9人から6人に減った。この時,電卓よりもさらに高いスキルを要求される作業(タスク)が,機械に代替されたのである。
- 税理士ロボット?の発明→人間の役割?
- 人間に残された作業(タスク)は,政府が発表した新しい税制をどのように経理処理に反映させるかというかなり高いスキルを要求される作業(タスク)や,社内で他の部署と打ち合わせするなどコミュニケーションを必要とする作業(タスク)などとなる。
- 政府から新しく発表された税制を理解し,それを自社にどのように適用するかといったかなり高度で複雑な思考ができない人は,経理課では仕事をやらせてもらえなくなってしまう。また,対人関係が不得意で,ある部署の経理内容に疑問があっても,その部署ときちんと打ち合わせができない人もまた経理課にはいられなくなってしまう。
- 機械化が進行する中で,従来のスキルに甘んじる人間(常に学習をし続けることを嫌がる人間)には悲劇が訪れる。
- 電卓が存在しなかった時代には,対人関係が嫌いな人でも,一日中,そろばんに向かって計算だけしていても,経理課での存在価値はあった。だが,残念ながら,いまは存在価値はない。そこで企業は,政府が新しく発表した税制を経理課の職員に理解させ,かつ応用できるように,教育・訓練を行わなければならない。
- ルーティン業務(例えば,簿記業務)は,人々が最もやりたい仕事の一つでもある。いったん,身につけると,毎日,それを繰り返していればいいだけであり,しかも事務職であるため,通常は収入が高いからである。だが残念ながら,毎日,繰り返していればよい仕事であるがために,高い確率で機械に代替されていくのである。
- AI 時代を生き抜くための方法=生涯学習
- 機械化が進めば,人間が行っていたタスクのうち,一部は機械に代替されるが,通常,人間全体100%が代替されることはない。人間でなければできないきめ細かいタスクや創造的なタスクは依然として人間が担う必要がある。
- 機械化されず,人間が担うべき仕事は,ますます高スキルを必要とする仕事になるであろう。その高スキルを身につけるため,人間は,日々,スキルを磨く努力をし続けなければならない〔日本でも,修士課程・博士課程で学ぶ意味が理解されるようになるでしょう。もちろん,それぞれの課程教育の大改革に取り組む必要はありますが…〕。
- AI時代においては,若い頃に身につけたスキルだけで一生食べていけない。何歳になっても日々,学習し続けなければならないのである。
- (HP訪問者の延べ人数:21,420人)
- 2018年12月20日(木) 曇り後雨
- 岩本晃一『AIと日本の雇用』日本経済新聞出版(2018/11/20)を読み終わりました。(第3日目)
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岩本晃一『AIと日本の雇用』
日本経済新聞出版(2018/11/20)105頁 |
本書では,今後20年間における雇用の増減予測が,右の図で示されています(本書105頁)。
- 筆者は,米国マサチューセッツ工科大学(MIT)経済学部教授であるデイビッド・H・オーター(David H. Autor)の研究(本書107頁)に依拠しつつ,AIの進展に伴う雇用の問題点は,雇用の総量の増減というよりは,ルーティン業務が機械に代替されるという「雇用の質」「雇用の構造」が変わっていく点であると指摘しています(本書16-18頁)。
- 具体的には,とても複雑で細かいことができるスマートな機械,人間の脳のような人工知能,人間の腕のような非常に細かい運動ができるロボットが,人間の行っている高スキルなルーティン業務まで代替するようになることで,一部の国民に富が集中し,社会の「経済格差が拡大する」ということこそ,さらに重大な問題点だとしています。なぜなら,中スキルの人々の職が失われ,低スキルの職に落ちていき,低スキルの職の総量はほとんど変わらないのに,労働者の数の方が多くなって賃金が上がらず雇用が不安定になるという現象が生まれてくると予想されるからです。
- 必要な予算や人員が不足し,人工知能研究が世界の先進諸国と比べて周回遅れとなっているといわざるを得ないわが国の人材育成の課題は,以下のように定義されているデータ・サイエンティスト/データ・エンジニアを育成することであるというのが,本書の最も重要な提言であると思われます(本書220-221頁)。
- データ・サイエンティスト/データ・エンジニアとは,ビッグデータを扱えるだけでなく,ビッグデータを処理することで,どういった形で表現するのがいいか,何をどのように分析すればいいかわかる能力(数学,統計学,情報学,経営学/エンジニアリングの能力)を持っている人であり,かつ,その能力はその人が働いている分野に精通していることである。
- (HP訪問者の延べ人数:21,440人)
- 2018年12月21日(金) 雲り後雨
- 日出ロータリークラブの一員として,平成30年大分冬の事故ゼロ運動に参加しました。
- 『法と経営研究』第3号に寄稿すべき論文として,「期限の利益の尊重と剥奪に関する法と経営-法と経営の融合のための法技術(その2)」の着想を得ました。場合によっては,『求められる期限の利益の尊重』というブックレットにするのもありかと考えています。
- 私情協の対話集会に出席するため,東京に出張します。
- 新幹線の中で,執筆原稿の構想を練り,アウトラインを作って執筆を開始しました。執筆の過程で,章立ては変更されていきますが,現在のアウトラインは以下の通りです。Ⅰ~Ⅱ2まで書き終えたので,明日,出版社に提示して,執筆方針について相談します。
- 求められる期限の利益の尊重 -一度でも遅延したら一括返済を求めるという「期限の利益喪失条項」は無効-
- はじめに
- Ⅰ 問題の所在
- 1.「一度でも遅延すれば一括弁済しなければならない」は本当か?
- 2.「一括繰り上げ請求条項」が社会的に是認されるに至った根拠は何か?
- 3.「一括繰り上げ請求条項」を無効とすることができる根拠条文とは何か?
- 4.「一括繰り上げ請求条項」が無効とされた場合の法律関係はどうなるか?
- Ⅱ 経営小説に見る期限の利益の剥奪例と法的根拠の悪用
- 1.池井戸潤『空飛ぶタイヤ』(下)講談社文庫(2013)第8章第6節の例
- 2.事例への銀行による期限の利益の剥奪の根拠条項の適用
- 3.奨学金の返還遅延と「一括繰上げ請求」による悲劇
- Ⅲ 期限の利益の剥奪条項を無効とすることができる法理
- 1.契約自由から契約正義への転換
- 2.期限の利益の喪失条項の起源と変遷
- 3.経営実態の直視による法解釈の変更の必要性
- Ⅳ 結論
- おわりに
- 参照文献
- (HP訪問者の延べ人数:21,460人)
- 2018年12月22日(土) 曇り後雨
- 出版社に行き,『法と経営研究』第2号,および,『求められる改正民法の教え方』等のブックレットの出版について進捗状況を確認しました。
- 『法と経営研究』第2号の初校(ゲラ刷り)を受け取りました。出版社から,対談(大場昭義/金城亜紀)「原点に立ち返る勇気・個人の自立とコーポレートガバナンス」を巻頭に持ってくるのはどうかという,この雑誌の魅力を増すための優れた提案受けました。そこで,共同責任編集者に,対談を巻頭に置くことについてのわかりやすい趣旨説明文の作成を依頼することにしました。
- 『求められる改正民法の教え方』の初校を受け取りました。事前に通知を受けていなかったので,サプライズのクリスマスプレゼントとなりました。早速,校正に取り掛かりました。
- 私情協のアクティブ・ラーニング対話集会(英語教育・法律学・政治学・国際関係学・コミュニケーション関係学グループ 分野連携アクティブ・ラーニング対話集会)に出席しました。
- サポーター役として,大学は,専門を売りにする個人商店型の経営から,分野横断的な仕組みの代表例であるプラットフォーム・エコノミー型へと転換しないと,少子化の進展する社会で生き残るのは難しくなるのではないかということを,ホテル業におけるAirbnb
(エアビーアンドビー),タクシー業におけるウーバーを例にとって説明するとともに,大学改革にとって,ICTを使った分野横断型のプラットフォームを構築することがいかに重要であるかを説明しました。
- 加賀山茂「求められる期限の利益の尊重 -一度でも遅延したら一括返済を求めるという「期限の利益喪失条項」は無効-」の執筆を続けています。(第2日目)
- (HP訪問者の延べ人数:21,470人)
- 2018年12月23日(日) 曇り 後雨
- 出版社から『法と経営研究』第2号,および,『求められる改正民法の教え方』のゲラ刷りを受け取り,私情協のアクティブラーニング対話集会でのサポーター役の務めを終えて,大分に帰ります。
- 新幹線の中で,加賀山茂『求められる改正民法の教え方』信山社(2019/1/30)の初校の校正を行い,完了しました。索引項目の選定は,大分に帰ってから行います。
- 遠藤直哉『新弁護士懲戒論(為すべきでない懲戒5類型,為すべき正当業務型)-法曹増員後の弁護士自治-』〔法動態学講座2〕信山社(2018/12/15)について,ボランティアで書評を兼ねた校正を行いました。
- (HP訪問者の延べ人数:21,490人)
- 2018年12月24日(月) 晴れ
- 加賀山茂『求められる改正民法の教え方』信山社(2019/1/30)の初校に基づいて,索引項目の選定を行ったので,出版社に郵送しました。
- 遠藤直哉『新弁護士懲戒論(為すべきでない懲戒5類型,為すべき正当業務型)-法曹増員後の弁護士自治-』〔法動態学講座2〕信山社(2018/12/15)について,書評を兼ねた校正を行ったので,それも合わせて,出版社に郵送しました。
- (HP訪問者の延べ人数:21,500人)
- 2018年12月25日(火) 晴れ
- 加賀山茂『求められる「期限の利益」の尊重 -一度でも遅延したら一括返済を求めるという「一括繰上げ請求」無効-』の執筆を続けています。(第3日目)
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大内裕和『奨学金が日本を滅ぼす』
朝日新書(2017/2/28) |
参照すべき文献として,大内裕和『奨学金が日本を滅ぼす』朝日新書(2017/2/28)を読み始めました。(第1日目)
- なぜわが国の学生の半数以上が,債権回収を過酷に実施するサービサーに委託している「独立行政法人・日本学生支援機構」から奨学金を借りているのか,奨学金を借りたら返せなくなるのはどのような場合なのか,反対に奨学金を返すと,なぜ,結婚や子育てができない状態に陥るのか,わが国がOECD諸国の中で給付型奨学の比率が最下位であり,高等教育への公財政支出(対GDP)も最下位へと転落したのはなぜなのか,日本育英会(2004年3月まで)から奨学金を受けていた私たちの世代からは,想像を絶する事態が進行していることが,理路整然と,しかも説得的に論じられています。
- 特に,借りたを奨学金を返すと,子育てができなくなるという問題については,以下のような図表(文部科学省「平成24年度 子どもの学習費調査,日本政策金融公庫「平成26年度 教育費負担の実態調査結果」から:本書120頁)が示されており,説得力をさらに増しています。
-
子ども一人当たりの教育費(学校外教育費を含む)
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幼稚園
(3年間) |
小学校
(6年間) |
中学校
(3年間) |
高校
(3年間) |
大学
(4年間) |
公立(国立) |
69万円 |
183万円 |
135万円 |
116万円 |
511万円 |
私立 |
146万円 |
853万円 |
389万円 |
290万円 |
692万円(文系)
788万円(理系) |
全て国公立の場合の合計 |
全て私立(大学は理系)の場合の合計 |
約1,015万円 |
約2,466万円 |
- 本書は,この他にも,47の図表を駆使して説得的な議論を展開しています。私としては,家族形成の阻害要因という観点から眺めると,スマホ依存問題とともに,奨学金問題も,家族法と関連していることを本書を通じて理解することができました。
- (HP訪問者の延べ人数:21,520人)
- 2018年12月26日(水) 雨後曇り
- 加賀山茂『求められる「期限の利益」の尊重 -「一括繰上げ請求」無効の法理-』の執筆を続けています。(第4日目)
- 参照すべき文献として,大内裕和『奨学金が日本を滅ぼす』朝日新書(2017/2/28)を読み終えました。(第2日目)
- 奨学金問題について,1冊で体系的に理解したいのであれば,本書をお薦めします。
- 私は,明日から,購入済みの以下の3冊の関連する本を読んで,奨学金問題の理解を深めようと思っています。
- 奨学金問題対策全国会議編・伊東達也=岩重佳治=大内裕和=藤島和也=三宅勝久『日本の奨学金はこれでいいのか!―奨学金という名の貧困ビジネス』あけび書房(2013/11/1)
- 岩重佳治『「奨学金」地獄』小学館新書(2017/2/6)
- 今野晴貴『ブラック奨学金』文春新書(2017/6/20)
- (HP訪問者の延べ人数:21,540人)
- 2018年12月27日(木) 曇り後晴れ
- 加賀山茂『求められる「期限の利益」の尊重 -「一括繰上げ請求」無効の法理-』の執筆を続けています。(第5日目) タイトルを以下のように変更してみました。
- 加賀山茂『求められる「一括繰上げ請求」の禁止 -「期限の利益の喪失条項」が無効となる場合とは?-』
- 参照すべき文献として,奨学金問題対策全国会議編・伊東達也=岩重佳治=大内裕和=藤島和也=三宅勝久『日本の奨学金はこれでいいのか! ―奨学金という名の貧困ビジネス』あけび書房(2013/11/1)
を読み始めました。(第1日目)
- (HP訪問者の延べ人数:21,560人)
- 2018年12月28日(金) 曇り後晴れ
- 加賀山茂『求められる「一括繰上げ請求」の禁止 -「期限の利益の喪失条項」が無効となる場合とは?-』 の執筆を続けています。(第6日目)
- 期限の利益に関する立法資料として,法務大臣官房司法法制調査部監修『法典調査会民法議事速記録一』(日本近代立法資料叢書1)商事法務研究会(1983/12/16)329-359頁を読み始めました。
- 広中俊雄編著『民法修正案(前三編)の理由書』有斐閣(1987)182-184頁の穏健な記述からは窺い知ることができない白熱の議論が展開されていたことが,法典調査会の議事速記録を読むとよくわかります。
- ここでも台風の目となるのは,磯部四郎の鋭い質問です。磯部四郎は,起草委員が民法135条(期限の到来の効果)に関して提案している「旧民法財産編第403条1項・2項は採用するが,3項(債権者の請求によって,不確定期限を確定期限に変更する権限を裁判所に与えるという条文)を削除する」という考え方に対して,巷でよく行われている「身代持直し次第弁済いたすべき候」という証文を例にとって,その第3項を削除すると,債権回収ができなくなるとして,「債務者が弁済できるようになった時に弁済するという約束がある場合には,裁判所は,債権者の請求により,事情に従ってその履行の期間を定めることができる」という趣旨の修正案を提出しています。
- 磯部四郎の修正案は,長谷川喬委員の修正案に引き継がれますが,賛成者が少数のため否決されてしまいます。しかし,予期せぬ磯部四郎の質問に対応する起草員の見解は,三人(穂積陳重,梅謙次郎,富井政章)ともに見解が分かれるという異常事態が発生します。そして,その他の法典調査会の委員を交えた白熱の議論を通じて,旧民法の財産編403条3項に規定されていた「債務者の為し得べき時,又は,欲する時に弁済す可しとの語辞あるとき」というのは,不確定期限(民法412条2項)なのか,無期限(民法412条3項)なのか,それとも,随意条件(民法134条)なのか,さらには,契約自由と裁判所の介入の是非について,議論が深まっていきます。
- 立法理由書の記述は,非常に簡略化されており,しかも,法典調査会で得られた知見を,起草委員がさも初めから知っていたかのように,その上,起草委員の立場で記述されているため,議論の中心となった立法事実とか,否決された修正案とかの内容については,ほとんど記述されていません。
- しかし,現行民法の条文の意味とか,位置づけを知るためには,法典調査会の議論で取り上げられた立法事実とか,否決された修正案修正案との対比が有用です。したがって,立法理由書を読んだ後には,法典調査会議事速記録によって,その背景事情を確かめることをお薦めします。特に,「反逆児」磯部四郎と「超テクノクラート」梅謙次郎との議論は,興味深いものが多く,読み物としても楽しむことができるでしょう。
- (HP訪問者の延べ人数:21,580人)
- 2018年12月29日(土) 曇り後晴れ
- 加賀山茂『求められる「一括繰上げ請求」の禁止 -「期限の利益の喪失条項」が無効となる場合とは?-』 の執筆を続けています。(第7日目)
- 期限の利益に関する立法資料として,法務大臣官房司法法制調査部監修『法典調査会民法議事速記録一』(日本近代立法資料叢書1)商事法務研究会(1983/12/16)329-359頁を読んで,議事内容の超翻案を行っています(第2日目)。
- ボワソナードが起草した旧民法財産編第403条3項(債務者の為し得べき時,又は,欲する時に弁済す可しとの語辞あるときは,裁判所は債権者の請求に因り,事情に従ひ及び当事者の意思を推定して,其履行の期間を定む。)に関して,その由来を知るために,ボワソナードのProjetを読んでみると,これに相当する当時のフランス民法典の条文は,期限の箇所には存在せず,消費貸借の箇所に,第1901条(借主が支払いができる時に又は支払の資力を有する時に支払う旨の合意がなされたに過ぎないときは,裁判官は,事情を考慮して,支払いの期限を定めることができる。)が存在するに過ぎませんでした。
- しかし,最近(2016年)のフランス債務法改正によって,この条文の趣旨が期限の箇所に取り込まれるに至っています。すなわち,新フランス民法典第1305-1条第2項において,「期限の合意がない場合には,裁判官は,債務の性質及び当事者の状況を考慮して,期限を定めることができる。」という明文の規定が成立しています。
- ボワソナードは,フランス債務法改正の130年も前に,このような条文を期限の箇所において起草していたのですから,その先見の明には驚かされます。
- (HP訪問者の延べ人数:21,600人)
- 2018年12月30日(日) 曇り時々晴れ
- 加賀山茂『求められる「一括繰上げ請求」の禁止 -「期限の利益の喪失条項」が無効となる場合とは?-』 の執筆を続けています。(第8日目)
- 期限の利益に関する立法資料として,法務大臣官房司法法制調査部監修『法典調査会民法議事速記録一』(日本近代立法資料叢書1)商事法務研究会(1983/12/16)329-359頁を読んで,議事内容の超翻案を行っています(第3日目)。
- 民法135条(期限の到来の効果)に関する法典調査会議事速記録を読んで明らかとなったことのまとめ
- 民法135条(期限の到来の効果)をめぐる法典調査会の議論を振り返ってみると,議論は,磯部四郎の質問を皮切りに,旧民法財産編第403条3項(債務者の為し得べき時,又は,欲する時に弁済す可しとの語辞あるときは,裁判所は債権者の請求に因り,事情に従ひ及び当事者の意思を推定して,其履行の期間を定む。)を削除すべきかどうかの議論に終始したように思われます。
- 1.現行民法の135条の起草に際して削除されたが,白熱の議論の的となった旧民法財産編第403条3項の意味
- 旧民法を起草したボワソナードの意図をProjetによって探ってみると,ボワソナードはフランス民法典第1901条(借主が支払いができる時に又は支払の資力を有する時に支払う旨の合意がなされたに過ぎないときは,裁判官は,事情を考慮して,支払いの期限を定めることができる。)を参照しつつも,どうせ裁判所が期限を定めるのであれば,フランス民法典には存在しないが,あり得る状況として,「債務者が欲する時」に弁済するという約束も入れ込んで規定してしまったのです(実は,旧民法においては,随意条件の場合にも,裁判所が成否の期限を定めることになっていました(旧民法財産編第415条))。
- 2.裁判所の権限を否定することによって浮き彫りとなった問題点
- わが国の起草委員たちは,ボワソナードの見解とは異なり,当事者ではない裁判所に,法律行為の期限を定めさせるべきではないと判断しました。そうすると,ボワソナードが裁判所に権限を与えること前提に挿入した「債務者が欲する時に」返済する場合というのが,期限としては特異なものとして浮かび上がって来ざるを得ません。
- 梅謙次郎は,さすがに,この点をよく理解していました。そして,旧民法の条文のうち,フランス民法に存在する「債務者の為し得べき時」というのは期限として認めるべきだが,フランス民法典に存在しない「債務者が欲する時」というのは,期限ではなく,むしろ,随意条件(民法)であり,そのような約束は無効である(民法134条)と主張し,あえて,穂積委員・富井委員の「欲する時」も期限であるとする説明に反対したのです。
- 法典調査会の有力委員たち(磯部,長谷川,高木,横田など)による修正提案は少数説として否決されるのですが,彼らも梅委員と同様に,第1に,「債務者の欲する時」と「債務者の為し得べき時」とは異質のものであることを理解しており,「欲する時」は,「随意条件で無効」とするるか,「期限の定めがないものとして債権者が請求した時に期限が到来する」と考えていました。第2に,「債務者の為し得べき時」というのは,巷でよく使われている「身代持直し次第弁済する」という約束と同様であり,この場合にいつまで経っても期限が到来しないというのでは不都合であり,旧民法と同様に,裁判所に期限を定める権限を与えようというものでした。
- 3.債務者の資力が回復しない場合の期限の効力
- そのような法典調査会の有力委員の修正提案が否決され,起草委員の間で見解が異なるにもかかわらず原案が採択された現在においては,第1に,「債務者の欲する時に返済する」という約束は,梅説に従って,随意条件として無効とするか,高木説に従って,期限の定めのない約束として,一般論としては,民法412条3項によって,債権者の請求の時に期限が到来するとし,より特別な場合である消費貸借・消費寄託の場合は,民法591条1項により,貸主は,相当の期間を定めて返還の催告をすることができると考えるべきでしょう。第2に,「債務者の為し得べき時」とか,「身代持直し次第」とかに返済するという約束の場合には,起草委員の一致した見解として,その時期が到来するまで,債権者は返還請求ができないと解すべきでしょう。その理由は以下の通りです。
- 貸主と借主が「債務者の為し得べき時」とか,「身代持直し次第」に返済するという合意をした場合,当事者は,いつの日にか必ずその時期が到来することを信じてその約束をしているのであり,貸主も,合意に至るまでは,貸す義務はないのですから,その約束で貸した以上は,その時まで待つというのが当事者の意思に合致するばかりでなく,「期限が到来するまで,これを請求することができない」という民法135条の趣旨に沿うことになるからです。
- この原則に対する唯一の例外として,必然的に期限が到来するというのが,次に規定されている「期限の利益の喪失」であって,債務者の財産の総清算が行われる場合,すなわち,債務者が破産したり,担保を滅失・損傷した場合なのです。
- 4.結論
- 以上の検討を踏まえるならば,わが国の民法の解釈においては,「資力が回復した時に返還する」という約束がある場合には,債権者は,資力が回復するまで返還を請求できないと考えるべきです。
- その原則が覆って,資力が回復しないまま期限の利益が到来するという唯一の例外が,民法137条の規定による「期限の利益の喪失」なのです。そして,資力が回復しないままに期限が到来する場合というのは,民法137条に列挙された場合,すなわち,①債務者の破産手続きの開始,又は,②担保の消滅・損傷・減少,若しくは,③義務に反する担保の不提供という三つの場合に限定されると解さなければならないと,私は考えています。
- (HP訪問者の延べ人数:21,640人)
- 2018年12月31日(日) 曇り後晴れ
- 加賀山茂『求められる「一括繰上げ請求」の禁止 -「期限の利益の喪失条項」が無効となる場合とは?-』 の執筆を続けています。(第9日目)
- 期限の利益に関する立法資料として,法務大臣官房司法法制調査部監修『法典調査会民法議事速記録一』(日本近代立法資料叢書1)商事法務研究会(1983/12/16)329-359頁を読んで,議事内容の超翻案を行っています(第4日目)。
- 法典調査会における民法135条~137条(原案136条~138条)に関する議事内容の超翻案を継続しています。
- 下記の通り,「2018年の総括」を行いました。
- (HP訪問者の延べ人数:21,680人)
今年も今日で終わりです。早いもので,明治学院大学法学部を定年退職し,年金生活に入ってから,2年が経過しようとしています。今年は,大分県の日出町(スーパーボランティア・尾畠春夫さんの活躍で一躍有名になった町)にある実家で研究活動を継続しつつ,今年からは,吉備国際大学の特任教授や大分大学の非常勤講師として,教育活動にも復帰しました。また,日出ロータリークラブへ入会し,地域貢献の足場を固めた年でもありました。詳細は以下の通りです。
- 信山社プックレット・シリーズへの寄稿
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加賀山茂『求められる法教育とは何か
-他者への貢献“Do for others”の視点から
事務管理,不当利得,不法行為を考える-』
信山社(2018/8/30) |
今年から刊行が開始された『信山社ブックレット』の第1号として,加賀山茂『求められる法教育とは何か-他者への貢献“Do for others”の視点から事務管理,不当利得,不法行為を考える-』信山社(2018/8/30)を執筆する機会が与えられ,無事に刊行できたことは幸いでした。 - 引き続き,このブックレットシリーズへの寄稿を続け,第2弾として,改正民法を教えることになって困難に直面している全国の民法担当の先生方のために,加賀山茂『求められる改正民法の教え方』信山社(2019/1/30)の執筆を行うことができました。民法教育の担当者のニーズに応える小冊子なので,多くの先生方に購入していただけるのではないかと,1月下旬の刊行を待っているところです。
- 今後は,学生や社会人の経済的自立を妨げている,奨学金の「一括繰上げ請求」の禁止,「保証人の過酷な責任」の軽減をテーマにして,ブックレットの原稿執筆に努力したいと考えています。
- 教育活動への復帰
- 4月から,吉備国際大学大学院(通信制)知的財産学研究科の特任教授に就任し,著作権と民法の講義を担当しました。来年度も継続することが決まりました。また,大分大学経済学部の非常勤講師として,「消費者と法」(前期科目)の講義を担当することになり,毎週月曜日に大分大学に通いました。学生たちとの交流は,研究活動にとっても,よい刺激になりました。
- 研究活動の継続
- 吉備国際大学大学院(通信制)知的財産学研究科の特任教授になったことから,著作権に関する研究を開始し,加賀山茂「著作権法革命-著作者第一主義から著作利用者第一主義へのパラダイム転換-」という論文を執筆して,この研究科創立10周年の記念論文集に寄稿しました。
- 従来からの研究活動の継続として,末川民事法研究会では,加賀山茂「名義貸しによる割賦販売(個別信用購入あっせん)の効力と購入者の抗弁」(最三判平19・2・21民集71巻2号99頁)という判例研究を行いました。この成果は,末川民事法研究に掲載されます。
- また,法と経営学の分野では,毎月,共同責任編集者と編集会議を開催するとともに,『法と経営研究』第2号の編集を行い,私自身も,加賀山茂「販売信用の構造分析と事実関係の可視化-「法と経営」融合実現のための法技術(その1)-」という論文を執筆し,『法と経営研究』第2号に寄稿しました。
- 研究活動に対するメディアの反響
- 私が書いた論文は,ほぼすべて,私のHPに掲載しています。そこで,その中の私の論文「民法改正案における『社会通念』概念の不要性」明治学院大学ローレビュー第23号(2016/03)1-20頁を読んだ東京新聞の記者から,原発再起動の根拠として使われている「社会通念」について取材を受けました。
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「社会通念」を論拠とすることに
疑念を表明する各誌の記事
(マーカー部分が私の見解の紹介) |
その記事がきっかけとなって,朝日新聞,毎日新聞からも取材を受け,以下のような各紙の記事の中で,私の考え方を取り上げていただきました。
- 東京新聞2018年10月6日23-24面(執筆:皆川剛) (右の写真の上)
- 朝日新聞2018年10月27日夕刊大阪版1面(執筆:五十嵐聖士郎) (右の写真の下・左)
- 毎日新聞2018年11月22日8面(執筆:小山美砂) (右の写真の下・右)
- 民法学,消費者法の学会活動
- 民法学界に対しては,例年通り,私法学会では,シンポジウムでパネリスト全員に質問を行って議論を盛り上げましたし,末川民事法研究会では,電子出版の紀要の編集委員長として,編集会議を主催し,その研究会では,報告者に厳しい質問と相手の立場に立ったアドバイスをしてきました。また,明治学院大学の消費者法研究会でも,同様の質問とアドバイスを行いました。
- 地域貢献活動
- 日出ロータリークラブに入会し,地域への奉仕活動を開始しました。今年度は,クラブの活動に慣れることに専念しましたが,来年度からは,副会長として活動することになります。そこで,奉仕活動の一環として,地域の子どもたちが直面している問題,すなわち,スマホ依存による学習環境の悪化(諸富祥彦『スマホに負けない子育てのススメ』主婦の友社(2018/9/30)),両親の離婚による環境の変化(SAJ=野沢慎司編,緒倉珠巳=野沢慎司=菊池真理著『ステップファミリーのきほんをまなぶ』金剛出版(2018/11/10)),AIの脅威に打ち勝つためのAIとの付き合い方(新井紀子『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』東洋経済新聞社(2018/2/15),西垣通『AI原論-神の支配と人間の自由』講談社選書メティエ(2018/4/10),渡辺信一『AIに負けない「教育」』大修館(2018/8/1),岩本晃一『AIと日本の雇用』日本経済新聞出版(2018/11/20),ユヴァル・ノア・ハラリ(柴田裕之訳)『ホモ・デウス:テクノロジーとサピエンスの未来』〔上・下〕河出書房新社(2018/9/5))などの問題に子どもたちが対処するのをアシストするために,地域の学校と交流を深め,新しい奉仕活動の戦略を練っていきたいと考えています。
- 今年から開設の準備を始めた「寺子屋ひじ塾」ですが,資金調達がうまくいかなかったために,今年は,開設を見送りました。そこで,来年は,資金の調達を含めて,本格的な開設準備を行い,塾生の選任までもっていきたいと考えています。そして,順調に資金調達ができるならば,再来年の2020年4月に「寺子屋ひじ塾」を開設し,日出町の子どもたちの自立支援に取り掛かるつもりです。
長々と書き続けましたが,以上が私の今年の総括です。皆さま,よいお年をお迎えください。そして,来年もよろしくお願いいたします。
- 著書
- 加賀山茂『求められる法教育とは何か-他者への貢献“Do for others”の視点から事務管理,不当利得,不法行為を考える-』信山社(2018/8/30)。
- 【概要】大相撲巡業場所において,土俵上で倒れた来賓を救護するために土俵に上がった女性の医療関係者に対して,行事が,「女性は土俵から降りてください」との館内アナウンスを繰り返した事件を取り上げ,ボランティア活動に不可欠の基本的な法律知識としての「事務管理」について,「不当利得」,「不法行為」,「委任契約」との密接な関係を踏まえながら,最新の理論を解説している。
- その上で,法教育にとって,「事務管理」という法律関係を理解すると,「不当利得」,「不法行為」,「契約」という基本的な知識と考え方を連続的にマスターすることができるようになるとして,事務管理を中心に法教育を組み立てることを提言している。
- 加賀山茂『求められる改正民法の教え方』信山社(2019/1/30)(発刊予定)
- 【概要】改正民法(債権関係)は,立法事実が示されないままに改正手続が開始され,しかも,起草過程において,多数決ではなく,一人でも反対すると何も進まなくなるという「全会一致の原則」で審議が進められた。このため,原案に批判的な専門家(池田真朗,加藤雅信,角紀代恵,河上正二,廣瀬久和)が排除されてしまい,批判的な検討が不十分となり,さまざまな個所で,体系上の矛盾や解釈上の不具合が生じている。その結果として,今回の改正民法は,「制定以来の社会・経済の変化への対応を図り,国民一般に分かりやすいものにする」ことを求めた答申に答えられておらず,「答申に不適合」な「瑕疵ある」改正となっている。
- このため,改正民法を教え始めた民法担当教員の間で動揺が広がっている。一つだけ例を挙げるとして,改正民法95条1項1号の「意思表示に対応する意思を欠く錯誤」,すなわち,「意思の不存在」が,改正民法120条2項では,「瑕疵ある意思表示」とされるという致命的な矛盾に陥っており,これをどのように教えるべきか,まじめな教員ほど,深刻に悩まざるをえないからである。
- そこで,本書では,教員が教えることが困難となっている12のトピックスを選び,若手の教員が行う改正民法の模擬講義を聴いたベテランの教員が,改正民法の改正点を確認しつつ,その問題点を指摘し,改正民法の模擬講義を行った若手教員と現行民法の教授経験が豊富なベテラン教員の間で白熱の議論を重ねながら,改正民法のあるべき教え方を模索するというストーリー展開を採用している。そして,最後には,若手教員のゼミの学生同士の議論を通じて,改正民法の「学び方」についても,そのヒント(教えることを通じて学び合う)を示すという工夫を行っている。
- 論文
- 加賀山 茂「「著作権法革命-著作者第一主義から著作利用者第一主義へのパラダイム転換-」(吉備国際大学大学院(通信制)知的財産学研究科十周年記念論文集に掲載予定)
- 【概要】インターネット社会においては,万人が著作者となりうるのであり,「文化の発展に寄与する」という著作権法の目的は,これまでのように,一部の著作者等に「特権」を与えることによって実現できるものではなく,それとは反対に,「著作利用者の権利」を拡大することによって万人の知的レベルを向上させ,そこから,さらに高度な著作が誕生するという仕組み,すなわち,「著作者第一主義」から「著作利用者第一主義」へのパラダイム転換によって実現しうることを論じている。
- 「販売信用の構造分析と事実関係の可視化-「法と経営」融合実現のための法技術(その1)-」法と経営研究(信山社)第2号(2019/1)(掲載予定)
- 【概要】『法と経営研究』第2号に掲載予定の論文。法学と経営学との融合をめざす,「法と経営」という新しい研究分野について,経営者が身につけるべき「法技術」の一つとして,事実関係の可視化の方法を明らかにしている。それととともに,経営的には割賦販売だが,法的には,売買と消費貸借の結合に過ぎないとされるクレジット契約を例にとって,経営的な視点に基づいて法的構成を変更することを通じて,法学と経営学との融合を期すべきことを論じている。
- 判例研究
- 「名義貸しによる割賦販売(個別信用購入あっせん)の効力と購入者の抗弁」(最三判平19・2・21民集71巻2号99頁)末川民事法研究第5号(2019)(掲載予定)
- 【概要】こ最三判平19・2・21民集71巻2号99頁に関して,これまでになされたきたすべての判例研究を検討した上で,最高裁の判決理由は,千葉恵美子評釈が指摘しているように,不当利得の返還請求の問題で矛盾に陥っており,理論的な解決のためには,クレジット契約を第三者のためにする契約として再構成する必要があることを論じている。
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